(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134235
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】制御装置、電子制御システム、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20170515BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
G09G5/00 550C
G09G5/38 A
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-180532(P2013-180532)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-49346(P2015-49346A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(72)【発明者】
【氏名】関口 直紀
【審査官】
中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/150747(WO,A1)
【文献】
特開2012−194492(JP,A)
【文献】
特開2012−216123(JP,A)
【文献】
特開平11−161190(JP,A)
【文献】
特開平10−105310(JP,A)
【文献】
特開2011−113108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 − 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させる表示制御部と、
利用者の視野が向く方向を表す指標データを算出する視野方向検出部と、
前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記視野方向検出部により算出された指標データが適合しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部により適合していると判定されたか否かに基づいて、異なる処理を行う処理部と、
利用者の視野が向く方向における風景の移動方向を検出する検出部と
を備え、
前記表示制御部は、前記表示対象の移動方向を、前記検出部により検出された風景の移動方向とは異なる方向に決定する制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記視野方向検出部は、前記表示部の挙動を検出する挙動検出部の検出結果を参照し、前記表示部の前記表示面に平行である移動速度ベクトルを、前記指標データとして算出する、
制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記判定部は、前記表示面内における前記表示対象の移動速度ベクトルと前記表示部の移動速度ベクトルとのなす角度が基準角度以下であり、且つ前記表示対象の移動速度ベクトルと前記表示部の移動速度ベクトルのいずれか一方又は双方を、表示対象の移動方向又は表示部の移動方向と一致させた方向に写像した場合又は表示対象の移動速度ベクトルおよび表示部の移動速度ベクトルの双方をそれぞれ一方向に写像した場合のベクトル間の大きさの差分が基準速度以下である場合に、前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記視野方向検出部により算出された指標データが適合していると判定する、
制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記処理部は、前記判定部により適合していると判定された状態が継続する時間に応じて、異なる処理を行う、
制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置であって、
前記処理部は、前記表示対象の有する情報量に応じて、前記継続する時間に対する閾値を変更する、
制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象を当初の移動方向とは逆方向に移動させる、
制御装置。
【請求項7】
請求項2項に記載の制御装置であって、
前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象を、前記表示対象の移動速度ベクトルから前記表示部の移動速度ベクトルを差し引いた方向に移動させる、
制御装置。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象の位置を停止させる、
制御装置。
【請求項9】
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記表示制御部は、前記表示対象の移動方向をランダムに決定する、
制御装置。
【請求項10】
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記検出部は、利用者の視野が向く方向における風景を撮像する撮像部を備え、前記撮像部により撮像された画像に対してオプティカルフロー処理を行うことにより前記風景の移動方向を検出する、
制御装置。
【請求項11】
請求項1から10のうちいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記検出部は、前記表示部の位置を検出する位置検出部
を備え、
前記位置検出部により検出された前記表示部の位置に基づいて、前記風景の移動方向を検出する、
制御装置。
【請求項12】
表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記表示部の挙動を検出する挙動検出部の検出結果を参照し、前記表示部の前記表示面に平行である移動速度ベクトルを算出する視野方向検出部と、
前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記視野方向検出部により算出された指標データが適合しているか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象をそれまでの移動方向とは逆方向に移動させる、
制御装置。
【請求項13】
表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記表示部の挙動を検出する挙動検出部の検出結果を参照し、前記表示部の前記表示面に平行である移動速度ベクトルを算出する視野方向検出部と、
前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記視野方向検出部により算出された指標データが適合しているか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象を前記表示部の移動速度ベクトルに基づく方向に移動させる、
制御装置。
【請求項14】
請求項1から13のうちいずれか一項に記載の制御装置と、
前記制御装置によって制御される表示部と、
を備える電子制御システム。
【請求項15】
制御装置が実行する制御方法であって、
表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させるステップと、
利用者の視野が向く方向を表す指標データを算出するステップと、
前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記算出された指標データが適合しているか否かを判定するステップと、
前記判定するステップで適合していると判定されたか否かに基づいて、異なる処理を行うステップと、
利用者の視野が向く方向における風景の移動方向を検出するステップと、
前記表示対象の移動方向を、前記検出するステップで検出された風景の移動方向とは異なる方向に決定するステップと
を有する制御方法。
【請求項16】
制御装置の制御コンピュータに、
表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させるステップと、
利用者の視野が向く方向を表す指標データを算出するステップと、
前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記算出された指標データが適合しているか否かを判定するステップと、
前記判定するステップで適合していると判定されたか否かに基づいて、異なる処理を行うステップと、
利用者の視野が向く方向における風景の移動方向を検出するステップと、
前記表示対象の移動方向を、前記検出するステップで検出された風景の移動方向とは異なる方向に決定するステップと
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、電子制御システム、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外線光源とカメラの組み合わせにより2つもしくは1つの瞳孔を顔の画像から検出し、頭の動き、特に回転により、パソコン画面にほぼ平行な面の中を移動する瞳孔の空間位置に合わせて、パソコン画面上のカーソルを動かすポインティング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、頭部動き検出部で検出される情報から利用者の頭部動作を特定し、その角速度に対応する利用者の望む処理(画像の切り替え等)を実行する制御装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この装置では、利用者頭部の戻り動作を処理に反映しないことで、利用者の頭部動作による操作を、より正確に実行するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−182247号公報
【特許文献2】特開2012−123812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術は、利用者側が行う動作の結果を如何にして検知するかを主眼としており、装置が提供する情報を利用者が認識したかどうかを適切に確認することができない場合がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、システムが提供する情報を利用者が認識したかどうかを、利用者の自然な動作を利用して確認することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させる表示制御部と、利用者の視野が向く方向を表す指標データを算出する視野方向検出部と、前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記視野方向検出部により算出された指標データが適合しているか否かを判定する判定部と、前記判定部により適合していると判定されたか否かに基づいて、異なる処理を行う処理部と、
利用者の視野が向く方向における風景の移動方向を検出する検出部とを備え
、前記表示制御部は、前記表示対象の移動方向を、前記検出部により検出された風景の移動方向とは異なる方向に決定する制御装置である。
本発明の一態様において、前記視野方向検出部は、前記表示部の挙動を検出する挙動検出部の検出結果を参照し、前記表示部
の前記表示面に平行
である移動速度ベクトルを、前記指標データとして算出するものとしてよい。
また、本発明の一態様において、前記判定部は、前記表示面内における前記表示対象の移動速度ベクトルと前記表示部の移動速度ベクトルとのなす角度が基準角度以下であり、且つ前記表示対象の移動速度ベクトルと前記表示部の移動速度ベクトルのいずれか
一方又は双方を
、表示対象の移動方向又は表示部の移動方向と一致させた方向に写像した場合又は表示対象の移動速度ベクトルおよび表示部の移動速度ベクトルの双方をそれぞれ一方向に写像した場合のベクトル間の大きさの差分が基準速度以下である場合に、前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記視野方向検出部により算出された指標データが適合していると判定するものとしてよい。
また、本発明の一態様において、前記処理部は、前記判定部により適合していると判定された状態が継続する時間に応じて、異なる処理を行うものとしてよい。
また、本発明の一態様において、前記処理部は、前記表示対象の有する情報量に応じて、前記継続する時間に対する閾値を変更するものとしてよい。
また、本発明の一態様において、前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象を当初の移動方向とは逆方向に移動させるものとしてよい。
また、本発明の一態様において、前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象を、前記表示対象の移動速度ベクトルから前記表示部の移動速度ベクトルを差し引いた方向に移動させるものとしてよい。
また、本発明の一態様において、前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示部の移動速度ベクトルの向きが前記表示対象の移動する方向に合致している場合のみ、前記表示対象を前記表示部の移動速度ベクトルとは逆方向に移動させるものとしてよい。
また、本発明の一態様において、前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象の位置を停止させるものとしてよい。
また、本発明の一態様において、前記表示制御部は、前記表示対象の移動方向をランダムに決定するものとしてよい
。
また、本発明の一態様において、前記検出部は、利用者の視野が向く方向における風景を撮像する撮像部を備え、前記撮像部により撮像された画像に対してオプティカルフロー処理を行うことにより前記風景の移動方向を検出するものとしてよい。
また、本発明の一態様において、前記検出部は、前記表示部の位置を検出する位置検出部を備え、前記位置検出部により検出された前記表示部の位置に基づいて、前記風景の移動方向を検出するものとしてよい。
本発明の他の態様は、表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させる表示制御部と、前記表示部の挙動を検出する挙動検出部の検出結果を参照し、前記表示部
の前記表示面に平行
である移動速度ベクトルを算出する算出部と、前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記視野方向検出部により算出された指標データが適合しているか否かを判定する判定部と、を備え、前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象をそれまでの移動方向とは逆方向に移動させる、制御装置である。
また、本発明の他の態様は、表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させる表示制御部と、前記表示部の挙動を検出する挙動検出部の検出結果を参照し、前記表示部
の前記表示面に平行
である移動速度ベクトルを算出する
視野方向検出部と、前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記視野方向検出部により算出された指標データが適合しているか否かを判定する判定部と、を備え、前記表示制御部は、前記判定部により適合していると判定された場合、前記表示対象を前記表示部の移動速度ベクトルに基づく方向に移動させる、制御装置である。
また、本発明の他の態様は、
制御装置が実行する制御方法であって、表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させ
るステップと、利用者の視野が向く方向を表す指標データを算出
するステップと、前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記算出された指標データが適合しているか否かを判定
するステップと、前記判定
するステップで適合していると判定されたか否かに基づいて、異なる処理を行う
ステップと、
利用者の視野が向く方向における風景の移動方向を検出するステップと、前記表示対象の移動方向を、前記検出するステップで検出された風景の移動方向とは異なる方向に決定するステップとを
有する制御方法である。
また、本発明の他の態様は、制御装置の制御コンピュータに、表示部の表示面内を移動する表示対象を前記表示部に表示させ
るステップと、利用者の視野が向く方向を表す指標データを算出
するステップと、前記表示面内における前記表示対象の少なくとも移動方向と、前記算出された指標データが適合しているか否かを判定
するステップと、
前記判定するステップで適合していると判定されたか否かに基づいて、異なる処理を行
うステップと、
利用者の視野が向く方向における風景の移動方向を検出するステップと、前記表示対象の移動方向を、前記検出するステップで検出された風景の移動方向とは異なる方向に決定するステップとを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、システムが提供する情報を利用者が認識したかどうかを、利用者の自然な動作を利用して確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電子制御システム1が利用される様子を模式的に示す図である。
【
図3】制御装置30の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】提示情報ODがシースルー型ディスプレイ装置12の表示面12Aを移動する様子の一例を示す図である。
【
図5】提示速度ベクトル→Vi、移動速度ベクトル→Vd、および写像ベクトル→tViの関係を示す図である。
【
図6】利用者が提示情報ODを視認してOK判定がなされた場合における、提示情報ODの表示位置の変化の一例を示す図である。
【
図7】利用者が提示情報ODを視認してOK判定がなされた場合における、提示情報ODの表示位置の変化の他の例を示す図である。
【
図8】利用者が提示情報ODを視認してOK判定がなされた場合における、提示情報ODの表示位置の変化の他の例を示す図である。
【
図9】風景方向検出部36Aにより検出された風景の移動方向とは異なる方向に提示情報ODが移動する様子を示す図である。
【
図10】本実施形態の電子制御システム1により実行される処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【
図11】本実施形態の電子制御システム1により実行される処理の流れを示すフローチャートの他の例である。
【
図12】第2実施形態の電子制御システム2がシースルー型ディスプレイ装置12に表示させる画面の一例を示す図である。
【
図13】第2実施形態の電子制御システム2がシースルー型ディスプレイ装置12に表示させる画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の制御装置、電子制御システム、制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
[ハードウェア構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子制御システム1が利用される様子を模式的に示す図である。電子制御システム1は、例えば、メガネ状の形状を有し、利用者Uの頭部に装着されて利用されるヘッドマウントディスプレイ10と、制御装置30とを備える。
ヘッドマウントディスプレイ10は、利用者の眼に入射する光をある程度透過すると共に、利用者の眼に向いた面に画像を表示可能なシースルー型ディスプレイ装置12と、センサ部14と、風景撮影用のカメラ16とを備える。シースルー型ディスプレイ装置12は、例えば、光透過性のLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electroluminescence)表示装置を備える。シースルー型ディスプレイ装置12は、制御装置30から提供される画像データに基づいて、各種画像を表示する。
【0012】
センサ部14は、例えば、加速度センサやジャイロセンサを含み、シースルー型ディスプレイ装置12を備えたヘッドマウントディスプレイ10の挙動である加速度や角速度等を検出する。カメラ16は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を有するカメラである。センサ部14の検出値やカメラ16の撮像した画像は、制御装置30に送信される。
【0013】
制御装置30は、例えば、利用者によって保持可能なサイズの筐体に収められ、通信ケーブルまたは無線でヘッドマウントディスプレイ10と通信することで、画像やセンサ検出値等の送受信を行う。制御装置30は、例えば、携帯電話やタブレット端末等の携帯型端末に、専用ソフトウェアがインストールされたものである。また、これに限らず、制御装置30は、電子制御システム1の専用装置であってもよい。また、制御装置30は、ヘッドマウントディスプレイ10に内蔵されてもよい。
【0014】
以下、電子制御システム1の機能について、適宜、XYZ座標系を用いて説明する。
図2は、XYZ座標系を定義する図である。
【0015】
[機能構成、および基本的な処理]
図3は、制御装置30の機能構成の一例を示す図である。制御装置30は、例えば、タッチパネルや各種ボタン等の入力部32と、処理部34と、表示制御部36と、視野方向検出部38と、判定部40と、記憶部50とを備える。記憶部50には、例えば、プログラム52と、コンテンツデータ54とが記憶されている。制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを備える。処理部34、表示制御部36、視野方向検出部38、および判定部40は、例えば、プロセッサがプログラム52を実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。プログラム52とコンテンツデータ54は、例えば、制御装置30がインターネットに接続することで、インターネット上のサーバ装置等からダウンロードされる。また、プログラム52とコンテンツデータ54は、各種可搬型記憶媒体に格納されたものが記憶部50にインストールされてもよいし、制御装置30の出荷時に予め記憶部50に格納されていてもよい。記憶部50としては、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)、レジスタの他、HDDやSDカード等が用いられてよい。
【0016】
処理部34は、例えば、コンテンツデータ54に基づく画像をシースルー型ディスプレイ装置12に表示させて利用者に提供するための処理を行う。本実施形態において、電子制御システム1は、例えば、英単語の暗記のための学習コンテンツを利用者に提供する。コンテンツデータ54には、暗記の対象となる英単語と翻訳語が、例えばレベル別に格納されている。処理部34は、入力部32に対してなされた利用者の操作に応じて、所望のレベルの英単語と翻訳語のテキストデータをコンテンツデータ54から読み出し、表示制御部36に出力する。
【0017】
表示制御部36は、処理部34から入力された英単語と翻訳語のテキストデータを、所定の方向に、所定の速度で移動させながらシースルー型ディスプレイ装置12に表示させる。以下、このように提示される情報を、提示情報ODと称して説明する。提示情報ODは、「表示対象」の一例である。また、提示情報ODが移動する所定の方向および所定の速度を、提示速度ベクトル→Viと表現する。以下、「→」は、続く符号がベクトルであることを示すものとする。提示速度ベクトル→Viは、提示情報ODの移動速度ベクトルである。
【0018】
図4は、提示情報ODがシースルー型ディスプレイ装置12の表示面12Aを移動する様子の一例を示す図である。
図4に示すように、提示情報ODは、利用者が特段の行動をしなければ、表示面12Aの端部12Aaまで移動して消滅するように制御される。
【0019】
視野方向検出部38は、センサ部14から入力された検出値に基づいて、利用者の視野が向く方向を検出する。本実施形態において、「利用者の視野が向く方向」とは、利用者がヘッドマウントディスプレイ10を介して風景を見る方向(
図2におけるZ方向)を意味する。視野方向検出部38は、利用者の視野が向く方向を表す指標データとして、例えば、表示面12Aに平行な方向(
図2におけるX―Y平面上の方向)の、シースルー型ディスプレイ装置12自身の移動速度ベクトル→Vdを算出して判定部40に出力する。利用者が頭部を傾けて視野の向く方向を変化させると、必然的にシースルー型ディスプレイ装置12が頭部を中心として回動するため、移動速度ベクトル→Vdは、利用者の視野が向く方向を表す指標データとなる。
【0020】
判定部40は、表示面12A内を提示情報ODが移動する方向(提示速度ベクトル→Viの方向)と、視野方向検出部38により算出された移動速度ベクトル→Vdとが適合しているか否かを判定する。まず、判定部40は、移動速度ベクトル→Vdと提示速度ベクトル→Viとのなす角度θ(方向を考えず、絶対値とする)が基準角度θ1以下であるか否かを判定する。次に、判定部40は、移動速度ベクトル→Vdを、提示速度ベクトル→Viに写像した写像ベクトル→tViを算出し、提示速度ベクトル→Viと写像ベクトル→tViの大きさの差分|Vi―tVi|が基準速度V1以下であるか否かを判定する。そして、判定部40は、角度θが基準角度θ1以下であり、且つ差分|Vi―tVi|が基準速度V1以下である場合に、表示面12A内を提示情報ODが移動する方向と、視野方向検出部38により算出された移動速度ベクトル→Vdとが適合していると判定する。判定部40による判定の結果は、処理部34および表示制御部36に出力される。
図5は、提示速度ベクトル→Vi、移動速度ベクトル→Vd、および写像ベクトル→tViの関係を示す図である。
【0021】
[判定結果に基づく処理]
処理部34は、判定部40により表示面12A内を提示情報ODが移動する方向と、視野方向検出部38により算出された移動速度ベクトル→Vdとが適合していると判定されたか否かに応じて異なる処理を行う。以下、適合しているという判定をOK判定、適合していないという判定をNG判定と称する。
【0022】
OK判定が、例えば所定時間、継続した場合、処理部34は、判定利用者が提示情報ODを十分に認識したと判断し、例えば、提示情報ODの表示を停止するように表示制御部36に指示すると共に、コンテンツデータ54における提示情報ODの元データに確認済みフラグを付与する。確認済フラグが付与された元データは、利用者の特段の操作がなければ、以降、処理部34によって読み出されない。また、OK判定が所定時間、継続した場合、処理部34は、内部的にカウントしているスコアに所定の値を付与して蓄積しておき、所望のタイミングで利用者に提示してもよい。ここで、「所定時間」は、一定時間(例えば3[sec]程度)としてもよいし、提示情報ODの情報量(例えば文字数)に応じて変更してもよい。すなわち、英単語や翻訳語が長いワードである場合には、所定時間を長く設定してもよい。また、所定時間は、提示情報ODの例えばレベルに応じて定義されてもよい。また、「所定時間、継続する」とは、OK判定が隙間なく継続することを意味するのではなく、OK判定がなされた回数が所定回数に至ることを意味してもよい。
【0023】
一方、NG判定が、例えば提示情報ODが表示面12Aから消滅するまで継続した場合、処理部34は、利用者が提示情報ODを認識しなかったと判断し、例えば同じ提示情報ODを、ある程度の時間が経過した後に、再度表示するように表示制御部36に指示する。
【0024】
このように、本実施形態の電子制御システム1では、提示速度ベクトル→Viと移動速度ベクトル→Vdが方向、大きさ共に近い状態が継続した場合に、利用者が提示情報ODを十分に認識したと判断する。利用者が提示情報ODを視認するときは、提示情報ODを目で追うために、無意識に頭部を回動させるものである。このため、角度θが基準角度θ1以下であり、且つ差分|Vi―tVi|が基準速度V1以下である場合には、利用者が提示情報ODを認識したと判断することができ、そうでない場合には、認識しなかったと判断することができる。本実施形態の電子制御システム1は、このような考察に基づき上記制御を行っているため、システムが提供する情報を利用者が認識したかどうかを、利用者の自然な動作を利用して確認することができる。また、明確に方向を指示した上で利用者の動作を認識するため、システムとは無関係な利用者の頭部の動作による誤判定がなされる可能性を低減することができる。
【0025】
表示制御部36は、OK判定がなされた場合(所定時間、継続した場合としてもよい)、提示情報ODを、例えば一定距離(写像ベクトル→tViの大きさ、或いは、提示速度ベクトル→Viと写像ベクトル→tViとの差分が基準速度V1以下である場合には提示速度ベクトル→Viの大きさ)、当初の移動方向とは逆方向に戻してシースルー型ディスプレイ装置12に表示させる。「当初の」とは、提示情報ODが表示開始された時点のという意味である。
図6は、利用者が提示情報ODを視認してOK判定がなされた場合における、提示情報ODの表示位置の変化の一例を示す図である。また、表示制御部36は、OK判定がなされた場合(同)、提示情報ODを、表示開始時の初期位置に戻した後に、再度当初と同じ方向に移動させてもよいし、表示開始時の初期位置に戻して停止させてもよいし、その場で停止させてもよい。
図7は、利用者が提示情報ODを視認してOK判定がなされた場合における、提示情報ODの表示位置の変化の他の例を示す図である。これらの処理によって、利用者は、自分が提示情報ODを認識したことがシステムに伝わったという感触を得ることができ、使用感を向上させることができる。
【0026】
また、表示制御部36は、OK判定がなされた場合(所定時間、継続した場合としてもよい)、提示情報ODを、提示速度ベクトル→Viから移動速度ベクトル→Vdを差し引いた方向に移動させてもよい。
図8は、利用者が提示情報ODを視認してOK判定がなされた場合における、提示情報ODの表示位置の変化の他の例を示す図である。また、この場合において、提示情報ODを移動させる量は、例えば、提示速度ベクトル→Viの大きさから移動速度ベクトル→Vdの大きさを差し引いた差分に、適切な上限値を設けた量などに決定される。
【0027】
ここで、頭部を動かさずに情報を認知できてしまう場合、情報を認知しているのにもかかわらず、情報を認知していないと判定されてしまう可能性がある。このため、提示情報の初期表示位置を、
図4の右図のように、表示面12Aから一部はみ出すような位置とし、OK判定がなされると、表示面12Aに収まる位置に戻すように制御してもよい。
【0028】
[提示情報ODを移動させる方向の制御]
ここで、表示制御部36が提示情報ODの当初の移動方向を決定する処理について説明する。表示制御部36は、提示情報ODの移動方向をランダムに決定してもよいが、以下に説明する処理を行って提示情報ODの移動方向を決定すると、好適である。表示制御部36は、風景方向検出部36Aを備えてよい。風景方向検出部36Aは、利用者の視野が向く方向における風景の移動方向を検出する。風景の移動方向は、例えば利用者が電車等の乗り物に乗っており、窓から風景を眺めているような場面において、安定的に同じ方向として顕在化する。また、利用者が真っ直ぐ前を見て歩いているような場面では、視野が向く方向の左右端において、風景が左右に流れる方向に現れる。そして、表示制御部36は、風景方向検出部36Aにより検出された風景の移動方向とは異なる方向に(例えば、風景の移動方向と直交する方向に)、提示情報ODを移動させる。
【0029】
風景方向検出部36Aは、例えばカメラ16が時系列で撮像した画像を解析し、例えばオプティカルフロー処理を行うことにより、風景の移動方向を検出する。オプティカルフロー処理については、公知の技術であるため、詳細な説明を省略するが、異常値を除いた平均値を採用する処理が行われてよい。また、風景方向検出部36Aは、例えば制御装置30がGPS(Global Positioning System)機能を備える場合、GPS演算により得られる位置(シースルー型ディスプレイ装置12の位置と同視できる)と、センサ部14の検出値から得られる方位とを比較することで、風景の移動方向を検出してもよい。風景方向検出部36Aは、このような手法により、風景の移動方向を、例えば、
図2に示すXYZ座標系上のベクトルで表現されたデータとして算出する。
【0030】
表示制御部36は、例えば、風景の移動方向と、提示情報ODの移動情報とを対応付けたテーブルまたはマップを記憶部50に保持しており、風景の移動方向が入力されると、テーブルまたはマップを検索して提示情報ODの移動情報を取得し、決定する。
【0031】
図9は、風景方向検出部36Aにより検出された風景の移動方向とは異なる方向に提示情報ODが移動する様子を示す図である。このような場面では、風景を目で追ってしまい、これによって、提示情報ODを認識している或いは認識していないと誤判定する可能性がある。これに対し、本実施形態の電子制御システム1では、風景の移動方向とは異なる方向に提示情報ODを移動させるため、誤判定がなされる可能性を低減することができる。なお、このような処理を行わない場合、カメラ16は省略することができる。
【0032】
[フローチャート]
図10は、本実施形態の電子制御システム1により実行される処理の流れを示すフローチャートの一例である。まず、処理部34は、提示情報ODの表示開始タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS100)。提示情報ODの表示開始タイミングは、ランダムに決定されてもよいし、タイミングを規定したシーケンスデータ等に従って決定されてもよい。
【0033】
提示情報ODの表示開始タイミングが到来すると、処理部34および表示制御部36は、提示情報ODを移動させながらシースルー型ディスプレイ装置12に表示させる(ステップS102)。次に、視野方向検出部38が、移動速度ベクトル→Vdを算出する(ステップS104)。次に、判定部40が、提示速度ベクトル→Viと写像ベクトル→tViとの差分が基準速度V1以下であり、且つ角度θが基準角度θ1以下であるか否か、すなわち、表示面12A内を提示情報ODが移動する方向と、視野方向検出部38により算出された移動速度ベクトル→Vdとが適合しているか否かを判定する(ステップS106)。
【0034】
判定部40は、ステップS106で適合していると判定した場合、OK判定を出力する(ステップS108)。OK判定が出力されると、表示制御部36は、提示情報ODを、例えば
図6、8で例示した方向に戻す(ステップS110)。これに代えて、表示制御部36は、提示情報ODを停止させてもよい。また、表示制御部36は、提示情報ODを戻す(または停止させる)処理を、ステップS106の判定よりも前に行ってもよい。すなわち、表示制御部36は、「適合している」か否かに拘わらず、提示速度ベクトル→Viと移動速度ベクトル→Vdの関係に基づいて提示情報ODを戻したり停止させたりしてよい。そして、処理部34は、「適合している」と判定された状態で所定時間が経過したか否かを判定し(ステップS112)、所定時間が経過した場合、利用者が提示情報ODを認識したと判断し(ステップS114)、前述した処理を行う。そして、表示制御部36は、提示情報ODを表示面12Aから消去する(ステップS116)。なお、OK判定が出力された場合、ステップS116の処理は省略され、提示情報ODが表示面12Aの残存するように制御してもよい。所定時間経過していない場合は、ステップS102に戻る。
【0035】
一方、ステップS106において適合していないと判定した場合、判定部40は、NG判定を出力する(ステップS118)。NG判定が出力されると、表示制御部36は、提示情報ODが表示面12Aの端まで移動したか否かを判定する(ステップS120)。提示情報ODが表示面12Aの端まで移動していない場合はステップS102に戻り、提示情報ODが表示面12Aの端まで移動した場合は提示情報が消去される(ステップS116)。
【0036】
ここで、以上の説明では、判定部40は、適合しているか否かのみ判定し、処理部34が、利用者が提示情報を認識したか否かを判定するものとして説明したが、判定部40が、利用者が提示情報を認識したか否かを判定してもよい。
図11は、この場合の処理の流れを説明するための図であり、本実施形態の電子制御システム1により実行される処理の流れを示すフローチャートの他の例である。
【0037】
まず、処理部34は、提示情報ODの表示開始タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS200)。提示情報ODの表示開始タイミングが到来すると、処理部34および表示制御部36は、提示情報ODを移動させながらシースルー型ディスプレイ装置12に表示させる(ステップS202)。次に、視野方向検出部38が、移動速度ベクトル→Vdを算出する(ステップS204)。次に、判定部40が、提示速度ベクトル→Viと写像ベクトル→tViとの差分が基準速度V1以下であり、且つ角度θが基準角度θ1以下であるか否か、すなわち、表示面12A内を提示情報ODが移動する方向と、視野方向検出部38により算出された移動速度ベクトル→Vdとが適合しているか否かを判定する(ステップS206)。
【0038】
判定部40により「適合している」と判定された場合、表示制御部36は、提示情報ODを、例えば
図6、8で例示した方向に戻す(ステップS208)。これに代えて、表示制御部36は、提示情報ODを停止させてもよい。また、表示制御部36は、提示情報ODを戻す(または停止させる)処理を、ステップS206の判定よりも前に行ってもよい。すなわち、表示制御部36は、「適合している」か否かに拘わらず、提示速度ベクトル→Viと移動速度ベクトル→Vdの関係に基づいて提示情報ODを戻したり停止させたりしてよい。そして、判定部40は、「適合している」と判定した状態で所定時間が経過したか否かを判定し(ステップS210)、所定時間が経過した場合、OK判定を出力する(ステップS212)。OK判定が出力されると、処理部34は、利用者が提示情報ODを認識したと判断し(ステップS214)、前述した処理を行う。そして、表示制御部36は、提示情報ODを表示面12Aから消去する(ステップS216)。なお、なお、OK判定が出力された場合、ステップS216の処理は省略され、提示情報ODが表示面12Aの残存するように制御してもよい。所定時間経過していない場合は、ステップS202に戻る。
【0039】
一方、ステップS206において適合していないと判定した場合、判定部40は、提示情報ODが表示面12Aの端まで移動したか否かを判定する(ステップS218)。提示情報ODが表示面12Aの端まで移動していない場合はステップS202に戻り、提示情報ODが表示面12Aの端まで移動した場合は、判定部40がNG判定を出力する(ステップS220)。その後、提示情報ODが表示面12Aから消去される(ステップS216)。
【0040】
[まとめ]
以上説明した本実施形態の電子制御システム1並びに制御装置30によれば、提示速度ベクトル→Viと移動速度ベクトル→Vdが方向、大きさ共に近い状態が継続した場合に、利用者が提示情報ODを十分に認識したと判断するため、システムが提供する情報を利用者が認識したかどうかを、利用者の自然な動作を利用して確認することができる。また、明確に方向を指示した上で利用者の動作を認識するため、システムとは無関係な利用者の頭部の動作による誤判定がなされる可能性を低減することができる。
【0041】
また、本実施形態の電子制御システム1並びに制御装置30によれば、判定部40によりOK判定がなされた場合、それまでの移動方向とは逆方向に、或いは移動速度ベクトル→Vdと提示速度ベクトル→Viから算出される方向に戻して表示するため、利用者は、自分が提示情報ODを認識したことがシステムに伝わったという感触を得ることができ、使用感を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態の電子制御システム1並びに制御装置30によれば、風景の移動方向とは異なる方向に提示情報ODを移動させるため、誤判定がなされる可能性を低減することができる。
【0043】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態に係る電子制御システム2について説明する。第1実施形態の電子制御システム1は、英単語等の学習システムを例にとって説明したが、第2実施形態の電子制御システム2は、利用者による種々の入力を受け付けるときに、利用者の視野の方向によって入力を判別する。なお、全体構成、および機能構成については第1実施形態における
図1、3を援用し、再度の説明を省略する。
【0044】
図12は、第2実施形態の電子制御システム2がシースルー型ディスプレイ装置12に表示させる画面の一例を示す図である。第2実施形態の電子制御システム2は、例えば、何らかの二択の入力を受け付けるときに、「YES」と表示された提示情報OD1を提示速度ベクトル→Vi1で移動させながら表示し、「NO」と表示された提示情報OD2を提示速度ベクトル→Vi2で移動させながら表示する。そして、利用者がいずれかの提示情報を目で追うことにより移動速度ベクトル→Vdが検知されると、移動速度ベクトル→Vdに適合する方の提示情報が選択されたものと判断する。
図12の例では、利用者が提示速度ベクトル→Vi1の方向(右方向)に頭部を傾けた結果、右方向の移動速度ベクトル→Vdが検出された場合、「YES」が選択されたものと判断し、利用者が提示速度ベクトル→Vi2の方向(左方向)に頭部を傾けた結果、左方向の移動速度ベクトル→Vdが検出された場合、「NO」が選択されたものと判断する。
【0045】
図13は、第2施形態の電子制御システム2がシースルー型ディスプレイ装置12に表示させる画面の他の例を示す図である。第2実施形態の電子制御システム2は、例えば、利用者宛ての電子メールを受信したときに、電子メールの到着を知らせる提示情報OD3を提示速度ベクトル→Vi3で移動させながら表示する。そして、利用者が提示情報OD3を目で追うことにより、提示速度ベクトル→Vi3に適合する移動速度ベクトル→Vdが検知されると、利用者が提示情報OD3を認識したものと判断し、電子メールの本文を表示する等の処理を行う。
【0046】
以上説明した第2実施形態の電子制御システム2並びに制御装置30によれば、第1実施形態と同様、システムが提供する情報を利用者が認識したかどうかを、利用者の自然な動作を利用して確認することができる。また、明確に方向を指示した上で利用者の動作を認識するため、システムとは無関係な利用者の頭部の動作による誤判定がなされる可能性を低減することができる。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0048】
例えば、電子制御システムは、ヘッドマウントディスプレイ10と制御装置30との組み合わせではなく、表示部を有する携帯型端末によって全体が実現されてもよい。この場合も、利用者は提示情報ODを目で追う場合に、無意識に携帯側端末を提示速度ベクトル→Viの方向に移動させると考えられるからである。この場合の制御手法については、上記各実施形態の手法を援用することができる。
【0049】
また、上記各実施形態では、提示情報の移動する方向および速度と、ヘッドマウントディスプレイ10の移動する方向および速度とが適合するか否かによって、利用者が提示情報を認識したか否かを判定するものとしたが、速度を考慮せず、方向のみに着目して判定を行ってもよい。
【0050】
また、上記各実施形態では、表示部の挙動に基づいて利用者の視野の方向を検出するものとしたが、利用者の視線を検出するセンサを備え、そのセンサの出力に基づいて利用者の視野の方向を検出してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 電子制御システム
10 ヘッドマウントディスプレイ
12 シースルー型ディスプレイ装置
12A 表示面
14 センサ部
16 カメラ
30 制御装置
32 入力部
34 処理部
36 表示制御部
38 視野方向検出部
40 判定部
50 記憶部
52 プログラム
54 コンテンツデータ