【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省「移動通信システムにおける三次元稠密セル構成及び階層セル構成技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ここでは、LTE/LTE−Advancedへの適用を前提に本発明の実施形態を説明するが、類似のセル構成、物理チャネル構成を用いるシステムであれば、本発明の概念はどのようなシステムにも適用可能である。
【0008】
まず、本発明を適用可能な移動通信システムの全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る複数の基地局が配置された移動通信システムの概略構成を示す説明図である。
図1において、本実施形態の移動通信システムは、LTE(Long Term Evolution)/LTE−Advancedの標準仕様に準拠したセルラー方式の通信システムであり、マクロセル基地局10の無線通信エリアであるマクロセル10A内にスモールセル基地局20が配置され、マクロセル10Aの中にスモールセル20Aが含まれている例である。
【0009】
図1において、マクロセル基地局10は、移動体通信網において屋外に設置されている通常の半径数百m乃至数km程度の広域エリアであるマクロセル10Aをカバーする大出力の基地局であり、「マクロセル基地局」、「Macro e−Node B」、「Macro eNB」等と呼ばれる場合もある。また、スモールセル基地局20は、広域のマクロセル基地局10とは異なり、無線通信可能距離が数m乃至数十m程度であり、一般家庭、店舗、オフィス等の建物の内部にも設置することができる小出力の基地局である。スモールセル基地局20は、移動体通信網における広域のマクロセル基地局10がカバーするエリアよりも小さなエリアをカバーするように設けられるため「スモールセル基地局」と呼ばれたり、「Small e−Node B」や「Small eNB」と呼ばれたりする場合もある。
【0010】
また、
図1では、1つのマクロセル10Aの中に1つのスモールセル20Aが含まれるセル構成について説明するが、2つ以上のスモールセルが含まれている構成であってもよいし、複数のマクロセルのそれぞれに、複数スモールセルが含まれる構成であってもよい。
【0011】
また、
図1において、移動通信における通信端末装置としての移動局であるユーザ端末装置(UE:User Equipment)30は、スモールセル基地局20のスモールセル20Aに在圏してスモールセル基地局20に接続されたユーザ端末装置であり、スモールセル基地局20を介して電話やデータ通信などのための無線通信が可能な状態にある。このユーザ端末装置30は、マクロセル10Aに含まれるスモールセル20Aに在圏しているため、マクロセル基地局10からの干渉を受ける可能性のある状況にある。なお、
図1では、ユーザ端末装置30が1台だけセルに在圏する場合について図示しているが、セルに在圏するユーザ端末装置は複数台であってもよい。また、ユーザ端末装置30は、マクロセル基地局10と接続し、マクロセル基地局10を介して電話やデータ通信などのための無線通信が可能な状態であり、スモールセル基地局20からの干渉を受ける可能性のある状況であってもよい。
【0012】
ユーザ端末装置30は、セルに在圏するときに、その在圏するセルに対応する基地局10,20との間で所定の通信方式及び無線通信リソースを用いて無線通信することができる。ユーザ端末装置30は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、無線通信部などのハードウェアなどを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより基地局10,20等との間の無線通信等を行うことができる。
【0013】
基地局10、20はそれぞれ、自局以外の他の基地局との間が例えば有線の通信回線などによる通信網としてのIP(Internet Protocol)やイーサネット(登録商標)を用いたパケットネットワーク60で接続され、X2インターフェースなどの所定の基地局間通信インターフェースで通信可能になっている。パケットネットワーク60を介した通信は例えば非同期の通信であってもよい。また、基地局10、20はそれぞれ、回線終端装置及び専用回線などの通信回線を介して移動体通信網のコアネットワーク側の装置(例えば、LTEにおけるEPC(Evolved Packet Core))に接続され、サーバ装置などの各種ノードとの間で所定の通信インターフェースにより通信可能になっている。
【0014】
また、基地局10、20はそれぞれ、無線通信制御部としてのベースバンド処理部(以下「BBU」という。)11,21と、アンテナ12、22と、アンテナに接続された無線送受信部としてのリモート無線ヘッド(以下「RRH」という。)13、23と、BBUとRRHとを接続して送受信信号が伝送される光通信ケーブル等の伝送ケーブル14、24とを備える。
【0015】
BBU11,21はそれぞれ、例えばCPUやメモリ等の記憶装置を有するコンピュータ装置、外部通信インターフェース部などのハードウェアなどを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、後述の干渉を抑制するための各種処理を実行したり、所定の通信方式及び無線通信リソースを用いて各種データの送信信号を生成したり、受信信号から各種データを復調したり、ユーザ端末装置30との間の無線通信を制御したりすることができる。
【0016】
また、BBU11,21はそれぞれ、送信停止対象のサブフレームの情報(LTEではABS(Almost Brank Subframe)パターン情報と呼ばれる。)に基づいて、特定の送信停止対象のサブフレームにおける下りデータの送信を停止するように制御する手段としても機能する。
【0017】
また、RRH13,23はそれぞれ、例えばCPUやメモリ等の記憶装置を有するコンピュータ装置、外部通信インターフェース部、無線送受信機などのハードウェアなどを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、BBU11,21との間で送信信号及び受信信号を送受信したり、所定の通信方式及び無線通信リソースを用いてユーザ端末装置30との間で無線通信を行ったりすることができる。
【0018】
また、スモールセル基地局20のRRH23は、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号を受信する下りリンク信号受信部としてのリスニング装置25を備えている。リスニング装置25は、例えばCPUやメモリ等の記憶装置を有するコンピュータ装置、外部通信インターフェース部及び無線受信機などを用いて構成され、RRH23に内蔵してもよいしRRH23の外付け装置としてRRH23に隣接して設置してもよい。リスニング装置25とBBU21との通信は、伝送ケーブル24を介して行い、伝送ケーブル24としては、光ファイバケーブルや同軸ケーブルなどが用いられる。
【0019】
リスニング装置25は、所定のプログラムが実行されることにより、下りリンク信号の受信結果に基づいてマクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号の受信タイミング差を測定する手段としても機能し、また、その受信タイミング差の情報をスモールセル基地局20のBBU21に送信するように制御する手段としても機能する。
【0020】
また、リスニング装置25は、所定のプログラムが実行されることにより、下りリンク信号の受信結果に基づいてマクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号の受信タイミング差を測定する手段としても機能し、また、その受信タイミング差に基づいて、スモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングを調整するためのオフセット値を計算し、そのオフセット値をスモールセル基地局20のBBU21に送信するように制御する手段としても機能する。
【0021】
また、スモールセル基地局20のBBU21は、所定のプログラムが実行されることにより、前記受信タイミング差の情報をリスニング装置25から受信し、その受信タイミング差の測定結果に基づいて、スモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングのオフセット値を計算し、そのオフセット値を記憶し、記憶したオフセット値に基づき、スモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングを調整し、その調整された送信タイミングで下りリンク信号を送信するように制御する手段としても機能する。
【0022】
また、スモールセル基地局20のBBU21は、所定のプログラムが実行されることにより、前記送信タイミングのオフセット値をリスニング装置25から受信し、そのオフセット値を記憶し、記憶したオフセット値に基づき、スモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングを調整し、その調整された送信タイミングで下りリンク信号を送信するように制御する手段としても機能する。
【0023】
また、各基地局10,20のBBU
11、2
1はそれぞれ、内部クロックを有し、基地局間時刻同期機能を有してもよい。例えば、BBU
11、2
1はそれぞれ、GPS(Global Positioning System)衛星から受信したGPS信号に基づいて時刻同期処理(GPS同期方式)を行う手段、又は、他の基準となる基地局から受信した同期信号に基づいて時刻同期処理(リスニング同期方式)を行う手段、又は、所定の時刻同期プロトコル、例えばIEEE(The Institute of Electrical and Electronic Engineers)1588規格で定義されるPTP(Precision Time Protocol)、NTP又はSNTPを用いて時刻同期処理を行う手段として機能するように構成してもよい。
【0024】
次に、上記構成の移動通信システムにおけるスモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングの調整方法を効果的に適用可能なセル間干渉制御について説明する。
図1においてマクロセル10A及びスモールセル20Aで同一周波数帯域が使用される場合、スモールセル20Aにおいて干渉が生じるため、干渉を抑制するための制御が必要となる。この干渉制御方法としては、LTE−Advanced標準のeICIC(enhanced Inter-Cell Interference Coordination)技術が有効である。
【0025】
図2は、LTE/LTE−Advancedに準拠した下りリンクの無線通信フレームの時間軸方向のフォーマットの一例を示す説明図である。
図2に示すように、下りリンクの信号の1単位である所定長(図示の例では10[ms])の無線通信フレーム100は、所定個数(図示の例では10個)の所定長(図示の例では1.0[ms])のサブフレーム110で構成される。各サブフレーム110は、制御チャネル領域110Aとデータチャネル領域110Bとを有する。
【0026】
図3は、基地局間の時刻同期が行われている状態でセル間干渉制御技術(eICIC)を用いたサブフレームの送信停止の様子の一例を示す説明図である。基地局装置間の時刻同期の方法としては、前述のように、GPS衛星から受信したGPS信号に基づいて時刻同期処理を行うGPS同期方法でもよいし、他の基準となる基地局から受信した同期信号に基づいて時刻同期処理を行うリスニング同期方法でもよいし、又は、所定の時刻同期プロトコル、例えばIEEE(The Institute of Electrical and Electronic Engineers)1588規格で定義されるPTP(Precision Time Protocol)、NTP又はSNTPを用いて時刻同期処理を行う方法でもよい。
【0027】
図3に示すように、eICICでは、例えばマクロセル基地局10から送信される無線通信フレーム内の一部のサブフレーム(図示の例では♯1〜#3、#6〜#8のサブフレーム)でデータの送信を停止する。このようなサブフレームをLTEではABSと呼ぶ。スモールセル基地局20は、マクロセル基地局10においてABSに指定されたサブフレームと同じ番号のサブフレーム(図示の例では♯1〜#3、#6〜#8のサブフレーム)を用いてユーザ端末
装置30にデータを送信することで、スモールセル基地局20に接続しているユーザ端末装置30におけるマクロセル基地局10からのデータチャネルの干渉を低減することができる。また、例えば
図3に示すように、スモールセル基地局20の一部のサブフレーム(図示の例では♯0,#4,#5,#9のサブフレーム)で同様にABSを設定することにより、マクロセル基地局10は、スモールセル基地局20においてABSに指定されたサブフレームと同じ番号のサブフレーム(図示の例では♯0,#4,#5,#9のサブフレーム)を用いてユーザ端末装置にデータを送信することで、マクロセル基地局10に接続しているユーザ端末装置におけるスモールセル基地局20からのデータチャネルの干渉を低減することができる。
【0028】
図4は、基地局間の時刻同期が不完全の場合の干渉の様子の一例を示す説明図である。上記セル間干渉制御技術(eICIC)では時間軸上で干渉を制御しているため、各基地局10、20のアンテナから送信された下りリンク信号がユーザ端末装置30に到達する時間のずれを、許容範囲以下(例えば、1[μs]以下)にする必要がある。仮に、各基地局10、20から送信された下りリンク信号がユーザ端末装置30に到達する時間のずれが許容範囲以上であると、例えば
図4に示すように、マクロセル基地局10でABSが設定されたサブフレーム110a(#2)の直前の送信データを含むサブフレーム110a(#1)の後端部111と、スモールセル基地局20の送信データを含むサブフレーム110b(#2)の前端部112とが互いに干渉してしまう。つまり、スモールセル基地局20から送信された下りリンク信号のサブフレーム110b(#2)の前端部112がユーザ端末装置30に受信されているときに、マクロセル基地局10から送信された下りリンク信号のサブフレーム110a(#1)の後端部111がユーザ端末装置30に到達して干渉する。
【0029】
ところが、従来のセル間干渉制御技術(eICIC)を適用した場合、BBU間の時刻同期の精度を高めても、各基地局10、20から送信された下りリンク信号がユーザ端末装置30に到達する時間のずれ(受信タイミング差)が許容範囲以上となり、ユーザ端末装置30における時間軸上の干渉を精度よく制御できない場合がある。この干渉制御の精度が低い原因について本発明者らが実験・検討を行ったところ、各基地局10、20のBBU11,21とRRH13、23との間の伝送ケーブル14、24での伝送遅延時間や、各基地局10、20のアンテナ12、22からユーザ端末装置30までの無線信号(下りリンク信号)の伝搬遅延時間が影響していることがわかった。
【0030】
図5は、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号の受信タイミング差の一例を示す説明図である。ここで、受信タイミング差Δtは、各基地局10、20から送信された下りリンク信号がリスニング装置25に到達したときのサブフレームの時間ずれである。また、図中のΔt0は、BBU11とBBU21間の下りリンク信号送信時刻の差である。(BBU11とBBU21が時刻同期していれば、下りリンク信号を各BBUから同じタイミングで送信が可能であり、Δt0=0となる。)また、
図5のΔt1はマクロセル基地局10のBBU11からRRH13までの伝送ケーブル14における伝送遅延時間であり、Δt2はスモールセル基地局20のBBU21からRRH23までの伝送ケーブル24における伝送遅延時間である(
図1参照)。また、
図5のΔt3は、マクロセル基地局10のアンテナ12からスモールセル基地局側のリスニング装置25までの伝搬遅延時間であり、Δt4は、スモールセル基地局20のアンテナ22からリスニング装置25までの伝搬遅延時間である(
図1参照)。ここで、スモールセル20Aでの伝搬遅延時間Δt4は、リスニング装置25がRRH23に内蔵されているまたは隣接して設置されているため、Δt0、Δt1、Δt2、Δt3と比較して十分に小さく無視できる程度である。
【0031】
図5において、マクロセル基地局10のBBU11では、所定の送信開始設定時刻tのタイミングに下りリンク信号がRRH13に向けて送信され、伝送ケーブル14の伝送遅延時間Δt1が経過したタイミングにアンテナ12から送信される。その後、伝搬遅延時間Δt3が経過したタイミングに、下りリンク信号がリスニング装置25に到達して受信される。一方、スモールセル基地局20のBBU21では、所定の送信開始設定時刻tから時刻同期の時間ずれΔt0だけずれたタイミングt’(=t+Δt0)に下りリンク信号がRRH23に向けて送信され、伝送ケーブル24の伝送遅延時間Δt2が経過したタイミングにアンテナ22から送信される。その後、伝搬遅延時間Δt4が経過したタイミングに、下りリンク信号がリスニング装置25に到達して受信される。以上により、リスニング装置25において、各基地局10、20からの下りリンク信号の受信タイミング差Δtは、次式(1)で表すことができる。また、スモールセル20Aでの伝搬遅延時間Δt4が無視できる程度に小さい場合は、受信タイミング差Δtは次式(2)で表すことができる。
【数1】
【数2】
【0032】
ここで、上記受信タイミング差Δtが正の値の場合は、スモールセル基地局20の下りリンク信号がマクロセル基地局10の下りリンク信号よりも早くユーザ端末装置30に到達していることを示す。一方、上記受信タイミング差Δtが負の値の場合は、スモールセル基地局20の下りリンク信号がマクロセル基地局10の下りリンク信号よりも遅れてユーザ端末装置30に到達していることを示す。
【0033】
本実施形態では、上記時刻同期の時間ずれΔt0だけでなく上記伝送遅延時間Δt1、Δt2や伝搬遅延時間Δt3(場合によってΔt4)を考慮して、次の(1)〜(4)のようにスモールセル基地局20のBBU21における下りリンク信号の送信開始タイミングを調整する複数基地局間の送信タイミング同期方法を実施している。なお、各基地局10、20のBBU11、21は互いに時刻同期(Δt0=0)していてもよいし、非同期(Δt0≠0)であってもよい。
(1)スモールセル基地局20が、マクロセル基地局10及び自局であるスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号を受信する。
(2)スモールセル基地局20が、各基地局10、20からの下りリンク信号の受信結果に基づき、マクロセル基地局10及び自局であるスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号の受信タイミング差Δtを測定する。
(3)スモールセル基地局20が、受信タイミング差Δtに基づいて、自局であるスモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングt’を調整する。
(4)スモールセル基地局20のBBU21が、調整された送信タイミングt’’で下りリンク信号を送信する。
【0034】
図6は、本実施形態に係るスモールセル基地局20の一構成例を示す機能ブロック図である。なお、
図6では、スモールセル基地局20の下りリンク信号の送信開始タイミングを調整する複数基地局間の送信タイミング同期方法を実現するための主要部のみ図示しているが、基地局としての通常の機能を実現するための構成も備えている。
【0035】
図6において、スモールセル基地局20のRRH23に設けられたリスニング装置25は、下りリンク信号受信部251と受信タイミング差測定部252と受信タイミング差送信部253とを備える。下りリンク信号受信部251は、マクロセル基地局10及び自局であるスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号を受信する。受信タイミング差測定部252は、下りリンク信号受信部251で受信した下りリンク信号の受信結果に基づいて、マクロセル基地局10及び自局であるスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号の受信タイミング差Δtを測定する。例えば、受信タイミング差測定部252は、受信した下り信号に含まれる同期信号(LTEではPSS(Primary Synchronization Signal)、SSS(Secondary Synchronization Signal)と呼ばれる。)を検出し、マクロセル基地局10から受信した同期信号の受信時刻と、スモールセル基地局20から受信した同期信号の受信時刻との差を計算することで、受信タイミング差Δtを測定することが可能である。受信タイミング差送信部253は、受信タイミング差測定部252で測定した受信タイミング差Δtの情報を、所定のタイミングに、伝送ケーブル24を介してBBU21に送信する。一般的にRRHとBBUを接続する伝送ケーブルは光ファイバであるため、受信タイミング差送信部253は、例えば、時分割多重(TDM)や波長分割多重(WDM)などの多重化技術を用いることで、送受信信号に受信タイミング差Δtの情報を重畳して、所定のタイミングに、伝送ケーブル24を介してBBU21に送信することができる。
【0036】
スモールセル基地局20のBBU21は、受信タイミング差受信部211とオフセット計算部212とオフセット記憶部213とを備える。受信タイミング差受信部211は、伝送ケーブル24を介してリスニング装置25から送信されてきた受信タイミング差Δtの情報を受信する。オフセット計算部212は、前記受信タイミング差Δtに基づき、自局であるスモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングのオフセット値Δt
offsetを計算する。オフセット記憶部213は、オフセット計算部212で計算したΔt
offsetの値を記憶する。
【0037】
ここで、オフセット計算部212におけるオフセット値Δt
offsetの計算方法の一例について説明する。
図1に示すように、ユーザ端末装置30はスモールセル20Aの内部にはあるが、リスニング装置25の設置されている場所(すなわちRRH23が設置されている場所)と、厳密に同じ場所に存在するとは限らない。従って、リスニング装置25におけるマクロ
セル基地局10からの下りリンク信号とスモール
セル基地局20からの下り信号の受信タイミング差Δtと、ユーザ端末装置30における受信タイミング差Δt’とは異なる。
図1において、Δt3’を、マクロセル基地局10のアンテナ12からスモールセル20Aに在圏するユーザ端末装置30までの伝搬遅延時間とし、Δt4’を、スモールセル基地局20のアンテナ22からスモールセル20Aに在圏するユーザ端末装置30までの伝搬遅延時間とすると、Δt’は次式(3)で表される。
【数3】
【0038】
従って、
図7に示すように、ΔtとΔt’はδ0=|Δt−Δt’|だけ厳密には異なる。しかし、スモールセル20Aの半径は一般的には100m以下である。仮に、セル半径が100mとした場合でもδ0の最大値は0.7マイクロ秒程度であり、一般的なeICICの同期ずれの許容値以下である。従って、Δt
offset=Δtとすることで、ユーザ端末装置30において、マクロセル基地局10からの下りリンク信号とスモールセル基地局20からの下りリンク信号を十分な同期精度で受信することができる。しかし、スモールセル20Aの半径が大きい場合などにはδ0が許容値を超える場合があるため、スモールセル20Aの半径などに応じて適当な補正値δを考慮したオフセット値Δt
offset=Δt+δを用いることで、より同期精度の高い送信を行うことができる。
【0039】
本実施形態では、スモールセル20Aの半径が十分小さいものとし、リスニング装置25とユーザ端末装置30はほぼ同じ場所に存在すると見なして、オフセット値はΔt
offset=Δtとする。ただし、スモールセル20Aの半径が大きい場合には適当な補正値δを考慮してΔt
offset=Δt+δとすることでより同期精度の高い送信を行うようにしてもよい。
【0040】
更に、BBU21は、送信設定時刻記憶部214と同期送信部215とを備える。送信設定時刻記憶部214は、上記ABSパターンなどに基づいて設定された下りリンク信号の所定のBBU21送信時刻(送信設定時刻)t’を記憶する。同期送信部215は、内部クロックの出力に基づいて、所定のBBU21送信時刻(送信設定時刻)t’を前記オフセット記憶部213に記憶されているオフセット値Δt
offsetに基づいて調整した調整後のBBU21送信時刻(送信補正時刻)t’’(=t’+Δt
offset)になったタイミングに、下りリンク信号の送信処理を開始し、
伝送ケーブル24を介してRRH23に送信信号(ベースバンド信号)を出力する。
【0041】
スモールセル基地局20のRRH23は、上記リスニング装置25のほか、送信信号受信部231と無線送信部232とを備える。送信信号受信部231は、伝送ケーブル24を介してBBU21から送信されてきた下りリンク信号の送信信号を受信する。無線送信部232は、送信信号受信部231で受信した下りリンク信号の送信信号を所定の方式で処理して所定周波数の無線信号を生成し、所望の電力まで増幅してアンテナ22に出力する。
【0042】
図8は、
図6のスモールセル基地局20においてBBU21送信時刻を調整するときの処理の一例を示すフローチャートである。
図8において、予め設定した所定の調整タイミングになったら、リスニング装置25により、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号が受信され(S101)、その受信結果に基づいて、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号の受信タイミング差Δtが測定され(S102)、BBU21に送信される(S103)。
【0043】
次に、BBU21により、リスニング装置25から受信した受信タイミング差Δtに基づいてスモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングのオフセット値Δt
offsetが計算されて記憶される(S104)。更に、BBU21により、上記ABSパターンなどに基づいて設定された下りリンク信号の所定のBBU21送信時刻(送信設定時刻)t’が、オフセット値Δt
offsetに基づき調整される(S105)。具体的には、所定のBBU21送信時刻(送信設定時刻)t’の初期設定値にオフセット値Δt
offsetが加算された時刻が、調整後のBBU21送信時刻(送信補正時刻)t’’(=t’+Δt
offset)として設定される。そして、BBU21により、調整後のBBU21送信時刻(送信補正時刻)t’’のタイミングに合わせて、下りリンク信号の送信が開始される(S106)。
【0044】
図8のフローチャートに示した受信タイミング差Δtの測定は、同期信号が
図2に示す無線通信フレーム毎に含まれているため、同期信号を受信するたびに継続的に実行することで、マクロセル基地局10とスモールセル基地局20の送信タイミングを精度よく同期させることができる。しかし、リスニング装置25での受信タイミング差Δtの測定の計算負荷を軽減するために、一定の周期で(例えば同期信号を128回受信する毎に)受信タイミング差Δtの測定を行うことも可能である。
【0045】
上記
図6及び
図8に示すように、スモールセル基地局20のリスニング装置25からBBU21に、下りリンク信号の受信結果に基づいて測定した受信タイミング差Δtを送信することにより、BBU21における下りリンク信号の送信開始タイミングを調整することができる。この送信開始タイミングの調整により、基地局10、20の伝送ケーブル14、24における伝送遅延や無線伝送路における伝搬遅延の影響を受けることなく、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから同期送信された下りリンク信号がスモールセル20A内のユーザ端末装置30に到達する時間のずれを許容範囲以内にすることができる。
更に、上記下りリンク信号の送信開始タイミングの調整によれば、基地局10、20間に時刻同期のずれがある場合(基地局間が非同期でΔt≠0の場合)でも、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから同期送信された下りリンク信号がスモールセル20A内のユーザ端末装置30に到達する時間のずれを許容範囲以内にすることができる。
しかも、上記下りリンク信号の送信開始タイミングの調整を、スモールセル基地局20が自律的に行うため、基地局における下りリンク信号の送信開始タイミングを管理する中央管理装置を別途設ける必要がない。
【0046】
図9は、本実施形態に係るスモールセル基地局2
0におけるBBU21送信時刻の調整の効果の一例を示す説明図である。
図9に示すように、BBU21送信時刻(送信設定時刻)t’の初期設定値にオフセット値Δt
offsetを加算した調整後のBBU21送信時刻(送信設定時刻)t’’に、下りリンク信号の送信を開始することにより、各基地局10,20それぞれから同期送信された下りリンク信号がユーザ端末装置30にほぼ同時に到達し、下りリンク信号の受信時間のずれを許容範囲以内にすることができる。
【0047】
図10は、本実施形態に係るスモールセル基地局2
0の他の構成例を示す機能ブロック図である。なお、
図10において、前述の
図6の構成と同様な部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0048】
図10において、リスニング装置25には、受信タイミング差送信部253に代えて、オフセット計算部254とオフセット送信部255とを備えている。オフセット計算部254は、前記受信タイミング差測定部252で測定された受信タイミング差Δtに基づいて、スモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングのオフセット
値Δt
offsetを計算する。本実施形態では、スモールセル20Aの半径が小さく、リスニング装置25とユーザ端末装置30はほぼ同じ場所に存在すると見なし、オフセット値はΔt
offset=Δtとする。しかし、スモールセル20Aの半径が大きい場合には適当な補正値δを考慮してΔt
offset=Δt+δとすることでより同期精度の高い送信を行うようにしてもよい。オフセット送信部255は、オフセット計算部254で計算されたオフセット値Δt
offsetを、伝送ケーブル24を介してBBU21に送信する。
【0049】
また、
図10において、BBU21は、受信タイミング差受信部211及びオフセット計算部212に代えて、オフセット受信部216を備えている。オフセット受信部216は、伝送ケーブル24を介してリスニング装置25から送信されてきたオフセット値Δt
offsetを受信する。オフセット受信部216で受信されたオフセット値Δt
offsetは、オフセット記憶部213に記憶される。
【0050】
図11は、
図10のスモールセル基地局20においてBBU21送信時刻を調整するときの処理の一例を示すフローチャートである。
図11において、予め設定した所定の調整タイミングになったら、リスニング装置25により、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号が受信され(S201)、その受信結果に基づいて、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから送信された下りリンク信号の受信タイミング差Δtが測定される(S202)。更に、リスニング装置25により、受信タイミング差Δtに基づいてスモールセル基地局20の下りリンク信号の送信タイミングのオフセット値Δt
offsetが計算され(S203)、BBU21に送信される(S204)。
【0051】
次に、BBU21により、リスニング装置25からオフセット値Δt
offsetが受信されて記憶される(S205)。更に、BBU21により、上記ABSパターンなどに基づいて設定された下りリンク信号の所定のBBU21送信時刻(送信設定時刻)t’が、オフセット値Δt
offsetに基づき調整される(S206)。具体的には、所定のBBU21送信時刻(送信設定時刻)t’の初期設定値にオフセット値Δt
offsetが加算された時刻が、調整後のBBU21送信時刻(送信補正時刻)t’’(=t’+Δt
offset)として設定される。そして、BBU21により、調整後のBBU21送信時刻(送信補正時刻)t’’のタイミングに合わせて、下りリンク信号の送信が開始される(S207)。
【0052】
上記
図10及び
図11に示すように、スモールセル基地局20のリスニング装置25からBBU21に、下りリンク信号の受信結果に基づいて計算したオフセット値を送信することにより、BBU21における下りリンク信号の送信開始タイミングを調整することができる。この送信開始タイミングの調整により、基地局10、20の伝送ケーブル14、24における伝送遅延や無線伝送路における伝搬遅延の影響を受けることなく、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから同期送信された下りリンク信号がスモールセル20A内のユーザ端末装置30に到達する時間のずれを許容範囲以内にすることができる。
更に、上記下りリンク信号の送信開始タイミングの調整によれば、基地局10、20間に時刻同期のずれがある場合(基地局間が非同期の場合)でも、マクロセル基地局10及びスモールセル基地局20それぞれから同期送信された下りリンク信号がスモールセル20A内のユーザ端末装置30に到達する時間のずれを許容範囲以内にすることができる。
しかも、上記下りリンク信号の送信開始タイミングの調整を、スモールセル基地局20が自律的に行うため、基地局における下りリンク信号の送信開始タイミングを管理する中央管理装置を別途設ける必要がない。
【0053】
また、上記実施形態において、スモールセル20Aの半径が大きく、適当な補正値δの考慮が必要な場合は、
図6および
図10に示したオフセット計算部が、例えば、リスニング装置25で測定した受信タイミング差Δtとスモールセル20Aの半径などに基づき、補正値δの計算を行う。そして、下りリンク信号の送信タイミングのオフセット値Δt
offset(=Δt+δ)を用いることで、より同期精度の高い送信を行うこともできる。
【0054】
なお、上記実施形態において、マクロセル基地局10のマクロセル10A内に配置されるスモールセル基地局は、2又は3以上の複数であってもよい。この場合、複数のスモールセル基地局はそれぞれ上記
図1〜
図11に示したスモールセル基地局20と同様に構成され、上記下りリンク信号の送信開始タイミングの調整を自律的に行う。これにより、マクロセル基地局10及び複数のスモールセル基地局それぞれの伝送ケーブル14、24における伝送遅延や無線伝送路における伝搬遅延の影響を受けることなく、マクロセル基地局10及び複数のスモールセル基地局それぞれから同期送信された下りリンク信号が各スモールセル内のユーザ端末装置に到達する時間のずれを許容範囲以内にすることができる。
更に、マクロセル基地局10及び複数のスモールセル基地局の間に時刻同期のずれがある場合(基地局間が非同期でΔt≠0の場合)でも、マクロセル基地局10及び複数のスモールセル基地局それぞれから同期送信された下りリンク信号が各スモールセル内のユーザ端末装置に到達する時間のずれを許容範囲以内にすることができる。
しかも、上記下りリンク信号の送信開始タイミングの調整を、複数のスモールセル基地局それぞれが自律的に行うため、複数のスモールセル基地局における下りリンク信号の送信開始タイミングを管理する中央管理装置を別途設ける必要がない。
【0055】
また、上記実施形態において、スモールセル基地局20は、上記下りリンク信号の受信処理及び受信タイミング差の測定処理を継続的に行ってもよい。また、スモールセル基地局20は、上記下りリンク信号の受信処理及び受信タイミング差の測定処理を、所定の時間間隔で周期的に行ってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、LTE/LTE−Advancedへの適用を前提に説明したが、本発明の概念はどのような無線通信システムにも適用可能であり、さらに本実施形態に示した基地局の構成に限定されない。
【0057】
また、本明細書で説明された処理工程並びに移動通信システム、基地局及びユーザ端末装置(移動局)の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0058】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0059】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0060】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【課題】基地局の伝送ケーブルにおける伝送遅延や無線伝送路における伝搬遅延の影響を受けることなく、マクロセル基地局及びスモールセル基地局それぞれから同期送信された下りリンク信号が通信端末装置に到達する時間のずれを許容範囲内にする。
【解決手段】スモールセル基地局は、アンテナに接続された無線送受信部と、無線通信制御部と、無線送受信部と無線通信制御部とを接続する伝送ケーブルと、マクロセル基地局及び自局それぞれから送信された下りリンク信号を受信する下りリンク信号受信部とを備える。スモールセル基地局は、前記下りリンク信号の受信結果に基づいて、マクロセル基地局及び自局それぞれから送信された下りリンク信号の受信タイミング差を測定し、受信タイミング差に基づいて、自局の下りリンク信号の送信タイミングを調整し、調整された送信タイミングで下りリンク信号を送信する。