特許第6134178号(P6134178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134178
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】立軸ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20170515BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20170515BHJP
   F04D 29/046 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   F04D29/58 E
   F04D13/00 D
   F04D29/046 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-65338(P2013-65338)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190207(P2014-190207A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】上甲 美喜男
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−347394(JP,A)
【文献】 特開平11−324967(JP,A)
【文献】 特開平04−334794(JP,A)
【文献】 特開平08−184480(JP,A)
【文献】 実開平06−030493(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
F04D 13/00
F04D 29/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部に羽根車が取り付けられた主軸が、鉛直姿勢の揚水管に軸受を介して回転可能に支持され、前記軸受に冷却水を供給する冷却機構が設けられている立軸ポンプ装置であって、
前記軸受の下部に設けられた軸封装置と前記軸受とが水密に連結された保護管で前記主軸が被覆されるとともに、前記軸受に流入する冷却水の流入温度及び前記軸受から流出する冷却水の流出温度を検知する温度センサが設けられ、
前記冷却機構は吸水タンクと吸水ポンプを含み、両温度の差分値に基づいて前記吸水ポンプにより前記吸水タンクに貯水された冷却水の前記保護管への供給量が可変に調整されるように構成されている立軸ポンプ装置。
【請求項2】
下端部に羽根車が取り付けられた主軸が、鉛直姿勢の揚水管に軸受を介して回転可能に支持され、前記軸受に冷却水を供給する冷却機構が設けられている立軸ポンプ装置であって、
前記軸受の下部に設けられた軸封装置と前記軸受とが水密に連結された保護管で前記主軸が被覆されるとともに、前記軸受を流出する冷却水の温度及び所定の環境温度を検知する温度センサが設けられ、
前記冷却機構は吸水タンクと吸水ポンプを含み、両温度の差分値に基づいて前記吸水ポンプにより前記吸水タンクに貯水された冷却水の前記保護管への供給量が可変に調整されるように構成されている立軸ポンプ装置。
【請求項3】
前記軸受は、ゴム軸受または樹脂軸受である請求項1または2記載の立軸ポンプ装置。
【請求項4】
前記冷却水は、上水を含む良質の水が用いられる請求項1から3の何れかに記載の立軸ポンプ装置。
【請求項5】
前記給水ポンプを常時低速駆動し或いは間歇的に駆動して、前記保護管の下端側から冷却水を供給し、前記保護管に備えた上部軸封装置から冷却水が僅かに溢流する程度の微量を継続的に供給する冷却制御部を備えている請求項1から4の何れかに記載の立軸ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下端部に羽根車が取り付けられた主軸が、鉛直姿勢の揚水管に軸受を介して回転可能に支持され、前記軸受に冷却水を供給する冷却機構が設けられている立軸ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、立軸ポンプの主軸の軸受を冷却するために、軸受の両端に軸封装置を設け、軸封装置と軸受とを保護管で接続して封水部を形成し、封水部に封水タンクから冷却水を供給するように構成し、軸封装置からの水漏れを封水タンクの水面の変動によって検知して冷却水を自動供給する立軸ポンプ装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、軸封装置や軸受の摺動熱により潤滑液が昇温し、或いは潤滑液が蒸発等により不足して軸封装置や軸受が焼損する危険性に備えて、貯液タンクから保護管に冷却水を循環供給するように構成し、貯液タンク内の液温に基づいて循環水を冷却する放熱機構を設けた立軸ポンプ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−334794号公報
【特許文献2】特開平11−324967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の立軸ポンプ装置は、良質の冷却水が十分に確保されているという前提の下で、軸封装置としてグランドパッキン等、多少の水漏れが許容される安価なものが用いられており、軸受材料であるゴム部材や樹脂部材が所定の耐熱温度以上に上昇しないように、水漏れ量を見込んだ安全な、多量の水量の冷却水が保護管に供給されるように設定されていた。
【0006】
しかし、上質の冷却水が十分に確保されない場合には、水漏れが少ないメカニカルシール等の高価な軸封装置や、耐熱性及び耐磨耗性の高い高価なセラミック軸受を用い、或いは冷却水を循環供給するための機構を設ける必要がある等、設備コストが嵩むという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、安価な軸受を用いながらも、最小限の水量で効率的に冷却できる冷却機構を備えた立軸ポンプ装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明による立軸ポンプ装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、下端部に羽根車が取り付けられた主軸が、鉛直姿勢の揚水管に軸受を介して回転可能に支持され、前記軸受に冷却水を供給する冷却機構が設けられている立軸ポンプ装置であって、前記軸受の下部に設けられた軸封装置と前記軸受とが水密に連結された保護管で前記主軸が被覆されるとともに、前記軸受に流入する冷却水の流入温度及び前記軸受から流出する冷却水の流出温度を検知する温度センサが設けられ、前記冷却機構は吸水タンクと吸水ポンプを含み、両温度の差分値に基づいて前記吸水ポンプにより前記吸水タンクに貯水された冷却水の前記保護管への供給量が可変に調整されるように構成されている点にある。
【0009】
軸受の摺動摩擦による昇温が冷却水で冷却されるため、冷却の前後の冷却水温度の差分値に基づけば、様々な季節変動要因にかかわらず、その時点での冷却水量が適切であるか否かが正確に把握できるようになる。その結果、軸受の発熱の程度が把握でき、その温度に基づいて軸受が焼損しない程度に冷却機構によって軸受への冷却水の供給量が調整される。従って、上水等の良質の冷却水が十分に確保できない環境で、安価な軸受を用いる場合であっても最小限の冷却水量で軸受が冷却できるようになる。
【0010】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、下端部に羽根車が取り付けられた主軸が、鉛直姿勢の揚水管に軸受を介して回転可能に支持され、前記軸受に冷却水を供給する冷却機構が設けられている立軸ポンプ装置であって、前記軸受の下部に設けられた軸封装置と前記軸受とが水密に連結された保護管で前記主軸が被覆されるとともに、前記軸受を流出する冷却水の温度及び所定の環境温度を検知する温度センサが設けられ、前記冷却機構は吸水タンクと吸水ポンプを含み、両温度の差分値に基づいて前記吸水ポンプにより前記吸水タンクに貯水された冷却水の前記保護管への供給量が可変に調整されるように構成されている点にある。
【0011】
軸受を流出する冷却水の温度と所定の環境温度との差分値に基づけば、様々な環境変動要因による誤差を吸収して、軸受を流出する冷却水による冷却能力の正確な値を把握できるようになる。例えば、季節変動による誤差を吸収するために所定の環境温度として大気温度や供給前の冷却水温度等を用いることができる。その結果、軸受の発熱の程度が把握でき、その温度に基づいて軸受が焼損しない程度に冷却機構によって保護管への冷却水の供給量が調整される。この場合、揚水運転中には揚水によって冷却水が放熱されるので、保護管への冷却水の供給量がさらに低減できる。
【0012】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記軸受は、ゴム軸受または樹脂軸受である点にある。
【0013】
安価な軸受としてゴム軸受または樹脂軸受を好適に用いることができる。
【0014】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記冷却水は、上水を含む良質の水が用いられる点にある。
【0015】
少量の冷却水であっても軸受の摩耗を回避して良好に冷却することができる。
【0016】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記給水ポンプを常時低速駆動し或いは間歇的に駆動して、前記保護管の下端側から冷却水を供給し、前記保護管に備えた上部軸封装置から冷却水が僅かに溢流する程度の微量を継続的に供給する冷却制御部を備えている点にある。
【0017】
給水ポンプを用いて適量の冷却水を適切に給水できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した通り、本発明によれば、安価な軸受を用いながらも、最小限の水量で効率的に冷却できる冷却機構を備えた立軸ポンプ装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一の実施形態を示す立軸斜流ポンプの説明図
図2】本発明の第二の実施形態を示す立軸斜流ポンプの説明図
図3】本発明の要部の説明図
図4】本発明の別実施形態の要部の説明図
図5】本発明の別実施形態の要部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明による立軸ポンプ装置を説明する。
図1には、第一の態様が示され、立軸ポンプ装置の一例として、立軸斜流ポンプ装置P(以下、「立軸ポンプP」と記す。)が示されている。立軸ポンプPは、下端部に羽根車3が取り付けられた主軸2が、鉛直姿勢の揚水管6に複数のゴム軸受1(以下、「軸受1」と記す。)を介して回転可能に支持され、揚水管6の先端に羽根車3を収容する吐出しボウル4が接続され、さらに吐出しボウル4の先端に吸込ベル5が接続されて構成されている。
【0021】
揚水管6の上端側には、主軸2が水密かつ回転自在に貫通される吐出曲管9が接続され、主軸2がカップリングを介して駆動機10の出力軸に接続されている。
【0022】
羽根車側の軸受1の下方にメカニカルシールやグランドパッキンを用いた下部軸封装置11が設けられ、主軸2の上方の吐出曲管9との接合部にはラビリンスシール等を用いた上部軸封装置12が設けられている。
【0023】
主軸2が、軸封装置11,12と各軸受1とが水密に連結された保護管13で被覆され、ゴム製の軸受1を冷却するための冷却水を保護管13に供給する冷却機構20が設けられている。
【0024】
冷却機構20は、給水タンク22と給水ポンプ23と給水管24と冷却制御部25とを備えて構成され、給水タンク22に貯水された冷却水が給水ポンプ23によって汲み上げられ、給水管24及び案内羽根14に形成された給水路21を経由して保護管13の下端側から供給され、余剰給水は上部軸封装置12から溢流するように構成されている。タンク22に貯留される水は上水が好ましいが、立軸ポンプPで揚水された水に含まれる固形分を沈殿処理等で除去した上澄み水を用いてもよい。
【0025】
最上段の軸受1には、測温抵抗体(RTD)または熱電対等を用いた温度センサSが組み込まれ、温度センサSにより検知された温度が冷却制御部25に入力されるように構成されている。温度センサSは、軸受1を冷却した冷却水の温度が検知可能にゴム製の軸受部位の近傍に設置されている。
【0026】
冷却制御部25(冷却機構20)は温度センサSの値に基づいて、保護管13つまり軸受1への冷却水の供給量を調整するように構成されている。温度センサSによって軸受1を冷却した冷却水の温度が検知されることにより、軸受1の発熱の程度が把握でき、その温度に基づいて軸受が焼損しない程度に冷却制御部25によって軸受1への冷却水の供給量が調整される。従って、上水等の良質の冷却水が給水タンク22に十分に確保できない環境で、安価な軸受1を用いる場合であっても最小限の冷却水量で軸受1が冷却できるようになる。
【0027】
保護管13の下端側から冷却水が供給される場合には、冷却水が下方から上方に供給されるので、冷却水量が少なくなったときに最も影響がある主軸2の最上部に設置された軸受1を流出する冷却水の温度を指標にすれば効率的に水量を調整できる。
【0028】
尚、温度センサSは、軸受本体、例えばゴム軸受であれば摺動部のゴムを保持するバックメタルまたはゴム部分に埋め込み設置して、軸受本体の温度に基づいて冷却制御部が冷却制御するように構成してもよい。
【0029】
以下、詳述する。冷却制御部25は、先ず給水ポンプ23を駆動して冷却水を最上部の軸受1の上部まで給水する。給水ポンプ23による給水量が既知であるので、例えば給水ポンプ23の駆動時間を制御することで、所定量の給水が可能になる。尚、保護管13の水位を検知して給水ポンプ23を停止するように構成してもよい。
【0030】
次に、駆動機10を立ち上げて立軸ポンプPを駆動し、揚水管6への揚水を開始する。主軸2の回転によって軸受1は発熱するが、揚水運転中に揚水によって保護管13を介して冷却水が放熱される場合には、保護管13への新たな冷却水の供給は不要となる場合もある。以下の説明は、揚水運転中に限らず、先行待機運転等、揚水せずに主軸2を回転させる場合でも同様である。尚、駆動機10の位置に減速機を設け、減速機と駆動連結する駆動機を別に配置してもよい。
【0031】
保護管13内の冷却水が下部軸封装置11から漏れ出して、冷却水の水位が低下すると、温度センサSによって昇温が検知され、所定の閾値温度を超えると給水ポンプ23を駆動して冷却水を追加供給する。給水ポンプ23の駆動時間を制御して一定量を追加供給するように構成してもよいし、温度センサSによる検知温度が所定の閾値温度より低下するまで追加供給するように構成してもよい。冷却水を追加供給する閾値温度よりも追加供給を停止する閾値温度を低く設定するヒステリシスを持たせてもよい。また、測定データの履歴を監視して、温度上昇を予測して冷却水を供給制御してもよく、閾値を複数持たせて供給量を変えるように構成してもよい。
【0032】
軸受1を流出する冷却水の温度及び所定の環境温度を検知するように、温度センサSを最上部の軸受1と給水タンク22の双方に設けて、冷却制御部25が、両温度の差分値に基づいて冷却水の供給量を調整するように構成することが好ましい。軸受1を流出する冷却水の温度と給水タンク22の水温との差分値に基づけば、単に軸受1を流出する冷却水の温度のみに基づいて制御する場合の季節変動による水温変化に起因する誤差を吸収することができるようになる点で好ましい。
【0033】
例えば耐熱温度が約60℃のゴム軸受について、給水タンク22から給水される冷却水の温度は夏場と冬場で大きく異なるため、冷却水の供給の可否を判断する閾値温度を例えば一律の50℃に設定すると、例えば夏場に過剰に冷却水を供給することになる虞があり、冬場に軸受1の焼損を招くことになる虞がある。そのような場合でも、差分値に基づけば一律の閾値であっても安定的に制御できるようになる。
【0034】
環境温度を検知するために設ける温度センサは、給水タンク22に設置される態様に限ることはなく、大気温度を検知するように温度センサを設置してもよいし、揚水対象水の水温を検視するように温度センサを設置してもよい。環境温度を検知すれば、様々な環境変動要因による誤差を吸収して、軸受1を流れる冷却水による冷却能力の正確な値を把握できるようになる。
【0035】
冷却水の供給の可否を差分値で判断する場合も、給水の開始と停止とで差分の閾値にヒステリシスを設定することが可能である。
【0036】
冷却制御部25が給水ポンプ23を常時低速駆動し或いは間歇的に駆動して、保護管13の上部軸封装置12から冷却水が僅かに溢流する程度の微量を継続的に供給するように制御する場合でも本発明を適用できる。
【0037】
例えば、温度センサSによって検知された温度と所定の閾値温度との偏差に基づいて給水ポンプ23からの給水量を増量または減量することによって、常に必要な大量の冷却水の供給と比べて僅かな冷却水量で軸受1の焼損を回避することができるようになる。
【0038】
上述のように温度センサSによって検知された温度と環境温度との差分値を求め、当該差分値と所定の閾値温度との偏差に基づいて給水ポンプ23からの給水量を増量または減量するように制御してもよい。そして、この場合、制御態様としてPID制御を採用することが好ましい。
【0039】
図2には、第二の態様が示されている。第一の態様と異なる点は、保護管13の上端側から冷却水が供給されるように構成され、温度センサSは主軸2の最下部に設置された軸受1を流出する冷却水の温度を検知するように構成されている点である。尚、図1と同じ部位には同じ符号を付してその部位の説明を省略する。
【0040】
保護管13の上端側から冷却水が供給される場合には、冷却水が上方から下方に供給されるので、冷却水量が少なくなったときに最も影響があり、温度が上昇しやすい主軸の最下部に設置された軸受を流出する冷却水の温度を指標にすれば効率的に水量を調整できる。
【0041】
第二の態様でも、既に説明したような軸受を流出する冷却水の温度と所定の環境温度との差分値に基づいて冷却水の給水制御を行なうことが可能であり、また冷却水を追加するための閾値と停止するための閾値にヒステリシスを持たせることも可能である。
【0042】
上述の例では、軸受1を流出する冷却水の温度を検知する温度センサSを最上部の軸受1または最下部の軸受1に備える態様を説明したが、各軸受1に温度センサSを備えて、少なくとも一つの軸受1で閾値温度を超えたときに冷却水を追加供給するように構成してもよい。
【0043】
第一及び第二の態様の何れであっても、最上部の軸受と最下部の軸受の二箇所に温度センサSを組み込み、何れか一方が閾値温度を超えると冷却水を追加供給するように構成してもよい。最上部の軸受に備えた温度センサSで水位の低下を間接的に把握でき、羽根車3という最も大きな負荷がかかり最も発熱しやすい最下部の軸受に備えた温度センサSで最も厳しい冷却環境を把握することができる。
【0044】
さらに、図3に示すように、軸受1に流入する冷却水の流入温度及び軸受1から流出する冷却水の流出温度を検知する温度センサS1,S2を備え、冷却制御部25が両温度の差分値に基づいて冷却水の供給量を調整するように構成してもよい。尚、第一の態様では、温度センサS2で流入温度が検知され、第二の態様では温度センサS1で流入温度が検知されることになる。
【0045】
温度センサS1,S2の差分値によれば、軸受の摺動摩擦による昇温が冷却水で冷却される程度が明確に把握できるようになるので、環境温度の変動による影響を抑制でき、様々な季節変動要因にかかわらず、その時点での冷却水量が適切であるか否かが正確に把握できるようになる。
【0046】
温度センサS1,S2の信号線(図中、一点鎖線で示されている。)は、例えば軸受1の支持部30を鋳込むときに形成される信号線挿通孔を経由して取り出すことができる。
【0047】
この場合も、既述したように、温度センサS1,S2の差分値が所定の給水閾値を超えると給水開始し、給水閾値より低い所定の停止閾値を下回ると給水停止するように冷却制御部25を構成すればよい。
【0048】
また、温度センサS1,S2の差分値と所定の閾値との差分値に基づいて、急水量を増加または減少制御するように冷却制御部25を構成してもよい。
【0049】
以上の説明では主軸2に保護管13が設けられ、保護管13に冷却水が供給される例を説明したが、個々の軸受1にそれぞれ冷却水が供給されるような構成であっても本発明を適用することができる。
【0050】
例えば、図4に示すように、軸受1の支持部30に冷却水の給水路31と排水路32を形成するとともに、軸受1の上下端にオイルシール33を設けて、給水路31から供給される冷却水が軸受1の内部を通流して排水路32に排出されるように構成してもよい。
【0051】
そして、軸受1の両端部に温度センサS1,S2を備え、冷却制御部25が両温度センサS1,S2の差分値に基づいて冷却水の供給量を増減するように構成することができる。この場合、各軸受1に供給され、排水路32から排水された冷却水を給水タンク22に戻して循環供給するように構成することが好ましい。
【0052】
つまり、軸受1の両端部に揚水の浸入を防止するシール機構33が設けられ、シール機構33の内側一端から冷却水を供給し内側他端から排出する冷却管31,32が配置され、冷却機構20は温度センサS1,S2の値に基づいて前記冷却管への冷却水の供給量を調整するように構成される。
【0053】
尚、各軸受1に、冷却水の温度を検知する単一の温度センサS1を備える場合には、環境温度との差分値に基づいて冷却水の供給量を制御することが好ましい。
【0054】
冷却機構20に備えた冷却制御部25は、温度センサSの値が所定の異常温度を示すと、外部に異常信号を出力するように構成されていることが好ましい。
【0055】
温度センサの値に基づいて、軸受の温度が高く、耐熱温度に達する虞があると把握されるような場合に、冷却制御部25から出力される異常信号に基づいて、立軸ポンプ装置Pを自動または手動停止する等の適切な対応を採ることができるようになる。
【0056】
上述した実施形態では、温度センサSで冷却水の温度を測定する構成を説明したが、図5に示すように、温度センサSで軸受1本体の温度を測定するように構成してもよい。この場合、摺動部であるゴム部分1aを測定点にしてもよいが、長時間運転を考えると、変形や磨耗の影響を受けないようにゴムの外周を保持するバックメタル1bの温度を測定するのが好ましい。
【0057】
上述した実施形態では、立軸ポンプ装置の例として斜流ポンプを用いた例を説明したが、本発明の立軸ポンプ装置は、斜流ポンプ以外に軸流ポンプや遠心ポンプにも適用可能である。
【0058】
上述した実施形態では軸受がゴム軸受である場合を説明したが、ゴム軸受以外に樹脂軸受である場合も本発明を適用することができる。
【0059】
上述した実施形態では、給水ポンプで冷却水を供給する構成を説明したが、高架水槽からバルブを介して供給する等、冷却水の供給量が制御できる態様であればどのような給水構成であってもよい。
【0060】
以上の説明は、本発明の一実施形態であり、各記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的な形状、材料、大きさ等は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能である。
【符号の説明】
【0061】
1:軸受
2:主軸
3:羽根車
6:揚水管
20:冷却機構
25:冷却制御部
P:立軸ポンプ装置
S、S1,S2:温度センサ

図1
図2
図3
図4
図5