(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134062
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】シリーズハイブリッド車の動力システム
(51)【国際特許分類】
B60K 6/46 20071001AFI20170515BHJP
B60K 6/22 20071001ALI20170515BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20170515BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20170515BHJP
B60L 11/12 20060101ALI20170515BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20170515BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20170515BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
B60K6/46
B60K6/22ZHV
B60K6/26
B60K6/24
B60L11/12
B60L9/18 P
B60W20/00
H02J3/38 110
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-520686(P2016-520686)
(86)(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公表番号】特表2017-503694(P2017-503694A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】CN2014084659
(87)【国際公開番号】WO2015051671
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年4月1日
(31)【優先権主張番号】201310467918.2
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516099613
【氏名又は名称】浙江吉利汽車研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY AUTOMOBILE RESEARCH INSTITUTE CO., LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】リー シューフー
【審査官】
佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−206545(JP,A)
【文献】
特表2001−501018(JP,A)
【文献】
特開2011−173518(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0211605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/46
B60K 6/22
B60K 6/24
B60K 6/26
B60L 9/18
B60L 11/12
B60W 20/00
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリーズハイブリッド車の動力システムであって、
燃料源と、
制御システムと、
少なくとも2つの補助動力装置と、を備え、
前記各補助動力装置は、
前記制御システムの制御により、前記燃料源から燃料を個別に受け取り、当該燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して、当該電気エネルギーを共通電流バスに出力すると共に、
前記制御システムの制御により、前記燃料源から燃料を受け取り、当該燃料の前記化学エネルギーを機械エネルギーに変換するエンジンと、
前記制御システムの制御により、対応する前記補助動力装置の前記エンジンから機械エネルギーを受け取り、当該機械エネルギーをAC電気エネルギーに変換する発電機と、を備え、
さらに、
前記共通電流バスと電気的に接続され、前記制御システムの制御により、前記共通電流バスから電気エネルギーを受け取って充電を行う、または、前記共通電流バスを介して放電を行う電力バッテリと、
前記共通電流バスと電気的に接続され、前記制御システムの制御により、前記共通電流バスから電気エネルギーを受け取り、それを機械エネルギーに変換し、当該機械エネルギーを車両のパワートレインに伝達して当該車両を走行させる走行用モータと、
前記各補助動力装置によって出力される前記AC電気エネルギーを、互いに同一電圧、同一周波数、かつ、同一位相の交流電流に変換し、それらを前記共通電流バスに出力するACグリッド接続装置と、
を備えるシリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記燃料源によって供給される燃料は、液化天然ガス、圧縮天然ガス、合成油、メタノール、エタノール、エステル化植物油、ジメチルエーテル、または、それらの組み合わせであり、
前記補助動力装置の数は、少なくとも3つである、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記各補助動力装置は、当該補助動力装置の前記発電機からAC電気エネルギーを受け取り、当該AC電気エネルギーを直流電流に変換し、当該直流電流を前記共通電流バスに出力する整流器を備える、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記各補助動力装置は、さらに、
当該補助動力装置の前記発電機の分岐電流電圧情報を検出して、当該分岐電流電圧情報を前記制御システムに送信するよう構成された分岐電流電圧センサを備え、
前記シリーズハイブリッド車の動力システムは、さらに
前記共通電流バスのバス電流電圧情報を検出して、検出したバス電流電圧情報を前記制御システムに送信するよう構成されたバス電流電圧センサを備える、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記各補助動力装置は、さらに、
前記エンジンから前記発電機への機械エネルギー伝達経路内に配置され、前記制御システムの制御により、前記エンジンから前記発電機への前記機械エネルギー伝達経路を接続させるまたは切断させるクラッチを備えた、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項6】
請求項5に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記各補助動力装置は、さらに、
当該補助動力装置の前記クラッチの位置情報を検出し、当該位置情報を前記制御システムに送信するよう構成された位置センサを備える、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記制御システムは、動力制御装置を備え、
当該動力制御装置は、各分岐電流電圧センサによって検出された分岐電流電圧情報と、バス電流電圧センサによって検出されたバス電流電圧情報と、前記電力バッテリのバッテリ状態情報と、前記シリーズハイブリッド車の車速トルクセンサによって検出された車速トルク情報と、に従い、かつ、あらかじめ設定された制御ポリシに基づき、前記各補助動力装置の前記エンジン、前記クラッチ、および、前記発電機の動作と、前記シリーズハイブリッド車の動力システムの前記電力バッテリおよび前記走行用モータの動作と、を制御するよう構成される、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項8】
請求項7に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記制御システムは、さらに、
前記クラッチを制御するために前記動力制御装置によって出力されるパルス幅変調信号のパワーを増幅して、増幅されたパワーの前記パルス幅変調信号を出力するパワー増幅回路を備え、
前記各補助動力装置は、さらに、ガス弁とシリンダとを備え、
前記ガス弁は、前記シリーズハイブリッド車の動力システムの高圧ガス回路に接続され、前記パワー増幅回路によって出力される前記パルス幅変調信号によって制御され、
前記ガス弁が前記高圧ガス回路を開くと、当該高圧ガス回路からの高圧ガスが前記シリンダを駆動して前記クラッチを解放状態に切り替えて、前記エンジンから前記発電機への機械エネルギー伝達経路を切断し、
前記ガス弁が高圧ガス回路を閉じると、前記シリンダを駆動している高圧ガスが排出されることによって、前記クラッチが連結状態に戻り、前記エンジンから前記発電機への機械エネルギー伝達経路を接続する、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項9】
請求項7に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記各発電機は、AC同期発電機であり、
前記制御システムは、さらに、
前記発電機を制御するために前記動力制御装置によって出力されるパルス幅変調信号のパワーを増幅して、増幅されたパワーの前記パルス幅変調信号を前記発電機の励磁機に出力する励磁回路を備える、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項10】
請求項3に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記電力バッテリは、直列に接続されたバッテリセル群を含むバッテリパックであり、当該バッテリパックはACまたはDCの電気エネルギーの充電または放電が可能であり、バッテリ状態情報を前記制御システムに送信し、
前記走行用モータは、インバータとモータ制御装置とを保持するAC非同期モータである
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項11】
請求項2に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記燃料源から供給される前記燃料は、液化天然ガスである、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項12】
請求項2に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記補助動力装置の数が6つである、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項13】
請求項5に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記クラッチが電気的に制御可能である、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項14】
請求項10に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記整流器が、制御不能な整流ブリッジ装置を備える、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項15】
シリーズハイブリッド車の動力システムであって、
燃料源と、
制御システムと、
少なくとも2つの補助動力装置と、を備え、
前記各補助動力装置は、前記制御システムの制御により、前記燃料源から燃料を個別に受け取り、当該燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して、当該電気エネルギーを共通電流バスに出力すると共に、前記補助動力装置の発電機からAC電気エネルギーを受け取り、当該AC電気エネルギーを直流電流に変換し、当該直流電流を前記共通電流バスに出力する整流器を備え、
さらに、
前記共通電流バスと電気的に接続され、前記制御システムの制御により、前記共通電流バスから電気エネルギーを受け取って充電を行う、または、前記共通電流バスを介して放電を行う電力バッテリと、
前記共通電流バスと電気的に接続され、前記制御システムの制御により、前記共通電流バスから電気エネルギーを受け取り、それを機械エネルギーに変換して、当該機械エネルギーを車両のパワートレインに伝達して当該車両を走行させる走行用モータと、
を備えるシリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記電力バッテリは、バッテリパックであり、直列に接続された電池セル群を含むバッテリパックであり、当該バッテリパックはACまたはDCの電気エネルギーの充電または放電が可能であり、バッテリ状態情報を前記制御システムに送信し、
前記走行用モータは、インバータとモータ制御装置とを保持するAC非同期モータである
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項17】
請求項16に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記整流器が、制御不能な整流ブリッジ装置を備える、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項18】
シリーズハイブリッド車の動力システムであって、
液化天然ガスである燃料を供給する燃料源と、
制御システムと、
少なくとも3つの補助動力装置と、を備え、
前記各補助動力装置は、前記制御システムの制御により、前記燃料源から燃料を個別に受け取り、当該燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して、当該電気エネルギーを共通電流バスに出力し、
さらに、
前記共通電流バスと電気的に接続され、前記制御システムの制御により、前記共通電流バスから電気エネルギーを受け取って充電を行う、または、前記共通電流バスを介して放電を行う電力バッテリと、
前記共通電流バスと電気的に接続され、前記制御システムの制御により、前記共通電流バスから電気エネルギーを受け取り、それを機械エネルギーに変換して、当該機械エネルギーを車両のパワートレインに伝達して当該車両を走行させる走行用モータと、
を備えるシリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項19】
請求項18に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記補助動力装置の数が6つである、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【請求項20】
請求項18に記載のシリーズハイブリッド車の動力システムであって、
前記各補助動力装置は、
前記制御システムの制御により、前記燃料源から燃料を受け取り、当該燃料の前記化学エネルギーを機械エネルギーに変換するエンジンと、
前記制御システムの制御により、対応する前記補助動力装置の前記エンジンから機械エネルギーを受け取り、当該機械エネルギーをACまたはDCの電気エネルギーに変換する発電機と、
前記エンジンから前記発電機への機械エネルギー伝達経路内に配置され、前記制御システムの制御により、前記エンジンから前記発電機への前記機械エネルギー伝達経路を接続させるまたは切断させるクラッチと、を備え、
前記クラッチが電気的に制御可能である、
シリーズハイブリッド車の動力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車に関する。
【背景技術】
【0002】
1990年代以降、エネルギー危機と環境汚染の問題が世界的に深刻さを増している。世界で消費されるエネルギーの40パーセント以上は石油であり、現在わかっている埋蔵量と消費スピードによれば、世界の石油資源は今後数十年で枯渇する可能性があると予測されている。
【0003】
自動車は石油を消費する主たるものであり、また大気汚染の主な原因でもある。自動車の排気ガスに含まれる二酸化炭素は、世界的な温室効果をもたらす主な要因の一つであり、排気ガスの他の成分も、都市における主な大気汚染物質である。
【0004】
自動車のエネルギーのボトルネックと排気ガス汚染を解決するためには、新たな燃料源と新たな動力システムの使用が重要な方向であることが、長年の慣行からわかっている。新たな燃料源については、代替燃料の使用が、ガソリンやディーゼルよりもクリーンであり、エネルギー危機と排気ガスによる汚染を解決する実行可能な解決策であることが、実際に証明されている。新たな動力システムについては、鉛酸蓄電池、Ni−MH蓄電池、またはリチウム蓄電池等の動力蓄電池を用いる完全電気式自動車が、ゼロ排出、低騒音、高効率という点で有利である。
【0005】
しかし、電気エネルギー貯蔵技術の制約から、完全電気式自動車には、製造コストが高い、連続走行距離が短い、またバッテリ充電に時間がかかる、といった欠点もある。したがって、完全電気式自動車は、現時点でも、またかなり先の将来でも、使用上のニーズを本当に満たすことはできず、十分な市場競争力を持たない。ハイブリッド車は、従来の自動車と完全電気式自動車との間の過渡的なタイプの自動車であり、超低排気、高効率、および連続走行距離が長いという、上記2タイプの利点を持ち合わせており、そのコストは、従来の動力システムを用いる自動車よりもわずかに高いだけである。
【0006】
ハイブリッド車の動力システムには、シリーズ動力システム、パラレル動力システム、シリアル−パラレル動力システム等、様々な種類がある。その中でも、シリーズハイブリッド動力システムは、比較的シンプルな設計の構造と良好な安定性を有し、多様なエンジンの分配と統合を有効に行うことができ、ハイブリッド車の動力システムの研究開発において、現在最も広く普及している技術である。
【0007】
シリーズハイブリッド電気自動車(SHEV)は、一般的に、2種類の基本的なエネルギー貯蔵装置であり従来からの装置である、蓄電池と燃料発電機セットを使用する。燃料発電機セット(エンジン+発電機)は、補助動力装置(APU)とも言われる。一般的に、従来のシリーズハイブリッド車は、補助動力装置を1つしか備えていない。補助動力装置は、主に、エンジンとして1つの燃料エンジン(ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン)と、エンジンから出力される運動エネルギーを電気エネルギーに変換するための1つの発電機を有する。また、燃料エンジンは、車両を走行させる走行用モータと機械的に接続されていない。
【0008】
しかし、従来のシリーズハイブリッド車は、車両の排気ガスを減らし燃費を向上させることができるものの、これらの車両は依然としてガソリンまたはディーゼルを燃料として使用しており、石油資源の枯渇という問題には対処していない。天然ガスやメタン等、現在の代替燃料は、一般的にエネルギー密度が低い。しかし、シリーズハイブリッド車の動力システムは、一般的に3つのエネルギー変換手順(化学エネルギー→機械エネルギー→電気エネルギー→機械エネルギー)を含み、パラレルハイブリッド動力システムよりもエネルギー変換効率が低い。従って、エネルギー密度の低い代替燃料はシリーズハイブリッド車での使用には適していない、と一般的に考えられている。
【0009】
シリーズハイブリッド車の補助動力装置の機能としては、電気エネルギーを直接出力し、走行用モータを介して車両を走行させる機能、電気エネルギーを出力して高圧電力バッテリを充電する機能、およびDC/DCを介して車両の低圧蓄電池を充電する機能がある。補助動力装置の基本的な動作機構は、制御システムの作用により、エンジンが機械的接続を介して発電機ロータを回転させることによって、発電機ロータのコイルの電流強度を制御し、発電機内に適切な磁界強度を得る。さらに、発生した交番磁界の作用により、発電機ステータ上のコイルが電気エネルギーを生成する。このような小型から中型の燃料発電機セットは、車両の駆動に適用する前に、動作状態が比較的安定しており、回転速度の変動が少なく、始動と停止が頻繁ではない可動式の一時的な電力供給システムとして使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、シリーズハイブリッド車で使用される補助動力装置は、回路において電力バッテリと並列接続されており、モータを介して車両を走行させる。そのため、燃料発電機セットには、広範な動作状態に対応し、レスポンスが迅速で、移行がスムーズであるといった特徴が要求される。燃料発電機セットの制御レベルは、動力システム全体のパワー能力、安全性、およびサービス寿命に、直接的な影響を与える。つまり、一時的な動力供給システムとして使用される従来の燃料発電機セットと、シリーズハイブリッド車における燃料発電機セットとでは、要求される性能が全く異なる。従って、構造設計、システム接続、および制御ポリシについても異なる。そのため、これらが代替可能でないことは技術的に明らかである。
【0011】
排気と燃費の両方を考慮すると、シリーズハイブリッド車の補助動力装置には、現在、次の2つの動作モードがある。1つは一点定動力動作モード(切替モードとも言う)であり、もう1つは最少燃費カーブに沿った動作モードである。
【0012】
一点定動力動作モードを用いる補助動力装置は、次の2つの状態しか持たない。すなわち、非常に低燃費かつ低排気な一定の動作状態ポイントにおいて安定して作動する状態と、電力バッテリによって完全に車両の動的負荷のバランスがとれている状態である。このように、補助動力装置の排気と燃費は非常に低いが、電力バッテリが深刻な損傷を受けることもある。
【0013】
最少燃費カーブに沿った動作モードを用いる補助動力装置は、実際の車両負荷の変化を追跡し、電力バッテリの出力容量および動力に対する車両の要求を効果的に減らすことができるため、電力バッテリはより少ないパワーで循環的に作動する。そのため、電力バッテリの寿命が長持ちし、より少ないパワーの電力バッテリの選択を行うことができる。しかし、補助動力装置は車両の動力要求に迅速に応じる必要がある。そのため、エンジン効率と排気特性に影響を与えることになる。さらに、車両の将来の走行フェーズで必要となる動力を正確に予測するのは比較的困難である。
【0014】
さらにエンジンシリンダ、シリンダボア、ピストンストローク等の数といった要素の制約により、単一のエンジンではパワーとトルクが限られており、無限に拡大することは不可能である。また、パワーとトルクに関して、車両のより高い要求を満たすことができない場合もある。パワーとトルクに関する、車両のより高い要求をどのように満たすかが、自動車業界の重要課題の1つである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある実施形態では、シリーズハイブリッド車の新たな動力システムを提供する。これによれば、従来のガソリンまたはディーゼルの代わりに低エネルギー密度の代替燃料を使用することが可能となり、燃料発電機セットが、石油消費と排気が非常に低い動作状態領域で常に動作することが可能となり、排気ガスを減らし、燃費を向上させ、シリーズハイブリッド車の動力システムの比較的低いエネルギー変換効率を効果的に改善することができる。
【0016】
本発明の別の実施形態では、単一のエンジンが提供するパワーとトルクが限られるという問題を解決するために、複数のエンジンを組み合わせて、そのパワーを好都合かつ確実に使用する、というものである。
【0017】
特に、本発明が提供するシリーズハイブリッド車の動力システムは、シリーズハイブリッド車の動力システムであって、
燃料源と、
制御システムと、
少なくとも2つの補助動力装置と、を備え、
前記各補助動力装置は、前記制御システムの制御により、前記燃料源から燃料を個別に受け取り、当該燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して、当該電気エネルギーを共通電流バスに出力し、
前記共通電流バスと電気的に接続され、前記制御システムの制御により、前記共通電流バスから電気エネルギーを受け取って充電を行う、または、前記共通電流バスを介して放電を行う電力バッテリと、
前記共通電流バスと電気的に接続され、前記制御システムの制御により、前記共通電流バスから電気エネルギーを受け取り、それを機械エネルギーに変換し、当該機械エネルギーを前記車両のパワートレインに伝達して当該車両を走行させる走行用モータと、
を備えてもよい。
【0018】
さらに、前記燃料源によって供給される燃料は、液化天然ガス、圧縮天然ガス、合成油、メタノール、エタノール、エステル化植物油、ジメチルエーテルのいずれか、または、それらの組み合わせであってもよい。ある実施形態では、前記燃料は液化天然ガスである。また、前記補助動力装置の数は、少なくとも3つ、または6つでもよい。
【0019】
さらに、前記各補助動力装置は、
前記制御システムの制御により、前記燃料源から燃料を受け取り、該燃料の化学エネルギーを機械エネルギーに変換するエンジンと、
前記制御システムの制御により、対応する前記補助動力装置の前記エンジンから機械エネルギーを受け取り、該機械エネルギーを交流電流(AC)または直流電流(DC)の電気エネルギーに変換する発電機と、を備えてもよい。
【0020】
さらに、前記動力システムが、各補助動力装置によって出力されるAC電気エネルギーを、互いに同一電圧、同一周波数、かつ同一位相の交流電流に変換し、それらを前記共通電流バスに出力するACグリッド接続装置をさらに備えてもよい。また、前記各補助動力装置は、該補助動力装置の前記発電機からAC電気エネルギーを受け取り、該AC電気エネルギーを直流電流に変換し、該直流電流を前記共通電流バスに出力する整流器を備えてもよい。
【0021】
さらに、前記各補助動力装置は、
該補助動力装置の前記発電機の分岐電流電圧情報を検出して、検出した分岐電流電圧情報を前記制御システムに送信するよう構成された分岐電流電圧センサをさらに備えてもよい。
さらに、前記シリーズハイブリッド車の動力システムは、
前記共通電流バスのバス電流電圧情報を検出して、検出したバス電流電圧情報を前記制御システムに送信するよう構成されたバス電流電圧センサをさらに備えてもよい。
【0022】
さらに、前記各補助動力装置は、
前記エンジンから前記発電機への機械エネルギー伝達経路内に配置されるクラッチをさらに備えてもよく、当該クラッチは、前記制御システムの制御により、前記エンジンから前記発電機への前記機械エネルギー伝達経路を接続または切断させる。また、実施例では、クラッチは電気的に制御可能であってもよい。
【0023】
さらに、各補助動力装置は、
該補助動力装置の前記クラッチの位置情報を検出し、該位置情報を前記制御システムに送信するよう構成される位置センサをさらに備えてもよい。
【0024】
さらに、前記制御システムは、動力制御装置を備えてもよく、
該動力制御装置は、各分岐電流電圧センサによって検出された前記分岐電流電圧情報と、前記バス電流電圧センサによって検出された前記バス電流電圧情報と、前記電力バッテリ自身が保持するバッテリ管理システムからのバッテリ状態情報と、前記シリーズハイブリッド車の車速トルクセンサによって検出された車速トルク情報に従い、かつ、あらかじめ設定された制御ポリシに基づき、各補助動力装置の前記エンジン、前記クラッチ、および前記発電機の動作、および、前記シリーズハイブリッド車の動力システムの前記電力バッテリおよび前記走行用モータの動作、を制御するよう構成されてもよい。
【0025】
さらに、前記制御システムは、
前記クラッチを制御するために前記動力制御装置によって出力されるパルス幅変調信号のパワーを増幅して、増幅されたパワーの前記パルス幅変調信号を出力するよう構成されたパワー増幅回路をさらに備えてもよい。
【0026】
さらに、前記各補助動力装置は、ガス弁とシリンダとをさらに備えてもよい。
前記ガス弁は、前記シリーズハイブリッド車の動力システムの高圧ガス回路に接続され、前記パワー増幅回路によって出力される前記パルス幅変調信号によって制御されてもよい。前記ガス弁が前記高圧ガス回路を開くと、該高圧ガス回路からの高圧ガスが前記シリンダを駆動して前記クラッチを解放状態に切り替えて、前記エンジンから前記発電機への機械エネルギー伝達経路を切断し、前記ガス弁が高圧ガス回路を閉じると、前記シリンダを駆動している高圧ガスが排出されることによって、前記クラッチが連結状態に戻り、前記エンジンから前記発電機への機械エネルギー伝達経路を接続する、ように構成されてもよい。
【0027】
さらに、各発電機はAC同期発電機でもよく、前記制御システムは、前記発電機を制御するために前記動力制御装置によって出力されるパルス幅変調信号のパワーを増幅して、増幅されたパワーの前記パルス幅変調信号を前記発電機の励磁機に出力する励磁回路をさらに備えてもよい。
【0028】
さらに、前記整流器が、制御不能な整流ブリッジ装置を備えてもよい。
前記電力バッテリは、直列に接続されたバッテリセル群を含むバッテリパックでもよく、該バッテリパックはACまたはDCの電気エネルギーの充電または放電を可能にし、前記バッテリ状態情報を、バッテリパック自身が保持するバッテリ管理システムを介して前記制御システムに送信する。前記走行用モータは、インバータとモータ制御装置とを自身で保持するAC非同期モータでもよい。
【0029】
本発明のシリーズハイブリッド車の動力システムでは、2つ以上の個別に制御可能な補助動力装置を用いることにより、各補助動力装置に対する動力要求が実質的に減少する。そのため、本発明の動力システムは、従来のガソリンまたはディーゼルの代わりに低エネルギー密度の代替燃料を使用することが可能となり、補助動力装置のエンジンが、石油消費と排気が非常に低い動作状態領域で動作することが可能となり、排気ガスを効果的に減らし、燃費を向上させ、シリーズハイブリッド車の動力システムの比較的低いエネルギー変換効率を改善するよう構成される。
【0030】
加えて、必要とされるエンジンの適切な数は、本発明のシリーズハイブリッド車の動力システムによる組み合わせに応じて、柔軟に設定することができる。これにより、単一のエンジンが提供するパワーとトルクが限られるため、高いパワーとトルクを必要とする車両の要求を満たすことが難しいという問題が、好都合かつ確実に解決される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態における、シリーズハイブリッド車の動力システムを示す模式図であり、理解を容易にするため、制御システムは図示していない。
【
図2】本発明の実施形態における、シリーズハイブリッド車の動力システムの補助動力装置を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態における、シリーズハイブリッド車の動力システムの補助動力装置を示す模式図であって、制御システムと動力システムの主要部分の接続関係を示している。なお、理解を容易にするため、センサ類、およびそれらの制御システムとの接続は図示していない。
【
図4】ACグリッド接続装置をさらに備えた、
図1の動力システムの一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。これらは一例であり、本発明はこれに限定されない。図面全体を通して、同一または類似の部品または部分は同一の符号で示す。
【0033】
図1〜3に示すように、本発明の1つの実施形態におけるシリーズハイブリッド車100の動力システムは、一般的に、燃料源10と、制御システム60と、電力バッテリ30と、走行用モータ40と、を備えてもよい。電力バッテリ30は、共通電流バス70に電気的に接続され、制御システムの制御により、共通電流バス70から電気エネルギーを受け取って充電を行うか、または、共通電流バス70を介して放電を行う。走行用モータ40は、共通電流バス70に電気的に接続され、制御システムの制御により、共通電流バス70から電気エネルギーを受け取り、それを機械エネルギーに変換して、その機械エネルギーを車両100のパワートレイン50に伝達することによって車両を走行させる。
【0034】
本発明におけるシリーズハイブリッド車100の動力システムは、少なくとも2つの補助動力装置20を備えてもよい。制御システム60の制御により、各補助動力装置20は、燃料源10から個別に燃料を受け取り、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して、それを共通電流バス70に出力する。補助動力装置20の数は、少なくとも2つ、3つ、またはそれ以上でも良く、例えば6つまたは8つでもよい。制御プロセスを簡潔にするために、各補助動力装置20の構造と性能特性は同一でもよい。各補助動力装置20の定格出力は、車両全体の動力のニーズと補助動力装置の数によって選択すればよく、一般的には10〜30kw、例えば20kwである。実施形態によっては、補助動力装置20の構造および/または性能特性は異なってもよい。
【0035】
本発明の1つの実施形態においては、燃料源10によって供給される燃料は、液化天然ガス、圧縮天然ガス、合成油、メタノール、エタノール、エステル化植物油、ジメチルエーテル、または、それらの組み合わせ等である。従来、これらの代替燃料はエネルギー密度が低く、そのためこれらの燃料を使用するエンジンは、通常、最適動作状態動力範囲が比較的狭く、車両の動力要求に対して十分迅速に応えることができなかった。そのため、当業者は大抵、これらの代替燃料はシリーズハイブリッド車に適していないと考えている。
【0036】
しかし、本発明は、少なくとも2つの、個別に制御可能な補助動力装置20を有する動力システムを備えており、各補助動力装置20の定格出力は、従来のシリーズハイブリッド車に備えられた単一の補助動力装置よりもはるかに小さい。本発明における補助動力装置20の数をn(nは2以上の正の整数)とすると、本発明の各補助動力装置20の定格出力は、同じ動力を必要とする従来のシリーズハイブリッド車における単一の補助動力装置の定格出力の、約1/nでよい。そのため、車両走行中、ある補助動力装置20(1つまたは複数)を個別に始動および/または停止することにより、各補助動力装置20のエンジンは最適動作状態動力範囲において最大限動作できるようになり、車両の動力要求が満たされ、かつ走行距離単位の燃費を減らすことで代替燃料の低エネルギー密度という問題が効果的に改善される。
【0037】
さらに、本発明は、少なくとも2つの、個別に制御可能な補助動力装置20を備えるため、予想以上の効果が追加される。まず、シリーズハイブリッド車の動力システムの動作の信頼性が、実質的に改善される。さらに、従来のシリーズハイブリッド車は完全に電力バッテリのみに依存しており、単一のエンジンまたは発電機が故障した際に非常に短い距離しか走行できないという問題があったが、これが効果的に解決される。これは、長距離輸送用の貨物車両にとっては非常に好ましい。本発明では、1つの補助動力装置20のエンジンまたは発電機が故障した場合、残りの補助動力装置20が停止されることはない。制御システム60は、正常な補助動力装置20を起動してあらかじめ設定された制御方針に従って作動させ、故障した補助動力装置20の動作を停止させることができる。もちろん、その際には、制御システム60は、通常、そのときのドライバーに適切な形態の信号(例えば、故障インジケータランプの点灯)で通知する。
【0038】
特に、本発明の実施形態では、一点定動力動作モードと、従来のシリーズハイブリッド車における補助動力装置の最少燃費カーブに沿った動作モードとを組み合わせて、本発明の動力システムを制御してもよい。具体的には、始動した各補助動力装置20のエンジンは、最適動作状態動力範囲で作動し、制御方針に従った動力に基づいて車両全体の負荷需要を満たすように、設けられてもよい。例えば、本発明の実施形態では、各補助動力装置20の最適動作状態動力範囲が、その最適動作状態点の上下+10%から−20%の間、またはその最適動作状態点の上下+5%から−10%の間に設定されてもよい。
【0039】
さらに、各補助動力装置20は、制御システム60の制御により燃料源10から燃料を受け取り、燃料の化学エネルギーを機械エネルギーに変換するよう構成されたエンジン21と、制御システム60の制御により、対応する補助動力装置20のエンジン21から機械エネルギーを受け取り、それを交流の電気エネルギー(例えば、三相交流電力)に変換するよう構成された発電機24と、を備えてもよい。AC発電機はDC発電機よりも簡易な構造であるが、本発明の実施形態では、以降の制御プロセスを簡単にするために、発電機24が、エンジン21からの機械エネルギーを直流の電気エネルギーに変換するDC発電機であってもよい。以下の実施形態では、DC発電機の代わりに、AC発電機24からのAC電気エネルギーをDCに変換するための整流器、例えば制御不能な整流ブリッジ装置26を、各AC発電機24に備えてもよい。エンジン21のパワーは、対応する補助動力装置20の動力需要に従って選択すればよい。例えば、補助動力装置20のエネルギー変換効率は、約80〜88%と考えられる。補助動力装置20の定格出力が18kwの場合、定格出力が約21〜23kwのエンジンの中から適切なエンジンを選択することができる。このように、パワーに合わせてエンジンを選択することは、当業者であれば特定のニーズに従って非常に簡単に行うことができるため、ここではその詳細は省略する。
【0040】
各々の補助動力装置20から出力されるAC電気エネルギーを共通電流バス70に並列に接続するために、
図4に示す実施形態では、本発明のシリーズハイブリッド車の動力システムは、ACグリッド接続装置80を備える。ACグリッド接続装置80は、各々の補助動力装置から出力されたAC電気エネルギーを、互いに同一電圧、同一周波数、かつ同一位相の交流に変換し、それらを共通電流バス70に出力することができる。しかし、
図2に示す実施形態では、各補助動力装置20は上述したように整流器26を備えて配置されており、対応する補助動力装置20の発電機24から交流電気エネルギーを受け取り、それを直流に変換して、共通電流バス70に出力してもよい。発電機24がDC発電機の場合、整流器26は省略してもよい。
【0041】
各補助動力装置20はさらに、補助動力装置20における発電機24の分岐電流電圧情報を検出し、検出した分岐電流電圧情報を制御システム60に送信するよう構成された、分岐電流電圧センサ25を備えてもよい。シリーズハイブリッド車の動力システムはさらに、共通電流バス70上のバス電流電圧情報を検出し、検出したバス電流電圧情報を制御システム60に送信するよう構成された、バス電流電圧センサ35を備えてもよい。
【0042】
本発明の実施形態において、各補助動力装置20はさらに、クラッチ22を備えてもよい。クラッチ22は、エンジン21から発電機24への機械エネルギー伝達経路内に配置されている。そのため、エンジン21から発電機24への機械エネルギー伝達経路は、制御システム60の制御によってスムーズに接続または切断される。これにより、エンジン始動時の大きな衝撃の問題を効果的に解決することができ、確実かつ効率的に、エンジンの始動と停止を頻繁に行うことができる。このような実施形態において、各補助動力装置20はさらに、位置センサ23を備えてもよい。位置センサ23は、対応する補助動力装置20内のクラッチ22の位置情報を検出し、その位置情報を制御システム60に伝達してクラッチの閉ループ制御を実現するよう構成される。制御システム60による自動制御ができるように、実施形態によっては、クラッチ22が電気制御可能で、以下に述べるように空気圧または油圧で作動可能なものでもよい。
【0043】
図3に示すように、制御システム60は動力制御装置61を備えてもよい。理解を容易にするために、
図3には、センサ類と、それらと制御システムとの接続については示していない。しかし、当業者であれば、
図3に示されていないセンサ(位置センサ23、すべての分岐電流電圧センサ25、バス電流電圧センサ35、および車速トルクセンサ51を含む)が、制御システム60の動力制御装置61と電気的に接続されるよう配置されることは、本発明の技術的解決策から理解可能である。各分岐電流電圧センサ25が検出する分岐電流電圧情報、バス電流電圧センサ35が検出するバス電流電圧情報、電力バッテリ30自身が保持する図示しないバッテリ管理システムからのバッテリ状態情報、およびシリーズハイブリッド車の車速トルクセンサ51が検出される車速トルク情報により、また所定の制御ポリシに基づき、動力制御装置61は、各補助動力装置20のエンジン、クラッチ22、および発電機の動作と、シリーズハイブリッド車の動力システムの電力バッテリ30および走行用モータ40の動作とを、制御するよう構成されてもよい。動力制御装置61は、シリーズハイブリッド車の車両制御ユニット(VCU:Vehicle Control Unit)によって実装されてもよい。
【0044】
制御システム60はさらに、パワー増幅回路62を備えてもよい。パワー増幅回路62は、電気制御クラッチ22を制御するために動力制御装置61から出力されたパルス幅変調信号のパワーを増幅して、増幅されたパワーのパルス幅変調信号を出力するよう構成される。電気制御クラッチ22を作動させるため、各補助動力装置22はさらに、ガス弁27とシリンダ28とを備えてもよい。ガス弁27は、シリーズハイブリッド車の動力システム内の高圧ガス回路90に接続され、パワー増幅回路62が出力するパルス幅変調信号によって制御される。そのため、ガス弁27がガス回路90を開けると、高圧ガスがシリンダを駆動して電気制御クラッチ22を解放状態に切り替えて、エンジン21から発電機24への機械エネルギー伝達経路を切断する。ガス弁27がガス回路90を閉じると、シリンダを駆動している高圧ガスが排出されるため、電気制御クラッチ22が連結状態に戻り、エンジン21から発電機24への機械エネルギー伝達経路を接続する。上記の説明により、当業者であれば、本発明の別の実施形態において、油弁と高圧油回路に接続された油圧シリンダとを使用して電気制御クラッチ22を作動させることが可能であることが理解できる。さらに、本発明の実施形態では、クラッチ22を他の適当な方法、例えばソレノイドアクチュエータ、で作動させてもよい。
【0045】
また、本発明の実施形態では、電気制御可能なクラッチ22(および対応するガス弁27、シリンダ28、およびパワー増幅回路62)が不要な場合もある。その場合、エンジン21の出力軸は、例えばスプラインを介して発電機24の入力軸に直接接続されてもよい。
【0046】
本発明の実施形態では、各発電機24はAC同期発電機(例えば三相AC同期発電機)でもよい。このとき、制御システム60はさらに励磁回路63を備えてもよい。励磁回路63は、発電機24を制御するための動力制御装置61が出力するパルス幅変調信号に対してパワー増幅を行い、増幅されたパワーのパルス幅変調信号を発電機24の励磁機に出力するよう構成される。特に、上述したように、整流器26は制御不能な整流ブリッジ装置でもよい。他の適当な整流器を用いることも可能だが、制御不能な整流ブリッジ装置26の方が整流効率が高いため、本発明の動力システムでは非常に有効であり、シリーズハイブリッドシステムのエネルギー変換効率をある程度改善できる可能性がある。
【0047】
電力バッテリ30は、直列に接続されたバッテリセル群を含むバッテリパックでもよい。バッテリパックは、ACまたはDCの電気エネルギーを充電または放電させ、バッテリパック自身が保持するバッテリ管理システムを介してバッテリ状態情報を制御システム60に伝達する。走行用モータ40は、自身でインバータとモータ制御装置を保持するAC非同期モータ(例えば、三相AC非同期モータ)でもよい。本発明の実施形態では、例えば共通電流バス70内の電流の形態や車両の駆動要求に基づき、他の適当なモータを走行用モータ40として使用してもよい。
【0048】
補助動力装置20から共通電流バス70に出力される電気エネルギーが交流の場合、電力バッテリ30の充電と放電を行うために、グリッド接続インバータと整流器を電力バッテリ30自身が備えるか、または電力バッテリ30と共通電流バス70との間に備える必要がある。グリッド接続インバータは、制御システム60の制御により、バッテリパックによって直接出力された直流電流を適切な交流電流に変換してACグリッド接続を行う。また、整流器は、制御システム60の制御により、共通電流バス70からのAC電気エネルギーを直流電流に変換してバッテリパックを充電する。電力バッテリ30について、ここで説明したグリッド接続インバータまたは整流器は当業者に周知であるため、ここでその詳細を説明する必要はないであろう。
【0049】
本発明の実施形態によれば、各補助動力装置20のエンジンは、最適動作状態動力範囲で作動し、制御方針に従ったパワーに基づいて、車両全体の負荷需要を満たすよう、配置されてもよい。また、各補助動力装置20は、最適動作状態範囲で作動可能になっている。これにより、電力バッテリの出力性能と動力に対する車両走行の要求が効果的に削減され、電力バッテリはより小さなパワーで循環的に動作可能となる。その結果、電力バッテリの寿命が長くなり、より少ないパワーの電力バッテリの選択を行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を例示的かつ詳細に説明したが、本発明の原理と一致する他の変形または変更が、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明から直接的に決定または派生されることは、当業者に認識されるであろう。したがって、本発明の範囲は他のあらゆる変形または変更を含むことが理解され、認識される。