特許第6134188号(P6134188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134188
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】黒色感光性樹脂組成物及びその利用
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20170515BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20170515BHJP
   G03F 7/035 20060101ALI20170515BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20170515BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G03F7/004 505
   G03F7/004 501
   G03F7/027 513
   G03F7/035
   H05K3/28 D
   C08F290/06
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-77536(P2013-77536)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-202846(P2014-202846A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加賀 孝博
(72)【発明者】
【氏名】関藤 由英
(72)【発明者】
【氏名】木戸 雅善
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−224171(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0266585(US,A1)
【文献】 特開2012−198527(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/141153(WO,A1)
【文献】 特開2011−075678(JP,A)
【文献】 特開平08−036260(JP,A)
【文献】 特開2012−078409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
B41N1/24
H05K1/00−1/02
H05K3/10−3/26;3/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)バインダーポリマー、(B)2種以上の有機顔料、(C)熱硬化性樹脂、(D)ラジカル重合性化合物、(E)光重合開始剤及び(F)難燃剤を含有する黒色感光性樹脂組成物であって、前記(F)成分の重量減少開始温度が300℃以上であり、前記(B)成分として、少なくとも(B1)下記式(1)
【化1】
で示される有機顔料を含有することを特徴とする黒色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分として、前記(B1)に加えて(B2)銅フタロシアニン有機顔料を含有することを特徴とする請求項1に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(F)成分として、(F1)縮合リン酸エステル系化合物、(F2)ホスファゼン系化合物、(F3)金属水酸化物及び(F4)ホスフィン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分として、分子内にウレタン結合を含有する樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記分子内にウレタン結合を含有している樹脂が、更に(メタ)アクリロイル基、カルボキシル基及びイミド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を含有していることを特徴とする請求項4に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の黒色感光性樹脂組成物から得られる絶縁膜
【請求項7】
請求項に記載の絶縁膜をプリント配線板に被覆した絶縁膜付きプリント配線板。
【請求項8】
請求項に記載の絶縁膜をフレキシブルプリント基板に被覆した絶縁膜付きフレキシブルプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は黒色感光性樹脂組成物並びにそれから得られる樹脂フィルム、絶縁膜、及び絶縁膜付きプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、耐熱性、電気絶縁信頼性や耐薬品性、機械特性に優れることから電気・電子用途に広く使用されている。例えば、半導体デバイス上への絶縁フィルムや保護コーティング剤、フレキシブル回路基板や集積回路等の基材材料や表面保護材料、更には、微細な回路の層間絶縁膜や保護膜を形成させる場合に用いられる。
【0003】
特に、フレキシブル回路基板用の表面保護材料として用いる場合には、ポリイミドフィルム等の成形体に接着剤を塗布して得られるカバーレイフィルムが用いられてきた。このカバーレイフィルムをフレキシブル回路基板上に接着する場合、回路の端子部や部品との接合部に予めパンチングなどの方法により開口部を設け、位置合わせをした後に熱プレス等で熱圧着する方法が一般的である。
【0004】
しかし、薄いカバーレイフィルムに高精度な開口部を設けることは困難であり、また、張り合わせ時の位置合わせは手作業で行われる場合が多いため、位置精度が悪く、張り合わせの作業性も悪く、コスト高となっていた。
【0005】
一方、回路基板用の表面保護材料としては、ソルダーレジストなどが用いられる場合もあり、特に感光性機能を有するソルダーレジストは、微細な加工が必要な場合には好ましく用いられている。この感光性ソルダーレジストとしては、酸変性エポキシアクリレートやエポキシ樹脂等を主体とした感光性樹脂組成物が用いられるが、この感光性ソルダーレジストは、絶縁材料としては電気絶縁信頼性に優れるが、屈曲性等の機械特性が悪く、硬化収縮が大きいためフレキシブル回路基板などの薄くて柔軟性に富む回路基板に積層した場合、基板の反りが大きくなり、フレキシブル回路基板用に用いるのは難しかった。
【0006】
近年、回路基板用の表面保護材料であるカバーレイフィルムや感光性ソルダーレジストを黒色に着色して隠蔽性を付与することにより回路パターンを隠蔽し、回路パターンに含まれる機密情報の保護をしようとする試みがなされている。
【0007】
特に感光性ソルダーレジストにおいては、感光性、柔軟性、耐熱性、めっき耐性と黒色度や隠蔽性を両立させることが重要となり、これら特性を発現することができる種々の提案がなされている。
【0008】
例えば、充分な黒色度を有しつつ解像性にも優れる黒色フォトソルダーレジストが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−091876号公報
【特許文献2】特開2012−198527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1は、黒色を濃くしても深部の光硬化性を維持することができる黒色ソルダーレジスト組成物及びその硬化物を提供するとされている。しかし、難燃性に関する記載がなく、難燃性を保持した上で300℃以上のハンダ耐熱性において、変色が発生する、膨れ・剥がれに関する課題の記載がない。
【0011】
特許文献2は、有機溶剤に可溶であるβ−ヒドロキシアルキルアミドを含む感光性組成物を提供するとされている。それにより、耐熱性・耐薬品性・平滑性・光学特性を満足する膜あるいは微細パターンを形成するとされている。しかし、難燃性を保持した上で300℃以上のハンダ耐熱性において、変色が発生する、膨れ・剥がれに関する課題の記載がない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、少なくとも(A)バインダーポリマー、(B)2種以上の有機顔料、(C)熱硬化性樹脂、(D)ラジカル重合性化合物、(E)光重合開始剤及び(F)難燃剤を含有する黒色感光性樹脂組成物であって、前記(F)成分の重量減少開始温度が300℃以上であり、前記(B)成分として、少なくとも(B1)特定構造の有機顔料を含有することにより300℃以上のハンダ耐熱性、主に変色を起こさない、膨れ・剥がれが起こらないことを特徴とする黒色感光性樹脂組成物、樹脂フィルム、絶縁膜及び絶縁膜付きプリント配線板が得られる知見を得、これらの知見に基づいて、本発明に達したものである。本願発明は以下の新規な構成の黒色感光性樹脂組成物により前記課題を解決しうる。
【0013】
すなわち、本願発明は、少なくとも(A)バインダーポリマー、(B)2種以上の有機顔料、(C)熱硬化性樹脂、(D)ラジカル重合性化合物、(E)光重合開始剤及び(F)難燃剤を含有する黒色感光性樹脂組成物であって、前記(F)成分の重量減少開始温度が300℃以上であり、前記(B)成分として(B1)下記式(1)
【0014】
【化1】
【0015】
で示される有機顔料を含有することを特徴とする黒色感光性樹脂組成物である。
【0016】
前記(B)成分として、(B2)銅フタロシアニン有機顔料を含有することが好ましい。前記(F)成分として、(F1)縮合リン酸エステル系化合物、(F2)ホスファゼン系化合物、(F3)金属水酸化物及び(F4)ホスフィン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。前記(A)成分として、分子内にウレタン結合を含有する樹脂を含有することが好ましい。前記分子内にウレタン結合を含有している樹脂が、更に(メタ)アクリロイル基、カルボキシル基及びイミド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を含有していることが好ましい。
【0017】
また、本願発明にかかる樹脂フィルムは、前記黒色感光性樹脂組成物を基材表面に塗布した後、乾燥して得られるものである。
【0018】
また、本願発明にかかる絶縁膜は、前記樹脂フィルムを硬化させて得られるものである。
【0019】
また、本願発明にかかる絶縁膜付きプリント配線板は、前記絶縁膜がプリント配線板もしくはフレキシブルプリント配線板に被覆されてなるものである。
【発明の効果】
【0020】
少なくとも(A)バインダーポリマー、(B)2種以上の有機顔料、(C)熱硬化性樹脂、(D)ラジカル重合性化合物、(E)光重合開始剤及び(F)難燃剤を含有する黒色感光性樹脂組成物であって、前記(F)成分の重量減少開始温度が300℃以上であり、前記(B)成分として(B1)特定構造の有機顔料を含有することを特徴とする黒色感光性樹脂組成物は、電気絶縁信頼性に優れ、難燃性にも優れ、ハンダ耐熱性300℃以上において、変色及び膨れ・剥がれが生じない。従って、本願発明の黒色感光性樹脂組成物は、種々の回路基板の保護膜等に使用でき、優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下で本願発明について詳細に説明する。
【0022】
本願発明の黒色感光性樹脂組成物とは、少なくとも(A)バインダーポリマー、(B)2種以上の有機顔料、(C)熱硬化性樹脂、(D)ラジカル重合性化合物、及び(E)光重合開始剤、及び(F)難燃剤を含有する黒色感光性樹脂組成物であって、前記(F)成分の重量減少開始温度が300℃以上であり、前記(B)成分として(B1)特定構造の有機顔料を含有すればよい。
【0023】
本願発明の黒色感光性樹脂組成物は、(B1)特定構造の有機顔料を用いて黒色化することより電気絶縁性及び、300℃以上ハンダ耐熱性の変色の両立が可能である。一般的な黒色着色剤としては、カーボンブラックが挙げられるが、着色剤自体の絶縁性に懸念がある。そこで、本発明者らは、着色剤自体に絶縁性がある点や感光性材料として用いた場合の深度深くの光硬化性の点から、好ましくは、補色の関係にある有機着色剤を混合して黒色を発現することを考えた。(B1)特定構造の有機顔料を用いて黒色を発現することにより、電気絶縁信頼が良好になる。(B1)特定構造の重量減少開始温度が300℃以上であることから、300℃以上のハンダ耐熱性において変色を防ぐことが推察される。
【0024】
また一方で、最近は難燃の要求が高く難燃剤を入れることが多い。単純に難燃剤を入れた場合、300℃以上のハンダ耐熱性で膨れ及び剥がれが発生することがある。300℃以上ハンダ膨れには難燃剤も重要で、難燃剤としては重量減少開始温度300℃以上の難燃剤および(B1)特定構造を組み合わせたことで、難燃性及び300℃以上のハンダ耐熱性において、変色、及び膨れ・剥がれなどの不具合の改善を両立した黒色感光性樹脂組成物を発現できると推定される。
【0025】
以下少なくとも(A)バインダーポリマー、(B)2種以上の有機顔料、(C)熱硬化性樹脂、(D)ラジカル重合性化合物、及び(E)光重合開始剤、及び(F)難燃剤を含有する黒色感光性樹脂組成物であって、前記(F)成分の重量減少開始温度が300℃以上であり、前記(B)成分として(B1)特定構造の有機顔料を含有することを特徴とする黒色感光性樹脂組成物の混合方法について説明する。
【0026】
<(A)バインダーポリマー>
本願発明の(A)バインダーポリマーとは、有機溶媒に対して可溶性であり、重量平均分子量が、ポリエチレングリコール換算で1,000以上、1,000,000以下のポリマーである。
【0027】
前記有機溶媒とは、特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
【0028】
更に、例えばメチルモノグライム(1,2-ジメトキシエタン)、メチルジグライム(ビス(2-メトキシエテル)エーテル)、メチルトリグライム(1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)、メチルテトラグライム(ビス[2-(2-メトキシエトキシエチル)]エーテル)、エチルモノグライム(1,2-ジエトキシエタン)、エチルジグライム(ビス(2-エトキシエチル)エーテル)、ブチルジグライム(ビス(2-ブトキシエチル)エーテル)等の対称グリコールジエーテル類、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、n―プロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名、カルビトールアセテート、酢酸2-(2-ブトキシエトキシ)エチル))、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート等のアセテート類や、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3―ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールものエチルエーテル等のエーテル類の溶剤が挙げられる。
【0029】
有機溶媒に対して可溶性となる指標である有機溶媒溶解性は、有機溶媒100重量部に対して溶解するバインダーポリマーの重量部として測定することが可能であり、有機溶媒100重量部に対して溶解するバインダーポリマーの重量部が5重量部以上であれば有機溶媒に対して可溶性とすることができる。有機溶媒溶解性測定方法は、特に限定されないが、例えば、有機溶媒100重量部に対してバインダーポリマーを5重量部添加し、40℃で1時間攪拌後、室温まで冷却して24時間以上放置し、不溶解物や析出物の発生なく均一な溶液であることを確認する方法で測定することができる。
【0030】
本願発明の(A)成分の重量平均分子量は、例えば、以下の方法で測定することができる。
【0031】
(重量平均分子量測定)
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソー TSK gel Super AWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW−H
溶離液:30mM LiBr+20mM H3PO4 in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)。
【0032】
前記範囲内に重量平均分子量を制御することにより、得られる絶縁膜の柔軟性、耐薬品性が優れるため好ましい。重量平均分子量が1,000以下の場合は、柔軟性や耐薬品性が低下する場合があり、重量平均分子量が1,000,000以上の場合は黒色感光性樹脂組成物の粘度が高くなる場合がある。
【0033】
本願発明の(A)成分は、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。中でも分子内にウレタン結合を含有する樹脂であるポリウレタン系樹脂やポリ(メタ)アクリル系樹脂を用いた場合、黒色感光性樹脂組成物を硬化させることにより得られる絶縁膜の柔軟性、耐折れ性が向上し、絶縁膜の反りが小さくなるため好ましい。
【0034】
本願発明の分子内にウレタン結合を含有する樹脂とは、有機溶媒に対して可溶性であり、分子内に少なくとも1つのウレタン結合を含有する繰り返し単位を含有している、重量平均分子量が、ポリエチレングリコール換算で1,000以上、1,000,000以下のポリマーである。
【0035】
本願発明の分子内にウレタン結合を含有する樹脂は、任意の反応により得ることが可能であるが、例えば、下記一般式(2)
【0036】
【化2】
【0037】
(式中、Rは2価の有機基を示す)
で示されるジオール化合物と、下記一般式(3)
【0038】
【化3】
【0039】
(式中、Xは2価の有機基を示す)
で示されるジイソシアネート化合物を反応させることにより、下記一般式(4)
【0040】
【化4】
【0041】
(式中、R及びXはそれぞれ独立に2価の有機基を示し、nは1以上の整数を示す)
で示されるウレタン結合を含有する繰り返し単位を含有する構造として得られる。
【0042】
本願発明のジオール化合物は、前記構造であれば特に限定はされないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のアルキレンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールとのランダム共重合体等のポリオキシアルキレンジオール、多価アルコールと多塩基酸とを反応させて得られるポリエステルジオール、カーボネート骨格を有するポリカーボネートジオール、γ−ブチルラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン類を開環付加反応させて得られるポリカプロラクトンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0043】
特に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシアルキレンジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等の長鎖ジオールを用いた場合、黒色感光性樹脂組成物を硬化させることにより得られる絶縁膜の弾性率を低下させ、屈曲性、低反りに優れる点で好ましい。
【0044】
本願発明のジイソシアネート化合物は、前記構造であれば特に限定はされないが、例えば、ジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジメチルジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジエチルジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジメトキシジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4′−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4′−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、4,4′−[2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0045】
特に、脂環族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネート化合物を用いた場合、黒色感光性樹脂組成物の感光性に優れる点で好ましい。
【0046】
本願発明の分子内にウレタン結合を含有する樹脂の合成方法は、ジオール化合物とジイソシアネート化合物との配合量を、水酸基数とイソシアネート基数との比率が、イソシアネート基/水酸基=0.5以上2.0以下になるように配合し、無溶媒あるいは有機溶媒中で反応させることで得られる。
【0047】
また、2種類以上のジオール化合物を用いる場合、ジイソシアネート化合物との反応は、2種類以上のジオール化合物を混合した後に行ってもよいし、それぞれのジオール化合物とジイソシアネート化合物とを別個に反応させてもよい。また、ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させた後に、得られた末端イソシアネート化合物をさらに他のジオール化合物と反応させ、さらにこれをジイソシアネート化合物と反応させてもよい。また、2種類以上のジイソシアネート化合物を用いる場合も同様である。このようにして、所望の分子内にウレタン結合を含有する樹脂を製造することができる。
【0048】
ジオール化合物とジイソシアネート化合物との反応温度は、40〜160℃とすることが好ましく、60〜150℃とすることがより好ましい。40℃未満では反応時間が長くなり過ぎ、160℃を超えると反応中に三次元化反応が生じてゲル化が起こり易い。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。また、必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、錫、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行っても良い。
【0049】
前記反応は、無溶媒で反応させることもできるが、反応を制御する為には、有機溶媒系で反応させることが望ましい。ここで用いられる有機溶媒は、特に限定されないが、例えば、前記例示されたものを用いることができる。
【0050】
反応の際に用いられる有機溶媒量は、反応溶液中の溶質重量濃度すなわち溶液濃度が5重量%以上90重量%以下となるような量とすることが望ましい。反応溶液中の溶質重量濃度は、更に好ましくは、10重量%以上80重量%以下となることが望ましい。溶液濃度が5%以下の場合には、重合反応が起こりにくく反応速度が低下すると共に、所望の構造物質が得られない場合があるので好ましくない。
【0051】
本願発明の分子内にウレタン結合を含有する樹脂は、更に(メタ)アクリロイル基、カルボキシル基及びイミド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を含有することが好ましい。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基のことであり、(メタ)アクリロイル基を含有する場合は黒色感光性樹脂組成物の感光性が向上するため短時間での紫外線照射で硬化させることが可能となる。また、カルボキシル基を含有する場合は黒色感光性樹脂組成物の希アルカリ水溶液の現像液への溶解性が向上するため短時間での現像で微細パターン形成が可能となる。また、イミド基を含有する場合は黒色感光性樹脂組成物の耐熱性や高温高湿条件下での電気絶縁信頼性が向上するため、プリント配線板の被覆材として用いた場合、信頼性に優れるプリント配線板が得られる。
【0052】
ここで、(メタ)アクリロイル基を含有する分子内にウレタン結合を含有する樹脂は、任意の反応により得ることが可能であるが、例えば、前記ジオール化合物、前記ジイソシアネート化合物に加えて、下記一般式(5)
【0053】
【化5】
【0054】
(式中、Rはm+1価の有機基を示し、Rは水素又はアルキル基を示す。mは1〜3の整数を示す)
で示される水酸基及び少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を含有する化合物及び/又は下記一般式(6)
【0055】
【化6】
【0056】
(式中、Xはl+1価の有機基を示し、Xは水素又はアルキル基を示す。lは1〜3の整数を示す)
で示されるイソシアネート基及び少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を反応させることにより得られる。
【0057】
本願発明の水酸基及び少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を含有する化合物は、前記構造であれば特に限定はされないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジルアクリルアミド等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0058】
本願発明のイソシアネート基及び少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を含有する化合物は、前記構造であれば特に限定はされないが、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0059】
また、カルボキシル基を含有する分子内にウレタン結合を含有する樹脂は、任意の反応により得ることが可能であるが、例えば、前記ジオール化合物、前記ジイソシアネート化合物に加えて、下記一般式(7)
【0060】
【化7】
【0061】
(式中、Rは3価の有機基を示す)
で示される2つの水酸基及び1つのカルボキシル基を含有する化合物を反応させることにより得られる。
【0062】
本願発明の2つの水酸基及び1つのカルボキシル基を含有する化合物は、前記構造であれば特に限定はされないが、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシメプロピル)プロピオン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシブタン酸、2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン酸、2,3−ジヒドロキシヘキサデカン酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0063】
特に、脂肪族系の2つの水酸基及び1つのカルボキシル基を含有する化合物を用いた場合、黒色感光性樹脂組成物の感光性に優れる点で好ましい。
【0064】
また、イミド基を含有する分子内にウレタン結合を含有する樹脂は、任意の反応により得ることが可能であるが、例えば、前記ジオール化合物、前記ジイソシアネート化合物に加えて、下記一般式(8)
【0065】
【化8】
【0066】
(式中、Yは4価の有機基を示す)
で示されるテトラカルボン酸二無水物を反応させることにより得られる。
【0067】
本願発明のテトラカルボン酸二無水物は、前記構造であれば特に限定はされないが、例えば、3,3’,4,4’―ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’―オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等のテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0068】
本願発明のポリ(メタ)アクリル系樹脂とは、有機溶媒に対して可溶性であり、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル誘導体を共重合させることにより得られる繰り返し単位を含有している、重量平均分子量が、ポリエチレングリコール換算で1,000以上、1,000,000以下のポリマーである。ここで、(メタ)アクリルとはメタクリル及び/又はアクリルのことである。
【0069】
本願発明のポリ(メタ)アクリル系樹脂は、任意の反応により得ることが可能であるが、例えば、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル誘導体を溶媒中、ラジカル重合開始剤存在下で反応させることにより得られる。
【0070】
本願発明の(メタ)アクリル酸エステル誘導体は、特に限定はされないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。これら(メタ)アクリル酸エステル誘導体の中でも、特に(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルを用いることが、黒色感光性樹脂組成物の絶縁膜の柔軟性と耐薬品性の観点から好ましい。
【0071】
前記、ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ系化合物、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸価水素等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0072】
前記、ラジカル重合開始剤の使用量は、使用するモノマー100重量部に対して0.001〜5重量部とすることが好ましく、0.01〜1重量部とすることがより好ましい。0.001重量部より少ない場合では反応が進行しにくく、5重量部より多い場合では分子量が低下する場合がある。
【0073】
前記反応の際に用いられる溶媒量は、反応溶液中の溶質重量濃度すなわち溶液濃度が5重量%以上90重量%以下となるような量とすることが好ましく、20重量%以上70重量%以下とすることがより好ましい。溶液濃度が5%より少ない場合では重合反応が起こりにくく反応速度が低下すると共に、所望の構造物質が得られない場合があり、また、溶液濃度が90重量%より多い場合では反応溶液が高粘度となり反応が不均一となる場合がある。
【0074】
前記反応温度は、20〜120℃とすることが好ましく、50〜100℃とすることがより好ましい。20℃より低い温度の場合では反応時間が長くなり過ぎ、120℃を超えると急激な反応の進行や副反応に伴う三次元架橋によるゲル化を招く恐れがある。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。
【0075】
その他、(A)バインダーポリマーとして例えば、酸変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、カルボキシル基含有ウレタン変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基含有アクリル樹脂を用いてよく、日本化薬株式会社製の商品名KAYARAD PCR−1169H、KAYARAD CCR−1159H、KAYARAD TCR−1310H、KAYARAD ZAR−1395H、KAYARAD ZFR−1401H、KAYARAD UXE−3000、ダイセルサイテック株式会社製の商品名サイクロマーP(ACA)200M、Z30AA、Z250、Z251、Z300、Z320などが挙げられる。
【0076】
<(B)2種以上の有機顔料>
有機顔料とは、水または油などの溶媒に不要で、有機化合物を成分とする着色剤である。有機顔料は、媒体に分散した状態で使用する。
【0077】
本願発明は、(B)2種以上の有機顔料を含むことを特徴とする。その中の1種の有機顔料として(B1)下記式(1)
【0078】
【化9】
【0079】
で示される有機顔料を含有することを特徴とする。また、もう1種類以上の有機顔料として、赤色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、緑色顔料、黒色顔料などが挙げられるが、その中でも(B2)銅フタロシアニン構造有機顔料はハンダ耐熱性試験を行った場合、変色がなく(B1)と組み合わせて黒色を生成するのに好ましい。
【0080】
また、その他有機顔料として、(B1)成分とその他有機顔料を配合することにより黒色に着色する効果を有する物質であれば特に限定されない。
【0081】
本願発明の(B)着色剤の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0082】
本願発明の(B1)成分は、キナクリドン系の顔料であり、C.I.Pigment Violet 19、Pigment Red122が挙げられる。
【0083】
(B2)成分は、銅フタロシアニン系顔料であり、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、が挙げられる。
【0084】
その他着色剤として、特に限定されないが、赤色顔料としては、例えばC.I. Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、176、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、254、255、264、272、279等を用いることができる。
【0085】
黄色顔料としては、例えばC.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、191、193、194、199、213、214等を用いることができる。
【0086】
オレンジ色顔料としては、例えばC.I. Pigment orange 36、43、51、55、59、61、71、73等を用いることができる。
【0087】
緑色顔料としては、例えばC.I. Pigment Green 7、10、36、37、58等を用いることができる。
【0088】
黒色顔料としては、例えば、 C.I Pigment Black31、32であり、BASF社製のLumogen Black FK 4280,4281等を用いることができる。
【0089】
本願発明の(B)成分の含有量は、好ましくは(A)成分100重量部に対して1〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部とすることにより、得られる黒色感光性樹脂の黒色度、隠蔽性に優れる。更には、電気絶縁信頼性に優れる。(B)成分が1重量部より少ない場合は黒色感光性樹脂組成物の黒色度、隠蔽性に劣る場合があり、30重量部より多い場合は感光性樹脂組成物の透過率が低下するため、感光性が低下する場合がある。更には、電気絶縁信頼性が低下する場合がある。ここで、(B)成分の含有量は、(B1)成分、(B2)成分及びその他着色剤の各含有量の和である。
【0090】
本願発明の黒色感光性樹脂の黒色度は、25以下、より好ましくは、20以下にすることにより、得られる黒色感光性樹脂組成物の隠蔽性も得られる。ここで、感光性樹脂組成物の黒色度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、色差計:45°色差計(日本電色工業社製 NR−11B)を用いて、L*a*b*表色系の値をJIS Z 8729に従って測定することができる。ここで、明度を表わす指数であるL*値を黒色度の指標として評価する。このL*値が小さい程黒色度に優れることを意味する。
【0091】
<(C)熱硬化性樹脂>
本願発明の(C)熱硬化性樹脂とは、分子内に少なくとも1つの熱硬化性の有機基を含有する化合物である。
【0092】
本願発明の(C)成分は、前記構造であれば特に限定はされないが、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば不飽和ポリエステル樹脂等)、ジアリルフタレート樹脂、珪素樹脂、ビニルエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、シアネート樹脂(例えばシアネートエステル樹脂等)、ユリア樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、アニリン樹脂、ポリウレア樹脂、チオウレタン樹脂、ポリアゾメチン樹脂、エピスルフィド樹脂、エン−チオール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、これらの共重合体樹脂、これら樹脂を変性させた変性樹脂、又はこれらの樹脂同士もしくは他の樹脂類との混合物等が挙げられる。
【0093】
本願発明の(C)成分は、前記熱硬化性樹脂の中でも、特に多官能エポキシ樹脂を用いることが、黒色感光性樹脂組成物を硬化させて得られる絶縁膜に対して耐熱性を付与できると共に、金属箔等の導体や回路基板に対する接着性を付与することができるため好ましい。
【0094】
前記多官能エポキシ樹脂とは、分子内に少なくとも2つのエポキシ基を含有する化合物であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER828、jER1001、jER1002、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4100E、アデカレジンEP−4300E、日本化薬株式会社製の商品名RE−310S、RE−410S、DIC株式会社製の商品名エピクロン840S、エピクロン850S、エピクロン1050、エピクロン7050、東都化成株式会社製の商品名エポトートYD−115、エポトートYD−127、エポトートYD−128、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER806、jER807、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4901E、アデカレジンEP−4930、アデカレジンEP−4950、日本化薬株式会社製の商品名RE−303S、RE−304S、RE−403S,RE−404S、DIC株式会社製の商品名エピクロン830、エピクロン835、東都化成株式会社製の商品名エポトートYDF−170、エポトートYDF−175S、エポトートYDF−2001、ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−1514、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jERYX8000、jERYX8034,jERYL7170、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−4080E、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−7015、東都化成株式会社製の商品名エポトートYD−3000、エポトートYD−4000D、ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jERYX4000、jERYL6121H、jERYL6640、jERYL6677、日本化薬株式会社製の商品名NC−3000、NC−3000H、フェノキシ型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER1256、jER4250、jER4275、ナフタレン型エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製の商品名エピクロンHP−4032、エピクロンHP−4700、エピクロンHP−4200、日本化薬株式会社製の商品名NC−7000L、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER152、jER154、日本化薬株式会社製の商品名EPPN−201−L、DIC株式会社製の商品名エピクロンN−740、エピクロンN−770、東都化成株式会社製の商品名エポトートYDPN−638、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、DIC株式会社製の商品名エピクロンN−660、エピクロンN−670、エピクロンN−680、エピクロンN−695、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名EPPN−501H、EPPN−501HY、EPPN−502H、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製の商品名XD−1000、DIC株式会社製の商品名エピクロンHP−7200、アミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER604、jER630、東都化成株式会社の商品名エポトートYH−434、エポトートYH−434L、三菱ガス化学株式会社製の商品名TETRAD−X、TERRAD−C、可とう性エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製の商品名jER871、jER872、jERYL7175、jERYL7217、DIC株式会社製の商品名エピクロンEXA−4850、ウレタン変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEPU−6、アデカレジンEPU−73、アデカレジンEPU−78−11、ゴム変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEPR−4023、アデカレジンEPR−4026、アデカレジンEPR−1309、キレート変性エポキシ樹脂としては、株式会社ADEKA製の商品名アデカレジンEP−49−10、アデカレジンEP−49−20、複素環含有エポキシ樹脂としては、日産化学株式会社製の商品名TEPIC等が挙げられる。
【0095】
本願発明の黒色感光性樹脂組成物には、前記熱硬化性樹脂の硬化剤として、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、アミノ樹脂、ユリア樹脂、メラミン、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0096】
また、硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物;3級アミン系、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエタノールアミン等のアミン系化合物;1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート等のボレート系化合物等、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン等のアジン系イミダゾール類等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0097】
<(D)ラジカル重合性化合物>
本願発明の(D)ラジカル重合性化合物とは、(E)ラジカル重合開始剤により重合反応が進行するラジカル重合性基を分子内に含有する化合物である。その中でも分子内に不飽和二重結合を少なくとも1つ有する樹脂であることが好ましい。さらには、前記不飽和二重結合は、(メタ)アクリロイル基、もしくはビニル基であることが好ましい。ここで、前記(メタ)アクリロイル基とはメタクリロイル基、またはアクリロイル基である。
【0098】
本願発明の(D)成分としては、例えばビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2〜50)ジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、1 − アクリロイルオキシプロピル−2−フタレート、イソステアリルアクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアクリレート、ノニルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−メキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールメタクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル]プロパン、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、エトキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トチメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸トリ(エタンアクリレート)、ペンタスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリル1,3,5−ベンゼンカルボキシレート、トリアリルアミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、アロバービタル、ジアリルアミン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジスルフィド、ジアリルエーテル、ザリルシアルレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、1,3−ジアリロキシ−2−プロパノール、ジアリルスルフィドジアリルマレエート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジメタクリレート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジアクリレート等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。特に、ジアクリレートあるいはジメタクリレートの一分子中に含まれるEO(エチレンオキサイド)の繰り返し単位が2〜50モル含有されるものを用いた場合、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液に代表される水系現像液への溶解性が向上し、現像時間が短縮されるので好ましい。
【0099】
<(E)光重合開始剤>
本願発明の(E)光重合開始剤とは、UVなどのエネルギーによって活性化し、ラジカル重合性基の反応を開始・促進させる化合物である。
【0100】
本願発明の(E)成分は、前記構造であれば特に限定はされないが、例えば、ミヒラ−ズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリス(ジメチルアミノ)トリフェニルメタン、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ジイミダゾール、アセトフェノン、ベンゾイン、2−メチルベンゾイン、ベンゾインメチルエ−テル、ベンゾインエチルエ−テル、ベンゾインイソプロピルエ−テル、ベンゾインイソブチルエ−テル、2−t−ブチルアントラキノン、1,2−ベンゾ−9,10−アントラキノン、メチルアントラキノン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジアセチルベンジル、ベンジルジメチルケタ−ル、ベンジルジエチルケタ−ル、2(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2[2’(5’’−メチルフリル)エチリデン]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−S−トリアジン、2,6−ジ(p−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドカルコン、ジ(テトラアルキルアンモニウム)−4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルフォネ−ト、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、ビス(n5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、ヨード二ウム,(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシオム)などが挙げられる。前記(E)成分は適宜選択することが望ましく、1種以上を混合させて用いることが望ましい。
【0101】
本願発明にかかる(E)成分は、(A)成分として二重結合を有したもの及び(D)成分の合計100重量部対して、0.1〜20重量部となるように配合されていることが好ましい。前記配合割合にすることで黒色感光性樹脂組成物の感光性が向上するので好ましい。(E)成分が前記範囲よりも少ない場合には、光照射時のラジカル重合性基の反応が起こりにくく、硬化が不十分となることが多い場合がある。また、(E)成分が前記範囲よりも多い場合には、光照射量の調整が難しくなり、過露光状態となる場合がある。そのため、光硬化反応を効率良く進めるためには前記範囲内に調整することが好ましい。
【0102】
<(F)難燃剤>
本願発明における難燃剤とは、プラスチック、木材、繊維などの可燃性物質に添加された場合、その物質に難燃性を付与することができる物質のことである。
【0103】
本願発明の(F)難燃剤としては、重量減少開始温度300℃以上であることにより、ハンダ耐熱性における膨れや剥がれにおける特性が優れるので好ましい。本願発明の難燃剤は得に限定されないが、例えば、縮合リン酸エステル系化合物、ホスファゼン系化合物、金属水酸化物、ホスフィン酸塩などが挙げられる。
【0104】
前記縮合リン酸エステル系化合物としては、例えば、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
【0105】
前記ホスファゼン系化合物としては、環状構造のシクロホスファゼン、それを開環重合して得られる鎖状ポリマー、並びにシクロホスファゼンを多官能な化合物で修飾して重合したシクロポリマー等多様な誘導体であり、フェノキシホスファゼンが耐熱性の観点から好ましく、さらにはシアノ基、アルキル基などの置換基が存在する置換フェノキシフォスファゼンが溶解性の観点から好ましい。前記ホスファゼン系化合物としては、例えば、架橋フェノキシホスファゼン、置換フェノキシホスファゼン、フェノール性水酸基含有フェノキシホスファゼン、非架橋メトキシフェノキシホスファゼン系等が挙げられる。
【0106】
前記金属水酸化物としては、結晶水を含有する金属化合物であれば特に限定はされないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、六水酸化スズ亜鉛、ホウ酸亜鉛3.5水和物、カルシウムアルミネート水和物等が挙げられる。
【0107】
前記ホスフィン酸塩とは、下記一般式(9)で示される化合物である。
【0108】
【化10】
【0109】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に直鎖状または枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群の少なくとも1種より選択される金属類を示し、tは1〜4の整数である。)。
【0110】
前記ホスフィン酸塩は、前記構造であれば特に限定はされないが、例えば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル等を挙げることができ、これらは単独であるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
また、本願発明の(F)成分は、重量減少開始温度が300℃以上である。本願発明における重量開始温度測定方法は、特に限定されないが、例えば以下方法で重量減少開始温度測定を行い、重量減少が発生する瞬間の温度を読み取ることにより測定できる。
【0112】
(重量減少開始温度)
使用装置:ティー・エイ・インスツメント・ジャパン(株) STD Q600
測定温度:20℃〜600℃ 20℃/分
ガス雰囲気;N200ml/min
リファレンス:Ptパン
サンプル量:5〜8mg。
【0113】
<その他成分>
本願発明の黒色感光性樹脂組成物には、さらに必要に応じて接着助剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤無機フィラー等の各種添加剤を加えることができる。
【0114】
前記消泡剤としては、例えば、アクリル系化合物、ビニル系化合物、ブタジエン系化合物等が挙げられる。
【0115】
前記レベリング剤としては、例えば、アクリル系化合物、ビニル系化合物等が挙げられる。
【0116】
前記接着助剤(密着性付与剤ともいう。)としては、シランカップリング剤、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
【0117】
前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0118】
前記無機フィラーとしては、硫酸バリウム、シリカ、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン等が挙げられる。 <黒色感光性樹脂組成物の混合方法>
本願発明の黒色感光性樹脂組成物は、前記(A)〜(F)成分及びその他成分を粉砕・分散させて混合し、得られることができる。粉砕・分散方法としては、特に限定されるものではないが、例えばビーズミル、ボールミル、3本ロール等の一般的な混練装置を用いて行われる。黒色感光性樹脂組成物に含まれる粒子の粒子径はJIS K 5600−2−5で規定されたゲージを用いる方法で測定することができる。また粒度分布測定装置を使用すれば、平均粒子径、粒子径、粒度分布を測定することができる。
【0119】
本願発明の黒色感光性樹脂組成物を直接に用いて、又は、黒色感光性樹脂組成物溶液を調製した後に、以下のようにして絶縁膜又はレリーフパターンを形成することができる。先ず、前記黒色感光性樹脂組成物、又は、黒色感光性樹脂組成物溶液を基板に塗布し、乾燥して有機溶媒を除去する。基板への塗布はスクリ−ン印刷、カ−テンロ−ル、リバ−スロ−ル、スプレーコーティング、スピンナーを利用した回転塗布等により行うことができる。塗布膜(好ましくは厚み:5〜100μm、特に10〜100μm)の乾燥は120℃以下、好ましくは40〜100℃で行う。
【0120】
次いで、乾燥後、乾燥塗布膜にネガ型のフォトマスクを置き、紫外線、可視光線、電子線などの活性光線を照射する。次いで、未露光部分をシャワー、パドル、浸漬または超音波等の各種方式を用い、現像液で洗い出すことによりレリ−フパタ−ンを得ることができる。なお、現像装置の噴霧圧力や流速、エッチング液の温度によりパターンが露出するまでの時間が異なる為、適宜最適な装置条件を見出すことが望ましい。
【0121】
前記現像液としては、アルカリ水溶液を使用することが好ましい。この現像液には、メタノ−ル、エタノ−ル、n−プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、N−メチル−2−ピロリドン等の水溶性有機溶媒が含有されていてもよい。前記のアルカリ水溶液を与えるアルカリ性化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムイオンの、水酸化物または炭酸塩や炭酸水素塩、アミン化合物などが挙げられ、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、N−メチルジエタノ−ルアミン、N−エチルジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、トリイソプロパノ−ルアミン、トリイソプロピルアミンなどを挙げることができ、水溶液が塩基性を呈するものであればこれ以外の化合物も当然使用することができる。本願発明の黒色感光性樹脂組成物の現像工程に好適に用いることのできる、アルカリ性化合物の濃度は、0.01〜20重量%、特に好ましくは、0.02〜10重量%とすることが好ましい。また、現像液の温度は黒色感光性樹脂組成物の組成や、アルカリ現像液の組成に依存しており、一般的には0℃以上80℃以下、より一般的には、10℃以上60℃以下で使用することが好ましい。
【0122】
前記現像工程によって形成したレリ−フパタ−ンは、リンスして不用な残分を除去する。リンス液としては、水、酸性水溶液などが挙げられる。
【0123】
次いで、前記得られたレリ−フパタ−ンの加熱処理を行う。加熱処理を行って、分子構造中に残存する反応性基を反応させることにより、耐熱性に富む絶縁膜を得ることができる。絶縁膜の厚みは、配線厚み等を考慮して決定されるが、2〜50μm程度であることが好ましい。このときの最終硬化温度は配線等の酸化を防ぎ、配線と基材との密着性を低下させないことを目的として低温で加熱して硬化できることが望まれている。
【0124】
この時の硬化温度は100℃以上250℃以下であることが好ましく、更に好ましくは120℃以上200℃以下であり、特に好ましくは130℃以上180℃以下である。最終加熱温度が高くなると配線の酸化劣化が進むので望ましくない。
【0125】
本願発明の黒色感光性樹脂組成物から得られる絶縁膜は、好適には厚さ2〜50μm程度の膜厚で光硬化後少なくとも10μmまでの解像力、特に10〜1000μm程度の解像力のものである。このため本願発明の黒色感光性樹脂組成物から得られる絶縁膜は、フレキシブル基板の絶縁材料として特に適しているのである。また更には、光硬化型の各種配線被覆保護剤、感光性の耐熱性接着剤、電線・ケーブル絶縁被膜、等に用いられる。
【0126】
尚、本願発明は前記黒色感光性樹脂組成物、又は、黒色感光性樹脂組成物溶液を基材表面に塗布し乾燥して得られた樹脂フィルムを用いても同様の絶縁材料を提供することができる。
【実施例】
【0127】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0128】
(合成例1)
<(A)バインダーポリマー1>
攪拌機、温度計、及び窒素導入管を備えた反応容器に、重合用溶媒としてメチルトリグライム(=1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン)30.00gを仕込み、これに、ノルボルネンジイソシアネート10.31g(0.050モル)を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら80℃に加温して溶解させた。この溶液に、ポリカーボネートジオール50.00g(0.025モル)(旭化成株式会社製、製品名PCDL T5652、重量平均分子量2000)及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸3.70g(0.025モル)をメチルトリグライム30.00gに溶解した溶液を1時間かけて添加した。この溶液を5時間80℃で加熱攪拌を行い反応させた。前記反応を行うことで分子内にウレタン結合及びカルボキシル基を含有する樹脂溶液(A−1)を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は52%、重量平均分子量は5,600、固形分の酸価は22mgKOH/gであった。尚、固形分濃度、重量平均分子量、酸価は下記の方法で測定した。
本願発明の(A)成分の重量平均分子量は、例えば、以下の方法で測定することができる。
【0129】
(重量平均分子量測定)
使用装置:東ソーHLC−8220GPC相当品
カラム :東ソー TSK gel Super AWM−H(6.0mmI.D.×15cm)×2本
ガードカラム:東ソー TSK guard column Super AW−H
溶離液:30mM LiBr+20mM H3PO4 in DMF
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出条件:RI:ポラリティ(+)、レスポンス(0.5sec)
試料濃度:約5mg/mL
標準品:PEG(ポリエチレングリコール)。
【0130】
(実施例1〜8)
<黒色感光性樹脂組成物の調製>
(A)バインダーポリマー、(B)2種以上の有機顔料、(C)熱硬化性樹脂、(D)ラジカル重合性化合物、(E)光重合開始剤、及び(F)難燃剤を含有する黒色感光性樹脂組成物を作製した。それぞれの構成原料の樹脂固形分での配合量及び原料の種類を表1〜3に記載する。なお、表中の有機溶媒である1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタンは前記合成した樹脂溶液に含まれる溶剤も含めた全溶剤量である。黒色感光性樹脂組成物ははじめに一般的な攪拌翼のついた攪拌装置で混合し、その後3本ロールミルで2回パスし均一な溶液とした。グラインドメーターにて粒子径を測定したところ、いずれも10μm以下であった。混合溶液を脱泡装置で溶液中の泡を完全に脱泡して下記評価を実施した。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
<1>日本化薬株式会社製 カルボキシル基含有ウレタン変性エポキシ(メタ)アクリレート樹脂 製品 「KAYARAD UXE−3000」
<2>クラリアントジャパン株式会社製 紫色着色剤 製品名 「PV Fast Violet ER−02」 Pigment Violet 19
<3>BASF株式会社製 銅フタロシアニン系有機顔料 製品名 「Irgaculite Blue GLVO」Pigment Blue 15:4
<4>クラリアントジャパン株式会社製 オレンジ色着色剤 製品名 「PV Fast Orange GRL」 Pigment Orange 43
<5>BASF株式会社製 黄色着色剤 製品名 「PV Fast Yellow HGR」 Pigment Yellow 191
<6>クラリアントジャパン株式会社製 赤着色剤 製品名 「Graphtol Carmine HF3C」 Pigment Red 176
<7>BASF株式会社製 黒色着色剤 製品名 「Lumogen Black FK 4280」
<8>日産化学株式会社製 多官能エポキシ樹脂(トリグリシジルイソシアヌレート)製品名 「TEPIC−SP」
<9>日立化成工業株式会社製 EO変性ビスフェノールAジメタクリレート 製品名 「FA−321M」
<10>BASFジャパン株式会社製 オキシムエステル系光重合開始剤 製品名 「Irgacure OXE−02」
<11>大八化学工業株式会社製 難燃剤 製品名 「CR−741」 重量減少開始温度 308℃
<12>大塚化学株式会社製 難燃剤 製品名 「SPB−100」 重量減少開始温度 301℃
<13>ナバルテック社製 難燃剤 製品名 「AOH−60」 重量減少開始温度 308℃
<14>クラリアントジャパン株式会社製 難燃剤 製品名 「exolit OP−935」 重量減少開始温度 TGA 353℃
<15>ナバルテック社製 難燃剤 製品名 「APYRAL 1E」 重量減少開始温度 202℃
<16>共栄社化学株式会社製 ブタジエン系消泡剤 製品名 「フローレン AC−2000」。
【0135】
難燃剤が300℃以上の重量減少開始温度を有しているのかを確認するため以下の条件で測定を行った。
使用装置:ティー・エイ・インスツメント・ジャパン(株) STD Q600
測定温度:20℃〜600℃ 20℃/分
ガス雰囲気;N200ml/min
リファレンス:Ptパン
サンプル量:5〜8mg。
【0136】
<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>
前記黒色感光性樹脂組成物を、ベーカー式アプリケーターを用いて、25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名25NPI)に最終乾燥厚みが20μmになるように100mm×100mmの面積に流延・塗布し、80℃で20分乾燥した後、300mJ/cmの積算露光量の紫外線を照射して露光した。次いで、1.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃に加熱した溶液を用いて、1.0kgf/mmの吐出圧で90秒スプレー現像を行った。現像後、純水で十分洗浄した後、150℃のオーブン中で30分加熱硬化させてポリイミドフィルム上に黒色感光性樹脂組成物の絶縁膜を作製した。
【0137】
<絶縁膜の評価>
以下の項目につき評価を行った。評価結果を表4〜6に記載する。
【0138】
(i)電気絶縁信頼性
フレキシブル銅貼り積層版(電解銅箔の厚み12μm、ポリイミドフィルムは株式会社カネカ製アピカル25NPI、ポリイミド系接着剤で銅箔を接着している)上にライン幅/スペース幅=100μm/100μmの櫛形パターンを作製し、10容量%の硫酸水溶液中に1分間浸漬した後、純水で洗浄し銅箔の表面処理を行った。その後、前記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で櫛形パターン上に20μm厚みの黒色感光性樹脂組成物の絶縁膜を作製し試験片の作成を行った。85℃、85%RHの環境試験機中で試験片の両端子部分に100Vの直流電流を印加し、絶縁抵抗値の変化やマイグレーションの発生などを観察した。
○:試験開始後、1000時間で10の8乗以上の抵抗値を示し、マイグレーション、デンドライトなどの発生が無いもの。
×:試験開始後、1000時間でマイグレーション、デンドライトなどの発生があるもの。
【0139】
(ii)ハンダ耐熱性
前記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、35μm厚みの銅箔表面に20μm厚みの絶縁膜積層フィルムを作製した。得られた絶縁膜をハンダ浴に浸し、変色及び膨れ・剥がれが発生しない最低温度を測定した。測定温度、260、280、300、320、350℃とし、各種温度で絶縁膜の変色及び膨れ・剥がれが発生しない時点を○と表記した。
【0140】
(iii)難燃性
プラスチック材料の燃焼性試験規格UL94VTMに従い、以下のように燃焼性試験を行った。前記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で、25μm厚みのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製:商品名アピカル25NPI)両面に20μm厚みの絶縁膜積層フィルムを作製した。 前記作製したサンプルを寸法:50mm幅×200mm長さ×75μm 厚み(ポリイミドフィルムの厚みを含む)に切り出し、125mmの部分に標線を入れ、直径約13mmの筒状に丸め、標線よりも上の重ね合わせ部分(75mmの箇所)、及び、上部に隙間がないようにPIテープを貼り、燃焼性試験用の筒を20本用意した。 そのうち10本は(1)23℃/50%相対湿度/48時間で処理し、残りの10本は(2)70℃で168時間処理後無水塩化カルシウム入りデシケーターで4時間以上冷却した。これらのサンプルの上部をクランプで止めて垂直に固定し、サンプル下部にバーナーの炎を3秒間近づけて着火する。3秒間経過したらバーナーの炎を遠ざけて、サンプルの炎や燃焼が何秒後に消えるか測定する。
○:各条件((1)、(2))につき、サンプルからバーナーの炎を遠ざけてから平均(10本の平均)で10秒以内、最高で10秒以内に炎や燃焼が停止し自己消火し、かつ、評線まで燃焼が達していないもの。
×:1本でも10秒以内に消火しないサンプルがあったり、炎が評線以上のところまで上昇して燃焼するもの。
【0141】
(iv)解像性
前記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目と同様の方法で得られた絶縁膜の表面観察を行い判定した。ただし、露光は、ライン幅/スペース幅=100μm/100μmのネガ型フォトマスクを置いて露光した。
〇:ポリイミドフィルム表面に顕著な線太りや現像残渣無くライン幅/スペース幅=100/100μmの感光パターンが描けているもの。
×:ポリイミドフィルム表面にライン幅/スペース幅=100/100μmの感光パターンが描けていないもの。
【0142】
(v)隠蔽性
1mm角のマス目を有する方眼紙の上に前記<ポリイミドフィルム上への塗膜の作製>の項目で得られた試験片を置き、目視にて試験片の上からマス目を確認する方法で隠蔽性の評価を行った。
○:マス目が見えないもの。
×:マス目が見えるもの。
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
【表6】