【課題を解決するための手段】
【0015】
これを達成するため、本発明の目的は、
(a)転炉スラグを、1500℃から1600℃の間に含まれる初期温度T
iから、1200℃から1400℃の間に含まれるプラトー温度T
pまで冷却する段階であって、
− 初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの平均冷却速度は、毎分10℃以下であり、
− 初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの最大冷却速度は、毎分20℃未満である
ことが理解される段階、および次いで
(b)場合により、転炉スラグをプラトー温度T
pで1から48時間の期間維持する段階、および次いで
(c)転炉スラグを、プラトー温度T
pから、1200℃より低い最終温度T
fまで冷却する段階であって、
その結果、30μmより大きい平均寸法を有するケイ酸石灰系相と、石灰フェライト系相とが形成される段階、
(d)冷却の後に得られた転炉スラグを粉砕する段階、
(e)ケイ酸石灰系相と石灰フェライト系相とを分離する段階
を含む、転炉スラグを処理するための方法に関する。
【0016】
定義
「初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの平均冷却速度」という表現は、スラグが初期温度からプラトー温度T
pまで移行する時間(分)に対するT
iとT
pの間の差(℃)の比率を指す。
【0017】
「初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの最大冷却速度は、毎分20℃未満である」という表現は、T
iからT
pまでの冷却の間のいずれの時点においても、冷却速度が毎分20℃を超えないことを示すのに使用される。
【0018】
本特許出願においては、いずれの冷却速度も(平均冷却速度および最大冷却速度)、スラグのすべての箇所におけるすべての冷却速度の平均であると理解される。
【0019】
実際、いくつかの実施形態では、特に、本発明による方法において使用されるスラグの質量が小さい場合、温度は、プロセスに供されているスラグの全体にわたり均質であり、すべての時点で、スラグの冷却速度は、スラグのすべての箇所において同じである。
【0020】
対照的に、著しい質量のスラグが本発明による方法において使用される場合、これは、一般的に工業用途において当てはまるが、時間tにおいて、温度は、スラグの箇所ごとに異なる場合があり、冷却速度は、スラグの箇所ごとに異なる場合がある。例示として、本方法が、段階(b)を含まない、ならびに段階(a)および(c)が、転炉由来のスラグ産物を、その壁が断熱されている容器に入れることにより行われる、実施形態(下記)では、容器の中心部のスラグが、容器の壁近くのスラグより高い温度を有すること、および容器の壁近くのスラグの冷却速度が、容器の中心部のスラグの冷却速度より速いことは明らかである。したがって、本特許出願との関連において、いずれの冷却速度も(平均冷却速度および最大冷却速度)、スラグのすべての箇所におけるすべての冷却速度の平均であると理解される。
【0021】
本特許出願においては、「ケイ酸石灰系相」という用語は、ケイ酸石灰を主に含むが、他の化合物が含まれていてもよい、鉱物相を指す。「大部分が」という用語は、ケイ酸石灰の質量割合が、この相における他のいずれの化合物の質量割合よりも大きいことを示す。典型的に、本発明による方法は、15質量%より多い、またはさらには30質量%より多いSiO
2と、50質量%より多い、またはさらには60質量%より多いCaOとを含む、ケイ酸石灰系相を調製することを可能にする。本発明による方法により得られるケイ酸石灰系の相および鉱物は、一般的に、エーライト相[C3S − (CaO)
3(SiO
2)]および/またはビーライト相[C2S − (CaO)
2(SiO
2)]であり、大部分が、C2S相である(その理由は、一般的に、冷却の間に形成されるC3S相が、低温でC2S相および石灰に分解されるからである)。
【0022】
同様に、「石灰フェライト系相」という用語は、石灰フェライトを主に含むが、他の化合物が含まれていてもよい、鉱物相を指す。「大部分が」という用語は、石灰フェライトの質量割合が、この相における他のいずれの化合物の質量割合よりも大きいことを示す。典型的に、本発明による方法は、30質量%より多い、またはさらには40質量%より多いCaOと、30質量%より多い、またはさらには38質量%より多いFe
2O
3とを含む、石灰フェライト系相を調製することを可能にする。
【0023】
各相における化合物の質量割合は、たとえば、元素分析によりまたはエネルギー分光法(エネルギー分散分光分析EDS)により決定することができる。
【0024】
本発明による方法により得られる鉱物および鉱物相は、一般的に、球状ではない。ケイ酸石灰系相は、一般的に、「楕円形」またはデンドライト状の形態を有する。したがって、本特許出願において、鉱物または鉱物相の寸法は、平均寸法である。鉱物相の平均寸法は通常、測定スケールを含む二次元(2D)の顕微鏡画像(断面の)から得られる、統計的寸法測定のプロセスにより測定される。鉱物相の平均寸法の測定は、以下の場合、より正確である:
− 多数の画像、ひいては、多数の結晶粒に対して実施される場合(これは、サンプリングおよび実施された測定の数に依存する統計的測定である)、
− 観察された相間のコントラストが顕著である場合、および
− 相が分かれており別個である場合。
【0025】
2D画像用ソフトウェアアプリケーション(たとえばImageJ)による分析は、多数のデータを処理し、以下の変数:表面積、寸法、数を平均値および標準偏差で統計的に決定することを可能にする。そのようなデータ処理手法の利点は、その迅速性および代表性である。
【0026】
段階(a)から(c):冷却
本発明による方法は、冷却の段階(a)および(c)、ならびに場合により、プラトー温度T
pでの温度プラトーの維持に相当する段階(b)を含む。
【0027】
本発明による方法の段階(a)から(c)は、スラグを、1500℃から1600℃の間の初期温度T
iから、1200℃未満の最終温度T
fまで冷却することを可能にする。
【0028】
1500℃から1600℃の間に含まれる初期温度T
iは、転炉の出口における温度に相当する。有利なことに、本発明による方法は、鋼の形成の直後に実施することができる。その場合、スラグは、既に1500℃から1600℃の間の温度にあり、そのため、本方法は、スラグをこの温度まで加熱する事前段階を必ずしも必要としない。他方で、当初別の温度にあるスラグ(たとえば、室温にある貯蔵スラグ)に本方法を適用する場合、スラグを1500℃から1600℃の間の初期温度まで加熱する予備段階が必要である。
【0029】
最終温度T
fは、1200℃未満の温度である。典型的に、最終温度T
fは、室温(25℃程度)である。本発明による方法において、プラトー温度から最終温度T
fの間の冷却速度は、あらゆる任意の速度である。実際、本発明は、粉砕により相互に分離することが可能な、30μmより大きい平均寸法を有するケイ酸石灰系相と石灰フェライト系相とを形成することだけでなく、スラグ中に存在する酸化リンが、確実に、非常に大部分がケイ酸石灰系相に移行し、石灰フェライト系相には移行しないようにすることをも可能にするのは、初期温度T
iからプラトー温度T
pの間の冷却速度の制御であるという発見に基づく。
【0030】
したがって、本発明による方法の段階(a)、場合により(b)、および(c)は、有利なことに、別個の鉱物相:
− 石灰フェライト系相の鉱物相、
− 30μmより大きい、好ましくは50μmより大きい、特に30μmから100μmの間に含まれる、典型的には50μmから100μmの間の平均寸法を有するケイ酸石灰系相(主にC2S)の鉱物相、を得ることを可能にする。これらの寸法は、ケイ酸石灰系相と石灰フェライト系相とを、粉砕後に確実に分離できるようにするために特に好適である。
【0031】
石灰フェライト系相およびケイ酸石灰系相は、相の大半であるが、段階(c)の終わりに得られた冷却されたスラグは、他の相、たとえば、マグネシアフェライト系相、マグネシア系相を含む。
【0032】
特定の理論に拘泥するつもりはないが、段階(a)から(c)の具体的な条件において、一方では石灰フェライト系相が、および他方では30μmより大きい寸法を有するケイ酸石灰系相が形成することは、以下のように説明することができる。1500℃から1600℃の間に含まれる初期温度では、媒体は、本質的に液相である。この液相内において、C3Sの結晶は、最終的に1500℃付近で出現し、C2Sの結晶は、1450℃付近で出現し、その結果、ケイ酸石灰系相を形成する。石灰フェライト系相の結晶は、1300℃程度から約1050℃までの温度で出現する。したがって、段階(a)のT
iからT
pの間の平均冷却速度が遅い(すなわち、10℃/分以下である)と、ケイ酸石灰系結晶の発生および成長、ひいては、30μmより大きい寸法を有するケイ酸石灰系相を得ることが促進される。
【0033】
さらに、段階(a)、場合により(b)、および(c)は、酸化リンをほとんど含まない石灰フェライト系相を得ることを可能にする。より詳細には、石灰フェライト系相における酸化リンの質量割合は、EDS微量分析(エネルギー分散X線分析)によるリンの検出限界を下回る、すなわち、0.5質量%より少ない。
【0034】
石灰フェライト系相のリン含有量が低いことは、本発明による方法に由来する石灰フェライト系相の、鋼生産に関連する回収および改良のための必要条件である。そのため、有利なことに、本発明による方法は、鋼生産における再使用の前に、石灰フェライト系相を脱リンする後続段階を必要としない。
【0035】
実際、段階(a)、場合により(b)、および(c)の間に、酸化リンは、主としてケイ酸石灰系相に移行する。固体の核磁気共鳴(NMR)によっておよび得られたX線を用いた回折により得られた結果に基づけば、ケイ酸石灰系相の固化の間に、リン酸石灰の形態のリンは、C2S相と結び付く。一般的に、本方法により得られるケイ酸石灰系相は、3質量%から7質量%の間のP
2O
5を含む。
【0036】
各相において、P
2O
5の質量割合は、たとえば、元素分析によりまたはエネルギー分光法(エネルギー分散分光分析EDS)により決定することができる。
【0037】
本発明による方法の一実施形態では、段階(a)において、初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの平均冷却速度は、毎分5℃未満である。初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの平均冷却速度は、特に、毎分1℃程度であってもよい。
【0038】
好ましくは、本発明による方法の段階(a)において、初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの最大冷却速度は、毎分15℃未満である。
【0039】
実際、そのような平均および最大冷却速度は、大きい寸法のケイ酸石灰系相を得るため、ひいては、後続のケイ酸石灰系相と石灰フェライト系相との分離を容易にするために、特に好適である。
【0040】
本発明による方法は、スラグを、1200℃から1400℃の間に含まれる、好ましくは1300℃程度のプラトー温度T
pで、温度プラトーに維持する段階に相当する段階(b)を含むかまたは含まないかのいずれかである。
【0041】
第1の代替法によれば、本発明による方法は、転炉スラグをプラトー温度T
pで1から48時間、特に12から36時間、特に24時間程度の期間維持する段階(b)を含む。
【0042】
段階(b)の存在は、有利なことに、より大きい寸法のケイ酸石灰系相を得ること、ひいては、後続のケイ酸石灰系相と石灰フェライト系相との分離を容易にすることを可能にする。何らかの特定の理論に拘泥するつもりはないが、スラグをプラトー温度T
pで、すなわち、石灰フェライト系相の結晶が出現する温度より高いかまたはその程度の温度で維持するこの段階(b)は、ケイ酸石灰系相の結晶の発生および成長を、それを石灰フェライト系結晶の形成との競合下に置くことなく促進するだろう。そのため、ケイ酸石灰系相は、より大きい寸法を有するだろう。
【0043】
温度プラトーの持続時間(段階(b)の持続時間)の延長は、一般的に、ケイ酸石灰系相の寸法の増大を可能にする。24時間程度の温度プラトー持続時間が好ましい。
【0044】
この場合、スラグをプラトー温度で維持する段階は、工業規模で実施することが困難かつ高コストとなる場合がある。典型的に、本方法を工業規模で実施するためには、冷却の段階(a)から(c)は、以下により行われる:
− スラグ(一般的に、転炉に直接由来する)を初期温度T
iで容器に注ぎ入れ、容器は、たとえばバーナーによって、初期温度T
iまで予め加熱されていてもよく、その壁は、たとえば、以下のような耐火断熱材の層を含む壁で断熱され:
− 耐火断熱コンクリートまたは耐火断熱練り土製の壁、
− 耐火断熱材の層により外部から熱的に遮断された金属壁(たとえば鋳鉄製のもの)
を用いて断熱され、
− および次いで、本発明による方法の段階(a)に規定されたものに準じた平均および最大冷却速度で、スラグを冷却させる。
【0045】
典型的に、コストを最小化するために、スラグを注ぎ入れた後、それを含有する容器は、加熱も冷却もされない(当然のことながら、容器の外壁と周囲空気との接触を除く)。そのため、これらの条件下においては、スラグをプラトー温度で維持する段階は、一般的に回避される。
【0046】
したがって、第2の代替法によれば、本発明による方法は、段階(b)を含まない。この代替法の好ましい実施形態では、プラトー温度は、1200℃程度である。この実施形態では、本発明による方法は、結果的に
(α)転炉スラグを、1500℃から1600℃の間に含まれる初期温度T
iから、1200℃未満の最終温度T
fまで冷却する段階であって、
− 初期温度T
iから1200℃までの平均冷却速度は、毎分10℃以下であり、
− 初期温度から1200℃までの最大冷却速度は、毎分20℃未満である
ことが理解され、
その結果、30μmより大きい平均寸法を有するケイ酸石灰系相と、石灰フェライト系相とが形成される段階、
(d)冷却の後に得られたスラグを粉砕する段階、
(e)ケイ酸石灰系相と石灰フェライト系相とを分離する段階
を含む。段階(α)は、上記で規定された後続段階(a)および(c)に相当する。
【0047】
加えて、本発明による方法はまた、段階(a)の前に、転炉スラグを初期温度T
iで1から48時間、特に1から24時間、たとえば5時間程度の期間維持する段階(a
0)を含んでもよい。
【0048】
さらに、本発明による方法はまた、段階(a)の前に、または段階(a)、(b)(存在する場合)、もしくは(c)のいずれか1つの間に、スラグにシリカ系材料を添加する段階(a
1)を含んでもよい。シリカ系材料は、典型的に、シリカまたはカレットである。一般的に、シリカ系材料は、転炉スラグの質量に対して10質量%以下、たとえば5質量%程度の質量割合で添加される。
【0049】
シリカ系材料は、段階(a)の前に、または段階(a)、(b)(存在する場合)、もしくは(c)の1つの間に、好ましくは、段階(a)の前に、または段階(a)もしくは(b)(存在する場合)の1つの間に添加される。それは、好ましくは、初期温度から1200℃の間の温度で添加される。段階(b)が存在しない場合、段階(a
1)は、上記で規定された段階(α)の前または間に行われてもよい。
【0050】
シリカ系材料の添加は、有利なことに、ケイ酸石灰系相の寸法の増大を助ける。したがって、段階(a)の、冷却時間(段階(a)、場合により(b)、および(c))の持続時間)を短縮し、および/または温度プラトー維持の段階(b)を回避しつつ、同様の寸法のケイ酸石灰系相を得ることが可能である。したがって、この実施形態は、段階(b)(温度プラトー維持)の実施が複雑である、工業用途に特に好適である。
【0051】
10質量%以下、たとえば5質量%の割合は、ケイ酸石灰系相の寸法を増大させるために特に好適である。10質量%を超えると、平均寸法の小さい大量のケイ酸石灰系相の出現が観察される場合があり、それにより、後続のケイ酸石灰系相と石灰フェライト系相との分離が困難になる。
【0052】
何らかの特定の理論に拘泥するつもりはないが、1500℃から1600℃の間に含まれる初期温度で存在する液相内において、ケイ酸石灰系鉱物相が最初に形成される。この鉱物相の結晶の発生および成長は、特に媒体の冷却速度に依存するが、媒体の化学組成、特にそのシリカ含有量にも依存する。シリカ系材料の添加は、媒体のシリカ含有量の増加につながり、ケイ酸石灰系相の結晶の発生および成長を促進させ、ひいては、好適な寸法の結晶をより迅速に得ることを可能にするだろう。したがって、本方法の実施において使用されるスラグの組成(特にその初期シリカ含有量)に応じて、当業者は、適切な寸法の結晶をより迅速に得るために、(10質量%以下の割合で)添加すべきシリカの質量割合を調整することができる。
【0053】
場合によるシリカ系材料の添加は別として、本発明による方法は、有利なことに、スラグへの化学構成成分の添加を必要としない。特に、本方法は、還元剤(たとえば炭素)を添加するいかなる段階をも含まず、このことは、ほとんどの公知のスラグ処理加工法、たとえばZEWA法に対する利点である。
【0054】
上記の実施形態を相互に組み合わせてもよいことは、極めて明らかである。
【0055】
たとえば、本発明による方法は、
(a
0)転炉スラグを、1500℃から1600℃の間に含まれる初期温度T
iで、1から48時間の期間維持する段階、次いで
(a)転炉スラグを、初期温度T
iから、1200℃から1400℃の間に含まれるプラトー温度T
pまで冷却する段階であって、
− 初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの平均冷却速度は、毎分5℃未満、好ましくは毎分1℃程度であり、
− 初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの最大冷却速度は、毎分20℃未満、好ましくは毎分15℃未満である
ことが理解される段階、および次いで
(b)場合により、転炉スラグをプラトー温度T
pで1から48時間の期間維持する段階、および次いで
(c)転炉スラグを、プラトー温度T
pから、1200℃より低い最終温度T
fまで冷却する段階、
(a
1)段階(a)の前に、または段階(a)、(b)、もしくは(c)のいずれか1つの間に、スラグにシリカ系材料を添加する段階、
続いて、段階(d)および(e)を含んでもよい。
【0056】
本発明による方法は、特に、
(a
0)転炉スラグを、1500℃から1600℃の間に含まれる初期温度T
iで、4から6時間、たとえば5時間程度の期間維持する段階、および次いで
(a)転炉スラグを、初期温度T
iから、1300℃程度のプラトー温度T
pまで冷却する段階であって、
− 初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの平均冷却速度は、毎分5℃未満、好ましくは毎分1℃程度であり、
− 初期温度T
iからプラトー温度T
pまでの最大冷却速度は、毎分20℃未満、好ましくは毎分15℃未満である
ことが理解される段階、および次いで
(b)場合により、転炉スラグをプラトー温度T
pで1から48時間の期間維持する段階、および次いで
(c)転炉スラグを、プラトー温度T
pから、1200℃より低い最終温度T
fまで冷却する段階、
(a
1)段階(a)の前に、または段階(a)、(b)、もしくは(c)のいずれか1つの間に、転炉スラグにシリカ系材料を転炉スラグの質量に対して10質量%以下の質量割合で添加する段階、
続いて、段階(d)および(e)を含んでもよい。
【0057】
本発明による方法は、特に、
(α)転炉スラグを、1500℃から1600℃の間に含まれる初期温度T
iから、1200℃未満の最終温度T
fまで冷却する段階であって、
− 初期温度T
iから1200℃までの平均冷却速度は、毎分10℃以下であり、
− 初期温度から1200℃までの最大冷却速度は、毎分20℃未満、好ましくは毎分15℃未満である
ことが理解される段階、
(a
1)段階(α)の前に、または段階(α)の間に、スラグにシリカ系材料を添加する段階、
続いて、段階(d)および(e)を含んでもよい。
【0058】
段階(d)および(e):粉砕および分離
本発明による方法は、段階(a)から(c)の終わりに得られた冷却されたスラグを粉砕する段階を含む。段階(a)から(c)の終わりに得られたスラグのケイ酸石灰系相が、30μmより大きい、好ましくは50μmより大きい寸法を有する場合、粉砕により、スラグの鉱物相を分離すること、特に、ケイ酸石灰系相を石灰フェライト系相から分離することが可能になる。
【0059】
この粉砕は、任意の公知の方法により、特に、段階的破砕(たとえば、ハンマーを用いた)により、または連続粉砕(たとえば、粉砕ローラ、ジョー、またはコーンによる)により実行してもよい。
【0060】
粉砕は、ケイ酸石灰系鉱物相と石灰フェライト系鉱物相との切り離しを可能にする。所望の粒径を有する鉱物(スラグの鉱物相に由来する)を得るために使用すべき方法および条件は、当業者に知られている。
【0061】
段階(d)の終わりに、ケイ酸石灰系鉱物(ケイ酸石灰系相に由来する)と、石灰フェライト系鉱物(石灰フェライト系相に由来する)とを含む、鉱物の混合物が得られる。本方法はまた、ケイ酸石灰系相と石灰フェライト系相とを分離する段階(e)も含む。この分離は、磁気プロセスによるもの、浸出によるもの、または浮選によるものであってもよい。磁気分離が好ましく、その理由は、石灰フェライト系相を引き付ける磁石を用いて、非常に容易に実施できるからである。
【0062】
段階(d)および(e)は、場合により、本方法において繰り返されてもよい。たとえば、本方法は、段階的破砕(たとえば、ハンマーを用いた)により粉砕する第1の段階(d)、続いて、磁気分離の第1の段階(e)、続いて、連続粉砕(たとえば、粉砕ローラ、ジョー、またはコーンによる)の第2の段階(d)、続いて、磁気分離の第2の段階(e)を含んでもよい。
【0063】
当然のことながら、一般的に、本方法は、段階(e)の後に、石灰フェライト系相および/またはケイ酸石灰系相を回収する段階(f)を含む。
【0064】
本方法により得られる石灰フェライト系相およびケイ酸石灰系相の使用
上記で説明した通り、石灰フェライト系相は、有利なことに、いかなる事前の脱リン段階をも必要とせず、鋼生産における原料として使用することができる。
【0065】
ケイ酸石灰系鉱物はまた、特に以下のものとして再生利用することもできる。
1)水硬性道路結合剤(road binder)(HRB)またはコンクリート用添加剤として
未加工の製鋼所スラグは、規格EN−13282(2010)において、HRBを構成しうる要素として規定されている。
コンクリートについては、達成すべき性能レベルは、規格EN−206(2004)に収載されている。その場合、スラグは、高いコストおよびCO
2への影響を有する従来のセメントの代替物として働く。
2)リン酸肥料。
未加工スラグは、NPK0−3−0肥料であると考えられ、これは、最も低いクラスである。それはまた、肥料および土壌改良材に関する規則EC889/2008による生物肥料としても適格である。
上記で説明した通り、本発明による方法において、スラグ由来のリンは、非常に大部分が、本発明による方法に由来するケイ酸石灰系鉱物に移行する。そのため、本方法に由来するケイ酸石灰系鉱物は、著しい割合のリン(酸化リンP
2O
5の形態の)を含み、このことは、リン酸肥料としてのその使用に有利である。
3)超微細カーボネート。
本方法に由来するケイ酸石灰系鉱物は、コンクリート配合物用の微小結晶粒径の補完物(complement)のような、有用な超微細カーボネートとして使用することができる。達成すべき性能レベルは、規格EN206(2004)に規定されている。
【0066】
本発明による方法は、添付の図面および下記に続く実施例に例示される。