(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記算出工程は、前記回転工具が有する前記底面部分を、前記工具回転軸線に直交する仮想平面上の円形領域に変換するとともに、前記円形領域における前記接触領域の大きさを算出する、請求項1に記載の工具経路評価方法。
前記移動後の工具経路による加工後のワークに残存する削り残し部分を加工するための補助の工具経路を生成する補助経路生成工程をさらに含む、請求項5に記載の工具経路生成方法。
前記算出部は、前記回転工具が有する前記底面部分を、前記工具回転軸線に直交する仮想平面上の円形領域に変換するとともに、前記円形領域における前記接触領域の大きさを算出する、請求項10に記載の工具経路生成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CAM装置により生成される加工プログラムに含まれる工具経路は、例えば、ワークの目標形状の外形に沿った経路であり、ワークの加工中に工具に加わる負荷を考慮した経路ではない。ところが、ワークの加工中に工具に過剰に負荷が加わると、工具が破損したり、工具が撓んで加工精度が低下したり、工作機械の主軸に過度の負荷が加わったりする虞がある。そのため、従来から、工具とワークの接触量を求めて負荷を予測し、工具経路を生成する方法が発明されており、特許文献1でも公開されている。
【0006】
回転工具の円筒部側面は刃先の周速が速いため、接触量が多くても加工できる。これに対し、回転工具の底面は、中心部分に刃先の周速が零となる点があり、同じ接触量であっても加工できないことがある。また、回転工具の底面では、中心部分以外も刃先の周速が遅く、少ない接触量でも工具が破損するなどの問題が発生しやすい。このように、工具とワークの接触量で負荷を予測してしまうと、負荷を適切に評価することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の工具経路評価方法は、ワークに対して回転工具が相対移動しながらワークを加工するときの工具経路を評価する工具経路評価方法である。工具経路評価方法は、予め定められた目標工具経路と、目標工具経路による加工前のワークの形状とに基づいて、工具回転軸線に交差する回転工具先端の底面部分における、目標工具経路による加工中にワークに実際に接触すると予測される接触領域の大きさを算出する算出工程と、接触領域の大きさが予め定められた閾値を超える場合に、目標工具経路が不適切であると判定する判定工程と、を含む。
【0008】
上記発明において、算出工程は、接触領域の大きさを、底面部分の面積に対する接触領域の面積の割合として求めることができる。
【0009】
上記発明において、算出工程は、回転工具が有する底面部分を、工具回転軸線に直交する仮想平面上の円形領域に変換するとともに、円形領域における接触領域の大きさを算出することができる。
【0010】
本発明の工具経路評価方法は、ワークに対して回転工具が相対移動しながらワークを加工するときの工具経路を評価する工具経路評価方法である。工具経路評価方法は、予め定められた目標工具経路と、目標工具経路による加工前のワークの形状とに基づいて、工具回転軸線に交差する回転工具先端の底面部分における、目標工具経路による加工中にワークに実際に接触すると予想される接触領域を求める工程と、接触領域の少なくとも一部が底面部分における予め定められた中心領域に重なる場合に、目標工具経路が不適切であると判定する工程と、を含む。
【0011】
本発明の工具経路生成方法は、ワークに対して回転工具が相対移動しながらワークを加工するときの工具経路を生成する工具経路生成方法である。工具経路生成方法は、予め定められた目標工具経路と、目標工具経路による加工前のワークの形状とに基づいて、工具回転軸線に交差する回転工具先端の底面部分における、目標工具経路による加工中にワークに実際に接触すると予測される接触領域の大きさを算出する算出工程と、接触領域の大きさが予め定められた閾値を超える場合に、接触領域の大きさが閾値以下になるまで目標工具経路を移動した移動後の工具経路を生成する移動後経路生成工程と、を含む。
【0012】
上記発明において、工具経路生成方法は、移動後の工具経路による加工後のワークに残存する削り残し部分を加工するための補助の工具経路を生成する補助経路生成工程をさらに含むことができる。
【0013】
上記発明において、移動後の工具経路は、工具回転軸線方向に沿ってワークから離れる向きに目標工具経路を移動した工具経路であることが好ましい。
【0014】
上記発明において、補助経路生成工程は、目標工具経路と、移動後の工具経路による加工後のワークの形状とに基づいて、接触領域の大きさを算出する追加の算出工程と、追加の算出工程により算出した接触領域の大きさが閾値を超える場合に、追加の算出工程により算出した接触領域の大きさが閾値以下になるまで目標工具経路を移動した移動後の工具経路を生成する追加の移動後経路生成工程と、を含むことができる。補助経路生成工程は、追加の算出工程により算出した接触領域の大きさが閾値以下になるまで、追加の算出工程、及び追加の移動後経路生成工程を繰り返すことができる。
【0015】
本発明の工具経路生成方法は、ワークに対して回転工具が相対移動しながらワークを加工するときの工具経路を評価する工具経路生成方法である。工具経路生成方法は、予め定められた目標工具経路と、目標工具経路による加工前のワークの形状とに基づいて、工具回転軸線に交差する回転工具先端の底面部分における、目標工具経路による加工中にワークに実際に接触すると予想される接触領域を求める工程と、接触領域の少なくとも一部が底面部分における予め定められた中心領域に重なる場合に、接触領域の全体が中心領域から離脱するまで目標工具経路を移動した移動後の工具経路を生成する工程と、を含む。
【0016】
本発明の工具経路生成装置は、ワークに対して回転工具が相対移動しながらワークを加工するときの工具経路を生成する工具経路生成装置である。工具経路生成装置は、予め定められた目標工具経路と、目標工具経路による加工前のワークの形状とに基づいて、工具回転軸線に交差する回転工具先端の底面部分における、目標工具経路による加工中にワークに実際に接触すると予測される接触領域の大きさを算出する算出部と、接触領域の大きさが予め定められた閾値を超える場合に、接触領域の大きさが閾値以下になるまで目標工具経路を移動した移動後の工具経路を生成する移動後経路生成部と、移動後の工具経路による加工後のワークに残存する削り残し部分を加工するための補助の工具経路を生成する補助経路生成部と、を備える。
【0017】
上記発明において、算出部は、接触領域の大きさを、底面部分の面積に対する接触領域の面積の割合として求めることができる。
【0018】
上記発明において、算出部は、回転工具が有する底面部分を、工具回転軸線に直交する仮想平面上の円形領域に変換するとともに、円形領域における接触領域の大きさを算出することができる。
【0019】
上記発明において、移動後の工具経路は、工具回転軸線方向に沿ってワークから離れる向きに目標工具経路を移動した工具経路であることが好ましい。
【0020】
本発明の工具経路生成装置は、ワークに対して回転工具が相対移動しながらワークを加工するための工具経路を生成する工具経路生成装置である。工具経路生成装置は、予め定められた目標工具経路と、目標工具経路による加工前のワークの形状とに基づいて、工具回転軸線に交差する回転工具先端の底面部分における、目標工具経路による加工中にワークに実際に接触すると予想される接触領域を求める接触領域算出部と、接触領域の少なくとも一部が底面部分における予め定められた中心領域に重なる場合に、接触領域の全体が中心領域から離脱するまで目標工具経路を移動した移動後の工具経路を生成する移動後経路生成部と、移動後の工具経路による加工後のワークに残存する削り残し部分を加工するための補助の工具経路を生成する補助経路生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、工作機械によるワークの加工中に工具に過度の負荷が加わるかどうかを、工具の底面が接触領域に含まれるか否かを考慮した上で適切に評価することができる。これにより、過度の負荷が加わることを回避するための工具経路を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から
図16を参照して、本発明の第1の実施の形態における工具経路評価方法、工具経路生成方法、工具経路生成装置、及び工作機械の数値制御装置について説明する。本発明における工具経路とは、ワークを加工するときのワークに対する回転工具の相対的な経路を意味している。
【0024】
図1は、本実施の形態における加工システムのブロック図である。本実施の形態の加工システムは、CAD装置10、CAM装置20、及び工作機械40を備える。CAD装置10は、使用者の操作に従ってワークの目標形状データD1を生成する。CAD装置10により生成された目標形状データD1は、CAM装置20に入力される。
【0025】
CAM装置20は、ワークを目標形状に加工するための第2の加工プログラムP2を出力する。CAM装置20は、形状データ読取部21及び経路設定部22を備えている。形状データ読取部21は、CAD装置10で生成された目標形状データD1を読み取る。経路設定部22は、目標形状データD1等に基づいて工具経路を生成する。また、経路設定部22は、その工具経路が設定された加工プログラムを生成する。本実施の形態では、経路設定部22により生成される初期の工具経路を目標工具経路R1と称する。また、経路設定部22により生成される加工プログラムを第1の加工プログラムP1と称する。
【0026】
CAM装置20は、加工プログラム変更部30を備えている。加工プログラム変更部30は、目標工具経路R1を変更して変更後工具経路R2を生成する。そして、加工プログラム変更部30は、変更後工具経路が設定された第2の加工プログラムP2を生成する。CAM装置20は、本発明の工具経路生成装置として機能する。
【0027】
CAM装置20により生成された第2の加工プログラムP2は、工作機械40に送出される。工作機械40は、数値制御装置50及び各軸サーボモータSを備えている。数値制御装置50は、第2の加工プログラムP2を読み取り解釈するとともに補間演算を実施する。数値制御装置50は、第2の加工プログラムP2に基づいて各軸サーボモータSに動作指令を送出する。そして、動作指令に従って各軸サーボモータSが駆動することによって回転工具がワークに対して相対移動する。
【0028】
図2に、本実施の形態における工作機械40の概略側面図を示す。工作機械40は、ワークWを回転テーブル46とともに旋回させるテーブル旋回型の工作機械である。工作機械40には、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が設定されている。Z軸は、主軸43がワークWに向かって移動する直動送り軸である。Y軸は、キャリッジ47が移動する直動送り軸である。Z軸及びY軸に垂直な直動送り軸がX軸に設定されている。また、工作機械40は、Y軸に対して平行に延びる軸線周りの回転軸としてB軸を有している。さらに、Z軸に対して平行に延びる軸線周りの回転軸としてC軸を有している。
【0029】
工作機械40は、基台であるベッド41と、ベッド41の上面に立設されるコラム42を備えている。工作機械40は、主軸43を回転可能に支持する主軸頭44と、主軸頭44をコラム42の前方に支持するサドル45とを備えている。主軸頭44は、主軸43の先端が回転テーブル46に対向するように主軸43を下向きに支持している。主軸43の先端には回転工具Tが装着される。
【0030】
工作機械40は、ワークWが配置される回転テーブル46と、回転テーブル46を支持するU字形の揺動支持部材48とを備えている。工作機械40は、揺動支持部材48を支持するU字形のキャリッジ47を備えている。キャリッジ47は、Y軸方向に離間された一対の支柱47a,47bにおいて揺動支持部材48を支持している。揺動支持部材48は、Y軸方向の両側の端部がキャリッジ47に支持されている。揺動支持部材48は、B軸方向に揺動可能に支持されている。
【0031】
工作機械40は、それぞれの移動軸に基づいてワークに対して回転工具を相対的に移動させる移動装置を備えている。移動装置は、それぞれの移動軸に沿って駆動する各軸サーボモータSを含んでいる。移動装置は、コラム42に対してサドル45をX軸方向に移動させる。移動装置は、ベッド41に対してキャリッジ47をY軸方向に移動させる。コラム42には、キャリッジ47が部分的に進入可能なように空洞部42cが形成されている。また、移動装置は、サドル45に対して主軸頭44をZ軸方向に移動させる。移動装置は、回転テーブル46を含んでいる。回転テーブル46は、揺動支持部材48に対してC軸方向に回転する。さらに、移動装置は、キャリッジ47に対して、B軸方向に揺動支持部材48を回転させる。このように、工作機械40は、互いに直交する3つの直動軸と、2つの回転軸とを有する。本実施の形態の工作機械40は、5軸制御の工作機械である。
【0032】
本実施の形態では、このような5軸制御の工作機械40によってワークを加工する。
図3は、CAM装置20の加工プログラム変更部30における工具経路変更部35のブロック図である。
図1及び
図3を参照して、CAM装置20の加工プログラム変更部30について詳細に説明する。加工プログラム変更部30は、入力部31、接触領域算出部32a、判定部33a、表示部34、工具経路変更部35、及びプログラム生成部39aを含んでいる。入力部31には、第1の加工プログラムP1、ワークWの初期形状データD2、工具形状データD3、及び閾値D4が入力される。第1の加工プログラムP1には、予め定められた目標工具経路R1が含まれている。目標工具経路R1は、例えば、ワークの目標形状に沿った工具経路である。初期形状データD2は、例えば、ワークWを加工する前の素材の形状データである。工具形状データD3は、工具の種類や寸法等のデータである。工具形状データD3には、回転工具の底面部分の形状や寸法等が含まれている。閾値D4は、ワークWの加工中に回転工具の底面部分に加わる負荷の大きさを判定するための判定値である。本実施形態における負荷とは、ワークWと回転工具Tとが接触したときにワークWから回転工具Tに作用する荷重を意味する。
【0033】
図4は、1つの回転工具を示す側面図であり、フラットエンドミルが示されている。
図5は、他の回転工具を示す側面図であり、ラジアスエンドミルが示されている。
図6は、さらに他の回転工具を示す側面図であり、ボールエンドミルが示されている。
図4から
図6のように、本実施の形態では、回転工具Tの回転軸線TSに交差する工具先端の全部又は一部を回転工具Tの底面部分TBとしている。例えば、フラットエンドミル及びラジアスエンドミルについては、回転軸線TSに直交する平面状の工具先端を底面部分TBとすることができる。また、ボールエンドミルについては、回転軸線TSに交差する曲面状の工具先端の一部を底面部分TBとすることができる。より具体的には、ボールエンドミルの工具中心点aを頂点とする仮想錐体の頂点の角度θ1を指定することができる。そして、ボールエンドミルの曲面状の工具先端のうちの仮想錐体に含まれる部分を底面部分TBとすることができる。
【0034】
図1を参照すると、接触領域算出部32aは、目標工具経路R1と加工前のワークWの形状とに基づいて、目標工具経路R1による加工中にワークWに実際に接触すると予測される底面部分TBにおける接触領域ATの大きさを算出する。
図7は、ワークWに対して相対移動しながらワークWを加工する回転工具Tを示す概略断面図である。
図8は、
図7における回転工具Tの部分を拡大して示す斜視図である。また、
図9は、
図8における回転工具Tの底面部分TBを示す斜視図である。
図7における矢印A1は、或る工具経路に沿ってワークWに対して相対移動する回転工具Tの進行方向を示している。
【0035】
図7において、回転工具Tの回転軸線TSは、進行方向に垂直な仮想平面VP1に対して進行方向と逆向きに傾斜している。仮想平面VP1は工具先端点bを通る平面である。このような場合には、ワークWに対して相対移動する回転工具Tの底面部分TBにワークWからの負荷が作用することがある。そこで、本実施の形態では、上述した場合に工具経路が適切であるかどうかを判定する。なお、回転軸線TSが進行方向の逆向きに傾斜した状態とは、回転工具Tの回転軸線TSが仮想平面VP1よりも後方(すなわち、進行方向の反対側)に位置している状態である。
【0036】
図8におけるハッチング部分は、ワークWに対して相対移動している回転工具Tの外面のうちワークWに接触している部分を示している。また、
図9におけるハッチング部分は、底面部分TBにおける接触領域ATを示している。本実施の形態における接触領域算出部32aは、目標工具経路R1と加工前のワークWの形状とに基づいて接触領域ATの大きさを算出する。例えば、接触領域算出部32aは、底面部分TBの面積に対する接触領域ATの面積の割合を算出する。これにより接触領域算出部32aの処理が簡略化される。ただし、接触領域算出部32aは、底面部分TBの寸法(例えば、直径や外周等)に対する接触領域ATの寸法を算出してもよい。例えば、接触領域算出部32aは、底面部分TBの外周のうちの接触領域ATが存在する部分の外周の長さの比率を算出することもできる。算出された接触領域ATの大きさは判定部33aに送信される。
【0037】
また、接触領域算出部32aは、回転工具Tの実際の底面部分TBを、回転軸線TSに直交する仮想平面上の円形領域に変換するとともに、その円形領域における接触領域ATの大きさを算出することができる。
図10は、1つの回転工具の側面及び円形領域を示す概略図であり、ラジアスエンドミルが示されている。
図10において、回転工具Tの実際の底面部分TBは、回転軸線TSに直交する仮想平面VP2上で、かつ回転軸線TSに中心が一致する円形領域ARに変換されている。このようにして実際の底面部分TBを円形領域ARに変換することによって、底面部分TBが平面状でない場合や工具先端に切削刃が設けられている場合における接触領域算出部32aの処理を簡略化できる。
【0038】
図1を参照すると、判定部33aは、所定の間隔ごとに設定された目標工具経路R1上の移動点のそれぞれについて、接触領域ATの大きさと閾値D4とを比較する。
図11は、目標工具経路R1に沿ってワークWに対して相対移動する回転工具Tを概略的に示す断面図である。
図11には、目標工具経路R1上の移動点MP31,MP32,MP33が示されている。本実施の形態において、判定部33aは、目標工具経路R1上の移動点において接触領域ATの大きさが閾値D4を超える場合に、目標工具経路R1を不適切と判定する。以下の説明において、接触領域ATの大きさが閾値D4を超える移動点のことを特に過負荷移動点と称する。
【0039】
図11の例では、移動点MP31及び移動点MP33においては、左から右方向へと回転工具Tが進んでおり回転工具Tの側面での切削になる。この場合は、底面部分TBがワークに接触しないので接触領域ATの大きさが零となり、工具経路が適切であると判断される。移動点MP32においては、上から下方向へと回転工具Tが進んでおり回転工具Tの底面部分TBの全体が接触する切削になり、移動点MP32は過負荷移動点と判断される。
【0040】
他方、判定部33aは、目標工具経路R1上のどの移動点においても接触領域ATの大きさが閾値D4以下である場合には、目標工具経路R1を適切と判定する。この場合、判定部33aは、目標工具経路R1と同一の変更後工具経路R2を生成してプログラム生成部39aに送出する。プログラム生成部39aは、変更後工具経路R2に基づいて第2の加工プログラムP2を生成する。
【0041】
図3のように、工具経路変更部35は、移動後経路生成部37a、補助経路生成部38、及びプログラム生成部39bを含んでいる。移動後経路生成部37aは、目標工具経路R1が不適切と判定された場合に、接触領域ATの大きさが閾値D4以下になるまで目標工具経路R1を移動した移動後工具経路R3を生成する。移動後工具経路R3は、例えば、目標工具経路R1の一部又は全部を回転軸線TSに沿ってワークWから離れる向きに移動した工具経路である。
【0042】
図12は、
図11の過負荷移動点MP32を回避した移動後工具経路R3に沿ってワークWに対して相対移動する回転工具Tを概略的に示す断面図である。移動後経路生成部37aは、目標工具経路R1上の過負荷移動点MP32を回転工具Tの回転軸線方向に沿ってワークWから離れる向きに(すなわち、図中の矢印A2の方向に)移動させて新たな移動点MP32’を生成する。この場合の移動後工具経路R3は、移動点MP31,MP32’,MP33を含む工具経路である。
【0043】
このように、本実施の形態の工具経路変更部35は、目標工具経路R1が不適切であると判定された場合に、目標工具経路R1上の過負荷移動点を工具経路Tの回転軸線方向に沿って移動させることによって移動後工具経路R3を生成している。これにより、移動後工具経路R3において、主軸43や主軸頭44がワークWに干渉することを防止できる。ただし、移動後経路生成部37aは、目標工具経路R1上の過負荷移動点を工具経路Tの回転軸線方向とは異なる方向に移動させることもできる。例えば、移動後経路生成部37aは、ワークWの加工面に対する回転軸線TSの傾斜角度を変更することによって新たな移動点MP32’を生成することもできる。
【0044】
ところで、移動後工具経路R3による加工後のワークWには、目的形状に対する削り残し部分が残存することになる。
図12における目標工具経路R1と移動後工具経路R3との間の部分が、この削り残し部分である。そこで、本実施の形態の補助経路生成部38は、ワークWの削り残し部分を加工するための補助工具経路を生成する。
図3のように、補助経路生成部38は、追加の接触領域算出部32b、追加の判定部33b、及び追加の移動後経路生成部37bを含んでいる。
【0045】
追加の接触領域算出部32bは、前述した接触領域算出部32aと同様の機能を有する。より具体的に、追加の接触領域算出部32bは、目標工具経路R1と移動後工具経路R3による加工後のワークWの形状とに基づいて接触領域ATの大きさを算出する。すなわち、追加の接触領域算出部32bは、現在までに生成した移動後工具経路R3による加工後のワークWを目標工具経路R1に従って加工するときの接触領域ATの大きさを算出する。
【0046】
追加の判定部33bは、前述した判定部33aと同様の機能を有する。すなわち、追加の判定部33bは、追加の接触領域算出部32bで算出した接触領域ATの大きさと閾値D4とを比較することによって目標工具経路R1が適切であるかどうかを判定する。追加の判定部33bによる判定結果は表示部34に送信される。そして、追加の判定部33bは、目標工具経路R1を適切と判定した場合に、現在までに生成した移動後工具経路R3と目標工具経路R1とを組み合わせて変更後工具経路R2を生成する。生成された変更後工具経路R2はプログラム生成部39bに送出される。プログラム生成部39bは、変更後工具経路R2に基づいて第2の加工プログラムP2を生成する。
【0047】
追加の移動後経路生成部37bは、前述した移動後経路生成部37aと同様の機能を有する。すなわち、追加の移動後経路生成部37bは、追加の判定部33bで目標工具経路R1が不適切と判定された場合に、接触領域ATの大きさが閾値D4以下になるまで目標工具経路R1を移動した移動後工具経路R3を生成する。
【0048】
次いで、追加の接触領域算出部32bが、再び前回と同様に、現在までに加工されたワークWを目標工具経路R1によって加工するときの接触領域ATの大きさを算出する。次いで、追加の判定部33bが、再び前回と同様に、目標工具経路R1が現在までに加工されたワークWを加工するのに適切であるかどうかを判定する。目標工具経路R1が不適切と判定された場合には、移動後経路生成部37bが、再び前回と同様に、移動後工具経路R3を生成する。
【0049】
このように、補助経路生成部38は、接触領域ATの大きさが閾値D4以下になるまで、移動後工具経路R3を繰り返し生成する。補助工具経路は、生成された1つ以上の移動後工具経路R3と目標工具経路R1とを組み合わせた工具経路である。或いは、補助工具経路は、目標工具経路R1から構成された工具経路である場合もある。そして、判定部33bは、移動後経路生成部37a,37bで生成された全ての移動後工具経路R3と目標工具経路R1とを組み合わせて変更後工具経路R2を生成する。生成された変更後工具経路R2はプログラム生成部39bに送出される。
【0050】
図1及び
図3を参照すると、本実施の形態のCAM装置20は表示部34を備えている。表示部34は、判定部33a,33bによる判定結果や、目標工具経路R1の情報や、変更後工具経路R2の情報等を画面に表示する。
【0051】
次に、
図13から
図16を参照して、本実施の形態における加工プログラム変更部30の動作の概要について説明する。
図13は、加工プログラム変更部30により変更後工具経路R2を生成する処理の手順を示すフローチャートである。
図13のように、加工プログラム変更部30は、先ず、ワークの目標形状データD1、初期形状データD2、及び工具形状データD3を含む加工データを取得する(ステップS101)。続いて、加工プログラム変更部30は、第1の加工プログラムP1から目標工具経路R1を読み込む(ステップS102)。
【0052】
続いて、加工プログラム変更部30は、ワークWの目標形状、回転工具Tの底面部分TBの形状、ワークWの初期形状、及び閾値D4を読み込む(ステップS103)。ワークWの目標形状は目標形状データD1に含まれている。底面部分TBの形状は工具形状データD3に含まれている。ワークWの初期形状は初期形状データD2に含まれている。
図14はワークWの目標形状を示す斜視図であり、
図15はワークWの初期形状を示す斜視図である。
【0053】
続いて、加工プログラム変更部30は、目標工具経路R1とワークWの初期形状とに基づいて、回転工具Tの底面部分TBにおける接触領域ATの大きさを算出する算出工程を実行する(ステップS104)。より具体的に、算出工程では、底面部分TBの面積に対する接触領域ATの面積の割合を接触領域ATの大きさとして算出する。また、算出工程では、実際の底面部分TBを回転軸線TSに直交する仮想平面上で、かつ回転軸線TSに中心が一致する円形領域ARに変換し、その円形領域ARにおける接触領域ATの大きさを算出する。
【0054】
続いて、加工プログラム変更部30は、算出工程(ステップS104)で算出した接触領域ATの大きさが閾値D4を超えるかどうかを判定する判定工程を実行する(ステップS105)。より具体的に、判定工程では、目標工具経路R1の任意の場所において接触領域ATの大きさが閾値D4を超える場合に、目標工具経路R1が不適切であると判定する。他方、目標工具経路R1のいずれの場所においても接触領域ATの大きさが閾値D4以下である場合には、目標工具経路R1が適切であると判定する。接触領域ATの大きさが閾値D4を超えない場合(ステップS105のNO)、加工プログラム変更部30はそのままステップS107に進む。
【0055】
それに対して、接触領域ATの大きさが閾値D4を超える場合(ステップS105のYES)、加工プログラム変更部30は、目標工具経路R1を移動した移動後工具経路R3を生成する移動後経路生成工程を実行する(ステップS106)。移動後工具経路R3は、例えば、目標工具経路R1の全部又は一部を回転軸線TSに沿ってワークWから離れる向きに移動した工具経路である。上述した算出工程(ステップS104)、判定工程(ステップS105)、及び移動後経路生成工程(ステップS106)は、目標工具経路R1上の全ての移動点について一度に実行される。ただし、これら工程は、目標工具経路R1上の移動点ごとに繰り返し実行されてもよい。
【0056】
その後、加工プログラム変更部30はステップS107に進む。ステップS107において、加工プログラム変更部30は、ワークWに目標形状に対する削り残しが存在するかどうかを判定する。ワークWに削り残しが存在しない場合(ステップS107のNO)、加工プログラム変更部30は、目標工具経路R1を変更後工具経路R2として出力する(ステップS108)。他方、ワークWに削り残しが存在する場合(ステップS107のYES)、加工プログラム変更部30は、ワークWに残存する削り残し部分を加工するための補助工具経路を生成する補助経路生成工程を実行する。
図16は加工途中のワークWの形状を示す斜視図である。
図16において実線で示される形状は現在までに加工されたワークの形状である。また、破線で示される形状は目標形状の一部である。すなわち、
図16のワークWにおける破線で囲まれた領域の上方の部分がワークWの削り残し部分である。
【0057】
補助経路生成工程において、加工プログラム変更部30は、目標工具経路R1と、現在までに生成された移動後工具経路R3による加工後のワークWの形状とに基づいて、追加の算出工程(ステップS104)、追加の判定工程(ステップS105)、及び追加の移動後経路生成工程(ステップS106)を再び実行する。その後、削り残し部分が存在すると判定された場合(ステップS107のYES)、加工プログラム変更部30は再びステップS104に進む。このように、加工プログラム変更部30は、追加の判定工程により算出した接触領域ATの大きさが閾値D4以下になるまで、すなわち、現在までに生成された工具経路による加工後のワークWに削り残しが存在しなくなるまで、追加の算出工程(ステップS104)、追加の判定工程(ステップS105)、及び追加の移動後経路生成工程(ステップS106)を繰り返す。このような一連の工程が補助経路生成工程である。追加の移動後経路生成工程が実行される都度、追加の移動後工具経路R3が生成される。この場合の補助工具経路は、生成された1つ以上の追加の移動後工具経路R3と目標工具経路R1とを組み合わせた工具経路である。
【0058】
そして、追加の判定工程により算出した接触領域ATの大きさが閾値D4以下になったら、すなわち、現在までに生成された工具経路による加工後のワークWに削り残しが存在しなくなったら、加工プログラム変更部30はステップS108に進む。ステップS108において、加工プログラム変更部30は、現在までに生成された移動後工具経路R3と目標工具経路R1とを組み合わせて変更後工具経路R2を生成する。以上のような処理を通じて本発明の工具経路評価方法及び工具経路生成方法が実行される。
【0059】
以上のように、本実施の形態のCAM装置20における加工プログラム変更部30は、目標工具経路R1による加工中にワークWに実際に接触すると予測される底面部分TBにおける接触領域ATの大きさを算出する。そして、加工プログラム変更部30は、算出した接触領域ATに大きさが閾値D4を超える場合に目標工具経路R1を不適切と判定する。従って、本実施の形態のCAM装置20によると、工作機械40によるワーク加工中に回転工具に過度の負荷が加わるか否かを適切に評価できる。また、本実施の形態のCAM装置20によると、回転工具に過度の負荷が加わることを回避するための移動後工具経路R3を生成できる。
【0060】
ところで、本実施の形態の工具経路生成装置及び工具経路生成方法では、予め定められた方法に従って工具経路を変更している。このために、移動後工具経路R3が望ましくない経路を含む場合がある。例えば、移動後工具経路R3に回転工具Tの進行方向が逆転する経路が含まれていたり、屈曲する経路が含まれていたりする場合がある。本実施の形態では、このような場合に移動後工具経路R3を補正して、補正後工具経路R3’を生成する。
【0061】
図17に、回転工具Tの進行方向が大きく変化する移動後工具経路R3の概略図を示す。それぞれの工具経路を移動点と矢印にて説明している。目標工具経路R1は、移動点MP1a〜MP6aを含んでいる。目標工具経路R1に対して移動後工具経路R3が設定されている。矢印82に示すように、それぞれの移動点MP1a〜MP6aは、回転工具Tの回転軸線方向に沿った移動により移動点MP1b〜MP6bに移動している。
【0062】
この実施例では、目標工具経路R1において、目標工具経路R1の移動点MP3aは、移動点MP3bに移動している。また、目標工具経路R1の移動点MP4aは、移動点MP4bに移動している。ところで、移動点MP3aから移動点MP4aまでの経路において、ワークに対する回転工具Tの傾斜角度が大きく変化している。移動点MP3aから移動点MP4aに移動するときのワークに対する回転工具Tの進行方向は、矢印86にて示されている。また、移動点MP3bから移動点MP4bに移動するときのワークに対する回転工具Tの進行方向は、矢印87にて示されている。
【0063】
図18に、目標工具経路R1における回転工具Tの進行方向と、移動後工具経路R3における回転工具Tの進行方向とを説明する概略図を示す。
図17における移動点MP3a,MP4a,MP3b,MP4bに関する進行方向の矢印が抜粋されている。
図17及び
図18を参照して、目標工具経路R1における回転工具Tの進行方向が矢印86にて示されている。また、移動後工具経路R3における回転工具Tの進行方向が矢印87にて示されている。矢印86に示す回転工具Tの進行方向と矢印87に示す回転工具Tの進行方向とは、ほぼ逆向きであることが分かる。すなわち、回転工具Tの進行方向が反転している。ワークに対する回転工具Tの進行方向が急激に変化すると、大きな加速度が生じて、工作機械に過剰な力が加わるという問題がある。または、加工精度が低下する虞が生じる。
【0064】
本実施の形態では、目標工具経路R1における回転工具Tの進行方向に対して、移動後工具経路R3における回転工具Tの進行方向が急激に変化した場合には、移動後工具経路R3を補正する。本実施の形態においては、回転工具Tの進行方向の変化を示す角度θ3が判定角度以上になる特定の経路が存在するか否かを判別する。本実施の形態では、判定角度を90°に設定している。回転工具Tの進行方向が90°以上の角度にて変化する特定の経路が存在する場合には、特定の経路に対応する移動点を除外する補正を行う。
【0065】
図17及び
図18に示される例では、移動後工具経路R3において移動点MP3bから移動点MP4bに向かう移動では、回転工具Tの進行方向が90°以上変化している。このために、矢印87に示す経路は、特定の経路である判別することができる。
【0066】
図19に、移動後工具経路R3の補正を説明する概略図を示す。特定の経路に対応する移動点は、矢印87の始点である移動点MP3b、及び矢印87の終点である移動点MP4bを含んでいる。このため、移動点MP3b及び移動点MP4bを除外する。そして、矢印88に示すように、移動点MP2bと移動点MP5bとを短絡する経路を生成する。移動点MP1b,MP2b,MP5b,MP6bを含む経路が補正後工具経路R3’に相当する。このように、移動後工具経路R3から進行方向が急激に変化する経路を除外することができる。この方法により、ワークに対して回転工具Tの進行方向が急激に変化することを回避して、工作機械への負担を抑制することができる。または、加工精度の低下を抑制することができる。ここで、短絡した経路における干渉チェックを行い、干渉がある場合は、移動点MP3b及び移動点MP4bの除外を行わない。
【0067】
次に、移動後工具経路R3の他の補正方法について説明する。
図20に、工具経路が屈曲する移動後工具経路R3の概略図を示す。
図20に示す例においては、移動点MP11b〜MP14bが示されている。移動後工具経路R3は、矢印91、矢印92、及び矢印93にて示されている。ここで、移動後工具経路R3は、矢印91に示す向きに進行した後に、矢印92に示す向きに進行する。このときに、移動後工具経路R3が屈曲している。すなわち、工具経路が折れ曲がっている。また、矢印92に示す向きに進行した後に矢印93に示す向きに進行するときも工具経路が屈曲している。
【0068】
他の補正方法では、移動後工具経路R3に屈曲する経路が含まれるか否かを判定する。そして、移動後工具経路R3に屈曲する経路が含まれる場合には、屈曲する経路を曲線状の経路に変更する補正を行う。
図20の例においては、矢印91,92,93に示す屈曲する工具経路を、矢印99,93に示す曲線状の工具経路に補正する。ワークの外側に向かって屈曲する経路は、凹状の曲線状の経路に変更する。ワークの内側に向かって屈曲する経路は、凸状の曲線の経路に変更する。すなわち、補正後工具経路が、移動後工具経路に対してワークの外側に位置するように経路を変更する。矢印99に示す経路が、補正後工具経路R3’に相当する。
【0069】
図21に、移動点の位置に対する回転工具Tの回転軸線方向の移動量のグラフを示す。この実施例では、矢印82に示すように、目標工具経路R1を移動して移動後工具経路R3が生成されている。目標工具経路R1は、移動点MP10a〜MP14aを含んでいる。移動後工具経路R3は、移動点MP10b〜MP14bを含んでいる。ここで、矢印91に示す工具経路に対して矢印92に示す工具経路は屈曲している。また、矢印92に示す工具経路に対して矢印93に示す工具経路は屈曲している。移動点MP12b及び移動点MP13bは、屈曲点になっている。このために、移動点MP11bから移動点MP13bまでの工具経路を補正する。
【0070】
図22に、移動後工具経路R3を補正した補正後工具経路R3’のグラフを示す。移動点MP13bが屈曲点になる矢印92に示す工具経路は、凸状の円弧の工具経路に補正する。矢印95に示すように、移動点MP13bを通るように円弧状の工具経路を生成する。移動点MP12bが屈曲点になる矢印91に示す工具経路は、凹状の円弧の工具経路に補正する。この結果、移動点MP15bと移動点MP16bが新たに生成される。そして、矢印96に示すように、移動点MP15bから移動点MP16bに向かう工具経路を生成する。
【0071】
補正後工具経路R3’を生成するときの円弧の直径は、使用者が任意の値に設定することができる。例えば、矢印94に示す円弧の直径と矢印95に示す円弧の直径とを、工具径と同一に設定することができる。
【0072】
次に、それぞれの補正後の移動点について、補正後の回転工具Tの回転軸線方向の移動量を記憶する。
図22を参照して、それぞれの移動点を、記憶した移動量にて回転工具Tの回転軸線方向に移動させて補正後工具経路R3’の移動点を生成する。補正において新たに生成された移動点MP15b及び移動点MP16bの位置は、例えば、移動点MP11bと移動点MP13bとを内挿することにより設定することができる。このように、補正後工具経路R3’を生成することができる。
【0073】
以上のように、回転工具Tの回転軸線方向の移動量を補正することによって、屈曲する経路を曲線状の経路に変更することができる。ワークWに対して回転工具Tの進行方向が急激に変化することを回避して、工作機械への負担を抑制することができる。又は、加工精度の低下を抑制することができる。なお、屈曲する経路を曲線状の経路にすることで回転工具Tの移動方向の変化が大きくなる場合は、補正を行わない。
【0074】
図23は、本実施の形態における加工プログラム変更部30により移動後工具経路R3を補正する処理の手順を示すフローチャートを示す。この処理は、例えば、
図13に示すステップS106として実施することができる。
図23のように、加工プログラム変更部30は、先ず回転工具Tの回転軸線方向に移動した移動後工具経路R3を生成する(ステップS201)。
【0075】
続いて、加工プログラム変更部30は、目標工具経路R1における回転工具Tの進行方向に対して移動後工具経路R3における回転工具Tの進行方向が90°以上変化する特定の経路が存在するか否かを判別する(ステップS202)。特定の経路が存在しない場合(ステップS202のNO)、加工プログラム変更部30はステップS204に進む。特定の経路が存在する場合(ステップS202のYES)、加工プログラム変更部30はステップS203に進む。ステップS203において、加工プログラム変更部30は特定の経路に対応する移動点を削除する。
【0076】
続いて、加工プログラム変更部30は、移動後工具経路R3に屈曲する部分があるか否かを判別する(ステップS204)。移動後工具経路R3に屈曲する部分がない場合(ステップS204のNO)、加工プログラム変更部30は一連の処理を終了する。移動後工具経路R3に屈曲する部分がある場合(ステップS204のYES)、加工プログラム変更部30はステップS205に進む。ステップS205において、加工プログラム変更部30は、屈曲する経路を曲線状の経路に補正する。その後、加工プログラム変更部30は一連の処理を終了する。
【0077】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図24は、本実施の形態における加工システムの基本的構成を示すブロック図である。本実施の形態では、工具経路生成装置として機能する加工プログラム変更部30がCAM装置20ではなく工作機械40の数値制御装置50に搭載されている。また、本実施の形態では、第1の加工プログラムP1がCAM装置20から出力され、第2の加工プログラムP2が工作機械40の内部で生成される。
【0078】
図24において、読取解釈部51は、第2の加工プログラムP2を読み取り解釈するとともに、移動指令を補間演算部52に送出する。補間演算部52は、補間周期ごとの位置指令値を演算するとともに、位置指令値をサーボモータ制御部53に送出する。サーボモータ制御部53は、位置指令に基づいて各移動軸の移動量を算出して各軸サーボモータSを駆動する。本実施の形態の加工システムにおけるその他の部分の機能及び構成は、前述した第1の実施の形態と同様である。
【0079】
本実施の形態の数値制御装置50における加工プログラム変更部30は、目標工具経路R1による加工中にワークWに実際に接触すると予測される底面部分TBにおける接触領域ATの大きさを算出する。そして、加工プログラム変更部30は、算出した接触領域ATに大きさが閾値D4を超える場合に目標工具経路R1を不適切と判定する。従って、本実施の形態の数値制御装置50によると、前述した第1の実施の形態のCAM装置20と同様に、工作機械40によるワーク加工中に回転工具に過度の負荷が加わるかどうかを適切に評価できる。また、本実施の形態の数値制御装置50によると、回転工具に過度の負荷が加わることを回避するための移動後工具経路R3を生成できる。
【0080】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の加工システムは、接触領域算出部32a,32b、判定部33a,33b、及び移動後経路生成部37a,37bを除いて、第1の実施の形態の加工システムと同様の機能及び構成を有する(
図1及び
図3参照)。また、本実施の形態では、回転工具Tの底面部分TBにおける中心領域ACが予め定められている。
【0081】
図25は、本実施の形態における回転工具Tの側面及び底面を示す概略図であり、ボールエンドミルが示されている。本実施の形態では、回転工具Tの底面部分TBにおける中心領域ACが予め定められている。特に、
図25では、底面部分TBにおける回転軸線TS近傍に位置する中心領域ACが予め定められている。この中心領域ACに関する情報は工具形状データD3に格納されている。
【0082】
本実施の形態において、接触領域算出部32aは、目標工具経路R1と加工前のワークWの形状とに基づいて、底面部分TBにおける接触領域ATを求める工程を実行する。判定部33aは、目標工具経路R1の任意の場所において接触領域ATの少なくとも一部が底面部分TBにおける中心領域ACに重なる場合に、目標工具経路R1を不適切と判定する工程を実行する。移動後経路生成部37aは、目標工具経路R1が不適切であると判定された場合に、接触領域ATの全体が中心領域ACから離脱するまで目標工具経路R1を移動した移動後工具経路R3を生成する工程を実行する。
【0083】
同様に、追加の接触領域算出部32bは、目標工具経路R1と移動後工具経路R3による加工後のワークWの形状とに基づいて接触領域ATを求める工程を実行する。追加の判定部33bは、追加の接触領域算出部32bで求めた接触領域ATの少なくとも一部が中心領域ACに重なる場合に、目標工具経路R1を不適切と判定する工程を実行する。そして、追加の移動後経路生成部37bは、追加の判定部33bで目標工具経路R1が不適切と判定された場合に、接触領域ATの全体が中心領域ACから離脱するまで目標工具経路R1を移動した移動後工具経路R3を生成する工程を実行する。これら追加の工程は、追加の接触領域算出部32bで求めた接触領域ATの全体が中心領域ACから離脱するまで繰り返される。
【0084】
従って、本実施の形態のCAM装置20によると、前述した第1の実施の形態と同様に、工作機械40によるワーク加工中に回転工具に過度の負荷が加わるかどうかを適切に評価できる。また、本実施の形態のCAM装置20によると、回転工具に過度の負荷が加わることを回避するための移動後工具経路R3を生成できる。さらに、本実施の形態では、底面部分TBにおける接触領域ATが中心領域ACに重なるときに工具経路を不適切と判定するので、加工時の周速が特に小さくなる底面部分TBの中心領域ACにおいてワークが切削される虞を低減できる。
【0085】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態の加工システムは、接触領域算出部32a,32b、判定部33a,33b、及び移動後経路生成部37a,37bを除いて、第2の実施の形態の加工システムと同様の機能及び構成を有する(
図3及び
図24参照)。本実施の形態の接触領域算出部32a,32bは、第3の実施の形態の接触領域算出部32a,32bと同様の機能を有する。本実施の形態の判定部33a,33bは、第3の実施の形態の判定部33a,33bと同様の機能を有する。本実施の形態の移動後経路生成部37a,37bは、第3の実施の形態の移動後経路生成部37a,37bと同様の機能を有する。また、本実施の形態では、回転工具Tの底面部分TBにおける中心領域ACが予め定められている(
図25参照)。
【0086】
従って、本実施の形態の数値制御装置50によると、上記の実施の形態と同様に、工作機械40によるワーク加工中に回転工具に過度の負荷が加わるかどうかを適切に評価できる。また、本実施の形態の数値制御装置50によると、回転工具に過度の負荷が加わることを回避するための移動後工具経路R3を生成できる。さらに、本実施の形態では、底面部分TBにおける接触領域ATが中心領域ACに重なるときに工具経路を不適切と判定するので、加工時の周速が特に小さくなる底面部分TBの中心領域ACにおいてワークが切削される虞を低減できる。
【0087】
上記の実施の形態では、5軸の移動軸を有する工作機械を例示しているが、この形態に限られず、ワークに対して工具が相対移動する任意の工作機械を使用できる。例えば、3つの直動軸を有する3軸の工作機械に本発明を適用できる。また、上記の実施の形態では、フラットエンドミルやラジアスエンドミルやボールエンドミル等の回転工具を例示しているが、ワークに対して相対移動してワークを加工する任意の回転工具を採用できる。例えば、各種フライス等の他の回転工具に本発明を適用できる。
【0088】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一又は相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態には、請求の範囲に示される変更が含まれている。