(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
<スタック構造体の構成>
ここでは、本発明に係るスタック構造体の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、
図1から
図7は、説明を容易にするために、実際の寸法及び比率とは異なる模式図となっているものがある。
【0023】
スタック構造体1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC;Solid Oxide Fuel Cell)に用いられる構造体である。なお、本実施形態では、
図1に示すように、座標系が設定されている。
【0024】
図1に示すように、スタック構造体1は、複数のセル100と、マニホールド200とを、備えている。
【0025】
以下では、
図1に示すように、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向が、定義されている。例えば、各セル100(後述する支持基板10)では、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向が、長手方向、短手方向(幅方向)、及び厚み方向に、各別に対応している。
【0026】
また、マニホールド200では、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向が、高さ方向(上方)、短手方向(幅方向)、及び長手方向に、各別に対応している。ここで、マニホールド200の短手方向(幅方向)は、セル100における支持基板10の幅方向に対応している。
【0027】
なお、「x軸方向、y軸方向、及びz軸方向」という文言は、各軸方向の正方向及び/又は負方向を含んだ意味で用いられることがある。
【0028】
<セル>
各セル100は、燃料電池セルである。各セル100は、集電部材(図示省略)を介して互いに電気的に接続されている。集電部材は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、集電部材は、酸化物セラミックスの焼成体又は金属などによって形成されている。
【0029】
図1に示すように、各セル100は、マニホールド200に設けられる。詳細には、各セル100は、マニホールド200の蓋部220(後述する)に設けられる。より詳細には、各セル100は、マニホールド200の蓋部220に接合材300(後述する)によって接合され、且つマニホールド200の本体部210(後述する)に接触し支持される。
【0030】
図2に示すように、各セル100は、複数の発電素子部Aと、支持基板10とを、有する。各発電素子部Aは、燃料極、固体電解質膜、反応防止膜、及び空気極を、有する。各発電素子部Aは、燃料極、固体電解質膜、反応防止膜、及び空気極の順に積層された積層焼成体である。
【0031】
燃料極は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。燃料極は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ;イットリア安定化ジルコニア)とから、構成される。固体電解質膜は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜は、例えば、YSZ(8YSZ;イットリア安定化ジルコニア)から、構成される。
【0032】
反応防止膜は、緻密な材料からなる焼成体である。反応防止膜は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から、構成される。空気極は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から、構成される。
【0033】
複数の発電素子部Aは、支持基板10に設けられる。詳細には、複数(例えば4個)の発電素子部Aが、電気的に直列に接続された状態で、支持基板10の両側面それぞれにおいて、支持基板10の長手方向に所定の間隔を隔てて配置される。
【0034】
支持基板10(後述する緻密層を除く)は、電子伝導性を有さない多孔質の材料から構成された焼成体である。支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)で構成される。
【0035】
図2に示すように、支持基板10は、実質的に平板状に形成されている。例えば、支持基板10は、x軸方向の長さ(長手方向の長さ)がy軸方向の長さ(短手方向の長さ・幅方向の長さ)より長くなるように、形成されている。
【0036】
支持基板10は、発電素子部Aを支持する。具体的には、支持基板10の両側面、すなわち支持基板10においてz方向に互いに対向する1対の平面(主面)それぞれには、複数(例えば4個)の発電素子部Aが、x軸方向(長手方向)に所定の間隔を隔てて設けられている。
【0037】
各支持基板10の内部には、複数の燃料ガス流路11(貫通孔)が、形成されている。具体的には、各支持基板10には、複数の燃料ガス流路11が、y軸方向(幅方向)に所定の間隔を隔てて形成されている。また、各燃料ガス流路11は、x軸方向(長手方向)に延びている。各燃料ガス流路11は、各セル100の長手方向の両端部において開口している。
【0038】
また、支持基板10には、緻密層例えば上述した固体電解質膜が、含まれる。ここでは、緻密層は、例えば上述した固体電解質膜から、構成されている。より具体的には、緻密層(固体電解質膜)は、発電素子部Aの内部から、発電素子部Aの外部に延び、支持基板10の外周部(外周面)を構成している。
【0039】
また、
図3に示すように、y軸方向(幅方向)において、各支持基板10の外寸W2が、開口側の1対の壁部212(後述する1対の第1壁部222)の外寸W1より大きくなるように、各支持基板10は形成されている。
【0040】
各支持基板10は、マニホールド200に配置される。詳細には、各支持基板10は、マニホールド200の蓋部220に配置される。具体的には、各支持基板10は、蓋部220の外周部220aの内側で、蓋部220に接合される。より具体的には、各支持基板10は、接合材300を介して、蓋部220のセル挿入孔221(後述する)に、配置される。これにより、各支持基板10は、セル挿入孔221に挿入され、接合材300によって蓋部220に接合される。
【0041】
このように、各支持基板10が、蓋部220に設けられた状態において、各セル100の両端部100aすなわち各支持基板10の両端部は、鍔部213例えば支持部213a(後述する)に、接触する。
【0042】
上記のような構成を有する各支持基板10は、
図1に示すように、z軸方向に互いに間隔を隔てて並べて配置される。各支持基板10のx軸方向(長手方向)において燃料ガスが流入する側の各支持基板10の端部(流入側端部)は、固定端となっている。また、各支持基板10のx軸方向(長手方向)において燃料ガスが排出される側の端部(排出側端部)は、自由端となっている。各支持基板10の流入側端部は、接合材300によって、マニホールド200に接合される。
【0043】
<マニホールド>
マニホールド200は、複数のセル100それぞれに燃料ガスを供給するためのものである。
図1及び
図3に示すように、マニホールド200は、本体部210と、蓋部220とを、有している。
【0044】
本体部210は、金属例えばステンレス鋼等から、構成されている。本体部210は、1枚の板部材から形成される。具体的には、本体部210は、プレス加工によって、1枚の板部材から成型される。
【0045】
図4に示すように、本体部210は、底部211と、壁部212と、鍔部213とを、有している。底部211と壁部212と鍔部213(後述する第2湾曲部213b)とによって、x軸方向(上方)に向けて開口する開口部が、形成される。底部211は、実質的に矩形板状に形成されている。底部211の外周部には、壁部212が一体に形成されている。言い換えると、底部211の外周部には、壁部212が連続的に形成されている。
【0046】
図4及び
図5に示すように、壁部212は、底部211の外周部を取り囲むように、底部211の外周部に一体に形成されている。壁部212は、壁本体部212aと、第1湾曲部212bとを、有している。壁本体部212aは、蓋部220と底部211との間に、配置される。壁本体部212aは、底部211の外周部に沿い且つx軸方向に延びるように、構成されている。すなわち、壁本体部212aは、底部211の外周部に沿った周方向P(
図5を参照)に、連続的に形成されている。
【0047】
図4及び
図5に示すように、壁本体部212aの内周面212cは、連続的に構成されている。内周面212cは、底部211の外周部に沿った周方向Pにおいて、壁本体部212aの内面を連続的に形成する。例えば、
図5に示すように、壁本体部212aの4個の隅角部は、曲線によって形成される。これにより、連続面は、周方向に閉じる面から、構成される。
【0048】
図4に示すように、第1湾曲部212bは、湾曲しており、壁本体部212aと底部211とを、連結する。詳細には、第1湾曲部212bは、底部211の外周部から湾曲しながら壁本体部212aに向けて延び、壁本体部212aに接続されている。第1湾曲部212bの内側面及び外側面はR形状である。なお、第1湾曲部212bの内側面とは、マニホールド200の内部空間を臨む面であり、第1湾曲部212bの外側面とは、マニホールド200の外部を臨む面である。ここでは、第1湾曲部212bの内面の第1曲率半径R1が、例えば1.0以上且つ10以下の範囲になるように、第1湾曲部212bは形成されている。
【0049】
第1湾曲部212bは、壁本体部212aと底部211とに、一体に形成されている。詳細には、第1湾曲部212bは、底部211側の壁本体部212aに一体に形成され、且つ底部211の外周部に一体に形成されている。すなわち、
図5に示すように、第1湾曲部212bは、底部211側の壁本体部212aにおいて周方向Pに沿い且つ底部211の外周部を取り囲むように、壁本体部212aと底部211とに連続的に形成されている。
【0050】
図4及び
図5に示すように、第1湾曲部212bの内面には、第1連続面212dが形成される。第1連続面212dは、底部211の外周部に沿った周方向Pにおいて、第1湾曲部212bの内面を連続的に形成する。例えば、xy断面(又はxz断面)において上記の第1曲率半径R1を有する曲線を、周方向に連続的に形成することによって、第1連続面212dが形成される。これにより、第1連続面212dは、周方向に閉じる面から、構成される。
【0051】
図4及び
図5に示すように、上述した壁部212(壁本体部212a及び第1湾曲部212b)は、1対の第1壁部222(1対の壁部の一例)と、1対の第2壁部223(
図5を参照)とから、構成されている。ここで、1対の第1壁部222は、壁本体部212a及び第1湾曲部212bに含まれる。また、1対の第2壁部223は、壁本体部212a及び第1湾曲部212bに含まれる。
【0052】
図4に示すように、1対の第1壁部222は、底部211の外周部からx軸方向(高さ方向)に延び、且つy軸方向(幅方向)において互いに対向している。また、開口側の第1壁部222、例えば第1壁部222の開口端222aは、各セル100と底部211との間に、配置される。
【0053】
詳細には、第1壁部222の開口端222aは、x軸方向において、各セル100の両端部100aと底部211との間に、配置される。また、スタック構造体1をx軸方向に見た場合に、第1壁部222の開口端222aの少なくとも一部が、各セル100における両端部100a側の燃料ガス流路11の内部に配置される。例えば、スタック構造体1をx軸方向に見た場合に、第1壁部222の開口端222aの内面が、各セル100における端部100a側の燃料ガス流路11の内部に、配置される。
【0054】
ここでは、
図3及び
図4に示すように、y軸方向(マニホールド200の幅方向・セル100の幅方向)において、1対の第1壁部222の開口端222aにおける外寸W1が、セル100の外寸W2(支持基板10の外寸)より小さくなるように、1対の第1壁部222は形成されている。これにより、1対の第1壁部222の開口端222aの外面は、セル100の1対の側面100b(支持基板10の側面10c)の間に、配置される。なお、第1壁部222の開口端222aは、鍔部213が湾曲を開始する部分に対応している。
【0055】
また、
図3に示すように、1対の第1壁部222それぞれの外面を含む平面Hが、各セル100に交わるように、第1壁部222は構成されている。詳細には、この平面Hが、y軸方向における各セル100(各支持基板10)の両端部100aに交わるように、1対の第1壁部222が形成されている。
【0056】
図1及び
図5に示すように、1対の第2壁部223は、底部211の外周部からx軸方向(高さ方向)に延び、且つz軸方向(長手方向)において互いに対向している。第2壁部223は、底部211の外周部に沿った周方向P(
図5を参照)において、第1壁部222と一体に形成されている。すなわち、第1壁部222及び第2壁部223は、周方向に連続的に形成されている。
【0057】
なお、開口側の1対の第2壁部223は、鍔部213が湾曲を開始する部分に対応している。以下では、開口側の1対の第2壁部223それぞれを、第2壁部223の開口端と記す。
【0058】
第1壁部222と第2壁部223との境界部224の内側面及び外側面は、R形状である。この境界部224の内側面及び外側面の曲率半径は、3〜30mm程度とすることができる。なお、境界部224の内側面とは、マニホールド200の内部空間を臨む面であり、境界部224の外側面とは、マニホールド200の外側を臨む面である。
【0059】
図4に示すように、鍔部213は、壁部212に設けられる。鍔部213は、壁部212から外方に延びている。鍔部213は、蓋部220を支持可能に構成されている。また、鍔部213は、各セル100を支持可能に構成されている。
【0060】
具体的には、
図4及び
図5に示すように、鍔部213は、支持部213aと、第2湾曲部213bとを、有している。支持部213aは、蓋部220及び各セル100(支持基板10)を支持する。支持部213aは、第2湾曲部213bに一体に形成される。詳細には、支持部213aは、第2湾曲部213bを取り囲むように、第2湾曲部213bと連続的に形成されている。支持部213aは、第2湾曲部213bから外方に延び、実質的に板状に形成されている。
【0061】
図4に示すように、第2湾曲部213bは、湾曲しており、支持部213aと壁部212とを連結する。詳細には、第2湾曲部213bは、壁部212の開口端212e(第1壁部222の開口端222a及び第2壁部223の開口端)から湾曲しながら外方に延び、支持部213aに接続されている。例えば、第2湾曲部213bは、壁部212の開口端212eから湾曲しながら、各セル100の両端部100aに向けて延び、支持部213aに接続されている。ここでは、第2湾曲部213bの内面の第2曲率半径R2が、例えば1.0mm以上且つ8.0mm以下の範囲になるように、第2湾曲部213bは形成されている。
【0062】
図4及び
図5に示すように、第2湾曲部213bは、支持部213aと壁部212とに、一体に形成されている。詳細には、第2湾曲部213bは、支持部213aの内周部に一体に形成され、且つ壁部212の開口端212eに一体に形成されている。より詳細には、第2湾曲部213bは、支持部213aの内周部において周方向Pに沿い且つ壁部212の開口端212eを取り囲むように、支持部213a及び壁部212に連続的に形成されている。
【0063】
図4及び
図5に示すように、第2湾曲部213bの内面には、第2連続面213cが形成される。第2連続面213cは、壁部212の開口端212eに沿った周方向(又は底部211の外周部に沿った周方向P)において、第2湾曲部213bの内面を連続的に形成する。例えば、xy断面(又はxz断面)において上記の第2曲率半径R2を有する曲線を、周方向に連続的に形成することによって、第2連続面213cが形成される。これにより、第2連続面は、周方向に閉じる面から、構成される。
【0064】
蓋部220は、本体部210と同じ材質から、構成されている。例えば、蓋部220は、金属例えばステンレス鋼等から、構成されている。
図3及び
図4に示すように、蓋部220は、例えば、実質的に矩形板状に形成されている。蓋部220の厚みt1は、本体部210の厚みt2より大きい。
【0065】
また、本体部210の厚みt2に対する蓋部220の厚みt1の比Tは、1.2以上且つ4.0以下の範囲に設定されている。具体的には、蓋部220の厚みt1は、例えば0.8mm以上且つ4mm以下の範囲に設定されている。本体部210の厚みt2は、例えば0.5mm以上且つ3mm以下の範囲に設定されている。このように、蓋部220の厚みt1を本体部210の厚みt2より厚くすることによって、マニホールド200全体の剛性を確保しながら、接合材300のクラックの発生を抑制することができる。
【0066】
蓋部220の厚みt1は、蓋部220におけるx軸方向の板厚である。本体部210の厚みt2は、底部211、壁部212、及び鍔部213において、実質的に同じ板厚である。
ここで、蓋部220及び本体部210それぞれには、コーティング膜が含まれる場合がある。例えば、コーティング膜は、組立て時(常温時)にはセラミックス膜を含み、使用時(高温時)にはセラミックス膜及び酸化皮膜を含む。なお、コーティング膜の有無にかかわらず、蓋部220の厚みt1及び本体部210の厚みt2それぞれは、±0.1mmの誤差を含んでいる。
【0067】
上記の蓋部220は、本体部210に配置される。具体的には、蓋部220は、本体部210の鍔部213に配置される。より具体的には、蓋部220は、鍔部213の支持部213aに配置される。そして、蓋部220の外周部220aが、固定手段例えば溶接により、鍔部213の支持部213aに接合される。これにより、本体部210の開口部が、蓋部220によって塞がれ、本体部210に蓋部220が固定される。
【0068】
この状態において、各セル100が接合材300によって蓋部220に接合されると、各セル100は、鍔部213に支持される。詳細には、y軸方向における各セル100の両端部100aが、鍔部213の支持部213aに接触し支持される。
【0069】
上記のように、蓋部220が本体部210の開口部を塞ぐことによって、マニホールド200には、内部空間S1が形成される(
図4を参照)。すなわち、内部空間S1は、本体部210(底部211、壁部212、及び鍔部213)と蓋部220とによって、構成される。内部空間S1には、燃料ガスが導入される。
【0070】
燃料ガスは、導入管230(
図1を参照)を介して、外部から内部空間S1に導入される。導入管230は、金属例えばステンレス鋼等から、構成されている。導入管230は、マニホールド200の本体部210に、接合・固定されている。
【0071】
上記の構成を有するマニホールド200は、複数のセル100(支持基板10)を支持する。
図3に示すように、マニホールド200の蓋部220には、複数のセル挿入孔221が形成されている。各セル挿入孔221は、マニホールド200の外側(外部空間)と内部空間S1とを連通するように、蓋部220をx軸方向(高さ方向)に貫通している。また、各セル挿入孔221は、z軸方向(長手方向)に所定の間隔を隔てて形成されている。
【0072】
各セル挿入孔221をマニホールド200の外側(外部空間側)から見た場合(x軸に沿って見た場合)、各セル挿入孔221は、一方向に長く形成され、且つ両端部が円弧状に形成されている。
【0073】
ここでは、y軸方向(各セルの挿入孔221の長手方向)における各セル挿入孔221の内寸が、1対の第1壁部222の開口端222aにおける外寸W1より大きくなるように、各セル挿入孔221が形成されている。また、各セル挿入孔221の内寸が、各セル100の外寸W2(各支持基板10の外寸)より大きくなるように、各セル挿入孔221が形成されている。
【0074】
各セル挿入孔221には、各セル100(支持基板10)が配置される。詳細には、各セル100の燃料ガス流路11が内部空間S1に連通するように、各セル挿入孔221には、各セル100の支持基板10の流入側端部が、挿入される。ここで、各セル100の両端部100aすなわち各支持基板10の両端部は、マニホールド200における本体部210の鍔部213(支持部213)に、接触させる。そして、各セル100及びセル挿入孔221の間には、接合材300が充填される(
図3及び
図4を参照)。これにより、各セル100の両端部100aすなわち各支持基板10の両端部は、マニホールド200における本体部210の鍔部213(支持部213)に、接触し支持される。
【0075】
なお、
図3及び
図4では、接合材300が、本体部210の鍔部213に接触するように表現されているが、接合材300と鍔部213との間には、隙間が形成されていてもよい。
【0076】
接合材300は、例えば、結晶化ガラスで構成される。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、MgO−B
2O
3系、又はSiO
2−MgO系のものが、用いられる。なお、結晶化ガラスとしては、SiO
2−MgO系のものが最も好ましい。
【0077】
ここで用いられる結晶化ガラスは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、且つ全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスである。なお、接合材300の材料として、非晶質ガラス、ろう材、セラミックス等が採用されてもよい。
【0078】
接合材300は、マニホールド200の内部空間S1の燃料ガスと、マニホールド200及び複数のセル100の外側の外部空間の空気との混合を、防止する。具体的には、接合材300は、マニホールド200と各セル100との間の隙間に配置され、マニホールド200と各セル100とを接合する。これにより、接合材300は、内部空間S1(燃料ガスに曝される空間)と外部空間(空気に曝される空間)とを区画する。すなわち、接合材300は、シール材として機能する。
【0079】
<スタック構造体の動作>
上記のスタック構造体1は、例えば、次のように動作する。スタック構造体1では、高温(例えば、600〜800℃)の燃料ガス(水素ガス等)が、導入管230からマニホールド200の内部空間S1へと導入される。すると、この燃料ガスが、各セル100の燃料ガス流路11に導入される。そして、燃料ガスが燃料ガス流路11を通過すると、燃料ガス流路11の排出側端部の排出口から外部へと排出される。一方で、空気(酸素を含むガス等)が、隣接するセル100間の空間において、セル100のy軸方向(支持基板10のy軸方向(幅方向)に、通過する。
【0080】
このように燃料ガス及び空気を移動させることによって、各発電素子部Aでは、酸素分圧差すなわち電位差が、固体電解質膜の表裏面間に生じる。この状態で、セル100が外部の負荷に電気的に接続されると、下記(1)、(2)式に示す電気化学反応が起こる。これにより、セル100内にて電流が流れ、発電状態となる。この発電状態において、セル100から電力が取り出される。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− (於:空気極) …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− (於:燃料極) …(2)
【0081】
<試験1>
この試験では、複数のサンプルを用いて、接合材300のクラックの有無が評価される(以下に示す表1を参照)。詳細には、本体部の厚みt2に対する蓋部の厚みt1の比Tを変化させることによって、接合材300のクラックの有無が評価される。
【0082】
まず、サンプルの説明を行う。セル100は、x軸方向の長さが50以上且つ500mm以下の範囲内に設定され、y軸方向の長さが10以上100mm以下の範囲内に設定されている。また、z軸方向の長さは、1mm以上且つ5mm以下の範囲内に設定されている。
【0083】
セル100の支持基板10の材質は、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)で構成されている。セル100の支持基板10は、1300度〜1600度の温度で、1時間〜20時間の間、焼成される。セル100には、1本〜20本のガス流路11が形成されている。
【0084】
マニホールド200の材質は、ステンレス鋼で構成される。蓋部220は、幅60mm×縦250mm×厚みt1mmから構成される。本体部210では、鍔部213が、yz平面において、幅55mm×縦245mmから構成される。また、本体部210では、壁部212の外寸が、yz平面において、幅42mm×縦232mmから構成される。また、本体部210(底部211、壁部212、及び鍔部213を含む)の高さは、30mmである。さらに、本体部210(底部211、壁部212、及び鍔部213を含む)の厚さは、t2mmである。
【0085】
蓋部220及び本体部210の厚みt1,t2の計測は、次のように行われている。まず、蓋部220及び本体部210それぞれが、ダレやバリ等を防ぐために樹脂包理され、研磨装置によって研磨される。次に、蓋部220及び本体部210の各断面における任意の10箇所の各厚みt1,t2(樹脂の部分を除く)が、計測される。最後に、10箇所の各厚みt1,t2の平均値が計算され、この平均値が各サンプルの厚みt1,t2として用いられる。すなわち、表1の各サンプルの厚みt1,t2は、上記の10箇所の厚みの平均値である。
【0086】
接合材300の材質は、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、MgO−B
2O
3系、又はSiO
2−MgO系の結晶化ガラス、又は非晶質ガラス、ろう材、セラミックスで、構成されている。接合材300は、700度〜1000度の温度で、1時間〜10時間の間、接合材300のペーストに対して熱処理が行われる。この結果、接合材300が結晶化する。
【0087】
上記の構成において、5本のセル100を接合材300によってマニホールド200に接合することによって、スタック構造体1のサンプルが作製され、各サンプルに対して熱サイクル試験が実施された。
【0088】
熱サイクル試験は、燃料流路に還元性の燃料ガスを流通させた状態で、各サンプルに対して行われる。熱サイクル試験では、“雰囲気温度を、2時間で常温から750度まで上昇させた後、4時間で常温まで低下させるパターン”を、10回繰り返される。
【0089】
その後、各サンプルに対して、クラックの有無が確認される。ここでは、まず、各サンプルについて、セル100における燃料ガス流路11の燃料ガス排出側端部の開口を、ゴムキャップ等の封止材を用いて封止する。この状態において、加圧ガスが導入管230に導入される。次に、このガスが接合材300から漏れるか否かが、確認される。この確認は、各サンプルを液体中に浸漬させた状態で、気泡が発生するか否かを目視で観察することによって、行われる。
【0090】
この結果が、評価結果として、表1に示されている。表1では、5本のセル全てでクラックが無かった場合を「◎」、5本のセルのうち1本のセルでクラックが有った場合を「○」、5本のセルのうち2本以上でクラックが生じていた場合を「×」と表記している。
【0092】
表1を参照すると、水準14〜16ではTが1であり接合材300にクラックが発生した。また、水準1〜11は、上記の比Tが、「1.2以上且つ4.0以下」である場合の例である。すなわち、水準1〜11は、本実施形態に対応する場合の例である。この場合、接合材300にはクラックの発生が確認されていない。さらに、水準12〜13は、上記の比Tが、「1よりも大きいが1.2より小さい」場合の例である。この場合、5本のセルのうち1本の接合材300に軽微なクラックの発生が確認されている。しかし、この場合、軽微なクラックが発生しているものの、燃料ガスの漏れは確認されていない。
【0093】
なお、Tが4.0より大きい場合については、蓋部220の板厚t1が本体部210の板厚t2に対して非常に厚くなる。このため、本体部210の剛性が不足し、蓋部220を支持する本体部210に僅かな変形が見られた。これにより、表1には敢えて記載してはいないが、水準1〜10と同様に、接合材300にはクラックの発生は確認されていない。
【0094】
この評価結果をまとめると、本体部210の厚みt2に対する蓋部220の厚みt1の比Tが1より大きい場合、すなわち蓋部220の厚みt1が本体部210の厚みt2より大きい場合には、接合材300へのクラック発生を抑制する効果が、得られる。特に、Tが「1.2以上且つ4.0以下」である場合には、接合材300にはクラックが発生しないことが理解できる。
【0095】
<まとめ>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0096】
(1)マニホールド200は、セル100に燃料ガスを供給するためのものである。マニホールド200は、開口を有する本体部210と、開口を塞ぐ蓋部220とを、備えている。蓋部220は、本体部210に接合される。蓋部220には、セル100が接合される。ここで、蓋部220の厚みt1は、本体部210の厚みt2より大きい。
【0097】
本マニホールド200は、セル100が接合される蓋部220の厚みt1が、蓋部220が接合される本体部210の厚みt2より厚くなるように、構成されている。
【0098】
このため、高温下において本体部210が熱により変形したとしても、蓋部220は本体部210より剛性が高いので、蓋部220は変形しづらい。このため、蓋部220及びセル100の境界、例えば接合材300に、応力集中が発生しづらい。すなわち、接合材300にクラックが発生しづらい。
【0099】
このように、本マニホールド200では、蓋部220の厚みt1を本体部210の厚みt2より厚くすることによって、セル100を安定的に支持することができる。
【0100】
(2)マニホールド200では、蓋部220の外周部220aが、本体部210に接合されることが好ましい。セル100は、蓋部220の外周部220aの内側(セル挿入孔221)において蓋部220に接合される。少なくとも蓋部220の外周部220aの厚みt1は、本体部210の厚みt2より大きい。このように構成しても、上記(1)と同様の効果を得ることができる。
【0101】
(3)マニホールド200では、本体部210の厚みt2に対する蓋部220の厚みt1の比Tは、1.2以上且つ4.0以下であることが好ましい。この場合、マニホールド200において、セル100を安定的且つ効果的に支持することができる。
【0102】
(4)マニホールド200では、セル100が、蓋部220に接合され、且つ本体部210に接触することが好ましい。この場合、セル100を蓋部220に接合することによって、セル100が蓋部220に位置決めされる。また、セル100を本体部210に接触させることによって、セル100が本体部210に支持される。このように構成することによって、蓋部220の厚みt1を本体部210の厚みt2より小さくしても、セル100をより安定的に支持することができる。
【0103】
(5)マニホールド200では、本体部210が、底部211と、壁部212と、鍔部213とを、有することが好ましい。壁部212は、底部211の外周部から延びる。鍔部213は、壁部212に設けられる。鍔部213には、セル100が接触する。このように構成しても、上記(4)と同様の効果を得ることができる。
【0104】
(6)燃料電池のスタック構造体1は、上記の(1)から(5)のいずれかのマニホールド200と、マニホールド200から燃料ガスが供給されるセル100とを、備える。本スタック構造体1は、上記の(1)から(5)のいずれかのマニホールド200を、備えているので、上記と同様の効果を得ることができる。また、本スタック構造体1では、接合材300にクラックが発生しづらいので、スタック構造体1を安定的に動作させることができる。
【0105】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0106】
(A)前記実施形態では、壁部212(壁本体部212a)が、底部211から高さ方向(x軸方向)に向かって延びる場合の例を示したが、壁部212(壁本体部212a)が延びる方向は、前記実施形態に限定されない。
【0107】
例えば、
図6に示すように、壁部212(壁本体部212a)が、底部211に対して傾斜するように、マニホールド200を構成してもよい。すなわち、第1壁部222及び第2壁部223は、上方に向かって外方に広がるように傾斜されていてもよい。特に限定されるものではないが、例えば、第1壁部222及び第2壁部223と、底部211とがなす角度αは、90.1〜135°程度とすることができる。このように第1壁部222及び第2壁部223が傾斜しているため、マニホールド200の内部空間を底部211と平行な面(yz平面)で切断した断面積は、上方にいくにつれて大きくなる。また、マニホールド20の内部空間を、底部211に垂直で幅方向(y軸方向)に延びる面(xy平面)で切断した断面は、台形状となっている。また、マニホールド20の内部空間を、底部211に垂直で奥行方向(z軸方向)に延びる面(xz平面)で切断した断面は、台形状となっている。
【0108】
この場合においても、セル100の幅方向(y軸方向)において、開口側の本体部210の外寸W1は、セル100の外寸W2より小さい。
【0109】
この場合、例えば、1対の第1壁部222の開口端222aの間隔は、1対の第1壁部222の底部211側の間隔より大きい。また、1対の第2壁部223の開口端の間隔は、1対の第2壁部223の底部211側の間隔より大きい。
【0110】
(B)前記実施形態では、蓋部220の厚みt1が、実質的に一定である場合の例を示した。これに代えて、例えば、
図7に示すように、蓋部220の外周部220aの厚みt1を、本体部210の厚みt2より大きくし、複数のセル100の近傍(セル挿入孔221の近傍)における蓋部220の厚みを、蓋部220の外周部220aの厚みt1より大きくしてもよい。
【0111】
(C)前記実施形態では、本体部210の厚みt2は、底部211、壁部212、及び鍔部213において、実質的に同じ板厚である場合の例を示した。これに代えて、蓋部220の厚みt1が本体部210の厚みt2より大きければ、本体部210における底部211、壁部212、及び鍔部213の厚みの少なくとも1つが異なっていてもよい。
【解決手段】マニホールド200は、開口を有する本体部210と、開口を塞ぐ蓋部220とを、備えている。蓋部220は、本体部210に接合される。蓋部220には、セル100が接合される。ここで、蓋部220の厚みt1は、本体部210の厚みt2より大きい。