(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回動規制部材は、前記後部カバーが前記ギヤ収容部の前記開口部を覆蓋する状態から、水平又は略水平となる状態までの範囲に、前記後部カバーの回動範囲を規制する、ことを特徴とする
請求項1〜4のいずれか一項に記載の農作業機。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る農作業機の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
本発明に係る農作業機を適用可能な機器として、ロータリ作業機を挙げることができる。
図1に、本発明に係る農作業機の第1の実施形態であるロータリ作業機1を示した。以下において、
図1の右下に示すように、
図1における上下方向を鉛直に平行な上下方向とする。
図1の紙面に直交する方向を、ロータリ作業機1が装着される走行機体の前後進方向である前後方向とする。
図1における左右方向であって、走行機体の幅方向に相当する方向でかつ前後方向及び上下方向にそれぞれ直交する方向を、左右方向とする。また、前後方向及び左右方向を含む方向でかつ上下方向に直交する方向が水平方向である。
【0018】
図1は、ロータリ作業機1を後部側から見た状態の背面図である。なお、
図1には、走行機体、及び走行機体のPTO軸からの動力を伝達する動力伝達軸(ユニバーサルジョイント)は図示していない。
【0019】
図1に示すように、ロータリ作業機1は、3点リンクヒッチ機構2と、ミッションケース3と、ロータリ作業部4と、支持フレーム5と、伝動フレーム6と、側部フレーム7と、チェン伝動部8と、シールドカバー9と、リヤカバー10とを備えている。
【0020】
3点リンクヒッチ機構2は、ロータリ作業機1と、走行機体の一例であるトラクタの後部との接続部位である。3点リンクヒッチ機構2は、上側に1本のトップリンク連結部と、下側に2本のロアーリンク連結部とを有している。トップリンク連結部及びロアーリンク連結部はトラクタに対して着脱自在に接続されているので、3点リンクヒッチ機構2を介してロータリ作業機1は着脱自在となっている。また、3点リンクヒッチ機構2によって、ロータリ作業機1全体が昇降可能になっている。
【0021】
ミッションケース3は、トラクタのPTO軸から受けた動力を、後述の耕耘刃に伝達可能な部材である。なお、ミッションケース3における内部構造の概要、ギヤ収容部11、後部カバー12及びドローラッチ13については、
図2を参照しつつ後述する。
ミッションケース3は、ミッションケース3の右側方から水平に延在する支持フレーム5と、左側方から水平に延在する伝動フレーム6とに連結されている。
【0022】
支持フレーム5は、筒状部材である。また、支持フレーム5は、一端がミッションケース3に固定的に取付けられ、他端が側部フレーム7に固定的に取付けられている。
伝動フレーム6は、筒状部材であり、その内部をその軸線を中心にして回転可能な伝動軸(図示せず)が挿通して成る、二重構造を有している。また、伝動フレーム6は、一端がミッションケース3に固定的に取付けられ、他端がチェン伝動部8に固定的に取付けられている。伝動軸の両端部にはスプロケット又はベベルギヤ等の適宜のギヤ類が装着されている。
側部フレーム7及びチェン伝動部8は、対向配置され、側部フレーム7及びチェン伝動部8は、ロータリ作業機1における上方の枠体として機能する。
3点リンクヒッチ機構2のトップリンク連結部近傍から左右方向かつ後方向に延在し、湾曲して成るフレーム状部材が、支持フレーム5及び伝動フレーム6に取付けられている。ロータリ作業機1の枠体である支持フレーム5及び伝動フレーム6と、3点リンクヒッチ機構2とを強固に取付けることによって、ロータリ作業機1全体がトラクタに対して高い強度を以って接続されることとなる。
なお、本発明に係る農作業機において、農作業機の左右方向の幅の大部分を決定付ける支持フレーム及び伝動フレームの各軸線方向の大きさは、例えば農作業機の機種、農作業の種類、圃場の大きさ、トラクタの幅等に応じて適宜決定することができる。
【0023】
側部フレーム7は、支持フレーム5の軸線に対して直角又は略直角となるように取付けられ、下方向に延在する略板状部材である。
また、チェン伝動部8は、伝動フレーム6の軸線に対して直角又は略直角となるように取付けられ、下方向に延在する部材である。チェン伝動部8は、ギヤ類に歯合可能な動力伝達用のチェン(図示せず)と、略楕円形状を成し、チェンを収容する収容ケースとを有している。伝動フレーム6内を挿通する伝動軸の端部に装着されるギヤ類と、チェン伝動部8におけるチェンとが歯合している。
側部フレーム7及びチェン伝動部8は、略平行に配置されている。側部フレーム7及びチェン伝動部8は、ロータリ作業機1を左右側方から支持する部材である。
【0024】
ロータリ作業部4は、水平方向に延在する耕耘軸14と、耕耘軸14の軸周に多数個装着される耕耘刃15とを有する。
耕耘軸14は、その軸線を中心にして回転可能な筒状部材である。耕耘軸14は、その軸線と、支持フレーム5及び伝動フレーム6の軸線とが平行になるように配置されている。また、耕耘軸14は、一端がチェン伝動部8に取付けられており、他端が側部フレーム7に取付けられている。耕耘軸14と側部フレーム7との取付部位には、耕耘軸14が回転するので、適宜のベアリング(図示せず)が介設されている。耕耘軸14におけるチェン伝動部8との取付部位、つまり耕耘軸14の一端部には、スプロケット等の適宜のギヤ類(図示せず)が固定的に装着されている。耕耘軸14に装着されたギヤ類と、チェン伝動部8におけるチェンとが歯合している。
耕耘刃15は、刃縁を有する板体が湾曲して成り、耕耘軸14の周側面に適宜の固定手段によって固定的に装着されている。耕耘刃15は、圃場を耕耘する機能を有する。
なお、本発明に係る農作業機の変速装置を適用したロータリ作業機1においては、耕耘刃15に代えて、雑草等を刈り取る機能を有する草刈り刃を用いてもよく、また耕耘・草刈り兼用刃等を用いても良い。
【0025】
シールドカバー9及びリヤカバー10は、板状部材であり、ロータリ作業部4の上方から後方及び下方を覆い、耕耘時の泥跳ね、及び草刈り時の草の飛散を防止することができ、更に作業者等の巻き込みを防止することもできる。
なお、耕耘作業時には、リヤカバー10の下端部が耕土面に接した状態で作業する。
【0026】
続いてミッションケース3について、
図2を参照しつつ詳述する。
図2は、ミッションケース3の一部切欠平面図である。
【0027】
図2に示すように、ミッションケース3には、入力軸16及び従動軸17が前後方向に挿通されている。
具体的には、入力軸16は、ミッションケース3を前後方向に貫通する軸体であり、トラクタのPTO軸からユニバーサルジョイント等の適宜の動力伝達部材を介して動力を受ける部材である。従動軸17は、入力軸16に並設され、後端部がミッションケース3を貫通する軸体である。入力軸16及び従動軸17は、各軸線を中心にしてそれぞれ回転することができる。
【0028】
ミッションケース3の後部には、ギヤ収容部11がミッションケース3と一体的に連設されている。したがって、ミッションケース3の後方面を貫通する入力軸16及び従動軸17の後端部は、ギヤ収容部11内に挿入される。ギヤ収容部11は、ギヤオイルを貯留可能で、かつチェンジギヤ181及び182を収容可能な部材である。ギヤ収容部11は、ミッションケース3の後方面に略平行かつ近接する前方面と、該前方面の下側に形成されるギヤオイルを貯留可能な底部と、後方に形成される開口部と、から成る。ギヤ収容部11の開口部の形状は、略直方体形状の箱体を斜め方向に切断した場合の切断面の輪郭形状を呈し、ギヤ収容部11の背面視略台形を成す。ギヤ収容部11の開口部の下方縁辺部の幅はギヤ収容部11及びミッションケース3の左右方向の幅と略一致する。
後部カバー12は、ギヤ収容部11の開口部を覆蓋する。後部カバー12の内側面には、円柱形状を成す突出部191及び192が設けられている。突出部191は、その軸線と入力軸16の軸線とが一致するように配設される。また、突出部192は、その軸線と従動軸17の軸線とが一致するように配設される。更に、突出部191の軸線方向の大きさは、
図2に示すように後部カバー12を閉状態としたときに、突出部191の前端面と入力軸16の後端面とが対向してかつ近接する程度であるのが好ましい。突出部192の軸線方向の大きさは、後部カバー12を閉状態としたときに、突出部192の前端面と従動軸17の後端面とが対向してかつ近接する程度であるのが好ましい。
ミッションケース3内における入力軸16及び従動軸17の前方面及び後方面近傍には、入力軸16及び従動軸17が各軸線を中心にしてそれぞれ安定的に回転することができるように支持するベアリングBが設けられている。
なお、本発明に係る農作業機においては、ギヤ収容部は、少なくとも入力軸の後端部に装着されるチェンジギヤを収容可能であれば良いが、上述したチェンジギヤ183及び184等の予備又は別作業用のチェンジギヤをも収容可能であっても良い。ギヤ収容部が予備又は別作業用のチェンジギヤを収容可能とするには、例えば図面に示した実施形態よりも更に後方に突出させてその容積を増大させれば良い。
【0029】
後部カバー12は、ドローラッチ13により、
図2に示す後部カバー12の閉状態が保持されている。
ドローラッチ13は、環状部材131と係合部材132とを有する固定手段である。環状部材131は略矩形状を成し、他短辺部を軸として一短辺部を回動可能となっている。係合部材132は、回動する環状部材131の一短辺部が係合可能な部材である。
環状部材131及び係合部材132は、それぞれ異なる部材に装着される。具体的には、ミッションケース3の上面に1つの環状部材131が設けられ、ギヤ収容部11の左右側面に1つずつの環状部材131が設けられる。また、それぞれの環状部材131に係合する係合部材132はいずれも後部カバー12に設けられている。なお、本発明に係る農作業機においては、環状部材と係合部材とを設ける部材を実施形態とは逆にしても良い。
ドローラッチ13は、係合部材132に対する環状部材131の係合及び脱離を切り替えることにより、環状部材131が装着される部材と係合部材132が装着される部材との密着状態及び脱離可能状態を切り替えることができる。
耕耘作業時又は草刈り作業時に発生する振動等で後部カバー12が開状態とならないように、上方に1つのドローラッチ13と、左右両側に1つずつのドローラッチ13が設けられている。後部カバー12を開状態とする際にはドローラッチ13を解錠すれば良い。
【0030】
後部カバー12の上方左右両端部には、把持部21が取付けられている。把持部21は後部カバー12の上方左右両端部において、比較的小さい接触面積で取付けられている。これにより、後部カバー12から把持部21に対する伝熱量が小さくなる。
ロータリ作業機1を駆動して耕耘作業又は草刈り作業を行った後にチェンジギヤ181及び182の交換作業を行う場合、ギヤ収容部11及び後部カバー12の表面が高温となっていることがある。ロータリ作業機1においては、把持部21が設けられていることによって、ギヤ収容部11及び後部カバー12の表面温度が高い場合でも、後部カバー12の開閉操作を行うことができるので好ましい。したがって、把持部21によって、後部カバー12の開閉操作効率が向上する。
【0031】
ギヤ収容部11において、入力軸16の後端部にチェンジギヤ181がスプライン嵌合されており、従動軸17の後端部にチェンジギヤ182がスプライン嵌合されている。チェンジギヤ181とチェンジギヤ182とは歯合している。よって、入力軸16が回転するとチェンジギヤ181及び182により、従動軸17が入力軸16の回転方向とは逆方向に回転可能である。ギヤ収容部11は、その底部に、チェンジギヤ181及び182の歯合及び回転が円滑となるようにギヤオイルが貯留されている。ギヤオイルの量としては、特に制限はされないが、チェンジギヤ181及び182の少なくともいずれか一方の歯の先端が浸漬される程度の量であれば良い。
また、ミッションケース3内における従動軸17の前端部には、ピニオン20が従動軸17に対してスプライン嵌合されている。伝動フレーム6内に挿通される伝動軸(図示せず)の一端部はミッションケース3内に挿入される。例えばミッションケース3内における伝動軸の端部には、ベベルギヤ(図示せず)が伝動軸に対してスプライン嵌合されている。従動軸17のピニオン20と伝動軸のベベルギヤとは歯合している。よって、従動軸17が回転すると、ピニオン20及びベベルギヤにより、伝動軸が回転可能である。
したがって、トラクタのPTO軸から入力軸16に動力が伝達されると、従動軸17、伝動フレーム6内の伝動軸、及びチェン伝動部8を介して、結果として耕耘軸14に動力が伝達されることになる。
【0032】
後部カバー12の突出部191にはチェンジギヤ183が挿着されており、突出部192にはチェンジギヤ184が挿着されている。入力軸16及び従動軸17と、後部カバー12の突出部191及び192とは接続されていないので、入力軸16及び従動軸17が回転しても、突出部191及び192とチェンジギヤ183及び184とは不動である。チェンジギヤ183及び184は、予備又は別作業時に交換して用いるギヤである。
【0033】
入力軸16の後端部に対するチェンジギヤ181の装着方法、従動軸17の後端部に対するチェンジギヤ182の装着方法としては、装着態様がスプライン嵌合であるので、例えば、入力軸16及び従動軸17の後端部外周面と、チェンジギヤ181及び182の装着孔内周面とに形成される凸状部及び溝が嵌合するように挿入する方法を採ることができる。また、突出部191に対するチェンジギヤ183の装着方法及び突出部192に対するチェンジギヤ184の装着方法としては、例えば装着箇所に各ギヤを挿入する方法を採ることができる。
【0034】
もっとも、本発明に係る農作業機において、
図2に示した突出部191及び192、並びにチェンジギヤ183及び184は、この発明の目的を達成することができる限り設ける必要はないが、本実施形態のように設けることが好ましい。
突出部191及び192、並びにチェンジギヤ183及び184を設けると、チェンジギヤ181及び182が、入力軸16及び従動軸17から後方に脱離してしまうことを防止することができるので、好ましい。
また、
図2に示されるようにチェンジギヤ181とチェンジギヤ183との対向面、及び、チェンジギヤ182とチェンジギヤ184との対向面は、平滑面である。上述したように、ギヤ収容部11にはギヤオイルが貯留されているので、チェンジギヤ181及び182が回転すると、チェンジギヤ181とチェンジギヤ182との歯合部位及びその近傍にギヤオイルが付着する。更に、チェンジギヤ181とチェンジギヤ183との間隙、及び、チェンジギヤ182とチェンジギヤ184との間隙にもギヤオイルが付着する。これにより、仮にチェンジギヤ181及び182が後方に移動して、チェンジギヤ183及び184に接触してしまっても、ギヤオイルが相互の摩擦を低下させていることにより、入力軸16及び従動軸17の回転を妨げないので、好ましい。
【0035】
チェンジギヤ181、182、183及び184は、挿入差替え可能であるので、差替え時には各ギヤの装着箇所への挿入方向とは逆方向に引き抜くことにより脱離可能である。
【0036】
ミッションケース3内には、従動軸17のピニオン及び伝動軸のベベルギヤの歯合及び回転が円滑となるように、ミッションオイルが貯留されている。ミッションケース3内のミッションオイルを収容する空間と、ギヤ収容部11内のギヤオイルを収容する空間とは、分かれている。
もっとも、本発明に係る農作業機においては、ミッションオイル及びギヤオイルとして同一のオイルを用いるのであれば、上記両空間は連通していても良い。なお、上記両空間が連通する場合、ミッションオイル及びギヤオイルの油面は同一の高さになるので、ギヤ収容部11における後方開口部の下端縁辺部、及び、後部カバー12の下端縁辺部が油面よりも高い位置となるように、オイルの量を調整するのが好ましい。
通常、ミッションケース3にミッションオイルを注入する際には、規定量を計量して注入する方法、又は、ミッションケース3に適宜に設けられるオイルインジケータ等で確認しつつ注入する方法を採用する必要がある。
上記両空間が連通していると、後部カバー12を開状態とした上で、ミッションケース3又はギヤ収容部11に油面を目視しつつオイルを注入すれば良いので、オイルの補充作業及び交換作業の効率が向上する。
更に、上記両空間が連通していると、後部カバー12を開状態とした上で、ギヤ収容部11内に貯留されているオイルの量及び色等を目指することにより、オイルの補充時期及び交換時期等を作業者が把握することができる。よって、オイルの保守管理効率が向上する。
【0037】
ここで、
図1及び
図2に示したロータリ作業機1の使用方法、その動作及び作用について説明する。
【0038】
ロータリ作業機1を用いて耕耘作業を行うには、先ず、ロータリ作業機1をトラクタの後部に装着する。該装着作業は、トラクタの後部と3点リンクヒッチ機構2とを接続し、トラクタにおけるPTO軸とロータリ作業機1における入力軸16とを、ユニバーサルジョイント等の適宜の動力伝達部材を介して接続することにより、達成される。
上記装着作業が完了し、耕耘作業を開始する前の状態においては、トラクタが圃場等の耕耘・草刈り作業を要する領域に容易に進入することができるのが好ましい。よって、耕耘刃15、シールドカバー9及びリヤカバー10が接地しないように、ロータリ作業部4を上方に変位させた状態で保持しておくのが良い。
トラクタにロータリ作業機1を装着した後、トラクタ及びロータリ作業機1を圃場に進入させ、ロータリ作業部4を所望の位置まで下降させることにより、耕耘刃15が耕土面に接地するので、耕耘作業の準備が完了する。
【0039】
トラクタからロータリ作業機1への動力伝達を開始すると、先ず、
図2に示す入力軸16が、入力軸16に連結されたPTO軸からトラクタの動力を受ける。トラクタからの動力は回転となって入力軸16に伝達される。入力軸16は回転可能であるので、PTO軸の回転に合わせて入力軸16が回転する。
【0040】
入力軸16が回転すると、入力軸16の後端部にスプライン嵌合されているチェンジギヤ181が、入力軸16の軸線を中心にして回転する。チェンジギヤ181が回転すると、チェンジギヤ181に歯合して成るチェンジギヤ182が、チェンジギヤ181の回転方向とは逆方向に、従動軸17の軸線を中心にして回転する。チェンジギヤ182が回転すると、チェンジギヤ182と共に従動軸17が、その軸線を中心にして回転する。従動軸17が回転すると、従動軸17の前端部にスプライン嵌合されているピニオン20が、従動軸17の軸線を中心にして回転する。ピニオン20が回転すると、ピニオン20に歯合して成るベベルギヤが、伝動フレーム6内の伝動軸の軸線を中心にして回転する。ベベルギヤが回転すると、伝動フレーム6内において、ベベルギヤが一端部に固定的に取付けられて成る伝動軸がその軸線を中心にして回転する。したがって、PTO軸から受けるトラクタの動力は、ミッションケース3を介して、伝動フレーム6内を挿通する伝動軸に伝わることになる。
伝動軸が回転すると、伝動軸の他端部に装着されるスプロケット、及びチェン伝動部8のチェンを介して、ロータリ作業部4の耕耘軸14に動力が伝達される。耕耘軸14に伝達されたトラクタからの動力によって、耕耘軸14はその軸線を中心にして回転する。これにより、ロータリ作業部4が駆動する。
【0041】
耕耘軸14が回転すると、耕耘軸14の周側面に複数個装着された耕耘刃15は耕耘軸14の軸線を中心にして回転する。
なお、耕耘刃15に代えて使用可能な耕耘作業及び草刈り作業の兼用刃は、回転方向に応じて耕耘機能及び草刈り機能をそれぞれ発現することができるようになっている。つまり、耕耘作業及び草刈り作業の切り替えは耕耘軸の回転方向を切り替えることによって達成される。
耕耘軸14の回転方向の切り替える方法としては、例えばPTO軸の回転方向を切り替える方法、及びPTO軸の回転方向は維持しつつ、チェンジギヤ181とチャンジギヤ182との間にアイドルギヤを挿入することにより従動軸17の回転方向を切り替える方法等を挙げることができる。
【0042】
以上により、PTO軸から耕耘刃15まで動力が伝達される。耕耘刃15が回転することによって、耕土面に耕耘刃15が一旦埋没し、掻き上げる動作を繰り返すこととなるので、結果として圃場を耕耘することができる。
また、草刈り作業は、耕耘刃15に代えて草刈り刃等を装着し、耕耘軸14の回転方向を切り替えた上で、圃場面に接した状態又は若干浮いた状態で行うことができる。
【0043】
続いて、本発明に係る農作業機におけるヒンジ及び回動規制部材について説明する。
図2〜
図4に示すように、ロータリ作業機1にはヒンジ22及び回動規制部材231が設けられている。
ヒンジ22は、ギヤ収容部11における開口部の下方及び後部カバー12の下方に装着されている。ヒンジ22の軸芯24は左右方向に対して平行又は略平行に配置される。また、回動規制部材231は、後部カバー12の回動を規制する部材である。
【0044】
特に
図4に示すように、ヒンジ22は、ギヤ収容部側取付部25と、ギヤ収容部側筒状部26と、後部カバー側取付部27と、後部カバー側筒状部28と、を有している。ギヤ収容部側取付部25は、ギヤ収容部11に取付けられる板状体である。後部カバー側取付部27は、後部カバー12に取付けられる板状体である。また、ギヤ収容部側筒状部26は、軸芯24が挿通し、該ギヤ収容部側取付部25と一体的に形成される筒状体である。後部カバー側筒状部28は、軸芯24が挿通し、該後部カバー側取付部27と一体的に形成される筒状体である。ギヤ収容部11及びギヤ収容部側取付部25、並びに、後部カバー12及び後部カバー側取付部27は、ネジ止め等の適宜の固定手段により取付けられている。なお、該取付手段は、溶着又は接着等の固定手段を用いることもできる。
特に
図3及び
図4に示すように、回動規制部材231は、凸部291を有している。詳述すると、ヒンジ22におけるギヤ収容部側取付部25の左右両端部を延在させ、前後方向に対して平行又は略平行となるように折曲し、折曲された部位の端部に上方向に突出する凸部291が形成されている。本実施形態においては、回動規制部材231とギヤ収容部側取付部25とが一体的に形成されている。
なお、本発明に係る農作業機において、複数の部材を一体的に形成する方法は、耕耘作業及び草刈り作業で生じる振動及び衝撃、後部カバーの繰り返し開閉動作等によっても一体的に形成した部材同士が脱離しない限り、特に制限されない。複数の部材を一体的に形成する方法としては、例えば各部材を別体的に形成し、後に各部材をネジ止め、溶着又は接着等によって一体的に組付ける方法、及び、複数の部材が一体的に形成されて成る部材を形成可能な金型を用いて射出成形等により一体的に形成する方法等を挙げることができる。
本発明に係る農作業機において、回動規制部材とヒンジとが一体的に形成されていると、回動規制部材とヒンジとの設置領域を一体化可能となることにより、部材の設置領域を縮小することができるので、好ましい。
【0045】
次いで、
図5〜
図7には、後部カバー12を開状態としたミッションケース3の概略図を示した。
図5〜
図7において後部カバー12は、その回動が回動規制部材231により規制された状態を示している。
なお、後部カバー12を、
図1〜
図4に示した閉状態から、
図5〜
図7に示した開状態にするには、全てのドローラッチ13を解錠し、把持部21を作業者が把持しつつヒンジ22の軸芯24を中心にして後部カバー12を回動させることにより達成される。
【0046】
図6は、ギヤ収容部11を一部切欠断面図として示している。
図6にはギヤ収容部11内に貯留されるギヤオイルの油面Sを、二点鎖線で示した。特に
図6に示すように、後部カバー12の後部カバー側取付部27が取付けられて成る部位近傍に対して、回動規制部材231の凸部291が当接している。これにより、後部カバー12が水平又は略水平となるまで回動した状態で、後部カバー12の回動が規制されている。換言すると、回動規制部材231は、後部カバー12の回動範囲がギヤ収容部11の開口部を後部カバー12が覆蓋する状態、つまり閉状態から、後部カバー12が水平又は略水平となるまでの範囲に規制している。
なお、本実施形態の説明においては、後部カバー12の内側面に形成される突出部191及び192の軸線が上下方向に対して平行又は略平行であり、かつ、チェンジギヤ183及び184におけるチェンジギヤ181及び182に対向していた面が水平方向に対して平行又は略平行である状態を、後部カバー12が水平又は略水平であると称する。
【0047】
凸部291を設ける位置、及び凸部291の大きさについては、先ず規制しようとする後部カバー12の回動範囲を設定し、規制しようとする所望の位置まで後部カバー12が回動したときに、凸部291が後部カバー12に当接するように決定することができる。
【0048】
ここで、従来におけるチェンジギヤの交換作業としては、例えば、先ず後部カバーをギヤ収容部から完全に脱離させ、作業者が該後部カバーを一方の手で支持しつつ、他方の手でチェンジギヤを交換する作業態様、又は、脱離させた後部カバーを別の領域に載置して、チェンジギヤを交換する作業態様等を採用していた。
後部カバーの内側面に予備又は別作業用のチェンジギヤが装着されている場合、後部カバーと2つの予備又は別作業用のチェンジギヤとを併せた重量が例えば4kgを超えることがある。チェンジギヤの交換作業において、後部カバーを作業者が支持しつつ交換する作業態様では、重量の大きな後部カバー及び予備又は別作業用のチェンジギヤを一方の手で支持しているだけなので不安定であった。また、大きな重量を支持することができなくなって、交換作業途中で後部カバー及び予備又は別作業用のチェンジギヤを落としてしまう可能性があった。
更に、上記作業態様のいずれであっても、作業者が後部カバーを支持しているとき、及び別領域に移動させるときに、後部カバー及び予備又は別作業用のチェンジギヤに付着したギヤオイルが落下、飛散する可能性があった。
また、従来のように、ボルト及びネジ等の固定手段のみにより後部カバーがギヤ収容部に対して固定されていると、チェンジギヤの交換作業時に該固定手段を取り外して脱離可能状態とするときに、固定手段を取り外しつつ後部カバーを支持していないと、後部カバーが落下してしまうことがあった。
【0049】
本実施形態においては、回動規制部材231が後部カバー12の後方への回動を規制しているので、チェンジギヤ181、182、183及び184の交換作業時に作業者が開状態となった後部カバー12を支持し続ける必要が無い。
更に後部カバー12を回動させるだけで、後部カバー12が回動途中で規制され、作業者が後部カバー12をそのまま静置しても該規制状態が維持される。
よって、後部カバー12及びチェンジギヤ183及び184をギヤ収容部11から脱離させて別の領域に移動させる必要が無い。これにより、後部カバー12内側面及びチェンジギヤ183及び184に付着しているギヤオイルがロータリ作業機1の意図しない箇所に滴下、付着、飛散することも無い。
また、回動規制部材231によって後部カバー12が水平又は略水平となるように保持されるので、後部カバー12自体が作業台として機能するので好ましい。
更に、回動規制部材231の凸部291は、構造が簡素であるので好ましい。また、ギヤ収容部側取付部25の一部を延在、折曲及び突出させて凸部291が形成されるので、回動規制部材231を形成する際に複雑な加工が不要であり、部材製造工程の削減を図ることができる。回動規制部材231とギヤ収容部側取付部25とが一体的に形成されているので、部品点数を削減することもできる。
【0050】
[第2の実施形態]
次に、本発明に係る農作業機において別の回動規制部材を用いた第2の実施形態を、
図8〜
図13に示した。
図8〜
図13において、
図1〜
図7を参照しつつ上述した第1の実施形態と同一の部材を用いる場合は、同一の参照符号を付しており、詳細な説明を省略する。
図8〜
図10は、後部カバー12が閉状態であるミッションケース3の概略図である。また、
図11〜
図13は、後部カバー12が開状態となり、回動が規制された状態であるミッションケース3の概略図である。
なお、
図1〜
図7に示した第1の実施形態と、第2の実施形態との相違点は、回動規制部材の形状及び装着位置である。
【0051】
特に
図9及び
図10に示すように、回動規制部材232は、凸部292を有している。詳述すると、ヒンジ22における後部カバー側取付部27の下端縁辺部が後方向に突出し、更に下方向に突出する凸部292が形成されている。第2の実施形態においては、後部カバー側取付部27の一部が折曲されて回動規制部材232が形成されることによって、回動規制部材232と後部カバー側取付部27とが一体的に形成されている。つまり、後部カバー側取付部27の一部が延在して、後部カバー12が閉状態のときに後部カバー側筒状部28の上側及び後側を覆う折曲された板状部材の凸部292が形成されている。後部カバー側筒状部28と凸部292とは溶接により一体となっている。なお、回動規制部材232と後部カバー側取付部27との固定態様、及び凸部292と後部カバー側筒状部28との固定態様は、上述した折曲による一体的な形成、及び溶接に限られず、例えばネジ止めによる接合、接着又は一体成型等であっても良い。
【0052】
特に
図12に示すように、ギヤ収容部11のギヤ収容部側取付部25が取付けられて成る部位近傍に対して、回動規制部材232の凸部292が当接している。これにより、後部カバー12が水平又は略水平となるまで回動した状態で、後部カバー12の回動が規制されている。換言すると、回動規制部材232は、後部カバー12の回動範囲がギヤ収容部11の開口部を後部カバー12が覆蓋する状態、つまり閉状態から、後部カバー12が水平又は略水平となるまでの範囲に規制している。
なお、回動規制部材として上述の回動規制部材232を採用する場合に、凸部292が当接する部位は、第2の実施形態では
図12に示すようにギヤ収容部側取付部25であるが、本発明に係る農作業機においては、ギヤ収容部及びギヤ収容部側取付部のいずれであっても良い。また、好ましくは凸部がギヤ収容部に当接するのが良い。該好適な実施形態については、後述の第4の実施形態の説明の後に詳述する。
【0053】
該第2の実施形態においては、
図1〜
図7に示した第1の実施形態と同様に、後部カバー12を回動させるだけで、後部カバー12が回動途中で規制され、作業者が後部カバー12をそのまま静置しても該規制状態が維持される。よって、後部カバー12及びチェンジギヤ183及び184を、ギヤ収容部11から脱離させて別の領域に移動させる必要が無い。これにより、ギヤオイルがロータリ作業機1の意図しない箇所に滴下、付着、飛散することが無い又は少ない。
また、回動規制部材232によって後部カバー12が水平又は略水平となるように保持されるので、後部カバー12自体が作業台として機能する。
更に、回動規制部材232の凸部292は、構造が簡素であるので好ましい。また、後部カバー側取付部27の一部を延在、折曲及び突出させて凸部292が形成されるので、回動規制部材232を形成する際に複雑な加工が不要であり、部材製造工程の削減を図ることができる。回動規制部材232と後部カバー側取付部27とが一体的に形成されているので、部品点数を削減することもできる。
【0054】
[第3の実施形態]
次に、本発明に係る農作業機において別の回動規制部材を用いた第3の実施形態を、
図14に示した。
図14において、上述した第1の実施形態と同一の部材を用いる場合は、同一の参照符号を付しており、詳細な説明を省略する。
図14は、後部カバー12が開状態となり、回動が規制された状態であるミッションケース3の概略図である。
なお、
図1〜
図7に示した第1の実施形態と、第3の実施形態との相違点は、回動規制部材の形状である。
【0055】
図14に示すように、回動規制部材233は、凸部293を有している。前記回動規制部材231と回動規制部材233との具体的な相違点は、水平方向と凸部の上端部との成す角度である。
前記回動規制部材231の凸部291は、水平方向と凸部291の上端部との成す角度が0°又は略0°であった。後部カバー12における後部カバー側取付部27の取付部位近傍に対して凸部291が当接すると、後部カバー12の回動が規制され、後部カバー12が水平又は略水平となっていた。
これに対して、回動規制部材233の凸部293は、水平方向と凸部293の上端部との成す角度が例えば0°を超えて10°程度である。後部カバー12における後部カバー側取付部27の取付部位近傍に対して凸部293が当接すると、後部カバー12が水平又は略水平よりも更に回動した位置で規制される。換言すると、後部カバー12の内側面に形成される突出部191及び192の軸線が上下方向に対して平行又は略平行な状態から若干後方に傾斜した位置で、後部カバー12の回動が規制される。
【0056】
図14に示す実施形態では、後部カバー12を閉状態としたときの後部カバー12の上方かつ後方部位が、後方に向かって突出する形状を有している。よって、回動規制部材233が後部カバー12の回動を規制した状態においては、後部カバー12における上記突出して成る部位が下方向に張り出した状態となる。このとき、後部カバー12の内側面が液溜めとして機能することができる。つまり、回動規制部材233により後部カバー12の回動が規制された状態になると、後部カバー12に装着されているチェンジギヤ183及び184に付着していたギヤオイル、及び、交換作業後に後部カバー12上に裁置されたチェンジギヤ181又は182に付着していたギヤオイルが、滴下しても後部カバー12の内側面に溜まることになる。したがって、ギヤオイルがロータリ作業機1の意図しない箇所に滴下、付着、飛散することが無い又は少ないので、好ましい。
【0057】
更に、回動規制部材233によって回動が規制された後部カバー12が、チェンジギヤ181、182、183及び184の交換作業用の作業台として機能する。
更に、回動規制部材233の凸部293は、構造が簡素であるので好ましい。また、凸部293は前記回動規制部材231の凸部291と略同様に形成可能であるので、回動規制部材233を形成する際に複雑な加工が不要であり、部材製造工程の削減を図ることができる。回動規制部材233とギヤ収容部側取付部25とが一体的に形成されているので、部品点数を削減することもできる。
【0058】
[第4の実施形態]
次に、本発明に係る農作業機において別の回動規制部材を用いた第4の実施形態を、
図15に示した。
図15において、上述した第1の実施形態と同一の部材を用いる場合は、同一の参照符号を付しており、詳細な説明を省略する。
図15は、ヒンジ22及び回動規制部材234の拡大斜視図である。
なお、
図1〜
図7に示した第1の実施形態と、第4の実施形態との相違点は、回動規制部材の形状である。
【0059】
図15に示すように、回動規制部材234は、後方向に突出する凸部294を有している。回動規制部材234は、ギヤ収容部側取付部25に一体的に形成されている。
詳述すると、例えば
図3及び
図4に示した前記回動規制部材231においては、ギヤ収容部側筒状部26が露出し、該ギヤ収容部側筒状部26の下方にギヤ収容部側取付部25が取付けられていた。
これに対して、回動規制部材234は、凸部294が上下方向に幅を有しており、ギヤ収容部側筒状部が凸部294に埋設されている。もっとも、凸部294に軸芯24が挿通可能な貫通孔を形成することによって、該貫通孔がギヤ収容部側筒状部として機能するようにしても良い。ヒンジ22の中央部に対して左右両側に形成された凸部294及び294は、下方においてギヤ収容部側取付部25と一体となっている。
凸部294の上面には、水平方向に対して平行又は略平行である当接面30が形成されている。後部カバー12が開状態となって回動した場合に、後部カバー12における後部カバー側取付部27の取付部位近傍に対して、当接面30が当接する。後部カバー12が当接面30に当接することによって、後部カバー12の回動が規制される。
【0060】
前記回動規制部材231は、上方に突出して成る板状の凸部291が後部カバー12を支持することによって、後部カバー12の回動を規制する。
これに対して、回動規制部材234は、凸部294の当接面30が後部カバー12に対して、前記凸部291よりも大きな面積を以って面接触し、支持することによって、後部カバー12の回動を規制する。したがって、回動規制部材234は、後部カバー12の回動規制時において、後部カバー12を良好な安定性を以って支持するので、後部カバー12がより一層ガタつきの無い作業台として機能する。
【0061】
また、凸部294は、ギヤ収容部11の外面から上下左右方向に幅を有して突出しているので、前記凸部291、292及び293に比べると、部材の強度が高い。回動規制部材の強度が高いと、ロータリ作業機1の製品としての信頼性が向上し、チェンジギヤ181、182、183及び184の交換作業を繰り返し行うことができる。
【0062】
図1〜
図14に示した各実施形態と同様に、該第4の実施形態においても、ギヤオイルがロータリ作業機1の意図しない箇所に滴下、付着、飛散することが無い又は少ないので、好ましい。
更に、回動規制部材234によって回動が規制された後部カバー12が、チェンジギヤ181、182、183及び184の交換作業用の作業台として機能する。
更に、回動規制部材234の凸部294は、構造が簡素であるので好ましい。また、回動規制部材234を形成する際に複雑な加工が不要であり、部材製造工程の削減を図ることができる。回動規制部材234とギヤ収容部側取付部25とが一体的に形成されているので、部品点数を削減することもできる。
【0063】
以上において、本発明に係る農作業機におけるヒンジ及び回動規制部材の各実施形態についての説明を行った。
なお、本発明に係る農作業機では、ヒンジの軸芯が挿通する筒状部において、ギヤ収容部に取付けられる筒状部、及び、後部カバーに取付けられる筒状部の少なくともいずれか一方が複数個設けられる。つまり、本発明に係る農作業機は、例えばギヤ収容部に取付けられる筒状部が左右に1つずつ設けられ、その間でかつヒンジの中央部に後部カバーに取付けられる筒状部が1つ設けられるという実施形態を採り得る。もっとも、本発明に係る農作業機においては、例えば後部カバーに取付けられる筒状部が左右に1つずつ設けられ、その間でかつヒンジの中央部にギヤ収容部に取付けられる筒状部が1つ設けられるという実施形態も採り得る。
好適な本発明の実施形態としては、複数個設けられる筒状部と回動規制部材とが一体的に形成される実施形態を挙げることができる。なお、
図1〜
図15を参照しつつ上述した実施形態は、いずれも該好適な実施形態に該当する。複数個設けられる筒状部と回動規制部材とが一体的に形成されると、後部カバーの回動、及び、後部カバーの回動規制時における後部カバーの支持が、ガタつきが無く、良好な安定性を以って達成される。
【0064】
別の好適な本発明の実施形態としては、例えば、回動規制部材が凸部を有する場合に、後部カバーが回動したときに、ギヤ収容部側取付部又は後部カバー側取付部に対して凸部が当接せず、ギヤ収容部又は後部カバーに対して凸部が当接する実施形態を挙げることができる。
後部カバーの内側面に予備又は別作業用のチェンジギヤが装着されている場合は、後部カバー及び予備又は別作業用のチェンジギヤを合わせた重量が大きくなるので、後部カバーの開閉操作中に作業者が後部カバーの重量を支持しきれなくなって支持していた手から後部カバーが離れてしまうことがある。ドローラッチ等の後部カバーの閉状態を保持する手段が解除されていれば、後部カバーはその自重によって回動規制部材により回動が規制される位置まで回動する。このとき、回動規制部材の凸部がギヤ収容部又は後部カバーに対して勢いを以って衝突することになる。
仮に、ギヤ収容部側取付部又は後部カバー側取付部に対して凸部が当接する形態である場合は、ヒンジの一部であるギヤ収容部側取付部又は後部カバー側取付部に対して凸部が衝突することになる。後部カバーの開閉操作中に作業者が後部カバーを支持していた手を離すことが繰り返し生じてしまうと、該衝突がギヤ収容部と後部カバーとの連結部材であるヒンジに負荷が生じることになる。したがって、ギヤ収容部側取付部又は後部カバー側取付部に対して凸部が当接せず、ギヤ収容部又は後部カバーに対して凸部が当接可能な実施形態が好ましい。
図面を参照しつつ上述した実施形態においては、後部カバー12の内側面に予備又は別作業用のチェンジギヤ183及び184が装着されている。なお、本発明に係る農作業機において、後部カバーの内側面に予備又は別作業用のチェンジギヤを装着することは必須ではないが、予備又は別作業用のチェンジギヤが後部カバーに装着されていれば、予備又は別作業用のチェンジギヤの保管領域を設ける必要が無く、予備又は別作業用のチェンジギヤの保管環境を保守する必要も無いので好ましい。
もっとも、本発明に係る農作業機においては、回動規制部材が凸部を有する場合に、後部カバーが回動したときに、ギヤ収容部側取付部又は後部カバー側取付部に対して凸部が当接する実施形態を採用しても良い。該実施形態では、回動規制部材の凸部がギヤ収容部又は後部カバーに繰り返し当接することによって、その当接部位におけるギヤ収容部又は後部カバーの塗装が剥離することを防止可能である。これにより、ギヤ収容部又は後部カバーの塗装剥離部分から錆等の発生を防止することができるので、部材の保守管理が容易になる。
【0065】
本発明に係る農作業機は、後部カバーがヒンジの軸芯を中心にして回動することによって、後部カバーが開状態となる。つまり、本発明に係る農作業機は、従来のように後部カバーが落下しないように支持しつつ、後部カバーをギヤ収容部から脱離させる必要が無いので、後部カバーの開閉作業が容易である。
【0066】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により、本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。