特許第6134211号(P6134211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134211
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】二重殻タンクおよび液化ガス運搬船
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/08 20060101AFI20170515BHJP
   B65D 90/02 20060101ALI20170515BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   F17C3/08
   B65D90/02 Z
   B63B25/16 K
   B63B25/16 F
   B63B25/16 N
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-128847(P2013-128847)
(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-4382(P2015-4382A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦口 良介
(72)【発明者】
【氏名】村上 麻子
(72)【発明者】
【氏名】和泉 徳喜
(72)【発明者】
【氏名】佐野 敦司
(72)【発明者】
【氏名】村岸 治
【審査官】 浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−074917(JP,U)
【文献】 特公昭51−030290(JP,B1)
【文献】 特開平07−232695(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0267061(US,A1)
【文献】 独国特許出願公開第03836071(DE,A1)
【文献】 特開昭51−028984(JP,A)
【文献】 実開昭55−024544(JP,U)
【文献】 実公昭28−010786(JP,Y1)
【文献】 英国特許出願公開第980188(GB,A)
【文献】 特開平8−295394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
B63B 25/16
B65D 90/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横置き円筒状の二重殻タンクであって、
液化ガスを貯留する内槽本体部および前記内槽本体部から突出する内槽ドームを有する内槽と、
前記内槽との間に真空空間を確保する外槽であって、前記内槽本体部を取り囲む外槽本体部および前記内槽ドームを取り囲む外槽ドームを有する外槽と、を備え、
前記内槽ドームおよび前記外槽ドームは、配管によって貫通されており、
前記内槽ドームには、内槽マンホールが設けられており、
前記外槽ドームには、前記内槽マンホールと対応する位置に外槽マンホールが設けられている、二重殻タンク。
【請求項2】
前記内槽ドームと前記外槽ドームの間には、前記真空空間を、前記内槽マンホールと前記外槽マンホールの間の部分を含む第1空間と、前記内槽本体部側の第2空間と、に仕切る環状の遮断部材が配置されている、請求項1に記載の二重殻タンク。
【請求項3】
前記遮断部材は、前記内槽ドームおよび前記外槽ドームが前記配管によって貫通される位置よりも前記内槽本体部側に配置されている、請求項2に記載の二重殻タンク。
【請求項4】
前記内槽ドームの外側面には、当該外側面から突出する第1リングが設けられており、
前記外槽ドームの内側面には、当該内側面から突出する第2リングが設けられており、
前記遮断部材は、前記第1リングと前記第2リングとを橋架するように配置されている、請求項2または3に記載の二重殻タンク。
【請求項5】
前記第1リングおよび前記第2リングは、前記内槽ドームの突出方向を規定する特定方向に扁平で、かつ、前記特定方向に互いに対向する板状の部材であり、
前記遮断部材は、前記特定方向に延びるベローズ管である、請求項4に記載の二重殻タンク。
【請求項6】
前記配管における前記内槽ドームと前記外槽ドームとの間の部分を覆う防熱材をさらに備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二重殻タンク。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の二重殻タンクが搭載された液化ガス運搬船。
【請求項8】
前記二重殻タンクを覆うタンクカバーを備え、前記二重殻タンクと前記タンクカバーの間の空間には不活性ガスが封入されている、請求項7に記載の液化ガス運搬船。
【請求項9】
前記タンクカバーには、前記外槽マンホールと対応する位置に最外マンホールが設けられている、請求項8に記載の液化ガス運搬船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスの輸送や貯蔵に用いられる二重殻タンク、およびこの二重殻タンクを備えた液化ガス運搬船に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガスの輸送や貯蔵に用いられる二重殻タンクとしては、例えば特許文献1に開示されているような、横置き円筒状の二重殻タンクが知られている。この二重殻タンクは、液化ガスを貯留する内槽と、内槽との間に断熱層として真空空間を確保する外槽とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開6−159593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような二重殻タンクでは、液化ガスをタンクの内部から外部に排出するためのサブマージドポンプが内槽内の底部に配置されることがある。また、内槽には、当該内槽を貫通する液化ガス配管や電気配管などの各種の配管を集約するための内槽ドームが設けられることがある。例えば、内槽ドームは、液化ガスを貯留する内槽本体部から上向きに突出するように形成される。この場合、外槽には、内槽ドームの全体が真空空間で覆われるように、内槽ドームとは非接触で内槽ドームを取り囲む外槽ドームが設けられる。これにより、内槽ドームが設けられた部分でもタンクの外部から内槽内への熱侵入を抑制することができる。そして、液化ガス配管や電気配管などの各種の配管は、内槽ドームおよび外槽ドームを貫通するように配置される。
【0005】
また、ポンプなどの機器を内蔵する二重殻タンクでは、タンク内のポンプなどの機器を点検するためのマンホールを設ける必要がある。二重殻タンクにマンホールを設ける場合は、ドーム周辺には多くの配管が配置されるため、ドームとマンホールを離れた位置に配置すること、例えば、タンクの軸方向の一方の端部に上記の内槽ドームおよび外槽ドームを形成し、他方の端部に内槽マンホールおよび外槽マンホールを形成することが考えられる。
【0006】
さらに、マンホールを設ける場合は、ドーム部分と同様に、マンホール部分でもタンクの外部から内槽内への熱侵入を抑制するという観点からすれば、マンホール部分も互いに非接触な二重管で構成することが考えられる。具体的には、内槽に、内槽マンホールを規定する内槽マンホール管を取り付け、外槽に、外槽マンホールを規定する、内槽マンホール管の全体を収容可能な外槽マンホール管を取り付ける。双方のマンホール管には、マンホール蓋が固定される。
【0007】
ところで、内槽に貯留される液化ガスは低温であるため、内槽に液化ガスが投入されたときには内槽が熱収縮する。一方、外槽と内槽の間には真空空間が在るために、内槽に液化ガスが投入されたときでも外槽の温度は大気温と同程度である。それ故に、上記のように内槽および外槽のそれぞれにドームが設けられかつマンホール管が取り付けられた構成では、外槽ドームから外槽マンホール管までの距離が変化しないのに対し、内槽ドームから内槽マンホール管までの距離が大きく変化する。その結果、例えば内槽ドームおよび外槽ドームを固定した場合には、内槽マンホール管が外槽マンホール管に接触するおそれがある。内槽ドームおよび外槽ドームを固定するとともに内槽マンホール管および外槽マンホール管を固定することも考えられるが、この場合には、内槽に熱応力が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、内槽に熱応力を生じさせることなく内槽ドームと外槽ドームとの相対位置および内槽マンホールと外槽マンホールとの相対位置を拘束することができる二重殻タンクおよびこの二重殻タンクを備えた液化ガス運搬船を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の二重殻タンクは、横置き円筒状の二重殻タンクであって、液化ガスを貯留する内槽本体部および前記内槽本体部から突出する内槽ドームを有する内槽と、前記内槽との間に真空空間を確保する外槽であって、前記内槽本体部を取り囲む外槽本体部および前記内槽ドームを取り囲む外槽ドームを有する外槽と、を備え、前記内槽ドームには、内槽マンホールが設けられており、前記外槽ドームには、前記内槽マンホールと対応する位置に外槽マンホールが設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、内槽ドームに内槽マンホールが設けられ、外槽ドームに外槽マンホールが設けられているので、内槽ドームと外槽ドームとの相対位置を拘束すれば、内槽マンホールと外槽マンホールとの相対位置も拘束される。しかも、それらの拘束を1箇所で実現することができるため、内槽が熱収縮したときに内槽に熱応力が生じることを防止できる。さらには、内槽マンホールを開けたときには、配管における内槽ドーム内に位置する部分を視認することができ、内槽内の定常点検を効率的に行うことができる。
【0011】
前記内槽ドームと前記外槽ドームの間には、前記真空空間を、前記内槽マンホールと前記外槽マンホールの間の部分を含む第1空間と、前記内槽本体部側の第2空間と、に仕切る環状の遮断部材が配置されていてもよい。この構成によれば、外槽マンホールを開いたときには、真空空間のうちのごく一部である第1空間のみが大気に開放される。従って、外槽マンホールを閉じた後に再度真空状態とすべき容積を少なくすることができる。
【0012】
前記遮断部材は、前記内槽ドームおよび前記外槽ドームが配管によって貫通される位置よりも前記内槽本体部側に配置されていてもよい。この構成によれば、外槽マンホールを開いたときに、配管における内槽ドームと外槽ドームの間の部分を点検することができる。
【0013】
前記内槽ドームの外側面には、当該外側面から突出する第1リングが設けられており、前記外槽ドームの内側面には、当該内側面から突出する第2リングが設けられており、前記遮断部材は、前記第1リングと前記第2リングとを橋架するように配置されていてもよい。この構成によれば、遮断部材を単純な形状とすることができる。
【0014】
例えば、前記第1リングおよび前記第2リングは、前記内槽ドームの突出方向を規定する特定方向に扁平で、かつ、前記特定方向に互いに対向する板状の部材であり、前記遮断部材は、前記特定方向に延びるベローズ管であってもよい。
【0015】
上記の二重殻タンクは、前記内槽ドームおよび前記外槽ドームを貫通する配管における前記内槽ドームと前記外槽ドームとの間の部分を覆う防熱材をさらに備えてもよい。この構成によれば、配管を通じたタンクの外部から内槽内への熱侵入を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の液化ガス運搬船は、上記の二重殻タンクが搭載されたことを特徴とする。
【0017】
上記の液化ガス運搬船は、前記二重殻タンクを覆うタンクカバーを備え、前記二重殻タンクと前記タンクカバーの間の空間には不活性ガスが封入されていてもよい。この構成によれば、液化ガスが例えば超低温の液化水素である場合には、内槽からの熱影響が強いタンク支持部の周囲に液化酸素が生成されることを防止することができる。
【0018】
例えば、前記タンクカバーには、前記外槽マンホールと対応する位置に最外マンホールが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内槽に熱応力を生じさせることなく内槽ドームと外槽ドームとの相対位置および内槽マンホールと外槽マンホールとの相対位置を拘束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る二重殻タンクが搭載された液化ガス運搬船の一部の側面断面図である。
図2図1のII−II線に沿った正面断面図である。
図3】二重殻タンクの要部の正面断面図である。
図4】変形例の二重殻タンクを示す正面断面図である。
図5】別の変形例の二重殻タンクを示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1および図2に、本発明の一実施形態に係る二重殻タンク2が搭載された液化ガス運搬船1の一部を示す。
【0022】
二重殻タンク2は、横置き円筒状であり、一般に、タンク2の軸方向が船長方向と平行となる向きで配置される。具体的に、二重殻タンク2は、内槽3と、内槽3との間に真空空間20を確保する外槽4を備える。
【0023】
内槽3は、液化ガスを貯留する内槽本体部31と、内槽本体部31から特定方向に沿って突出する内槽ドーム32とを有している。本実施形態では、特定方向が鉛直方向であり、内槽ドーム32は本体部31から上向きに突出している。ただし、内槽ドーム32の突出方向を規定する特定方向は、斜め方向であってもよい。
【0024】
内槽本体部31は、一定の断面形状で横方向に延びる胴部と、この胴部の両側の開口を塞ぐ半球状の閉塞部とで構成されている。ただし、閉塞部は、胴部と垂直なフラットであってもよいし、皿状であってもよい。
【0025】
内槽本体部31に貯留される液化ガスは、例えば、液化プロパンガス(LPG、約−45℃)、液化エチレンガス(LEG、約−100℃)、液化天然ガス(LNG、約−160℃)、液化水素(LH2、約−250℃)である。
【0026】
図3に示すように、内槽ドーム32は、内槽本体部31から上方に延びる周壁32aと、周壁32aの上端から上向きに盛り上がる皿状の天井壁32bを有する。天井壁32bは、例えば半球状などの他の形状であってもよい。
【0027】
外槽4は、内槽本体部31を取り囲む外槽本体部41と、内槽ドーム32を取り囲む外槽ドーム42を有している。すなわち、外槽本体部41は内槽本体部31を大型化した形状を有しており、外槽ドーム42は内槽ドーム32を大型化した形状を有している。
【0028】
外槽ドーム42は、外槽本体部41から上方に延びる周壁42aと、周壁42aの上端から上向きに盛り上がる皿状の天井壁42bを有する。天井壁42bは、例えば半球状などの他の形状であってもよい。
【0029】
外槽本体部41は、例えば、船体に設けられたサドル(図示せず)に支持される。一方、内槽本体部31と外槽本体部41の間には、タンク2の軸方向に互いに離間する位置で内槽本体部31を支持する一対の支持機構21が配置されている。なお、タンク2の外部から内槽3内への熱侵入を抑制するという観点からは、内槽本体部31と支持機構21との接触面積が小さいことが好ましく、例えば双方の支持機構21は中空構造であることが望ましい。
【0030】
内槽3内の底部には、液化ガスをタンク2の内部から外部に排出するためのサブマージドポンプ(図示せず)が配置される。そして、二重殻タンク2には、液化ガス配管や電気配管などの各種の配管13が、内槽ドーム32および外槽ドーム42を貫通するように設けられる。なお、図1および図2では、代表として1本の配管のみを描いている。
【0031】
本実施形態では、各配管13は、内槽ドーム32の周壁32aと外槽ドーム42の周壁42aを貫通している。ただし、各配管13は、内槽ドーム32と外槽ドーム42の間で90度に曲げられており、内槽ドーム32の周壁32aと外槽ドーム42の天井壁42bを貫通、あるいは内槽ドーム32の天井壁32bと外槽ドーム42の周壁42aを貫通していてもよい。
【0032】
各配管13における内槽ドーム32と外槽ドーム42の間の部分は、防熱材15で覆われている。これにより、配管13を通じたタンク2の外部から内槽3内への熱侵入を抑制することができる。また、外槽4の外側では、各配管13は真空管14内に収容されており、大気中から配管13への熱伝達が抑制されている。
【0033】
内槽3内に配置されるサブマージドポンプを点検可能にするために、内槽ドーム32の天井壁32bには内槽マンホール30が設けられ、外槽ドーム42の天井壁42bには内槽マンホール30と対応する位置に外槽マンホール40が設けられる。具体的には、内槽ドーム32の天井壁32bに、内槽マンホール30を規定する内槽マンホール管33が取り付けられ、外槽ドーム42の天井壁42bに、外槽マンホール40を規定する外槽マンホール管43が取り付けられている。マンホール管33,43の上端に設けられたフランジにはマンホール蓋34,44が固定されている。なお、内槽マンホール30が設けられる位置は、天井壁32bの中心であってもよいし、天井壁32bの中心からずれた位置であってもよい。
【0034】
図1および図2に戻って、液化ガス運搬船1には、二重殻タンク2を覆うタンクカバー11が装備されている。二重殻タンク2とタンクカバー11の間の空間10は空気で満たされていてもよいが、空間10には不活性ガスが封入されることが望ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴンなどを利用することができる。これにより、液化ガスが例えば超低温の液化水素である場合には、内槽3からの熱影響が強いタンク支持部(例えば、上述したサドル)の周囲に液化酸素が生成されることを防止することができる。また、タンクカバー11には、外槽マンホール40と対応する位置に最外マンホール12が設けられている。
【0035】
内槽ドーム32と外槽ドーム42との相対位置を拘束するという観点からは、上述した一対の支持機構21の一方は、内槽ドーム32および外槽ドーム42の真下に配置され、内槽本体部31をスライド不能に支持するように構成されていてもよい。この場合、他方の支持機構21は、内槽本体部31をタンク2の軸方向にスライド可能に支持するように構成される。
【0036】
あるいは、内槽ドーム32と外槽ドーム42との間にそれらを固定する機構を配置する場合は、双方の支持機構21は、任意の位置に配置され、内槽本体部31をタンク2の軸方向にスライド可能に支持するように構成されていてもよい。
【0037】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、内槽ドーム32と外槽ドーム42の間に環状の遮断部材5が配置されている。また、内槽ドーム32の外側面には、当該外側面から突出する第1リング51が設けられており、外槽ドーム42の内側面には、当該内側面から突出する第2リング52が設けられている。そして、遮断部材5は、第1リング51と第2リング52を橋架するように配置されている。なお、図1および図2においては、図面の簡略化のため、遮断部材5、第1リング51および第2リング52の作図を省略している。
【0038】
本実施形態では、第1リング51が内槽ドーム32の周壁32aから径方向外向きに突出しており、第2リング52が外槽ドーム42の周壁42aから径方向内向きに突出している。
【0039】
遮断部材5は、内槽3と外槽4の間の真空空間20を、内槽マンホール30と外槽マンホール40の間の部分を含む第1空間20Aと、内槽本体部31側の第2空間20Bと、に仕切っている。本実施形態では、遮断部材5は、内槽ドーム32および外槽ドーム42が配管13によって貫通される位置よりも内槽本体部31側(本実施形態では下方)に配置されている。また、本実施形態では、遮断部材5として、内槽ドーム32の突出方向を規定する前記特定方向に延びるベローズ管5Aが用いられている。
【0040】
第1リング51および第2リング52は、前記特定方向に扁平で、かつ、前記特定方向に互いに対向する板状の部材である。本実施形態では、第1リング51が遮断部材5の下方に配置され、第2リング52が遮断部材5の上方に配置されている。そして、遮断部材5の一端(下端)が第1リング51の上面に固定され、遮断部材5の他端(上端)が第2リング52の下面に固定されている。ただし、第1リング51が遮断部材5の上方に配置され、第2リング52が遮断部材5の下方に配置されていてもよい。
【0041】
以上説明した構成の二重殻タンク2では、内槽ドーム32に内槽マンホール30が設けられ、外槽ドーム42に外槽マンホール40が設けられているので、内槽ドーム32と外槽ドーム42との相対位置を拘束すれば、内槽マンホール30と外槽マンホール40との相対位置も拘束される。しかも、それらの拘束を1箇所(例えば、一方の支持機構21、あるいは内槽ドーム32と外槽ドーム42の間に配置される固定機構)で実現することができるため、内槽3が熱収縮したときに内槽3に熱応力が生じることを防止できる。さらには、内槽マンホール30を開けたときには、配管13における内槽ドーム32内に位置する部分を視認することができ、内槽3内の定常点検を効率的に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、遮断部材5によって内槽3と外槽4の間の真空空間20が第1空間20Aと第2空間20Bとに仕切られている。このため、外槽マンホール40を開いたときには、真空空間20のうちのごく一部である第1空間20Aのみが大気に開放される。従って、外槽マンホール40を閉じた後に再度真空状態とすべき容積を少なくすることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、遮断部材5が第1リング51と第2リングを橋架するように配置されているので、遮断部材5を単純な形状とすることができる。
【0044】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0045】
例えば図5に示すように、遮断部材5は、内槽ドーム32および外槽ドーム42が配管13によって貫通される位置よりも上方(例えば、内槽ドーム32の天井壁32bと外槽ドーム42の天井壁42bの間)に配置されていてもよい。ただし、この場合には、外槽マンホール40を開いても配管13における内槽ドーム32と外槽ドーム42の間の部分を視認することができない。これに対し、前記実施形態のように、遮断部材5が内槽ドーム32および外槽ドーム42が配管によって貫通される位置よりも内槽本体31側に配置されていれば、外槽マンホール40を開いたときに、配管13における内槽ドーム32と外槽ドーム42の間の部分を点検することができる。
【0046】
また、遮断部材5は、内槽ドーム32の突出方向を規定する特定方向に延びるストレート管であってもよい。
【0047】
さらに、環状の遮断部材5は、必ずしも前記特定方向に延びる部材である必要はなく、中心穴を有する形状であればどのような形状であってもよい。
【0048】
例えば図4に示すように、遮断部材5は、上向きに開口する断面U字状の部材5Bであってもよい。あるいは、図5に示すように、第1リング51および第2リング52が前記特定方向に延びる筒状である場合は、遮断部材5は、内槽ドーム32の径方向に広がるワッシャ状の部材5Cであってもよい。
【0049】
また、第1リング51および第2リング52は、必ずしも前記特定方向に扁平な板状の部材である必要はなく、例えば図5に示すように前記特定方向を軸方向とする筒状の部材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の二重殻タンクは、液化ガス運搬船に搭載されるタンクとしてだけでなく、地上に設置されるタンクとしても有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 液化ガス運搬船
10 空間
11 タンクカバー
12 最外マンホール
2 二重殻タンク
20 真空空間
20A 第1空間
20B 第2空間
3 内槽
30 内槽マンホール
31 内槽本体部
32 内槽ドーム
4 外槽
40 外槽マンホール
41 外槽本体部
42 外槽ドーム
5 遮断部材
5A ベローズ管
51 第1リング
52 第2リング
図1
図2
図3
図4
図5