(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133952
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】成形プレス及び成形プレス用プラテン
(51)【国際特許分類】
B29C 43/18 20060101AFI20170515BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20170515BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20170515BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
B29C43/18
B29C43/34
B29C43/36
H01L21/56 R
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-183784(P2015-183784)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2016-60209(P2016-60209A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2015年11月2日
(31)【優先権主張番号】14/489,640
(32)【優先日】2014年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504133796
【氏名又は名称】エーエスエム・テクノロジー・シンガポール・ピーティーイー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアン・ション・スー
(72)【発明者】
【氏名】テン・ホック・クア
(72)【発明者】
【氏名】シュ・チェン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジャペイ・ディン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィンドラ・ラガヴェンドラ
【審査官】
関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−274192(JP,A)
【文献】
特開2010−083085(JP,A)
【文献】
特開2008−087408(JP,A)
【文献】
特開2010−094931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/18
B29C 43/34
B29C 43/36
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の半導体チップを封止するための成形プレス機であって、
第1の鋳型チェイス表面を有する第1の鋳型チェイスと、
第2の鋳型チェイス表面を有する第2の鋳型チェイスと、
を備え、
前記第1の鋳型チェイス及び前記第2の鋳型チェイスは前記基板を締め付け固定するように動作可能であり、前記基板は、前記第1の鋳型チェイス表面又は前記第2の鋳型チェイス表面のいずれかに関する基板に面する表面に対して、前記第1の鋳型チェイス表面と、前記第2の鋳型チェイス表面と、の間で保持されて、少なくとも1つの成形用キャビティを前記基板に対して画定している、成形プレス機において、
前記成形プレス機が、
頂部部分、該頂部部分が第1の回転取り付け部材によって取り付けられる中間部分、及び前記中間部分が第2の回転取り付け部材によって取り付けられる基体部分;並びに
前記頂部部分に接続されて前記頂部部分を前記第1の回転取り付け部材の周りに前記中間部分に対して回転させるとともに、前記中間部分に接続されて前記中間部分を前記第2の回転取り付け部材の周りに前記基体部分に対して回転させ、それによって前記第1の鋳型チェイス表面と、前記第2の鋳型チェイス表面と、の相対的配置を調整する駆動装置、
をさらに備える、成形プレス機。
【請求項2】
前記回転取り付け部材は、前記第1の鋳型チェイス又は第2の鋳型チェイスのいずれかの、前記基板に面する表面の中心を通過する2つの直交する軸の回りの回転を可能として、前記第1の鋳型チェイス表面及び前記第2の鋳型チェイス表面の相対的配置を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の成形プレス機。
【請求項3】
前記第2の鋳型チェイスはプラテンの一部であり、前記プラテンは、前記第2の鋳型チェイスを回転させるように構成された駆動機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の成形プレス機。
【請求項4】
前記プラテンは、前記回転取り付け部材を備えることを特徴とする請求項3に記載の成形プレス機。
【請求項5】
前記回転取り付け部材は、ローラベアリングを備えることを特徴とする請求項1に記載の成形プレス機。
【請求項6】
前記プラテンは、締め付け固定中に前記基板の対向する端部に加えられる締め付け固定力を測定するように配置された複数のロードセルを備え、
前記駆動機構は、前記頂部部分若しくは前記中間部分、又は前記頂部部分及び前記中間部分の両方を回転させて、前記締め付け固定力をバランスさせるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の成形プレス機。
【請求項7】
前記ロードセルは、前記プラテンの前記頂部部分の上側部分と下側部分との間に位置することを特徴とする請求項6に記載の成形プレス機。
【請求項8】
前記ロードセルは、前記基体部分の下に位置することを特徴とする請求項6に記載の成形プレス機。
【請求項9】
前記第2の鋳型チェイスは、前記頂部部分に複数のばねによって結合した締め付け固定プレートを備え、該締め付け固定プレートは、該締め付け固定プレートの異なる場所におけるばねの圧縮を測定するように配置された複数のゲージセンサを備え、
前記駆動機構は、前記頂部部分及び/又は前記中間部分を回転させて、前記異なる場所における測定された前記ばねの圧縮の差を最小化するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の成形プレス機。
【請求項10】
半導体チップを基板上に封止するための成形プレス用プラテンであって、
第1の鋳型チェイス表面を有する第1の鋳型チェイスを備え、
前記プラテンは、第2の鋳型チェイス表面を有する第2の鋳型チェイスを有する更なるプラテンと協働して前記基板を締め付け固定するように動作可能であり、前記基板は、前記第1の鋳型チェイス表面又は前記第2の鋳型チェイス表面のいずれかに関する基板に面する表面に対して、前記第1の鋳型チェイス表面と、前記第2の鋳型チェイス表面と、の間で保持されて、少なくとも1つの成形用キャビティを前記基板に対して画定し、
前記プラテンは、頂部部分、該頂部部分が第1の回転取り付け部材によって取り付けられる中間部分、及び前記中間部分が第2の回転取り付け部材によって取り付けられる基体部分;並びに、
前記頂部部分に接続されて前記頂部部分を前記第1の回転取り付け部材の周りに前記中間部分に対して回転させるとともに、前記中間部分に接続されて前記中間部分を前記第2の回転取り付け部材の周りに前記基体部分に対して回転させ、それによって前記第1の鋳型チェイス表面と、前記第2の鋳型チェイス表面と、の相対的配置を調整する駆動機構、
をさらに備える、プラテン。
【請求項11】
回転取り付け部材が、前記第1の鋳型チェイス又は前記第2の鋳型チェイスのいずれかの、前記基板に面する表面の中心を通過する2つの直交する軸の回りの回転を可能とするように構成されて、前記第1の鋳型チェイス表面及び前記第2の鋳型チェイス表面の相対的配置を調整することを特徴とする請求項10に記載のプラテン。
【請求項12】
前記回転取り付け部材は、ローラベアリングを備えることを特徴とする請求項11に記載のプラテン。
【請求項13】
締め付け固定中に前記基板の対向する端部に加えられる締め付け固定力を測定するように配置された複数のロードセルをさらに備え、
前記駆動機構は、前記頂部部分及び/又は前記中間部分を回転させて、前記締め付け固定力をバランスさせるように構成されていることを特徴とする請求項10に記載のプラテン。
【請求項14】
前記ロードセルは、前記頂部部分の上側部分と下側部分との間に位置することを特徴とする請求項13に記載のプラテン。
【請求項15】
前記ロードセルは、前記基体部分の下に位置することを特徴とする請求項13に記載のプラテン。
【請求項16】
前記頂部部分に複数のばねによって結合した締め付け固定プレートを備え、該締め付け固定プレートは、該締め付け固定プレート上の異なる場所におけるばねの圧縮を測定するように配置された複数のゲージセンサを備え、
前記駆動機構は、前記頂部部分若しくは前記中間部分、又は前記頂部部分及び前記中間部分の両方を回転させて、前記異なる場所における測定された前記ばねの圧縮の差を最小化するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載のプラテン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体組み立て及び実装の分野に関し、特に基板上の半導体チップへの封止剤を適用するための成形プレス(及びそのプラテン)に関する。
【0002】
封止としても知られる実装は、半導体組み立てプロセスの重要な部分である。典型的には、封止はトランスファー成形又は圧縮成形のいずれかによって行われる。
【0003】
トランスファー成形において、成形システムは、例えば固体ペレットの形態の成形材料を受け取る供給ポットを有する第1のプラテンを含む。第1のプラテンはまた、複数の空洞も有する。第1のプラテンは、その上に複数の半導体チップを担持する基板が保持される第2のプラテンに対して押し付けられ、それによって第1のプラテンの空洞が半導体チップの上に位置付けられる。成形材料は熱と圧力との適用によって液体へと溶融され、液状化した成形材料は次いでプランジャーによって、このプランジャーと成形用キャビティとの間に接続されたランナーの中に送り込まれて、狭いゲートを介して成形用キャビティの中に進入する。成形材料は次いで硬化され、封止された基板は次いで鋳型から取り外される。
【0004】
圧縮成形では、紛体、液体、又はペースト状の樹脂の形態の成形材料が、下側プラテンの1つ以上の成形用キャビティの中に充填される(半導体チップのフェースダウン成形(die−down molding)の場合)か、若しくは下側プラテン上に保持された基板上に直接、供給される(半導体チップのフェースアップ成形(die−up molding)の場合)。次に、上側プラテンの鋳型
チェイス(mold chase)が、下側プラテンの鋳型
チェイスに対して締め付け固定(clamp)されて、上側プラテンと下側プラテンとの間に溶融した成形材料を有する成形キャビティを形成し、次いで成形材料を硬化させて、半導体チップを封止する成形キャップを形成する。
【0005】
トランスファー成形又は圧縮成形のいずれの封止プロセスにおいても、基板と成形用キャビティの対向する面との間の実質的な平行を維持することが非常に重要である。平行でない場合には、成形用キャビティの不完全な充填によって、成形キャップの欠陥が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した困難性の少なくとも1つを克服するか、若しくは軽減する、又は有用な代替物を少なくとも提供する、成形プレスに対する必要が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の或る実施形態は、基板を封止するための成形プレスに関し、この成形プレスは、第1の鋳型
チェイス表面を有する第1の鋳型
チェイスと、第2の鋳型
チェイス表面を有する第2の鋳型
チェイスと、を備え、第1及び第2の鋳型
チェイスは基板を締め付け固定するように作動可能であり、基板は、前記第1の鋳型
チェイス表面と第2の鋳型
チェイス表面との間で、第1又は第2の鋳型
チェイス表面のいずれかに関連する、基板に面する面に対して保持されて、少なくとも1つの成形用キャビティを基板に対して画定し、成形プレスは回転取り付け装置をさらに備え、この回転取り付け装置上で第1又は第2の鋳型
チェイスのいずれかが基板に面する表面の中心を通過する少なくとも1つの軸の回りに回転可能であり、それによって第1及び第2の鋳型
チェイス表面の相対的な配置を調整する。
【0008】
本発明の別の実施形態は、基板を封止するための成形プレス用のプラテンに関し、このプラテンは、第1の鋳型
チェイス表面を有する第1の鋳型
チェイスを備え、このプラテンは、第2の鋳型
チェイス表面を有する第2の鋳型
チェイスを有するさらなるプラテンと協働して基板を締め付け固定するように作動可能であり、基板は前記第1の鋳型
チェイス表面と第2の鋳型
チェイス表面との間で、第1又は第2の鋳型
チェイス表面のいずれかに関連する、基板に面する面に対して保持されて、少なくとも1つの成形用キャビティを基板に対して画定し、プラテンは回転取り付け装置をさらに備え、この回転取り付け装置上で第1又は第2の鋳型
チェイスのいずれかが基板に面する表面の中心を通過する少なくとも1つの軸の回りに回転可能であり、それによって第1及び第2の鋳型
チェイス表面の相対的な配置を調整する。
【0009】
第1及び第2の鋳型
チェイスが一緒に締め付け固定されるので、少なくとも1つの成形用キャビティの対向する表面との間の少なくとも1つの回転軸が基板に面する表面の中心を通過することを確実にすることによって、第1及び第2の鋳型
チェイスの相対的な方向付けを調整することを可能にすることができ、それによって、基板と、少なくとも1つの成形用キャビティの対向する面と、の間の共平面性を向上させることができる。このことは、実質的に均一な深さの成形用キャビティの生成を可能にし、例えば成形用キャビティの不完全な充填によって生じた成形欠陥を実質的に回避することを可能にする。また、一つ以上の回転軸を基板上に心出しすることによって、基板の中心と、対向する鋳型表面との間にオフセットを導入することを回避することが可能となる。
【0010】
或る実施形態では、プラテンは、第1の鋳型
チェイスを回転させるように構成された駆動機構を備える。
【0011】
所定の実施形態では、回転取り付け装置は、基板に面する面の中心を通過する2つの
直交する軸の回りの第1の鋳型チェイス又は第2の鋳型チェイスの回転を可能とするように構成することができ、それによって第1及び第2の鋳型チェイス表面の相対的配置を調整する。回転取り付け装置はローラベアリングを備えることができる。プラテンは、頂部部分が第1の回転取り付け部材によって取り付けられる中間部分、及びこの中間部分が第2の回転取り付け部材によって取り付けられる基体部分を備えることができる。駆動機構は、頂部部分を、第1の回転取り付け部材の周りに中間部分に対して回転させるとともに、中間部分を、第2の回転取り付け部材の周りに基体部分に対して回転させるように構成することができる。
【0012】
プラテンは、基板の締め付け固定中に加えられる締め付け固定力を測定するように配置された複数のロードセルを備えることができる。駆動機構は、頂部部分及び/又は中間部分を回転させて、前記締め付け固定力をバランスさせるように構成することができる。ロードセルは、プラテンの頂部部分の第1部分と第2部分との間に配置することができるか、又は基体部分の下に配置することができる。いずれの場合においても、ロードセルは、2つの
直交する軸と位置合わせすることができる。
【0013】
或る実施形態において、第1の鋳型チェイスは、頂部部分に複数のばねによって結合した締め付け固定プレートを備えることができ、締め付け固定プレートは、締め付け固定プレートの異なる場所においてばねの圧縮を測定するように配置された複数のゲージセンサを備える。駆動機構は、頂部部分及び/又は中間部分を回転させて、異なる場所における測定されたばねの圧縮の差を最小化させるように構成することができる。ゲージセンサは、2つの
直交する軸と一直線に配置することができる。
【0014】
本発明の実施形態が、添付の図面を参照しつつ、限定するものではない例示によって以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による成形プレスの、締め付け固定していない構成における側面図である。
【
図3】締め付け固定している構成における
図1の成形プレスの側面図である。
【
図4】
図1の成形プレスの下側プラテンの側面図である。
【
図7】ピッチ・エンド・ロール方向調整機構を示す、プラテンの側面図である。
【
図8】ピッチ・エンド・ロール方向調整機構を示す、プラテンの側面図である。
【
図9】圧縮成形プロセス中のピッチ・エンド・ロール調整を示す、下側プラテンの代替的実施形態の断面図である。
【
図10】圧縮成形プロセス中のピッチ・エンド・ロール調整を示す、下側プラテンの代替的実施形態の断面図である。
【
図11】圧縮成形プロセス中のピッチ・エンド・ロール調整を示す、下側プラテンの代替的実施形態の断面図である。
【
図12】トランスファー成形プロセス中のピッチ・エンド・ロール調整を示す、下側プラテンの代替的実施形態の断面図である。
【
図13】トランスファー成形プロセス中のピッチ・エンド・ロール調整を示す、下側プラテンの代替的実施形態の断面図である。
【
図14】トランスファー成形プロセス中のピッチ・エンド・ロール調整を示す、下側プラテンの代替的実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に
図1及び
図2を参照すると、上側(第1の)プラテン110と下側(第2の)プラテン120とを有する成形プレス100が示されている。成形プレスは開かれた、又は締め付け固定されていない構成にある。作動時には、上側プラテン110は下側プラテンに向かって、既知の構成のトグル機構114を使用して付勢されて、
図3に示すように、成形手順を行う前に基板130を、上側プラテン110と下側プラテン120との間に締め付け固定する。下側プラテン120は角度調整機構を有し、この角度調整機構は、上側プラテン及び下側プラテンの鋳型
チェイスの平坦面の相対的な方向を調整して、以下に詳細に説明する方法で、基板の不均一さを補正(account for)するために使用することができる。
図1〜3に示された成形プレス100は、特に圧縮成形に好適であるが、下側プラテン120に対して後述する角度調整機構は、上側プラテン110にも同様に適用可能であり、また、明らかとなるようにトランスファー成形プロセスにも同様に適用可能である。
【0017】
上側プラテン110は上側(第1)鋳型
チェイス112を担持し、この上側鋳型
チェイス112に基板130を真空によって固定することができる。下側プラテン120は下側(第2)鋳型
チェイス122を担持し、トグル機構114が駆動されると、
図3に示すように、この下側鋳型
チェイスに対して、上側鋳型
チェイス112が締め付け固定される。
【0018】
下側プラテン120は、中間部分126に回転可能に取り付けられた頂部部分124を備え、中間部分126は基体部分128に回転可能に取り付けられている。下側プラテン120もまた、例えば(図示されない)汎用コンピュータシステムに結合した既知のマイクロコントローラを使用する、頂部部分、中間部分、基体部分の相対的動きを制御するための駆動機構を備える。
【0019】
明瞭化のために駆動機構140が省略されている
図4及び
図5に示されるように、下側プラテン120は回転取り付け装置(1対の回転取り付け部材220及び222として示されている)を備える。回転取り付け部材220、222それぞれは、一連の円筒状ローラを部分的に環状の軌道に備えるローラベアリング機構を備える。好都合なことに、回転取り付け部材220、222の使用は、構造的に過剰に制限されたシステムをもたらすブッシング機構若しくは案内機構又はその種の機構を使用することなく、下側鋳型
チェイス122の枢動を可能にする。
【0020】
プラテン120の頂部部分124は上部124A及び下部124Bを備え、第1の回転取り付け部材222によって中間部分126に取り付けられ、中間部分126は、第2の回転取り付け部材220によって基体部分128に取り付けられている。回転取り付け部材220、222は、頂部部分124、中間部分126、及び基体部分128が、2つの
直交軸230及び232の周りに互いに対して回転することができる状態で、下側プラテン120に対する2つの回転自由度を提供し、
直交軸230と232とは、下側鋳型チェイス122の上面を貫通する平面の中心234で会う(
図6)。断面において、軌道それぞれは円の一部を形成し、2つの
直交軸230、232の交差点234にその中心を有する。
【0021】
したがって、頂部ユニット124、中間ユニット126、及び基体ユニット128は取り付け部材220、222とともにピッチ・アンド・ロール機構を提供して、
図7及び
図8に示されるように、中心234の周りの上面の枢動を介する、下側鋳型
チェイス122の上面における基板の角度的位置合わせを可能にする。ピッチ・アンド・ロール機構は受動的であり、それによって頂部部分124及び中間部分126は、締め付け固定プレート122の端部又は角部それぞれにおける接触力の違いに応じてローラベアリング上で自然に回転する。しかし、能動的駆動機構140を使用することは特に好都合であり、能動的駆動機構140は、頂部部分124及び中間部分126を接触力における測定された違いに応じて駆動し、測定された違いは、後述するようにゲージセンサ及び/又はロードセルを使用して得られる。
【0022】
下側鋳型
チェイス122は締め付け固定プレート122Aを備え、締め付け固定プレート122Aは、この締め付け固定プレート122Aの下側表面の周縁周りに延びる複数のばね123によって頂部部分124に弾性的に結合されている。締め付け固定プレート122Aは面122Bを有する露出した内部領域を有し、面122Bは、基板が上側鋳型
チェイス122と下側鋳型
チェイス122との間に締め付け固定されているときには基板130の方に面している。基板が保持される上側鋳型
チェイス112の表面は、このように第1の平面を画定し、一方で下側鋳型
チェイス122は第2の平面を画定する。基板130が締め付け固定されると、成形用キャビティは基板と、基板に面する面122Bと、の間に画定され、面122Bは、(
図5に示されるように)下側プラテン120の頂面又は部分的な頂面とすることができ、或いは代替的に頂部部分124内に取り付けられて上側鋳型
チェイス112に向かって軸に沿った往復運動を行い、それによって成形用樹脂を成形用キャビティ内で圧縮するプランジャーの上面とすることができる。
【0023】
下側プラテン120は、複数のロードセル204、206と、複数のゲージセンサ200、202とをさらに備え、ゲージセンサは例えば誘導センサとすることができる。
【0024】
図4に示されるように、第1のゲージセンサ200それぞれは、光ビームをターゲット210に向かって送信するように構成されているとともに、ビーム210とターゲット210との間の距離を測定された反射ビームに照らして測定するように構成された光ビームコンポーネント201をさらに備える。ターゲット210は、締め付け固定プレート122Aの第1の対向する一対の端部から延在しており、「ロール」軸230に位置合わせされる。ビームコンポーネント201は下側プラテン120の頂部部分124の第1の対向する一対の端部から延在し、同様に軸230に、また、ターゲット210それぞれに位置合わせされる。したがって、ゲージセンサ200はばね123の圧縮及び伸張による距離の変化を検知するように配置されている。より具体的には、ゲージセンサ200は、締め付け固定プレート122Aの対向する端部に加えられた接触力におけるアンバランスを、端部におけるばねの圧縮の差、したがってビームコンポーネント201と、ターゲット210と、の間の距離の差によって検知することができ、測定された差は次いで頂部部分124の角度方向を調節するために使用することができる。
【0025】
同様に、
図5に示されるように、第2のゲージセンサ202それぞれは、締め付け固定プレート122Aの対向する一対の端部の一方から延在するターゲットを備え、「ロール」軸230に垂直な「ピッチ」軸232に位置合わせされる。第2のゲージセンサ202のそれぞれはまた、下側プラテン120の頂部部分124の対向する端部それぞれから延在するビームコンポーネント203をも備え、このビームコンポーネント203は、軸230に位置合わせされ、ターゲット212それぞれにも位置合わせされている。
【0026】
ロードセル204、206は下側プラテン120の頂部部分124内で、特に上側部分124Aと下側部分124Bとの間に配置され、締め付け固定プレート122Aに加えられる接触力における差をモニターする代替的な機構を提供する。ロードセルは、締め付け固定プレート122Aの上面に作用する圧縮力を測定するように構成される。第1のロードセル204は、締め付け固定プレート122Aの第1の対向する端部それぞれの略下に配置され、第2のロードセル206は、締め付け固定プレート122Aの第2の対向する端部それぞれの略下に配置されている。第1のロードセル204は「ロール」軸230に位置合わせされており、第2のロードセル206は「ピッチ」軸232に位置合わせされている。
【0027】
ロードセル204、206が締め付け固定力のアンバランスを検知するために使用され、それによって、例えばトランスファー成形プロセスにおいて角度アラインメントのための駆動機構140にフィードバックを提供する場合には、締め付け固定プレート122Aの頂部部分124への弾性的結合は、柔軟性の無い接続に置き換えられてもよく、ゲージセンサ200、202が省略されてもよい。
【0028】
圧縮成形中の上側鋳型
チェイスの表面と下側鋳型
チェイスの表面との角度アラインメントの例が、ここに
図9〜11を参照して記載される。まず
図9を参照すると、成形プレス300は、基板130が表面313において真空によって固定される、上側(第1の)鋳型
チェイス310を有する上側(第1の)プラテンを有する。成形プレス300はまた、角度アラインメント機構を有する下側(第2の)プラテン320を有し、角度アラインメント機構は、下側プラテン120に関連して上述したのと同様の形で作動される。下側プラテン320は1対の回転取り付け部材を備える回転取り付け装置を有するが、1つの回転取り付け部材316(下側プラテン120の回転取り付け部材220に相当)のみが例示目的のために示されている。下側プラテン320の頂部部分324は(図示されない)中間部分に取り付けられ、この中間部分は基体部分328に回転取り付け部材316によって取り付けられ、それによって上部部分324及び中間部分は、回転取り付け部材316上で基体部分328に対して回転することができる。
【0029】
頂部部分324の対向する端部から延在しているのは、ゲージセンサそれぞれのビームコンポーネント302A及び302Bである。対応するターゲット312A及び312Bは、下側(第2の)プラテン320の下側鋳型
チェイスの締め付け固定プレート322の対向する端部から延在しており、この締め付け固定プレート322はばね323A及び323Bによって頂部部分324にその周縁において結合されている。ビームコンポーネント302A及び302Bはそれぞれのターゲット312A及び312Bに位置合わせされるとともに、既に記載したように、締め付け固定プレート322の上面によって画定された平面の中心を通過する(図示されない)軸とも位置合わせされている。上部部分324は、上側表面342を有するパッキングプランジャー340を有し、この上側表面342は、基板130が上側鋳型
チェイスと下側鋳型
チェイスとの間に締め付け固定されているときには基板130に面している。パッキングプランジャー340は、静止コンポーネントとするか、又は上部部分324内に往復運動のために取り付けることができ、それによってプランジャーの上面342と基板130との間に画定された成形キャビティ中に充填された成形樹脂を圧縮する。
【0030】
図9において、成形プレス300は締め付け固定していない構成にあり、ばね232A及び323Bは締め付け固定プレート322の重量によってのみ圧縮されている。ビームコンポーネント302Aとターゲット312Aとの間の距離はAであり、ビームコンポーネント302Bとターゲット312Bとの間の距離はBである。締め付け固定する前には、AはBと、量a=|A−B|だけ異なる。
【0031】
上側鋳型
チェイス310の面313に保持された基板130は下側鋳型
チェイスに面する面131を有し、この面131は面313又はパッキングプランジャー340の上面342に平行ではない。したがって、上側鋳型
チェイスの面313によって画定される第1の平面が上面342によって画定される第2の平面に平行であったとしても、成形プレスが、基板130が締め付け固定プレート322に対してプレスされている締め付け固定構成にある場合には、表面131とプランジャーの(基板に面している)上面342との間に形成された成形用キャビティ350は均一ではない(
図10参照)。
【0032】
成形用キャビティ350の不均一さを解決するために、(例えば駆動機構140と同様の)駆動機構に結合したマイクロプロセッサが、基板130が締め付け固定プレート322に対して締め付け固定されている際に、ゲージセンサ(302A、312A)及び(302B、312B)からフィードバックを受け取る。基板130は締め付け固定プレート322の端部「A」においてわずかに厚く、それによって基板の端部は締め付け固定プレート322に最初に接触する。そのため、基板はばね323Aを圧縮し始め、それによって距離Aが減少し始める。上側鋳型
チェイス310は、基板の対向する端部が締め付け固定プレート322の端部「B」に接触するまで、締め付け固定プレート322を押し下げ続ける。この時点で、ゲージセンサはAより小さい距離A’と、締め付け固定プレート322の動きによってBより大きい場合があるB’とを測定する。ここでマイクロプロセッサは、もはやaと同じではない差|A’−B’|を認識するので、基板の表面131に不均一があること、及び封止中の基板の表面131とパッキングプランジャーの表面342との間の平行度を確保するために修正が必要であることが明らかとなる。この場合、マイクロプロセッサは、端部「A」においてより大きな圧縮があり、したがって、駆動機構140は、距離A”と距離B”との間の差が当初に測定された差a(
図11参照)に近づくまで、頂部部分324を回転取り付け部材316上で端部「A」に向かって回転させるように駆動されなければならないことを検知する。これはプランジャーの上面によって画定された平面の方向を変えさせて、
図11の成形用キャビティ350’に示されるように、プランジャーの上面342は基板の表面131に平行になる。この時点で、成形用キャビティ350’中の樹脂を加熱することができ、パッキングプランジャー342は基板の表面131に向かって付勢され、樹脂は次いで基板表面131上の半導体チップを実質的に均一な成形キャップで封止するように硬化され、それによって半導体チップ上に形成される。
【0033】
トランスファー成形プロセス中の上側及び下側鋳型
チェイスの表面の角度アラインメントの例が、
図12〜14を参照しつつ、以下に記載される。
図12では、トランスファー成形プレスは、上側(第1の)鋳型
チェイス412を有する上側(第1の)プラテンと、1対の下側(第2の)プラテン420A及び420Bと、を備え、1対の下側(第2の)プラテン420A及び420Bそれぞれは、基板に面する面422A及び422Bそれぞれを備える下側(第2の)鋳型
チェイスを有する。基板130A及び130Bは、真空によって基板に面する面422A及び422Bそれぞれに対して保持することができる。
【0034】
上側鋳型
チェイス412は、プランジャーポットと、流路を有するランナーシステム460とを備え、基板130A及び130Bが締め付け固定されているときには、トランスファー成形プロセス中にプランジャー470によって、この流路を通じて溶融した樹脂を、表面414Aと基板130Aとの間、及び基板130Aと基板130Bとの間に形成された成形用キャビティ中に射出することができる。対応する下側プラテン420A、420B、等それぞれの下側鋳型
チェイスと協働するように、何個かの凹部を上側鋳型
チェイス412に形成することができることが理解される。いくつかの実施形態においては、上側鋳型
チェイス412の1つの凹部と協働する1つの下側プラテンだけを採用することができるが、1つの上側プラテンに対して複数の下側プラテンを提供することが操作上、より効率的である。
【0035】
図13に示されるように、上側プラテン及び上側鋳型
チェイスは下側プラテン420A、420Bに向かって(又は、必要に応じて逆に、実線の矢印によって示す方向に)付勢される。上側鋳型
チェイス412は、下側鋳型
チェイス422A、422B上に保持された基板130A及び130Bに接触するので、そのことは、それぞれの基板に対する表面の不均一さに遭遇させる。基板130Aは、一方の端部138Aにおいて他の端部136Aにおけるより厚く、それによって上側鋳型
チェイス412の第1の凹部の端部438Aは、端部436Aが基板の端部136aに接触する前に、基板の端部138Aに接触する。このように、
図13からは、基板130Aが端部136Aにおいては締め付け固定されていないので、表面414Aと基板130Aとの間の鋳型キャビティ450Aは適切に形成されていないことを読み取ることができる。同様に、基板130Bは適切に端縁138Bにおいて締め付け固定されておらず、それによって、鋳型キャビティ450Bは第2の下側
チェイス422Bにおいて適切に形成されていない。
【0036】
成形用キャビティを正しく形成するために、第1の下側プラテン420Aのロードセル402A及び404Aと、第2の下側プラテン420Bのロードセル402B及び404Bとは、端部それぞれにおける圧縮力の差を測定し、下側プラテンの独立した駆動機構それぞれにフィードバックを提供するように使用される。下側プラテン420Aでは、ロードセル402Aがロードセル404Aより小さい力を測定し、それによって駆動機構は頂部部分424A及び中間部分426Aを、ローラベアリング416A上の底部部分428Aに対して基板130Aの端部138Aの方向に回転させるように駆動される。駆動機構は、ロードセル402A及び404Aにおける力がバランスするまで作動する。同様の原理が、ロードセル402Bにおける力がロードセル404Bにおけるより大きいと測定されることを除いて、第2の下側プラテン420Bに適用され、それによって頂部部分424B及び中間部分426Bは、第1の下側プラテン420Aの対応する部分とは逆の方向に回転される必要がある。一旦力がバランスされると、適切に形成された成形用キャビティ450A’及び450B’が得られ、表面414A及び414Bは、基板130A及び130Bそれぞれに対して平行となる。この時点で、ポットに充填された樹脂の分量(charge)472を加熱することができ、溶融した樹脂はプランジャーポット/ランナーシステムを通じてキャビティ450A’及び450B’に押し込まれ、硬化されて、成形プロセスを完了する。
【0037】
本発明の特定の実施形態が詳細に説明されてきたが、多くの変形及び変化が、当業者の読者には明確であるように、本発明の技術的範囲内において可能である。例えば、上述したような下側プラテン120の回転取り付け部材220、222を、代わりに上側プラテン110内に組み込むことができ、それによって、基板と対向する成形用キャビティの表面との間で共平面性を達成することができる。代替的に、上側プラテン110及び下側プラテン120は対応する回転取り付け部材を備えて、望ましい目的を達成することができる。例えば、プラテン110、120それぞれが、ローラベアリングのような少なくとも1つの回転取り付け部材を備える回転取り付け装置を備えることができる。さらにまた、上側鋳型チェイス112又は下側鋳型チェイス122は、基板に面する表面の中心を通過する少なくとも1つの軸の回りに回転取り付け装置上で回転可能であり、それによってその間に基板を締め付け固定するための上側鋳型チェイス及び下側鋳型チェイスの表面の相対的な配置を調節する。1つの変形においては、上側鋳型チェイス112を第1の軸の回りに回転可能とすることができ、さらに下側鋳型チェイス122は、第1の軸に垂直な第2の軸の周りに回転可能である。別の変形においては、上側鋳型チェイス112及び下側鋳型チェイス122を、基板に面する表面の中心を通過する2つの
直交する軸の回りに回転可能とすることができる。
【符号の説明】
【0038】
110、310 上側プラテン
120、320 下側プラテン
100 成形プレス
114 トグル機構
130 基板
112、313 第1の鋳型
チェイス(上側鋳型
チェイス)
122 第2の鋳型
チェイス(下側鋳型
チェイス)
126、326 中間部分
124、324 頂部部分
128,328 基体部分
140 駆動機構
220、222、316 回転取り付け部材
230、232 軸
234 交差点
122A、322 締め付け固定プレート
123、232A、323B ばね
204、206 ロードセル
200、202 ゲージセンサ
210、212、312A、312B ターゲット
201、203、302A、302B 光ビームコンポーネント
300 成形プレス
350 成形用キャビティ