(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134232
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】プリンターにおける切断部の用紙ガイド装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/70 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
B41J11/70
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-177653(P2013-177653)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-44368(P2015-44368A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】富田 勝男
【審査官】
松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−079694(JP,A)
【文献】
特開2003−245889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00−11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンター本体と、
このプリンター本体に装填した印字用紙に印字する印字部と、
この印字部において印字された前記印字用紙を切断する固定刃および可動刃を備えた切断部と、を有するプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置であって、
前記切断部は、前記固定刃を前記可動刃に対して位置調整可能な固定刃位置調整機構を有し、
この固定刃位置調整機構は、
前記プリンター本体に取り付けた固定プレートと、
この固定プレートに対して位置調整可能に取り付けるとともに、前記印字用紙の用紙先端部を前記固定刃および前記可動刃の間に案内可能な案内プレートと、を有し、
前記固定刃はこれを、前記固定プレートに対してこの案内プレートと一体的に位置調整可能とし、
前記固定プレートは、前記印字用紙の移送方向において前記案内プレートより上流側に設けたことを特徴とするプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【請求項2】
前記固定刃位置調整機構は、
前記固定プレートに対向して前記固定プレートとの間に前記固定刃を位置させるとともに、その長さ方向に対して傾斜している固定刃位置調整用傾斜窓を形成した可動プレートと、
この可動プレートに形成した可動プレート貫通孔、前記固定刃に形成した固定刃貫通孔、前記案内プレートに形成した案内プレート貫通孔、および前記固定プレートに形成した調整用長窓に係合可能な留め具と、
前記可動プレートの前記固定刃位置調整用傾斜窓、および前記固定プレートにその長さ方向に平行に形成した平行窓にそれぞれ係合するとともに、前記固定プレートに対して平行に移動調整可能な固定刃位置調整用スライダーと、を有することを特徴とする請求項1記載のプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【請求項3】
前記固定プレートの前記調整用長窓は、
前記固定刃を前記可動刃に対して位置調整可能とする方向に延びていることを特徴とする請求項2記載のプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【請求項4】
前記案内プレートは、
前記固定刃の面に沿って互いに固定可能な取付けプレート部と、
この取付けプレート部に対して屈曲しているとともに、前記印字用紙を前記固定刃および前記可動刃の間に案内可能な案内プレート部と、
この案内プレート部と前記取付けプレート部との間の屈曲部と、を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【請求項5】
前記固定刃の尖端刃部は、前記案内プレートの前記屈曲部の近傍にこれを位置させていることを特徴とする請求項4記載のプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【請求項6】
前記可動プレートおよび前記固定刃は、互いに係合することにより前記可動プレートおよび前記固定刃を互いに一体化可能な係合部をそれぞれ有することを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【請求項7】
前記固定刃位置調整用スライダーは、
前記固定プレートの前記平行窓に係合して移動可能な平行窓係合凸部と、
前記可動プレートの前記固定刃位置調整用傾斜窓に係合して移動可能な傾斜窓係合凸部と、を有することを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載のプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【請求項8】
前記固定刃位置調整用スライダーは、
前記固定プレートと前記可動プレートとの間において、前記固定刃の前記可動刃とは反対側の部位にこれを位置させていることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載のプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【請求項9】
前記固定刃位置調整用スライダーは、
前記固定刃の左右長さ方向にこれを移動可能とすることにより、前記固定刃の前記可動刃に対する相対的位置を調整可能であることを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載のプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【請求項10】
前記案内プレートは、
前記固定プレートより薄くこれを形成するとともに、
前記固定プレートと前記固定刃との間において、前記案内プレートと同じ厚さのスペーサーを配置していることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置にかかるもので、とくに固定刃および可動刃によるギロチン方式で印字用紙を切断するプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラベルやタグなどの印字用紙に印字して所定のピッチで切断することにより単葉の用紙片を得るようにしたプリンターがある。
図4ないし
図9にもとづき概説する。
図4は、プリンター(たとえばサーマルプリンター1)の概略側面図であって、サーマルプリンター1は、プリンター本体2と、印字用紙(ラベル用紙3)の供給部4と、検出部5と、印字部6と、切断部7と、を有する。
【0003】
プリンター本体2は、内部を開閉可能な開閉用カバー(図示せず)を設けておくことができ、印字切断済みのラベル用紙3を発行口8から発行可能とする。
【0004】
ラベル用紙3は、プリンター本体2内にこれを装填し、たとえばサーマル印字が可能であって、その表面に所定の情報を印字可能である。
【0005】
供給部4は、ラベル用紙3をロール状に保持するとともに、検出部5、印字部6および切断部7方向にラベル用紙3を帯状に繰り出し可能とする。
【0006】
検出部5は、位置検出センサー9を有し、ラベル用紙3の裏面にあらかじめ印刷した位置検出用マーク(図示せず)などを検出し、印字部6および切断部7に対するラベル用紙3の相対位置を検出可能とする。
【0007】
印字部6は、サーマルヘッド10およびプラテンローラー11を有し、この間にラベル用紙3を挟持し、プラテンローラー11の回転駆動とともに、サーマルヘッド10からの印字データにもとづきラベル用紙3に所定情報を印字可能である。
【0008】
切断部7は、印字部6において印字されたラベル用紙3をその幅方向において切断する固定刃12および可動刃13と、固定刃12を可動刃13に対して位置調整可能な固定刃位置調整機構14と、を備えている。
【0009】
図5は、ラベル用紙3の移送方向から見た固定刃12および可動刃13の幅方向概略図である。
固定刃12は、固定刃位置調整機構14を介してプリンター本体2にその位置調整した状態で固定セット可能にこれを取り付けているとともに、可動刃13は、固定刃12に対して一定ストロークでこれを相対的に接離駆動することにより、その間に移送されてくるラベル用紙3を所定ピッチで切断可能である。
ただし、固定刃12がラベル用紙3の表面に対して平行な尖端刃部12Aを有する一方、可動刃13は、ラベル用紙3の裏面に対して傾斜している左右対称の傾斜刃部13Aを有している。
可動刃13を固定刃12に対して、
図5中、上下方向に一定ストロークで駆動可能としているとともに(図中、実線矢印を参照)、固定刃位置調整機構14により固定刃12の可動刃13に対する相対位置を
図5中、上下方向に調整して(図中、点線矢印を参照)、ラベル用紙3の切断形態を選択可能である。
【0010】
すなわち、
図6は、切断部7によるラベル用紙3の切断形態の平面説明図であって、固定刃位置調整機構14により固定刃12を可動刃13に対して、
図5中、下方に接近するように調整位置決めすれば、
図6の左方に示したようにラベル用紙3を幅方向に完全に切断(フルカットF)することができ、単葉のラベル片3Aとして発行口8から得ることができる。
一方、固定刃位置調整機構14により固定刃12を可動刃13に対して、
図5中、上方に離反するように調整位置決めすれば、
図6の右方に示したようにラベル用紙3を幅方向中央一部に非切断部3Bを残した状態で切断(パーシャルカットP)することができ、複数枚の単葉のラベル片3Aが連設された形態のラベル連続体として発行口8から得て、必要に応じて手により非切断部3Bを引きちぎって単葉のラベル片3Aを得ることができる。
【0011】
ただし、可動刃13のストロークを、より大きな第1のストロークと、より小さな第2のストロークと、に切り替え可能としておき、上記固定刃位置調整機構14とは関係なく、第1のストロークによる切断操作によって上記フルカットFを行い、第2のストロークによる切断操作によって上記パーシャルカットPを行うようにすることもできる。
この第2のストロークによるパーシャルカットPの切断形態において、固定刃位置調整機構14により、パーシャルカット時の切残し量(非切断部3Bの長さ)を調整するように構成することもできる。
【0012】
図7は、切断部7において、現在提案されている固定刃位置調整機構14の分解斜視図、
図8は、固定刃位置調整機構14のラベル用紙3の移送方向に沿った縦断面図である。
固定刃位置調整機構14は、ラベル用紙3の移送方向において上流側に位置するカッターステー15と、下流側に位置するカッターカバー16と、固定刃12の図中、上方部位(可動刃13とは反対側の部位)に位置する固定刃位置調整用スライダー17と、左右一対の留め具(留めボルト18)と、を有する。
【0013】
カッターステー15は、前記開閉用カバーその他のプリンター本体2に固定してネジ留め可能な左右一対の留めプレート部19と、留めプレート部19に対して直角下方(ラベル用紙3の移送路方向)に屈曲して固定刃12に対向可能な対向摺接プレート部20と、対向摺接プレート部20に対して所定の鋭角で上流側に屈曲している案内プレート部21と、この案内プレート部21と対向摺接プレート部20との間の屈曲部22と、を有する。
【0014】
とくに
図8に示すように、プラテンローラー11の下流側において、案内プレート部21との間に移送間隙をあけて案内プレート部21に対向する下方案内プレート23を設けている。この下方案内プレート23と、カッターステー15の案内プレート部21との間にラベル用紙3を移送可能とし、固定刃12と対向する可動刃13の固定刃12方向への駆動によりラベル用紙3をフルカットFあるいはパーシャルカットP形態(
図6)に切断可能とする。
あるいは、既述のように、パーシャルカットP形態における切残し量(非切断部3Bの長さ)を調整可能とする。
【0015】
カッターカバー16は、固定刃12の下流側において固定刃12に対向する対向プレート部24と、切断されたラベル用紙3(ラベル片3A)をさらに下流側の発行口8(
図4)方向に案内する左右一対の案内プレート部25と、を有する。
カッターカバー16の対向プレート部24には、左右一対のカバー貫通孔26および固定刃位置調整用傾斜窓27をそれぞれ形成するとともに、対向プレート部24の上流側面には、固定刃12との係合用凸部28(係合部)を左右一対に突出形成している。
カバー貫通孔26は、留めボルト18をネジ留め可能なネジをその内壁面に切ってある。
固定刃位置調整用傾斜窓27は、カッターカバー16の長さ方向に対して所定の傾斜角度で傾斜している。
【0016】
固定刃12には、カバー貫通孔26に位置合わせした左右一対の固定刃貫通孔29を形成するとともに、その下流側側面にはカッターカバー16の係合用凸部28に位置合わせした左右一対の係合用孔部30(係合部)を形成している。
左右一対の係合用孔部30と係合用凸部28との係合により、固定刃12およびカッターカバー16をその対向面内において一体化可能とし、後述する固定刃位置調整用スライダー17の操作に応じて、一体化した固定刃12およびカッターカバー16を、
図7および
図8中、上下方向(可動刃13方向)に位置調整可能とする。
【0017】
カッターステー15には、カッターカバー16のカバー貫通孔26および固定刃12の固定刃貫通孔29に位置合わせして、左右一対の調整用長窓31を形成しているとともに、この調整用長窓31は、可動刃13の方向に向かって延びるように長くこれを形成し、固定刃12を可動刃13に対して位置調整可能とする。
さらにカッターステー15には、その長さ方向に平行に所定の長さで形成した左右一対の平行窓32を形成してある。
【0018】
固定刃位置調整用スライダー17は、カッターステー15とカッターカバー16との間において、固定刃12の可動刃13とは反対側の部位であって、固定刃12の上方部位にこれを位置させている。
固定刃位置調整用スライダー17は、カッターステー15の平行窓32に係合して移動可能な左右一対の平行窓係合凸部33をカッターステー15に面したその上流側に突出形成するとともに、カッターカバー16の固定刃位置調整用傾斜窓27に係合して移動可能な左右一対の傾斜窓係合凸部34をカッターカバー16に面したその下流側に突出形成している。
なお、固定刃位置調整用スライダー17の左右一対上方部位には、操作片35を屈曲形成して、手動による左右方向への操作を可能としている。
【0019】
かくして、固定刃位置調整用スライダー17は、固定刃12の左右長さ方向にこれを移動操作可能とすることにより、固定刃12の可動刃13に対する相対的位置を調整可能である。
具体的には、左右一対の留めボルト18をカッターカバー16のカバー貫通孔26に対してやや緩めることにより、カッターステー15およびカッターカバー16に対して、固定刃位置調整用スライダー17を操作可能な状態となる。さらに、固定刃位置調整用スライダー17の操作により、固定刃12およびカッターカバー16を位置調整可能な状態となる。
【0020】
とくに
図7の実線矢印に示すように、固定刃位置調整用スライダー17を図中、左上方(ラベル用紙3の移送方向上流側から下流側を見て右側方向)にスライドさせると、その平行窓係合凸部33が平行窓32の右側内方端部32Rまで移動するとともに、その傾斜窓係合凸部34が固定刃位置調整用傾斜窓27の右側内方端部27R(下側内方端部)まで移動することにより、固定刃12およびカッターカバー16をカッターステー15に対して上方(可動刃13から離反する方向)に引き上げて位置調整する。
したがって、可動刃13に対する固定刃12の位置が上方に移動セットされることとなり、切断部7によるラベル用紙3のカットは、パーシャルカットP(
図6)の切断形態となる。
あるいは、パーシャルカットP操作時におけるその切残し量(非切断部3Bの長さ)をより長くすることができる。
【0021】
反対に、
図7の点線矢印に示すように、固定刃位置調整用スライダー17を図中、右下方(ラベル用紙3の移送方向上流側から下流側をから見て左側方向)にスライドさせると、その平行窓係合凸部33が平行窓32の左側内方端部32Lまで移動するとともに、その傾斜窓係合凸部34が固定刃位置調整用傾斜窓27の左側内方端部27L(上側内方端部)まで移動することにより、固定刃12およびカッターカバー16をカッターステー15に対して下方(可動刃13に接近する方向)に押し下げて位置調整する。
したがって、可動刃13に対する固定刃12の位置が下方に移動セットされることとなり、切断部7によるラベル用紙3のカットは、フルカットF(
図6)の切断形態となる。
あるいは、既述のように、パーシャルカットP操作時におけるその切残し量(非切断部3Bの長さ)をより短くすることができる。
いずれの場合も、位置調整完了後留めボルト18を再度締め付けることにより、カッターステー15、固定刃12およびカッターカバー16をその位置で固定すれば、固定刃12の可動刃13に対する調整位置を固定セットすることができる。
【0022】
こうした構成の切断部7および固定刃位置調整機構14においては、カッターステー15がプリンター本体2に対して常に固定状態に取り付けられているため、固定刃12を可動刃13に対して位置調整した際に、カッターステー15の案内プレート部21と固定刃12との相対的位置が、固定刃12の調整位置によってそれぞれ異なってくるという問題がある。
【0023】
図9は、カッターステー15の案内プレート部21および屈曲部22と固定刃12との相対位置関係を示す要部拡大側面図である。
図9(1)は、案内プレート部21および屈曲部22と固定刃12との相対位置関係が適正であって、ラベル用紙3が正常に固定刃12および可動刃13の間に供給可能となり、適正な切断が行われる状態を示す要部拡大側面図である。すなわち、固定刃12の上流側やや上方にカッターステー15の屈曲部22が位置し、屈曲部22と固定刃12の尖端刃部12Aとの間にわずかな段差D1があっても、ラベル用紙3の用紙先端部3Cを固定刃12および可動刃13の間に適正に案内してこれを切断可能である。
【0024】
図9(2)は、固定刃12を可動刃13に向かって、とくに最下方に位置調整した場合の要部拡大側面図であって、固定刃12が屈曲部22より下方に位置してしまうため、屈曲部22と固定刃12の尖端刃部12Aとの間に段差D2が大きくなり、ラベル用紙3の用紙先端部3Cが固定刃12に当たって、用紙詰まりおよびその結果としての印字白抜けなどの原因になるという問題がある。とくに、サーマルプリンター1の供給部4においてロール状の巻かれているラベル用紙3が反ったまま固定刃12ないし段差D2部分に移送されてくると、さらに用紙詰まりを起こしやすくなるという問題がある。
【0025】
図9(3)は、
図9(2)に示した問題を解消するために、カッターステー15を当初から可動刃13側に近接して下方に設けている場合の要部拡大側面図であって、この場合には、固定刃12を可動刃13から離反するように上方に位置調整した際、図示のように、ラベル用紙3が案内プレート部21、屈曲部12、固定刃12および可動刃13の部分で蛇行して、かえって用紙詰まりの原因になってしまうという問題がある。
【0026】
いずれにしても、常時固定状態のカッターステー15に対する固定刃12の相対的位置関係によって、用紙詰まりを発生しかねないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2008−207303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、切断部への印字用紙の移送案内を適正に行うことができるようにしたプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置を提供することを課題とする。
【0029】
また本発明は、固定刃の可動刃に対する位置調整操作によっても、印字用紙の用紙詰まりを発生しないようにしたプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置を提供することを課題とする。
【0030】
また本発明は、印字用紙の切断形態としてフルカットあるいはパーシャルカットに切り替えても、あるいはまた、パーシャルカットの切残し量を調整しても、印字用紙の用紙詰まりを発生しないようにしたプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
すなわち本発明は、従来のカッターステーを固定プレートおよび案内プレートに分割すること、および案内プレートと固定刃とを一体化することに着目したもので、 プリンター本体と、このプリンター本体に装填した印字用紙に印字する印字部と、この印字部において印字された上記印字用紙を切断する固定刃および可動刃を備えた切断部と、を有するプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置であって、上記切断部は、上記固定刃を上記可動刃に対して位置調整可能な固定刃位置調整機構を有し、この固定刃位置調整機構は、上記プリンター本体に取り付けた固定プレートと、この固定プレートに対して位置調整可能に取り付けるとともに、上記印字用紙の用紙先端部を上記固定刃および上記可動刃の間に案内可能な案内プレートと、を有し、上記固定刃はこれを、上記固定プレートに対してこの案内プレートと一体的に位置調整可能としていることを特徴とするプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置である。
【0032】
上記固定刃位置調整機構は、上記固定プレートに対向して上記固定プレートとの間に上記固定刃を位置させるとともに、その長さ方向に対して傾斜している固定刃位置調整用傾斜窓を形成した可動プレートと、この可動プレートに形成した可動プレート貫通孔、上記固定刃に形成した固定刃貫通孔、上記案内プレートに形成した案内プレート貫通孔、および上記固定プレートに形成した調整用長窓に係合可能な留め具と、上記可動プレートの上記固定刃位置調整用傾斜窓、および上記固定プレートにその長さ方向に平行に形成した平行窓にそれぞれ係合するとともに、上記固定プレートに対して平行に移動調整可能な固定刃位置調整用スライダーと、を有することができる。
【0033】
上記固定プレートの上記調整用長窓は、上記固定刃を上記可動刃に対して位置調整可能とする方向に延びていることができる。
【0034】
上記案内プレートは、上記固定刃の面に沿って互いに固定可能な取付けプレート部と、この取付けプレート部に対して屈曲しているとともに、上記印字用紙を上記固定刃および上記可動刃の間に案内可能な案内プレート部と、この案内プレート部と上記取付けプレート部との間の屈曲部と、を有することができる。
【0035】
上記固定刃の尖端刃部は、上記案内プレートの上記屈曲部の近傍にこれを位置させていることができる。
【0036】
上記可動プレートおよび上記固定刃は、互いに係合することにより上記可動プレートおよび上記固定刃を互いに一体化可能な係合部をそれぞれ有することができる。
【0037】
上記固定刃位置調整用スライダーは、上記固定プレートの上記平行窓に係合して移動可能な平行窓係合凸部と、上記可動プレートの上記固定刃位置調整用傾斜窓に係合して移動可能な傾斜窓係合凸部と、を有することができる。
【0038】
上記固定刃位置調整用スライダーは、上記固定プレートと上記可動プレートとの間において、上記固定刃の上記可動刃とは反対側の部位にこれを位置させていることができる。
【0039】
上記固定刃位置調整用スライダーは、上記固定刃の左右長さ方向にこれを移動可能とすることにより、上記固定刃の上記可動刃に対する相対的位置を調整可能であることができる。
【0040】
上記固定プレートは、上記印字用紙の移送方向において上記案内プレートより上流側に設けた固定ステーであることができる。
【0041】
上記可動プレートは、上記印字用紙の移送方向において上記案内プレートより下流側に設けたカッターカバーであることができる。
【0042】
上記案内プレートは、上記固定プレートより薄くこれを形成するとともに、上記固定プレートと上記固定刃との間において、上記案内プレートと同じ厚さのスペーサーを配置していることができる。
【0043】
上記固定プレートは、上記印字用紙の移送方向において上記案内プレートより下流側に設けたカッターカバーであることができる。
【0044】
上記可動プレートは、上記印字用紙の移送方向において上記案内プレートより上流側に設けたステーであることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によるプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置においては、プリンター本体に固定的に取り付ける固定プレートに対して位置調整可能に取り付けるとともに、印字用紙の用紙先端部を固定刃および可動刃の間に案内可能な案内プレートを設け、固定刃を固定プレートに対してこの案内プレートと一体的に位置調整可能としているので、可動刃に対して固定刃を位置調整したとしても、この固定刃と案内プレートが一体化して移動するだけであるため、固定刃と案内プレートとの間で印字用紙が用紙詰まりを起こすことを防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の実施例によるプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置40の説明図であって、
図1(1)は、用紙ガイド装置40の、ラベル用紙3の移送方向上流側から下流側方向に見た説明図、
図1(2)は、用紙ガイド装置40の、ラベル用紙3の移送方向下流側から上流側方向に見た説明図である。
【
図2】同、用紙ガイド装置40の分解斜視図である。
【
図3】同、用紙ガイド装置40のラベル用紙3の移送方向に沿った縦断面図である。
【
図4】従来からのプリンター(たとえばサーマルプリンター1)の概略側面図である。
【
図5】同、ラベル用紙3の移送方向から見た固定刃12および可動刃13の幅方向概略図である。
【
図6】同、切断部7によるラベル用紙3の切断形態の平面説明図である。
【
図7】同、切断部7において、現在提案されている固定刃位置調整機構14の分解斜視図である。
【
図8】同、固定刃位置調整機構14のラベル用紙3の移送方向に沿った縦断面図である。
【
図9】同、カッターステー15の案内プレート部21および屈曲部22と固定刃12との相対位置関係を示す要部拡大側面図であって、
図9(1)は、案内プレート部21および屈曲部22と固定刃12との相対位置関係が適正であって、ラベル用紙3が正常に固定刃12および可動刃13の間に供給可能となり、適正な切断が行われる状態を示す要部拡大側面図、
図9(2)は、固定刃12を可動刃13に向かって、とくに最下方に位置調整した場合の要部拡大側面図、
図9(3)は、
図9(2)に示した問題を解消するために、カッターステー15を当初から可動刃13側に近接して下方に設けている場合の要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、案内プレートと固定刃とを一体化するようにし、可動刃に対して固定刃を位置調整したとしても、この固定刃と案内プレートが一体化して位置調整されるため、固定刃と案内プレートとの間で印字用紙が用紙詰まりを起こすことを防止し、安定した印字用紙の案内を可能としたプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置を実現した。
【実施例】
【0048】
つぎに本発明の実施例によるプリンターにおける切断部の用紙ガイド装置40を
図1ないし
図3にもとづき説明する。ただし、
図4ないし
図9と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、用紙ガイド装置40の説明図であって、
図1(1)は、用紙ガイド装置40の、ラベル用紙3の移送方向上流側から下流側方向に見た説明図、
図1(2)は、用紙ガイド装置40の、ラベル用紙3の移送方向下流側から上流側方向に見た説明図である。
【0049】
切断部7の用紙ガイド装置40は、固定刃12を可動刃13に対して位置調整可能な固定刃位置調整機構41を有する。
図2は、用紙ガイド装置40の分解斜視図、
図3は、用紙ガイド装置40のラベル用紙3の移送方向に沿った縦断面図である。
【0050】
固定刃位置調整機構41は、固定ステー42(固定プレート)と、案内プレート43と、前記カッターカバー16(可動プレート)と、前記固定刃位置調整用スライダー17と、前記左右一対の留めボルト18(留め具)と、を有する。
【0051】
固定ステー42は、前記カッターステー15と同様に、その留めプレート部19において前記プリンター本体2にこれを固定している。ただし固定ステー42は、カッターステー15のような案内プレート部21を備えていないとともに、その対向摺接プレート部20もカッターステー15のものより短くこれを形成している。
固定ステー42は、固定刃12を可動刃13に対して位置調整可能とする可動刃13の方向に向かう前記左右一対の調整用長窓31を形成している。
【0052】
案内プレート43は、この固定ステー42に対して位置調整可能に取り付けるとともに、ラベル用紙3の用紙先端部を固定刃12および可動刃13の間に案内可能である。
後述するように、固定ステー42に対して案内プレート43と一体的に固定刃12を位置調整可能としている。
【0053】
また案内プレート43は、固定刃12の面に沿って互いに固定可能な取付けプレート部44と、この取付けプレート部44に対してラベル用紙3の移送方向上流側に所定の鋭角で屈曲しているとともに、ラベル用紙3を固定刃12および可動刃13の間に案内可能な案内プレート部45と、この案内プレート部45と取付けプレート部44との間の屈曲部46と、を有する。
とくに
図3に示すように、固定刃12の尖端刃部12Aは、案内プレート43の屈曲部46の近傍であって、屈曲部46よりわずかに可動刃13に対して近接している部位にこれを位置させている。すなわち、固定刃12の尖端刃部12Aと屈曲部46の間の段差D3は、ごくわずかであって、前述した段差D1(
図9(1))と同等ないしそれ以下とし、さらには、段差D2(
図9(2))より小さくこれを選択する。
【0054】
図2に戻って、カッターカバー16は、固定ステー42に対向して固定ステー42との間に固定刃12および案内プレート43を位置させるとともに、その長さ方向に対して所定の傾斜角度で傾斜している前記固定刃位置調整用傾斜窓27を形成している。
図7において既述のように、カッターカバー16および固定刃12は、互いに係合することによりカッターカバー16および固定刃12を互いに一体化可能な前記係合部(係合用凸部28、係合用孔部30)をそれぞれ有する。
【0055】
図7において既述したように、固定刃位置調整用スライダー17は、固定ステー42の平行窓32に係合して移動可能な平行窓係合凸部33と、カッターカバー16の固定刃位置調整用傾斜窓27に係合して移動可能な傾斜窓係合凸部34と、を有するとともに、固定ステー42およびカッターカバー16に対して平行に移動調整可能である。
また、固定刃位置調整用スライダー17は、固定ステー42とカッターカバー16との間において、固定刃12の可動刃13とは反対側の部位にこれを位置させ、固定刃12の左右長さ方向にこれを移動可能とすることにより、固定刃12の可動刃13に対する相対的位置を調整可能である。
【0056】
なお、カッターカバー16の対向プレート部24における下流表面側に、位置調整用目盛り47を設けてあり、固定刃位置調整用スライダー17をカッターカバー16に沿って移動操作する際の目安としている。
【0057】
留めボルト18は、カッターカバー16に形成したカバー貫通孔26(可動プレート貫通孔)、固定刃12に形成した固定刃貫通孔29、案内プレート43に形成した案内プレート貫通孔48、および固定ステー42に形成した調整用長窓31に挿通して、固定ステー42、案内プレート43、固定刃12およびカッターカバー16の締付けセットおよびその解除を可能としている。
【0058】
なお、とくに
図3に示すように、案内プレート43は、固定ステー42より薄くこれを形成するとともに、固定ステー42と固定刃12との間において、案内プレート43と同じ厚さのスペーサー49を配置することにより、固定ステー42に対する案内プレート43の摺動を円滑にしている。
また、固定ステー42とスペーサー49とを位置合わせするために、位置合わせ用貫通孔50を形成してある。
【0059】
また、とくに
図2に示すように、案内プレート43の取付けプレート部44には、留めボルト18が貫通するカッターカバー16の左右一対のカバー貫通孔26、固定刃12の左右一対の固定刃貫通孔29および左右一対の固定ステー42の調整用長窓31と位置合わせが可能な左右一対の案内プレート貫通孔48を形成しているが、いずれか一方の案内プレート貫通孔48を横長形状とすることにより、固定ステー42、案内プレート43、固定刃12およびカッターカバー16の四部品の製作誤差および組付け誤差を吸収可能としている。
【0060】
こうした構成の用紙ガイド装置40および固定刃位置調整機構41において、前述の固定刃位置調整機構14(
図7)と同様に、固定刃位置調整用スライダー17を
図2中、左右方向(ラベル用紙3の幅方向)に操作することにより、その左右一対の平行窓係合凸部33および傾斜窓係合凸部34をそれぞれ、固定ステー42の平行窓32およびカッターカバー16の固定刃位置調整用傾斜窓27内で移動させ、固定ステー42に対して、固定刃12およびカッターカバー16を上下方向に位置調整することができる。
【0061】
ただし、左右一対の留めボルト18により固定刃12と案内プレート43とが一体化されているため、固定刃12の上下位置調整に合わせて案内プレート43もその相対的位置関係を常時同じ状態に保持することができる。
すなわち、
図9(2)で説明したような段差D2を生ずることなく、常時適正な段差D3(
図3)を維持して、ラベル用紙3を固定刃12および可動刃13の間に適正に案内することができる。
したがって、ラベル用紙3の用紙先端部3Cが固定刃12や、大きく形成される段差の部分に引っ掛かることなく用紙詰まり、および用紙詰まりに起因する印字白抜けなどの不具合を解消して安定したラベル用紙3の案内機能を発揮することができる。
【0062】
なお、上述の実施例においては、固定プレートとして、ラベル用紙3の移送方向において案内プレート43より上流側に設けた固定ステー42を採用し、可動プレートとしては、ラベル用紙3の移送方向において案内プレート43より下流側に設けたカッターカバーを採用した構成を説明したが、本発明においては、固定プレートおよび可動プレートとしていずれかを選択するかは任意である。
すなわち、固定プレートとして、ラベル用紙3の移送方向において案内プレート43より下流側に設けたカッターカバー16を採用し、可動プレートとしては、ラベル用紙3の移送方向において案内プレート43より上流側に設けたステー(
図2では、固定ステー42として説明しているステー)を採用する構成を選択することができる。
もちろん、この構成の場合には、固定プレートとしてのカッターカバー16に調整用長窓31や平行窓32を形成するとともに、可動プレートとしてのステーに固定刃位置調整用傾斜窓27を形成するなど、必要な設計変更を行うものとする。
【符号の説明】
【0063】
1 サーマルプリンター(プリンター、
図4)
2 プリンター本体
3 ラベル用紙(印字用紙)
3A ラベル用紙3の単葉のラベル片(
図6)
3B ラベル用紙3の非切断部(
図6)
3C ラベル用紙3の用紙先端部(
図9)
4 供給部
5 検出部
6 印字部
7 切断部
8 発行口
9 位置検出センサー
10 サーマルヘッド
11 プラテンローラー
12 固定刃
12A 固定刃12の尖端刃部
13 可動刃
13A 可動刃13の傾斜刃部
14 固定刃位置調整機構(
図7)
15 カッターステー
16 カッターカバー(可動プレート)
17 固定刃位置調整用スライダー
18 左右一対の留めボルト(留め具)
19 カッターステー15の留めプレート部
20 カッターステー15の対向摺接プレート部
21 カッターステー15の案内プレート部
22 カッターステー15の屈曲部
23 下方案内プレート
24 カッターカバー16の対向プレート部
25 カッターカバー16の案内プレート部
26 左右一対のカバー貫通孔(可動プレート貫通孔)
27 左右一対の固定刃位置調整用傾斜窓
27R 固定刃位置調整用傾斜窓27の右側内方端部
27L 固定刃位置調整用傾斜窓27の左側内方端部
28 カッターカバー16に形成した左右一対の係合用凸部(係合部)
29 固定刃12に形成した左右一対の固定刃貫通孔
30 固定刃12に形成した左右一対の係合用孔部(係合部)
31 カッターステー15(
図7)、固定ステー42(
図2)に形成した左右一対の調整用長窓
32 カッターステー15(
図7)、固定ステー42(
図2)に形成した左右一対の平行窓
32R 平行窓32の右側内方端部
32L 平行窓32の左側内方端部
33 固定刃位置調整用スライダー17に形成した平行窓係合凸部
34 固定刃位置調整用スライダー17に形成した傾斜窓係合凸部
35 固定刃位置調整用スライダー17に形成した操作片
40 プリンター(サーマルプリンター1)における切断部7の用紙ガイド装置(実施例、
図2)
41 固定刃位置調整機構
42 固定ステー(固定プレート)
43 案内プレート
44 案内プレート43の取付けプレート部
45 案内プレート43の案内プレート部
46 案内プレート43の屈曲部
47 カッターカバー16に設けた位置調整用目盛り
48 案内プレート43に形成した左右一対の案内プレート貫通孔
49 スペーサー
50 位置合わせ用貫通孔
F フルカット(
図6)
P パーシャルカット(
図6)
D1 カッターステー15の屈曲部22と固定刃12の尖端刃部12Aとの間のわずかな段差(
図9(1))
D2 カッターステー15の屈曲部22と固定刃12の尖端刃部12Aとの間の大きな段差(
図9(2))
D3 案内プレート43の屈曲部46と固定刃12の尖端刃部12Aとの間のわずかな段差(
図3)