(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空調設備は、前記ケーシングの外部に設けられる空調機と、該空調機と前記ケーシングの上方に設けられる給気チャンバーボックスとを接続する給気ダクトと、を備え、
前記給気チャンバーボックスには、前記給気ダクトの接続部に対向する位置にバッフル板が設けられ、該給気チャンバーボックスと前記上部空間との間に多孔板が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蚕の飼育装置。
前記前側垂直空間内の前記各飼育棚の後面と前記仕切板との間及び前記後側垂直空間内の前記各飼育棚の後面と前記ケーシングの後面との間には、それぞれ、上方から下方に向かって空調空気が流通可能なように垂直流路が形成され、前記各飼育棚の後面には該垂直流路に連通するように給気孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の蚕の飼育装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の発明では、蚕の成育段階に合わせて、複数段積み重ねた飼育トレイを積み替える必要があるため、飼育作業に手間が掛かるという問題がある。また、大量の蚕を飼育するためには、依然として、多数の飼育トレイを設置する広いスペースを必要とすると共に、その飼育環境をコントロールする多大な空調エネルギーを必要とするという問題がある。
【0007】
また、飼育トレイ等の飼育具を繰り返し使用するため、蚕が病気に感染する可能性がある。さらに、蚕が飼料を食べることのできる飼料の保湿状態と、蚕が飼料を食べることのできない飼料の乾燥状態と、をうまくコントロールすることが難しく、蚕の成育速度を揃えることができないため、繭の生産効率の向上を図り難いといった問題もある。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、大量の蚕を飼育する際に、省スペース化、省力化、及び省エネルギー化を図ることができると共に、蚕の飼育に適した環境を容易に作って蚕を病気から守り、繭の生産効率の向上を図ることのできる蚕の飼育装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、大量の蚕を飼育するための蚕の飼育装置であって、前面に開閉可能な作業口を有するケーシングと、該ケーシング内において垂直方向に積層される複数の飼育棚と、該各飼育棚内の飼育環境をコントロールする空調設備と、前記各飼育箱を上下方向に移動させると共に前記作業口で停止させる駆動設備と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る蚕の飼育装置は、前記ケーシングの内部を前側垂直空間と後側垂直空間とに分割すると共に該各垂直空間の上方の上部空間及び下方の上部空間を介して該各垂直空間を連通させるように設けられる仕切板を備え、前記駆動設備は、前記作業口の閉鎖時に、各垂直空間と前記上部及び下部空間を介して前記各飼育棚を循環させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る蚕の飼育装置において、前記空調設備は、前記ケーシングの外部に設けられる空調機と、該空調機と前記ケーシングの上方に設けられる給気チャンバーボックスとを接続する給気ダクトと、を備え、前記給気チャンバーボックスには、前記給気ダクトの接続部に対向する位置にバッフル板が設けられ、該給気チャンバーボックスと前記上部空間との間に多孔板が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る蚕の飼育装置において、前記前側垂直空間内の前記各飼育棚の後面と前記仕切板との間及び前記後側垂直空間内の前記各飼育棚の後面と前記ケーシングの後面との間には、それぞれ、上方から下方に向かって空調空気が流通可能なように垂直流路が形成され、前記各飼育棚の後面には該垂直流路に連通するように給気孔が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る蚕の飼育装置において、前記ケーシングの下部には前記垂直流路を流通した空調空気を該ケーシングの外部に排出するための排気口が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る蚕の飼育装置において、前記飼育棚は1〜3齢用飼育ケージを収納可能に形成され、該1〜3齢用飼育ケージは、上面が開口された扁平な箱形状を有する1〜3齢用飼育容器と、該1〜3齢用飼育容器の底面に敷設され、1〜3齢の蚕及び飼料を載置可能な1〜3齢用ネットと、該1〜3齢用ネットが敷設された前記1〜3齢用飼育容器を収容可能な大きさを有すると共に、該飼育容器が通過可能且つ密閉可能な出入口を有し、該飼育容器の上面の開口に対応する部分に多数の小孔を有する1〜3齢用ビニル袋と、により構成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る蚕の飼育装置において、前記飼育棚は4〜5齢用飼育ケージを収納可能に形成され、該4〜5齢用飼育ケージは、上面が開口された箱形状を有する4〜5齢用飼育容器と、該4〜5齢用飼育容器の内部において該飼育容器の底面から上方に所定の空間を隔てて支持され、4〜5齢の蚕より小さい孔を多数有する紙と、該紙上に配置され、4〜5齢の蚕及び飼料を載置可能な4〜5齢用ネットと、前記4〜5齢用飼育容器の上面の開口を覆うように該飼育容器に着脱可能に設けられる4〜5齢用ビニルシートと、により構成され、前記4〜5齢用飼育容器の側面には、前記空間に連通するように換気口が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る蚕の飼育装置において、前記飼育棚は、前記作業口の開口幅に沿って、前記1〜3齢用飼育ケージ又は前記4〜5齢用飼育ケージを並設可能に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る蚕の飼育装置によれば、大量の蚕を飼育する際に、省スペース化、省力化、及び省エネルギー化を図ることができると共に、蚕の飼育に適した環境を容易に作って蚕を病気から守り、繭の生産効率の向上を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
まず、
図1〜
図5を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置について説明する。ここで、
図1は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置を示す概略図、
図2は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置の装置本体を示す断面図、
図3は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置の装置本体の上部を示す断面図、
図4は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置の飼育棚を示す背面図、
図5は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置の装置本体の下部を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置100は、蚕の飼育室内に設置される装置本体101と、装置本体101内の飼育環境をコントロールする空調設備102と、を備えて構成されている。
【0022】
図2に示すように、装置本体101は、縦長箱型のケーシング103と、ケーシング103内において垂直方向に積層される複数の飼育棚104と、各飼育箱104を上下方向に移動させて循環させる駆動設備(図示省略)と、を備えている。
【0023】
ケーシング103は、外形が直方体形状を有しており、例えば、3612mmの幅と、1735mmの奥行きと、4050mmの高さを有している。ケーシング103の前面105の下部には、例えば、開口幅が3000mmで開口高さが650mmの長方形状を有する作業口106が形成されている、作業口106はシャッター107(
図5参照)により開閉可能に設けられ、作業口106の下端にはテーブル108が前方に延出して水平に形成されている。ケーシング103の内部には、ケーシング103の前面105と後面109との間に仕切板110が垂直に形成されている。この仕切板110は、ケーシング103の内部を、前側垂直空間111と後側空間112とに二分割すると共に各垂直空間111,112の上方の上部空間113及び下方の下部空間114を介して各垂直空間111,112を連通させるように形成されている。
【0024】
仕切板110の上端部には、後上方に傾斜する上側傾斜部115と、上側傾斜部115から後方に水平に延出する上側水平部116と、が形成されている。上側水平部116は、後側垂直空間112と上部空間113との間に形成され、上側水平部116には、飼育箱104が通過可能な開口が形成されている。また、上部空間113の前側上部には、ケーシング103の前面105から後方に下傾するように板状のガイド部117が形成されている。
【0025】
仕切板110の下端部には、前下方に傾斜する下側傾斜部118が形成されている。また、後側垂直空間112の下方には、ケーシング103の後面109から前方に水平に下側水平部119が形成されている。下側水平部119には、飼育箱104が通過可能な開口が形成されている。
【0026】
図3に良く示されているように、ケーシング103の上方には、給気チャンバーボックス120が取り付けられている。給気チャンバーボックス120は、外形が扁平な直方体形状を有しており、例えば、3600mmの幅と、1700mmの奥行きと、350mmの高さを有している。
【0027】
給気チャンバーボックス120とケーシング103の上部空間113との間には多孔板121が水平に取り付けられている。多孔板121は、例えば、開口率が40%のパンチングメタルにより形成されており、ケーシング103の幅及び奥行き全体に亘って配置されている。
【0028】
給気チャンバーボックス120の上面122の中央部には、円形のダクト接続部123が開口されており、ダクト接続部123の下方の対向する位置にバッフル板124が設けられている。バッフル板124は、例えば、400mmの幅と400mmの奥行きを有する矩形板状を成し、給気チャンバーボックス120の上面122と多孔板121との中間位置に水平姿勢で取り付けられている。
【0029】
図2に示されているように、ケーシング103の前面105と後面109の各下端部には、それぞれ、排気口125が形成され、排気口125は下部空間114に連通している。
【0030】
飼育棚104は、前側及び後側垂直空間111,112と上部及び下部空間113,114に合計で24段設けられている。各飼育棚104は、底面126と側面127と後面128とにより形成され、例えば、3000mmの幅と、620mmの奥行きと、199mmの高さを有している。
【0031】
ケーシング103の前面105と前側垂直空間111内の各飼育棚104との間には、第1の垂直流路129が形成され、前側垂直空間111内の各飼育棚104の後面128と仕切板110との間には、第2の垂直流路130が形成されている。また、仕切板110と後側垂直空間112内の各飼育棚104との間には、第3の垂直流路131が形成され、後側垂直空間112内の各飼育棚104の後面128とケーシング103の後面109との間には、第4の垂直流路132が形成されている。
【0032】
図4に良く示されているように、飼育棚104の後面128には、同一円形状(例えば、約100mmの内径)の給気孔133が多数開口されており、給気孔133は第2の垂直流路130又は第4の垂直流路132に連通するように形成されている。給気孔133は、上下2段において、それぞれ等間隔で直線状に形成されており、上段より下段の方に数多く形成され、例えば、上段に9個、下段に19個形成されている。
【0033】
再び、
図1に戻ると、空調設備102は、飼育室の外部に設置される空気調和機134と、空気調和機134と給気チャンバーボックス120のダクト接続部123とを接続する給気ダクト135と、飼育室内に設置される吸込口136と空気調和機134とを接続する還気ダクト137と、を備えて構成されている。
【0034】
空気調和機134は、例えば、エアハンドリングユニットで、1000m
3/hの送風能力を有しており、装置本体101の内部を40回/h換気することができる。なお、空気調和機134は、エアハンドリングユニット以外のタイプであっても良く、また、飼育室の内部に設置されていたり、装置本体101と一体に設けられていたりしても良い。
【0035】
次に、
図6〜
図10を参照しつつ、上記した蚕の飼育装置100と共に使用される蚕の飼育具について説明する。ここで、
図6は1〜3齢用飼育ケージを示す断面図、
図7は4〜5齢用飼育ケージを示す断面図、
図8は4〜5齢用飼育ケージの飼育容器を示す斜視図、
図9は4〜5齢用飼育ケージを示す斜視図、
図10は上蔟用飼育ケージを示す斜視図である。
【0036】
蚕の飼育具は、蚕が1齢期から合計4回の脱皮を繰り返し、最終の5齢期に繭を作るまで使用するものであり、1〜3齢用飼育ケージ10と、4〜5齢用飼育ケージ20と、上蔟用飼育ケージ40と、を備えている。
【0037】
図6に示されているように、1〜3齢用飼育ケージ10は、上面が全面的に開口された扁平な箱形状を有する1〜3齢用飼育容器11と、1〜3齢用飼育容器11の内部に敷設される1〜3齢用ネット12と、1〜3齢用ネット12が敷設された1〜3齢用飼育容器11を収容する1〜3齢用ビニル袋13と、により構成されている。
【0038】
1〜3齢用飼育容器11は、紙製で、矩形状の底面の四辺から外側傾斜姿勢で上方に延出する4つの側面15を有しており、前記底面及び各側面15の内面には撥水加工が施されているのが好ましい。1〜3齢用飼育容器11の底面は430mmの長さと300mmの幅を有しており、1〜3齢用飼育容器11の各側面15は40mmの高さを有している。
【0039】
1〜3齢用ネット12は、樹脂製で、1〜3齢用飼育容器11の底面に載置可能な矩形状を有している。1〜3齢用ネット12は、線径が約1mmで、ピッチが3.9mmに形成されており、1〜3齢の蚕及び飼料を載置可能となっている。
【0040】
1〜3齢用ビニル袋13は、塩化ビニル製で、1〜3齢用ネット12が敷設された1〜3齢用飼育容器11を収容可能な大きさを有し、580mmの長さと400mmの幅を有している。1〜3齢用ビニル袋13には、1〜3齢用飼育容器11が通過可能な出入口16が開口されている。この出入口16にはチャック17が取り付けられ、チャック17によって出入口16を密閉可能となっている。また、1〜3齢用ビニル袋13には、1〜3齢用飼育容器11の上面の開口に対応する部分に多数の小孔が形成されている。この小孔は、孔径が約2mmで、ピッチが約15mmに形成されている。
【0041】
図7〜
図9に示されているように、4〜5齢用飼育ケージ20は、上面が全面的に開口された箱形状を有する4〜5齢用飼育容器21と、4〜5齢用飼育容器21の内部に支持される紙22と、4〜5齢用飼育容器21の内部において紙22の上方に配置される4〜5齢用ネット23と、4〜5齢用飼育容器21の上面の開口を覆うように該飼育容器21に着脱可能に設けられる4〜5齢用ビニルシート24と、により構成されている。
【0042】
4〜5齢用飼育容器21は、段ボール製であり、矩形状のトレイ25と、トレイ25の外周縁上に起立するように形成される外周側面26と、外周側面26の内部を複数(例えば、12個)の小空間27に分割するように仕切る仕切板28と、を備えて構成されている。4〜5齢用飼育容器21は、730mmの長さと610mmの幅と135mmの高さの外形寸法を有している。なお、4〜5齢用飼育容器21は、組み立て式で、平板状に折り畳み可能に形成されているため、保管時の収納スペースを縮小することができる。
【0043】
紙22は、撥水加工が施されているのが好ましい。トレイ25は、矩形板状の底面29と、底面29の四辺から鉛直姿勢で上方に僅かに延出する立上り部30と、により構成されている。
【0044】
外周側面26の下部には、矩形状の換気口31が複数(例えば、14個)形成されており、換気口31は仕切板28によって仕切られた各小空間27に連通している。換気口31は、外周側面26において左右いずれか一側縁部を残して三辺を切り欠き、該一側縁部に沿って内側に折り曲げることにより、形成される。この時、内側に折り曲げられた部分は、中央部でさらに山型に折り曲げられ、これにより、内側に突出する側面折曲片32が形成される。
【0045】
仕切板28は、その上端が側面折曲片32の上端と同一高さに形成されており、側面折曲片32と共に紙22及び4〜5齢用ネット23を支持するようになっている。仕切板28には、各小空間27を臨む部分に、複数(例えば、17個)の通孔33が形成されており、これらの通孔33を介して各小空間27が連通している。
【0046】
外周側面26の4つの角部34には、それぞれ、換気口31より上方に角部折曲片35が内側に突出するように形成されている。角度折曲片35は、角部34に上下平行な切れ込みを形成し、内側に押し込むことによって形成されている。角部折曲片35の中央部には水平な切れ込み50がさらに形成されており、仕切板28と側面折曲片32に支持された紙22及び4〜5齢用ネット23をこの切れ込み50に挟み込むことにより固定できるようになっている。また、この角部折曲片35を形成することにより、4つの角部34に掛止部36が凹状に形成されている。
【0047】
紙22は、仕切板28と側面折曲片32によりトレイ25の底面29から上方に所定の空間を隔てた高さに支持される。紙22は、矩形状を成し、700mmの長さと530mmの幅を有している。紙22には、4〜5齢の蚕より小さい内径2mmの小孔が10mm×20mmのピッチで多数(例えば、3000個)形成されている。
【0048】
4〜5齢用ネット23は、樹脂製で、紙22上に載置可能な矩形状を有している。4〜5齢用ネット12は、線径が約1mmで、ピッチが6.4mmに形成されており、4〜5齢の蚕及び飼料を載置可能となっている。
【0049】
4〜5齢用ビニルシート24は、塩化ビニル製で、1250mmの長さと950mmの幅を有している。4〜5齢用ビニル袋24は、掛止部36にゴムバンドを掛けることにより、4〜5齢用飼育容器21の上面の開口を覆った状態で固定可能となっている。
【0050】
図10に示されているように、上蔟用飼育ケージ40は、上面が全面的に開口された扁平な箱形状を有する上蔟用飼育容器41と、上蔟用飼育容器41の底面に載置される上蔟用スペーサー(図示省略)と、該上蔟用スペーサーを介して上蔟用飼育容器41の底面から所定(例えば、20mm)の高さに支持される蔟44と、上蔟用飼育容器41の上面の開口を覆うように設けられる上蔟用ネット45と、により構成されている。
【0051】
上蔟用飼育容器41は、段ボール製で、矩形板状の底面と、底面の四辺から鉛直姿勢で上方に僅かに延出する立上り部と、により構成され、この底面及び立上り部の内面には撥水加工が施されているのが好ましい。上蔟用飼育容器41の底面は1150mmの長さと830mmの幅を有しており、上蔟用飼育容器41の立上り部は50mmの高さを有している。
【0052】
蔟44は、段ボール製で格子状に形成されており、蔟用飼育容器41の内部に4枚並置可能な大きさを有している。上蔟用ネット45は、樹脂製で、1200mmの長さと1000mmの幅を有し、約4mm×5mmの小孔が多数形成されている。
【0053】
次に、
図1〜
図10に加えて
図11を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置100による蚕の飼育方法について説明する。ここで、
図11は本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置100による蚕の飼育方法を示す図である。
【0054】
図11に示されているように、まず、1日目には、卵から孵化した1齢の蚕及び飼料を、1〜3齢用飼育容器11内に敷設された1〜3齢用ネット12上に載置し、1〜3齢用ビニル袋13内に収容させた状態で、1〜3齢用飼育ケージ10を前記駆動設備によって作業口106まで自動で搬送された各段の飼育棚104に収納させる。この時、装置本体101の内部は空調設備102により25℃の温度且つ50%の相対湿度の環境に保持されているが、1〜3齢用飼育ケージ10の1〜3齢用ビニル袋13内は、
図6中において矢印で示すように小孔を介して換気されることで、適度な多湿環境(例えば、相対湿度85%以上)に保持され、飼料が保湿状態となるため、蚕はその飼料を食べて成育する。この場合、1個の1〜3齢用飼育ケージ10に、約700頭の蚕を載置し、1段の飼育棚104に、4個の1〜3齢用飼育ケージ10を幅方向に並設させて収納させる。これにより、最大で96個の1〜3齢用飼育ケージを1台の装置本体101内に収納することができるため、一度に合計6〜7万頭の蚕を飼育することができる。
【0055】
次いで、2〜4日目は、作業口106のシャッター107が閉じられ、各段の飼育棚104は、各垂直空間111,112及び上部及び下部空間113,114を通って循環移動する。この時、各飼育棚104は、例えば、2分毎に1段移動するように間欠運転されるのが好ましい。これにより、各飼育棚104の飼育環境を均一に保持することができる。
【0056】
次いで、5日目は、飼育棚104を前記駆動設備によって作業口106まで自動で搬送させ、飼育棚104から1〜3齢用飼育ケージ10をテーブル108上に取り出す。そして、1〜3齢用ビニル袋13のチャック17を操作して開放した出入口16を介して、1〜3齢用ネット12上に1齢の蚕及び飼料が載置された1〜3齢用飼育容器11を、1〜3齢用ビニル袋13から取り出した後、再び、1〜3齢用飼育ケージ10を元の飼育棚104に収納させる。
【0057】
この時、
図2中において矢印で示されているように、装置本体101の内部では、空気調和機134から送出された空調空気が給気ダクト135を通って給気チャンバーボックス120内に供給される。この空調空気はバッフル板124及び多孔板121によって拡散されると共に整流されてケーシング103内に流入する。そして、ケーシング103内では、空調空気が、ガイド部117や仕切板110の上側傾斜部115等によって、それぞれ、第1の垂直流路129、第2の垂直流路130、第3の垂直流路131、及び第4の垂直流路132に誘導され、該各流路129,130,131,132を降下しながら、給気孔133を通って各飼育棚104内を通過する。これにより、各飼育棚104に収納された1〜3齢用飼育ケージ10は飼育に適した温湿度環境下(温度約25℃、相対湿度約50%)に置かれ、飼料が乾燥されて成長の早い蚕に飼料を食べられなくさせることで、蚕の成育が揃えられ、1齢の蚕は1回目の脱皮を行って2齢の蚕になる。なお、各飼育棚104を通過した空調空気は、下部空間114及び排気口125から吸込口136及び還気ダクト137を通って空気調和機134に戻される。
【0058】
次に、
図11中の6〜14日目に示すように、2齢の蚕及び3齢の蚕は、多湿環境下と湿度約50%の環境下に置かれる日数がそれぞれ多少異なるものの、上記した1齢の蚕と同様の方法で飼育され、それぞれ、2回目及び3回目の脱皮を行って3齢及び4齢の蚕に成育する。
【0059】
次に、15日目は、各飼育棚104を前記駆動設備によって作業口106まで自動で搬送させ、各段の飼育棚104から1〜3齢用飼育ケージ10を取り出した後、各段の飼育棚104にそれぞれ4個の4〜5齢用飼育ケージ20を幅方向に並設させて収納させる。この時、4〜5齢用飼育ケージには、4〜5齢用飼育容器21の内部において仕切板28及び側面折曲片32の上に紙22と4〜5齢用ネット23が順に重ねるように敷かれ、この4〜5齢用ネット23上に飼料が載置されると共に、上記したように成育した4齢の蚕を載置されている。また、4〜5齢用飼育容器21の上面の開口は4〜5齢用ビニルシート24で覆われ、4〜5齢用ビニルシート24の四隅が掛止部36にゴムバンドで固定されている。この時、装置本体101の内部は空調設備102により25℃の温度且つ50%の相対湿度の環境に保持されているが、4〜5齢用飼育ケージ20内は、
図7中において矢印で示すように、換気口31、通孔33、紙22の小孔及び4〜5齢用ネット23を介して換気されることで、適度な多湿環境(例えば、相対湿度85%以上)に保持され、飼料が保湿状態となるため、蚕はその飼料を食べて成育する。
【0060】
この間、紙22及び4〜5齢用ネット23は、仕切板28及び側面折曲片32によって支持されると共に四隅を角部折曲片35により固定されるため、蚕の飼育中にずれたり、撓んだりすることがない。また、4〜5齢用ビニルシート24は、四隅でゴムバンドにより掛止部36に固定されているため、蚕の飼育中に外れたり、撓んだりすることがない。さらに、4〜5齢用ネット23の下方に紙22を敷くことで、4〜5齢用ネット23を通過して落下した蚕がトレイ25の底面29まで落下するのを防止することができる。
【0061】
次いで、16〜18日目は、給餌等の飼育管理作業を行う時以外は、作業口106のシャッター107が閉じられ、各段の飼育棚104は、各垂直空間111,112及び上部及び下部空間113,114を通って循環移動する。この時、各飼育棚104は、例えば、2分毎に1段移動するように間欠運転されるのが好ましい。これにより、各飼育棚104の飼育環境を均一に保持することができる。
【0062】
次いで、19〜20日目は、飼育棚104を前記駆動設備によって作業口106まで自動で搬送させ、飼育棚104から4〜5齢用飼育ケージ20をテーブル108上に取り出す。そして、4〜5齢用ビニルシート24を取り外した後、再び、4〜5齢用飼育ケージ20を元の飼育棚104に収納させる。
【0063】
この時、
図2中において矢印で示されているように、装置本体101の内部では、空気調和機134から送出された空調空気が給気ダクト135を通って給気チャンバーボックス120に供給される。この空調空気はバッフル板124及び多孔板121によって拡散されると共に整流されてケーシング104内に流入する。そして、ケーシング103内では、空調空気が、ガイド部117や仕切板110の上側傾斜部115によって、それぞれ、第1の垂直流路129、第2の垂直流路130、第3の垂直流路131、及び第4の垂直流路132に誘導され、該各流路129,130,131,132を降下しながら、給気孔133を通って各飼育棚104内を通過する。これにより、各飼育棚104に収納された4〜5齢用飼育ケージ20は飼育に適した温湿度環境下(温度約25℃、湿度約50%)に置かれ、飼料が乾燥されることで、蚕の成育が揃えられ、4齢の蚕は4回目の脱皮を行って5齢の蚕になる。
【0064】
また、5齢の蚕についても、その前半期に、毎日給餌されること以外は、上記した4齢の蚕と同様の方法で飼育される。4齢から5齢前半期までの蚕の糞は4〜5齢用ネット23から落下して紙22上に堆積するため、糞の掃除は、5齢以降に紙22を取り外して糞を捨てることにより行う。
【0065】
一方、蚕が5齢後半期まで成育すると、蚕が大きくなり、蚕が4〜5齢用ネット23から落下する虞がなくなるため、紙22をトレイ25の底面29上に移して蚕を飼育する。この場合、蚕の糞は紙22に落下するため、糞の掃除は、紙22に堆積した糞を捨てることにより行う。なお、5齢では脱皮が無く蚕の成育速度を揃える必要がないため、飼料は常に多湿環境下において保湿状態に保持される。
【0066】
次いで、27日目は、飼育棚104を前記駆動設備によって作業口106まで自動で搬送させ、各段の飼育棚104から4〜5齢用飼育ケージ20を取り出す。そして、熟蚕になった蚕は、4〜5齢用ネット23上に載置された状態で上蔟用飼育容器41の底面に移設される。その後、前記上蔟用スペーサーを介して4枚の蔟44を上蔟用飼育容器41の底面に並置し、上蔟用飼育容器41の上面の開口を上蔟用ネット45で覆う。
【0067】
このように組み立てられた上蔟用飼育容器41は、約25℃の温度及び約50%の相対湿度に調整された室内環境下に置かれ、熟蚕となった蚕は上蔟用飼育容器41の底面から蔟44に登り、蔟44の格子内に繭を作る。
【0068】
この時、上蔟用飼育容器41の上面の開口が上蔟用ネット45で覆われているため、蚕が上蔟用飼育容器41から逃げるのを防止することができる。また、蔟44を前記上蔟用スペーサーを介して支持することで、蔟44の下方に空間を確保することができるため、上蔟用飼育容器41の底面に落下した尿や糞で繭が汚れるのを防止することができる。さらに、上蔟用飼育容器41の内面に撥水加工が施されているため、蚕の尿が上蔟用飼育容器41に浸透して外部に漏れる虞がない。さらにまた、上蔟用飼育容器41は低い高さ(例えば、50mm)に設定されているため、ラック等に多段で重ねることができ、省スペースで大量の繭を作ることができ、繭の生産効率を高めることができる。
【0069】
上記した本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置100によれば、飼育棚104を垂直方向に積層させることで、面積当たりの蚕の飼育頭数を大幅に増やし、省スペース化を図ることができる。例えば、
図12(a)に示すように、本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置の装置本体101を設置するために必要な床面積は、作業スペースを含めて、約14m
2(3.6m×3.8m=13.68m
2)で済むのに対して、本実施の形態で飼育できる6〜7万頭の蚕を従来の飼育方法(4段積みの飼育棚104を6ヶ所に平置きする方法)で飼育するために必要な床面積は、
図12(b)に示すように、54m
2(9m×6m=54m
2)となり、これは本実施の形態の場合の約4倍の床面積に相当する。
【0070】
また、上記した従来の飼育方法では、蚕に適した飼育環境を保持するためには飼育室全体を空調する必要があり、仮に、飼育室の高さを3m、換気回数を10回/hとすると、1620m
3/hの空調風量が必要となるが、本発明の実施の形態に係る飼育装置100によれば、環境制御の対象となる空間を縮小化することができるため、装置本体101内の換気回数を40回/hに設定したとしても、送風量を1000m
3/hに抑えることができ、これは従来の風量を40%削減した値に相当し、大幅な省エネルギー化を図ることができる。
【0071】
また、上記した本発明の実施の形態に係る蚕の飼育装置100によれば、仕切板110や給気孔133等によって装置本体101内の気流をバランスよく制御し、飼育棚104内の空調空気の風速分布を0.05〜0.1m/sの範囲にコントロールすることができ、蚕の飼育環境を均一且つ最適に保持することができるため、蚕を正常且つ成育速度にバラツキを生じさせることなく、飼育することができる。
【0072】
さらに、各段の飼育棚104に収納された飼育ケージ10,20を前記駆動設備によって作業口106まで自動で搬送することができるため、蚕の飼育管理作業の簡素化や繭の生産効率の向上を図ることができる。
【0073】
また、飼育容器11,21,41は、紙や段ボールにより製作され、使い捨てで使用することができる。そのため、蚕の飼育の度に新しい飼育容器11,21,41を用いることにより、蚕が病気に感染するのを防止することができると共に、飼育容器11,21,41の洗浄作業が不要となる。
【0074】
また、飼育ケージ10,20,40は、軽量な素材を使用し、コンパクトに形成されており、容易に取り扱うことができるため、蚕の飼育管理作業の省力化及び効率化をさらに図ることができる。
【0075】
なお、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る蚕の飼育装置における好適な実施の形態を説明しているため、材質、寸法、構造等、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【解決手段】大量の蚕を飼育するための蚕の飼育装置であって、前面105に開閉可能な作業口106を有するケーシング103と、ケーシング103内において垂直方向に積層される複数の飼育棚104と、各飼育棚104内の飼育環境をコントロールする空調設備と、各飼育箱104を上下方向に移動させると共に作業口106で停止させる駆動設備と、を備えていることを特徴とする。