(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133986
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】システム・クロックを発生させるためのシステム、および温度勾配検出システム
(51)【国際特許分類】
H03L 1/02 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
H03L1/02
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-527876(P2015-527876)
(86)(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公表番号】特表2015-527013(P2015-527013A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2013067212
(87)【国際公開番号】WO2014029718
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】12306012.1
(32)【優先日】2012年8月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ベルグ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】パウウェルス,バート
【審査官】
鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−177765(JP,A)
【文献】
特開2012−060583(JP,A)
【文献】
米国特許第07167993(US,B1)
【文献】
特開平03−251912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム・クロック信号を発生させるためのシステムであって、
第1のクロック信号を生成するように構成された局部発振器と、
前記局部発振器を含むエリアにおいて、臨界値よりも上の温度変化を検出するように構成された温度検出器と、
第2のクロック信号を取得するように構成された取得モジュールであって、前記第2のクロック信号は前記システムにおいて受信される少なくとも1つの外部信号から取得される、取得モジュールと、
第1の方式では、前記温度検出器が、前記臨界値よりも上の温度変化を検出しないときの通常モードにおいて、前記第1のクロック信号を使用することにより、また
前記第1の方式とは異なる第2の方式では、前記温度検出器が、前記臨界値よりも上の温度変化を検出しているときの逆のホールド・オーバー・モードにおいて、前記第2のクロック信号を使用することにより、
前記システム・クロック信号を生成するように構成されたクロック発生器と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記第2のクロック信号は温度変化による影響を受けない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記局部発振器は、温度制御水晶発振器または温度補償水晶発振器である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記局部発振器は、第1の温度依存性を有する前記第1のクロック信号を生成するように構成されており、また前記温度検出器は、前記第1の温度依存性よりも高い第2の温度依存性を有するさらなるクロック信号を生成するように適合されたさらなる局部発振器を備えており、また
前記温度検出器は、前記臨界値よりも上の温度変化を検出するために前記さらなるクロック信号と前記第1のクロック信号を比較するためのコンパレータをさらに備えている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記コンパレータは、位相コンパレータである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムにおいて受信される少なくとも1つの外部信号から第3のクロック信号を抽出するように構成された抽出器をさらに備えており、
前記クロック発生器は、マスタ・クロック信号としての前記第1のクロック信号と、前記システム・クロック信号を発生させるために前記マスタ・クロック信号に対して適用されるエラー・オフセット値を決定するための前記第3のクロック信号とを使用することにより、前記第1の方式で、前記システム・クロック信号を生成するように構成されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記クロック発生器は、前記通常モードから前記逆のホールド・オーバー・モードへと切り替えるときに前記エラー・オフセット値を記憶し、また前記逆のホールド・オーバー・モードから前記通常モードへと切り戻すときに前記システム・クロック信号を生成するためのこの記憶されたエラー・オフセット値を使用するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記クロック発生器は、マスタ・クロック信号としての中間クロック信号と、前記システム・クロック信号を発生させるために前記マスタ・クロック信号に対して適用される補正係数を決定するための前記第2のクロック信号または前記第3のクロック信号とを使用して前記システム・クロック信号を生成するデジタルPLLを備えており、前記中間クロック信号は、前記クロック発生器が前記通常モードで動作するか、または逆のホールド・オーバー・モードで動作するかに応じて、前記第1の方式または前記第2の方式で生成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記クロック発生器は、
マルチプレクサと直列のPLLであって、それらは前記抽出器の出力と前記デジタルPLLとの間に結合され、前記マルチプレクサは、前記局部発振器に結合された第1の入力と、PLLの出力に結合された第2の入力とを有しており、また前記通常モードにおいて前記第1の入力を選択し、前記逆のホールド・オーバー・モードにおいて前記第2の入力を選択するように構成されている、PLLと、
前記PLLのためのフィードバック分周器を有するフィードバック・ループであって、前記フィードバック・ループは、前記通常モードにおいて前記第1のクロック信号と、前記PLLの前記出力との間の位相差に依存する分周器値を有するように適合されており、さらに、前記通常モードから前記逆のホールド・オーバー・モードへと切り替わるときに前記分周器値を一定に保持するように適合されている、フィードバック・ループと
を備えている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記クロック発生器は、マスタ・クロック信号としての前記第1のクロック信号と、前記第1の方式で生成される前記システム・クロック信号を発生させる前記マスタ・クロック信号に対して適用されるべき補正係数を決定するための前記第2のクロック信号とを使用して、前記第1の方式で前記システム・クロック信号を生成するデジタルPLLと、前記第1の方式で生成される前記システム・クロック信号と第2の方式で生成される前記システム・クロック信号との間で切り替わるスイッチオーバー・モジュール(243)とを備えている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記スイッチオーバー・モジュールは、ヒットレス・スイッチオーバー・モジュールである、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、システム・クロックを発生させるためのシステムおよび方法の分野に関する。本発明のさらなる実施形態は、温度勾配検出のシステムおよび方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
タイミング依存のシステムまたはネットワーク、例えば、電気通信ネットワークにおける時刻同期またはクロック分配は、通常、例えば、ITU−T勧告G.803、G812、G813、G823、G824、G8262、および/または多くの他の勧告において指定されるような、周波数安定性のための非常に厳しい仕様に準拠している。(電気通信)ネットワークの中のノードは、多くの場合に、外部の、ネットワーク全体に広がる基準からタイミング情報を受信する。これは、非常に安定した周波数を有する専用のクロック信号であったり、あるいは着信するデータ通信リンクから抽出されるデータ・クロックであったりする。このクロック情報は、局部基準発振器からの出力クロック信号と比較されて、この局部基準発振器のエラー・オフセットを決定する。次いで、決定されたエラー・オフセットによって補正されるローカル基準クロック信号を使用して、送信された通信リンクが必要とする望ましい周波数を生成し、また外部基準クロック信号のない間はシステム・クロック信号を保持する(ホールド・オーバーする)。このメカニズムは、システム・クロックの周波数安定性が、外部基準クロック信号の存在下においてさえも、その局部発振器の周波数安定性に密接に組み込まれることを意味している。しかしながら、一般的に使用される局部発振器の出力周波数は、通常、温度変動の影響を受け、これらの温度変動は、必要とされた安定性を脅かすものである。温度変動の影響をほぼ受けないルビジウム時計や原子時計などの発振器が存在しているが、これらの時計は、一般に、例えば、通信ネットワークのノードの中で使用されるにはあまりにも高価すぎ、かつ/またはサイズがあまりにも大きすぎる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ITU−T勧告G.803
【非特許文献2】ITU−T勧告G.812
【非特許文献3】ITU−T勧告G.813
【非特許文献4】ITU−T勧告G.823
【非特許文献5】ITU−T勧告G.824
【非特許文献6】ITU−T勧告G.8262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一目的は、先行技術のシステムよりも安定性があり、また温度変動に対処することができるシステム・クロックを生成するためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、本システムは、局部発振器と、取得モジュールと、温度検出器と、クロック発生器とを備えている。局部発振器は、第1のクロック信号を生成するように構成されている。取得モジュールは、第2のクロック信号を取得するように構成されている。温度検出器は、局部発振器を含むエリアにおいて、臨界値よりも上の温度変化を検出するように構成されている。クロック発生器は、第1の方式では、温度検出器が臨界値よりも上の温度変化を検出しないときの通常モードにおいて、第1のクロック信号を使用することにより、また第1の方式とは異なる第2の方式では、温度検出器が臨界値よりも上の温度変化を検出した後の逆のホールド・オーバー・モードにおいて、第2のクロック信号を使用することにより、システム・クロック信号を生成するように構成されている。
【0006】
取得モジュールは、システムにおいて受信される少なくとも1つの外部信号から第2のクロック信号を抽出するように構成された抽出器とすることもできるが、例えば、システムの近くのエリアから第2のクロック信号を受信するためのモジュールとすることもでき、このエリアは、温度変化による影響を受けない。
【0007】
そのような実施形態を使用することで、温度変化があまりにも急である場合に、結果として生じるシステム・クロック信号の精度が、許容公差を超えて、選択された外部基準クロックによって規定される公称周波数の精度から逸脱することを回避でき、その結果、本システムが必要とされる仕様書に準拠し、またとりわけ、例えば、時間管理、またはコア・ネットワークに対する無線通信のバックホール・アプリケーション(Backhauling Application)に関するITU−T勧告に関連した仕様書に準拠できる。
【0008】
本発明の実施形態は、本システムのタイミングに関連した部分における温度勾配をタイムリーに検出することと、本システムのタイミングに関連した部分において補償され得ないそのような温度勾配に対して適切に反応することという、対処すべき2つの問題が存在しているという洞察に基づいたものである。
【0009】
局部発振器は、温度制御水晶発振器(OCXO:oven controlled crystal oscillator)、温度補償水晶発振器(TCXO:temperature compensated crystal oscillator)、または他の任意の適切な発振器とすることができる。温度制御発振器または温度水晶発振器は、本システムの必要とされる安定性に応じて、局部基準発振器として、熱慣性が向上されている。これらのOCXOおよびTCXOは、環境温度が変化する速度が低い、例えば、毎分1°Cより低い場合に、広い温度範囲にわたり正確な、また安定性のある周波数出力を提供する。しかしながら、いくつかの故障状態において、例えば、ファンの故障またはファン・トレイの置き換えの場合において、あるいは屋外ユニットにおいては、毎分1°Cよりもずっと急な温度勾配が起こる可能性がある。電気通信機器を含むキャビネットのドアを開けることは、より高い温度勾配の別の原因である可能性がある。本発明の実施形態においては、急な温度勾配を伴う問題は、そのような勾配が検出されるときに、逆のホールド・オーバー・モードに切り替えることにより回避される。
【0010】
好ましい実施形態によれば、局部発振器は、第1の温度依存性を有する第1の周波数を有する第1のクロック信号を生成するように構成されており、また温度検出器は、第1の温度依存性よりもかなり高い第2の温度依存性を有する第2の周波数を有するさらなるクロック信号を生成するように適合されたさらなる局部発振器を備えている。温度検出器は、そのときには、臨界値よりも上の温度変化を検出するために、さらなるクロック信号と第1のクロック信号を比較するためのコンパレータをさらに備えることができる。コンパレータは、位相コンパレータであることが好ましい。さらなる局部発振器は、局部発振器、例えば、安価な水晶発振器に比べて、より低い熱慣性を有する発振器とすることができる。
【0011】
好ましい実施形態によれば、クロック発生器は、マスタ・クロック信号としての第1のクロック信号と、システム・クロック信号を発生させるためにマスタ・クロック信号に適用されるべきエラー・オフセット値を決定するための第3のクロック信号とを使用することにより、第1の方式で、システム・クロック信号を生成するように構成されている。第3のクロック信号は、第2のクロック信号と同じとすることができ、また一般的に、本システムにおいて受信される少なくとも1つの外部信号から第3のクロック信号を抽出するように構成された抽出器を設けることにより取得される。クロック発生器は、そのときには、通常モードから逆のホールド・オーバー・モードへと切り替えるときに、エラー・オフセット値を記憶し、また逆のホールド・オーバー・モードから通常モードへと切り戻すときにシステム・クロック信号を生成するための、この記憶されたエラー・オフセット値を使用するように構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、上記手段により、または温度変化を検出する別の手段により検出され得る、またいずれの場合においても、局部発振器の短期間の精度に影響を及ぼす高い温度勾配に対する保護は、上記で考察されたようにエラー・オフセット値によって補正される第1のクロック信号の代わりに、最良の外部基準から直接に抽出される第2のクロック信号を一時的に使用することである。局部発振器が、短期間にわたって使用されないが、外部基準のうちの1つを直接に使用してシステム・クロックを生成する場合のこの状態は、逆のホールド・オーバー・モードに対応する。
【0013】
クロック発生器は、マスタ・クロック信号としての中間クロック信号と、システム・クロック信号を発生させるためにマスタ・クロック信号に対して適用されるエラー・オフセット値を決定するための第2または第3のクロック信号とを使用して、システム・クロック信号を生成するデジタルPLLを備えることができ、中間クロック信号は、クロック発生器が通常モードで動作するか、または逆のホールド・オーバー・モードで動作するかに応じて、第1の方式または第2の方式で生成される。そのような一実施形態の一例が、
図3に開示される。
【0014】
クロック発生器は、マルチプレクサと直列のPLLを備えることができ、これらは、抽出器の出力とデジタルPLLのマスタ・クロック入力との間に結合される。マルチプレクサは、局部発振器に結合される第1の入力と、PLLの出力に結合される第2の入力とを有することが好ましく、また通常モードにおいて第1の入力を選択し、また逆のホールド・オーバー・モードにおいて第2の入力を選択するように構成されている。PLLは、フィードバック分周器を有するフィードバック・ループを備えることが好ましく、前記フィードバック・ループは、通常モードにおいて第1のクロック信号と、PLLの出力との間の位相差に依存する分周器値を有するように適合されており、前記フィードバック・ループは、さらに、通常モードから逆のホールド・オーバー・モードへと切り替わるときに前記分周器値を一定に保持するように適合されている。
【0015】
代替的な一実施形態によれば、クロック発生器は、マスタ・クロック信号としての第1のクロック信号と、第1の方式で生成されるシステム・クロック信号を発生させるためにマスタ・クロック信号に対して適用されるエラー・オフセット値を決定するための第2のクロック信号とを使用して、第1の方式で、システム・クロック信号を生成するデジタルPLLと、第1で生成されるシステム・クロック信号と第2の方式で生成されるシステム・クロック信号の間で切り替わるスイッチオーバー・モジュール(switch−over module)とを備えている。そのような一実施形態の一例が、
図2に示されている。スイッチオーバー・モジュールは、PLLを備えるヒットレス・スイッチオーバー・モジュールとすることができる。
【0016】
本システムは、最良の外部基準を見出し選択するために、複数の外部基準を絶えず監視して各基準の品質と有効性とを決定する、内部クロック同期化サブシステムを備えることができる。これは、他の手段のうちでも、外部基準の周波数安定性を監視することに基づいていてもよい。
【0017】
本発明の別の態様によれば、第1の発振器を備える環境において温度変化を検出するためのシステムが提供されている。本システムは、温度の関数の形で変化する第1の周波数を有する第1のクロック信号を生成するように構成されている第1の発振器と、第1の周波数に比べて、温度とともにより高速に変化する第2の周波数を有する第2のクロック信号を生成するように適合された第2の発振器とを備えている。さらに、本システムは、温度変化を検出するために第2のクロック信号と第1のクロック信号を比較するためのコンパレータを備えている。第1の発振器は、例えば、温度制御水晶発振器または温度補償水晶発振器とすることができる。コンパレータは、位相コンパレータであることが好ましい。第2の発振器は、第1の発振器と比べてより低い熱慣性を有する発振器とすることができ、また例えば、どのような温度補償もない安価な水晶発振器とすることができる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、突然の急な温度勾配が、内部タイミング・サブシステムの中心部を形成する、より堅牢であまり温度の影響を受けない普通の第1の発振器に加えて、非常に安価で全く温度補償されていない第2の発振器を使用して検出され、また外部基準クロック信号によって補正されることもある。TCXO(温度補償水晶発振器)またはOCXO(温度制御水晶発振器)は、一般的に、低い温度の感度を有する第1の発振器として使用される。この特別に安価な第2の発振器は、普通の第1の発振器が反応する前に、温度変化に対して非常に迅速に反応できる。両方の出力信号を比較することにより、そのような温度変化が、普通の第1の発振器に影響を及ぼし始める前に、温度変化を検出すること、および信号で伝えることが可能となるであろう。
【0019】
添付図面を使用して、本発明のシステムおよび方法についての現在において好ましい非限定的な例示の実施形態を示している。本発明の特徴および目的についての上記の利点および他の利点はより明らかになり、また本発明は添付図面と併せて読まれるときに、以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のシステムについての第1の実施形態を概略的に示す図である。
【
図2】本発明のシステムについての第2の実施形態の概略図である。
【
図3】本発明のシステムについての第3の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明による、システム・クロック信号を発生させるためのシステム100の一実施形態を示すものである。本システム100は、第1のクロック信号111を生成するように構成された局部発振器110を備えている。その局部発振器は、例えば、温度制御水晶発振器または温度補償水晶発振器である。さらに、本システムは、第2のクロック信号121を取得するように構成されている取得モジュール120を備えている。また、システム100において受信される少なくとも1つの外部信号122から第3のクロック信号181を抽出する抽出器180も設けられている。なお、第2のクロック信号は、第3のクロック信号と同じとすることができ、その場合には、取得モジュール120と抽出器180とは同じモジュールである。以下で考察する
図2および3の例示の実施形態も参照されたい。抽出器は、いくつかの外部信号122から外部信号の中に含まれるクロック信号の品質を抽出するように構成されていることもある。この品質を使用して、抽出器は最良の外部信号を抽出し、また第3のクロック信号181としてこの最良の外部信号のクロック信号を使用することを決定することができる。
【0022】
さらに、本システム100は、局部発振器110を含むエリアにおいて、臨界値よりも上の温度変化を検出するように構成されている温度検出器を備えている。顕著な温度変化が検出されないときに、本システムは通常モードで動作し、また大幅な温度変動を検出するとすぐに、本システムは逆のホールド・オーバー・モードへと切り替わる。検出器130は、さらに、本システムが通常モードへと切り戻す前に安定している必要がある、すなわち、さらなる大幅な温度変化が検出され得ない最小期間にわたって、逆のホールド・オーバー・モードに留まることを決定するように適合されていることもある。温度検出器130は、臨界値よりも上の温度変化が検出されているかどうか、すなわち、通常モードから逆のホールド・オーバー・モードへと変更すべきかどうかを示す検出信号をクロック発生器140に対して供給する。
【0023】
クロック発生器140は、局部発振器110から第1のクロック信号111を、また抽出器120から第2のクロック信号121を供給される。この第1のクロック信号および第2のクロック信号を使用して、クロック発生器140は、システム・クロック信号141を生成する。クロック発生器140は、臨界値よりも上の温度変化が検出されないときに、第1の方式で、また臨界値よりも上の温度変化が検出されるときに、第2の方式で、システム・クロック信号141を生成するように適合されている。第1の方式によれば、第1のクロック信号111を使用してシステム・クロック141を生成し、そこでは、第2のクロック信号121を使用して第1のクロック信号111を補正することができる。第2の方式によれば、第2のクロック信号121を使用してシステム・クロック信号141を生成する。
【0024】
図2は、本発明のシステム200についてのより詳細な第2の実施形態を示すものである。本システム200は、例えば、10MHzで実行される局部発振器210と外部信号から第2のクロック信号を抽出するための抽出器220と、温度検出器230とシステム・クロックを生成するためのクロック発生器240とを備える。第2のクロック信号は、例えば、100MHzで実行されている可能性があるが、システム・クロック信号は200MHzで実行されている可能性がある。
【0025】
温度検出器230は、局部発振器210と比べて低い熱慣性を有する、さらなる局部発振器231を備えている。局部発振器210の出力とさらなる発振器231との出力は、位相コンパレータ232へと供給される。局部発振器210とさらなる発振器231とは、同じ熱環境250の中に配置される。このローカル環境250の中の温度が変化するときに、さらなる発振器231のより低い熱慣性のために、さらなる発振器231によって生成される信号の周波数は、局部発振器210と比べてより高速に変化することになる。位相コンパレータ231は、時間の関数の形で、局部発振器210からの信号とさらなる発振器231からの信号との間の位相の差を評価する。時間の関数の形の位相差の傾斜が変化するときに、これは、熱環境250の中の温度変化を示している。
図2に示されるように、位相コンパレータ231の出力から、ウィンドウ・コンパレータ233は、熱環境250の中の温度変化が臨界値よりも高いかどうかを決定することができる。この結果は、クロック発生器240へと伝えられる。局部発振器210は、ある程度まで温度変化に対して保護されることもあるが、さらなる発振器230は、温度変化に対して保護されない標準の安価な水晶発振器とすることもできる。周波数の差は絶えず位相コンパレータ232を使用して監視されており、またこの周波数の差が突然に変化する場合、これは、温度勾配が存在していることを示している。突然の周波数変化の量は温度勾配の尺度であり、また第1のクロック信号の周波数が温度変化によって影響を受けることになるか否かについての評価を可能とする。当業者なら、水晶発振器を使用する代わりに、他の適切な任意の発振器が使用されてもよいことを理解するであろう。
【0026】
クロック発生器240は、所定の係数を用いて第2のクロック信号221の周波数を乗算し、または除算するために、かつ/または第2のクロック信号221におけるジッターを取り除くために構成されているオプションとしての処理ブロック244を備えている。100MHzの第2のクロック信号221と200MHzのシステム・クロック241とを有する例においては、乗数「2」が使用されるであろう。さらに、クロック発生器240は、マスタ・クロック信号または基本クロックとして第1のクロック信号211を使用するデジタルPLL 242を備えている。このマスタ・クロック信号は、1つまたは複数の外部基準から導き出される第2のクロック信号221を使用して決定される補正係数と乗算される。デジタルPLL 242の出力は、ヒットレス・スイッチオーバーを実行するヒットレス・スイッチオーバー・ブロック242へと供給される。ヒットレス・スイッチオーバー・ブロック243は、温度検出器230の出力を使用して、どのようにしてマルチプレクサ245を設定すべきかを決定する。臨界的な温度変化が検出されないときに、DPLL 242の出力は、マルチプレクサ245によってPLL 246へと送られ、またシステム・クロックは、DPLL 242の出力に等しくなる。臨界的な温度変化が、検出されるときに、マルチプレクサは切り替わり、また処理ブロック244の出力が、PLL 246へと供給されることを可能にする。PLL 246は、マルチプレクサ245の切り替えが起こるときに、DPLL 242の出力信号から処理ブロック244の出力への遷移が位相を調整することによりスムーズに起こり、逆もまた同様であることを補償することになる。ヒットレス・スイッチオーバー・ブロック242は、さらに、マルチプレクサ245の手動スイッチオーバーを実行するボタンを提供されることもある。そのやり方では、例えば、キャビネットに対するメンテナンス・オペレーションのために、臨界的な温度変化が期待されるときに、局部発振器210からの第1のクロック信号211の代わりに、外部基準からの第2のクロック信号221を使用することが決定される可能性がある。
【0027】
図3は、本発明のシステム300についての第3の実施形態を示すものである。本システム300は、局部発振器310と、抽出器320と、温度検出器330と、クロック発生器340とを備えている。温度検出器330は、
図2を参照して上記で説明される温度検出器230と同一であり、したがたってその詳細な説明が省略されている。
図2の実施形態におけるように、温度検出器330は、局部発振器310と比べて低い熱慣性を有する発振器331と、位相コンパレータ332と、ウィンドウ・コンパレータ333とを備えている。
【0028】
クロック発生器340は、臨界的な温度変化が温度検出器330によって検出されていないときに、局部発振器310の第1のクロック信号311をマスタ・クロック信号371としてデジタルPLL 342の入力に送るマルチプレクサ345を備えている。クロック発生器340は、1つまたは複数の外部基準信号322から導き出される第2のクロック信号321が、第1のクロック信号311と同調していることを保証するように適合されている処理ブロック344をさらに備えている。さらに、処理ブロック344は、適切な係数で第2のクロック信号321を乗算し、または除算するように適合されていることもある。この処理された第2のクロック信号は、マルチプレクサ345へと供給され、また検出された温度変化が臨界値よりも上にあるときに、マルチプレクサ345によって選択されることになる。また、臨界的な変化を検出すると、処理ブロック344のフィードバック・ループの設定は、フリーズされることになり、その結果、第1のクロック信号は、もはや処理された第2のクロック信号に影響を及ぼさなくなることにも注目願いたい。このようにして、DPLL 342へと供給されるマスタ・クロック信号は、臨界的な温度変化が検出されているかどうかに応じて、第1のクロック信号311または処理された第2のクロック信号321’のいずれかになる。温度が再び安定性のあるものになっているときに、マルチプレクサは第1のクロック信号へと切り戻すこともある。スムーズな逆方向への遷移を保証するために、ブロック369において遅延が導入されることもあり、その結果、第1のクロック信号311と処理された第2のクロック信号321’との間に位相差が存在しないときに切り替えは行われるようになり、この位相差は位相コンパレータ368によって検出されるであろう。DPLL 342は、1つまたは複数の外部基準322から導き出される第2のクロック信号321を使用して決定される補正係数を用いて、臨界的な温度変化が検出されているかどうかに応じて、第1のクロック信号311または処理された第2のクロック信号321’のいずれかとなるマスタ・クロック信号371を補正する。
【0029】
処理ブロック344は、基準分周器361と、位相コンパレータ362と、高い帯域幅を有するループ・フィルタ363と、VCO 364と、出力分周器365と、フィードバック分周器366とを備えている。基準分周器361と出力分周器365とは、一般的に、固定された値で構成されている。通常のオペレーションにおいては、すなわち、臨界的な温度が検出されないときに、フィードバック分周器366は位相コンパレータ368と平均化フィルタ367とを使用して、第1のクロック信号311とPLL 344の出力321’との間の位相差に応じた値を用いて構成されている。このようにして、PLLの出力321’は、第1のクロック信号311と位相を合わせることができる。これは、温度勾配の中の、いわゆる、ヒットレス・スイッチオーバーが検出されることを可能にするであろう。さらに、温度勾配が検出されるときに、平均化フィルタ367のパラメータは、温度が再び安定するまでフリーズされる。
【0030】
この第3の実施形態においては、DPLL 342の入り口において、局部発振器310からの第1のクロック信号311は、同じ周波数と位相とを有するクロック321’と置き換えられるが、高い帯域幅を有するVCO 364を通して、選択された外部基準クロックから直接に導き出される。このVCO 364の中の発振器は、ローカル基準としての局部発振器310を無効にする温度の影響を受けることもあるが、VCO出力に対するこの影響はループ・フィルタ363の高い帯域幅の商品の恩恵によって中和されることになり、このループ・フィルタはVCO 364の周波数特性に対する制御電圧の変化にもかかわらず、それが、安定性のある外部基準クロック321を正確に追跡するようにさせるであろう。この第3の実施形態は、システム・クロックが各状況で異なる入力基本クロック371を使用するだけで、両方の状況においてDPLL 342によって生成されたままに留まるので、さらに良好なシステム・クロックの振る舞いを提供することができる。
【0031】
当業者なら、処理ブロック344は、実際に、有害な温度勾配が検出されない限り、局部発振器310によって発生させられる第1のクロック信号311と同一の周波数と位相とにある処理された第2の信号321’を発生させるマスタ・クロックとして第2のクロック信号321を使用するDPLLであることに気が付くであろう。それゆえに、処理ブロック344は、類似した機能を有する他の知られている任意のDPLLによって置き換えられてもよい。
【0032】
上記で開示される実施形態においては分周器または乗算器について言及したが、当業者なら、この分周器/乗算器は「1」による除算/乗算とすることができ、また分周器は乗算器とすることができ、逆もまた同様であることを理解するであろう。
【0033】
上記で考察された抽出器とクロック発生器モジュールとは、当業者には明らかになるように、ハードウェア・コンポーネントおよび/またはソフトウェア・コンポーネントを使用して実施される可能性がある。
【0034】
すべての例証された実施形態では、選択された外部基準クロックの受け入れられない逸脱、ならびにローカル・システム温度における変化の同時に起きる可能性は非常に低く、またシステムについての必要とされた使用可能性またはアップタイム(up−time)よりも下にあることが一般的に仮定される。この条件の下では、説明される実施形態は、両方のタイプの失敗のうちのおのおのに対して保護することになるのに対して、先行技術の実施形態は、選択された外部基準クロックにおける逸脱に対して保護するにすぎず、また常に、安定性のある局部発振器クロックを必要とする。
【0035】
従来の温度センサとスイッチとを含むタイミング依存のシステムは、本発明の実施形態と比べて以下の短所を有する。そのようなセンサとスイッチとは、その冷却を調整するように意図されており、また過熱に対する機器の保護(予防的電源遮断)について意図されている。これらのセンサは、そのうちにそのようなシステムの内部タイミング・ロジックを損なう可能性のあるその種類の温度変動を検出するためにも、またそれゆえに、そのような変動に対して保護するためにも、ほとんど使用されていない。本発明の好ましい実施形態の温度勾配の検出は、1つの低コストの水晶発振器と、位相コンパレータおよびウィンドウ・コンパレータを実施するための非常に小さな追加のシリコン領域のみを必要とするにすぎず、またそれらが、局部発振器に影響を及ぼす前に温度勾配を報告することができる。
【0036】
本発明の原理は特定の実施形態に関連して上記で詳細に説明されてきているが、本説明は単に例として行われているにすぎず、また添付の特許請求の範囲によって決定される保護の範囲を限定するものとしては、行われていないことを理解すべきである。