(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回動阻止手段は、前記ピストン又は前記ピストンロッドの外周面と前記外筒の内周面との少なくとも何れか一方が横断面で見て非真円形状をなすことで、前記ピストン又は前記ピストンロッドに対する前記外筒の回動を阻止する、請求項2に記載の脚型什器。
前記シール部材は、前記ピストンロッドの外周面に係止される内端と、前記外筒に係止される外端とから環帯状に形成され、前記内端と前記外端との間の伸縮が許容されている、請求項4に記載の脚型什器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲食店等の店舗の床面には、たとえ新築の建物であっても若干の傾斜や凹凸の箇所が存在する。特に築年数の長いテナントビル等の店舗の床面は長年の使用により傾斜や凹凸の箇所が多くなる傾向にある。前述した従来のテーブルは、脚アジャスタを用い、脚の長さを床面の傾斜や凹凸に合わせて調整することにより、テーブル面を水平にし、且つ、がたつきが無いように設置することができる。
【0005】
しかしながら、店舗の閉店後にテーブルを一箇所に移動して床の掃き掃除を行ったり、或いは、テーブルの配置を変更して店舗の模様替えを行ったりすることがある。この場合、特定のテーブルを床の元の位置に配置するのは困難である。特に、4脚以上を有するテーブルの場合、各脚の床面に対する接地位置を以前と変えないで配置することは難しい。従って、従来、店員は床掃除や模様替えの度に、多数あるテーブルの各脚の脚アジャスタを操作し、テーブル面を水平にしてテーブルのがたつきが無いように脚の長さを再調整する必要があり、店員は重い作業負担を強いられていた。
【0006】
また、床掃除や模様替え後に店員が脚アジャスタの調整作業を行わなかった場合、テーブルにがたつきが発生する可能性が高い。がたつきのあるテーブルを使用した顧客は、がたつきによってテーブル面上に置いたカップやグラス等の容器から飲料がこぼれたり、或いは、テーブル上での作業に支障を来したりしてテーブルの使い勝手が悪いため、店舗環境に不満を抱くおそれもある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、脚の長さ調整の作業負担を軽減し且つ使い勝手を向上することができる脚型什器、並びにそれに用いる着脱可能な小型の脚アジャスタ及び脚アジャスタセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の脚型什器は、4つ以上の脚と、これら脚によって直接的又は間接的に支持された荷重受け台とを有する脚型什器において、複数の脚のうち、3角形を規定する3つの主脚であって、これら主脚のみの使用で脚型什器が配置されたと仮定したとき、荷重受け台の安定した静止姿勢を可能にする3つの主脚と、主脚以外の副脚の延長部を形成し且つ上下方向に伸縮可能な脚アジャスタであって、副脚と協働して伸縮脚を提供する一方、荷重受け台の静止姿勢に従い主脚の長さを基準とした伸縮脚の伸長又は収縮を自律的に許容する脚アジャスタとを具備し
、脚アジャスタは、副脚の下端に取り付けられ、上下方向に伸縮自在なアジャスタ本体と、アジャスタ本体を伸長する方向に付勢する付勢手段と、付勢手段の付勢力を受けたアジャスタ本体の伸長速度及び付勢力に抗したアジャスタ本体の収縮速度を規制する規制手段とを含み、アジャスタ本体は、液圧シリンダの形態をなし、伸縮脚の脚端であって、開孔及び底部を有する外筒と、外筒内に収容されたピストンと、開孔を通して外筒から突出したピストンロッドと、ピストンロッドの先端に設けられ、副脚の下端部内にねじ込まれた螺子部とを有し、付勢手段は、外筒内に収容され、ピストンの下部と外筒の底部との間に架け渡された圧縮コイルばねを有し、規制手段は、外筒内にピストンによって区画された2つの液室と、これら液室間での液体の流通を規制するべく外筒の内周面とピストンの外周面との間に確保された第1の微小隙間とを有し、脚アジャスタは、開孔からの液体の漏洩を阻止する漏洩阻止手段を有する。
【0012】
好ましくは、アジャスタ本体は、ピストン又はピストンロッドに対する外筒の回動を阻止する回動阻止手段を有する。
好ましくは、回動阻止手段は、ピストン又はピストンロッドの外周面と外筒の内周面との少なくとも何れか一方が横断面で見て非真円形状をなすことで、ピストン又はピストンロッドに対する外筒の回動を阻止する。
【0013】
好ましくは、ピストンロッドと開孔との間には第2の微小隙間が確保され、漏洩阻止手段は、外筒内をピストンロッド側の液室と区画して外筒内の第2の微小隙間側に空間を形成するシール部材からなる。
【0014】
好ましくは、シール部材は、ピストンロッドの外周面に係止される内端と、外筒に係止される外端とから環帯状に形成され、内端と外端との間の伸縮が許容されている。
好ましくは、外筒は、各液室が形成される小径部と、空間が形成される大径部とを有する。
【0015】
好ましくは、主脚の延長部を形成し
、アジャスタ本体と同様な外観を呈するダミーアジャスタを更に具備し、該ダミーアジャスタの外筒の下面から主脚の下端部までの主脚嵩上げは、脚アジャスタが最収縮状態にあるときの副脚の最小嵩上げと脚アジャスタが最伸長状態にあるときの副脚の最大嵩上げとの間に設定されている。
好ましくは、脚型什器の重心線は3角形内又は該3角形の近傍を通過する。
【0016】
また、本発明の脚アジャスタは、4つ以上の脚と、これら脚によって直接的又は間接的に支持された荷重受け台とを有する脚型什器に用いる脚アジャスタであって、脚型什器は、複数の脚のうち、3角形を規定する3つの主脚であって、これら主脚のみの使用で脚型什器が配置されたと仮定したとき、荷重受け台の安定した静止姿勢を可能にする3つの主脚と、主脚以外の副脚とを有し、脚アジャスタは、副脚の延長部を形成するべく副脚に着脱可能に取り付けられ且つ上下方向に伸縮可能であり、副脚と協働して伸縮脚を提供する一方、荷重受け台の静止姿勢に従い主脚の長さを基準とした伸縮脚の伸長又は収縮を自律的に許容し、液圧シリンダの形態をなし、開孔及び底部を有する外筒、外筒内に収容されたピストン、開孔を通して外筒から突出したピストンロッド、及び、ピストンロッドの先端に設けられ、副脚の下端部内にねじ込まれた螺子部を有するアジャスタ本体と、外筒内に収容され、ピストンの下部と外筒の底部との間に架け渡された圧縮コイルばねを有する付勢手段と、外筒内にピストンによって区画された2つの液室と、これら液室間での液体の流通を規制するべく外筒の内周面とピストンの外周面との間に確保された第1の微小隙間とを有する規制手段と、開孔からの液体の漏洩を阻止する漏洩阻止手段とを有する。
【0017】
また、本発明の脚アジャスタセットは、前述した少なくとも1個の脚アジャスタと、主脚の延長部を形成するべく主脚に着脱可能に取り付けられ
、アジャスタ本体と同様な外観を呈するダミーアジャスタであって、ダミーアジャスタの外筒の下面から主脚の下端部までの主脚嵩上げは、脚アジャスタが最収縮状態にあるときの副脚の最小嵩上げと脚アジャスタが最伸長状態にあるときの副脚の最大嵩上げとの間に設定されている、3つのダミーアジャスタとの組合せからなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の脚型什器、並びにそれに用いる脚アジャスタ及び脚アジャスタセットによれば、脚型什器の脚の長さ調整の作業負担を軽減し且つ脚型什器の使い勝手を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の各実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係るテーブル(脚型什器)1の斜視図である。このテーブル1は、飲食店等の店舗、例えばカフェに多数配置されるコーヒーテーブルとして使用される。テーブル1は、4つの脚2と、これら脚2に支柱4を介して間接的に支持された天板(荷重受け台)6とを有している。4つの脚2は、3つの主脚8と1つの副脚10とに分類される。
【0021】
副脚10はその延長部を形成し且つ上下方向に伸縮可能な脚アジャスタ12を備えている。脚アジャスタ12のアジャスタ本体14は副脚10の下端部に着脱容易に取り付けられる。また、各主脚8はその延長部を形成し、副脚10の脚アジャスタ本体14と同様な外観を呈するダミーアジャスタ16を備えている。各ダミーアジャスタ16はそれぞれ主脚の下端部に着脱容易に取り付けられる。
【0022】
図2は、店舗の床に接地する脚アジャスタ12及びダミーアジャスタ16の接地位置を示す平面図である。3つの主脚8はそれぞれのダミーアジャスタ16によって3角形18を規定し、これら主脚8のみの使用でテーブル1が配置されたと仮定したとき、テーブル1の安定した静止姿勢を維持することができる。すなわち、ダミーアジャスタ16の接地によって形成された3角形面20により、天板6が床の傾斜や凹凸に応じて水平に限らず傾斜した状態であっても、テーブル1は安定した静止姿勢に維持される。なお、テーブル1が天板6の上面の面積が比較的小さい1人用のコーヒーテーブル等であれば、天板6が若干傾斜していてもテーブル1の使用に支障は無い。
【0023】
本実施形態の場合には、
図2に示すようにテーブル1の重心線22は3角形18内、詳しくは3角形18上を通過する。なお、重心線22が3角形18の近傍を通過しても良い。一方、3つの主脚8及び1つの副脚10は脚アジャスタ12及びダミーアジャスタ16によって4角形24を規定している。
図3は脚アジャスタ12の縦断面図である。脚アジャスタ12は、副脚10と協働して伸縮脚26を提供する一方、テーブル1の静止姿勢に従い主脚8の長さを基準とした伸縮脚26の伸長又は収縮を自律的に許容する。
【0024】
詳しくは、脚アジャスタ12は、前述したアジャスタ本体14と、所定の弾性係数を有する圧縮コイルばね(付勢手段)28とを備えている。アジャスタ本体14は、伸縮脚26の脚端としての外筒30と、外筒30内に収容されるとともに横断面で見て円形をなす外周面32bを有するピストン32と、ピストン32に一体形成され、外筒30から上方に向けて突出したピストンロッド34とを備えた液圧シリンダ36の形態をなしている。
【0025】
外筒30は、上端が開口された有底筒部材38と、有底筒部材38の外周壁38aに液密に螺合される蓋部材40とから構成されている。蓋部材40はピストンロッド34が挿通される開孔42を有し、開孔42の内周面42aとピストンロッド34の外周面34aとの間には微小隙間(第2の微小隙間)G1が確保されている。微小隙間G1の確保によりピストンロッド34の往復動、ひいてはピストンロッド34の往復動に伴う外筒30内と外筒30外との間の通気が許容される。
【0026】
また、蓋部材40の内隅部には環状の外周溝40aが形成され、この外周溝40aにはOリング44が装着されている。Oリング44は有底筒部材38の外周壁38aの上端面38bにより押圧されている。これより有底筒部材38と蓋部材40との間の隙間、すなわち外筒30内が液密にシールされる。また、ピストンロッド34の外周面34aには、ピストン32の直上に周溝34a1が形成され、この周溝34a1にはOリング46が装着されている。Oリング46は、ピストン32が上昇したときに微小隙間G1を塞ぎ、外筒30内を液密にシールする(漏洩阻止手段)。
【0027】
ピストンロッド34の外周部は合成樹脂等の軽量材から形成され、その内部には補強材として鉄材等からなる金属棒48が圧入されている。外筒30から突出したピストンロッド34の先端部には雄ねじの螺子部50が形成され、螺子部50は副脚10の下端部内にねじ込まれている。
圧縮コイルばね28は、外筒30内に収容され、ピストン32の下外周部(下部)32aと外筒30の底に形成された外周溝(底部)30aとの間に架け渡され、アジャスタ本体14が伸長する方向にピストン32を付勢している。
【0028】
また、外筒30内は、ピストン32によって2つの上側オイル室(液室)52と下側オイル室(液室)54とに区画され、これら上側オイル室52及び下側オイル室54は所定の動粘度を有するオイル(液体)で満たされている。
ピストン32の外周面32bと外筒30の内周面30bとの間には微小隙間(第1の微小隙間)G2が確保されている。この微小隙間G2により、上側オイル室52と下側オイル室54との間でのオイルの流通が許容されるものの、そのオイルの流通速度は極めて低速である。
【0029】
これより、圧縮コイルばね28の付勢力を受けたアジャスタ本体14の伸長速度、及び圧縮コイルばね28の付勢力に抗したアジャスタ本体14の収縮速度が低速に規制され(規制手段)、ピストン32は、外筒30の内周面30bによって案内されながら、外筒30内でゆっくりと上下方向に往復動され、ひいては伸縮脚26の伸縮に伴う衝撃が吸収される。
【0030】
図4は脚アジャスタ12の上面図である。
図4に示すように、ピストンロッド34は螺子部50以外が六角柱形状をなしており、開孔42も六角孔である。これにより、ピストンロッド34に対する外筒30の回動が阻止される(回動阻止手段)。
【0031】
図5はダミーアジャスタ16の縦断面図である。ダミーアジャスタ16の外周部は合成樹脂等の軽量材から形成された段付きの外筒62の形態をなす。この外筒62は主脚8の脚端として機能し、その内部に底無しの空洞64を有する。また、外筒62の上面からは螺子部66が一体に突出され、この螺子部66は主脚8の下端部内にねじ込まれている。更に、この螺子部66の内部には補強材として鉄材等からなる金属棒68が圧入されている。そして、ダミーアジャスタ16は主脚8と協働して伸縮及び収縮しない基準脚70を提供する。
【0032】
図6中、(a)はダミーアジャスタ16の側面図、(b)は脚アジャスタ12の中間収縮状態を示す一部断面図、(c)は脚アジャスタ12の最収縮状態を示す一部断面図、(d)は脚アジャスタ12の最伸長状態を示す一部断面図である。なお、
図6(a)〜(d)には、脚アジャスタ12及びダミーアジャスタ16が接地する床面72a〜72dを二点鎖線で示している。また、
図6(a)〜(d)では、床面72a〜72dがすべて水平の如く記載されているが、3角形面20が水平面に対して傾斜している場合も想定され得る。
【0033】
先ず、
図6(a)、(b)に示されるように、1つの脚アジャスタ12が接地する床面72bと3つのダミーアジャスタ16が接地する床面72aとが面一である場合を想定する。この場合には、3つの主脚8で床面72aに3角形面20が規定されることによりテーブル1の静止姿勢が確保される。そして、このテーブル1の静止姿勢に従い主脚8の長さを基準とした伸縮脚26の伸長又は収縮が自律的に行われることにより、3角形面20と面一な床面72bに脚アジャスタ12が接地される。このとき、圧縮コイルばね28は、その自然長から見て中間収縮状態に落ち着いており、伸縮脚26には、
図6(b)に示す付勢力F、及び荷重Wが作用している。
【0034】
付勢力Fは、外筒30内の下側オイル室54に溜まるオイル及び圧縮コイルばね28がピストン32を上側に付勢する力である。また、荷重Wは、天板6側から脚アジャスタ12に付与される想定荷重(天板6自体、天板6に載せた物、副脚10等の重量に基づく荷重)である。
【0035】
次に、
図6(a)、(c)に示されるように、1つの脚アジャスタ12の接地する床面72cが3つのダミーアジャスタ16の接地する床面72aから最も高い位置となる場合を想定する。この場合にも、3つの主脚8で床面72aに3角形面20が規定されることによりテーブル1の静止姿勢が確保される。そして、このテーブル1の静止姿勢に従い主脚8の長さを基準とした伸縮脚26の収縮が自律的に行われることにより、3角形面20から最も高い床面72cに脚アジャスタ12が接地される。このとき、圧縮コイルばね28は、その自然長から見て最収縮状態に落ち着いており、伸縮脚26には付勢力F、及び荷重Wが作用している。
【0036】
次に、
図6(a)、(d)に示されるように、1つの脚アジャスタ12の接地する床面72dが3つのダミーアジャスタ16の接地する床面72aから最も低い位置となる場合を想定する。この場合にも、3つの主脚8で床面72aに3角形面20が規定されることによりテーブル1の静止姿勢が確保される。そして、このテーブル1の静止姿勢に従い主脚8の長さを基準とした伸縮脚26の伸長が自律的に行われることにより、3角形面20から最も低い床面72dに脚アジャスタ12が接地される。このとき、圧縮コイルばね28は、その自然長から見て最伸長状態に落ち着いており、伸縮脚26には付勢力F、及び荷重Wが作用している。
【0037】
一方、ダミーアジャスタ16の外筒62の下面から主脚8の下端部までの距離を主脚嵩上げHm(
図6(a)参照)と規定する。また、脚アジャスタ12が中間収縮状態にあるときの脚アジャスタ本体14の外筒30の下面から副脚10の下端部までの距離を副脚嵩上げHs(
図6(b)参照)と規定する。
【0038】
このとき、主脚嵩上げHmは、脚アジャスタ12が最収縮状態にあるときの副脚10の最小嵩上げHsmin(
図6(c)参照)と、脚アジャスタ12が最伸長状態にあるときの副脚10の最大嵩上げHsmax(
図6(d)参照)との間に設定されている。好ましくは、主脚嵩上げHmは最小嵩上げHsminと最大嵩上げHsmaxとの中間位置に設定される。
【0039】
主脚嵩上げHm、副脚嵩上げHs、副脚10の最小嵩上げHsmin、及び副脚10の最大嵩上げHsmaxと、圧縮コイルばね28の弾性係数及びオイルの動粘度、並びに微小隙間G1、G2の大きさ等は、テーブル1に要求される脚アジャスタ12の調整性能に応じて適宜設定される。
【0040】
以上のように本実施形態では、3角形18を規定する3つの主脚8によってテーブル1の安定した静止姿勢を可能にしながら、副脚10の脚アジャスタ12によって副脚10と協働する伸縮脚26を提供する一方、テーブル1の静止姿勢に従い主脚8の長さを基準とした伸縮脚26の伸長又は収縮を自律的に許容することができる。従って、テーブル1の脚2の長さ調整の作業負担を軽減し且つテーブル1の使い勝手を向上することができる。
【0041】
具体的には、床掃除や模様替えの前の各テーブルの配置場所やテーブルの各脚の接地位置を考慮しなくとも、再配置後のテーブル1のがたつきを常に防止することができる。従って、テーブル1の脚2の長さの再調整が不要となり、テーブル1のがたつきによってテーブル面上に置いたカップやグラス等の容器から飲料がこぼれたり、或いはテーブル1上での作業に支障を来したりすることが抑制され、使い勝手の良いテーブル1、ひいては快適な店舗環境を顧客に提供することができる。
【0042】
ここで、テーブル1が3つの主脚8しか有さない3脚のテーブル1であると仮定する。この場合であっても、天板6は3つの主脚によって3点支持され、3角形18が規定されるため、床に傾斜やがたつきが存在していたとしてもテーブル1の安定した静止姿勢を維持することはできる。ところが、3点支持のテーブル1は、テーブル1を使用する顧客が天板6に載置した物の荷重や顧客の肘等から天板に付与される荷重によって、テーブル1の重心線22の位置が変化し、この重心線22が3角形18ひいては天板6から著しく離間した箇所を通過する可能性がある。
【0043】
しかし、本実施形態のように脚2を4脚とし、更には脚2の1つを伸縮脚26とすることにより、
図2に示したように、3つの主脚8及び1つの副脚10は4角形24を規定し、テーブル1は4点支持される。すなわち、各脚2により3角形18よりも面積の大きな4角形24を規定することができる。
【0044】
テーブル1の構造や使用環境によって、重心線22が3角形18から離間した箇所を通過する場合であっても、重心線22が3角形18よりも大きな面積を有する4角形24内又は4角形24近傍を通過する可能性は高くなる。従って、本発明は4つ以上の脚2を備えたテーブル1を前提としたとき、たとえ天板6が床の傾斜や凹凸に応じて水平から傾斜した状態になるとしてもテーブル1を安定した静止姿勢に確実に維持することができる。
【0045】
また、前述した微小隙間G2によって、圧縮コイルばね28の付勢力を受けたアジャスタ本体14の伸長速度、及び圧縮コイルばね28の付勢力に抗したアジャスタ本体14の収縮速度を規制することができる。従って、伸縮脚26の伸長又は収縮がゆっくりと行われるため、テーブルを使用する顧客に違和感を与えることなくテーブル1のがたつきを防止することができ、より一層快適な店舗環境を顧客に提供することができる。
【0046】
また、主脚嵩上げHmが副脚の最小嵩上げHsminと、副脚の最大嵩上げHsmaxとの間に設定される。これにより、床の傾斜方向や凹凸に応じ、主脚8の長さを基準とした伸縮脚26の伸長範囲及び収縮範囲の双方を確実に確保することができる。従って、どのような床の傾斜勾配や凹凸の態様であっても、テーブル1のがたつきを効果的に防止することができる。なお、主脚嵩上げHmが最小嵩上げHsminと最大嵩上げHsmaxとの中間となる位置に設定されることにより、伸縮脚26の伸縮範囲を伸長側と収縮側とに等分することが可能である。従って、床の傾斜方向や凹凸に応じて伸縮脚26の伸長又は収縮を同程度行うことができ、テーブル1のがたつきをより一層効果的に防止することができる。
【0047】
また、テーブル1の重心線22が3つの主脚8によって規定された3角形18内を通過する。これにより、テーブル1の使用環境によって重心線22が3角形18から著しく離間して外れる場合を除き、重心線22の変化は少なく、伸縮脚26の伸縮頻度ひいては脚アジャスタ12の作動頻度を低減することが可能となる。従って、テーブル1の安定した静止姿勢をより一層確実に維持することができる。
【0048】
また、ピストンロッド34は螺子部50以外が六角柱形状をなしており、開孔42も六角孔である。つまり、開孔42の内周面42aとピストンロッド34の外周面34aとは、横断面で見て微小隙間G1を存した六角形をなしている。これにより、ピストンロッド34に対する外筒30の回動が阻止される。
【0049】
このため、図示しないレンチ等を使用して外筒30を回動したとき、ピストンロッド34に対して外筒30が空転することが防止され、副脚10に対し螺子部50を容易に螺合して接続することができる。従って、テーブル1の脚の長さ調整の作業負担軽減及び使い勝手の更なる向上を図ることができる。なお、開孔42の内周面42aとピストンロッド34の外周面34aとは六角形に限らず、他の多角形や楕円であっても良く、非真円形状であれば同様の効果を得ることができる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、
図7A〜
図13Dを参照し、本発明の第2実施形態に係る脚アジャスタ100及びダミーアジャスタ130について主として第1実施形態と異なる構成について説明する。第1実施形態と同様の構成については、図面に第1実施形態と同符号を付す、或いは明細書中に第1実施形態と同名称で記載する等して説明を省略することがある。
【0051】
図7A及び
図7Bに示すように、脚アジャスタ100は、アジャスタ本体102と、圧縮コイルばね(付勢手段)28とを備えている。脚アジャスタ100は、第1実施形態の脚アジャスタ12と同様に液圧シリンダ36の形態をなし、圧縮コイルばね28の付勢力を受けたアジャスタ本体102の伸長速度、及び圧縮コイルばね28の付勢力に抗したアジャスタ本体102の収縮速度が低速に規制される(規制手段)。
【0052】
アジャスタ本体102は、伸縮脚26の脚端としての外筒104と、外筒104内に収容されたピストン106と、ピストン106に一体形成されるとともに外筒104の開孔104aから突出されたピストンロッド108とを備えている。また、アジャスタ本体102は、外筒104内をピストンロッド108側の液室52と区画して微小隙間G1側に空間110を形成するシール部材112を備えている。
【0053】
図8A〜
図8Dに示すように、ピストン106は、横断面で見て六角形をなす外周面106aを有している。一方、ピストンロッド108は全体が円柱形状をなし、ピストンロッド108の外周面108aは、横断面で見て円形状をなしている。また、外周面108aのピストン106の直上には、シール部材112の後述する内端112aが係止される周溝114が形成されている。また、外筒104から突出するピストンロッド108の先端部には、雌ねじの螺子部116が開口、内設され、螺子部116には副脚10の下端部がねじ込まれる。
【0054】
図9Aから
図9Dに示すように、外筒104の有底筒部材118は、小径部118aと小径部118aの上側に位置付けられるとともに小径部118aよりも大径をなす大径部118bとから段付き形態をなす。小径部118a内には、液圧シリンダ36の各液室52、54が区画され、横断面で見て六角形をなす内周面118a1が形成されている。また、小径部118aの外周面118a2には、セレーション加工等により有底筒部材118の高さ方向に直線状をなす多数の喰い込み歯118a3が形成されている。
【0055】
一方、大径部118bは、外筒104の蓋部材120が嵌合又は螺合されて装着される円筒状の筒部118b1と、蓋部材120の装着に伴い蓋部材120の下端が当接される鍔部118b2とを有している。また、大径部118bへの蓋部材120の装着によっても、筒部118b1の上端面118b3は蓋部材120から離間している。また、大径部118bは、外筒104に対するピストンロッド108の往復動に伴うシール部材112の伸縮を許容する容積を有している。
【0056】
図10に示すように、ピストン106の外周面106aとピストン106が収容される小径部118aの内周面118a1とは、双方とも、横断面で見て微小隙間G1を存した六角形をなす。これにより、ピストン106に対する外筒104の回動が阻止される(回動阻止手段)。従って、図示しないレンチ等を食い込み歯に食い込ませて外筒104を回動したとき、ピストン106に対して外筒104が空転することが防止され、副脚10に対し螺子部16を容易に螺合して接続することができる。
【0057】
図11A〜
図11Dに示すように、外筒104の蓋部材120はキャップ状をなし、その中央にはピストンロッド108が挿通される上述した開孔104aが形成されている。開孔104aは、横断面で見て円形の内周面104a1と、内周面104a1に連なる下端面104a2とを有している。また、蓋部材120の内隅部の近傍には、シール部材112の後述する外端112bを係止する円環状の係止爪120aが突出されている。そして、蓋部材120が大径部120に装着されることにより、大径部118a及び蓋部材120において略面一となる外筒104の外周面が形成される。
【0058】
図12A〜
図12Cに示すように、シール部材112は、ゴム等の伸縮性を有する弾性体から環帯状に一体に形成されている。シール部材112は、開孔112cを形成する断面円形状の内端112aと、シール部材112の外縁を形成する断面円形状の外端112bと、内端112a及び外端112bを繋げる肉薄の伸縮部112dとを有している。
【0059】
図7A及び
図7Bに示すように、大径部118に対する蓋部材120の装着に伴い、蓋部材120の係止爪120bと大径部118bの筒部118b1の上端面118b3とによりシール部材112の外端112bが押し潰されて係止される。これよりピストン106の上昇及び下降の双方において、有底筒部材118と蓋部材120との間の隙間が外端112bにより常時塞がれる。
【0060】
図7Aに示すように、ピストン106の上昇に伴い内端112aも上昇し、伸縮部112dの収縮によって空間110の容積が減少されることで微小隙間G1から空間110の空気の排出が行われる。そして、ピストン106が上昇し切ったときには内端112aは開孔104aの下端面104a2に押圧され、微小隙間G1を塞ぐ。
【0061】
一方、
図7Bに示すように、ピストン106の下降に伴い内端112aも下降し、伸縮部112dの伸長によって空間110の容積が増大されることで微小隙間G1から空間110への空気の流入が行われる。この際も、内端112aはピストンロッド108の周溝114に係止されている。このように、シール部材112にて内端112aと外端112bとの間の伸縮が伸縮部112dにて許容されることにより、微小隙間G1を介した通気によって空間110の容積が増減されるものの、空間110は液室52と微小隙間G1との隔離を維持する。
【0062】
図13A〜
図13Dに示すように、ダミーアジャスタ130の外周部は、脚アジャスタ100と同様の小径部130a及び大径部130bからなる段付きの外筒の形態をなしている。この外筒は主脚8の脚端として機能し、小径部130aの内部に底無しの空洞132を有するとともに、大径部130bの上端面130b1に環帯状の周溝134が形成されている。
【0063】
ダミーアジャスタ130は空洞132及び周溝134により減肉されて軽量化が図られている。また、小径部130aの外周面130a1には脚アジャスタ100と同様の喰い込み歯136が形成されている。また、大径部130bの上端面130b1には螺子部138が開口され、この螺子部138には主脚8の下端部がねじ込まれる。そして、ダミーアジャスタ130は主脚8と協働して伸縮及び収縮しない基準脚を提供する。
【0064】
以上のように本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、テーブル1の脚2の長さ調整の作業負担を軽減し且つテーブル1の使い勝手を向上することができる。
特に、本実施形態の場合には、ピストン106の外周面106aとピストン106が収容される小径部118aの内周面118a1とが、横断面で見て微小隙間G1を存した六角形をなす。
【0065】
この場合には、レンチ等を使用して外筒104を回動したとき、外筒104の回動箇所と外筒104及びピストン106の係合箇所とを外筒104を隔てて近接して位置付けることができる。これにより、第1実施形態の場合のようにピストンロッド34及び開孔42を六角形とした場合に比して、外筒104のがたつきを防止しながらピストン106に対して外筒104をより一層円滑に螺合して接続することが可能である。従って、テーブル1の脚2の長さ調整の作業負担の更なる軽減を図ることができる。なお、ピストン106の外周面106aと小径部118aの内周面118a1とは六角形に限らず、他の多角形や楕円であっても良く、非真円形状であれば同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、シール部材112を設けたことにより、有底筒部材118と蓋部材120との間の隙間を外端112bで常時塞ぎながら、液室52と微小隙間G1との隔離を維持する空間110を外筒104内に常時形成することができる。このため、第1実施形態のOリング44、46を設けた場合に比して、より一層確実に外筒104内を液密にシールすることができる。
【0067】
具体的には、外筒104内で、ピストン106が上昇途中の位置、ピストン106が下降途中の位置、或いは、ピストン106が下降仕切った位置にあるとき、テーブル1の脚2の長さ調整中にテーブル1を傾けたとしても、液室52のオイルが微小隙間G1から漏洩することを確実に防止することができる。従って、テーブル1の脚2の長さ調整中にオイル漏洩を懸念する必要がないため、当該調整中の作業負担の更なる軽減を図ることができる。
【0068】
また、外筒104を各液室52、54が形成される小径部108aと、空間110が形成される大径部108bとから形成したことにより、外筒104の高さ方向の寸法を低減しながら、ピストン106の往復動に伴う外筒104内におけるシール部材112の伸縮が外筒104の高さ方向のみならず外筒104の径方向を含めた領域で円滑に行われる。
【0069】
これにより、外筒104ひいてはアジャスタ本体102の高さ方向における小型化を図ることができる。従って、テーブル1の脚2の長さ調整中にテーブル1を極端に高く持ち上げる必要がないため、作業負担の更なる軽減を図ることができる。また、アジャスタ本体102を取り付けたことによって既存のテーブル1の高さが大幅に変化した結果、テーブル1を使用した顧客に違和感を与えることが防止され、テーブル1の使い勝手を更に向上することができる。
【0070】
本発明は上記各実施形態に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上記各実施形態では4つの脚2を有するテーブル1について説明したが、前述したようにテーブル1の脚2は5つ以上であっても本発明の適用が可能である。
具体的には、
図14に示すように、5つの脚2を有するテーブル1の場合、各脚2により規定される5角形74の中央に3つの主脚8で規定される3角形18を位置付け、残りの脚2を副脚10とすれば良い。
【0071】
また、
図15に示すように、6つの脚2を有するテーブル1の場合、各脚2により規定される6角形76の中央に3つの主脚8で規定される3角形18を位置付け、残りの脚2を副脚10とすれば良い。なお、3角形18を
図14及び
図15とは別の頂点で規定しても良い。しかし、
図14及び
図15の場合には、これらの図に示したように、テーブル1の重心線22が主脚8により規定された3角形18内を通過するため、前述したようにテーブル1の安定性が増して好適である。
【0072】
また、上記各実施形態では本発明を適用した新たなテーブル1について説明したが、既存のテーブルの脚を切断して短くし、短くなった脚に脚アジャスタ12を装着して伸縮脚26を形成しても良い。この場合には、少なくとも、外筒30内にオリフィス60を有するアジャスタ本体14と圧縮コイルばね28とからなる脚アジャスタ12のみを用意すれば足りる。また、残りの脚は切断せずにそのまま主脚8として利用することができる。このように、脚アジャスタ12のみを用意すれば、本発明を4つ以上の脚2を有する既存のテーブルに適用することができ、新たなテーブル1を形成した場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0073】
また、1個の脚アジャスタ12と、3つのダミーアジャスタ16との組合せからなる脚アジャスタセットを用意し、既存のテーブルの各脚2に、1つ又は複数の脚アジャスタセットを構成する脚アジャスタ12と、ダミーアジャスタ16とをそれぞれ装着しても良い。この場合には、脚アジャスタセットのみを用意すれば、本発明を4つ以上の脚2を有する既存のテーブルに適用することができ、新たなテーブル1を形成した場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0074】
また、上記各実施形態では、アジャスタ本体14を伸長する方向に付勢するために圧縮コイルばね28を用いているが、圧縮コイルばね28の代わりに他の付勢手段、例えばゴム等の弾性部材を用いても良い。
また、上記各実施形態では、圧縮コイルばね28の付勢力を受けたアジャスタ本体14の伸長速度及び圧縮コイルばね28の付勢力に抗したアジャスタ本体14の収縮速度を規制するために、微小隙間G2を確保している。しかし、この微小隙間G2以外の規制手段を用いても良く、例えばピストン32を貫通した微小孔を形成してオリフィスとして機能させても良い。
【0075】
また、上記各実施形態では、アジャスタ本体14はオイルを作動流体とした液圧シリンダ36の形態をなしている。しかし、作動流体は粘性流体であればオイルに限らず種々の流体が想定可能であり、また、ガスを用いたガス圧シリンダの適用も可能である。
【0076】
また、上記各実施形態では、テーブル1の天板6は脚2によって支柱4を介して間接的に支持されている。しかし、各脚2が天板6の下面から直接延び、各脚2で天板6を直接的に支持するテーブルにも本発明は適用可能である。
具体的には、
図16に示すように、長さL1を有する3つの主脚8と、L1よりも短い長さL2を有する副脚10とを天板6に接続してテーブル78を形成する。副脚10の下端部内には螺子穴80を形成し、この螺子穴80に、先端に螺子部82を有する脚アジャスタ84を螺合する。
【0077】
そして、脚アジャスタ84の高さを手動で調整することにより、副脚10を伸縮脚26として床面86に当接させても良い。この場合であっても、
図2に示したように、3角形18を規定する3つの主脚8のみの使用でテーブル78の安定した静止姿勢を維持することができる。脚アジャスタ84は、
図14又は
図15に示した数の脚2を有するテーブルにも適用可能である。
【0078】
また、本発明はテーブルに限らず、椅子を含む家具、脚立等の踏み台や荷重受け台を含む脚型什器の全般に適用できるのは勿論である。