特許第6134020号(P6134020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新菱冷熱工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000002
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000003
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000004
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000005
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000006
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000007
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000008
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000009
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000010
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000011
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000012
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000013
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000014
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000015
  • 特許6134020-蚕の飼育具及び飼育方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6134020
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】蚕の飼育具及び飼育方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/04 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   A01K67/04 303C
   A01K67/04 302B
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-17831(P2016-17831)
(22)【出願日】2016年2月2日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191319
【氏名又は名称】新菱冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】麻生 由布
(72)【発明者】
【氏名】横田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸悦
(72)【発明者】
【氏名】佐川 美佳
(72)【発明者】
【氏名】菊永 博秀
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−074947(JP,A)
【文献】 特開昭51−107974(JP,A)
【文献】 特開2006−109764(JP,A)
【文献】 特開2015−043708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口された扁平な箱形状を有する1〜3齢用飼育容器と、
該1〜3齢用飼育容器の底面に敷設され、1〜3齢の蚕及び飼料を載置可能な1〜3齢用ネットと、
該1〜3齢用ネットが敷設された前記1〜3齢用飼育容器を収容可能な大きさを有すると共に、該飼育容器が通過可能且つ密閉可能な出入口を有し、該飼育容器の上面の開口に対応する部分に多数の小孔を有する1〜3齢用ビニル袋と、
により構成される1〜3齢用飼育ケージを備えていることを特徴とする蚕の飼育具。
【請求項2】
上面が開口された箱形状を有する4〜5齢用飼育容器と、
該4〜5齢用飼育容器の内部において該飼育容器の底面から上方に所定の空間を隔てて支持され、4〜5齢の蚕より小さい孔を多数有する紙と、
該紙上に配置され、4〜5齢の蚕及び飼料を載置可能な4〜5齢用ネットと、
前記4〜5齢用飼育容器の上面の開口を覆うように該飼育容器に着脱可能に設けられる4〜5齢用ビニルシートと、
により構成される4〜5齢用飼育ケージを備え、前記4〜5齢用飼育容器の側面には、前記空間に連通するように換気口が形成されていることを特徴とする蚕の飼育具。
【請求項3】
前記換気口の側縁部から内側に突出する側面折曲片を備え、該側面折曲片により前記紙及び前記4〜5齢用ネットが支持されることを特徴とする請求項2に記載の蚕の飼育具。
【請求項4】
前記4〜5齢用飼育容器は、内部を複数に分割するように仕切る仕切板を有し、該仕切板により前記紙及び前記4〜5齢用ネットが支持されることを特徴とする請求項2又は3に記載の蚕の飼育具。
【請求項5】
前記4〜5齢用飼育容器には、前記換気口より上方において前記4〜5齢用飼育容器の角部から内側に突出する角部折曲片が形成され、該角部折曲片部によって前記紙及び前記4〜5齢用ネットが固定されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかの請求項に記載の蚕の飼育具。
【請求項6】
前記4〜5齢用飼育容器には、前記角部折曲片を形成することで前記角部に掛止部が凹状に形成され、該掛止部を介して前記4〜5齢用ビニルシートが前記4〜5齢用飼育容器に着脱可能となっていることを特徴とする請求項5に記載の蚕の飼育具。
【請求項7】
1〜3齢用飼育容器内に敷設された1〜3齢用ネット上に蚕及び飼料を載置した状態で、多数の小孔を有する1〜3齢用ビニル袋内に収容し、前記飼料を保湿させて前記蚕を成育させる工程と、
前記1〜3齢用ビニル袋内に収容された前記1〜3齢用飼育容器を該1〜3齢用ビニル袋から取り出し、前記飼料を乾燥させて前記蚕を脱皮させる工程と、
をそれぞれ交互に3回繰り返す1〜3齢の蚕の飼育方法を含むことを特徴とする蚕の飼育方法。
【請求項8】
4〜5齢用飼育容器内に支持された4〜5齢用ネット上に蚕及び飼料を載置した状態で、前記4〜5齢用飼育容器の上面の開口を4〜5齢用ビニルシートで覆って前記飼料を保湿させると共に前記4〜5齢用飼育容器の底面と前記4〜5齢用ネットとの間の空間を利用して該4〜5齢用飼育容器内を換気しながら、前記蚕を成育させる工程と、
前記4〜5齢用飼育容器から前記4〜5齢用ビニルシートを取り外し、前記飼料を乾燥させて前記蚕を脱皮させる工程と、
を交互に行う4〜5齢の蚕の飼育方法を含むことを特徴とする蚕の飼育方法。
【請求項9】
4齢から5齢前半期までは、前記4〜5齢用ネットの下方に4〜5齢の蚕より小さい孔を多数有する紙を配置し、5齢後半期は、該紙を取り外すことを特徴とする請求項に記載の蚕の飼育方法。
【請求項10】
熟蚕を載置した前記4〜5齢用ネットを上蔟用飼育容器の底面に移設した後、上蔟用スペーサーを介して前記上蔟用飼育容器の底面から所定の高さに蔟を支持し、前記上蔟用飼育容器の上面の開口を上蔟用ネットで覆う上蔟用飼育方法を含むことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の蚕の飼育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量の蚕を飼育するための飼育具及び飼育方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蚕の繭から絹糸を生産することはよく知られているが、近年、繭から得たタンパク質を化粧品や医薬品等に利用することも行われており、様々な用途での繭の利用が期待されている。
【0003】
蚕は、1齢期から合計4回の脱皮を繰り返し、それぞれの脱皮の度に1齢増え、5齢の後期に繭を作り始める。この間、蚕の成育に差が生じると、繭になる時期が蚕によって異なってしまい、繭の生産効率が低下する要因になる。
【0004】
そこで、従来の蚕の飼育方法として、4回の脱皮の直前の一定期間、蚕が飼料を食べることができないように飼料を乾燥させることで、蚕の成育速度を揃える飼育方法が知られている。また、この種の蚕の飼育方法を行うため、いろいろな飼育具が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、平板状のパレットにシート状に形成した養蚕用飼料を敷き、その上にネットを配設して蚕を収容した養蚕用ベッドを無菌室に重畳して配置する発明が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、蛇腹状のネット基材を通気性及び視認性のある目の細かいネットで被覆した飼育容器に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−129546号公報
【特許文献2】特開2011−78361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1や特許文献2に記載の発明では、パレットや飼育容器を繰り返し使用するため、蚕が病気に感染する可能性がある。また、蚕が飼料を食べることのできる飼料の保湿状態と、蚕が飼料を食べることのできない飼料の乾燥状態と、を繰り返しコントロールすることが難しいため、蚕の飼育管理作業の簡素化や生産効率の向上を図り難いといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、蚕の飼育に適した環境を容易に作ると共に蚕を病気から守り、蚕の飼育管理作業の簡素化及び繭の生産効率の向上を図ることのできる蚕の飼育具及び飼育方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明に係る蚕の飼育具は、上面が開口された扁平な箱形状を有する1〜3齢用飼育容器と、該1〜3齢用飼育容器の底面に敷設され、1〜3齢の蚕及び飼料を載置可能な1〜3齢用ネットと、該1〜3齢用ネットが敷設された前記1〜3齢用飼育容器を収容可能な大きさを有すると共に、該飼育容器が通過可能且つ密閉可能な出入口を有し、該飼育容器の上面の開口に対応する部分に多数の小孔を有する1〜3齢用ビニル袋と、により構成される1〜3齢用飼育ケージを備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る蚕の飼育具は、上面が開口された箱形状を有する4〜5齢用飼育容器と、該4〜5齢用飼育容器の内部において該飼育容器の底面から上方に所定の空間を隔てて支持され、4〜5齢の蚕より小さい孔を多数有する紙と、該紙上に配置され、4〜5齢の蚕及び飼料を載置可能な4〜5齢用ネットと、前記4〜5齢用飼育容器の上面の開口を覆うように該飼育容器に着脱可能に設けられる4〜5齢用ビニルシートと、により構成される4〜5齢用飼育ケージを備え、前記4〜5齢用飼育容器の側面には、前記空間に連通するように換気口が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る蚕の飼育具は、前記換気口の側縁部から内側に突出する側面折曲片を備え、該側面折曲片により前記紙及び前記4〜5齢用ネットが支持されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る蚕の飼育具において、前記4〜5齢用飼育容器は、内部を複数に分割するように仕切る仕切板を有し、該仕切板により前記紙及び前記4〜5齢用ネットが支持されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る蚕の飼育具において、前記4〜5齢用飼育容器には、前記換気口より上方において前記4〜5齢用飼育容器の角部から内側に突出する角部折曲片が形成され、該角部折曲片部によって前記紙及び前記4〜5齢用ネットが固定されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る蚕の飼育具において、前記4〜5齢用飼育容器には、前記角部折曲片を形成することで前記角部に掛止部が凹状に形成され、該掛止部を介して前記4〜5齢用ビニルシートが前記4〜5齢用飼育容器に着脱可能となっていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る蚕の飼育具は、上面が開口された扁平な箱形状を有する上蔟用飼育容器と、該上蔟用飼育容器の底面に載置される上蔟用スペーサーと、該上蔟用スペーサーを介して前記上蔟用飼育容器の底面から所定の高さに支持される蔟と、前記上蔟用飼育容器を収容し、該飼育容器の上面の開口に対応する部分に多数の小孔を有する上蔟用ネットと、により構成される上蔟用飼育ケージを備えていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る蚕の飼育方法は、1〜3齢用飼育容器内に敷設された1〜3齢用ネット上に蚕及び飼料を載置した状態で、多数の小孔を有する1〜3齢用ビニル袋内に収容し、前記飼料を保湿させて前記蚕を生育させる工程と、前記1〜3齢用ビニル袋内に収容された前記1〜3齢用飼育容器を該1〜3齢用ビニル袋から取り出し、前記飼料を乾燥させて前記蚕を脱皮させる工程と、をそれぞれ交互に3回繰り返す1〜3齢の蚕の飼育方法を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る蚕の飼育方法は、4〜5齢用飼育容器内に支持された4〜5齢用ネット上に蚕及び飼料を載置した状態で、前記4〜5齢用飼育容器の上面の開口を4〜5齢用ビニルシートで覆って前記飼料を保湿させると共に前記4〜5齢用飼育容器の底面と前記4〜5齢用ネットとの間の空間を利用して該4〜5齢用飼育容器内を換気しながら、前記蚕を生育させる工程と、前記4〜5齢用飼育容器から前記4〜5齢用ビニルシートを取り外し、前記飼料を乾燥させて前記蚕を脱皮させる工程と、を交互に行う4〜5齢の蚕の飼育方法を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る蚕の飼育方法において、4齢から5齢前半期までは、前記4〜5齢用ネットの下方に4〜5齢の蚕より小さい孔を多数有する紙を配置し、5齢後半期は、該紙を取り外すことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る蚕の飼育方法は、熟蚕を載置した4〜5齢用ネットを上蔟用飼育容器の底面に移設した後、上蔟用スペーサーを介して上蔟用飼育容器の底面から所定の高さに蔟を支持し、上蔟用飼育容器の上面の開口を上蔟用ネットで覆う上蔟用飼育方法を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る蚕の飼育具及び飼育方法によれば、蚕の飼育に適した環境を容易に作ることができ、蚕を病気から守ることができ、蚕の飼育管理作業の簡素化及び繭の生産効率の向上を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の1〜3齢用飼育ケージを示す断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の1〜3齢用飼育ケージを示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の1〜3齢用飼育容器を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の1〜3齢用飼育ケージを示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の1〜3齢用ビニル袋を示す斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育ケージを示す断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育容器を示す斜視図である。
図8】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育容器を示す平面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育容器を示す側面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育ケージを示す斜視図である。
図11】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の上蔟用飼育ケージを示す斜視図である。
図12】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の上蔟用飼育容器を示す斜視図である。
図13】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の上蔟用スペーサーを示す斜視図である。
図14】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の上蔟用飼育ケージを示す斜視図である。
図15】本発明の実施の形態に係る蚕の飼育方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
まず、図1図14を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の1〜3齢用飼育ケージを示す断面図、図2は本発明の実施の形態に係る蚕の1〜3齢用飼育ケージを示す断面図、図3は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の1〜3齢用飼育容器を示す斜視図、図4は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の1〜3齢用飼育ケージを示す斜視図、図5は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の1〜3齢用ビニル袋を示す斜視図、図6は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育ケージを示す断面図、図7は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育容器を示す斜視図、図8は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育容器を示す平面図、図9は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育容器を示す側面図、図10は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の4〜5齢用飼育ケージを示す斜視図、図11は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の上蔟用飼育ケージを示す斜視図、図12は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の上蔟用飼育容器を示す斜視図、図13は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の上蔟用スペーサーを示す斜視図、図14は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具の上蔟用飼育ケージを示す斜視図である。
【0025】
本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具は、蚕が1齢期から合計4回の脱皮を繰り返し、最終の5齢期に繭を作るまで使用するものであり、1〜3齢用飼育ケージ10と、4〜5齢用飼育ケージ20と、上蔟用飼育ケージ40と、を備えている。
【0026】
図1図5に示されているように、1〜3齢用飼育ケージ10は、上面が全面的に開口された扁平な箱形状を有する1〜3齢用飼育容器11と、1〜3齢用飼育容器11の内部に敷設される1〜3齢用ネット12と、1〜3齢用ネット12が敷設された1〜3齢用飼育容器11を収容する1〜3齢用ビニル袋13と、により構成されている。
【0027】
1〜3齢用飼育容器11は、紙製で、矩形状の底面14の四辺から外側傾斜姿勢で上方に延出する4つの側面15を有しており、底面14及び各側面15の内面には撥水加工が施されているのが好ましい。1〜3齢用飼育容器11の底面14は430mmの長さと300mmの幅を有しており、1〜3齢用飼育容器11の各側面15は40mmの高さを有している。
【0028】
1〜3齢用ネット12は、樹脂製で、1〜3齢用飼育容器11の底面14に載置可能な矩形状を有している。1〜3齢用ネット12は、線径が約1mmで、ピッチが3.9mmに形成されており、1〜3齢の蚕及び飼料を載置可能となっている。
【0029】
1〜3齢用ビニル袋13は、塩化ビニル製で、1〜3齢用ネット12が敷設された1〜3齢用飼育容器11を収容可能な大きさを有し、580mmの長さと400mmの幅を有している。1〜3齢用ビニル袋13には、1〜3齢用飼育容器11が通過可能な出入口16が開口されている。この出入口16にはチャック17が取り付けられ、チャック17によって出入口16を密閉可能となっている。また、1〜3齢用ビニル袋13には、1〜3齢用飼育容器11の上面の開口に対応する部分に多数の小孔が形成されている。この小孔は、孔径が約2mmで、ピッチが約15mmに形成されている。
【0030】
図6図10に示されているように、4〜5齢用飼育ケージ20は、上面が全面的に開口された箱形状を有する4〜5齢用飼育容器21と、4〜5齢用飼育容器21の内部に支持される紙22と、4〜5齢用飼育容器21の内部において紙22の上方に配置される4〜5齢用ネット23と、4〜5齢用飼育容器21の上面の開口を覆うように該飼育容器21に着脱可能に設けられる4〜5齢用ビニルシート24と、により構成されている。
【0031】
4〜5齢用飼育容器21は、段ボール製であり、矩形状のトレイ25と、トレイ25の外周縁上に起立するように形成される外周側面26と、外周側面26の内部を複数(例えば、12個)の小空間27に分割するように仕切る仕切板28と、を備えて構成されている。4〜5齢用飼育容器21は、730mmの長さと610mmの幅と135mmの高さの外形寸法を有している。なお、4〜5齢用飼育容器21は、組み立て式で、平板状に折り畳み可能に形成されているため、保管時の収納スペースを縮小することができる。
【0032】
紙22は、撥水加工が施されているのが好ましい。トレイ25は、矩形板状の底面29と、底面29の四辺から鉛直姿勢で上方に僅かに延出する立上り部30と、により構成されている。
【0033】
外周側面26の下部には、矩形状の換気口31が複数(例えば、14個)形成されており、換気口31は仕切板28によって仕切られた各小空間27に連通している。換気口31は、外周側面26において左右いずれか一側縁部を残して三辺を切り欠き、該一側縁部に沿って内側に折り曲げることにより、形成される。この時、内側に折り曲げられた部分は、中央部でさらに山型に折り曲げられ、これにより、内側に突出する側面折曲片32が形成される。
【0034】
仕切板28は、その上端が側面折曲片32の上端と同一高さに形成されており、側面折曲片32と共に紙22及び4〜5齢用ネット23を支持するようになっている。仕切板28には、各小空間27を臨む部分に、複数(例えば、17個)の通孔33が形成されており、これらの通孔33を介して各小空間27が連通している。
【0035】
外周側面26の4つの角部34には、それぞれ、換気口31より上方に角部折曲片35が内側に突出するように形成されている。角度折曲片35は、角部34に上下平行な切れ込みを形成し、内側に押し込むことによって形成されている。角部折曲片35の中央部には水平な切れ込み50がさらに形成されており、仕切板28と側面折曲片32に支持された紙22及び4〜5齢用ネット23をこの切れ込み50に挟み込むことにより固定できるようになっている。また、この角部折曲片35を形成することにより、4つの角部34に掛止部36が凹状に形成されている。
【0036】
紙22は、仕切板28と側面折曲片32によりトレイ25の底面29から上方に所定の空間を隔てた高さに支持される。紙22は、矩形状を成し、700mmの長さと530mmの幅を有している。紙22には、4〜5齢の蚕より小さい内径2mmの小孔が10mm×20mmのピッチで多数(例えば、3000個)形成されている。
【0037】
4〜5齢用ネット23は、樹脂製で、紙22上に載置可能な矩形状を有している。4〜5齢用ネット12は、線径が約1mmで、ピッチが6.4mmに形成されており、4〜5齢の蚕及び飼料を載置可能となっている。
【0038】
4〜5齢用ビニルシート24は、塩化ビニル製で、1250mmの長さと950mmの幅を有している。4〜5齢用ビニル袋24は、掛止部36にゴムバンドを掛けることにより、4〜5齢用飼育容器21の上面の開口を覆った状態で固定可能となっている。
【0039】
図11図14に示されているように、上蔟用飼育ケージ40は、上面が全面的に開口された扁平な箱形状を有する上蔟用飼育容器41と、上蔟用飼育容器41の底面42に載置される上蔟用スペーサー43と、上蔟用スペーサー43を介して上蔟用飼育容器41の底面42から所定の高さに支持される蔟44と、上蔟用飼育容器41の上面の開口を覆うように設けられる上蔟用ネット45と、により構成されている。
【0040】
上蔟用飼育容器41は、段ボール製で、矩形板状の底面42と、底面42の四辺から鉛直姿勢で上方に僅かに延出する立上り部47と、により構成され、底面42及び立上り部47の内面には撥水加工が施されているのが好ましい。上蔟用飼育容器41の底面42は1150mmの長さと830mmの幅を有しており、上蔟用飼育容器41の立上り部47は50mmの高さを有している。
【0041】
上蔟用スペーサー43は、図13に良く示されているように、1枚の段ボールの左右側からそれぞれ水平な切り込みを入れ、上下それぞれ同一方向且つ異なる角度に折り曲げることにより形成され、略90度を成すように折り曲げられた下片部48と、コの字状に折り曲げられた上片部49と、により構成されている。上蔟用スペーサー43は、縦横それぞれ105mmの長さを有し、50mmの高さを有している。下片部48は、20mmの高さを有し、上蔟用飼育容器41の底面42と蔟44との間に介装される。これにより、蔟44は、上蔟用飼育容器41の底面46から20mmの高さに支持される。
【0042】
蔟44は、段ボール製で格子状に形成されており、蔟用飼育容器41の内部に4枚並置可能な大きさを有している。蔟44の格子には上蔟用スペーサー43の上片部49が挿入可能となっている。
【0043】
上蔟用ネット45は、樹脂製で、1200mmの長さと1000mmの幅を有し、約4mm×5mmの小孔が多数形成されている。
【0044】
次に、図1図14に加えて図15を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る蚕の飼育方法について説明する。ここで、図15は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育方法を示す図である。
【0045】
まず、卵から孵化した1齢の蚕及び飼料を、1〜3齢用飼育容器11内に敷設された1〜3齢用ネット12上に載置した状態で、1〜3齢用ビニル袋13内に収容させる。1〜3齢用ビニル袋13内は、図1中において矢印で示すように小孔を介して換気されることで、適度な多湿環境(例えば、相対湿度85%以上)に保持され、飼料が保湿状態となるため、蚕はその飼料を食べて成育する。この場合、1〜3齢用飼育容器11の内面に撥水加工が施されている場合には、1〜3齢用飼育容器11が飼料から発生する水分を吸収して型崩れする虞はない。
【0046】
次いで、1〜3齢用ビニル袋13のチャック17を操作して開放した出入口16を介して、1〜3齢用ネット12上に1齢の蚕及び飼料が載置された1〜3齢用飼育容器11を、1〜3齢用ビニル袋13から取り出し、約25℃の温度及び約50%の相対湿度に調整された室内環境下に置き、飼料を乾燥させて成長の早い蚕に飼料を食べられなくさせることで、成育を揃える。その後、1齢の蚕は1回目の脱皮を行って2齢の蚕になる。
【0047】
また、2齢の蚕及び3齢の蚕についても、上記した1齢の蚕と同様の方法で飼育することにより、2齢の蚕及び3齢の蚕は、それぞれ、2回目及び3回目の脱皮を行って3齢及び4齢の蚕に成育する。
【0048】
次に、4〜5齢用飼育容器21の内部において仕切板28及び側面折曲片32の上に紙22と4〜5齢用ネット23を順に重ねるように敷き、この4〜5齢用ネット23上に上記したように成育した4齢の蚕及び飼料を載置させる。そして、4〜5齢用飼育容器21の上面の開口を4〜5齢用ビニルシート24で覆い、4〜5齢用ビニルシート24の四隅を掛止部36にゴムバンドで固定する。4〜5齢用飼育ケージ20内は、図6中において矢印で示すように、換気口31、通孔33、紙22の小孔及び4〜5齢用ネット23を介して換気されることで、適度な多湿環境(例えば、相対湿度85%以上)に保持され、飼料が保湿状態となるため、蚕はその飼料を食べて成育する。
【0049】
この間、紙22及び4〜5齢用ネット23は、仕切板28及び側面折曲片32によって支持されると共に四隅を角部折曲片35により固定されるため、蚕の飼育中にずれたり、撓んだりすることがない。また、4〜5齢用ビニルシート24は、四隅でゴムバンドにより掛止部36に固定されているため、蚕の飼育中に外れたり、撓んだりすることがない。さらに、4〜5齢用ネット23の下方に紙22を敷くことで、4〜5齢用ネット23を通過して落下した蚕がトレイ25の底面29まで落下するのを防止することができる。
【0050】
次いで、4〜5齢用ビニルシート24を取り外し、4〜5齢用ネット23上に4齢の蚕及び飼料が載置された4〜5齢用飼育容器21を、約25℃の温度及び約50%の相対湿度に調整された室内環境下に置き、飼料を乾燥させることで、蚕の成育を揃える。その後、4齢の蚕は4回目の脱皮を行って5齢の蚕になる。
【0051】
また、5齢の蚕についても、その前半期は、上記した4齢の蚕と同様の方法で飼育する。4齢から5齢前半期までの蚕の糞は4〜5齢用ネット23から落下して紙22上に堆積するため、糞の掃除は、5齢以降に紙22を取り外して糞を捨てることにより行う。
【0052】
一方、蚕が5齢後半期まで成育すると、蚕が大きくなり、蚕が4〜5齢用ネット23から落下する虞がなくなるため、紙22をトレイ25の底面29上に移して蚕を飼育する。この場合、蚕の糞は紙22に落下するため、糞の掃除は、紙22に堆積した糞を捨てることにより行う。なお、5齢では脱皮が無く蚕の成育速度を揃える必要がないため、飼料は常に多湿環境下において保湿状態に保持される。
【0053】
このようにして熟蚕となった蚕は、4〜5齢用ネット23上に載置された状態で上蔟用飼育容器41の底面42に移設される。その後、上蔟用スペーサー43を介して4枚の蔟44を底面42に並置し、上蔟用飼育容器41の上面の開口を上蔟用ネット45で覆う。この時、上蔟用スペーサー43は、各蔟44の四隅に配置され、上蔟用スペーサー43の下片部48が底面46と蔟44の間に介装される。これにより、蔟44は上蔟用飼育容器41の底面46から所定(例えば20mm)の高さに支持される。また、上蔟用スペーサー43の上片部49は各蔟の四隅の格子に挿入され、これにより、上蔟用スペーサー43は各蔟44に取り付けられる。
【0054】
このように組み立てられた上蔟用飼育容器41は、約25℃の温度及び約50%の相対湿度に調整された室内環境下に置かれ、熟蚕となった蚕は上蔟用飼育容器41の底面42から蔟44に登り、蔟44の格子内に繭を作る。
【0055】
この時、上蔟用飼育容器41の上面の開口が上蔟用ネット45で覆われているため、蚕が上蔟用飼育容器41から逃げるのを防止することができる。また、蔟44を上蔟用スペーサー43を介して底面46に支持することで、蔟44と底面46との間に空間を確保することができるため、底面46に落下した尿や糞で繭が汚れるのを防止することができる。さらに、上蔟用飼育容器41の内面に撥水加工が施されている場合には、蚕の尿が上蔟用飼育容器41に浸透して外部に漏れる虞がない。さらにまた、上蔟用飼育容器41は低い高さ(例えば、50mm)に設定されているため、ラック等に多段で重ねることができ、省スペースで大量の繭を作ることができ、繭の生産効率を高めることができる。
【0056】
上記した本発明の実施の形態に係る蚕の飼育具及び飼育方法によれば、飼育容器11,21に対するビニル袋13やビニルシート24の脱着や、飼育容器11,21,41の形状及び構造によって、蚕の飼育環境(飼料の保湿や乾燥状態等)を容易に管理することができ、蚕の飼育管理作業の簡素化や生産効率の向上を図ることができる。さらに、蚕の飼育環境として重要な相対湿度を制御するために加湿設備等を設置する必要がないため、イニシャルコストやランニングコストを低減することができる。
【0057】
また、飼育容器11,21,41は、紙や段ボールにより製作され、使い捨てで使用することができる。そのため、蚕の飼育の度に新しい飼育容器11,21,41を用いることにより、蚕が病気に感染するのを防止することができると共に、飼育容器11,21,41の洗浄作業が不要となる。
【0058】
また、飼育ケージ10,20,40は、軽量な素材を使用し、コンパクトに形成されており、容易に取り扱うことができるため、蚕の飼育管理作業の省力化及び効率化をさらに図ることができる。
【0059】
なお、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る蚕の飼育具及び飼育方法における好適な実施の形態を説明しているため、材質、寸法、構造等、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0060】
10 1〜3齢用飼育ケージ
11 1〜3齢用飼育容器
12 1〜3齢用ネット
13 1〜3齢用ビニル袋
14 底面
16 出入口
20 4〜5齢用飼育ケージ
21 4〜5齢用飼育容器
22 紙
23 4〜5齢用ネット
24 4〜5齢用ビニルシート
26 外周側面
28 仕切板
29 底面
31 換気口
32 側面折曲片
34 角部
35 角部折曲片
36 掛止部
40 上蔟用飼育ケージ
41 上蔟用飼育容器
42 底面
43 上蔟用スペーサー
44 蔟
45 上蔟用ネット
【要約】      (修正有)
【課題】蚕の飼育に適した環境を容易に作ると共に蚕を病気から守り、蚕の飼育管理作業の簡素化及び生産効率の向上を図る飼育具の提供。
【解決手段】蚕の飼育具は、上面が開口された扁平な箱形状を有する1〜3齢用飼育容器11と、1〜3齢用飼育容器11の底面に敷設され、1〜3齢の蚕及び飼料を載置可能な1〜3齢用ネット12と、1〜3齢用ネット12が敷設された1〜3齢用飼育容器11を収容可能な大きさを有すると共に、該飼育容器11が通過可能且つ密閉可能な出入口16を有し、該飼育容器11の上面の開口に対応する部分に多数の小孔を有する1〜3齢用ビニル袋13と、により構成される1〜3齢用飼育ケージ10を備えていることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15