(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0027】
<1.基板9>
はじめに、描画装置100にて描画対象とされる基板9(すなわち、位置検出装置140において検出対象とされる基板9)について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、基板9を模式的に示す平面図である。
【0028】
位置検出装置140において対象とされる円形の基板9の面内領域には、前後方向とこれに直交する左右方向とが規定されている。基板9の面内領域には、前後方向に平行な複数のスクライブライン91と、左右方向に平行な複数のスクライブライン91とが交差しあって格子状のラインが形成されている。このスクライブライン91によって囲まれた各矩形領域が、1個のチップに相当するチップ領域92を形成する。つまり、基板9の面内領域には、格子点上にそれぞれ配置された複数のチップ領域92が形成されている。
【0029】
基板9の面内領域の定位置(この実施の形態においては、各チップ領域92内の定位置)には、位置検出に利用可能な1以上のマーク(ターゲットマーク)93が定義されている。すなわち、チップ領域92内には、素子、パッド、バンプや配線等のパターンや、それらを形成するためのフォトレジストパターンが多数形成されているが、それらの中で、前後左右方向について非対称でかつ、チップ領域92内の、撮像部12(後述する)の視野範囲内で唯一に識別可能な、一つのパターンまたは複数のパターンの組み合わせのレイアウトが、マーク(ターゲットマーク)93として選択されている。
【0030】
チップ領域92のレイアウト、および、レイアウトの基準となるチップ領域92(例えば、レイアウトの中央にあるセンターチップ領域92)と基板中心90との位置関係は、設計段階において予め規定されており、マップ情報Mとして管理されている。ただし、ここでいう「基板中心90」とは、基板9のエッジ(外周部)に荒れ等がない理想的な状態における、基板9の主面の幾何学中心を指す。したがって、基板中心90の位置と基板9の回転位置とが判明すれば、マップ情報Mを参照することによって、基板中心90に対する各チップ領域92の位置、ひいては、基板中心90に対する各マーク93の位置が特定できる。
【0031】
位置検出装置140における基板9の位置検出には、予め任意に選択された所定数個(ここでは、4個)のマーク93が用いられる。当該4個のマーク93は、基板中心90から離れている方が好ましい。具体的には、例えば、図示されるように、レイアウト領域の最外周に配置されているチップ領域92内のマーク93であることが好ましい。また、当該4個のマーク93のうち、2つのマーク93は、基板9の前後方向に沿って基板中心90を挟んだ位置付近に形成されており、残りの2つのマーク93は、基板9の左右方向に沿って基板中心90を挟んだ位置付近に形成されていることが好ましい。具体的には、例えば、図示されるように、当該4個のマーク93のうちの2つのマーク93は、基板9の前後中心線に最も近いチップ領域92内のマーク93であることが好ましく、残りの2つのマーク93は、基板9の左右中心線に最も近いチップ領域92内のマーク93であることが好ましい。
【0032】
以下において、位置検出に用いられる4個のマーク93を区別する場合は、基板中心90の後側のマーク93を「第1マーク931」とよび、基板中心90の前側のマーク93を「第2マーク932」とよぶ。また、基板中心90の左側のマーク93を「第3マーク933」とよび、基板中心90の右側のマーク93を「第4マーク934」とよぶ。
【0033】
なお、基板9のエッジには、基板9の向きを識別するための切り欠き94が形成されていてもよい。もっとも、後に明らかになるように、位置検出装置140においては、切り欠き94が形成されていない基板9であっても、その位置を検出することができる。したがって、位置検出装置140にて検出対象とされる基板9には、必ずしも切り欠き94が形成されている必要はない。
【0034】
<2.描画装置100>
<2−1.構成>
次に、位置検出装置140が搭載された描画装置100の構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、描画装置100の概略構成を示す模式図である。
【0035】
描画装置100は、露光用の光(描画光)を照射しつつ描画対象物である基板9(感光材料が塗布された基板9)を走査することによって、基板9に局所的な露光を連続的に行い、これによって、基板9上の感光材料に所望のパターン(例えば、回路パターン)の露光画像を描画する装置である(所謂、直接描画装置、あるいは、直描装置ともいう)。
【0036】
描画装置100は、描画ステージ110と、描画ステージ駆動機構120と、描画ヘッド130とを備える。描画装置100は、さらに、位置検出装置140と、位置検出装置140と描画ステージ110との間で基板9の受け渡しを行う搬送装置150とを備える。また、これら各部を制御する制御部160を備える。
【0037】
<描画ステージ110>
描画ステージ110は、平板状の外形を有し、その上面に描画対象物である基板9を水平姿勢に載置して保持する保持部である。描画ステージ110の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を形成することによって、描画ステージ110に載置された基板9を描画ステージ110の上面に固定保持することができるようになっている。
【0038】
<描画ステージ駆動機構120>
描画ステージ駆動機構120は、描画ステージ110を基台1001に対して移動させることによって、描画ステージ110を描画ヘッド130に対して相対的に移動させる機構である。描画ステージ駆動機構120は、具体的には、例えば、描画ステージ110を、主走査方向、主走査方向と直交する副走査方向、および、回転方向(鉛直軸周りの回転方向)の各方向にそれぞれ移動させる。
【0039】
<描画ヘッド130>
描画ヘッド130は、光源131と変調部132とを含んで構成され、パターンデータに応じて光に変調を施して描画光Lを生成する。そして、描画ヘッド130は、描画ステージ110に保持された基板Wに向けて描画光Lを照射しながら、当該基板W上を走査して(すなわち、基板Wに対して相対的に移動して)、当該基板Wにパターンを描画する。ただし、「パターンデータ」とは、光を照射するべき基板W上の位置情報が画素単位で記録されたデータである。パターンデータは、具体的には、例えば、CAD(Computer Aided Design)を用いて生成されたパターンの設計データを、ラスタライズすることにより生成される。
【0040】
光源131は、例えばレーザ光を出射する。光源131から出射された光は、照明光学系(図示省略)を介して強度分布が均一な線状の光(光束断面が線状の光であるラインビーム)とされた上で、変調部132に入射する。
【0041】
変調部132は、光源131から出射された光に、パターンデータに応じた空間変調を施す。ただし、光を空間変調させるとは、具体的には、光の空間分布(振幅、位相、および偏光等)を変化させることを意味する。変調部132は、例えば、固定リボンと可動リボンとが一次元に配設された回折格子型の空間光変調器であるGLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(「GLV」は登録商標)を含む構成としてもよいし、DMD(Digital Micromirror Device:デジタルマイクロミラーデバイス)のような、変調単位であるマイクロミラーが二次元的に配列された空間光変調器を含む構成としてもよい。また例えば、ミラーのような変調単位が一次元に配列されている空間光変調器を含む構成としてもよい。
【0042】
例えば、変調部132として回折格子型の空間光変調器を用いた場合、この空間光変調器は、複数の変調単位を一次元に並べた構成となる。各変調単位は、その動作が電圧のオン/オフで制御されるものであり、電圧状態の切り換えによって、パターンの描画に寄与する必要光(例えば、0次回折光)を出射する状態と、パターンの描画に寄与しない不要光(例えば、0次以外の次数の回折光)を出射する状態とで切り換えられる。空間光変調器は、複数の変調単位のそれぞれに対して独立に電圧を印加可能なドライバ回路ユニットを含んで構成され、各変調単位の電圧が、独立して切り換え可能とされる。
【0043】
描画ヘッド130においては、光源131から出射されたラインビームが、その線状の光束断面の長幅方向を変調単位の配列方向に沿わせるようにして、一列に配列された複数の変調単位に入射し、制御部160が、パターンデータに応じて各変調単位の状態を切り換える。これによって、各変調単位にて個々に空間変調された光を含む、断面が帯状の描画光Lが形成され、基板Wに向けて出射されることになる。つまり、描画ヘッド130から出射される描画光Lは、パターンデータに記述されたパターンを表現したものとなっている。上述したとおり、描画ヘッド130は、描画ステージ110に載置された基板Wに向けてこの描画光Lを照射しながら、当該基板W上を走査する。これによって、当該基板Wにパターンが描画される。
【0044】
<位置検出装置140>
位置検出装置140は、基板9の位置を検出する装置であり、描画処理に先だって、基板9の位置を検出する。位置検出装置140については、後に具体的に説明する。
【0045】
<搬送装置150>
搬送装置150は、基板9を支持するための2本のハンド151,151と、ハンド151,151を独立に移動させるハンド駆動機構152とを備える。各ハンド151は、ハンド駆動機構152によって駆動されることにより進退移動および昇降移動されて、描画ステージ110と位置検出装置140との間での基板9の受け渡しを行う。
【0046】
<制御部160>
制御部160は、描画装置100が備える各部と電気的に接続されており、各種の演算処理を実行しつつ描画装置100の各部の動作を制御する。制御部160は、例えば、一般的なコンピュータにより構成することができる。制御部160の記憶装置には、パターンデータが格納されており、制御部160は、上述したとおり、パターンデータに基づいて描画ヘッド130を制御して、これに描画光Lを生成させる。
【0047】
<2−2.動作>
描画装置100の動作について
図3を参照しながら説明する。
図3は、描画装置100において行われる一連の処理の流れを示す図である。以下に説明する一連の動作は、制御部160の制御下で行われる。
【0048】
まず、搬送装置150が、カセット載置部(図示省略)に載置されたカセットから未処理の基板9を取り出して描画装置100に搬入する(ステップS11)。
【0049】
搬送装置150は、描画装置100内に搬入された基板9を、まず、位置検出装置140のステージ11に載置する。位置検出装置140は、ステージ11に載置された基板9の位置を検出する(プリアライメント)(ステップS12)。位置検出装置140は、具体的には、ステージ11に載置された基板9の基板中心90の位置を、位置検出装置140の座標系(ひいては、描画装置100の座標系)において特定する。さらに、基板9が正立状態におかれるようにその回転位置を補正する。位置検出装置140において実行される処理については、後に説明する。
【0050】
続いて、搬送装置150が、位置検出装置140から基板9を搬出してこれを描画ステージ110に載置する(ステップS13)。ただし、搬送装置150は、ステージ11に載置された基板9をハンド151で取り上げる際に、ステップS12で特定された基板中心90の位置情報に応じてハンド151の位置を調整して、ハンド151に対して定められた位置(例えば、ハンド151の中心)を基板中心90と一致させるようにして基板9を取り上げる。そして、ハンド151の中心を、描画ステージ110の中心と一致させるようにして、ハンド151上に保持された基板9を描画ステージ110に載置する。これによって、描画ステージ110の中心に基板中心90が位置合わせされた状態で、描画ステージ110に基板9が載置されることになる。つまり、描画装置100においては、搬送装置150が、位置検出装置140が特定した基板9の位置に基づいて、描画ステージ110における基板9の載置位置を調整する位置調整部として機能する。
【0051】
描画ステージ110は、その上面に基板9が載置されると、これを吸着保持する。基板9が描画ステージ110に吸着保持された状態となると、描画ステージ110に載置された基板9の精密な位置合わせ(ファインアライメント)が行われる(ステップS14)。具体的には、例えば、撮像部(図示省略)で基板9上のアライメントマークを撮像してその位置を検出して、当該位置に基づいて基板9の位置を精密に位置合わせする。
【0052】
ファインアライメントが終了すると、基板9に対するパターンの描画処理が行われる(ステップS15)。描画処理においては、描画ステージ駆動機構120が、描画ステージ110を主走査方向に沿って移動させる(主走査)とともに、描画ヘッド130が、基板9に向けて描画光Lを断続的に照射する。したがって、1回の主走査が終了すると、基板9上の帯状領域(主走査方向に沿って延在する帯状領域)にパターンの描画が行われる。1回の主走査が終了すると、描画ステージ駆動機構120は、描画ステージ110を、副走査方向に沿って、例えば、帯状領域の幅に相当する距離だけ移動させる(副走査)。副走査が終了すると、再び描画光Lの照射を伴う主走査が行われる。これによって、先にパターンが描画されている帯状領域の隣の帯状領域に、パターンの描画が行われる。描画光Lの照射を伴う主走査、および、副走査が、定められた回数だけ繰り返して行われることによって、基板9の表面内の描画対象領域の全体にパターンが描画されることになる。
【0053】
描画対象領域の全体にパターンが描画されると、搬送装置150が処理済みの基板9を搬出する(ステップS16)。これによって、当該基板9に対する一連の処理が終了する。
【0054】
<3.位置検出装置140>
位置検出装置140の構成について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、位置検出装置140の概略構成を模式的に示す図である。位置検出装置140は、基板9の位置を検出する装置であり、基板9が載置されるステージ11と、ステージ11に載置された基板9を撮像する撮像部12と、ステージ11と撮像部12とを相対的に移動させる駆動機構13と、これら各部を制御する制御部16とを主として備える。
【0055】
<ステージ11>
ステージ11は、平板状の外形を有し、その上面に基板9を水平姿勢に載置して保持する保持部である。ステージ11の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を形成することによって、ステージ11に載置された基板9をステージ11の上面に固定保持することができるようになっている。
【0056】
<撮像部12>
撮像部12は、ステージ11に載置された基板9の上面を撮像する機構である。撮像部12は、例えばLEDにより構成される光源と、鏡筒と、対物レンズと、エリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成されるCCDイメージセンサとから構成することができる。例えば、撮像部12は、画素数が「640ピクセル×480ピクセル」程度であり、解像度が「10〜15μm/ピクセル」程度であればよい。この場合、撮像部12の視野は、一辺が数ミリメートル(mm)程度の領域(解像度が10μm/ピクセルの場合、「6.4mm×4.8mm」の領域)となる。撮像部12は、制御部16からの指示に応じて、ステージ11に載置された基板9を撮像して、基板9の面内領域の一部を撮像した二次元の画像データ(多階調の画像データ)を取得する。なお、撮像部12は、基板9を透過した赤外光によって基板9の下面(裏面)のパターンを撮像するものであってもよい。
【0057】
<駆動機構13>
駆動機構13は、制御部16により制御されて、ステージ11と撮像部12とをθ軸およびR軸のそれぞれに沿って相対的に移動させる機構である。駆動機構13は、具体的には、例えば、ステージ11をθ軸に沿って回動させるθ駆動機構14と、撮像部12をR軸に沿って移動させるR駆動機構15とを備える。位置検出装置140には、その基台1401に対してXY座標系(基台1401の上面内に規定される直交2軸の各方向(X方向およびY方向)により規定される座標系)が規定されており、これらXY座標系の原点は、例えば、ステージ11の載置面の中心111と一致しているとする。いま、撮像部12が駆動されるR軸は、ステージ11の中心111を通る軸であり、この実施の形態においては、R軸はX軸と一致しているとする。また、θ軸は、回転軸A(ステージ11の中心111を通るとともにステージ11の載置面に垂直な回転軸A)を中心とした回転方向である。
【0058】
<制御部16>
制御部16は、位置検出装置140が備える各部と電気的に接続されており、各種の演算処理を実行しつつ位置検出装置140の各部の動作を制御する。なお、制御部16は、例えば、描画装置100の制御部160において実現されてもよい。
【0059】
図5は、制御部16のハードウエア構成を示すブロック図である。制御部16は、例えば、CPU161、ROM162、RAM163、記憶装置164等がバスライン165を介して相互接続された一般的なコンピュータによって構成されている。ROM162は基本プログラム等を格納しており、RAM163はCPU161が所定の処理を行う際の作業領域として供される。記憶装置164は、フラッシュメモリ、あるいは、ハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。記憶装置164にはプログラムPが格納されており、このプログラムPに記述された手順に従って、主制御部としてのCPU161が演算処理を行うことにより、各種機能が実現されるように構成されている。プログラムPは、通常、予め記憶装置164等のメモリに格納されて使用されるものであるが、CD−ROMあるいはDVD−ROM、外部のフラッシュメモリ等の記録媒体に記録された形態(プログラムプロダクト)で提供され(あるいは、ネットワークを介した外部サーバからのダウンロードなどにより提供され)、追加的または交換的に記憶装置164等のメモリに格納されるものであってもよい。なお、制御部16において実現される一部あるいは全部の機能は、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
【0060】
また、制御部16では、入力部166、表示部167、通信部168もバスライン165に接続されている。入力部166は、各種スイッチ、タッチパネル等により構成されており、オペレータから各種の入力設定指示を受け付ける。表示部167は、液晶表示装置、ランプ等により構成されており、CPU161による制御の下、各種の情報を表示する。通信部168は、LAN等を介したデータ通信機能を有する。さらに、制御部16では、バスライン165にインターフェース169a,169bが接続されている。インターフェース169aは撮像部12と、インターフェース169bは駆動機構13と、それぞれ接続されており、これら各部12,13との情報の授受を行う。
【0061】
記憶装置164には、検出対象となる基板9のマップ情報Mが格納されている。また、記憶装置164には、スクライブライン91、マーク93等のパターンマッチングに用いられるテンプレート画像データが格納されている。
【0062】
<4.位置検出部20>
位置検出装置140においては、ステージ11上の基板9の位置を検出する位置検出部20が実現される。位置検出部20は、制御部16において、例えばCPU161がプログラムPに従って所定の演算処理を行うことによって、あるいは、専用の論理回路等でハードウエア的に実現される。
【0063】
位置検出部20は、
図6に示されるように、回転位置補正部21と、仮中心位置特定部22と、仮マーク位置特定部23と、マーク検出部24と、位置特定部25とを備える。
【0064】
以下において、
図7を参照しながら、位置検出部20の制御下で実行される処理について説明する。
図7は、位置検出部20の制御下で実行される処理の全体の流れを示す図である。
【0065】
<4−1.回転位置の仮補正>
検出対象とされる基板9が、搬送装置150によってステージ11に載置されると、当該基板9の位置を検出する処理が開始される。まず、回転位置補正部21が、基板9のスクライブライン91の少なくとも一部分が、X軸あるいはY軸と平行になるように、基板9の回転位置を補正(仮補正)する(ステップS1)。
【0066】
ステップS1の処理について、
図8〜
図10を参照しながら具体的に説明する。
図8は、ステップS1の処理の流れを示す図であり、
図9、
図10は、当該処理を説明するための図である。なお、以下に参照する図においては、説明をわかりやすくするために、円形の周縁に切り欠き94が形成されている基板9が検出対象とされているが、検出対象となる基板9には切り欠き94が形成されていなくともよい。
【0067】
回転位置補正部21は、まず、ステージ11上の基板9に形成されているスクライブライン91を検出する(ステップS101)。具体的には、回転位置補正部21は、R駆動機構15を制御して、撮像部12を、その視野内に基板9上のスクライブライン91が少なくとも一本は入るような位置に移動させる。そして、回転位置補正部21は、撮像部12に、基板9の面内領域を撮像させる。撮像データが取得されると、回転位置補正部21は、当該撮像データを解析して、スクライブライン91を検出する。スクライブライン91の検出は、例えば、撮像した画像に対してエッジを抽出する画像処理を施し、エッジを細線化して、線分として抽出することによって行えばよい。
【0068】
1以上のスクライブライン91が検出されると、回転位置補正部21は、検出されたスクライブライン91がX軸(Y軸であってもよい)となす角度αを算出する。スクライブライン91が複数本検出された場合は、平均化などの統計処理により角度αを求める。そして、回転位置補正部21は、得られた角度を必要回転量αとして記憶する(ステップS102)。
【0069】
必要回転量αが取得されると、回転位置補正部21は、θ駆動機構14を制御して、ステージ11を当該必要回転量αだけ、−θ方向に回動させる(ステップS103)。これによって、基板9上のスクライブライン91の少なくとも一部分が、X軸あるいはY軸と平行な状態となる(
図10に示される状態)。以上で、回転位置の仮補正が完了する。
【0070】
いま、基板9の前後方向に沿うスクライブライン91がY軸と平行であり、かつ、基板9の前方向が−Y方向と一致するような基板9の状態を「正立状態」とよぶとする。回転位置が仮補正された後の基板9は、正立状態から、0度、90度、180度、あるいは、270度、回転した状態となっている。すなわち、仮補正後の基板9の正立状態からの回転量は、0度、90度、180度、あるいは、270度のいずれかに絞られている。つまり、回転位置が仮補正されることによって、基板9の回転位置が4個に絞り込まれることになる。
【0071】
なお、上述したとおり、ここでは、回転位置を仮補正するにあたって、1個の撮像データから必要回転量αを取得している。ここで、撮像部12の視野は、一辺が数ミリメートル程度の領域であり、基板9の直径(例えば、300mm)に対して小さいため、当該算出された角度αには誤差が含まれている可能性がある。このため、仮補正後の基板9は、理想的な状態(すなわち、スクライブライン91が、X軸(あるいは、Y軸)と完全に平行となっている状態)から、微小角度Φだけ回転ずれを生じている可能性がある。以下において、この角度Φを「回転誤差Φ」という。
【0072】
<4−2.仮中心Qの特定>
ステップS1の処理が完了すると、続いて、仮中心位置特定部22が、基板9のエッジ位置に基づいて、基板の仮中心Qの位置を特定する(ステップS2)。
【0073】
ステップS2の処理について、
図11および
図12を参照しながら具体的に説明する。
図11は、ステップS2の処理の流れを示す図であり、
図12は、当該処理を説明するための図である。
【0074】
仮中心位置特定部22は、まず、基板9のエッジにおける例えば3個の領域を、対象領域51,52,53として設定する(ステップS201)。ただし、各対象領域51,52,53は、基板9の周方向に沿って満遍なく散らばっていることが好ましい。基板9に切り欠き94が存在していない場合、任意の領域を対象領域とすることができる。したがって、この場合、仮中心位置特定部22は、例えば、+X方向の角度を「θ=0度」として、「θ=0度」のエッジ位置を含む領域を第1の対象領域51とし、「θ=120度」のエッジ位置を含む領域を第2の対象領域52とし、「θ=240度」のエッジ位置を含む領域を第3の対象領域53とする。
【0075】
一方、基板9に切り欠き94が存在している場合、仮中心位置特定部22は、切り欠き94の形成位置と重ならないように対象領域51,52,53を設定する。この段階(すなわち、基板9の回転位置が仮補正されている段階)では、基板9の回転角度は4個に絞られており、切り欠き94が存在し得る領域も、4個に絞られる。そこで、仮中心位置特定部22は、基板9に切り欠き94が存在している場合、切り欠き94が存在し得る4個の領域(すなわち、基板9の正立状態からの回転量が0度の場合に切り欠き94が存在する領域50a、基板9の正立状態からの回転量が90度の場合に切り欠き94が存在する領域50b、基板9の正立状態からの回転量が180度の場合に切り欠き94が存在する領域50c、および、基板9の正立状態からの回転量が270度の場合に切り欠き94が存在する領域50d)を避けて、対象領域51,52,53を設定する。具体的には、例えば、切り欠き94が基板9の前側に形成されている場合、+X方向の角度を「θ=0度」として、「θ=45度」のエッジ位置を含む領域を第1の対象領域51とし、「θ=150度」のエッジ位置を含む領域を第2の対象領域52とし、「θ=300度」のエッジ位置を含む領域を第3の対象領域53とすればよい。
【0076】
続いて、仮中心位置特定部22は、θ駆動機構14を制御してステージ11を回転させて、撮像部12の移動軸上に、第1の対象領域51が配置された状態とする。続いて、仮中心位置特定部22は、撮像部12に基板9を撮像させ、取得された撮像データを解析して、基板9のエッジを検出する。エッジの検出は、例えば、基板9と基板9以外の領域との輝度差等を利用して行えばよい。エッジが検出されると、仮中心位置特定部22は、当該エッジの位置を特定して、第1エッジ情報として記憶する(ステップS202)。
【0077】
なお、基板中心90がステージ11の中心からずれている場合等においては、撮像部12の視野内に基板9のエッジが捉えられず、撮像データからエッジが検出されない場合がある。この場合、仮中心位置特定部22は、撮像部12をR軸に沿って移動させた上で、もう一度、撮像部12に基板9を撮像させる。そして、取得された撮像データを解析してエッジを検出する。つまり、エッジが検出されるまで、撮像領域をR軸に沿って移動させていく。
【0078】
第1エッジ情報が取得されると、仮中心位置特定部22は、θ駆動機構14を制御してステージ11を回転させて、撮像部12の移動軸上に、第2の対象領域52が配置された状態とする。続いて、仮中心位置特定部22は、撮像部12に基板9を撮像させ、取得された撮像データを解析して、基板9のエッジを検出する。エッジが検出されると、仮中心位置特定部22は、当該エッジの位置を特定して、第2エッジ情報として記憶する(ステップS203)。
【0079】
第2エッジ情報が取得されると、仮中心位置特定部22は、θ駆動機構14を制御してステージ11を回転させて、撮像部12の移動軸上に、第3の対象領域53が配置された状態とする。続いて、仮中心位置特定部22は、撮像部12に基板9を撮像させ、取得された撮像データを解析して、基板9のエッジを検出する。エッジが検出されると、仮中心位置特定部22は、当該エッジの位置を特定して、第3エッジ情報として記憶する(ステップS204)。
【0080】
3個のエッジ情報が取得されると、仮中心位置特定部22は、例えば、3個のエッジ情報から規定される3個のエッジ位置の全てから等しい距離にある位置を算出し、これを基板9の仮中心Qの位置として取得する(ステップS205)。ここで、仮中心Qとは、基板中心90から一定の誤差範囲内(具体的には、撮像部12の視野のサイズ以下の誤差範囲内、換言すると、例えば、仮中心Qを撮像部12の視野の中心に捉えた場合に、視野内に基板中心90が捉えられるような誤差範囲内)にある任意の位置である。つまり、仮中心Qの位置は、基板中心90の位置をおおまかに表す位置であるといえる。基板9のエッジは荒れている、あるいは、欠けている可能性等があるため、エッジ位置に基づいて特定された基板中心は、真の基板中心90からずれた位置にある可能性があるが、そのずれは上記の誤差範囲と比べると十分小さい(例えば、撮像部12の視野は、基板9の面内で一辺が数ミリメートル程度の領域であるところ、エッジの荒れは、数百ミクロン以内の凹凸であることが多い)。したがって、エッジ位置に基づいて特定された基板中心を、仮中心Qの位置として取得することができる。
【0081】
<4−3.候補位置71a,71b,71c,71dの特定>
上述したとおり、基板9上のマーク93と基板中心90との位置関係は、記憶装置144に格納されているマップ情報Mから特定できる。ここで、基板中心90が仮中心Qにあると仮定した場合に、マップ情報Mから規定されるマーク93の位置を、当該マーク93の「仮マーク位置」とよぶ。
【0082】
ステップS2の処理が完了すると、続いて、仮マーク位置特定部23が、4個のマーク93から任意に選択された1つのマーク93(ここでは、例えば、第1マーク931とする)の仮マーク位置を特定する。ただし、この段階(すなわち、基板9の回転位置が仮補正されている段階)では、基板9の回転位置が4個にまで絞られているものの、一意には特定されていない。したがって、第1マーク931の仮マーク位置も、4個にまで絞られているものの、一意には特定されていない。すなわち、第1マーク931の仮マーク位置となり得る位置が4個存在する。そこで、仮マーク位置特定部23は、仮補正後の基板9の面内において、第1マーク931の仮マーク位置となり得る4個の位置(以下「候補位置」ともいう)71a,71b,71c,71dを特定する(ステップS3)。
【0083】
具体的には、仮マーク位置特定部23は、ステップS2で特定された仮中心Qの位置とマップ情報Mとに基づいて、基板9の正立状態からの回転量が0度と仮定した場合の、第1マーク931の仮マーク位置(第1候補位置)71a、基板9の回転量が90度と仮定した場合の、第1マーク931の仮マーク位置(第2候補位置)71b、基板9の正立状態からの回転量が180度と仮定した場合の、第1マーク931の仮マーク位置(第3候補位置)71c、および、基板9の正立状態からの回転量が270度と仮定した場合の、第1マーク931の仮マーク位置(第4候補位置)71dを、特定する(
図13参照)。
【0084】
<4−4.第1マーク931の位置検出>
ステップS3の処理が完了すると、続いて、マーク検出部24が、第1マーク931の位置を検出する(ステップS4)。具体的には、マーク検出部24は、撮像部12に、第1マーク931が写っている撮像データが得られるまで、4個の候補位置71a,71b,71c,71dを順に撮像させ、当該撮像データ(すなわち、第1マーク931が写っている撮像データ)から第1マーク931の位置を検出する。
【0085】
ステップS4の処理について、
図14および
図15を参照しながらより具体的に説明する。
図14は、ステップS4の処理の流れを示す図であり、
図15は、当該処理を説明するための図である。
【0086】
マーク検出部24は、まず、θ駆動機構14およびR駆動機構15を制御して、撮像部12を、その視野内(好ましくは、視野の中心)に第1候補位置71aが捉えられるような位置M1に移動させる。そして、撮像部12に、第1候補位置71aを撮像させる(ステップS401)。
【0087】
第1候補位置71aの撮像データが取得されると、マーク検出部24は、当該撮像データを解析して、第1マーク931を検出する。マーク93の検出は、例えば、記憶装置144に記憶されているテンプレート画像データとのパターンマッチングによって行えばよい。ただし、撮像データ内にマーク93が存在していても、これが所期の姿勢から回転した姿勢である場合、マーク93は検出されなかったと判断する。つまり、撮像データ内に、所期の姿勢のマーク93が検出された場合に限って、マーク93が検出されたと判断する。
【0088】
上述したとおり、仮中心Qは、実際の基板中心90から微小にずれている可能性があるため、マーク93は、その仮マーク位置から微小にずれた位置に存在している可能性がある。しかしながら、撮像部12の視野はこのずれ量に比べて十分大きい。したがって、第1候補位置71aの撮像データから第1マーク931が検出されなかった場合(すなわち、当該撮像データに第1マーク931が写っていない場合)、基板9の正立状態からの回転量は0度ではないと判断することができる。
【0089】
第1候補位置71aの撮像データから第1マーク931が検出された場合(ステップS402でYES)、基板9の正立状態からの回転量は0度であるとわかる。撮像データから第1マーク931が検出されると、マーク検出部24は、当該第1マーク931の位置を特定して、これを第1マーク検出位置D1として記憶する(ステップS403)。
【0090】
一方、第1候補位置71aの撮像データから第1マーク931が検出されなかった場合(ステップS402でNO)、上述したとおり、基板9の正立状態からの回転量は0度ではないと判断できる。この場合、マーク検出部24は、撮像部12を、その視野内(好ましくは、視野の中心)に第2候補位置71bが捉えられるような位置M2に移動させる。そして、撮像部12に、第2候補位置71bを撮像させる(ステップS404)。
【0091】
第2候補位置71bの撮像データが取得されると、マーク検出部24は、当該撮像データを解析して、第1マーク931を検出する。
【0092】
第2候補位置71bの撮像データから第1マーク931が検出された場合(ステップS405でYES)、基板9の正立状態からの回転量は90度であるとわかる。撮像データから第1マーク931が検出されると、マーク検出部24は、当該第1マーク931の位置を特定して、これを第1マーク検出位置D1として記憶する(ステップS406)。
【0093】
一方、第2候補位置71bの撮像データから第1マーク931が検出されなかった場合(ステップS405でNO)、基板9の正立状態からの回転量は90度ではないと判断できる。この場合、マーク検出部24は、撮像部12を、その視野内(好ましくは、視野の中心)に第3候補位置71cが捉えられるような位置に移動させる。そして、撮像部12に、第3候補位置71cを撮像させる(ステップS407)。
【0094】
第3候補位置71cの撮像データが取得されると、マーク検出部24は、当該撮像データを解析して、第1マーク931を検出する。
【0095】
第3候補位置71cの撮像データから第1マーク931が検出された場合(ステップS408でYES)、基板9の正立状態からの回転量は180度であるとわかる。撮像データから第1マーク931が検出されると、マーク検出部24は、当該第1マーク931の位置を特定して、これを第1マーク検出位置D1として記憶する(ステップS409)。
【0096】
一方、第3候補位置71cの撮像データから第1マーク931が検出されなかった場合(ステップS408でNO)、基板9の正立状態からの回転量は180度ではないと判断できる。すなわち、基板9の正立状態からの回転量は270度であるとわかる。この場合、マーク検出部24は、撮像部12を、その視野内(好ましくは、視野の中心)に第4候補位置71dが捉えられるような位置に移動させる。そして、撮像部12に、第4候補位置71dを撮像させる(ステップS410)。
【0097】
第4候補位置71dの撮像データが取得されると、マーク検出部24は、当該撮像データを解析して、第1マーク931を検出する。撮像データから第1マーク931が検出されると、マーク検出部24は、当該第1マーク931の位置を特定して、これを第1マーク検出位置D1として記憶する(ステップS411)。
【0098】
以上の処理が行われることによって、第1マーク931の検出位置が取得されるとともに、基板9の正立状態からの回転量が一意に特定される。
【0099】
<4−5.仮マーク位置72,73,74の特定>
ステップS4の処理が完了すると、続いて、仮マーク位置特定部23が、残りの3個のマーク93(すなわち、第2マーク932、第3マーク933、および、第4マーク934)各々の仮マーク位置72,73,74を特定する(ステップS5)。ただし、この段階(すなわち、基板9の正立状態からの回転量が一意に特定されている段階)では、各マーク932,933,934の仮マーク位置となり得る位置が1個に絞られる。
【0100】
具体的には、仮マーク位置特定部23は、ステップS2で特定された仮中心Qの位置、マップ情報M、および、ステップS4で特定された基板9の回転量に基づいて、第2マーク932の仮マーク位置72、第3マーク933の仮マーク位置73、および、第4マーク934の仮マーク位置74を特定する(
図16参照)。
【0101】
<4−6.残りのマーク932,933,934の位置検出>
ステップS5の処理が完了すると、続いて、マーク検出部24が、残りの3個のマーク932,933,934各々の位置を検出する(ステップS6)。
【0102】
ステップS6の処理について、
図17および
図18を参照しながら説明する。
図17は、ステップS6の処理の流れを示す図であり、
図18は、当該処理を説明するための図である。
【0103】
マーク検出部24は、まず、θ駆動機構14およびR駆動機構15を制御して、撮像部12を、その視野内(好ましくは、視野の中心)に第2マーク932の仮マーク位置72が捉えられるような位置M20に移動させる。そして、撮像部12に、当該仮マーク位置72を撮像させる(ステップS601)。
【0104】
仮マーク位置72の撮像データが取得されると、マーク検出部24は、当該撮像データを解析して、第2マーク932を検出する。撮像データから第2マーク932が検出されると、マーク検出部24は、当該第2マーク932の位置を特定して、これを第2マーク検出位置D2として記憶する(ステップS602)。上述したとおり、仮中心Qは、実際の基板中心90から微小にずれている可能性があるため、第2マーク932は、その仮マーク位置72から微小にずれた位置に存在している可能性がある。しかしながら、撮像部12の視野はこのずれ量に比べて十分大きい。したがって、したがって、意図されないエラー等が生じていない限り、第2マーク932は、その仮マーク位置72の撮像データから必ず検出される。第3マーク933、第4マーク934についても同様である。
【0105】
続いて、マーク検出部24は、θ駆動機構14およびR駆動機構15を制御して、撮像部12を、その視野内(好ましくは、視野の中心)に第3マーク933の仮マーク位置73が捉えられるような位置M30に移動させる。そして、撮像部12に、当該仮マーク位置73を撮像させる(ステップS603)。
【0106】
仮マーク位置73の撮像データが取得されると、マーク検出部24は、当該撮像データを解析して、第3マーク933を検出する。撮像データから第3マーク933が検出されると、マーク検出部24は、当該第3マーク933の位置を特定して、これを第3マーク検出位置D3として記憶する(ステップS604)。
【0107】
続いて、マーク検出部24は、θ駆動機構14およびR駆動機構15を制御して、撮像部12を、その視野内(好ましくは、視野の中心)に第4マーク934の仮マーク位置74が捉えられるような位置M40に移動させる。そして、撮像部12に、当該仮マーク位置74を撮像させる(ステップS605)。
【0108】
仮マーク位置74の撮像データが取得されると、マーク検出部24は、当該撮像データを解析して、第4マーク934を検出する。撮像データから第4マーク934が検出されると、マーク検出部24は、当該第4マーク934の位置を特定して、これを第4マーク検出位置D4として記憶する(ステップS606)。
【0109】
以上の処理が行われることによって、第2マーク932、第3マーク933、および、第4マーク934の位置が、マーク検出位置D2,D3,D4として取得される。一方で、先に行われているステップS4の処理によって、第1マーク931の位置が、マーク検出位置D1として取得されている。つまり、ステップS6までの処理が完了すると、4個のマーク931,932,933,934の位置が、4個のマーク検出位置D1,D2,D3,D4として取得されることになる。
【0110】
<4−7.基板9の位置を特定>
ステップS6の処理が完了すると、続いて、位置特定部25が、4個のマーク検出位置D1,D2,D3,D4に基づいて、基板9の位置(具体的には、基板中心90の位置)を特定する(
図19参照)(ステップS7)。
【0111】
ステップS7の処理について説明する。以下の説明では、数式をわかりやすくするために、第1マーク検出位置D1および第2マーク検出位置D2はX軸上にあり、第3マーク検出位置D3および第4マーク検出位置D4はY軸上にあるとする。
【0112】
i.回転誤差Φの算出
基板9の中心位置は、第1マーク検出位置D1の座標を用いて次の(式1x)(式1y)のように表される。ただし、ここでは、第1マーク検出位置D1を用いて表される基板9の中心位置P
1を「P
1=(X
1,Y
1)」とし、第1マーク検出位置D1を「D1=(0,L
1)」としている。また、第1マーク検出位置D1の、仮マーク位置(第1マーク931の仮マーク位置)からのずれ量(変位ベクトル)を、「ΔdA=(Ax,Ay)」としている。また、基板9の仮中心Qを「Q=(Qx,Qy)」とし、回転誤差Φを「Φ」としている。
【0113】
X
1=Qx+L
1(−cosΦ+1)+Ax ・・・(式1x)
Y
1=Qy−L
1sinΦ+Ay ・・・(式1y)
一方、基板9の中心位置は、第2マーク検出位置D2の座標を用いて次の(式2x)(式2y)のように表される。ただし、ここでは、第2マーク検出位置D2を用いて表される基板9の中心位置P
2を「P
2=(X
2,Y
2)」とし、第2マーク検出位置D2を「D2=(0,L
2)」としている。また、第2マーク検出位置D2の、仮マーク位置(第2マーク932の仮マーク位置72)からのずれ量を、「ΔdB=(Bx,By)」としている。
【0114】
X
2=Qx+L
2(−cosΦ+1)+Bx ・・・(式2x)
Y
2=Qy−L
2sinΦ+By ・・・(式2y)
上記の式には、未知数である回転誤差Φが含まれているため、位置特定部25は、まず、この回転誤差Φを特定する。
【0115】
(式1x)と(式2x)とから、基板9の回転誤差Φは、次の(式3x)のとおりに表される。一方、(式1y)と(式2y)とからは、基板9の回転誤差Φは、次の(式3y)のとおりに表される。
【0116】
Φ=arccos{−(Ax−Bx)/(L
1−L
2)+1} ・・・(式3x)
Φ=arcsin{(Ay−By)/(L
1−L
2)} ・・・(式3y)
ここで、「Ax」「Ay」「Bx」「By」の各々は、誤差を含んだ観測値である。いま、
βx=arccos(α+1) ・・・(式4x)
βy=arcsinα ・・・(式4y)
としたとき、「α」に「Δα」の誤差が含まれているとすると、「βx」の誤差(Δβx)は、αがゼロに近づくと、「Δβx=∞」となる。一方、「βy」の誤差(Δβy)は、αがゼロに近づくと、「Δβy=Δα」となる。
【0117】
以上より、Φが十分小さい場合(Φ≒0)、(式3y)の方が(式3x)よりも、高精度にΦを特定できることがわかる。そこで、位置特定部25は、(式3y)を用いて、基板9の回転誤差Φを算出する。
【0118】
ii.基板9の中心位置の特定
回転誤差Φが特定されると、(式1x)(式1y)から、第1マーク検出位置D1の座標を用いて、基板9の中心位置P
1が算出される。また、(式2x)(式2y)から、第2マーク検出位置D2の座標を用いて、基板9の中心位置P
2が算出される。同様に、第3マーク検出位置D3の座標を用いて基板9の中心位置が算出され、第4マーク検出位置D4の座標を用いて基板9の中心位置が算出される。
【0119】
いま、第1マーク検出位置D1から規定される中心位置P
1のX座標(X
1)と、第2マーク検出位置D2から規定される中心位置P
2のX座標(X
2)との平均値を、基板9の中心位置のX座標(X)として採用したとする。一方、第1マーク検出位置D1から規定される中心位置P
1のY座標(Y
1)と、第2マーク検出位置D2から規定される中心位置P
2のY座標(Y
2)との平均値を、基板9の中心位置のY座標(Y)として採用したとする。すなわち、
X=(X
1+X
2)/2 ・・・(式5x)
Y=(Y
1+Y
2)/2 ・・・(式5y)
この場合、(式5x)が与えるX座標の誤差ΔX、および、(式5y)が与えるY座標の誤差ΔYは、次のとおりとなる。
【0120】
ΔX=(dX/dΦ)ΔΦ ・・・(式6x)
ΔY=(dY/dΦ)ΔΦ ・・・(式6y)
いま、
dX/dΦ={(L
1+L
2)sinΦ}/2 ・・・(式7x)
dY/dΦ=−(L
1+L
2)cosΦ ・・・(式7y)
である。したがって、Φが十分小さい場合(Φ≒0)、
dX/dΦ=0 ・・・(式8x)
dY/dΦ=−(L
1+L
2) ・・・(式8y)
となる。以上より、Φが十分小さい場合(Φ≒0)、(式5x)の方が(式5y)よりも、精度がよいことがわかる。そこで、位置特定部25は、(式5x)を用いて、基板9の中心位置P1のX座標を算出する。すなわち、位置特定部25は、第1マーク検出位置D1から規定される中心位置P
1のX座標(X
1)と、第2マーク検出位置D2から規定される中心位置P
2のX座標(X
2)との平均値を、基板9の中心位置のX座標(X)として取得する。つまり、位置特定部25は、X軸付近の2つのマーク931,932のマーク検出位置D1,D2を用いて、中心位置のX座標を特定する。
【0121】
同様の理由で、位置特定部25は、Y軸付近の2つのマーク933,934のマーク検出位置D3,D4を用いて、中心位置のY座標を特定する。具体的には、位置特定部25は、第3マーク検出位置D3から規定される中心位置のY座標と、第4マーク検出位置D4から規定される中心位置のY座標との平均値を、基板9の中心位置のY座標として取得する。これによって、基板中心90の位置を精度よく特定することができる。
【0122】
以上の処理が行われることによって、基板9の位置(基板中心90の位置および回転位置)が正確に特定される。基板9の位置が特定されると、回転位置補正部21が、基板9が正立状態となるように基板9の回転位置を補正(正補正)する。正補正は、具体的には、回転位置補正部21が、θ駆動機構14を制御して、ステージ11を、基板9の正立状態からの回転量だけ、−θ方向に回動させることによって行われる。なお、この正補正は、基板9の正立状態からの回転量が特定された時点で行われてもよい。
【0123】
<5.効果>
上記の実施の形態によると、格子状のスクライブライン91の一部分が定められた方向と平行になるように基板9の回転位置を仮補正する。そして、仮補正によって回転位置が4個に絞られている基板9の面内において、第1マーク931の仮マーク位置となり得る4個の候補位置71a,71b,71c,71dを特定する。そして、撮像部12に、第1マーク931が写っている撮像データが得られるまで、4個の候補位置71a,71b,71c,71dを順に撮像させ、当該撮像データから第1マーク931の位置を検出する。この構成によると、第1マーク931の位置を迅速に検出できるとともに、第1マーク931の位置が検出されるのと同時に基板9の回転位置も特定できる。また、マークの検出位置に基づいて基板9の位置を特定するので、基板9の位置を十分な精度で特定することができる。したがって、基板9の位置を迅速かつ十分な精度で検出できる。
【0124】
特に、上記の実施の形態では、検出対象となる基板9に向きを識別するための切り欠き94が形成されていない場合、検出対象となる基板9のエッジから信頼できる情報を得られない場合等であっても、基板9の位置を迅速かつ十分な精度で検出できる。
【0125】
また、上記の実施の形態によると、基板9のエッジ位置に基づいて仮中心Qが特定される。したがって、仮中心Qを簡易に特定することができる。
【0126】
また、上記の実施の形態によると、複数のマーク検出位置D1,D2,D3,D4に基づいて基板9の位置を特定する。したがって、上述したとおり、基板9の位置の特定精度を向上させることができる。
【0127】
また、上記の実施の形態によると、基板9の位置の特定に用いられる複数のマーク931,932,933,934のうちの2つのマーク(第1マーク931、および、第2マーク932)が、第1の方向(前後方向)に沿って基板中心90を挟んだ位置に形成されており、別の2つのマーク(第3マーク933、および、第4マーク934)が、第1の方向と直交する第2の方向(左右方向)に沿って基板中心90を挟んだ位置に形成されている。この構成によると、上述したとおり、基板9の位置の特定精度を特に向上させることができる。
【0128】
<6.変形例>
上記の実施の形態においては、4個のマーク931,932,933,934各々の検出位置(マーク検出位置D1,D2,D3,D4)に基づいて基板9の位置を特定していた。しかしながら、1〜3個のマーク93の検出位置に基づいて基板9の位置を特定してもよく、5個以上のマーク93の検出位置に基づいて基板9の位置を特定してもよい。例えば、基板9の回転位置の仮補正を高精度に行えるために、回転誤差Φがゼロとみなせる場合、1個のマーク93の検出位置に基づいて、基板9の位置を特定してもよい。
【0129】
また、上記の実施の形態において、マーク検出部24が4個の候補位置71a,71b,71c,71dを撮像する順序は、上記に例示された順序に限られるものではなく、どのような順序であってもよい。
【0130】
また、上記の実施の形態において、マーク検出部24が3個の仮マーク位置72,73,74を撮像する順序は、上記に例示された順序に限られるものではなく、どのような順序であってもよい。
【0131】
また、上記の実施の形態に係る駆動機構13は、必ずしも、ステージ11をθ方向に回動させるθ駆動機構14と、撮像部12をR方向に移動させるR駆動機構15とを備える構成である必要はない。例えば、駆動機構13は、固定されたステージ11に対して撮像部12をR方向およびθ方向の各方向に相対的に移動させる機構を備える構成としてもよい。逆に、固定された撮像部12に対してステージ11をR方向およびθ方向の各方向に相対的に移動させる機構を備える構成としてもよい。
【0132】
また、上記の実施の形態においては、駆動機構13は、ステージ11と撮像部12とをR方向およびθ方向の各方向に相対的に移動させる機構であるとしたが、必ずしもこのような構成である必要はない。例えば、駆動機構13は、ステージ11をX方向、Y方向およびθ方向のそれぞれに移動させるXYθ駆動機構を備える構成としてもよい。
【0133】
また、上記の実施の形態に係る描画装置100においては、搬送装置150が、位置検出装置140が特定した基板9の位置に基づいて、描画ステージ110における基板9の載置位置を調整していたが、位置検出装置140にステージ11をX方向およびY方向に沿って移動させるXY駆動機構を設けておき、当該XY駆動機構が、位置検出処理が終了した後に、当該処理によって特定された基板中心90の位置情報に応じてステージ11を移動させて、XY座標内の定められた位置(例えば、原点位置)に基板中心90が一致するようにステージ11を移動させる構成としてもよい。この場合、搬送装置150は、常に定められた位置(例えば、XY座標の原点位置にハンド151の中心がくるような位置)で基板9を取り上げるだけでよい。
【0134】
また、上記の実施の形態において、撮像部12を、ステージ11の載置面の法線方向に沿って移動させる機構を設けてもよい。この構成においては、当該駆動機構を制御することによって、撮像部12と、ステージ11に載置された基板9の表面領域との離間距離を調整することが可能となる。
【0135】
また、上記の実施の形態に係る描画装置100においては、位置検出装置140のステージ11と、描画ステージ110とが別々に設けられていたが、これらは1個のステージによって共用されてもよい。
【0136】
また、上記の実施の形態に係る描画装置100においては、描画ステージ110が描画ステージ駆動機構120により駆動されることによって、描画ヘッド130と基板9とが相対的に移動される構成としたが、固定された描画ステージ110に対して描画ヘッド130が移動されることによって(あるいは、描画ステージ110と描画ヘッド130とをともに移動させることによって)、描画ヘッド130と基板9とが相対的に移動されてもよい。
【0137】
また、上記の実施の形態においては、位置検出装置140が、描画光Lによって基板9上の感光材料を走査することにより当該感光材料に直接パターンを露光する描画装置100に搭載された場合について説明したが、位置検出装置140は、例えば、光源とフォトマスクを用いて基板9上に形成された感光材料を面状に露光する露光装置に搭載されてもよい。また、位置検出装置140は、基板9に光を照射してパターンを露光する処理以外の様々な処理を行う基板処理装置に搭載されてもよい。例えば、対象となる基板を載置したステージを、塗布ヘッドに対して移動させつつ塗布ヘッドからステージ上の基板に対して塗布液を塗布する塗布処理装置、対象となる基板を載置したステージを、検査ヘッドに対して移動させつつ検査ヘッドからステージ上の基板を例えば撮像してその表面に形成されたパターン形状等を検査する検査理装置、等に搭載することができる。