特許第6133987号(P6133987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6133987
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】シフト制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/28 20060101AFI20170515BHJP
   F16H 59/08 20060101ALI20170515BHJP
   F16H 59/74 20060101ALI20170515BHJP
   F16H 59/66 20060101ALI20170515BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20170515BHJP
   F16H 61/18 20060101ALI20170515BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20170515BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   F16H61/28
   F16H59/08
   F16H59/74
   F16H59/66
   F16H61/02
   F16H61/18
   F16H63/50
   F16H59/54
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-529459(P2015-529459)
(86)(22)【出願日】2014年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2014066653
(87)【国際公開番号】WO2015015954
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2016年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-159809(P2013-159809)
(32)【優先日】2013年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】木下 貴博
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正人
(72)【発明者】
【氏名】寺井 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩一
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−024266(JP,A)
【文献】 特開2011−141001(JP,A)
【文献】 特開2007−32819(JP,A)
【文献】 特開2006−336679(JP,A)
【文献】 特開2004−100680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
61/16−61/24
61/66−61/70
63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイドリングストップ機構及びシフトバイワイヤ機構を備える車両のシフト制御装置において、
自動変速機のシフトレンジを選択する操作を受け付け、当該操作に応じた選択情報を出力するセレクト手段と、
前記セレクト手段により出力される選択情報に応じて自動変速機のシフトレンジを切り替える切替制御手段と、
車両を制動する制動手段と、を備え、
前記切替制御手段は、アイドリングストップ中に後進走行レンジを選択する選択情報が前記セレクト手段により出力された場合において、車両が制動されておらず、かつ、自動変速機のシフトレンジが前進走行レンジのときには、該自動変速機のシフトレンジを中立レンジ又は駐車レンジに切り替えることを特徴とするシフト制御装置。
【請求項2】
前記切替制御手段は、アイドリングストップ中に後進走行レンジを選択する選択情報が前記セレクト手段により出力された場合において、
車両が制動されておらず、かつ、自動変速機のシフトレンジが前進走行レンジ以外のときには、該自動変速機のシフトレンジを切り替えることなく保持することを特徴とする請求項1に記載のシフト制御装置。
【請求項3】
路面の勾配を検出する勾配検出手段をさらに備え、
前記切替制御手段は、アイドリングストップ中に後進走行レンジを選択する選択情報が出力された場合において、
車両が制動されておらず、かつ、前記勾配検出手段により検出された路面の勾配が所定のしきい値よりも大きいときには、自動変速機のシフトレンジを駐車レンジに切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載のシフト制御装置。
【請求項4】
アイドリングストップ中に後進走行レンジを選択する選択情報が出力された場合において、前記切替制御手段により、自動変速機のシフトレンジが後進走行レンジ以外のシフトレンジに切り替えられるとき、及び、該自動変速機のシフトレンジが保持されるときに、運転者に警告を発する警告手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシフト制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト制御装置に関し、特に、アイドリングストップ機構とシフトバイワイヤ機構を有する車両のシフト制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者が選択したシフトレンジをスイッチ等によって検出し、その検出結果に基づいて電動モータ等のアクチュエータを駆動することにより、自動変速機のシフトレンジを電気的に切り替えるシフトバイワイヤ(SBW)機構を備えた車両が実用化されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、車両の燃費向上や排気ガス低減等の観点から、例えば、交差点で信号待ちをしているときなどに、エンジンを自動的に停止するアイドリングストップ機能を有する車両が増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−173607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のシフトバイワイヤ機構を有する車両において、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)が選択されて、自動変速機のシフトレンジが後進走行レンジに切り替えられると、例えば、ブレーキペダルが踏まれていないと、アイドリングストップが解除されてエンジンが自動的に再始動されたときに、運転者が予期しないタイミングで駆動力が発生して車両が後方に動き出すおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、アイドリングストップ機構及びシフトバイワイヤ機構を備える車両のシフト制御装置において、アイドリングストップ状態からの復帰時(エンジン自動再始動時)に、運転者の予期しないタイミングでの発進を防止することが可能なシフト制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシフト制御装置は、アイドリングストップ機構及びシフトバイワイヤ機構を備える車両のシフト制御装置において、自動変速機のシフトレンジを選択する操作を受け付け、当該操作に応じた選択情報を出力するセレクト手段と、セレクト手段により出力される選択情報に応じて自動変速機のシフトレンジを切り替える切替制御手段と、車両を制動する制動手段とを備え、切替制御手段が、アイドリングストップ中に後進走行レンジを選択する選択情報がセレクト手段により出力された場合において、制動手段により車両が制動されているときには自動変速機のシフトレンジを後進走行レンジに切り替え、車両が制動されておらず、かつ、自動変速機のシフトレンジが前進走行レンジのときには、該自動変速機のシフトレンジを中立レンジ又は駐車レンジに切り替えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るシフト制御装置によれば、アイドリングストップ中に後進走行レンジを選択する選択情報が出力された場合に、車両が制動されておらず、かつ、自動変速機のシフトレンジが前進走行レンジのときには、該自動変速機のレンジが中立レンジ又は駐車レンジに切り替えられる。そのため、アイドリングストップが解除されてエンジンが自動的に再始動されたとしても、車輪に駆動力が伝達されないため、車両が制動されていなくても、当該車両が動き出すことが防止される。よって、アイドリングストップ状態からの復帰時(エンジン自動再始動時)に、運転者の予期しないタイミングでの発進を防止することが可能となる。なお、車両が制動されているときには自動変速機のシフトレンジが後進走行レンジに切り替えられるが、このときには、車両が制動されているため、運転者の意図に反して車両が発進する(後方に動き出す)ことはない。
【0009】
本発明に係るシフト制御装置では、切替制御手段が、アイドリングストップ中に後進走行レンジを選択する選択情報がセレクト手段により出力された場合において、車両が制動されておらず、かつ、自動変速機のシフトレンジが前進走行レンジ以外のときには、該自動変速機のシフトレンジを切り替えることなく保持することが好ましい。
【0010】
この場合、自動変速機のシフトレンジが、後進走行レンジに切り替えられることなく、前進走行レンジ以外のレンジ、すなわち、中立レンジ又は駐車レンジに保持される。そのため、アイドリングストップが解除されてエンジンが自動的に再始動されたとしても、車輪に駆動力が伝達されないため、車両が制動されていなくても、当該車両が動き出すことが防止される。よって、アイドリングストップ状態からの復帰時に、運転者の予期しないタイミングでの発進を防止することが可能となる。
【0011】
本発明に係るシフト制御装置では、路面の勾配を検出する勾配検出手段をさらに備え、切替制御手段が、アイドリングストップ中に後進走行レンジを選択する選択情報が出力された場合において、車両が制動されておらず、かつ、勾配検出手段により検出された路面の勾配が所定のしきい値よりも大きいときには、自動変速機のシフトレンジを駐車レンジに切り替えることが好ましい。
【0012】
特に、この場合、路面の勾配が所定のしきい値よりも大きいときには、自動変速機のレンジが駐車レンジに切り替えられる。そのため、例えば坂道等で停車している場合において、車両が制動されていなくとも、車両が動き出すことを確実に防止することが可能となる。
【0013】
本発明に係るシフト制御装置では、アイドリングストップ中に後進走行レンジを選択する選択情報が出力された場合において、切替制御手段により、自動変速機のシフトレンジが後進走行レンジ以外のシフトレンジに切り替えられるとき、及び、該自動変速機のシフトレンジが保持されるときに、運転者に警告を発する警告手段をさらに備えることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、運転者の操作(要求)と異なる切り替え動作、又は保持動作が行われるときに、運転者に対して警告が発せられるため、運転者に注意を促すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アイドリングストップ機構及びシフトバイワイヤ機構を備える車両において、アイドリングストップ状態からの復帰時(エンジン自動再始動時)に、運転者の予期しないタイミングでの発進を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るシフト制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るシフト制御装置によるシフトレンジ切替処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0018】
まず、図1を用いて、実施形態に係るシフト制御装置1の構成について説明する。図1は、シフト制御装置1の構成を示すブロック図である。
【0019】
シフト制御装置1は、主として、自動変速機10のシフトレンジを選択するための操作を受け付けるセレクター20と、選択されたシフトレンジに応じた選択情報を生成して出力するセレクト位置判別ユニット30と、選択情報に基づいて自動変速機10のシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤ・コントロールユニット40とを備えて構成されており、アイドリングストップ機構を有し、かつシフトバイワイヤ式の自動変速機10が搭載された車両において、アイドリングストップ状態からの復帰時(エンジン自動再始動時)に、運転者の予期しない(意図しない)タイミングでの発進を防止する機能を有している。
【0020】
自動変速機10は、エンジン(図示省略)の出力軸に接続され、該エンジンからの駆動力を変換して出力する。ここで、自動変速機10としては、ロックアップクラッチ機能とトルク増幅機能を持つトルクコンバータ、及び、変速ギヤ列とコントロールバルブ(油圧機構)を含むトランスミッション部を有して構成され、コントロールバルブにより自動変速可能に構成された有段自動変速機や、例えばチェーン式等の無段変速機(CVT)等を挙げることができる。なお、本実施形態では、CVTを採用した。エンジンから入力された駆動力は、自動変速機10で変換された後、自動変速機10の出力軸からディファレンシャルギヤ、ドライブシャフト等(図示省略)を介して車両の駆動輪に伝達される。
【0021】
自動変速機10には、シフトバイワイヤ・コントロールユニット(以下「SBW−CU」という)40と電気的に接続され、該SBW−CU40からの制御信号(駆動信号)に応じて、自動変速機10のシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤ・アクチュエータ(以下「SBWアクチュエータ」という)11が取り付けられている。なお、SBW−CU40とSBWアクチュエータ11とは、一体的に構成されていてもよい。
【0022】
SBWアクチュエータ11は、SBW−CU40からの制御信号に応じて、自動変速機10のマニュアル弁を動かして、自動変速機10のシフトレンジを切り替える。SBWアクチュエータ11は、マニュアル弁を動かす電動モータ12、及び、マニュアル弁の位置すなわち自動変速機10のシフトレンジを検出する位置センサ13を含んで構成されている。ここで、自動変速機10は、5つのシフトレンジ、すなわち、駐車レンジ(パーキング(P)レンジ)、後進走行レンジ(リバース(R)レンジ)、中立レンジ(ニュートラル(N)レンジ)、前進走行レンジ(ドライブ(D)レンジ)、及び、手動レンジ(マニュアル(M)レンジ)を取り得るように構成されている。
【0023】
また、例えば車両のセンターコンソール等には、運転者による自動変速機10のシフトレンジを択一的に選択する操作を受け付け、受け付けた選択操作に応じた電気信号(選択信号)を出力するセレクター20が配設されている。セレクター20は、例えば、5つのスイッチ、すなわち、駐車レンジ(Pレンジ)を選択するパーキング(P)スイッチ20a、後進走行レンジ(Rレンジ)を選択するリバース(R)スイッチ20b、中立レンジ(Nレンジ)を選択するニュートラル(N)スイッチ20c、前進走行レンジ(Dレンジ)を選択するドライブ(D)スイッチ20d、及び、マニュアルシフトレンジ(Mレンジ)を選択するマニュアル(M)スイッチ20eを有している。これらの5つのスイッチ20a〜20eそれぞれは、指等で押下されている間だけオン状態となり、指等が離されるとオフ状態に戻る自動復帰型のスイッチ(モーメンタリスイッチ)が好適に用いられる。
【0024】
セレクター20は、セレクト位置判別ユニット30と電気的に接続されており、押下されたスイッチに応じた電気信号(選択信号)をセレクト位置判別ユニット30に出力する。なお、セレクター20に代えて、レバータイプのセレクト機構を用いてもよい。
【0025】
セレクト位置判別ユニット30は、セレクター20からの電気信号(すなわちスイッチ入力)を読み込み、選択されたシフトレンジに応じた選択情報を生成して出力する。より具体的には、セレクト位置判別ユニット30は、CAN(Controller Area Network)100を介して、シフトバイワイヤ・コントロールユニット(以下「SBW−CU」という)40に接続されており、上記選択情報をSBW−CU40に出力する。すなわち、セレクター20、及びセレクト位置判別ユニット30は、請求の範囲に記載のセレクト手段として機能する。
【0026】
上述したように、SBW−CU40は、SBWアクチュエータ11と電気的に接続されている。また、SBW−CU40は、CAN100を介して、セレクト位置判別ユニット30、トランスミッション・コントロールユニット(以下「TCU」という)50、エンジン・コントロールユニット(以下「ECU」という)60、アイドルストップ・コントロールユニット(以下「ISCU」という)70、ビークルダイナミック・コントロールユニット(以下「VDCU」という)80、及びメータ・コントロールユニット(以下「MCU」という)90等と通信可能に接続されている。
【0027】
ここで、各コントロールユニットについて説明する。まず、TCU50は、自動変速機10の変速制御を司る。TCU50には、自動変速機10に設けられた出力軸回転センサ16や、レンジスイッチ(インヒビタスイッチ:PレンジとNレンジ以外でスタータモータが回らないように電気的にインヒビットするスイッチ)17等が接続されている。また、TCU50は、CAN100を通して、ECU60から送信されたエンジンの回転数やアクセルペダル開度等の情報、及びSBW−CUから送信された自動変速機10のシフトレンジ等の情報を受信する。
【0028】
TCU50は、取得したエンジン回転数、出力軸回転数(車速)、アクセルペダル開度、及びシフトレンジ等の各種情報に基づいて、コントロールバルブ15を構成するソレノイドバルブを駆動し、自動変速機10の変速制御等を行う。ここで、コントロールバルブ15は、自動変速機10を変速させるための油圧をコントロールする。より具体的には、コントロールバルブ15は、スプールバルブと該スプールバルブを動かすソレノイドバルブ(電磁弁)を用いて油路を開閉することで、オイルポンプで発生した油圧を、例えば、ドライブプーリやドリブンプーリ等に供給する。なお、TCU50は、自動変速機10の各種情報を、CAN100を介して、SBW−CU40に送信する。
【0029】
ECU60は、各種センサから入力される検出信号に基づいて、エンジン回転数、吸入空気量、混合気の空燃比、アクセルペダル開度等の各種情報を取得し、取得した各種情報に基づいて、燃料噴射や点火、及び各種アクチュエータ等を制御することによりエンジンを総合的に制御する。ECU60は、取得したエンジン回転数等の情報を、CAN100を介して、SBW−CU40に送信する。
【0030】
ISCU70は、燃費を低減するとともに、排出されるエミッションを低減するために、所定のアイドリングストップ条件が満足された場合にエンジンを自動的に停止する。その後、所定のアイドリングストップ解除条件が満足されたときに、ISCU70はエンジンを再始動する。ISCU70は、アイドリングストップ中であることを示す情報等を、CAN100を介して、SBW−CU40に送信する。
【0031】
VDCU80には、ブレーキアクチュエータ83のマスタシリンダ圧力を検出するブレーキ油圧センサ81、及び、前後・左右の加速度を検出する加速度センサ82等が接続されている。なお、加速度センサ82は、路面の勾配を検出する勾配検出手段としても機能する。VDCU80は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータ83を駆動して車両を制動するとともに、車両挙動を各種センサ(例えば車輪速センサ、操舵角センサ、加速度センサ82、ヨーレートセンサ等)により検知し、自動加圧によるブレーキ制御とエンジンのトルク制御により、横滑りを抑制し、旋回時の車両安定性を確保する。VDCU80は、ブレーキング情報(車両の制動情報)や路面の勾配情報等を、CAN100を介して、SBW−CU40に送信する。VDCU80及びブレーキアクチュエータ83は、請求の範囲に記載の制動手段として機能し、VDCU80及び加速度センサ82は、請求の範囲に記載の勾配検出手段として機能する。
【0032】
MCU90は、例えば、メータ内やダッシュボードの上部などに配設されたLCDディスプレイやスピーカを有する表示部91と接続されており、該表示部91を駆動して、車両及び自動変速機10等の状態や各種情報を運転者に提示する。特に、MCU90は、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)を選択する操作が受け付けられた場合において、自動変速機10のシフトレンジが後進走行レンジ以外のレンジに切り替えられるとき、及び、該自動変速機10のシフトレンジが保持されるときに、運転者に対して警告及び/又はインフォメーションを発する。その際に、MCU90は、表示部91を駆動し、例えば、「ブレーキ踏んでシフト操作してください」といった文字を表示したり、「ポーン」といった警告音を出力する。すなわち、MCU90及び表示部91は、請求の範囲に記載の警告手段として機能する。
【0033】
SBW−CU40は、セレクト位置判別ユニット30から受信した選択情報、ISCU70から受信したアイドリングストップ情報、VDCU80から受信したブレーキング情報(制動情報)並びに路面勾配情報、TCU50から受信した各種入力情報、及び、ECU60から受信したエンジン回転数等に基づいて制御信号(モータ駆動信号)を生成して出力し、SBWアクチュエータ11を駆動することにより自動変速機10のシフトレンジを切り替える。
【0034】
そのため、SBW−CU40は、切替制御部41を機能的に備えている。SBW−CU40は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。SBW−CU40では、ROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、切替制御部41の機能が実現される。
【0035】
切替制御部41は、セレクト位置判別ユニット30により出力される選択情報に応じて制御信号(モータ駆動信号)をSBWアクチュエータ11に出力し、自動変速機10のシフトレンジを切り替える。すなわち、切替制御部41及びSBWアクチュエータ11は、請求の範囲に記載の切替制御手段として機能する。
【0036】
特に、切替制御部41は、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)を選択する操作が受け付けられた場合において、車両が制動されているときには自動変速機10のシフトレンジを後進走行レンジに切り替える。一方、切替制御部41は、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)を選択する操作が受け付けられた場合において、車両が制動されておらず、かつ、自動変速機10のレンジが前進走行レンジ(Dレンジ)のときには、自動変速機10のシフトレンジを中立レンジ(Nレンジ)又は駐車レンジ(Pレンジ)に切り替える。
【0037】
また、切替制御部41は、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)を選択する操作が受け付けられた場合において、車両が制動中ではなく、かつ、自動変速機10のシフトレンジが前進走行レンジ(Dレンジ)以外のとき(すなわち、Pレンジ又はNレンジのとき)には、自動変速機10のシフトレンジを切り替えることなく保持する。
【0038】
なお、上述したように、Nレンジ/Pレンジに切り替える際、又は、Nレンジ/Pレンジを保持する際に、切替制御部41は、路面の勾配が所定のしきい値(例えば30°)よりも大きいときには、自動変速機10のシフトレンジを駐車レンジ(Pレンジ)に切り替えることが好ましい。
【0039】
なお、上述したように、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)を選択する操作が受け付けられた場合において、自動変速機10のシフトレンジが後進走行レンジ以外のシフトレンジに切り替えられるとき、及び、自動変速機10のシフトレンジが保持されるときには、運転者に対して警告及び/又はインフォメーションが発せられる。より具体的には、表示部91において「ブレーキ踏んでシフト操作してください」といった文字が表示されたり、「ポーン」といった警告音が出力される。
【0040】
次に、図2を参照しつつ、シフト制御装置1の動作について説明する。図2は、シフト制御装置1によるシフトレンジ切替処理の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、SBW−CU40において、所定時間毎(例えば10ms毎)に繰り返して実行される。
【0041】
ステップS100では、アイドリングストップ中(エンジン自動停止中)であるか否かについての判断が行われる。ここで、アイドリングストップ中ではない場合、すなわちエンジンが稼動している場合には、本処理から一旦抜ける。一方、アイドリングストップ中であるときには、ステップS102に処理が移行する。
【0042】
ステップS102では、セレクト位置判別ユニット30によりRレンジ要求が検出されたか否か(Rレンジスイッチ20bが押下げられたか否か)についての判断が行われる。ここで、Rレンジ要求が検出されていない場合には、本処理から一旦抜ける。一方、Rレンジ要求が検出されたときには、ステップS104に処理が移行する。
【0043】
ステップS104では、ブレーキペダルが踏み込まれているか否か(車両が制動されているか否か)についての判断が行われる。ここで、ブレーキペダルが踏み込まれている場合(すなわち車両が制動されている場合)には、ステップS106に処理が移行する。一方、ブレーキペダルが踏み込まれていないときには、ステップS108に処理が移行する。
【0044】
ステップS106では、自動変速機10のシフトレンジがRレンジとなるようにSBWアクチュエータ11が駆動され、シフトレンジがRレンジに切り替えられる。その後、本処理から一旦抜ける。
【0045】
一方、ステップS108では、現在の自動変速機10のシフトレンジがDレンジであるか否かについての判断が行われる。ここで、現在のシフトレンジがDレンジの場合には、ステップS110に処理が移行する。一方、現在のシフトレンジがDレンジではないときには、ステップS112に処理が移行する。
【0046】
ステップS110では、自動変速機10のシフトレンジがPレンジ(又はNレンジ)となるようにSBWアクチュエータ11が駆動され、シフトレンジがPレンジ(又はNレンジ)に切り替えられる。その後、本処理から一旦抜ける。なお、ここで、加速度センサ(勾配センサ)82により検出された路面の勾配が所定のしきい値(例えば30°)よりも大きい場合には、Pレンジに切り替え、路面の勾配が上記所定のしきい値以下のときには、Nレンジ(又はPレンジ)に切り替えるようにしてもよい。また、ステップS110では、運転者に対して、警告及び/又はインフォメーション(例えば、「ポーン」といった警告音や「ブレーキ踏んでシフト操作してください」といった表示等)が出力される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0047】
一方、現在のシフトレンジがDレンジではないとき(すなわち、Nレンジ又はPレンジのとき)には、ステップS112では、Rレンジへの切り替えが禁止され、現在のシフトレンジが保持される。また、ステップS112では、運転者に対して、警告及び/又はインフォメーションが出力される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0048】
以上、説明したように、本実施形態によれば、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)を選択する選択情報が出力された場合に、車両が制動されておらず、かつ、自動変速機10のシフトレンジが前進走行レンジ(Dレンジ)のときには、自動変速機10のシフトレンジが中立レンジ(Nレンジ)又は駐車レンジ(Pレンジ)に切り替えられる。そのため、アイドリングストップが解除されてエンジンが自動的に再始動されたとしても、車輪に駆動力が伝達されないため、車両が制動されていなくても当該車両が動き出すことが防止される。よって、アイドリングストップ状態からの復帰時(エンジン自動再始動時)に、運転者の予期しない(意図しない)タイミングでの発進を防止することが可能となる。なお、車両が制動されているときには自動変速機10のシフトレンジが後進走行レンジ(Rレンジ)に切り替えられるが、このときには、車両が制動されているため、運転者の意図に反して車両が発進する(後方に動き出す)ことはない。
【0049】
また、本実施形態によれば、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)を選択する選択情報が出力された場合において、車両が制動されておらず、かつ、自動変速機10のシフトレンジが前進走行レンジ(Dレンジ)以外のときには、自動変速機10のレンジが、後進走行レンジ(Rレンジ)に切り替えられることなく、前進走行レンジ以外のレンジ、すなわち、中立レンジ(Nレンジ)又は駐車レンジ(Pレンジ)に保持される。そのため、アイドリングストップが解除されてエンジンが自動的に再始動されたとしても、車輪に駆動力が伝達されないため、車両が制動されていなくても当該車両が動き出すことが防止される。よって、アイドリングストップ状態からの復帰時に、運転者の予期しないタイミングでの発進を防止することが可能となる。
【0050】
本実施形態によれば、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)を選択する選択情報が出力された場合において、車両が制動されておらず、かつ、路面の勾配が所定のしきい値よりも大きいときには、自動変速機10のレンジが駐車レンジ(Pレンジ)に切り替えられる。そのため、例えば坂道等で停車している場合において、車両が制動されていなくとも当該車両が動き出すことを確実に防止することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態によれば、アイドリングストップ中に後進走行レンジ(Rレンジ)を選択する選択情報が出力された場合において、自動変速機10のシフトレンジが後進走行レンジ(Rレンジ)以外のシフトレンジに切り替えられるとき、及び、自動変速機10のシフトレンジが保持されるときに、運転者に対して警告が発せられる。そのため、運転者の操作(要求)と異なる切り替え動作、又は保持動作が行われるときに、運転者に注意を促すことができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態のシステム構成は一例であり、本発明のシステム構成は上記実施形態には限られない。例えば、SBW−CU40とSBWアクチュエータ11を一体にしてもよい。また、SBW−CU40とTCU50とを一つのユニットとしてもよい。また、SBW−CU40とセレクト位置判別ユニット30とを一つのユニットに統合してもよい。さらに、ECU60とISCU70とを一つのユニットに統合してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 シフト制御装置
10 自動変速機
11 シフトバイワイヤ・アクチュエータ
20 セレクター
30 セレクト位置判別ユニット
40 シフトバイワイヤ・コントロールユニット
41 切替制御部
50 トランスミッション・コントロールユニット
60 エンジン・コントロールユニット
70 アイドルストップ・コントロールユニット
80 ビークルダイナミック・コントロールユニット
81 ブレーキ油圧センサ
82 加速度センサ(勾配センサ)
83 ブレーキアクチュエータ
90 メータ・コントロールユニット
91 表示部
100 CAN
図1
図2