特許第6134148号(P6134148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134148
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】透明化粧水
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/68 20060101AFI20170515BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170515BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20170515BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20170515BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   A61K8/68
   A61K8/34
   A61K8/39
   A61K8/37
   A61Q19/00
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-16759(P2013-16759)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-148473(P2014-148473A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(72)【発明者】
【氏名】小關 知子
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃子
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−083801(JP,A)
【文献】 特開2005−206573(JP,A)
【文献】 特開2004−238355(JP,A)
【文献】 特開2001−316217(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0129937(US,A1)
【文献】 特開2002−338459(JP,A)
【文献】 特開2001−199872(JP,A)
【文献】 特開2001−139796(JP,A)
【文献】 特開2001−206833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セラミド類0.00001−1.0質量%、(b)非イオン性界面活性剤0.1−1.0質量%、(c)ヘキサンジオール0.1−5.0質量%、および(d)水50.0質量%以上を含有し、
(a)セラミド類を安定に可溶化し透明であることを特徴とする化粧水であって、
目視による濁り、結晶の析出および液面の油浮きがいずれもなく、かつ、
分光色彩計で測定した明度(L値)が99.0%以上であり、
調製から40℃で1ヶ月経過しても結晶の析出や濁りが生じない化粧水
【請求項2】
(c)ヘキサンジオールが0.1−2.0質量%である、請求項1に記載の化粧水。
【請求項3】
(a)セラミド類が、天然セラミド類または疑似セラミド類である、請求項1または2に記載の化粧水。
【請求項4】
天然セラミド類が、天然セラミドまたは天然型セラミドである、請求項3に記載の化粧水。
【請求項5】
天然型セラミドが、ヒト型セラミドであるセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6II、セラミド7、セラミド8、セラミド9およびセラミド10からなる群から選ばれる1つ以上である、請求項4に記載の化粧水。
【請求項6】
ヒト型セラミドが、セラミド2である、請求項5に記載の化粧水。
【請求項7】
(b)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧水。
【請求項8】
(a)セラミド類として天然セラミド類を0.00001−0.15質量%、(b)非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを0.1−1.0質量%、(c)ヘキサンジオールを0.1−2.0質量%、
および(d)水70.0質量%以上含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化粧水。
【請求項9】
(a)セラミド類としてセラミド2を0.00001−0.15質量%、(b)非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を0.4−1.0質量%、(c)ヘキサンジオールを0.8−1.0質量%、および(d)水70.0質量%以上含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の非イオン性界面活性剤および、ヘキサンジオールまたはペンタンジオールを含有し、セラミド類を安定的に可溶化した透明な化粧水に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミド類は、表皮の角質層を形成する細胞間脂質に多く存在し、水分保持に必要な脂質バリアを構築することで水分の蒸発を防ぎ、皮膚の水分維持に重要な役割を果たしている。そのため、皮膚に塗布することで皮膚の水分保持等を企図したセラミド類を含む混合物の化粧料の調製が試みられている。しかし、セラミド類は結晶性の高い物質であり、溶解性が低く、低温で結晶を析出する等の理由により、化粧料における経時安定性の確保が困難であった。特に、化粧料の中でも水を多く含む化粧水においては、セラミド類を安定的に可溶化した透明な化粧水を得ることは非常に困難であった。
【0003】
また、皮膚に適用する化粧料には、化粧水、乳液、クリーム等の多くの種類が存在するが、化粧水においては、透明であることが製品選択性において重要であり、セラミド類を可溶化した安定性良好な透明化粧水が望まれていた。しかし、セラミド類の溶解性の低さから、水のみでは安定的に溶解した透明な組成物は実現できず、界面活性剤等の何らかの可溶化剤を配合する必要があった。従来の技術では、セラミド類を可溶化した透明な化粧水を得るためには、可溶化剤の配合量を多くする必要があるため、安全性や使用感を損なうことがある。一方、界面活性剤の配合量を少なくすると、白濁や半透明の乳濁が観察され、セラミド類を可溶化しきれず、沈殿、油浮き等が生じ十分な経時安定性を確保できないという問題が生じていた。
【0004】
セラミドの可溶化が困難であるという問題を改善する方法としては、HLB9-20の非イオン性界面活性剤と液状の多価アルコールを配合する方法が開示されている(特許文献1)。また、セラミドを透明な製剤に安定配合するために、特定の脂肪酸や特定の界面活性剤を配合した皮膚外用剤(特許文献2)が開示されている。いずれも皮膚への刺激性や使用感の観点から、非イオン性界面活性剤や多価アルコールの配合量を低減するべきであることや、非イオン性界面活性剤や多価アルコールの配合量を低減すると、セラミド類を可溶化し透明な組成物を得ることが困難になるという課題ついて記載されていない。
【0005】
その他に、透明は企図されていないがセラミドを安定配合するために、ステロール類等の油分や非イオン性界面活性剤を配合した半透明の化粧料(特許文献3)、水性組成物ではないがセラミドを経時的に安定に配合するために、1,2-ペンタンジオールを配合した乳化型化粧料(特許文献4)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−338459号公報
【特許文献2】特開2001−316217号公報
【特許文献3】国際公開第2004/045566号パンフレット
【特許文献4】特開2003−176210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記状況において、皮膚刺激性等の問題が生じず、使用感に優れた、セラミド類を含有し、セラミド類が安定的に可溶化した透明な化粧水が求められていた。特に、可溶化に必
要な成分の配合量をできるだけ少量にした化粧水が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヘキサンジオールまたはペンタンジオールを配合することにより、非イオン性界面活性剤の含有量を1.0質量%以下にしてもセラミド類を可溶化した透明な化粧水が得られることを見出した。具体的には、(a)セラミド類、(b)非イオン性界面活性剤0.1−1.0質量%、(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオール0.1−5.0質量%、(d)水50.0質量%以上を含有することにより、(a)セラミド類を安定に可溶化した皮膚への刺激性の少ない透明な化粧水が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下に示すセラミド類含有化粧水を提供する。
(1)(a)セラミド類、
(b)非イオン性界面活性剤0.1−1.0質量%、
(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオール0.1−5.0質量%、
(d)水50.0質量%以上
を含有した化粧水である。
(2)上記(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールが、ヘキサンジオールは0.1−2.0質量%またはペンタンジオールは0.5−5.0質量%である上記(1)に記載の化粧水。
(3)上記(a)セラミド類が、天然セラミド類、または疑似セラミド類である上記(1)または(2)に記載の化粧水。
(4)上記天然セラミド類が、天然セラミドまたは天然型セラミドである上記(3)記載の化粧水。
(5)上記天然型セラミドが、ヒト型セラミドであるセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6II、セラミド7、セラミド8、セラミド9およびセラミド10からなる群から選ばれる1つ以上である上記(4)記載の化粧水。
(6)上記ヒト型セラミドが、セラミド2である上記(5)記載の化粧水。
(7)上記(b)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1つ以上である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の化粧水。
(8)(a)セラミド類が0.00001−1.0質量%である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の化粧水。
(9)エタノールを含有していない上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の化粧水。(10)防腐剤を含有していない上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の化粧水。
(11)上記(a)セラミド類が、セラミド2、(b)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールがヘキサンジオールである、上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の化粧水。
【0010】
(12)(a)セラミド類として天然セラミド類を0.00001−0.15質量%、(b)非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを0.1−1.0質量%、(c)ヘキサンジオールを0.1−2.0質量%、および(d)水70.0質量%以上含有する、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の化粧水。
(13)(a)セラミド類として天然型セラミドを0.00001−0.05質量%、(b)非イオ
ン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを0.1−1.0質量%、(c)ヘキサンジオールを0.8−1.0質量%、および(d)水70.0質量%以上含有する、上記(1)〜(12)のいずれかに記載の化粧水。
(14)上記(a)セラミド類としてセラミド2を0.00001−0.15質量%、(b)非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を0.4−1.0質量%、(c)ヘキサンジオールを0.8−1.0質量%、および(d)水70.0質量%以上含有する、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の化粧水。
また、本発明は以下に示す、セラミド類を可溶化し透明な化粧水を得る方法を提供する。(15)(a)セラミド類、
(b)非イオン性界面活性剤0.1−1.0質量%、
および(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオール0.1−5.0質量%を
80℃以上に加熱して混同した組成物を
80℃以上に加熱した(d)水50.0質量%以上に加え混合する、
(a)セラミド類が可溶化している透明な化粧水の調製方法。
(16)(a)セラミド類および
(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオール0.1−5.0質量%を
80℃以上に加熱して混同し、
(b)非イオン性界面活性剤0.1−1.0質量%を加えた組成物を
80℃以上の(d)水50.0質量%以上に加え混合する、
(a)セラミド類0.00001−1.0質量%を含有し、(a)セラミド類
が可溶化している透明な化粧水の上記(15)に記載の調製方法。
(17)上記(a)セラミド類が、天然セラミド類、または疑似セラミド類である上記(15)または(16)に記載の調製方法。
(18)上記天然セラミド類が、天然セラミドまたは天然型セラミドである上記(17)に記載の調製方法。
【0011】
(19)上記天然型セラミドが、ヒト型セラミドであるセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6II、セラミド7、セラミド8、セラミド9およびセラミド10からなる群から選ばれる1つ以上である上記(18)記載の調製方法。
(20)上記ヒト型セラミドが、セラミド2である上記(19)記載の調製方法。
(21)上記(b)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1つ以上である、上記(15)ないし(20)のいずれかに記載の調製方法。(22)上記(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールが、ヘキサンジオールは0.1−2.0質量%またはペンタンジオールは0.5−5.0質量%である上記(15)ないし(21)のいずれかに記載の調製方法。
(23)エタノールを含有していない上記(15)ないし(22)のいずれかに記載の調製方法。
(24)防腐剤を含有していない上記(15)ないし(23)のいずれかに記載の調製方法。
(25)(a)セラミド類が0.0001-0.15質量%である上記(15)ないし(24)のいずれかに記載の調製方法。
(26)上記(a)セラミド類が、セラミド2、(b)非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールがヘキサンジオールである、上記(15)ないし(25)のいずれかに記載の調製方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、セラミド類を可溶化することができ、経時的に安定であり、沈殿や油浮き等の析出が生じない、配合する界面活性剤等による皮膚刺激性等が低減され使用感に優れた透明な化粧水を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に係る化粧水は、(a)セラミド類、(b)非イオン性界面活性剤0.1−1.0質量%、(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジール0.1−5.0質量%、および(d)水50.0質量%以上を含み、セラミド類が可溶化し経時安定性を有し、析出が生じない、透明な化粧水に関する。
本発明における(a)セラミド類は、天然セラミド類、または疑似セラミド類が利用できる。
【0014】
本発明の天然セラミド類は、天然に存在する動物または植物から抽出した(本発明では、動物由来または植物由来と呼ぶことがある。以下同じ。)天然セラミドであっても、天然セラミドと同じ構造を有する合成により得られた天然型セラミドであってもよい。例えば、コメヌカから抽出した天然セラミドをコメヌカスフィンゴ糖脂質またはコメヌカ由来のスフィンゴ糖脂質と呼び、ヒトの皮膚角層に存在するセラミドと同じ構造を有する合成により得られた天然型セラミドをヒト型セラミドと呼ぶ。天然セラミド類は、天然セラミドも天然型セラミドもいずれも、セラミドだけでなく、セラミドに糖が結合したスフィンゴ糖脂質であってもよい。スフィンゴ糖脂質はセラミドに結合する糖により異なり、単糖が結合したセレブロシドまたはオリゴ糖が結合したガングリオシドがある。セレブロシドとしては、単糖がガラクトースであるガラクトシルセラミド、またはグルコースグルコシルセラミド等がある。本発明の疑似セラミド類は、天然セラミドと構造は一部異なるが天然セラミドが有する機能を少なくとも一つ有する、合成により得られた化合物であり、セラミド類似化合物や合成疑似セラミドとも呼ばれ、疑似セラミドまたはそれらの類縁体として知られている種々の物質のいずれであってもよい。
【0015】
本発明における(a)セラミド類は、好ましくは天然セラミドまたは天然型セラミドの天然セラミド類であり、より好ましくは天然型セラミドである。天然型セラミドとして好ましくは、ヒト型セラミドであり、ヒト型セラミドであるセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6II、セラミド7、セラミド8、セラミド9またはセラミド10のうち好ましくは、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6IIまたはセラミド7であり、より好ましくはセラミド2、セラミド3、セラミド5、セラミド6IIであり、更に好ましくはセラミド2である。なお、セラミド2は、(2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオールとも呼ぶ。
【0016】
天然セラミドとしては、動物または植物から抽出した、具体的にはコメヌカ、イネ、トウモロコシ、コンニャク、マイタケ、タモギタケ、ダイズ、ビート、コムギ、馬の脊髄または脳等から抽出した天然セラミドがあり、植物由来が好ましく、より好ましくはコメヌカ由来である。また、天然セラミドとしては、セラミドまたはセラミドに糖が結合したスフィンゴ糖脂質のうち、好ましくはスフィンゴ糖脂質であり、スフィンゴ糖脂質のうち好ましくはセレブロシドであり、より好ましくはグルコシルセラミドである。具体的には、コメヌカ由来のスフィンゴ糖脂質が好ましく、より好ましくはコメヌカ由来のグルコシルセラミドである。
天然型セラミドとしては、ヒトの皮膚角層に存在するセラミドと同じ構造を有するものである、ヒト型セラミドがあり、ヒト型セラミドとしては、セラミド1、セラミド2、セラ
ミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6II、セラミド7、セラミド8、セラミド9またはセラミド10があり、好ましくは、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6IIまたはセラミド7であり、より好ましくはセラミド2、セラミド3、セラミド5、セラミド6IIであり、更に好ましくはセラミド2である。
【0017】
疑似セラミド類としては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー、ポリクオタニウム51、 N-(テトラデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシデカナミドなどがあり、好ましくは、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)である。
上記セラミド類は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
(a)セラミド類の配合量は、皮膚の水分保持等の効果を発揮するには好ましくは0.00001質量%以上であり、より好ましくは0.0001質量%以上であり、化粧水に可溶化するには好ましくは、1.0質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、更に好ましくは0.15質量%以下である。天然セラミド類としては好ましくは0.15質量%以下であり、天然セラミドとしては好ましくは0.15質量%以下であり、天然型セラミドとしては好ましくは0.05質量%以下である。また、疑似セラミド類として好ましくは0.06質量%以下である。
【0018】
本発明における(b)非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。本発明の非イオン性界面活性剤は、付加モル数によって限定されないが、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば付加モル数は40モル以上80モル以下のものが挙げられ、40モルまたは60モルが好ましく、より好ましくは60モルである。ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロールとしては、ポリオキシエチレン(5)フィトステロール,ポリオキシエチレン(10)フィトステロール,ポリオキシエチレン(20)フィトステロール,ポリオキシエチレン(30)フィトステロール,ポリオキシエチレン(25)フィトスタノール,ポリオキシエチレン(30)コレスタノール等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルが挙げられ、好ましくはポリオキシエチレンオレイルエーテルである。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテルが挙げられる。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキイソステアレート等が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)が挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール・水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルのうち、好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、より好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであり、更に好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマ
シ油であり、最も好ましくは付加モル数60のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。
【0019】
界面活性剤は、水などで希釈されて市販される場合があるが、本明細書において(b)非イオン性界面活性剤は、特に断りのない限り界面活性剤そのものの化粧水全量に対する質量%として示される。
(b)非イオン性界面活性剤の配合量は、好ましくは0.1−1.0質量%であり、より好ましくは0.4−1.0質量%である。いずれも1.0質量%より多く配合すると皮膚刺激性を示し、使用感が悪化し、製剤の安定性を損なう。また、いずれも0.1質量%より少なく配合するとセラミド類を経時的安定に可溶化した透明な化粧水を得ることができない。
【0020】
本発明におけるヘキサンジオールは、1,2-ヘキサンジオールが好ましく、ペンタンジオールは、1,2-ペンタンジオールが好ましい。ヘキサンジオールまたはペンタンジオールの配合量は、好ましくは0.1−5.0質量%であり、より好ましくはヘキサンジオール0.1−2.0質量%、ペンタンジオールは0.5−5.0質量%であり、更に好ましくはヘキサンジオール0.8−1.0質量%、ペンタンジオール0.5−2.0質量%である。いずれも5.0質量%より多く配合すると皮膚刺激性を示し、製剤の安定性を損なう。また、いずれも0.1質量%より少なく配合するとセラミド類を経時安定的に可溶化することができない。
本発明における水は、本発明における化粧水の全体を100質量%とし、a)セラミド類、(b)非イオン性界面活性剤0.1−1.0質量%および(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジール0.1−5.0質量%の残部であり、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
【0021】
本発明の化粧水は、上記必須成分のほかに本発明の効果を損なわない範囲で化粧品、医薬部外品などの化粧水に配合できる成分を配合することができる。具体的には、動植物油由来の硬化油、シリコーン系の油相成分、フッ素系の油相成分、レシチンやその誘導体等のグリセロリン脂質、高級アルコール、高級脂肪酸、増粘剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、粉体、顔料、糖、高分子化合物、抗肌荒れ成分、生理活性成分、経皮吸収促進剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、香料等を含むことができる。
【0022】
セラミド類の可溶化という面では、非イオン性界面活性剤よりも可溶化力の強いアニオン界面活性剤の配合が検討されることもあるが、アニオン界面活性剤は洗い流さないタイプの化粧料への配合はその皮膚刺激性から好ましくなく、本発明の化粧水における含有量は1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは含有しないことである。
また、セラミド類の溶解を助けるエタノールをセラミドの配合量を増やすために配合することがあるが、化粧水は洗顔後最初に使用する場合が多く、化粧料の中でも使用頻度が高いこともあり、皮膚への刺激性の問題が生じる可能性が特に懸念されている。そのため、本発明の化粧水において、エタノールの含有量は10.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは含有しないことである。
【0023】
また、化粧水の製品としての防腐性を担保するために配合されることが多い防腐剤は、皮膚への刺激性が問題となっている。防腐剤の中でも特にパラベン類は、溶解しにくい物質であり、非イオン性界面活性剤と共に配合すると、パラベン類が可溶化するため、他に可溶化したい成分を配合する際は、より多くの非イオン性界面活性剤を配合する必要が生じてしまうという問題が起こることがある。更にパラベン類は、界面活性剤の配合量が少ないと凍結後解凍することで析出してしまうという課題がある。また、フェノキシエタノールは、経時的または温度により着色する傾向にあり、透明な化粧水には向かないという課題が生じることがある。そのため、本発明の化粧水は、防腐剤を含有しないことが好ましい。なお、本発明における防腐剤とは、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン等のパラベン類(パラオキシ安息香酸エステル)およびフェノキシエタノールを指す。
また、本発明の化粧水では、その他の可溶化成分はできるだけ含まない方が好ましく、例えば、コレステロール、カンペステロール、シトステロール、スチグマステロール等のステロール類、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸等のリン脂質、デカグリセリンモノステアレート、ペンタグリセリンモノステアレート、デカグリセリンイソステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステルが含まれていないことが望ましい。
【0024】
本発明のおける化粧水とは、化粧水、ローション、水性化粧料、水性化粧用組成物、水系化粧料、水系化粧用組成物のいずれかであればよく、また、医薬部外品の承認申請における製造方法の剤形分類がローションタイプであってもよく、薬事法上の化粧品であっても医薬部外品であってもよい。
本発明における可溶化とは、被可溶化物であるセラミド類が溶液中に分散している状態とは異なり、調製直後に透明であるだけでなく、経時安定性を有し、結晶の析出や濁りを生じないことを指す。そのため、調製時に透明であっても経時的に結晶の析出、濁り、液面の油浮き等が確認できるものは、可溶化していないと判断する。
【0025】
本発明における透明とは、目視による観察だけでなく、明度(L*a*b*表色系におけるL値)が99.0以上、より好ましくは99.4以上である状態を指す。明度とは、色の属性の一つであり、その色の明暗の度合いがを0.0から100.0までで表され、L値が上昇するに従って、より透明となる。分光色彩計により測定することができるが、その他の通常の明度を測定できる方法であれば特に限定されない。
【0026】
本発明における経時安定性とは、調製から0℃で1ヶ月および40℃で1ヶ月経過してもいずれでも結晶の析出や濁りが生じない状態を指す。本発明において、0℃1ヶ月よりも40℃1ヶ月の方が経時安定性を保つことが困難な過酷な条件であり、40℃1ヶ月で経時安定性を有する本発明の化粧水は、いずれも0℃1ヶ月でも経時安定性を有することが確認されている。そのため、40℃1ヶ月の経時安定性を確認することで、0℃1ヶ月と40℃1ヶ月のいずれにおいても経時安定性を確認したと判断することもできる。
【0027】
本発明における、安定的に可溶化した透明な化粧水とは、製造直後に透明であり被可溶化物の溶液中への結晶析出、濁りを生じずに安定であり、その状態が調製時だけでなく経時安定性を有するものであることを指す。具体的には、本発明における可溶化の判定は、目視により可溶化を判定し、色彩計等により測定した明度(L値)から透明性を判定し、それらのいずれの基準も満たしているか否かで行うことができる。目視による判定と明度による判定は、調製直後および40℃1ヶ月後において行うことができ、いずれにおいても基準を満たしているものを可溶化が実現できていると判断することができる。
【0028】
本発明における使用感とは、皮膚への刺激性も含む官能試験により判定することができ、べたつき等の使用にあたって不快な点や課題の有無と皮膚刺激性の有無のうち、いずれもないものを優れた使用感を達成していると判定する。本発明における皮膚刺激性とは、痛みやヒリヒリする刺激であり、その程度は微弱な刺激でも含まれる。使用感および皮膚刺激性の有無は、一般のパネリストや専門のパネリストによる試験で行うことができ、スティンギングテストや貼布試験(パッチテスト)を行い試験結果から判断してもいいし、専門のパネリストによる試験結果から判断してもいい。これらの試験は、被験者の人数が多い方が望ましく、具体的には10人以上であることが望ましい。しかし、使用感の課題や皮膚刺激性が強い対象物については、専門のパネリストの単独での試験でも刺激性を有することを判断することもできる。本発明における化粧水のpHは、(a)セラミド類を可
溶化するという点でpHは4.5〜8.0が好ましい。
【0029】
本発明の化粧水の製造方法は特に限定されず、公知の製法により製造することができる。具体的には、(a)セラミド類、(b)非イオン性界面活性剤、および(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールを加熱して混同した組成物を、加熱した(d)水に加え混合する方法が挙げられる。各成分を混合するにあたり加熱する温度は、80℃以上が好ましく、より好ましくは85℃以上である。また、(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールやその他に配合する成分が酸化や変性をしてしまう確率が高くなるとともに、加熱に要する費用や労力といった経済性からも、水を多く含む組成であるために水が蒸発していくと組成比率が変化してしまうことからも、加熱する温度は高温になり過ぎない方が好ましく、具体的には100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましい。加熱温度の範囲としては、好ましくは80−100℃であり、より好ましくは80-90℃、更に好ましくは85-90℃である。(a)セラミド類、(b)非イオン性界面活性剤、および(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールの混合順は、同時でもよいが、好ましくは(a)セラミド類、および(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールを先に混合し、次いで(b)非イオン性界面活性剤を加える方法である。
【0030】
本発明の化粧水の好ましい態様の例としては、例えば
[1]
(a)天然セラミド類を0.00001−0.15質量%、
(b)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを0.1−1.0質量%、
(c)ヘキサンジオールを0.1−2.0質量%、
(d)水70.0質量%以上
を含有し、(a)が可溶化した透明な化粧水、
[2]
(a)天然型セラミドを0.00001−0.05質量%、
(b)非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを0.4−1.0質量%、
(c)ヘキサンジオールを0.8−1.0質量%、
(d)水70.0質量%以上
を含有し、(a)が可溶化した透明な化粧水、
[3]
(a)ヒト型セラミドを0.00001−0.05質量%、
(b)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを0.1−1.0質量%、
(c)ヘキサンジオールを0.1−1.0質量%、
(d)水70.0質量%以上
を含有し、(a)が可溶化した透明な化粧水、
[4]
(a)セラミド2、セラミド3、セラミド5、またはセラミド6IIを0.00001−0.05質量%、
(b)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を0.4−1.0質量%、
(c)ヘキサンジオールを0.8−1.0質量%、
(d)水70.0質量%以上
を含有し、(a)が可溶化した透明な化粧水、及び
[5]
(a)セラミド2を0.0001−0.15質量%、
(b)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O)を0.4−1.0質量%、
(c)ヘキサンジオールを0.8−1.0質量%、
(d)水を70.0質量%以上
を含有し、(a)が可溶化した透明な化粧水が挙げられる。
【実施例】
【0031】
次に本発明の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1、2、4〜12、参考例3、参考例13、比較例1〜5)
全体で100質量%となる表1に示す各成分を前記製法、具体的には、85-90℃に加熱した(a)セラミド類、および(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールを先に混合し、次いで(b)非イオン性界面活性剤を加え混合し、85-90℃に加熱した(d)水に加え混合する方法で、調製した化粧水の組成と可溶化と使用感の判定結果について表1に示す。(c)ヘキサンジオールまたはペンタンジオールの代わりに、比較例として1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールまたはプロピレングリコールを配合した化粧水も同じ方法で調製した。
可溶化の判定は、目視および明度(L値)により行い、目視判定で「○」および明度判定で「○」または「◎」である化粧水を可溶化が達成できているものとして「○」と判定し、目視判定と明度判定のいずれかまたは両方が「×」である化粧水を可溶化が達成できていないものとして「×」と判定した。
可溶化の判定に用いる明度判定および目視判定は、以下の判定基準で行い、各化粧水の明度(L値)の測定は、株式会社カラーテクノシステム社製の分光色彩計COLOR JP7200Fを用いて、可視光線により行った。
明度判定基準:L値の値で判定する
(◎:99.4以上、○:99.0以上、×:99.0未満)
目視判定基準:濁り、結晶の析出および液面の油浮きの有無で判定する
(○:濁り、結晶の析出および液面の油浮きがいずれもない、
×:濁り、結晶の析出または液面の油浮きの一つ以上がある)
使用感の判定は、皮膚への刺激性を含む官能試験により、べたつき等の使用にあたって不快な点や課題がなく、かつ皮膚刺激性もないものを優れた使用感を達成しているとして「○」と判定し、べたつき等の使用にあたって不快な点や課題、皮膚刺激性のいずれか一つでも生じているものを優れた使用感が達成できていないとして「×」と判定した。なお、調製直後に可溶化を達成できていないものは、使用感の判定を省略した。
【0032】
尚、表中の記号A1〜A3、B1〜B5及びC1〜C5は以下を意味する。
A1:セラミド2(ヒト型セラミド:(2S,3R)−2−オクタデカノイルアミノオクタデカン−1,3−ジオール)
A2:N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・2−オクチルドデシル)(疑似セラミド)
A3:コメヌカ由来のスフィンゴ糖脂質(天然セラミド)
B1:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)
B2:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.)
B3:ポリオキシエチレンオレイルエーテル
B4:ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル
B5:ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)
C1:1,2-ヘキサンジオール
C2:1,2-ペンタンジオール
C3:ジプロピレングリコール
C4:1,3-ブチレングリコール
C5:プロピレングリコール
【表1】
【0033】
表1において、実施例1または参考例3と同量の非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O))を配合し、ヘキサンジオールまたはペンタンジオールの代わりに、同量のジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールを配合した化粧水(比較例1、2、3)では、調製時においてセラミド類が可溶化しなかった。具体的には、1,3−ブチレングリコールを配合した比較例2では白濁が認められ、ジプロピレングリコールまたはプロピレングリコールを配合した比較例1および3では、液面の油浮きが認められた。
非イオン性界面活性剤を1.0質量%より多く配合した化粧水(比較例4、5:2.0質量%、5.0質量%)では、可溶化はできたが、専門のパネリストにより、皮膚刺激性(痛み、ヒリヒリ管)があり、べたつきが多い手触りのものとなり使用感が悪化したことが確認された。また、ヘキサンジオールまたはペンタンジオールを5.0質量%より多く配合した化粧水では、皮膚刺激性があり、べたつき等の使用感の悪化が認められる。
表1で調製した化粧水のpHは、実施例1が5.04、実施例6が7.93、実施例9が6.30、比較例1が4.17、比較例3が4.22であることが確認された。このことから、本発明の化粧水のpHは4.5-8.0が好ましいと考えられる。
【0034】
試験例1
表1で得られた実施例1、2、4〜11、参考例3および比較例1〜5の各組成物について、可溶化の判定に使用した明度判定および目視判定を行うための上記試験結果について、調製直後に行った、明度(L値)、明度判定結果、目視判定結果および可溶化判定結果を表2に示す。
【表2】
表2に示す通り、実施例1、4、6、8、9、10および11並びに参考例3における明度判定は「◎」であり、実施例2、5および7における明度判定は「○」である。本発明におけるセラミド類の可溶化において、実施例2の明度判定から、セラミド類としては天然セラミド類が好ましいと考えられ、実施例5および7の明度判定から、非イオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)(B1)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.)(B2)またはポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル(B4)が好ましいと考えられる。
表1で得られた実施例1、2、56および10並びに参考例3の各組成物について、調製直後および40℃1ヶ月保存後における明度(L値)、明度判定結果、目視判定結果および可溶化判定結果を表3に示す。
【表3】
表3より、可溶化が達成できていると判定されているものは、調製直後だけでなく、40℃ 1ヶ月保存後においても、目視判定および明度判定が可溶化の判定基準を満たしていることが確認された。