特許第6134022号(P6134022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6134022帯域制御システム、局舎側加入者終端装置、集約スイッチ、及び帯域制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6134022
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】帯域制御システム、局舎側加入者終端装置、集約スイッチ、及び帯域制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
   H04L12/44 B
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-31052(P2016-31052)
(22)【出願日】2016年2月22日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】角倉 肇
(72)【発明者】
【氏名】田代 隆義
(72)【発明者】
【氏名】太田 憲行
【審査官】 速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−538645(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0076495(US,A1)
【文献】 岩田敏行ほか,PON型アーキテクチャアクセスにおけるトラヒック制御方式の提案,電子情報通信学会論文誌 (J89−B) 第5号,社団法人電子情報通信学会,2006年 5月,第705−719頁
【文献】 G.988 (10/12) Optical network unit management and control interface specification,2012年10月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局舎側加入者終端装置が集約スイッチと接続された通信システムにおいて帯域制御を実施する帯域制御システムであって、
前記局舎側加入者終端装置のDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)処理部は、前記集約スイッチのマーカにユーザ側加入者終端装置ごとのトラヒック量の情報を通知し、
前記集約スイッチのマーカは、前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部から通知されたトラヒック量の情報に基づいた識別情報をパケットに付与する処理を行う
ことを特徴とする帯域制御システム。
【請求項2】
前記集約スイッチは、パケットに付与されている前記識別情報に基づいて、当該パケットの廃棄判断を行うことを特徴とする請求項1に記載の帯域制御システム。
【請求項3】
前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部は、前記集約スイッチのマーカにユーザ側加入者終端装置ごとの送信許可量と時刻情報を通知することを特徴とする請求項1又は2に記載の帯域制御システム。
【請求項4】
前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部は、各ユーザ側加入者終端装置から受信したREPORTフレームに基づいて前記送信許可量と前記時刻情報を算出することを特徴とする請求項3に記載の帯域制御システム。
【請求項5】
前記集約スイッチのマーカは、前記送信許可量からトラヒック量を算出し、そのトラヒック量と前記時刻情報とに基づいて識別情報をパケットに付与する処理を行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の帯域制御システム。
【請求項6】
前記時刻情報は、送信開始時刻を示す情報であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の帯域制御システム。
【請求項7】
前記ユーザ側加入者終端装置と前記集約スイッチのマーカとの間で時刻情報が同期していることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の帯域制御システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の帯域制御システムが備える局舎側加入者終端装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の帯域制御システムが備える集約スイッチ。
【請求項10】
局舎側加入者終端装置が集約スイッチと接続された通信システムにおいて帯域制御を実施する帯域制御方法であって、
前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部が、前記集約スイッチのマーカにユーザ側加入者終端装置ごとのトラヒック量の情報を通知するステップと、
前記集約スイッチのマーカが、前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部から通知されたトラヒック量の情報に基づいた識別情報をパケットに付与する処理を行うステップと
を含むことを特徴とする帯域制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセス網のPON装置、集約SWに対して流量に基づき信号の帯域制御を実施する帯域制御システム、局舎側加入者終端装置、集約スイッチ、及び帯域制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、局舎側加入者終端装置(Optical Line Terminal:OLT)と複数のユーザ側加入者終端装置(Optical Network Unit:ONU)とを光ファイバ及び光スプリッタで接続し、複数のONUで帯域を共有するパッシブ光ネットワーク(Passive Optical Network:PON)が広く用いられている。
【0003】
このような通信網サービスは、アクセス系集約SW(スイッチ)と、OLTと、ONUとで構成される場合がある。この場合、集約SWで集約されたトラヒックの帯域制御を行う際、WRED(Weighted Random Early Detection)技術を用いることがある(非特許文献1参照)。WREDは、輻輳を回避するために、インターフェースのキューにたまってきたパケットを事前に廃棄させる技術である。一方、OLTとONUとの間では上りの通信を制御するため、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)技術を用いることがある(非特許文献2参照)。DBAは、ONUからOLTへの上り帯域を、トラヒック量に応じて動的に割り当てる機能である。集約SW及びOLT〜ONU間での制御単位をユーザ単位とすれば、ユーザごとのトラヒック制御が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】trTCM(RFC4115) A Differentiated Service Two-Rate, Three-Color Marker with Efficient Handling of in-Profile Traffic
【非特許文献2】NTT技術ジャーナル2005.10、技術基礎講座「GE−PON技術」、平成28年2月1日検索、インターネット<http://www.ntt.co.jp/journal/0510/files/jn200510067.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、集約SWで集約されたトラヒックの帯域制御を行う場合において、WREDと2R3Cの色付け(後述する。)を組み合わせて帯域制御を実施する際、ユーザごとの流量を測定するメータ部分を実装するにあたり大量の装置リソース(高速メモリ等)を必要とする。
【0006】
本発明は、従来の技術に鑑み、システム・装置の効率化・経済化を図ることができる帯域制御システム、局舎側加入者終端装置、集約スイッチ、及び帯域制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の態様に係る発明は、局舎側加入者終端装置が集約スイッチと接続された通信システムにおいて帯域制御を実施する帯域制御システムであって、前記局舎側加入者終端装置のDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)処理部は、前記集約スイッチのマーカにユーザ側加入者終端装置ごとのトラヒック量の情報を通知し、前記集約スイッチのマーカは、前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部から通知されたトラヒック量の情報に基づいた識別情報をパケットに付与する処理を行うことを要旨とする。
【0008】
第2の態様に係る発明は、第1の態様に係る発明において、前記集約スイッチが、パケットに付与されている前記識別情報に基づいて、当該パケットの廃棄判断を行うことを要旨とする。
【0009】
第3の態様に係る発明は、第1又は第2の態様に係る発明において、前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部が、前記集約スイッチのマーカにユーザ側加入者終端装置ごとの送信許可量と時刻情報を通知することを要旨とする。
【0010】
第4の態様に係る発明は、第3の態様に係る発明において、前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部が、各ユーザ側加入者終端装置から受信したREPORTフレームに基づいて前記送信許可量と前記時刻情報を算出することを要旨とする。
【0011】
第5の態様に係る発明は、第3又は第4の態様に係る発明において、前記集約スイッチのマーカが、前記送信許可量からトラヒック量を算出し、そのトラヒック量と前記時刻情報とに基づいて識別情報をパケットに付与する処理を行うことを要旨とする。
【0012】
第6の態様に係る発明は、第3〜第5のいずれか1つの態様に係る発明において、前記時刻情報が、送信開始時刻を示す情報であることを要旨とする。
【0013】
第7の態様に係る発明は、第3〜第6のいずれか1つの態様に係る発明において、前記ユーザ側加入者終端装置と前記集約スイッチのマーカとの間で時刻情報が同期していることを要旨とする。
【0014】
第8の態様に係る発明は、第1〜第7のいずれか1つの態様に係る発明の帯域制御システムが備える局舎側加入者終端装置であることを要旨とする。
【0015】
第9の態様に係る発明は、第1〜第7のいずれか1つの態様に係る発明の帯域制御システムが備える集約スイッチであることを要旨とする。
【0016】
第10の態様に係る発明は、局舎側加入者終端装置が集約スイッチと接続された通信システムにおいて帯域制御を実施する帯域制御方法であって、前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部が、前記集約スイッチのマーカにユーザ側加入者終端装置ごとのトラヒック量の情報を通知するステップと、前記集約スイッチのマーカが、前記局舎側加入者終端装置のDBA処理部から通知されたトラヒック量の情報に基づいた識別情報をパケットに付与する処理を行うステップとを含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、システム・装置の効率化・経済化を図ることができる帯域制御システム、局舎側加入者終端装置、集約スイッチ、及び帯域制御方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る帯域制御システムの構成図である。
図2】FBAのイメージを示す図である。
図3】DBAのイメージを示す図である。
図4】DBA機能を実現する手順を示す図である。
図5】WREDを説明するための図であり、(a)ネットワーク上を流れるパケットPを処理する過程を示す概念図、(b)廃棄確率と使用レートの関係を示すグラフ。
図6】比較例に係る帯域制御システムの構成図である。
図7】比較例及び実施例に係る帯域制御システムの構成図である。
図8】比較例及び実施例に係る帯域制御システムにおける主信号と制御情報の流れを示す図であり、(a)比較例、(b)実施例。
図9】実施例の実現方式を説明するための図であり、(a)外部連携方式、(b)インターナルコネクト方式。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための帯域制御システムを例示するものであり、装置の構成やデータの構成等は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る帯域制御システムの構成図である。この図に示すように、中継網40等の上位ネットワークに集約スイッチ30が接続されている。集約スイッチ30は、ネットワークの中継機器の1つであり、パケットの行き先を判断して転送を行う機器である。集約スイッチ30のポートには、1対1でOLT21,22,23,24,…(以下、一括して「OLT20」という場合がある。)が接続されている。更に、OLT21には、スプリッタを介して1対N(Nは1以上の整数)でONU10が接続されている。
【0021】
ここでは図示を省略しているが、OLT21以外のOLT22,23,24,…にもスプリッタを介して1つ以上のONU10が接続されている。また、各ONU10には1台または複数台の端末が接続されている。
【0022】
この帯域制御システムでは、集約SW30で集約されたトラヒックに帯域制御を行う際、WRED(Weighted Random Early Detection)技術を用いる。WREDは、輻輳を回避するために、インターフェースのキューにたまってきたパケットを事前に廃棄させる技術である。一方、OLT20とONU10との間では上りの通信を制御するため、DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)技術を用いる。DBAは、ONU10からOLT20への上り帯域を、トラヒック量に応じて動的に割り当てる機能である。集約SW30及びOLT20〜ONU10間での制御単位をユーザ単位とすれば、ユーザごとのトラヒック制御が可能である。
【0023】
(DBA)
以下、DBAについて説明する。以下の説明は非特許文献2の記載に基づく。
【0024】
まず、図2及び図3を用いて、DBA機能の必要性について説明する。
【0025】
GE−PONでは1Gbit/sの上り帯域を、最大32台のONUで分け合う。このとき、もっとも簡単に分け合う方法は、各ONUに一定量の送信許可を繰り返し与える、という方法である。例えば、ONU10_1に5kBを割当、次にONU10_2にも5kB、ONU10_3にも5kB、…という方法である。このように固定的にONUに帯域を割り当てる方法をFBA(Fixed Bandwidth Allocation:固定帯域割当)と呼ぶ。しかし、FBAの場合、上りトラヒックが流れていないONUにも帯域が割り当てられるため、その分は未使用帯域となり、無駄になってしまう。FBAによる割当帯域の例を図2に示す。図の横軸は時間、縦軸は帯域を表し、ハッチング領域は実際に割り当てられた帯域にONUが上りデータを送信していることを表している。この例では、OLTに4台のONUがつながっているものとしているため、それぞれのONUに常に全帯域の4分の1が割り当てられている。最初、3台のONU10_1,10_2,10_3だけに上りトラヒックが流れているものとする(T1)。このとき、トラヒックが流れていないONU10_4にも上り帯域が割り当てられているため、その分は未使用帯域となる。その後、ONU10_3は通信が終了し上りトラヒックが流れなくなったとする。そうすると、さらにONU10_3に割り当てられている帯域も無駄になってしまう(T2)。この例のように、FBAでは未使用帯域が多く発生し、帯域の利用効率が非常に低いことが分かる。また1台のONUに割り当てられる帯域はONU台数分の1しかない(T3)。32台のONUがOLTにつながっている場合、1台のONUに割り当てられる帯域は最大でも30Mbit/s程度しかないことになる。
【0026】
そこでこの無駄をなくすため、GE−PONシステムではOLTにDBA機能を搭載することが可能となっている。DBA機能は、各ONUの上りトラヒックに応じて柔軟に帯域を割り当てる。DBA機能による割当帯域の例を図3に示す。この例では、図2と同様に4台のONUがつながれており、時間が経つにつれて、上りトラヒックが流れているONUの台数が変化するものとする(T4→T5→T6)。このとき、図2の例とは異なり、DBA機能により上りトラヒックが流れているONUだけに上り帯域が割り当てられる。その結果、図3に示すように、無駄なく帯域を使用することができる。このように、DBA機能により、各ONUに流れる上りトラヒックの状況に応じて適切に割り当てる帯域を切り替えることで未使用帯域を発生させることなく、効率的に上り帯域を使用できる。
【0027】
次に、図4を用いて、DBAの仕組みについて説明する。
【0028】
GE−PONではMPCP(Multi Point Control Protocol)というプロトコルを使用して上り信号制御を実現する。OLTはGATEフレームにより、それぞれのONUが時間的に衝突することなく送信できるように送信開始時刻、送信量を指示する。一方、ONUはREPORTフレームによりONUのバッファに蓄積されている送信待ちのデータ量をOLTに伝える。このGATEフレームとREPORTフレームとを用いてDBA機能を実現する手順を説明する(図4)。
【0029】
(1)ONUは上りデータを受信すると、ひとまずバッファに上りデータを蓄積する。
(2)ONUは蓄積している上りデータの量をREPORTフレームに記し、そのREPORTフレームをOLTに送信する。OLTは受信したREPORTフレームから、ONUに蓄積されている上りデータの量を把握する。
(3)OLTは、ONUの蓄積データ量と他のONUの使用帯域から、このONUに割り当てるべき上り帯域を計算する。具体的には、ONUの上り送信開始時刻と送信量とを算出する。
(4)OLTは算出した値をGATEフレームに記し、ONUに送信する。
(5)ONUは受信したGATEフレームの指示に従い、指定された時刻に上りデータを送信する。このとき、次回の帯域割当のために、再度バッファに蓄積している上りデータの量を通知することもある。
【0030】
この(1)〜(5)の手順を繰り返すことで、OLTは各ONUにおける上りトラヒックの状況を知ることができ、適切に帯域を割り当てることができる。
【0031】
(WRED)
図5は、WREDを説明するための図である。具体的には、図5(a)は、ネットワーク上を流れるパケットPを処理する過程を示す概念図であり、図5(b)は、廃棄確率と使用レートの関係を示すグラフである。
【0032】
メータは、パケットPを受信すると、ユーザごとに使用レートを測定し、測定した使用レートをマーカに通知する。パケットPには識別子Mが設定されている。識別子Mとしては、例えば、VLAN CoSビットを利用することが可能である。
【0033】
マーカは、メータによって測定された使用レートに応じて、2R3C(2 rate 3 color)のマーキング(カラーリング)を行う。具体的には、パケットPの廃棄に関して、Green、Yellow、Redの3色の色付け処理を行う。使用レートが保障帯域相当である場合は、Greenの色付け処理を行い、識別子MのパケットPを送出する。使用レートが高くなると、Yellowの色付け処理を行い、識別子MのパケットPを送出する。更に使用レートが高くなると、Redの色付け処理を行い、識別子MのパケットPを送出する。
【0034】
ドロッパは、マーカによって色付けされたパケットPをバッファ内のキューに格納し、輻輳時はカラーに応じてパケットPを廃棄する。具体的には、Greenに色付けされたパケットPについては全て透過させ、Yellowに色付けされたパケットPについては使用レートに応じてパケットの一部を廃棄し、Redに色付けされたパケットPについては全て廃棄する。これにより、キューにたまってきたパケットPをランダムに少しずつドロップさせて輻輳を回避することが可能である。
【0035】
(比較例)
図6は、比較例に係る帯域制御システムの構成図である。この図に示すように、集約スイッチ30は、制御単位ごとに流量を測定するメータ31と、メータ31によって測定された流量に基づいてパケットに色付け処理を行うマーカ32と、マーカ32によって色付けされたパケットをそのカラーに応じて選択的に廃棄するドロッパ33とを備える。
【0036】
このような比較例に係る帯域制御システムによると、WREDと2R3Cの色付け(マーキング)を組み合わせて帯域制御を実施する際、メータ31を実装するにあたり大量の装置リソースを必要とする。すなわち、ユーザごとやクラスごと等の流量をメータ31で測定するには、高速メモリ等を大幅に消費することになる。
【0037】
(実施例:概要)
図7は、帯域制御システムの構成図である。本発明の実施例でも、比較例と同様、WREDと色付け(マーキング)を組み合わせて帯域制御を実施するシステムを想定している。比較例と実施例の違いを分かりやすくするため、図7には、比較例と実施例の両方を示している。
【0038】
まず、比較例に係る帯域制御システムについて説明する。比較例のDBA処理部21は、各ONU10からのトラヒック量を把握している。すなわち、WREDのメータ31相当の動作を行うようになっている。その後、WREDによる帯域制御を実施しようとする際には、メータ31で再度各ONU10からのトラヒック量を計測している。マーカ32、ドロッパ33の動作は、図6を用いて説明した通りである。
【0039】
そこで、実施例に係る帯域制御システムでは、DBA処理部21Aから直接マーカ32Aにトラヒック量の情報を渡すようにしている。このようにDBA処理部21Aとマーカ32Aとが連携すれば、大量の装置リソースを消費するメータ31を省略することが可能である。
【0040】
(実施例:詳細)
図8は、帯域制御システムにおける主信号と制御情報の流れを示す図であり、(a)は比較例、(b)は実施例を示している。
【0041】
まず、比較例について説明する。図8(a)に示すように、DBA処理部21は、ユーザ(ONU10)ごとに送信許可量を指示するとともに、送信開始時刻を通知する(S1)。これにより、ONU10は、DBA処理部21の指示に従い、指定された時刻に上りデータを送信する(S2)。ONU10−OLT20(DBA処理部21)間の動作は、図4の通りである。次いで、メータ31は、DBA処理部21から主信号を受信すると(S3)、ユーザごとの流量を測定し、測定したユーザごとの流量をマーカ32に通知する(S5)。マーカ32は、メータ31から主信号を受信すると(S4)、メータ31によって測定されたユーザごとの流量に基づいてパケットに色付け処理を行う。
【0042】
次に、実施例について説明する。図8(b)に示すように、DBA処理部21Aは、ユーザ(ONU10)ごとに送信許可量を指示するとともに、送信開始時刻を通知する(S11)。このとき、DBA処理部21Aは、マーカ32Aにも送信許可量と時刻情報を通知する(S11A)。ここでいう時刻情報とは、具体的には、送信開始時刻を示す情報である。通常、ONU10とマーカ32との間では時刻同期が不要であるが、本実施例では、ONU10とマーカ32Aとの間で時刻同期をとっている。マーカ32Aは、DBA処理部21から主信号を受信すると(S12→S13)、DBA処理部21Aから通知された送信許可量から流量を算出し、その流量と時刻情報とに基づいてユーザごとに色付け処理を行う。
【0043】
具体的には、マーカ32Aは、流量と時刻情報とに基づいて、使用レート(メータ31によって測定された使用レートに相当)を算出する。そして、この使用レートに応じて、2R3Cのマーキングを行う。マーキングの具体的な内容は既に説明した通りである。すなわち、パケットPの廃棄に関して、Green、Yellow、Redの3色の色付け処理を行うようになっている。以降のドロッパ33の処理も既に説明した通りである。
【0044】
以上のように、OLT20〜ONU10間の上り通信では、DBAによる送信許可制御を実施しており、各ONU10からのトラヒック量を把握している。すなわち、DBA処理部21は、全ONU10から申告を受けてから送信量を許可しているため、各ONU10からのトラヒック量を把握している。そこで、本実施例では、その後にWREDによる帯域制御を実施しようとする際には、比較例のようにメータ31で再度各ONU10からのユーザごとのトラヒック量を計測するのではなく、DBA処理部21Aからマーカ32Aへトラヒック量の情報を渡すようにしている。これにより、メータ31の処理を省略することができるため、システム・装置の効率化・経済化が実現する。
【0045】
(実施例の実現方式)
図9は、実施例の実現方式を説明するための図であり、(a)は外部連携方式、(b)はインターナルコネクト方式を示している。図9(a)に示すように、OLT20と集約スイッチ30とを別々の装置として構成し、外部連携させるようにしてもよい。あるいは、図9(b)に示すように、1つの集合型シャーシにOLT20と集約スイッチ30とを収容し、その内部の基板上で結線するようにしてもよい。いずれの実現方式を採用した場合でも、流量情報を機能部間で連携させることにより、機能部を減らすことが可能 (実装機能が省略可能) になるため、システム・装置の効率化・経済化を実現することが可能となる。
【0046】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る帯域制御システムは、OLT20が集約スイッチ30と接続された通信システムにおいて帯域制御を実施する帯域制御システムであって、OLT20のDBA処理部21Aは、集約スイッチ30のマーカ32AにONU10ごとのトラヒック量の情報を通知し、集約スイッチ30のマーカ32Aは、OLT20のDBA処理部21Aから通知されたトラヒック量の情報に基づいた識別情報をパケットに付与する処理を行う。このようにDBA処理部21Aとマーカ32Aとが連携すれば、大量の装置リソースを消費するメータ31を省略することが可能である。
【0047】
具体的には、集約スイッチ30は、パケットに付与されている識別情報に基づいて、当該パケットの廃棄判断を行う。これにより、例えば、Greenに色付けされたパケットPについては全て透過させ、Yellowに色付けされたパケットPについては使用レートに応じてパケットの一部を廃棄し、Redに色付けされたパケットPについては全て廃棄することが可能である。
【0048】
また、OLT20のDBA処理部21Aは、集約スイッチ30のマーカ32AにONU10ごとの送信許可量と時刻情報を通知する。より具体的には、各ONU10から受信したREPORTフレームに基づいて送信許可量と時刻情報を算出する。これにより、DBAによる送信許可制御を実施する際は、その結果を利用して容易にメータ31の処理を省略することが可能である。
【0049】
また、集約スイッチ30のマーカ32Aは、送信許可量からトラヒック量を算出し、そのトラヒック量と時刻情報とに基づいて識別情報をパケットに付与する処理を行う。これにより、OLT20のDBA処理部21から送信許可量と時刻情報を通知された場合でも、メータ31から使用レートを通知された場合と同様に色付け処理を行うことが可能である。
【0050】
また、時刻情報は、送信開始時刻を示す情報である。これにより、集約スイッチ30のマーカ32Aは、それぞれのONU10が時間的に衝突することなく送信できるように制御された時刻を把握することが可能である。
【0051】
また、ONU10と集約スイッチ30のマーカ32Aとの間で時刻情報が同期している。これにより、マーカ32側で送信開始時刻を把握することができるため、メータ31によって測定された使用レートと同様、精度よく使用レートを算出することが可能である。
【0052】
なお、本発明は、このような帯域制御システムとして実現することができるだけでなく、このような帯域制御システムが備えるOLT20や集約スイッチ30として実現することができる。また、このような帯域制御システムが備える特徴的な機能部をステップとする帯域制御方法として実現することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…ONU(ユーザ側加入者終端装置)
20…OLT(局舎側加入者終端装置)
21A…DBA処理部
30…集約スイッチ
32A…マーカ
【要約】
【課題】システム・装置の効率化・経済化を図ることができる帯域制御システム、局舎側加入者終端装置、集約スイッチ、及び帯域制御方法を提供する。
【解決手段】帯域制御システムは、OLT20が集約スイッチ30と接続された通信システムにおいて帯域制御を実施する帯域制御システムであって、OLT20のDBA処理部21Aは、集約スイッチ30のマーカ32AにONU10ごとのトラヒック量の情報を通知し、集約スイッチ30のマーカ32Aは、OLT20のDBA処理部21Aから通知されたトラヒック量の情報に基づいた識別情報をパケットに付与する処理を行う。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9