特許第6134249号(P6134249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6134249画像取得装置及び画像取得装置の画像取得方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134249
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】画像取得装置及び画像取得装置の画像取得方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20170515BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20170515BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G02B21/36
   G02B21/06
   G03B15/00 T
   G03B15/00 H
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-228606(P2013-228606)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-87723(P2015-87723A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 富美雄
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−222801(JP,A)
【文献】 特表2000−501844(JP,A)
【文献】 特開2003−270545(JP,A)
【文献】 特開2012−108184(JP,A)
【文献】 特開2003−043363(JP,A)
【文献】 特開2012−138068(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/098443(WO,A1)
【文献】 特表2015−536482(JP,A)
【文献】 特表2008−507719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00
G02B 21/06 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が載置されるステージと、
瞬間光を照射する光出射手段と、
前記ステージ上の前記試料と対峙するように配置された対物レンズを含む導光光学系と、
前記試料に対する前記対物レンズの焦点位置を前記対物レンズの光軸方向に移動させる駆動部と、
前記導光光学系によって導光された前記試料の光像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子から出力された画像データを処理する画像処理部と、
前記光出射手段を制御する制御部と、
前記ステージを一定の速度で駆動するステージ駆動部と、を備え、
前記撮像素子は、複数の画素列を有すると共にローリング読み出しが可能な二次元撮像素子であり、
前記制御部は、前記ステージ駆動部による前記ステージの移動中、前記ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始から最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始までの期間中に前記光出射手段から前記瞬間光を照射させ、
前記画像処理部は、前記撮像素子から画像データを順次取得すると共に、取得した前記画像データを合成して合成画像データを形成することを特徴とする画像取得装置。
【請求項2】
記制御部は、前記撮像素子から出力されたトリガ信号に基づいて、前記瞬間光の照射を開始させることを特徴とする請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記トリガ信号は、前記ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始を示す信号であることを特徴とする請求項2に記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記瞬間光の照射終了から前記ローリング読み出しにおいて最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始までに所定の期間が存在するように前記光出射手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始から前記瞬間光の照射開始までに所定の期間が存在するように前記光出射手段を制御することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記ローリング読み出しにおいて最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始から最後に読み出しを開始する画素列の露光開始までの期間中に前記対物レンズの焦点位置を合焦点位置に移動させることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の画像取得装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記対物レンズの焦点位置の移動終了から前記ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始までに所定の期間が存在するように前記対物レンズの焦点位置を移動させることを特徴とする請求項に記載の画像取得装置。
【請求項8】
試料が載置されるステージと、
瞬間光を照射する光出射手段と、
前記ステージ上の前記試料と対峙するように配置された対物レンズを含む導光光学系と、
前記試料に対する前記対物レンズの焦点位置を前記対物レンズの光軸方向に移動させる駆動部と、
前記導光光学系によって導光された前記試料の光像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子から出力された画像データを処理する画像処理部と、
前記光出射手段を制御する制御部と、
前記ステージを一定の速度で駆動するステージ駆動部と、を備えた画像取得装置の画像取得方法であって、
前記撮像素子として、複数の画素列を有すると共にローリング読み出しが可能な二次元撮像素子を用い、
前記制御部により、前記ステージ駆動部による前記ステージの移動中、前記ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始から最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始までの期間中に前記光出射手段から前記瞬間光を照射させ、
前記画像処理部により、前記撮像素子から画像データを順次取得すると共に、取得した前記画像データを合成して合成画像データを形成することを特徴とする画像取得装置の画像取得方法。
【請求項9】
前記制御部により、前記撮像素子から出力されたトリガ信号に基づいて、前記瞬間光の照射を開始させることを特徴とする請求項8に記載の画像取得装置の画像取得方法。
【請求項10】
前記トリガ信号は、前記ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始を示す信号であることを特徴とする請求項9に記載の画像取得装置の画像取得方法。
【請求項11】
前記制御部により、前記瞬間光の照射終了から前記ローリング読み出しにおいて最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始までに所定の期間が存在するように前記光出射手段を制御することを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の画像取得装置の画像取得方法。
【請求項12】
前記制御部により、前記ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始から前記瞬間光の照射開始までに所定の期間が存在するように前記光出射手段を制御することを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の画像取得装置の画像取得方法。
【請求項13】
前記駆動部により、前記ローリング読み出しにおいて最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始から最後に読み出しを開始する画素列の露光開始までの期間中に前記対物レンズの焦点位置を合焦点位置に移動させることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の画像取得装置の画像取得方法。
【請求項14】
前記駆動部により、前記対物レンズの焦点位置の移動終了から前記ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始までに所定の期間が存在するように前記対物レンズの焦点位置を移動させることを特徴とする請求項13に記載の画像取得装置の画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像取得装置及び画像取得装置の画像取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織細胞などの試料の静止画像を取得するための画像取得装置において、試料が撮像素子の撮像視野に対して大きい場合、例えば試料を対物レンズに対して移動させながら試料の部分画像を順次取得していき、その後に部分画像を合成することで試料全体の画像を取得している(例えば特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−222801号公報
【特許文献2】特表2000−501844号公報
【特許文献3】特開昭63−191063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような画像取得装置の撮像方法としては、撮像素子における全ての画素で同時に露光・読み出しを行うグローバル読み出しを用いる方法と、撮像素子における画素列ごとに順次読み出しを行うローリング読み出しを用いる方法とがある。これらの方法のうちS/N比の向上の点で有利なローリング読み出しを用いる方法が検討されているが、この方法では、各画素列で試料の光像を受光するタイミングが異なっているため、移動している試料を撮像すると、得られる静止画像に歪みが生じてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、移動している試料について歪みが抑制された静止画像を十分なS/N比で取得できる画像取得装置及び画像取得装置の画像取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る画像取得装置は、試料が載置されるステージと、瞬間光を照射する光出射手段と、ステージ上の試料と対峙するように配置された対物レンズを含む導光光学系と、試料に対する対物レンズの焦点位置を対物レンズの光軸方向に移動させる駆動部と、導光光学系によって導光された試料の光像を撮像する撮像素子と、撮像素子から出力された画像データを処理する画像処理部と、光出射手段を制御する制御部と、を備え、撮像素子は、複数の画素列を有すると共にローリング読み出しが可能な二次元撮像素子であり、制御部は、ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始から最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始までの期間中に光源から瞬間光を照射させ、画像処理部は、撮像素子から画像データを順次取得すると共に、取得した画像データを合成して合成画像データを形成することを特徴としている。
【0007】
この画像取得装置では、瞬間光が照射された試料の光像をローリング読み出しが可能な二次元撮像素子を用いて撮像している。そのため、撮像素子におけるノイズを低減でき、微弱な光像であっても十分なS/N比で撮像することが可能となる。また、この画像取得装置は、ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始から最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始までに光出射手段から瞬間光を照射させる制御部を備えている。つまり、この画像取得装置では、制御部が、ローリング読み出しが可能な撮像素子の全ての画素列が露光している期間中に光出射手段から瞬間光を試料に照射させている。したがって、各画素列で試料の光像を受光するタイミングが同時となるため、歪みが抑制された静止画像を取得することが可能となる。
【0008】
撮像素子は、ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始を示すトリガ信号を制御部に出力し、制御部は、撮像素子から出力されたトリガ信号に基づいて、瞬間光の照射を開始させることが好ましい。この場合、より確実に全ての画素列が露光している期間中に瞬間光を試料に照射させることができる。
【0009】
制御部は、瞬間光の照射終了からローリング読み出しにおいて最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始までに所定の期間が存在するように光照射手段を制御することが好ましい。これにより、瞬間光の照射終了後に遅延して撮像素子に到達する遅延光が存在する場合でも、所定の期間中に遅延光が受光されるため、全ての画素列において同一の条件で試料の光像を受光できる。
【0010】
制御部は、ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始から瞬間光の照射開始までに所定の期間が存在するように光出射手段を制御することが好ましい。この場合、より確実に全ての画素列が露光している期間中に瞬間光を試料に照射させることができる。
【0011】
駆動部は、ローリング読み出しにおいて最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始から最後に読み出しを開始する画素列の露光開始までの期間中に対物レンズの焦点位置を合焦点位置に移動させることが好ましい。この場合、各画素列が試料の光像を取り込まない期間を利用して対物レンズの焦点合わせを実施できるため、静止画像取得の迅速化が可能となる。
【0012】
駆動部は、対物レンズの焦点位置の移動終了からローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始までに所定の期間が存在するように対物レンズの焦点位置を移動させることが好ましい。この場合、画像データ取得に際して、対物レンズやステージの駆動による振動の影響を低減できる。
【0013】
本発明に係る画像取得装置の取得方法は、試料が載置されるステージと、瞬間光を照射する光出射手段と、ステージ上の試料と対峙するように配置された対物レンズを含む導光光学系と、試料に対する対物レンズの焦点位置を対物レンズの光軸方向に移動させる駆動部と、導光光学系によって導光された試料の光像を撮像する撮像素子と、撮像素子から出力された画像データを処理する画像処理部と、光出射手段を制御する制御部と、を備えた画像取得装置の画像取得方法であって、撮像素子として、複数の画素列を有すると共にローリング読み出しが可能な二次元撮像素子を用い、制御部により、ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始から最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始までの期間中に光出射手段から瞬間光を照射させ、画像処理部により、撮像素子から画像データを順次取得すると共に、取得した画像データを合成して合成画像データを形成することを特徴としている。
【0014】
この画像取得装置の画像取得方法では、瞬間光が照射された試料の光像をローリング読み出しが可能な二次元撮像素子を用いて撮像している。そのため、撮像素子におけるノイズを低減でき、微弱な光像であっても十分なS/N比で撮像することが可能となる。また、この画像取得装置の画像取得方法では、制御部により、ローリング読み出しにおいて最後に読み出しを開始する画素列の露光開始から最初に読み出しを開始する画素列の読み出し開始までに光出射手段から瞬間光を照射させている。つまり、この画像取得装置の画像取得方法では、制御部により、ローリング読み出しが可能な撮像素子の全ての画素列が露光している期間中に光出射手段から瞬間光を試料に照射させている。したがって、各画素列で試料の光像を受光するタイミングが同時となるため、歪みが抑制された静止画像を取得することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動している試料について歪みが抑制された静止画像を十分なS/N比で取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る画像取得装置の一実施形態を示す図である。
図2】撮像素子の一例を示す図であり、(a)は撮像素子の受光面、(b)は撮像素子におけるローリング読み出しと瞬間光の照射などとの関係を示す。
図3】試料に対する画像取得領域のスキャンの一例を示す図である。
図4】撮像素子における画素列の構成の一例を示す図である。
図5】変形例に係る撮像素子を示す図であり、(a)は撮像素子の受光面、(b)は撮像素子におけるローリング読み出しと瞬間光の照射との関係を示す。
図6】別の変形例に係る撮像素子を示す図であり、(a)は撮像素子の受光面、(b)は撮像素子におけるローリング読み出しと瞬間光の照射との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る画像取得装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る画像取得装置の一実施形態を示す図である。同図に示すように、画像取得装置1は、試料Sが載置されるステージ2と、試料に向けて瞬間光を照射する光源3(光出射手段)と、ステージ2上の試料Sと対峙するように配置された対物レンズ25を含む導光光学系5と、導光光学系5によって導光された試料Sの光像を撮像する撮像素子6とを備えている。
【0019】
また、画像取得装置1は、試料Sに対する対物レンズ25の視野位置を移動させるステージ駆動部11と、試料Sに対する対物レンズ25の焦点位置を変更させる対物レンズ駆動部12(駆動部)と、光源3を制御する光源制御部13(制御部)と、画像処理部14とを備えている。
【0020】
画像取得装置1で観察する試料Sは、例えば組織細胞などの生体サンプルであり、スライドガラスに密封された状態でステージ2に載置される。光源3は、ステージ2の底面側に配置されている。光源3としては、例えばレーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、キセノンフラッシュランプといったフラッシュランプ方式光源などが用いられる。
【0021】
導光光学系5は、光源3とステージ2との間に配置される照明光学系21と、ステージ2と撮像素子6との間に配置される顕微鏡光学系22とによって構成されている。照明光学系21は、例えば集光レンズ23と投影レンズ24とによって構成されるケーラー照明光学系を有し、光源3からの光を導光して試料Sに均一な光を照射するようになっている。
【0022】
一方、顕微鏡光学系22は、対物レンズ25と、対物レンズ25の後段側(撮像素子6側)に配置された結像レンズ26とを有し、試料Sの光像を撮像素子6に導光する。なお、試料Sの光像とは、明視野照明の場合は透過光、暗視野照明の場合は散乱光、発光計測の場合は発光(蛍光)による像である。また、試料Sからの反射光による像であってもよい。これらの場合、導光光学系5として、試料Sの透過光画像、散乱光画像、及び発光(蛍光)画像の画像取得に対応した光学系を採用することができる。
【0023】
撮像素子6は、複数の画素列を有すると共にローリング読み出しが可能な二次元撮像素子である。このような撮像素子6としては、例えばCMOSイメージセンサが挙げられる。撮像素子6の受光面6aには、図2(a)に示すように、読み出し方向に垂直な方向に複数の画素が配列されてなる画素列31(第1の画素列31、第2の画素列31、第3の画素列31、…第Nの画素列31)が読み出し方向に複数配列されている。撮像素子6では、例えば図2(b)に示すように、画素列ごとに順次露光・読み出しを行っていくため、各画素列における露光期間及び読み出し期間が互いに異なっている。
【0024】
ステージ駆動部11は、例えばステッピングモータ(パルスモータ)といったモータやピエゾアクチュエータといったアクチュエータによって構成されている。ステージ駆動部11は、ステージ2を対物レンズ25の光軸の直交面に対して所定の角度(例えば90度)を有する面についてXY方向に駆動する。これにより、ステージ2に固定された試料Sが対物レンズの光軸に対して移動し、試料Sに対する対物レンズ25の視野位置が移動することとなる。
【0025】
画像取得装置1では、例えば20倍や40倍といった高倍率で試料Sの撮像が行われる。このため、対物レンズ25の視野Vは、試料Sに対して小さく、図3に示すように、一回の撮像で画像を取得できる領域も試料Sに対して小さくなる。したがって、試料Sの全体を撮像するためには、対物レンズ25の視野Vを試料Sに対して移動させる必要がある。
【0026】
そこで、画像取得装置1では、試料Sを保持する試料容器(例えばスライドガラス)に対して試料Sを含むように画像取得領域32を設定し、画像取得領域32及び対物レンズ25の試料S上の視野Vに基づいて複数の分割領域33の位置を設定する。そして、分割領域33に対応する試料Sの一部を撮像することで、分割領域33に対応する部分画像データを取得した後、対物レンズ25の視野Vが次に撮像する分割領域33の位置となったら、再び撮像を行って部分画像データを取得する。このとき、ステージ駆動部11は、ステージ2を一定の速度で駆動し続けている。以降、画像取得装置1では、この動作が繰り返し実行され、画像処理部14は、取得した部分画像データを合成して試料Sの全体の画像(合成画像データ)を形成する。
【0027】
対物レンズ駆動部12は、ステージ駆動部11と同様に、例えばステッピングモータ(パルスモータ)といったモータやピエゾアクチュエータといったアクチュエータによって構成されている。対物レンズ駆動部12は、対物レンズ25を対物レンズ25の光軸に沿ったZ方向に駆動する。これにより、試料Sに対する対物レンズ25の焦点位置が移動する。
【0028】
光源制御部13は、図2(b)に示すように光源3から瞬間光を照射させる。すなわち、まず、撮像素子6は、第1の画素列31、第2の画素列31、第3の画素列31…第Nの画素列31というように順次露光・読み出しを行っていく。そして、撮像素子6は、第Nの画素列31の露光開始Tの後にトリガ信号を光源制御部13へ出力する。
【0029】
光源制御部13は、撮像素子6から出力されたトリガ信号に基づいて、光源3から瞬間光の照射を開始させる。このとき、最後に露光を開始する第Nの画素列31の露光開始Tから瞬間光の照射開始Fまでに所定の期間(F−T)が存在している。続いて、光源制御部13は、光源3からの瞬間光の照射を終了させる。このとき、瞬間光の照射終了Fから最初に露光を開始する第1の画素列31の読み出し開始Tまでに所定の期間(T−F)が存在している。
【0030】
また、対物レンズ駆動部12は、最初に読み出しを開始する第1の画素列31の読み出し開始T後に、次に撮像する分割領域33における対物レンズ25の合焦点位置への駆動を開始させる。続いて、対物レンズ駆動部12は、対物レンズ25の駆動を終了させる。このとき、対物レンズ25の駆動終了から最後に露光を開始する第Nの画素列31の露光開始までに所定の期間が存在している。ここで、合焦点位置は、例えば試料Sの撮像に先立って分割領域33ごとに取得された合焦点位置やフォーカスマップを用いることができる。
【0031】
以降、画像取得装置1では、この動作が繰り返し実行される。この動作を繰り返し実行するに際して、ステージ駆動部11は、例えば光源3からの各瞬間光の照射によって各分割領域33における試料Sの部分画像データが取得できるような速度でステージ2を駆動する。
【0032】
以上説明したように、撮像素子6はローリング読み出しを行うため、例えばグローバル読み出しに比べてノイズを低減でき、試料Sの光像が微弱である場合でも十分なS/N比で画像を取得することが可能となる。また、撮像素子6の撮像に必要な全ての画素列が露光している期間中に光源3から瞬間光を試料Sに照射させるため、各画素列で試料Sの光像を受光するタイミングが同時となり、歪みが抑制された静止画像を取得することが可能となる。
【0033】
このとき、光源制御部13は撮像素子6からのトリガ信号に基づいて光源3からの瞬間光の照射を開始させ、また、最後に露光を開始する第Nの画素列31の露光開始Tから光源3からの瞬間光の照射開始Fまでに所定の期間(F−T)が存在するため、より確実に撮像素子6の全ての画素列が露光している期間中に瞬間光を試料Sに照射させることができる。
【0034】
また、瞬間光の照射終了Fから最初に読み出しを開始する第1の画素列31の読み出し開始Tまでに所定の期間(T−F)が存在するため、瞬間光の照射終了後に遅延して撮像素子6に到達する遅延光が存在する場合(例えば試料Sの蛍光を取得する場合)でも、第1の画素列31においても所定の期間(T−F)中に遅延光が受光されるため、撮像素子6の全ての画素列において同一の条件で試料Sの光像を受光できる。
【0035】
また、対物レンズ駆動部12は、各画素列が試料Sの光像を取り込まない期間を利用して対物レンズ25の焦点合わせを実施するため、静止画像取得の迅速化が可能となる。さらに、対物レンズ25の駆動終了から最後に露光を開始する第Nの画素列の露光開始までに所定の期間が存在するため、画像データ取得に際して、対物レンズ25の駆動による振動の影響を低減できる。
【0036】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、光源制御部13は撮像素子6から出力されるトリガ信号に基づいて光源3から瞬間光の照射を開始させていたが、光源制御部13は、撮像素子6とは独立に最後に露光を開始する第Nの画素列31の露光開始から最初に読み出しを開始する第1の画素列31の読み出し開始までの期間中に光源3から瞬間光の照射を開始させてもよい。この場合でも、歪みが抑制された静止画像を取得することが可能となる。
【0037】
また、上記実施形態では、撮像素子6は最後に露光を開始する第Nの画素列31の露光開始Tの後にトリガ信号を光源制御部13に出力していたが、最後に露光を開始する第Nの画素列31の露光開始Tと同時にトリガ信号を光源制御部13に出力してもよい。この場合、光源制御部13は、撮像素子6から出力されたトリガ信号に基づいて、最後に露光を開始する第Nの画素列31の露光開始Tと略同時に光源3から瞬間光の照射を開始させてもよい。この場合でも、撮像素子6の全ての画素列が露光している期間中に瞬間光を試料Sに照射させることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、光源制御部13は瞬間光の照射終了Fから最初に読み出しを開始する第1の画素列31の読み出し開始Tまでに所定の期間(T−F)が存在するように光源3を制御していたが、光源制御部13は、最初に読み出しを開始する第1の画素列31の読み出し開始Tと同時に瞬間光の照射を終了させてもよい。この場合でも、撮像素子6の全ての画素列が露光している期間中に瞬間光を試料Sに照射させることができる。
【0039】
また、上記実施形態では、対物レンズ駆動部12は最初に読み出しを開始する第1の画素列31の読み出し開始から最後に読み出しを開始する第Nの画素列31の露光開始までの期間中に対物レンズ25を合焦点位置に駆動していたが、対物レンズ駆動部12は、上記以外の期間に対物レンズ25を合焦点位置に駆動してもよい。
【0040】
また、対物レンズ駆動部12は対物レンズ25の駆動終了から最後に読み出しを開始する第Nの画素列31の露光開始までに所定の期間が存在するように対物レンズ25の駆動を終了していたが、最後に読み出しを開始する第Nの画素列31の露光開始と同時に対物レンズ25の駆動を終了してもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、光源3から瞬間光を出射させていたが、光源3から連続光(CW光)を出射させ、光源3と試料Sとの間にシャッターを設けてもよい。この場合、光出射手段は光源3とシャッターとによって構成され、光源制御部13がシャッターの開閉を制御することにより、撮像素子6の全ての画素列が露光している期間中に瞬間光を試料Sに照射させることが可能となる。
【0042】
また、上記実施形態では、対物レンズ駆動部12が対物レンズ25をその光軸方向に移動させることにより、試料Sに対する対物レンズ25の焦点位置を対物レンズ25の光軸方向に移動させていたが、ステージ駆動部11(駆動部)がステージ2を対物レンズ25の光軸方向に移動させることにより、試料Sに対する対物レンズ25の焦点位置を対物レンズ25の光軸方向に移動させてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、撮像素子6の受光面6aを構成する画素列31は第1の画素列31、第2の画素列31、第3の画素列31、…第Nの画素列31というように一群の画素列として構成されていたが、撮像素子6の受光面6aを構成する複数の画素列31は、図4に示すように、複数の画素列によって構成される第1の画素列群31aと第2の画素列群31bとに分け、第1の画素列群31aと第2の画素列群31bとをそれぞれ読み出す構成にしてもよい。
【0044】
この場合、第1の画素列群31aの読み出し方向と第2の画素列群31bの読み出し方向とを逆方向となるように設定してもよい。具体的には、第1の画素列群31a及び第2の画素列群31bにおいて中央の画素列から端の画素列へ順次読み出されてもよく、或いは、第1の画素列群31a及び第2の画素列群31bにおいて端の画素列から中央の画素列へ順次読み出されてもよい。
【0045】
このときの受光面6aの構成と露光・読み出し期間との関係を図5,6に示す。図5に示されるように、第1の画素列群31a及び第2の画素列群31bにおいて中央の画素列から端の画素列へ順次読み出された場合、光源制御部13は、受光面6aの端に位置している最後に露光を開始する第1−m,2−mの画素列の露光開始から受光面6aの中央に位置している最初に読み出しを開始する第1−1,2−1の画素列の読み出し開始までの期間中に光源3から瞬間光を照射させる。一方、図6に示すように、第1の画素列群31a及び第2の画素列群31bにおいて端の画素列から中央の画素列へ順次読み出された場合、光源制御部13は、受光面6aの中央に位置している最後に露光を開始する第1−n,2−nの画素列の露光開始から受光面6aの端に位置している最初に読み出しを開始する第1−1,2−1の画素列の読み出し開始までの期間中に光源3から瞬間光を照射させる。この場合でも同様に、撮像素子6の全ての画素列が露光している期間中に瞬間光を試料Sに照射させることができるため、歪みが抑制された静止画像を取得することが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1…画像取得装置、2…ステージ、3…光源(光出射手段)、5…導光光学系、6…撮像素子、11…ステージ駆動部(駆動部)、12…対物レンズ駆動部(駆動部)、13…光源制御部(制御部)、14…画像処理部、25…対物レンズ、31…画素列、32…画像取得領域、33…分割領域、S…試料、V…対物レンズの視野。
図1
図2
図3
図4
図5
図6