(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134144
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】投影レンズおよび灯具ユニット
(51)【国際特許分類】
F21S 8/12 20060101AFI20170515BHJP
F21S 8/10 20060101ALI20170515BHJP
F21W 101/10 20060101ALN20170515BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20170515BHJP
【FI】
F21S8/12 267
F21S8/10 150
F21S8/10 170
F21S8/12 210
F21W101:10
F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-10293(P2013-10293)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-143057(P2014-143057A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆之
【審査官】
石井 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−004401(JP,U)
【文献】
特開2012−212653(JP,A)
【文献】
特開2004−327188(JP,A)
【文献】
特開2005−044683(JP,A)
【文献】
米国特許第03708221(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
F21S 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具に用いられる投影レンズであって、
光出射部から出射した光が入射する入射面と、
入射面から入射した光が灯具前方に向けて出射する出射面と、を有し、
前記入射面および前記出射面は、
光軸を含む水平断面における後方焦点に対する水平面焦点距離Fhが、光軸を含む鉛直断面における後方焦点に対する鉛直面焦点距離Fvと異なるように構成されており、
前記入射面および前記出射面は、Fv>1.2×Fhを満たすように構成されていることを特徴とする投影レンズ。
【請求項2】
前記入射面および前記出射面は、
後方焦点から射出する光線の光軸に対する射出角度をθ、
投影レンズから出射された前記光線と光軸との距離をhとすると、
0.9×|h|<Fv×sinθ<1.1×|h|
0.9×|h|<Fh×sinθ<1.1×|h|
を満たすように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の投影レンズ。
【請求項3】
前記入射面および前記出射面が自由曲面で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の投影レンズ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投影レンズと、
前記投影レンズの後方焦点近傍に配置された光出射部と、を備え、
前記光出射部は、アレイ状に配置された複数の発光部を有し、点灯時に該複数の発光部の一部の発光部を消灯可能に構成されていることを特徴とする灯具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影レンズに関し、特に車両に搭載される投影レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上端部に所定のカットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用前照灯において、上記カットオフラインを形成するために用いられる灯具ユニットが考案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この灯具ユニットは、車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、下端縁が直線状に形成された発光チップを有している。そして、上記投影レンズは、上記発光チップの下端縁と直交する断面内においては該発光チップの下端縁における上記光軸上の点からの光を平行光として出射させる一方、上記発光チップの下端縁と平行な断面内においては該発光チップの下端縁における上記光軸上の点からの光を拡散光として出射させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−108555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の灯具ユニットは、発光チップの下端縁と平行な断面内においては発光チップの下端縁における光軸上の点からの光を拡散光として出射させているため、発光チップの反転投影像である配光パターンの水平方向端部の明暗境界が不鮮明になりやすい。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光源の発光面の形状と異なる配光パターンを形成する投影レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の投影レンズは、車両用灯具に用いられる投影レンズであって、光出射部から出射した光が入射する入射面と、入射面から入射した光が灯具前方に向けて出射する出射面と、を有する。入射面および出射面は、光軸を含む水平断面における後方焦点に対する水平面焦点距離Fhが、光軸を含む鉛直断面における後方焦点に対する鉛直面焦点距離Fvと異なるように構成されている。
【0008】
この態様によると、焦点付近にある光出射部の発光面の形状と異なる配光パターンを形成することができる。また、投影レンズは、光出射部の発光面の光度分布を保ったまま縦横比を変更した配光パターンを投影することができる。
【0009】
入射面および出射面は、後方焦点から射出する光線の光軸に対する射出角度をθ、投影レンズから出射された光線と光軸との距離をhとすると、0.9×|h|<Fv×sinθ<1.1×|h| 0.9×|h|<Fh×sinθ<1.1×|h|を満たすように構成されていてもよい。これにより、焦点付近の物体(例えば、光源の発光面)を鮮明に結像できる。
【0010】
入射面および出射面は、Fv>1.2×Fhを満たすように構成されていてもよい。これにより、水平方向の拡大率が大きな配光パターンを実現できる。
【0011】
入射面および出射面が自由曲面で構成されていてもよい。
【0012】
本発明の他の態様は灯具ユニットである。この灯具ユニットは、上述の投影レンズと、投影レンズの後方焦点近傍に配置された光出射部と、を備えている。光出射部は、アレイ状に配置された複数の発光部を有し、点灯時に該複数の発光部の一部の発光部を消灯可能に構成されている。これにより、発光部の一部を消灯した場合でも、配光パターン内での明暗境界を鮮明にできる。ここで、発光部は、光って見える部分であり、一例として発光素子が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光出射部の発光面の形状と異なる配光パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は、本実施の形態に係る灯具ユニットを前方から見た概略構造を模式的に示す斜視図、
図1(b)は、本実施の形態に係る灯具ユニットを後方から見た概略構造を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、本実施の形態に係る灯具ユニットの概略構造を模式的に示す上面図、
図2(b)は、本実施の形態に係る灯具ユニットの概略構造を模式的に示す側面図である。
【
図3】本実施の形態に係る灯具ユニットの概略構造を模式的に示す正面図である。
【
図4】
図4(a)は、本実施の形態に係る投影レンズの光軸を含む鉛直断面における光線図を示した図、
図4(b)は、本実施の形態に係る投影レンズの光軸を含む水平断面における光線図を示した図である。
【
図5】本実施の形態に係る光源の一例であるLEDアレイの正面図である。
【
図6】
図5に示す点消灯状態のLEDアレイによる配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
図1(a)は、本実施の形態に係る灯具ユニットを前方から見た概略構造を模式的に示す斜視図、
図1(b)は、本実施の形態に係る灯具ユニットを後方から見た概略構造を模式的に示す斜視図である。
図2(a)は、本実施の形態に係る灯具ユニットの概略構造を模式的に示す上面図、
図2(b)は、本実施の形態に係る灯具ユニットの概略構造を模式的に示す側面図である。
図3は、本実施の形態に係る灯具ユニットの概略構造を模式的に示す正面図である。
【0017】
本実施の形態に係る灯具ユニット10は、主として車両用灯具(例えば、車両用前照灯)に用いられる。灯具ユニット10は、各図に示すように、投影レンズ12と、投影レンズ12の焦点近傍に配置された光源搭載部14と、光源搭載部14に搭載されている光出射部としての光源16と、を備える。ここで、光出射部とは、光が出射される明るい部分であり、一例として、光源が挙げられる。
【0018】
投影レンズ12は、
図3に示す前方からの正面視において、水平方向Hの長さが鉛直方向Vの長さよりも長い矩形形状のレンズ本体12aと、投影レンズ12を車両用前照灯の灯室内に固定するための取付け部12bと、を有する。投影レンズ12は、透明樹脂などを用いて一体成型によって形成される。
【0019】
また、光源16から出射した光が入射する入射面12cと、入射面12cから入射した光が灯具前方に向けて出射する出射面12dと、を有する。投影レンズ12の入射面12cは、前方に向かって凸面となっている。また、投影レンズ12の出射面12dは、前方に向かって凸面となっている。
【0020】
光源搭載部14は、光源16を所望の位置に搭載できるように構成されており、例えば、光源16が発する熱をユニットの外へ放出するための放熱部材(ヒートシンク)を兼ねていてもよい。
【0021】
図4(a)は、本実施の形態に係る投影レンズ12の光軸を含む鉛直断面における光線図を示した図、
図4(b)は、本実施の形態に係る投影レンズ12の光軸を含む水平断面における光線図を示した図である。
【0022】
入射面12cおよび出射面12dは、光軸を含む水平断面における後方焦点Fに対する水平面焦点距離Fhが、光軸を含む鉛直断面における後方焦点Fに対する鉛直面焦点距離Fvと異なるように構成されている。
【0023】
この態様によると、焦点F付近にある光源の発光面の形状と異なる配光パターンを形成することができる。ここで、発光面とは、例えば、正面から見て明るく見える部分である。また、投影レンズ12は、光源16の発光面の光度分布を保ったまま縦横比を変更した配光パターンを投影することができる。
【0024】
なお、本実施の形態に係る入射面12cおよび出射面12dは、Fv>1.2×Fhを満たすように構成されている。これにより、水平方向の拡大率が大きな配光パターンを実現できる。
【0025】
更に、灯具ユニット10における投影レンズ12の形状について、以下に示す正弦条件を考慮して構成することで、光源像をより鮮明に結像できる。
【0026】
図4(a)に示すように、光軸Axを含む鉛直断面において、投影レンズ12は、後方焦点Fから射出する光線L(例えば、L1、L2)の光軸Axに対する射出角度をθ(θ1、θ2)、投影レンズ12から出射された光線Lと光軸Axとの距離をh(h1、h2)とすると、
0.9×|h|<Fv×sinθ<1.1×|h|・・・式(1)
を満たすように構成されている。より好ましくは、
|h|≒Fv×sinθ・・・式(2)
を満たすように構成されているとよい。
【0027】
また、
図4(b)に示すように、光軸Axを含む水平断面において、投影レンズ12は、後方焦点Fから射出する光線L(例えば、L3、L4)の光軸Axに対する射出角度をθ(θ3、θ4)、投影レンズ12から出射された光線Lと光軸Axとの距離をh(h3、h4)とすると、
0.9×|h|<Fh×sinθ<1.1×|h|・・・式(3)
を満たすように構成されている。より好ましくは、
|h|≒Fh×sinθ・・・式(4)
を満たすように構成されているとよい。
【0028】
式(1)や式(3)を満たすように、より好ましくは、式(2)や式(4)を満たすように、投影レンズ12の形状を構成することで、焦点付近の物体(例えば、光源の発光面)を鮮明に結像できる。なお、このような形状の投影レンズ12を得るために、本実施の形態では、入射面12cや出射面12dを自由曲面で構成している。
【0029】
また、本実施の形態に係る灯具ユニット10は、遮光部材を備えることで、カットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成することができる。
【0030】
灯具ユニット10が備える光源16は、平面光源、円筒光源、または平面光源とその光を集光する複合放物面集光器とを組み合わせたユニットなどを用いることができる。光源に用いられる発光素子は、例えば、LED素子、LD素子、EL素子などが挙げられる。
【0031】
また、光源16は、独立して点消灯可能な複数の発光素子を並べたもの、例えば、LEDアレイであってもよい。
図5は、本実施の形態に係る光源の一例であるLEDアレイの正面図である。LEDアレイ18は、独立して点消灯可能な複数のLEDチップ20をアレイ状に配置したものである。具体的には、LEDアレイ18は、水平方向に16個のLEDチップ20を一列に並べたものである。
【0032】
LEDアレイ18は、点灯したLEDチップ20aと消灯したLEDチップ20bとを用いて、配光パターンの一部を非照射とすることができ、自車両前方の対向車や歩行者に対するグレアの発生を抑制できる。
【0033】
図6は、
図5に示す点消灯状態のLEDアレイ18による配光パターンを示す図である。LEDチップ20は、正方形の発光面を有しているが、投影レンズ12を用いることで、
図6に示すように、点灯したLEDチップ20aの光源像が水平方向に引き伸ばされて投影されていることがわかる。つまり、光源であるLEDアレイ18の発光面の形状と異なる(アスペクト比が異なる)配光パターンを比較的鮮明に形成できる。しかも、配光パターンの一部を非照射(遮光)とすることができる。
【0034】
また、投影レンズ12によって、LEDアレイ18の光源像を水平方向に引き伸ばせるため、所定の配光パターンを形成するために必要なLEDチップの数を減らすことができる。
【0035】
上述のように、本実施の形態に係る灯具ユニット10は、投影レンズ12と、投影レンズ12の後方焦点F近傍に配置された光源16と、を備えている。光源16は、アレイ状に配置された複数のLEDチップ20を有し、点灯時に複数のLEDチップ20の一部のLEDチップ20bを消灯可能に構成されている。本実施の形態に係る投影レンズ12は、前述の正弦条件を考慮して構成されているため、LEDチップ20の一部を消灯した場合でも、配光パターン内での照射部と非照射部との明暗境界を鮮明にできる。
【0036】
つまり、灯具ユニット10は、LEDアレイ18の一部のLEDチップ20bを非点灯とすることでハイビーム用配光パターンの一部の領域の照射状態を変化させる、いわゆるADB(Adaptive Driving Beam)としても利用できる。
【0037】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0038】
10 灯具ユニット、 12 投影レンズ、 12a レンズ本体、 12c 入射面、 12d 出射面、 14 光源搭載部、 16 光源、 18 LEDアレイ、 20 LEDチップ。