(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1のフィルム冷却構造において、前記突起の前記部材表面から突出した部分は、表面に角部がないように曲面で形成されていることを特徴とするフィルム冷却構造。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
1.フィルム冷却構造
図1は本発明の一実施の形態に係るフィルム冷却構造を示す斜視図である。同図では、高温部材1のフィルム冷却構造近傍を抜き出して部分的に表している。
【0013】
図示したフィルム冷却構造は、高温気体10の流れに表面(高温表面)2が晒される高温部材1をフィルム冷却するものであり、高温表面2に吹出口5が開口したフィルム冷却孔4、及び高温表面2に設けた一対の突起30を備えている。
【0014】
本フィルム冷却構造においては、高温表面2に沿って高温気体10が矢印方向に流れる。高温部材1には冷却気体20を流通させる内部空間があり、内部空間に臨む高温部材1の内壁面を低温表面3と称する。この低温表面3は高温表面2と表裏の関係にある。フィルム冷却孔4は、低温表面3から高温表面2に向かって高温部材1を貫通していて、高温部材1内に導かれた冷却気体20が低温表面3側の流入口6からフィルム冷却孔4に流入し、吹出口5から高温気体10の流れの中へ吹き出す。吹出口5から噴き出した冷却気体20が高温表面2を覆うことによって高温気体10から高温表面2への入熱を抑制する。
【0015】
一対の突起30は、フィルム冷却孔4における高温気体10の流れ方向の上流側の位置において、高温気体10の流れ方向から見てフィルム冷却孔4の中心(
図2中のA−A線)を挟んで両側に互いに離して配置してある。突起30の高温表面2から突出した部分の表面(突起30の高温気体10に接し得る表面)は、角部がないように曲面で形成されている。具体的には、突起30は全体としては高温表面2から離れる方向に凸の曲面形状をしていて、好ましくは、高温表面2との境界付近では変曲して高温表面2に向かって凸の曲面で形成されていて高温表面2に滑らかに接続する。
【0016】
図2は
図1のフィルム冷却構造を高温表面2と直交する方向から見た(高温気体10の流路側から見た)平面図である。
【0017】
同図に示すように、高温表面2と直交する方向から見ると、一対の突起30はそれぞれ短軸及び長軸を有する細長い形状をしていて、互いの長軸の間隔が高温気体10の流れ方向の下流側に向かって広がるようにV字型に配置されている。突起30の短軸方向には幅W、長軸方向には長さL(>W)の寸法を持つ。一対の突起30の中心点はA−A線を挟んで間隔Sで離間している。また、フィルム冷却孔4の中心と一対の突起30の中心位置を通って高温表面2に直交する面(A−A線断面)に対して突起30の長軸は角度θで傾斜している。吹出口5の中心から突起30の中心までのA−A線方向に採った距離はDであり、フィルム冷却孔4の孔径(直径)はdである。本実施の形態では、突起30の短軸長(W)がフィルム冷却孔4の直径(d)以下に設定してある。
【0018】
図3は
図2のA−A線による矢視断面図である。
【0019】
同図に示したように、フィルム冷却孔4から吹き出した冷却気体20が極力高温表面2に沿って吹き出すように、フィルム冷却孔4は、低温表面3から高温表面2に向かって高温気体10の流れ方向に傾斜している。フィルム冷却孔4の中心線と高温表面2がなす角度は、制作上可能な範囲で小さく設定される(例えば30°程度)。Hは突起30の高さ(高温表面2からの突出量)である。
【0020】
2.比較例
図5は比較例に係るフィルム冷却構造を表す平面図、
図6は
図5の高温部材のB’−B’線による矢視断面図である。
図5は
図2に対応している。
【0021】
同図の比較例は、本実施の形態に係るフィルム冷却構造から突起30を省略した構成に相当する。高温気体110が矢印方向に流れ、吹出口105から冷却気体が吹き出している。フィルム冷却孔104は、高温表面102に対する冷却気体120の密着性を向上させるために低温表面103から高温表面102に向かって高温気体110の流れ方向に傾斜している。こうしたフィルム冷却孔104から冷却気体120が吹き出すと、
図6に示したように両脇から高温気体を巻き込むような一対の渦150,151が冷却気体120の周りに発生する。同図に示したように高温気体110の流れ方向から見ると、冷却気体120の右側の渦150は右回り(時計回り)に、冷却気体120の左側の渦151は左回り(反時計回り)に回転する。これら一対の渦150,151は冷却気体120と高温表面102の間に高温気体111,112を引き込み、冷却気体120の高温表面102からの剥離を促してフィルム冷却性能を低下させ得る。
【0022】
3.効果
(1)フィルム冷却性能の向上
図4は
図2の高温部材のB−B線による矢視断面図であり、
図6に対応する図である。
【0023】
同図において、高温気体10は紙面に直交する方向の手前から奥に向かって流れており、冷却気体20も吹出口5から紙面直交方向の奥に向かって流れている。高温表面2に沿って流れる高温気体10には、一対の突起30を越える際にフィルム冷却孔4に向かって吹き下ろす向きの旋回成分を付与される。具体的には、高温気体10の流れ方向の上流側から見て冷却気体20の右側の渦50は左回り(反時計回り)に、冷却気体20の左側の渦51は右回り(時計回り)に回転する。これら渦50,51は、冷却気体20の噴出に伴う一対の渦150,151(
図6参照)とそれぞれ反対方向に回転し渦150,151を弱める。その結果、旋回成分を付与された高温気体10(渦50,51)でフィルム冷却孔4から噴き出す冷却気体20が押えられ、冷却気体20の高温表面2からの剥離が抑制されてフィルム冷却性能が向上する。
【0024】
特に本実施の形態では、突起30を分離して一対の突起30の間に間隙流路を確保したことにより、高温気体10を間隙流路に通過させて渦50、51を強めることができる。これによって例えば突起30を一体構造にした場合に比べて冷却気体20の高温表面2からの剥離をより効果的に抑制することができる。
【0025】
また、本願発明者等は、フィルム冷却孔4の上流側に一対の突起30を設ける構成について、突起30の形状や配置のパターンを変えて幾通りかフィルム冷却性能を検討した。その結果、次の知見が得られた。
【0026】
まず、本実施の形態においては、前述した通り突起30の長さLを幅Wより長くして細長い形状とし、高温気体10の流れ方向の下流側に向かって開くV字型に一対の突起30を配置した。このフィルム冷却構造の場合、例えば突起30を円形に構成した場合や平行に配置した構成に比べて、
図4に示す渦50、51の速度成分が強化されフィルム冷却性能がより向上することが分かった。また、突起30の幅Wをフィルム冷却孔4の孔径dより小さくすることにより、渦50,51の強度がより強まり、フィルム冷却性能の向上に一層効果的であることも判った。
【0027】
また、検討したパターンの中では、突起の長さLを幅Wの5倍以上、突起の幅Wをフィルム冷却孔4の孔径dの半分以下、突起の間隔Sを孔径dの2倍程度、突起30の傾斜角θを15°〜45°、突起30の高さHを孔径dと同程度、突起30とフィルム冷却孔4との距離Dを孔径dの2倍程度の範囲に設定した場合に渦50,51が最も強まり、とりわけフィルム冷却性能の向上の効果が顕著であった。
【0028】
図7は本実施の形態に係るフィルム冷却構造における平均フィルム冷却効率の計測結果を示す図である。同図には、突起30の形状及び配置のパラメータを上記範囲で種々変更した場合にフィルム冷却性能が最も向上した例のフィルム冷却効率の計測結果を例示した。
【0029】
縦軸に示すフィルム冷却効率比は突起30を省略した単に円形のフィルム冷却孔を備えただけのフィルム冷却構造(以下、基準構造と称する)に対するフィルム冷却効率の比(平均フィルム冷却効率比)を表している。平均フィルム冷却効率は、フィルム冷却孔4の下流側の高温表面2の一定領域(高温気体10の横断方向に3d、流れ方向に10dの領域)における冷却効率の値の平均をとった。
【0030】
ここで、フィルム冷却効率は次の式(1)で表わすことができる。
【0031】
η=(Tg−Tm)/(Tg−Tc)
η:フィルム冷却効率
Tg:高温気体10の温度
Tc:冷却気体20の温度
Tm:高温表面2の温度
フィルム冷却効率ηは0から1の範囲の値である。
【0032】
また、
図7の横軸は冷却気体20の吹き出し比を表している。吹き出し比は次の式(2)で表わされる。
【0033】
BR=(ρc×uc)/(ρg×ug)
BR:吹き出し比
ρg:高温気体10の密度
ρc:冷却気体20の密度
ug:高温気体10の流速
uc:冷却気体20の流速
すなわち、吹き出し比BRは、高温気体10の質量流束に対する冷却気体20の質量流束の比を示している。
【0034】
同図に示したように、本実施の形態に係るフィルム冷却構造の平均フィルム冷却効率は、吹き出し比0.5〜1.0の範囲において基準構造に比べて1.8〜4.0倍に向上する結果得られた。比較のために先述した特許文献1のシェイプト孔の平均フィルム冷却効率を計測した結果、本実施の形態に係るフィルム冷却構造はシェイプト孔と同等の冷却性能が得られることが確認された。
【0035】
(2)空力損失の抑制
本実施の形態によれば、一対の突起30を分離した配置して渦50,51を強化することにより、突起30を設けたことによる空力損失を抑制することができる。突起30を曲面で形成したことも空力損失の抑制に寄与する。
【0036】
図8は本実施の形態に係るフィルム冷却構造における全圧損失の計測結果を示す図である。同図の縦軸は、上記基準構造における全圧損失に対する本実施の形態における全圧損失の比である。横軸は
図7と同様である。また、
図7と同様に比較のためにシェイプト孔における全圧損失の計測結果を併せて示している。
【0037】
図8に示したように、吹き出し比が0.5から1.0の範囲においては、吹き出し比が大きくなるほど本実施の形態に係るフィルム冷却構造における全圧損失は基準構造に比較して幾分増加する。しかし、シェイプト孔に比較すると増加量が小さいことがわかる。すなわち、
図7に示したようなシェイプト孔と同等の高いフィルム冷却効率の向上の効果が得られつつも、シャイプト孔に比べて空力損失を抑制することができる。
【0038】
(3)製作容易性の確保
本実施の形態に係るフィルム冷却構造は、突起30を高温部材1と一体に鋳造することができ、高温部材1の鋳造後に突起30を接合する工程は必要ない。またフィルム冷却孔は鋳造後に放電加工などで単純な円孔を穿孔すれば良いので、従来のフィルム冷却孔の加工と比べて複雑になることはない。したがって、シェイプト孔を加工する場合より製作時間の短縮とコストの低減を図ることができる。またフィルム冷却孔の構造が単純なので加工精度を高くすることができ、冷却性能の低下やフィルム冷却孔毎のばらつきを抑えることができる。
【0039】
(4)その他
例えば高温表面に溝を設けてフィルム冷却孔の吹出口を溝の内部に配置した場合、フィルム冷却孔から吹き出した冷却気体が溝の内壁に衝突して一時的に溝の内部に滞留し、冷却気体の高温気体に対する干渉が抑制されて冷却効率が向上し得る。しかし、例えばタービン翼の圧力面又は負圧面のような曲面に施工する場合には均一な深さの溝を加工することは困難である。また、高温ガスタービン翼に適用されるセラミックス製の遮熱被膜が溝加工に伴って部分的に除去される場合、遮熱被膜が溝付近から剥離し易くなって耐久性に課題が生じ得る。
【0040】
それに対し、本実施の形態の場合、フィルム冷却孔4以外に特に加工の必要がなく、上記のような課題も生じない。
【0041】
4.ガスタービン
図12は本発明のフィルム冷却構造の一適用対象であるガスタービンの部分断面図である。この図に示したガスタービンは、大気Aを吸い込んで圧縮する圧縮機100、圧縮機100からの圧縮空気Bを燃料Cとともに燃焼する燃焼器200、及び燃焼器200からの燃焼ガスDによって駆動するタービン300を備えている。圧縮機100の圧縮機ロータ100Aとタービン300のタービンロータ300Aと同軸上に連結されている。また、圧縮機ロータ100A又はタービンロータ300Aには、発電機(図示せず)が連結される。これによってタービンロータ300Aとともに負荷機器が駆動し、タービンロータ300Aの回転エネルギーが電気エネルギーに変換される。なお、タービンロータ300Aに軸動力を与えた燃焼ガスEは機外に排出され、例えば浄化装置等に導かれた後、放出される。
【0042】
タービン300は、上記タービンロータ300Aと、このタービンロータ300Aの周方向外側を覆うケーシング315とを備えている。タービンロータ300Aは、外周部に動翼316を周方向に複数設けたタービンディスク317とスペーサ318とを軸方向に交互に複数積層して構成されている。また、ケーシング315の内側には、各段落において動翼316の下流側に対向するように静翼321の環状翼列が固定されている。
【0043】
前述した本実施の形態に係るフィルム冷却構造は、このようなガスタービンのタービン部材、例えば静翼321や動翼316に適用することができる。特に燃焼ガスDの温度が高い初段に好適に適用することができる。適用例を順次例示していく。
【0044】
5.適用例1
まず、本発明の高温部材のフィルム冷却構造をガスタービン翼の翼面部に適用した例について説明する。
【0045】
図9はガスタービンの静翼321の翼面201に本発明に係るフィルム冷却構造を適用した例を示す図である。静翼321は同一段落において円環状に複数配列されるが、同図ではそのうちの一つを抜き出して図示している。ガスタービンの燃焼ガスD(高温気体)が静翼321に流れ込むと、翼面201とエンドウォール面202,203が高温の燃焼ガスDに晒される。静翼321の翼面201の腹側面(圧力面)には、本発明に係るフィルム冷却構造が設けられている。本例では本発明に係るフィルム冷却構造をタービン径方向(静翼の翼長方向)に複数のフィルム冷却構造を一列設けた場合を例示している。フィルム冷却構造は
図1−
図4で説明した例と同様であり、翼面201におけるフィルム冷却孔4の燃焼ガスDの流れ方向の上流側に一対の突起30が設けてある。
【0046】
ここで、ガスタービンシステムでは、省資源化及び環境保全の観点から、熱効率向上のために燃焼ガスの高温化が進められている。そのため高温気体に晒されるタービン翼のような部材においては、その健全性を確保するために材料の制限温度以下に冷却して、高温腐食や構造強度の低下を抑制する必要がある。それに対し、ガスタービンの高温部材の冷却には、一般に圧縮機から抽気した圧縮空気を使用するため、高温化に伴って冷却気体量が増加すると燃焼器で燃焼する空気量が減って出力が低下する。また、燃焼ガスが流れるタービンのガスパスに部材冷却後の冷却気体が放出されると、燃焼ガスの温度が低下して熱効率が低下する。
【0047】
それに対し、本例では本発明に係るフィルム冷却構造を適用したことによって冷却効率が向上するため、燃焼ガスの温度を上昇させても冷却気体量の増加を抑制することができる。前述したように、突起30のない基準構造に比べて本発明のフィルム冷却構造はシャイプト孔と同等の高い冷却効率を得ることができ、かつシェイプト孔に比べて空力損失を抑制することができる。
【0048】
また、ガスタービン翼は、通常、精密鋳造で翼と内部フィルム冷却構造を一体に製作するが、突起30も翼と一体で精密鋳造することができるので、従来の製作工程を変更することなく、製作時間もコストも増やすことなく製作することができる。また、フィルム冷却孔4の加工も従来と同様に、精密鋳造で翼を製作した後、前述した通り放電加工等で穿孔することができる。フィルム冷却孔4は円孔で良いので、シェイプト孔に比べて加工が格段に容易であり、製作時間とコストを抑制することができる。また静翼321のように、翼面201とエンドウォール202,203の境目付近や翼間の狭隘部分等、フィルム冷却孔4を放電加工するための電極が入り難いような場所でも円孔であれば一回の放電加工で済むので容易に製作することができる。
【0049】
なお、一般的に翼面の背側よりも腹側のフィルム冷却孔から吹き出した冷却気体の方が翼面から剥がれ易い。したがって、
図9の例のように翼面202の腹側に本発明に係るフィルム冷却構造を適用することによって特に効果的にフィルム冷却性能を向上させることができる。但し、腹側面のみならず、背側面にも本発明に係るフィルム冷却構造は適用可能であって前述した効果を奏することができる。背側及び腹側の少なくとも一方に本発明に係るフィルム冷却構造を設けることができる。また、
図9にはフィルム冷却構造を一列設けた場合を例示しているが、複数列設けることも可能である。
【0050】
6.適用例2
本発明に係るフィルム冷却構造をガスタービン静翼のエンドウォールに適用した例を説明する。
【0051】
図10はガスタービンの静翼321のエンドウォール203に本発明に係るフィルム冷却構造を適用した例を示す図である。本例では一つのエンドウォール203に2枚の静翼321を組み合わせた構成を例示している。翼面201と同様にガスパスを構成するエンドウォール203の表面も高温の燃焼ガスDに晒される。したがって、エンドウォール203の健全性を確保するため、エンドウォール203に複数のフィルム冷却孔4が設けられていて、ここから冷却気体を噴き出すことによってエンドウォール203の温度を低減している。本例ではフィルム冷却孔4はエンドウォール203の前縁306の近くに配置されていて、その上流側に一対の突起30が設けてある。フィルム冷却構造は
図1−
図4で説明した例と同様である。
【0052】
図9の例と同様、ガスタービンの熱効率向上のために燃焼温度を上げた場合でも、冷却気体量や空力損失の増加を抑制することができるので、ガスタービンの熱効率を効果的に向上することができる。
【0053】
また、翼間307の領域では翼前縁208で発生した馬蹄形渦等によって翼間307を流れる燃焼ガスDの乱れが大きく、フィルム冷却孔4の上流側に設けた突起30の効果が低減されてしまう。それに対し、本実施の形態のように翼間307を避けてエンドウォール203の前縁306の近くに発明を適用したことによって特に効果的にフィルム冷却効率を向上させることができる。但し、翼間307に発明を適用してフィルム冷却性能の向上を図ること自体は可能である。また、
図10では、エンドウォール203に発明を適用した場合を図示したが、エンドウォール202,203の少なくとも一方に本発明に係るフィルム冷却構造を設けることができる。また、フィルム冷却構造を一列設けた場合を例示しているが、複数列設けることも可能である。
【0054】
また、翼本体と同様にエンドウォール202,203も精密鋳造で製作するので、突起30も一体に精密鋳造することによって従来の製作工程から製作時間やコストを増やすことなく製作可能である。製作容易性についても
図9の例と同様に確保できる。また、翼面201に近いエンドウォール202,203の表面に複雑な形状の孔を穿つことは難しいが、フィルム冷却孔4の場合は円孔で足りるので容易に穿孔することができる。
【0055】
7.適用例3
図11はガスタービンの動翼316の翼面301に本発明に係るフィルム冷却構造を適用した例を示す図である。
【0056】
図示したように、動翼316の内部は隔壁331によって前側の流路332と後側の流路333に仕切られた複数の流路で構成される蛇行流路構造となっている。本図では、前縁側の3つの流路と後縁側の3つの流路が一組となっており、それぞれ翼の付根側と先端側で繋がった蛇行流路となっている。翼の付根部に冷却空気の導入口があり、圧縮機100からの圧縮空気の一部が冷却気体としてタービン軸を介して導かれていて、翼前縁部や腹側部分に設けたフィルム冷却孔4から冷却気体がガスパスに放出される。本例では、腹側と背側のフィルム冷却孔4の上流側に一対の突起30を設けた場合を例示している。このフィルム冷却構造は
図1−
図4で説明した例と同様である。
【0057】
本例のように動翼316に発明を適用した場合も
図9や
図10の場合と同様の効果が得られる。なお、
図11では、フィルム冷却構造は翼スパン方向に複数個並べた列をコード長方向に背側と腹側それぞれ1列ずつ設けた構成を例示したが、背側あるいは腹側のみ、またはコード長方向に複数列のフィルム冷却構造を設けても勿論良い。
【0058】
8.その他
適用例1−3は、それぞれ単独で適用することもできるし、他の少なくとも1つの適用例と組み合わせて適用することもできる。また、本発明に係るフィルム冷却構造をガスタービンの静翼321、エンドウォール202,203、動翼316に適用した例を説明したが、例えば動翼316のプラットフォーム、シュラウド等、一般にフィルム冷却が採用されている種々の高温部材にも本発明は適用可能であり同様の効果が得られる。また、タービン以外の高温機器、例えば燃焼器200においてフィルム冷却が採用され得る部材には本発明に係るフィルム冷却構造は適用可能であり同様の効果が得られる。