特許第6133958号(P6133958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6133958ガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133958
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/187 20060101AFI20170515BHJP
   C03B 5/182 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   C03B5/187
   C03B5/182
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-206606(P2015-206606)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2016-88837(P2016-88837A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年10月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-222491(P2014-222491)
(32)【優先日】2014年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508271425
【氏名又は名称】安瀚視特股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】AvanStrate Taiwan Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】月向 仁志
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−204357(JP,A)
【文献】 特表2014−514239(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/073059(WO,A1)
【文献】 特開2015−174806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00−5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料を熔解して熔融ガラスを得る熔解工程と、前記熔解工程で得られた前記熔融ガラスを清澄する清澄工程と、前記清澄工程で清澄された前記熔融ガラスを攪拌する攪拌工程と、前記攪拌工程で攪拌された前記熔融ガラスからガラス基板を成形する成形工程とを備えるガラス基板の製造方法であって、
前記攪拌工程は、
前記熔融ガラスを上流側導管に流して、前記上流側導管と接続される第1攪拌槽に前記熔融ガラスを供給する供給工程と、
前記第1攪拌槽内において、前記供給工程で供給された前記熔融ガラスを、鉛直方向に沿った第1方向に導きながら攪拌する第1攪拌工程と、
前記第1攪拌工程で攪拌された前記熔融ガラスを、前記第1攪拌槽と第2攪拌槽とを接続する接続管に流して前記第2攪拌槽に移送する移送工程と、
前記第2攪拌槽内において、前記移送工程で移送された前記熔融ガラスを、前記第1方向の反対方向に導きながら攪拌する第2攪拌工程と
を有し、
前記清澄工程では、前記ガラス原料に含まれる清澄剤の還元により、前記熔融ガラスに含まれる泡を前記熔融ガラスの液面に浮上させて消滅させ、
前記移送工程では、前記熔融ガラスと異なる比重を有する異質ガラスが前記接続管に流入し、前記接続管において前記異質ガラスの流れの高さ位置が変化する、
ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記異質ガラスは、前記熔融ガラスよりも比重が小さく、
前記第1方向は、下方から上方に向かう方向であり、
前記供給工程では、前記異質ガラスが、前記上流側導管の上部を流れ、
前記第1攪拌工程では、前記供給工程において前記上流側導管の上部を流れた前記異質ガラスが、前記第1攪拌槽の側面を伝いながら上昇し、
前記移送工程では、前記第1攪拌工程において前記第1攪拌槽の側面を伝いながら上昇した前記異質ガラスが、前記接続管の下部を流れた後に、前記接続管内で上昇し、
前記第2攪拌工程では、前記移送工程において前記接続管内で上昇した前記異質ガラスが、前記熔融ガラスと共に攪拌される、
請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記異質ガラスは、前記熔融ガラスよりも比重が大きく、
前記第1方向は、上方から下方に向かう方向であり、
前記供給工程では、前記異質ガラスが、前記上流側導管の下部を流れ、
前記第1攪拌工程では、前記供給工程において前記上流側導管の下部を流れた前記異質ガラスが、前記第1攪拌槽の側面を伝いながら下降し、
前記移送工程では、前記第1攪拌工程において前記第1攪拌槽の側面を伝いながら下降した前記異質ガラスが、前記接続管の上部を流れた後に、前記接続管内で下降し、
前記第2攪拌工程では、前記移送工程において前記接続管内で下降した前記異質ガラスが、前記熔融ガラスと共に攪拌される、
請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
ガラス原料を熔解して熔融ガラスを得る熔解装置と、前記熔解装置によって得られた前記熔融ガラスを清澄する清澄装置と、前記清澄装置によって清澄された前記熔融ガラスを攪拌する攪拌装置と、前記攪拌装置によって攪拌された前記熔融ガラスからガラス基板を成形する成形装置とを備えるガラス基板の製造装置であって、
前記清澄装置は、前記ガラス原料に含まれる清澄剤の還元により、前記熔融ガラスに含まれる泡を前記熔融ガラスの液面に浮上させて消滅させ、
前記攪拌装置は、
第1攪拌槽と、
第2攪拌槽と、
前記第1攪拌槽内に設置され、前記第1攪拌槽内の前記熔融ガラスを、鉛直方向に沿った第1方向に導きながら攪拌するための第1攪拌器と、
前記第2攪拌槽内に設置され、前記第2攪拌槽内の前記熔融ガラスを、前記第1方向の反対方向に導きながら攪拌するための第2攪拌器と、
前記第1攪拌槽の側部と接続され、前記第1攪拌槽に前記熔融ガラスを供給するための上流側導管と、
前記第1攪拌槽の側部と前記第2攪拌槽の側部とを接続し、前記第1攪拌槽から前記第2攪拌槽に前記熔融ガラスを移送するための接続管と、
前記第2攪拌槽の側部と接続され、前記第2攪拌槽内から前記熔融ガラスを流出させるための下流側導管と、
を備え、
前記接続管は、前記接続管内に設置される流路変更部材を有し、かつ、前記熔融ガラスと異なる比重を有する異質ガラスが流入し、
前記流路変更部材は、前記接続管に流入した前記異質ガラスの流れの高さ位置を変化させる、
ガラス基板の製造装置。
【請求項5】
前記流路変更部材は、前記接続管内の流れを捩じることによって、前記異質ガラスの流れの高さ位置を変化させる、
請求項4に記載のガラス基板の製造装置。
【請求項6】
前記異質ガラスは、前記熔融ガラスよりも比重が小さく、
前記第1方向は、下方から上方に向かう方向であり、
前記上流側導管は、前記第1攪拌槽の下方側部と接続され、
前記接続管は、前記第1攪拌槽の上方側部と前記第2攪拌槽の上方側部とを接続し、
前記下流側導管は、前記第2攪拌槽の下方側部と接続され、
前記流路変更部材は、前記接続管の下部を流れる前記異質ガラスを上昇させる、
請求項4または5に記載のガラス基板の製造装置。
【請求項7】
前記異質ガラスは、前記熔融ガラスよりも比重が大きく、
前記第1方向は、上方から下方に向かう方向であり、
前記上流側導管は、前記第1攪拌槽の上方側部と接続され、
前記接続管は、前記第1攪拌槽の下方側部と前記第2攪拌槽の下方側部とを接続し、
前記下流側導管は、前記第2攪拌槽の上方側部と接続され、
前記流路変更部材は、前記接続管の上部を流れる前記異質ガラスを下降させる、
請求項4または5に記載のガラス基板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等のガラス製品の量産工程では、ガラス原料を加熱して得られた熔融ガラスを成形して、ガラス基板等のガラス製品が製造される。熔融ガラスが均質でない場合、ガラス製品に脈理が発生することがある。脈理は、周囲とは屈折率や比重が異なる筋状の領域である。液晶ディスプレイ(LCD)用基板等の用途においては、脈理は、ガラス製品から排除することが求められる。脈理の発生を防ぐために、例えば、特許文献1(特開2010−100462号公報)に記載されているように、円筒形状の攪拌槽と、攪拌槽内に設置される攪拌器とを備える攪拌装置を用いて、熔融ガラスを攪拌して均質化することが行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、攪拌装置には、熔融ガラスと共に、熔融ガラスとは異なる成分および比重を有する異質ガラスが流入することがある。そのため、攪拌装置を用いて熔融ガラスを攪拌しても、異質ガラスが熔融ガラスと混ざり合わずに攪拌槽から流出することにより、熔融ガラスが均質化されないという問題が発生するおそれがある。不均質な熔融ガラスから製造されたガラス基板は、脈理が発生している可能性がある。そのため、攪拌装置において、異質ガラスを取り除いたり、異質ガラスを熔融ガラスと共に攪拌して互いに混ぜ合わせたりすることで、熔融ガラスを均質化することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献2(特開2007−204357号公報)には、直列に連結された複数の攪拌装置のそれぞれにおいて熔融ガラスを順に攪拌することで、熔融ガラスを均質化する攪拌装置が開示されている。しかし、複数の攪拌装置を用いたとしても、異質ガラスが熔融ガラスと共に攪拌されずに攪拌装置から流出することにより、熔融ガラスが均質に攪拌されず、成形されたガラス基板に脈理が発生するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、熔融ガラスを均質に攪拌することができるガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガラス基板の製造方法は、ガラス原料を熔解して熔融ガラスを得る熔解工程と、熔解工程で得られた熔融ガラスを攪拌する攪拌工程と、攪拌工程で攪拌された熔融ガラスからガラス基板を成形する成形工程とを備える。攪拌工程は、供給工程と、第1攪拌工程と、移送工程と、第2攪拌工程とを有する。供給工程は、熔融ガラスを上流側導管に流して、上流側導管と接続される第1攪拌槽に熔融ガラスを供給する。第1攪拌工程は、第1攪拌槽内において、供給工程で供給された熔融ガラスを、鉛直方向に沿った第1方向に導きながら攪拌する。移送工程は、第1攪拌工程で攪拌された熔融ガラスを、第1攪拌槽と第2攪拌槽とを接続する接続管に流して第2攪拌槽に移送する。第2攪拌工程は、第2攪拌槽内において、移送工程で移送された熔融ガラスを、第1方向の反対方向に導きながら攪拌する。移送工程では、熔融ガラスと異なる比重を有する異質ガラスが接続管に流入し、接続管において異質ガラスの流れの高さ位置が変化する。
【0007】
このガラス基板の製造方法では、攪拌工程において、熔融ガラスは、第1攪拌槽および第2攪拌槽で攪拌される。第1攪拌槽で攪拌された熔融ガラスは、接続管を介して第2攪拌槽へ送られる。熔融ガラスと共に第1攪拌槽に供給され、熔融ガラスと異なる比重を有する異質ガラスは、第1攪拌槽で攪拌されることなく、接続管に流入することがある。接続管内では、異質ガラスの流れの高さ位置が変化して、接続管内の表面から離れた異質ガラスが第2攪拌槽に供給される。これにより、第2攪拌槽では、異質ガラスが熔融ガラスと共に攪拌される。そのため、異質ガラスが、熔融ガラスと共に攪拌されずに攪拌工程の後工程に流出することが防止される。従って、このガラス基板の製造方法は、熔融ガラスを均質に攪拌することができ、ガラス基板の脈理の発生を抑制して、高品質のガラス基板を製造することができる。
【0008】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法では、異質ガラスは、熔融ガラスよりも比重が小さく、第1方向は、下方から上方に向かう方向であることが好ましい。この場合、供給工程では、異質ガラスが、上流側導管の上部を流れる。第1攪拌工程では、供給工程において上流側導管の上部を流れた異質ガラスが、第1攪拌槽の側面を伝いながら上昇する。移送工程では、第1攪拌工程において第1攪拌槽の側面を伝いながら上昇した異質ガラスが、接続管の下部を流れた後に、接続管内で上昇する。第2攪拌工程では、移送工程において接続管内で上昇した異質ガラスが、熔融ガラスと共に攪拌される。
【0009】
このガラス基板の製造方法では、第1攪拌槽では、熔融ガラスは下方から上方へと導かれながら攪拌される。第2攪拌槽では、熔融ガラスは上方から下方へと導かれながら攪拌される。熔融ガラスよりも比重が小さい異質ガラスは、接続管に流入すると、接続管の下部を流れる。その後、異質ガラスは、接続管内で上昇して第2攪拌槽に供給され、第2攪拌槽内で熔融ガラスと共に攪拌される。従って、このガラス基板の製造方法は、熔融ガラスを均質に攪拌することができ、ガラス基板の脈理の発生を抑制して、高品質のガラス基板を製造することができる。
【0010】
また、本発明に係るガラス基板の製造方法では、異質ガラスは、熔融ガラスよりも比重が大きく、第1方向は、上方から下方に向かう方向であることが好ましい。この場合、供給工程では、異質ガラスが、上流側導管の下部を流れる。第1攪拌工程では、供給工程において上流側導管の下部を流れた異質ガラスが、第1攪拌槽の側面を伝いながら下降する。移送工程では、第1攪拌工程において第1攪拌槽の側面を伝いながら下降した異質ガラスが、接続管の上部を流れた後に、接続管内で下降する。第2攪拌工程では、移送工程において接続管内で下降した異質ガラスが、熔融ガラスと共に攪拌される。
【0011】
このガラス基板の製造方法では、第1攪拌槽では、熔融ガラスは上方から下方へと導かれながら攪拌される。第2攪拌槽では、熔融ガラスは下方から上方へと導かれながら攪拌される。熔融ガラスよりも比重が大きい異質ガラスは、接続管に流入すると、接続管の上部を流れる。その後、異質ガラスは、接続管内で下降して第2攪拌槽に供給され、第2攪拌槽内で熔融ガラスと共に攪拌される。従って、このガラス基板の製造方法は、熔融ガラスを均質に攪拌することができ、ガラス基板の脈理の発生を抑制して、高品質のガラス基板を製造することができる。
【0012】
本発明に係るガラス基板の製造装置は、熔融ガラスを攪拌する攪拌装置と、攪拌装置によって攪拌された熔融ガラスからガラス基板を成形する成形装置とを備える。攪拌装置は、第1攪拌槽と、第2攪拌槽と、第1攪拌器と、第2攪拌器と、上流側導管と、接続管と、下流側導管とを備える。第1攪拌器は、第1攪拌槽内に設置され、第1攪拌槽内の熔融ガラスを、鉛直方向に沿った第1方向に導きながら攪拌する。第2攪拌器は、第2攪拌槽内に設置され、第2攪拌槽内の熔融ガラスを、第1方向の反対方向に導きながら攪拌する。上流側導管は、第1攪拌槽の側部と接続され、第1攪拌槽に熔融ガラスを供給する。接続管は、第1攪拌槽の側部と第2攪拌槽の側部とを接続し、第1攪拌槽から第2攪拌槽に熔融ガラスを移送する。下流側導管は、第2攪拌槽の側部と接続され、第2攪拌槽内から熔融ガラスを流出させる。接続管は、接続管内に設置される流路変更部材を有し、かつ、熔融ガラスと異なる比重を有する異質ガラスが流入する。流路変更部材は、接続管に流入した異質ガラスの流れの高さ位置を変化させる。
【0013】
また、本発明に係るガラス基板の製造装置では、流路変更部材は、接続管内の流れを捩じることによって、異質ガラスの流れの高さ位置を変化させる。
【0014】
また、本発明に係るガラス基板の製造装置では、異質ガラスは、熔融ガラスよりも比重が小さく、第1方向は、下方から上方に向かう方向であることが好ましい。この場合、上流側導管は、第1攪拌槽の下方側部と接続される。接続管は、第1攪拌槽の上方側部と第2攪拌槽の上方側部とを接続する。下流側導管は、第2攪拌槽の下方側部と接続される。流路変更部材は、接続管の下部を流れる異質ガラスを上昇させる。
【0015】
また、本発明に係るガラス基板の製造装置では、異質ガラスは、熔融ガラスよりも比重が大きく、第1方向は、上方から下方に向かう方向であることが好ましい。この場合、上流側導管は、第1攪拌槽の上方側部と接続される。接続管は、第1攪拌槽の下方側部と第2攪拌槽の下方側部とを接続する。下流側導管は、第2攪拌槽の上方側部と接続される。流路変更部材は、接続管の上部を流れる異質ガラスを下降させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るガラス基板の製造方法、および、ガラス基板の製造装置は、熔融ガラスを均質に攪拌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るガラス基板の製造方法のフローチャートである。
図2】熔解工程から切断工程までを行う装置の模式図である。
図3】攪拌装置の側面図である。
図4】第1攪拌器の斜視図である。
図5】第2攪拌器の斜視図である。
図6】接続管内に設置されている流路変更部材の拡大図である
図7】攪拌装置における熔融ガラスの流れを表す図である。
図8】攪拌装置における異質ガラスの流れを表す図である。
図9】参考例としての、従来の攪拌装置における異質ガラスの流れを表す図である。
図10】変形例Aにおける、攪拌装置における熔融ガラスの流れを表す図である。
図11】変形例Aにおける、攪拌装置における異質ガラスの流れを表す図である。
図12】異質ガラスが、上流側導管、接続管および下流側導管を順に流れる様子を示す図である。
図13】接続管の上流側において熔融ガラスが攪拌される位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態としてのガラス基板の製造方法について、図面を参照しながら説明する。本実施形態のガラス基板の製造方法では、オーバーフローダウンドロー法によりガラス基板が製造される。
【0019】
(1)ガラス基板の製造工程の概要
最初に、ガラス基板の製造工程について説明する。ガラス基板は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイおよび有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板、タッチパネル用のガラス基板、太陽電池パネル用のガラス基板、および、保護用のガラス基板等として用いられる。ガラス基板は、例えば、0.3mm未満の厚みを有し、かつ、縦680mm〜2200mmおよび横880mm〜2500mmの寸法を有する。
【0020】
ガラス基板の一例として、以下の(a)〜(j)の組成を有するガラス基板が挙げられる。
【0021】
(a)SiO2:50質量%〜70質量%、
(b)Al23:10質量%〜25質量%、
(c)B23:1質量%〜18質量%、
(d)MgO:0質量%〜10質量%、
(e)CaO:0質量%〜20質量%、
(f)SrO:0質量%〜20質量%、
(g)BaO:0質量%〜10質量%、
(h)RO:5質量%〜20質量%(Rは、Mg、Ca、SrおよびBaから選択される少なくとも1種である。)、
(i)R’2O:0質量%〜2.0質量%(R’は、Li、NaおよびKから選択される少なくとも1種である。)、
(j)SnO2、Fe23およびCeO2から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物。
【0022】
なお、上記の組成を有するガラスは、0.1質量%未満の範囲で、その他の微量成分の存在が許容される。
【0023】
図1は、ガラス基板の製造工程を表すフローチャートの一例である。ガラス基板の製造工程は、主として、熔解工程(ステップS1)と、清澄工程(ステップS2)と、攪拌工程(ステップS3)と、成形工程(ステップS4)と、徐冷工程(ステップS5)と、切断工程(ステップS6)と、研削工程(ステップS7)と、研磨工程(ステップS8)とからなる。
【0024】
図2は、熔解工程S1から成形工程S4までを行うガラス基板製造装置200の模式図である。ガラス基板製造装置200は、熔解槽40と、清澄槽41と、攪拌装置100と、成形装置42とを備えている。熔解槽40と清澄槽41とは、第1導管43aによって接続されている。清澄槽41と攪拌装置100とは、第2導管43bによって接続されている。攪拌装置100と成形装置42とは、第3導管43cによって接続されている。
【0025】
熔解工程S1では、熔解槽40において、バーナー等の加熱手段によりガラス原料が熔解され、1500℃〜1600℃の高温の熔融ガラス90が生成される。ガラス原料は、所望の組成の熔融ガラスを実質的に得ることができるように調製される。ここで、「実質的に」とは、0.1質量%未満の範囲で、その他の微量成分の存在が許容されることを意味する。熔解槽40で生成された熔融ガラス90は、第1導管43aを通過して清澄槽41に流入する。
【0026】
清澄工程S2では、清澄槽41において、熔解工程S1で生成された熔融ガラス90をさらに昇温させることで、熔融ガラス90の清澄が行われる。清澄槽41において、熔融ガラス90の温度は、1600℃〜1750℃、好ましくは1650℃〜1700℃に上昇させられる。清澄槽41では、熔融ガラス90に含まれるO2、CO2およびSO2の微小な泡が、ガラス原料に含まれるSnO2等の清澄剤の還元により生じたO2を吸収して成長し、熔融ガラス90の液面に浮上して消滅する。清澄槽41で清澄された熔融ガラス90は、第2導管43bを通過して攪拌装置100に流入する。熔融ガラス90は、第2導管43bを通過する際に冷却される。
【0027】
攪拌工程S3では、攪拌装置100において、清澄工程S2で清澄された熔融ガラス90が攪拌されて、化学的および熱的に均質化される。攪拌装置100において、熔融ガラス90の温度は、1400℃〜1550℃の範囲に調整される。また、攪拌装置100では、熔融ガラス90とは異なる成分および比重を有する異質ガラスが、熔融ガラス90と共に攪拌される。これにより、異質ガラスと熔融ガラス90とが混ぜ合わされて、熔融ガラス90が均質化される。攪拌工程S3の詳細は、後述する。攪拌装置100で均質化された熔融ガラス90は、第3導管43cを通過して成形装置42に流入する。
【0028】
成形工程S4では、成形装置42において、オーバーフローダウンドロー法により、攪拌工程S3で攪拌された熔融ガラス90からガラスリボン91が連続的に成形される。なお、熔融ガラス90は、成形工程S4に流入する前に、オーバーフローダウンドロー法による成形に適した温度、例えば、1200℃まで冷却される。
【0029】
徐冷工程S5では、成形工程S4で連続的に生成されたガラスリボン91が、歪みおよび反りが発生しないように温度制御されながら、室温まで徐冷される。
【0030】
切断工程S6では、徐冷工程S5で室温まで徐冷されたガラスリボン91が所定の長さごとに切断される。切断工程S6では、さらに、所定の長さごとに切断されたガラスリボン91が、所定の寸法に切断されて、ガラス基板92が得られる。
【0031】
研削工程S7では、切断工程S6で得られたガラス基板92の端面が研削されて、ガラス基板92が面取りされる。切断工程S6で切断されたガラス基板92の端面と主表面との間の角部には、非常に鋭いエッジが形成されている。研削工程S7では、ガラス基板92の角部を、ダイヤモンドホイール等を用いて研削することで、角部に形成されたエッジが取り除かれる。
【0032】
研磨工程S8では、研削工程S7で面取りされたガラス基板92の端面が研磨される。研削工程S7で面取りされたガラス基板92の端面には、マイクロクラックや水平クラックと呼ばれる微小なクラックを含む層が形成されている。この層は、加工変質層または脆弱破壊層と呼ばれる。加工変質層が形成されると、ガラス基板92の端面の破壊強度が低下する。研磨工程S8は、加工変質層を除去してガラス基板92の端面の破壊強度を向上させるために行われる。
【0033】
研磨工程S8の後に、ガラス基板92の洗浄工程および検査工程が行われる。最終的に、ガラス基板92は梱包されて、FPD製造業者等に出荷される。FPD製造業者は、ガラス基板92の表面にTFT等の半導体素子を形成して、FPDを製造する。
【0034】
(2)攪拌装置の構成
攪拌工程S3で使用される攪拌装置100について説明する。図3は、攪拌装置100の側面図である。攪拌装置100は、主として、第1攪拌装置100aと、第2攪拌装置100bとから構成されている。第1攪拌装置100aは、主として、第1攪拌槽101aと、第1攪拌槽101a内に設置される第1攪拌器102aとから構成されている。第2攪拌装置100bは、主として、第2攪拌槽101bと、第2攪拌槽101b内に設置される第2攪拌器102bとから構成されている。図4は、第1攪拌器102aの斜視図であり、図5は、第2攪拌器102bの斜視図である。
【0035】
第1攪拌槽101aおよび第2攪拌槽101bは、共に、同じ大きさを有する円筒形状の耐熱容器である。第1攪拌槽101aは、上流側導管103および接続管107と連結されている。上流側導管103は、第1攪拌槽101aの下部側面に取り付けられている。接続管107は、第1攪拌槽101aの上部側面に取り付けられている。第2攪拌槽101bは、接続管107および下流側導管104と連結されている。接続管107は、第2攪拌槽101bの上部側面に取り付けられている。下流側導管104は、第2攪拌槽101bの下部側面に取り付けられている。図2において、第2導管43bは上流側導管103に相当し、第3導管43cは下流側導管104に相当する。上流側導管103(第2導管43b)は、清澄槽41から攪拌装置100に向かって下方に傾斜している部分を有する。下流側導管104(第3導管43c)は、攪拌装置100から成形装置42に向かって下方に傾斜している部分を有する。
【0036】
第1攪拌槽101a、第2攪拌槽101b、第1攪拌器102a、第2攪拌器102b、上流側導管103、下流側導管104および接続管107は、熔融ガラス90と接触するので、熔融ガラス90が有する高熱に耐えることができる材料により製造される。例えば、これらの部材は、白金、白金合金、イリジウムおよびイリジウム合金により作製される。しかし、これらの材料は高価であるので、使用量を減らすことが好ましい。そのため、例えば、第1攪拌槽101aおよび第2攪拌槽101bは、安価な耐熱容器の内壁に白金層が形成されている構造を有してもよい。
【0037】
第1攪拌器102aは、図4に示されるように、第1シャフト105aと、第1羽根106a1,106a2,106a3,106a4とを備えている。第1シャフト105aは、その回転軸が鉛直方向に沿うように、第1攪拌槽101a内に配置されている。第1シャフト105aは、その回転軸が第1攪拌槽101aの円筒形状の中心軸と一致するように、配置されている。第1羽根106a1〜106a4は、第1シャフト105aに取り付けられ、第1シャフト105aの軸方向に沿って、上方から下方に向かってこの順序で等間隔に配置されている。第1シャフト105aの上端部は、モータと連結され、第1攪拌器102aは、第1シャフト105aを回転軸として回転することができる。
【0038】
第1羽根106a1〜106a4は、それぞれ、第1支持板108aと、第1上側補助板109a1と、第1下側補助板109a2とから構成される。第1支持板108aは、第1シャフト105aの回転軸と直交するように、第1シャフト105aに取り付けられている。第1上側補助板109a1は、第1支持板108aと直交するように、第1支持板108aの上側の主面に取り付けられている。第1下側補助板109a2は、第1支持板108aと直交するように、第1支持板108aの下側の主面に取り付けられている。
【0039】
第2攪拌器102bは、図5に示されるように、第2シャフト105bと、第2羽根106b1,106b2,106b3,106b4,106b5とを備えている。第2シャフト105bは、その回転軸が鉛直方向に沿うように、第2攪拌槽101b内に配置されている。第2シャフト105bは、その回転軸が第2攪拌槽101bの円筒形状の中心軸と一致するように、配置されている。第2羽根106b1〜106b5は、第2シャフト105bに取り付けられ、第2シャフト105bの軸方向に沿って、上方から下方に向かってこの順序で等間隔に配置されている。第2シャフト105bの上端部は、モータと連結され、第2攪拌器102bは、第2シャフト105bを回転軸として回転することができる。
【0040】
第2羽根106b1〜106b5は、それぞれ、第2支持板108bと、第2上側補助板109b1と、第2下側補助板109b2とから構成される。第2支持板108bは、第2シャフト105bの回転軸と直交するように、第2シャフト105bに取り付けられている。第2上側補助板109b1は、第2支持板108bと直交するように、第2支持板108bの上側の主面に取り付けられている。第2下側補助板109b2は、第2支持板108bと直交するように、第2支持板108bの下側の主面に取り付けられている。
【0041】
接続管107は、水平に延びるように設置されている。接続管107の内部には、流路変更部材107aが設置されている。流路変更部材107aは、溶接によって接続管107に取り付けられていてもよく、機械的に接続管107に取り付けられていてもよい。流路変更部材107aは、接続管107内の流体の流れを捩じることによって、流れの高さ位置を変化させるための部材である。流体は、熔融ガラス90、および、後述する異質ガラス93である。
【0042】
図6は、接続管107内に設置されている流路変更部材107aの拡大図である。流路変更部材107aは、図6に示されるように、滑らかな螺旋構造を有している。流路変更部材107aの滑らかな螺旋構造は、接続管107内を流れる流体が捩じられることによる流体の速度の低下、および、流体の層流の乱れの発生を抑制することができる。図6には、例として、接続管107内の2つの流れである第1流れ171aおよび第2流れ171bが示されている。第1流れ171aは、最初は接続管107の上部を流れ、流路変更部材107aによって捩じられて下降し、最終的に接続管107の下部を流れる。第2流れ171bは、最初は接続管107の下部を流れ、流路変更部材107aによって捩じられて上昇し、最終的に接続管107の上部を流れる。
【0043】
流路変更部材107aは、上流端部172aと下流端部172bとを含む。上流端部172aと下流端部172bとの間には、連続的かつ滑らかな螺旋状の曲面が形成されている。上流端部172aおよび下流端部172bは、接続管107内における流体の流れが阻害されない形状を有している。例えば、上流端部172aおよび下流端部172bは、鋭角のエッジ形状を有してもよく、丸みを帯びた形状を有してもよい。
【0044】
また、流路変更部材107aは、上流端部172aおよび下流端部172bの一方に対して、他方を所定の捩じり角度だけ捩じった構成を有している。流路変更部材107aの捩じり角度は、好ましくは90°〜270°である。図6において、流路変更部材107aの捩じり角度は、180°である。なお、捩じりの方向は、時計回りおよび反時計回りのいずれであってもよい。
【0045】
(3)攪拌装置の動作
攪拌装置100の動作について説明する。図7は、攪拌装置100における熔融ガラス90の流れを表す図である。熔融ガラス90の流れは、白抜きの矢印で示されている。攪拌装置100において、熔融ガラス90は、第1攪拌槽101aの内部、および、第2攪拌槽101bの内部を所定の高さ位置まで満たしている。接続管107の内部は、熔融ガラス90で満たされている。そのため、図7に示されるように、第1攪拌槽101aおよび第2攪拌槽101b内の熔融ガラス90の液面90aの高さ位置は、接続管107の上端の高さ位置よりも上方にある。なお、第1攪拌槽101a内の熔融ガラス90の温度は、第2攪拌槽101b内の熔融ガラス90の温度よりも、40℃〜70℃高いことが好ましい。
【0046】
攪拌装置100内における熔融ガラス90の流れについて説明する。最初に、清澄槽41で清澄された熔融ガラス90は、第1攪拌装置100aにおいて、上流側導管103から第1攪拌槽101aに流入する。次に、熔融ガラス90は、第1攪拌槽101a内において鉛直方向に沿って下方から上方に導かれながら攪拌され、第1攪拌槽101aから接続管107に流入する。接続管107内において、熔融ガラス90の流れは、流路変更部材107aによって捩じられる。次に、熔融ガラス90は、第2攪拌装置100bにおいて、接続管107から第2攪拌槽101bに流入する。次に、熔融ガラス90は、第2攪拌槽101b内において鉛直方向に沿って上方から下方に導かれながら攪拌され、第2攪拌槽101bから下流側導管104に流入する。このように、清澄槽41で清澄された熔融ガラス90は、第1攪拌装置100aおよび第2攪拌装置100bを順に通過して攪拌され、成形装置42に送られる。
【0047】
(4)特徴
攪拌装置100の上流側導管103内では、熔融ガラス90と共に異質ガラス93が流れていることがある。異質ガラス93は、熔融ガラス90とは異なる成分および比重を有するガラスである。例えば、異質ガラス93は、熔融ガラス90よりもシリカの含有量が高く、熔融ガラス90よりも比重が小さいガラスである。また、例えば、異質ガラス93は、熔融ガラス90よりもジルコニアの含有量が高く、熔融ガラス90よりも比重が大きいガラスである。以下、異質ガラス93は、熔融ガラス90よりも比重が小さいガラスであるとする。
【0048】
図8は、攪拌装置100における異質ガラス93の流れを表す図である。異質ガラス93の流れは、矢印で示されている。最初に、異質ガラス93は、熔融ガラス90よりも比重が小さいので、上流側導管103内の上部を、上流側導管103内の頂面を伝わりながら流れる。次に、異質ガラス93は、上流側導管103内の頂面と接続される第1攪拌槽101a内の側面を伝わりながら上昇する。そのため、第1攪拌槽101a内において、異質ガラス93の少なくとも一部は、第1攪拌器102aによって攪拌されることなく上昇する。次に、異質ガラス93は、第1攪拌槽101a内において接続管107の下端近傍の高さ位置まで上昇すると、第1攪拌器102aによって攪拌された熔融ガラス90と共に、接続管107内に流入する。そのため、異質ガラス93は、接続管107内の下部に流入する。異質ガラス93の粘度は高いため、熔融ガラス90よりも比重が小さい異質ガラス93は、接続管107内において急には浮かび上がらず、接続管107内の下部を、接続管107内の底面に沿って流れる。
【0049】
その後、接続管107内の下部における異質ガラス93の流れは、流路変更部材107aによって捩じられて上昇する。そのため、接続管107内を流れる異質ガラス93は、流路変更部材107aを通過することにより接続管107内の底面から離れて、第2攪拌槽101b内に流入する。第2攪拌槽101bでは、異質ガラス93の流れは、第2攪拌槽101b内の側面に沿って流れずに、第2攪拌器102bの第2シャフト105bに向かって流れる。そのため、第2攪拌槽101bにおいて、異質ガラス93は、第2攪拌器102bの回転に巻き込まれ、熔融ガラス90と共に第2攪拌器102bによって攪拌されながら下降する。これにより、熔融ガラス90は、異質ガラス93と混ぜ合わされて均質化される。均質化された熔融ガラス90は、第2攪拌器102b内から下流側導管104内に流入する。下流側導管104内に流入した熔融ガラス90は、成形装置42に送られる。
【0050】
従って、攪拌装置100は、第1攪拌槽101aと第2攪拌槽101bとを連結する接続管107内に設置された流路変更部材107aによって、接続管107内における異質ガラス93の流れを上昇させることで、異質ガラス93が第2攪拌槽101b内で攪拌されずに下流側導管104内に流入することを防止し、第2攪拌槽101b内で熔融ガラス90を異質ガラス93と共に攪拌して、均質な熔融ガラス90を生成することができる。また、異質ガラス93が成形装置42に供給されると、最終的に製造されたガラス基板に脈理が発生する可能性がある。従って、ガラス基板製造装置200は、攪拌装置100によって熔融ガラス90を均質に攪拌することにより、ガラス基板の脈理の発生を抑制して、高品質のガラス基板を製造することができる。
【0051】
なお、攪拌装置100において、熔融ガラス90よりも比重が大きい異質ガラスは、上流側導管103の下部を流れた後、第1攪拌槽101aの下部に一時的に貯留され、第1攪拌器102aの回転に巻き込まれて上方に導かれ、第1攪拌槽101aにおいて熔融ガラス90と共に攪拌されて互いに混ぜ合わされる。そのため、熔融ガラス90よりも比重が大きい異質ガラスは、第2攪拌槽101bおよび下流側導管104に流出せず、成形装置42にも送られない。
【0052】
図9は、参考例としての図であり、従来の攪拌装置900における、熔融ガラスよりも比重が小さい異質ガラスの流れを表す図である。図9には、熔融ガラスよりも比重が小さい異質ガラスの流れが矢印で示されている。攪拌装置900は、本実施形態の攪拌装置100と同様の構成を有し、第1攪拌槽901aおよび第2攪拌槽901bが、接続管907により連結されている構成を有している。第1攪拌槽901aは、上流側導管903と連結され、第2攪拌槽901bは、下流側導管904と連結されている。接続管907内には、何も設置されていない。第1攪拌槽901a内には第1攪拌器902aが設置され、第2攪拌槽901b内には第2攪拌器902bが設置されている。
【0053】
攪拌装置900では、熔融ガラスよりも比重が小さい異質ガラスは、上流側導管903の上部を流れ、第1攪拌槽901a内の側面を伝わりながら上昇した後、接続管907内に流入する。熔融ガラスの粘度は高いため、熔融ガラスよりも比重が小さい異質ガラスは、接続管907内において浮かび上がらず、接続管907内の底面に沿って流れる。その後、接続管907内の底面に沿って流れた異質ガラスは、第2攪拌槽901b内に流入し、第2攪拌槽901b内の側面を伝わりながら下降して、下流側導管904内に流入する。そのため、攪拌装置900では、熔融ガラスよりも比重が小さい異質ガラスは、熔融ガラスと共に攪拌されることなく、攪拌装置900の後工程に流出する可能性がある。従って、攪拌装置900は、熔融ガラスを均質に攪拌できず、そのため、最終的に製造されたガラス基板に脈理が発生する可能性がある。
【0054】
また、本実施形態の攪拌装置100は、第1攪拌槽101a内の側面と第1攪拌器102aとの間の隙間を過剰に小さくすることなく、第1攪拌槽101a内の側面を伝わりながら上昇する異質ガラス93を攪拌することができる。これにより、第1攪拌槽101a内の白金製の側面に高い応力が生じたり、白金製の第1攪拌器102aの表面や第1攪拌槽101a内の白金製の側面が浸食されたりして、熔融ガラスに白金が混入することが抑制される。
【0055】
図12は、異質ガラス93が、上流側導管103、接続管107および下流側導管104を順に流れる様子を示す図である。図12(a)は、異質ガラス93が上流側導管103を流れる様子を示す。図12(b)は、異質ガラス93が接続管107を流れる様子を示す。図12(c)は、異質ガラス93が下流側導管104を流れる様子を示す。図12(a)〜(c)において、熔融ガラス90は、紙面の手前側から奥側に向かって流れる。
【0056】
シリカ(SiO2)を多く含む異質ガラス93は、他の良質な熔融ガラス90と比べて、比重が小さい。そのため、図12(a)に示されるように、第1攪拌装置100aより上流側に位置する上流側導管103では、異質ガラス93は、上流側導管103の上面側(上部)を流れる。第1シャフト105aが上流側導管103側に偏って配置されている場合、または、第1羽根106a1〜106a4のサイズが互いに異なっている場合において、異質ガラス93が第1攪拌槽101aに流入すると、第1羽根106a1〜106a4の水平方向先端と第1攪拌槽101aの側面との距離が局所的に短くなる領域において、異質ガラス93が高いせん断応力で攪拌される。第1羽根106a1〜106a4により攪拌された異質ガラス93は、第1攪拌槽101aの側面を伝わりながら上昇し、第1羽根106a1〜106a4に押し出されるようにして接続管107に流入する。このとき、熔融ガラス90の粘性が高いため、図12(b)に示されるように、接続管107内において異質ガラス93は接続管107の上面側に浮かび上がらず、第1羽根106a1〜106a4に押し出された勢いで、接続管107の下面側(下部)を流れる。
【0057】
また、第1攪拌装置100aにおいて、異質ガラス93は、第1攪拌槽101aの側面から第1シャフト105aに向かって流れる。第1シャフト105aに向かって流れた異質ガラス93は、第1羽根106a1〜106a4によって絶えず攪拌され続ける。そのため、図12(c)に示されるように、熔融ガラス90に含まれる異質ガラス93の量は、上流側導管103、接続管107および下流側導管104を熔融ガラス90が順に流れる過程で減少する。
【0058】
図13は、接続管107の上流側において熔融ガラス90が攪拌される位置を示す図である。接続管107の上流側に位置する第1攪拌装置100aの第1シャフト105aが時計回りに回転している場合には、図13の矢印A1付近、すなわち、接続管107の底部中心に対して、第1シャフト105aの回転方向の反対側(図13において左側)に偏った領域が、第1シャフト105aにより攪拌される。これは、この領域が、接続管107において、第1羽根106a1〜106a4によって異質ガラス93が最初に押し出される領域であり、せん断応力が減衰していない領域であるからである。また、接続管107において、矢印A1付近を流れる異質ガラス93は、流路変更部材107aによって攪拌される。第1シャフト105aの位置が第1攪拌装置100aの中心位置からずれている、すなわち、第1シャフト105aが偏芯している場合、また、第1羽根106a1〜106a4のサイズが互いに異なっている場合、接続管107を流れる異質ガラス93の位置は、図13の矢印A1付近とは異なることがある。しかし、流路変更部材107aは、接続管107内の流体の流れを捩じることによって、異質ガラス93の流れの高さ位置を変化させることができる。そのため、接続管107内において、異質ガラス93は、その位置に関係なく攪拌される。従って、流路変更部材107aを備える攪拌装置100は、熔融ガラス90を均質に攪拌することができる。
【0059】
(5)変形例
(5−1)変形例A
実施形態では、熔融ガラス90は、最初に、第1攪拌槽101a内において鉛直方向に沿って下方から上方に導かれながら攪拌され、次に、第2攪拌槽101b内において鉛直方向に沿って上方から下方に導かれながら攪拌される。しかし、図10に示されるように、熔融ガラス90は、最初に、第1攪拌槽301a内において鉛直方向に沿って上方から下方に導かれながら攪拌され、次に、第2攪拌槽301b内において鉛直方向に沿って下方から上方に導かれながら攪拌されてもよい。図10は、本変形例に係る攪拌装置300における熔融ガラス90の流れを表す図である。熔融ガラス90の流れは、白抜きの矢印で示されている。
【0060】
攪拌装置300は、主として、第1攪拌装置300aと、第2攪拌装置300bとから構成されている。第1攪拌装置300aは、主として、第1攪拌槽301aと、第1攪拌槽301a内に設置される第1攪拌器302aとから構成されている。第2攪拌装置300bは、主として、第2攪拌槽301bと、第2攪拌槽301b内に設置される第2攪拌器302bとから構成されている。第1攪拌器302aは、第1シャフト305aを回転軸として回転し、第2攪拌器302bは、第2シャフト305bを回転軸として回転する。
【0061】
第1攪拌槽301aは、上流側導管303および接続管307と連結されている。上流側導管303は、第1攪拌槽301aの上部側面に取り付けられている。接続管307は、第1攪拌槽301aの下部側面に取り付けられている。第2攪拌槽301bは、接続管307および下流側導管304と連結されている。接続管307は、第2攪拌槽301bの下部側面に取り付けられている。下流側導管304は、第2攪拌槽301bの上部側面に取り付けられている。接続管307の内部には、流路変更部材307aが設置されている。流路変更部材307aは、実施形態の流路変更部材107aと同じ部材である。
【0062】
攪拌装置300内における熔融ガラス90の流れについて説明する。最初に、清澄槽41で清澄された熔融ガラス90は、第1攪拌装置300aにおいて、上流側導管303から第1攪拌槽301aに流入する。次に、熔融ガラス90は、第1攪拌槽301a内において鉛直方向に沿って上方から下方に導かれながら攪拌され、第1攪拌槽301aから接続管307に流入する。次に、接続管307内において、熔融ガラス90の流れは、流路変更部材307aによって捩じられる。次に、熔融ガラス90は、第2攪拌装置300bにおいて、接続管307から第2攪拌槽301bに流入する。次に、熔融ガラス90は、第2攪拌槽301b内において鉛直方向に沿って下方から上方に導かれながら攪拌され、第2攪拌槽301bから下流側導管304に流入する。
【0063】
図11は、攪拌装置300における、熔融ガラス90よりも比重が大きい異質ガラス93の流れを表す図である。異質ガラス93の流れは、矢印で示されている。最初に、異質ガラス93は、熔融ガラス90よりも比重が大きいので、上流側導管303内の下部を、上流側導管303内の底面を伝わりながら流れる。次に、異質ガラス93は、上流側導管303内の底面と接続される第1攪拌槽301a内の側面を伝わりながら下降する。そのため、第1攪拌槽301a内において、異質ガラス93は、第1攪拌器302aによって攪拌されることなく下降する。次に、異質ガラス93は、第1攪拌槽301a内において接続管307の上端近傍の高さ位置まで下降すると、第1攪拌器302aによって攪拌された熔融ガラス90と共に、接続管307内に流入する。そのため、異質ガラス93は、接続管307内の上部に流入する。異質ガラス93の粘度は高いため、熔融ガラス90よりも比重が大きい異質ガラス93は、接続管307内において急には沈まず、接続管307内の上部を、接続管307内の頂面に沿って流れる。
【0064】
その後、接続管307内の上部における異質ガラス93の流れは、流路変更部材307aによって捩じられて下降する。そのため、接続管307内を流れる異質ガラス93は、流路変更部材307aを通過することにより接続管307内の頂面から離れて、第2攪拌槽301b内に流入する。第2攪拌槽301bでは、異質ガラス93の流れは、第2攪拌槽301b内の側面に沿って流れずに、第2攪拌器302bの第2シャフト305bに向かって流れる。そのため、第2攪拌槽301bにおいて、異質ガラス93は、第2攪拌器102bの回転に巻き込まれ、熔融ガラス90と共に第2攪拌器302bによって攪拌されながら上昇する。これにより、熔融ガラス90は、異質ガラス93と混ぜ合わされて均質化される。均質化された熔融ガラス90は、第2攪拌器302b内から下流側導管304内に流入する。下流側導管304内に流入した熔融ガラス90は、成形装置42に送られる。
【0065】
従って、攪拌装置300は、第1攪拌槽301aと第2攪拌槽301bとを連結する接続管307内に設置された流路変更部材307aによって、接続管307内における異質ガラス93の流れを下降させることで、異質ガラス93が第2攪拌槽301b内で攪拌されずに下流側導管304内に流入することを防止し、第2攪拌槽301b内で熔融ガラス90を異質ガラス93と共に攪拌して、均質な熔融ガラス90を生成することができる。また、異質ガラス93が成形装置42に供給されると、最終的に製造されたガラス基板に脈理が発生する可能性がある。従って、ガラス基板製造装置200は、攪拌装置300によって熔融ガラス90を均質に攪拌することにより、ガラス基板の脈理の発生を抑制して、高品質のガラス基板を製造することができる。
【0066】
なお、攪拌装置300において、熔融ガラス90よりも比重が小さい異質ガラスは、上流側導管303の上部を流れた後、第1攪拌器302aの最上段の第1羽根の上方から供給され、第1攪拌器302aにより攪拌されながら下方に導かれ、第1攪拌槽301aにおいて熔融ガラス90と共に攪拌されて互いに混ぜ合わされる。そのため、熔融ガラス90よりも比重が小さい異質ガラスは、第2攪拌槽301bおよび下流側導管304に流出せず、成形装置42にも送られない。
【0067】
(5−2)変形例B
実施形態では、流路変更部材107aは、図6に示されるように、滑らかな螺旋構造を有している。しかし、流路変更部材107aは、接続管107内を流れる流体の圧力の増加を最小限に抑えるような構造を有していれば、他の形状を有していてもよい。
【0068】
(5−3)変形例C
実施形態では、熔融ガラス90は、無アルカリガラスまたは微アルカリガラスであり、攪拌装置100において、熔融ガラス90は、1400℃〜1550℃の温度範囲で攪拌される。しかし、熔融ガラス90は、攪拌装置100で攪拌される熔融ガラス90よりも多量のアルカリ成分が添加された熔融ガラスであってもよい。この場合、攪拌装置100において、熔融ガラスは、1300℃〜1400℃の温度範囲で攪拌される。
【0069】
(5−4)変形例D
実施形態では、第1羽根106a1〜106a4は、2枚の第1支持板108aが、第1シャフト105aの軸方向に対して直交するように設けられている。しかし、第1支持板108aは、第1シャフト105aの軸方向に直交する平面に対して傾斜した状態で、第1シャフト105aに取り付けられてもよい。なお、本変形例は、第2攪拌器102bの第2羽根106b1〜106b5に対しても、適用可能である。
【0070】
(5−5)変形例E
実施形態では、第1シャフト105aは、その回転軸が第1攪拌槽101aの円筒形状の中心軸と一致するように、配置されている。しかし、第1シャフト105aは、その回転軸が第1攪拌槽101aの円筒形状の中心軸から離間するように、配置されてもよい。
【0071】
(5−6)変形例F
実施形態では、第2攪拌器102bは、第1攪拌器102aと同じサイズを有するが、第1攪拌器102aと異なるサイズを有してもよい。例えば、第2攪拌器102bは、第1攪拌器102aよりも小さいサイズを有してもよい。
【符号の説明】
【0072】
42 成形装置
90 熔融ガラス
93 異質ガラス
100 攪拌装置
101a 第1攪拌槽
101b 第2攪拌槽
102a 第1攪拌器
102b 第2攪拌器
103 上流側導管
104 下流側導管
107 接続管
107a 流路変更部材
200 ガラス基板製造装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2010−100462号公報
【特許文献2】特開2007−204357号公報
図1
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