前記制御装置は、前記車両状態検出装置の検出結果に基づいて予め定められた流量切換条件を充足しているかを判定し、前記流量切換条件に応じた流量切換指令を出力するようになっており、
前記流量調整機構は、入力される前記流量切換指令に応じて前記ステアリングアクチュエータに流れる作動油の流量の減少量を変えるようになっている、請求項1に記載の油圧駆動システム。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る第1乃至第3実施形態の油圧駆動システム1,1A,1B及びそれを備えるホイルローダ2について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、ホイルローダ2を運転する運転者から見た方向である。これらの方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する油圧駆動システム1,1A,1B及びホイルローダ2は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0028】
[ホイルローダ]
建設現場などでは、様々な作業を行うべく様々な作業車両が実用に供されており、この作業車両の1つとしてホイルローダ2が知られている。ホイルローダ2は、前端部に作業機であるバケット11を有しており、このバケット11を用いて土砂及び岩石等をすくい上げて運搬できるようになっている。なお、作業機の一例としてバケット11を挙げているが、作業機は、バケットに限定されず、フォーク及び除雪アタッチメント等のアタッチメントであってもよい。
【0029】
このように構成されているホイルローダ2は、その車両本体12にエンジンE(
図2参照)及び4つの車輪13を備えており、エンジンEにより車輪13を回転駆動して走行するようになっている。この車両本体12は、後側に配置されるリアシャーシ14と前側に配置されているフロントシャーシ15とに分かれており、これらの2つのシャーシ14,15がセンターピン16を軸中心に左右方向に回動可能に連結されている。また、2つのシャーシ14,15との間には、後述する2つのステアリングシリンダ18L,18R(
図2参照)が架設されている。ステアリングアクチュエータである2つのステアリングシリンダ18L,18Rは、センターピン16を挟んで左右に夫々配置されており、2つのステアリングシリンダ18L,18Rに作動油を供給して一方を収縮させ、他方を伸張させることで、リアシャーシ14に対してフロントシャーシ15を旋回させてホイルローダ2の進行方向を変えることができるようになっている。
【0030】
リアシャーシ14の後側部分には、エンジンEが搭載されており、その前側に運転席20が設けられている。他方、フロントシャーシ15には、バケット11を昇降するための2本のブーム21が左右方向に間隔をあけ、且つ上下方向に回動可能に設けられている。また、2本のブーム21には、ブーム用シリンダ22が夫々設けられており、ブーム用シリンダ22に作動油を供給することでブーム21が昇降するようになっている。また、フロントシャーシ15には、バケット11を上下方向にチルト(傾動)するためのチルトシリンダ23が設けられており、チルトシリンダ23に作動油を供給することでバケット11がチルトするようになっている。
【0031】
このように構成されているホイルローダ2は、ステアリングシリンダ18L,18R、ブーム用シリンダ22及びチルトシリンダ23に作動油を供給することで、車両本体12の進行方向を変え、またバケット11を昇降させたりチルトさせたりすることができるようになっている。そして、シリンダ18L,18R,22,23に作動油を供給してそれらを駆動すべく、ホイルローダ2の車両本体12には、油圧駆動システム1が備わっている。
【0032】
[油圧駆動システム]
図2に示すように、油圧駆動システム1は、油圧ポンプ30と、ステアリング駆動回路31と、作業機駆動回路32とを備える。油圧ポンプ30は、いわゆる可変容量形の油圧ポンプであり、エンジンEに連結されている。油圧ポンプ30は、エンジンEにより駆動されて回転するようになっており、回転することで高圧の作動油を吐出するようになっている。油圧ポンプ30には、ステアリング駆動回路31及び作業機駆動回路32が並列に接続されており、油圧ポンプ30からの作動油がステアリング駆動回路31及び作業機駆動回路32に並行して流れるようになっている。
【0033】
<ステアリング制御回路>
ステアリング駆動回路31は、油圧ポンプ30に繋がるメータイン通路33を有しており、メータイン通路33には、油圧ポンプ30から吐出された作動油が流れるようになっている。メータイン通路33には、ステアリング用制御弁34が設けられており、油圧ポンプ30から吐出された作動油がステアリング用制御弁34に導かれるようになっている。
【0034】
ステアリング用制御弁34は、ステアリングシリンダ18L,18Rに接続されており、メータイン通路33に導かれた作動油がステアリング用制御弁34を介してステアリングシリンダ18L,18Rに流れるようになっている。このステアリング用制御弁34は、メインスプール34aを有しており、メインスプール34aは、移動して位置を変えることによってステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の方向を切換えるようになっている。また、ステアリング用制御弁34では、メインスプール34aの位置に応じてメインスプール34aの開度が調整されるようになっており、この開度に応じた流量の作動油がステアリングシリンダ18L,18Rに流れようになっている。
【0035】
このように構成されているステアリング用制御弁34では、メインスプール34aがステアリング装置35と繋がっている。ステアリング装置35は、回動操作できるステアリングハンドル(図示せず、以下「ハンドル」という)を有しており、ハンドルの回動方向に応じて第1のパイロット油及び第2のパイロット油を出力するようになっている。メインスプール34aは、出力された第1のパイロット油及び第2のパイロット油のパイロット圧p
1,p
2を互いに抗する方向に受圧するようになっており、第1のパイロット圧p
1を受圧することで中立位置M1から第1オフセット位置S11に移動し、第2のパイロット圧p
2を受圧すること中立位置M1から第2オフセット位置S12に移動するようになっている。
【0036】
メインスプール34aが第1オフセット位置S11に移動すると、メータイン通路33が右側のステアリングシリンダ18Rの基端側室18a、及び左側のステアリングシリンダ18Lの先端側室18bに繋がり、タンク36が右側のステアリングシリンダ18Rの先端側室18c、及び左側のステアリングシリンダ18Lの基端側室18dに繋がる。これにより、右側のステアリングシリンダ18Rが伸長して左側のステアリングシリンダ18Lが収縮し、リアシャーシ14に対してフロントシャーシ15が左側に向いて進行方向が切換わる。
【0037】
他方、メインスプール34aが第2オフセット位置S12に移動すると、メータイン通路33が右側のステアリングシリンダ18Rの先端側室18c、及び左側のステアリングシリンダ18Lの基端側室18dに繋がり、タンク36が右側のステアリングシリンダ18Rの基端側室18a、及び左側のステアリングシリンダ18Lの先端側室18bに繋がる。これにより、左側のステアリングシリンダ18Lが伸長して右側のステアリングシリンダ18Rが収縮し、リアシャーシ14に対してフロントシャーシ15を右側に向いて進行方向が切換わる。
【0038】
また、ステアリング装置35は、ハンドルの回動速度に応じた流量の第1のパイロット油及び第2のパイロット油を出力するようになっており、第1のパイロット油及び第2のパイロット油の流量に応じて第1のパイロット圧p
1及び第2のパイロット圧p
2が大きくなるようになっている。第1のパイロット圧p
1及び第2のパイロット圧p
2が大きくなることで、メインスプール34aの開度は大きくなり、ステアリング用制御弁34を介してステアリングシリンダ18L,18Rに夫々流れる作動油の流量が大きくなる。これにより、ハンドルの回動速度に応じた速度でステアリングシリンダ18L,18Rが伸縮して進行方向が切換わる。また、ステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量を調整すべく、ステアリング駆動回路31はメータインコンペンセータ(以下、単に「メータインコンペン」ともいう)37を有している。
【0039】
メータインコンペン37は、メータイン通路33においてステアリング用制御弁34より上流側に介在しており、ステアリング用制御弁34の入口圧p
3とステアリング用制御弁34の出口圧p
4とが入力されるようになっている。ステアリング用制御弁34の出口圧p
4は、メインスプール34aの開度に応じて出力される油圧であり、メインスプール34aの開度が大きくなるにつれて大きくなる。つまり、ステアリング用制御弁34の出口圧p
4は、ステアリングアクチュエータに流れる作動油の圧力上昇に応じて高くなるようになっている。メータインコンペン37は、このような2つの圧力p
3,p
4を互いに抗する方向ように受圧している。このメータインコンペン37は、流量制御弁であり、2つの圧力p
3,p
4の差圧に応じた開度により油圧ポンプ30からステアリング用制御弁34に流れる作動油の流量を制御するようになっている。
【0040】
また、ステアリング駆動回路31には、更に3つのリリーフ弁38〜40が設けられている。第1及び第2のリリーフ弁38,39は、ステアリング用制御弁34とステアリングシリンダ18L,18Rの各室18a〜18dとを繋ぐ通路の油圧が所定圧以上になると、前記通路を流れる作動油をタンク36に排出するようになっている。第3のリリーフ弁であるメインリリーフ弁40は、ステアリング用制御弁34の出口圧p
4が予め定められた設定圧以上になると、ステアリング用制御弁34からメータインコンペン37に流れるパイロット油をタンク36に排出するようになっている。これら3つのリリーフ弁38〜40は、ステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量を制限して作動油の圧力を設定圧に保ち、ステアリングシリンダ18L,18Rに導かれる作動油の圧力が所定圧以上にならないようにしている。
【0041】
<作業機駆動回路>
作業機駆動回路32は、ブリードオフ通路41を有しており、ブリードオフ通路41の上流側は、メータイン通路33においてメータインコンペン37の上流側に接続されている。これにより、油圧ポンプ30から吐出された作動油は、メータイン通路33と共にブリードオフ通路41に導かれるようになっている。また、ブリードオフ通路41には、その途中にチルト用制御弁43、ブーム用制御弁44、及び絞り45がその順番で上流側から介在し、絞り45の下流側がタンク36に繋がっている。
【0042】
アクチュエータ用制御弁であるチルト用制御弁43は、チルトシリンダ23に接続されており、ブリードオフ通路41の作動油の流れをチルトシリンダ23の方へと切り換えてチルトシリンダ23を駆動するようになっている。具体的に説明すると、チルト用制御弁43は、チルト用スプール43aを有しており、チルト用スプール43aは、運転席20内に設けられるチルトレバー24を操作することで中立位置M2から移動してその位置を変えるようになっている。そして、チルト用スプール43aの位置を変えることによって、チルト用制御弁43は、作動油の流れる方向を切換えるようになっている。
【0043】
さらに詳細に説明すると、チルトレバー24が操作されてチルト用スプール43aが中立位置M2から第1オフセット位置S21に移動すると、チルトシリンダ23の先端側室23aに作動油が導かれてチルトシリンダ23が収縮し、バケット11が下向きにチルトする。逆に、チルトレバー24が操作されてチルト用スプール43aが中立位置M2から第2オフセット位置S22に移動すると、チルトシリンダ23の基端側室23bに作動油が導かれてチルトシリンダ23が伸長し、バケット11が上向きチルトする。また、チルト用スプール43aを中立位置M2に戻すと、ブリードオフ通路41とチルトシリンダ23との間が遮断されるようになっている。
【0044】
このように構成されているチルト用制御弁43は、センターオープン型の方向切換弁であり、チルト用スプール43aが中立位置M2に位置する際にチルト用制御弁43が開き(即ち、ブリードオフ通路41が開き)、その開度が最も大きくなっている。そして、チルト用スプール43aが中立位置M2から第1及び第2オフセット位置S21,S22の方に移動することによって、チルト用スプール43aの移動量に応じてチルト用制御弁43の開度(即ち、ブリードオフ通路41の開度)が小さくなっていく。それ故、ブリードオフ通路41のチルト用制御弁43より下流側に流れる作動油の量は、チルトレバー24の操作量が大きくなるにつれて減少し、チルトレバー24を元の位置の方に戻すことによって増加するようになっている。このようにして開閉されるブリードオフ通路41には、チルト用制御弁43より下流側にブーム用制御弁44が介在している。
【0045】
アクチュエータ用制御弁であるブーム用制御弁44は、ブーム用シリンダ22に接続されており、ブリードオフ通路41の作動油の流れをブーム用シリンダ22の方へと切り換えてブーム用シリンダ22を駆動するようになっている。具体的に説明すると、ブーム用制御弁44は、ブーム用スプール44aを有しており、ブーム用スプール44aは、運転席20内に設けられる昇降レバー25を操作することで中立位置M3から移動してその位置を変えるようになっている。そして、ブーム用スプール44aの位置を変えることによって、ブーム用スプール44aは、作動油の流れる方向を切換えるようになっている。
【0046】
さらに詳細に説明すると、昇降レバー25が操作されてブーム用スプール44aが中立位置から第1オフセット位置S31に移動すると、ブーム用シリンダ22の先端側室22aに作動油が導かれてブーム用シリンダ22が収縮し、バケット11が下降する。逆に、昇降レバー25が操作されてブーム用スプール44aが中立位置から第2オフセット位置S32に移動すると、ブーム用シリンダ22の基端側室22bに作動油が導かれてブーム用シリンダ22が伸長し、バケット11が上昇する。
【0047】
また、ブーム用制御弁44では、昇降レバー25を更に操作することによって、ブーム用スプール44aを第1オフセット位置S31から第3オフセット位置S33に移動させることができるようになっている。この第3オフセット位置S33では、ブーム用シリンダ22の先端側室22a及び基端側室22bがタンク36に繋がり、ブーム用シリンダ22の保持力がなくなり、バケット11が自重で降下する。
【0048】
このように構成されているブーム用制御弁44は、センターオープン型の方向切換弁であり、ブーム用スプール44aが中立位置M3に位置する際にブリードオフ通路41が開き、その開度が最も大きくなっている。そして、ブーム用スプール44aが中立位置M3から第1及び第2オフセット位置S31,S32の方に移動すると、ブーム用スプール44aの移動量に応じてブリードオフ通路41の開度が小さくなっていく。それ故、ブリードオフ通路41のブーム用制御弁44より下流側に流れる作動油の量は、昇降レバー25の操作量が大きくなるにつれて減少し、昇降レバー25を元の位置の方に戻すことによって増加するようになっている。このように開閉されるブリードオフ通路41には、ブーム用制御弁44より下流側に絞り45が介在している。
【0049】
絞り45は、ブリードオフ通路41において、ブーム用制御弁44とタンク36との間に位置しており、チルト用制御弁43及びブーム用制御弁44を通り抜けた作動油が絞り45を介してタンク36に排出されるようになっている。そのため、絞り45の上流側では、チルト用制御弁43及びブーム用制御弁44を通り抜けて絞り45に導かれる作動油の流量に応じた圧力が発生するようになっている。絞り45とブーム用制御弁44との間には、ネガコン通路46が接続されており、絞り45の上流側で発生した圧力がこのネガコン通路46を介して油圧ポンプ30のサーボ機構47に傾転指令信号として導かれる。
【0050】
油圧ポンプ30は、前述の通り可変容量形の油圧ポンプであり、斜板30aを有している。油圧ポンプ30は、斜板30aを傾けることによって容量が変わるようになっており、サーボ機構47は、傾転指令信号に応じて油圧ポンプ30の斜板30aの傾転角を制御するようになっている。具体的に説明すると、サーボ機構47は、傾転指令信号の圧力が高くなると斜板30aの傾転角を小さくして油圧ポンプ30の容量を小さくする。これにより、油圧ポンプ30の吐出量が減少する。他方、サーボ機構47は、傾転指令信号の圧力が低くなると斜板30aの傾転角を大きくして油圧ポンプ30の容量を大きくする。これにより、油圧ポンプ30の吐出量が増加する。
【0051】
このように作業機駆動回路32では、絞り45に流れる流量に応じて油圧ポンプ30の吐出量が制御されている、即ちネガティブコントロールによって油圧ポンプ30の吐出量が制御されている。また、作業機駆動回路32では、油圧ポンプ30から吐出されてステアリング駆動回路31に流れる作動油の流量を調整すべく、つまり油圧ポンプ30からブリードオフ通路41にブリードオフされる作動油の流量を制御すべくブリードオフコンペンセータ(以下、単に「ブリードオフコンペン」ともいう)42を備えている。
【0052】
ブリードオフコンペン42は、ブリードオフ通路41においてチルト用制御弁43の上流側に設けられている。ブリードオフコンペン42は、ブリードオフコンペン42の入口圧p
5とステアリング用制御弁34の出口圧p
4とがパイロット圧として入力されており、出口圧p
4と入力圧p
5とを互いに抗する方向に受圧している。ブリードオフコンペン42は、スプール42aを有する流量制御弁であり、スプール42aが出口圧p
4と入力圧p
5との差圧に応じた位置に移動するようになっている。また、スプール42aの位置に応じた開度によりブリードオフコンペン42の下流側にブリードオフされる作動油の流量が制御されるようになっている。
【0053】
ステアリング駆動回路31と作業機駆動回路32との間には、第1バイパス通路48が形成されており、このバイパス通路48によってステアリング用制御弁34の出口圧p
4がブリードオフコンペン42に導かれている。この第1バイパス通路48には、電磁切換弁49が介在しており、電磁切換弁49は、第2バイパス通路50に繋がっている。電磁切換弁49は、第2バイパス通路50を介してブリードオフ通路41のブリードオフコンペン42より上流側に接続されている。電磁切換弁49は、操作ボタン51に電気的に接続されており、この操作ボタン51が操作されるとブリードオフコンペン42に入力されるパイロット圧をステアリング用制御弁34の出口圧p
4からブリードオフコンペン42の入口圧p
5に切換えるようになっている。そのため、操作ボタン51が操作されると、ブリードオフコンペン42に入力される2つのパイロット圧の差圧がゼロになり、ブリードオフコンペン42のスプール42aがばね42bによってブリードオフ通路41を閉じる方向に付勢され、ブリードオフ通路41が強制的に閉じられるようになっている。
【0054】
このように構成されている作業機駆動回路32には、複数のリリーフ弁52〜55が備わっている。1つ目のリリーフ弁52は、ブリードオフ通路41において絞り45に並列するように設けられており、絞り45の上流側が所定圧以上になるとそこを流れる作動油をリリーフ弁52を介してタンク36に排出するようになっている。また、リリーフ弁53〜55は、チルト用制御弁43とチルトシリンダ23の先端側室23aの間、チルト用制御弁43とチルトシリンダ23の基端側室23bとの間、及びブーム用制御弁44とブーム用シリンダ22の先端側室22aとの間の通路にも別の夫々接続されており、これら3つのリリーフ弁53〜55は、前記各通路の油圧が夫々において定められた圧力以上になると作動油をタンク36に排出するようになっている。
【0055】
更に、作業機駆動回路32には、メインリリーフ弁56を備えている。メインリリーフ弁56は、ブリードオフコンペン42と並列に設けられ、油圧ポンプ30の吐出圧が予め定められた規定圧以上になると油圧ポンプ30からの作動油をタンク36に排出するようになっている。このメインリリーフ弁56により、油圧ポンプ30から作業機駆動回路32に流れる作動油の圧力を規定圧未満に保つことができる。
【0056】
[油圧駆動システムの動作について]
このように構成されている油圧駆動システム1では、エンジンEが油圧ポンプ30を回転駆動することによって油圧ポンプ30から作動油が吐出され、作動油がステアリング駆動回路31及び作業機駆動回路32に並列的に流れる。ステアリング装置35のハンドルが操作されていない状況では、ステアリング用制御弁34によってメータイン通路33とステアリングシリンダ18L,18Rとの間が閉じられており、ステアリング用制御弁34の出口圧p
4が小さくなっている。これにより、メータインコンペン37がメータイン通路33を閉じるように動作し、ステアリング用制御弁34に流れる作動油が制限される。
【0057】
他方、作業機駆動回路32では、操作ボタン51が操作されていない場合、ステアリング用制御弁34の出口圧p
4が小さくなることでブリードオフコンペン42のスプール42aがブリードオフ通路41を開く方向に移動し、ブリードオフ通路41のスプール42aの下流側に作動油が流れる。このような状況において、チルトレバー24又は昇降レバー25が操作されると、操作されたレバーに対応する制御弁43,44のスプール43a,44aが中立位置M2,M3から移動し、作動油が対応するシリンダ23,22に導かれる。これにより、操作されたレバーに応じてバケット11が昇降したりチルトしたりする。また、スプール43a,44aが中立位置M2,M3から移動することによって、ブリードオフ通路41の開度が小さくなって絞り45に流れる流量が少なくなる。そうすると、傾転指令信号の圧力が小さくなり、サーボ機構47は、この傾転指令信号に基づいて油圧ポンプ30の斜板30aの傾転角を大きくして油圧ポンプ30の吐出量を増加させる。逆に、チルトレバー24又は昇降レバー25が操作されなくなり、スプール43a,44aが中立位置M2,M3へと戻されると、絞り45に流れる流量が増加する。そうすると、傾転指令信号の圧力が大きくなり、サーボ機構47は、この傾転指令信号に基づいて油圧ポンプ30の斜板30aの傾転角を小さくして油圧ポンプ30の吐出量を減少させる。
【0058】
また、ステアリング装置35のハンドルが操作されると、ハンドルの操作量に応じてステアリング用制御弁34のメインスプール34aが中立位置M1から移動する。そうすると、ステアリング用制御弁34の出口圧p
4が大きくなり、メータインコンペン37がメータイン通路33を開く方向に動く。これにより、油圧ポンプ30からの作動油がステアリング用制御弁34を介してステアリングシリンダ18L,18Rに作動油が導かれてステアリングシリンダ18L,18Rに作動油が伸縮し、前記ハンドルの回動方向に応じた方向にホイルローダ2の進行方向が切替えられる。
【0059】
他方、作業機駆動回路32では、操作ボタン51が操作されていない場合、ステアリング用制御弁34の出口圧p
4が大きくなることでブリードオフコンペン42のスプール42aがブリードオフ通路41を閉じる方向に移動し、ブリードオフ通路41のブリードオフコンペン42の下流側に流れる作動油の流量が制限される。制限することによって、メータイン通路33からブリードオフ通路41へとブリードオフされる作動油の流量を抑えることができる、即ち作動油をステアリング駆動回路31に優先的に流すことができる。これにより、バケット11に対してステアリングシリンダ18L,18Rを優先的に動かすことができる。
【0060】
また、ブリードオフコンペン42の下流側に流れる作動油の流量が制限されることで、絞り45の上流側に流れる流量が少なくなって絞り45の上流側で発生する圧力が下がる。つまり、傾転指令信号の圧力が小さくなり、油圧ポンプ30の吐出量が増加する。これにより、ステアリング用制御弁34が必要とする流量よりも若干多い流量の作動油がポンプから吐出されることになり、安定してステアリングシリンダ18L,18Rに作動油が供給される。
【0061】
その後、メータインコンペン37の出口圧p
3は、メータインコンペン37の開度の増加に伴って上昇し続けるが、ステアリング用制御弁34の出口圧p
4は、それが設定圧以上になるとメインリリーフ弁40が開くようになっており、出口圧p
4が設定圧以下になるように維持されている。そのため、メータインコンペン37の出口圧p
3が上昇すると、やがてメータインコンペン37がメータイン通路33を閉じる方向に移動し、ステアリングシリンダ18L,18Rに流れる流量が制限する。そのため、ステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の最高圧は、前記設定圧に応じた所定圧に制限される。また、メータイン通路33への流量が減り、ブリードオフ通路41への流量が増加するため、ブリードオフ通路の回路圧が上昇し(ブリードオフコンペン42の入口圧p
5が上昇)、ブリードオフコンペン42のスプール42を開く方向に移動させるため、ブリードオフ通路41にブリードオフされる作動油の流量が増加する。これにより、油圧ポンプ30からメータインコンペン37の方に流れる流量が所定流量未満に制限される。
【0062】
更に、油圧駆動システム1では、操作ボタン51が操作されると、電磁切換弁49が動作してブリードオフコンペン42に作用するパイロット圧をステアリング用制御弁34の出口圧p
4からブリードオフコンペン42の入口圧p
5に切換えられる。これにより、ブリードオフコンペン42がブリードオフ通路41を強制的に閉じられる。閉じられることで、サーボ機構47によって油圧ポンプ30の吐出量が増加し、メータイン通路33及びブリードオフ通路41の油圧が上昇する。そして、ブリードオフ通路41の油圧が規定圧以上になると、メインリリーフ弁56が開いてブリードオフ通路41の作動油がタンク36に排出される。このようにして、強制的にブリードオフ通路41を閉じてメインリリーフ弁56から作動油を排出させることでエンジンEに負荷を掛けることができるようになっている。なお、操作ボタン51の操作中にステアリング装置35のハンドルが操作されると、操作ボタン51が操作されていない場合と同様にメータインコンペン37が動いてメータイン通路33を開き、ステアリング駆動回路31に作動油を優先的に流れるようになっている。
【0063】
このように構成されている油圧駆動システム1では、ステアリング装置35のハンドルが操作されると、作動油がステアリング駆動回路31に優先的に流れるようになっており、バケット11の動作の有無に関係なくステアリングシリンダ18L,18Rがハンドルの操作に応じて動くようになっている。つまり、ステアリングシリンダ18L,18Rはハンドルの操作に対する応答性が高い。この応答性の高さは、高速走行中に直進性を低下させることがある。そこで、油圧駆動システム1では、高速走行中の直進性を向上すべく、流量調整手段60を備えている。
【0064】
<流量調整手段>
流量調整手段60は、ホイルローダ2の状態がステアリング規制条件を充足しているか否かを判定するようになっており、更にステアリング規制条件を充足していると判定するとステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量をステアリング装置35のハンドル操作量に応じた流量より減少させるようになっている。これにより、ステアリングシリンダ18L,18Rはハンドルの操作に対する応答性を低下させて、高速走行中の直進性を向上させるようになっている。
【0065】
具体的に説明すると、流量調整手段60は、出口圧切換弁61と、コントローラ62とを有している。流量調整機構である出口圧切換弁61は、バイパス通路48とメータインコンペン37とを繋ぐパイロット通路63に接続されている。パイロット通路63には、バイパス通路48を介してステアリング用制御弁34の出口圧p
4が導かれており、メータインコンペン37には、パイロット通路63に導かれた出口圧p
4がパイロット圧として入力されるようになっている。また、パイロット通路63は、出口圧切換弁61を介してタンク36に接続されている。
【0066】
出口圧切換弁61は、いわゆる電磁切換弁であり、そこに入力される指令信号(流量規制指令)に応じてパイロット通路63とタンク36との間を接続したり遮断したりするようになっている。また、出口圧切換弁61とタンク36との間には、絞り69が介在しており、パイロット通路63から出口圧切換弁61を介してタンク36に流れるパイロット油の流量が絞り69によって制限されるようになっている。出口圧切換弁61は、コントローラ62と電気的に接続されており、コントローラ62から指令信号が入力されるようになっている。
【0067】
制御装置であるコントローラ62は、ホイルローダ2の状態がステアリング規制条件に充足しているか否かを判定するようになっている。ステアリング規制条件には、ホイルローダ2が運行姿勢であること、ホイルローダ2が走行状態であること、及びホイルローダ2が高速状態であることが含まれている。なお、ステアリング規制条件には、上述する3つの条件を全て含む必要はなく、少なくともホイルローダ2が高速状態であることが含まれればよい。また、
図3に示すように、コントローラ62には、ステアリング規制条件を充足しているか否かを判定すべく、車両状態検出装置である3つのセンサ64,64,66、具体的には高速状態判定用センサ64、姿勢判定用センサ65、及び走行判定用センサ66が電気的に接続されている。
【0068】
高速状態判定用センサ64は、ホイルローダ2が高速走行しているか否かを判定するためのセンサである。高速状態判定用センサ64は、例えば車速センサであり、ホイルローダ2の車速を検出するための信号をコントローラ62に出力するようになっている。コントローラ62は、車速センサからの出力に基づいてホイルローダ2の速度、即ち車速を検出し、検出された車速に応じてホイルローダ2が高速状態か否かを判定するようになっている。なお、高速状態判定用センサ64は、変速段位検出センサ、又はアクセルペダル操作量センサであってもよく、コントローラ62は、これらからの出力に基づいて変速段位又はアクセルペダル操作量を検出し、それらの検出結果に基づいて高速状態か否かを判定するようになっていてもよい。
【0069】
また、姿勢判定用センサ65は、ホイルローダ2が運行姿勢になっているか否かを判定するためのセンサである。姿勢判定用センサ65は、例えば、ブーム21の角度センサであり、ブーム21の回動角度を検出するための信号をコントローラ62に出力するようになっている。コントローラ62は、この角度センサからの出力信号に基づいてブーム21の回動を検出し、検出された回動角に基づいてホイルローダ2が運行姿勢であるか否かを判定するようになっている。なお、姿勢判定用センサ65は、バケット11の位置を検出する角度センサ、もしくはブーム用シリンダ22又はチルトシリンダ23の保持圧を検出する圧力センサであってもよく、コントローラ62は、これらからの出力に基づいてブーム21の回動角又は保持圧を検出し、それらの検出結果に基づいてホイルローダ2の運行姿勢か否かを判定するようになっていてもよい。
【0070】
走行判定用センサ66は、ホイルローダ2が走行状態になっているか否かを判定するためのセンサである。走行判定用センサ66は、例えばエンジンEの回転数及びトルクコンバータの出力回転数を夫々検出するための回転数センサを含んでいる。トルクコンバータは、エンジンEの出力トルクを車輪13に伝達するための動力伝達機構である。2つのセンサは、エンジンEの回転数及びトルクコンバータの出力回転数、即ちトルクコンバータの入力側と出力側の回転数を検出するための信号をコントローラ62に出力するようになっている。コントローラ62は、センサからの出力信号に基づいてトルクコンバータの入力側と出力側の回転数の速度比を演算し、この速度比に基づいてホイルローダ2の走行状態か否かを判定する。
【0071】
なお、走行判定用センサ66は、前記2つの回転数センサに代えて、ホイルローダ2に備わるパーキングブレーキの解除圧又はブレーキ圧を検出する圧力センサと、前後進検出センサとを含んでいてもよく、コントローラ62は、これらのセンサからの検出結果に基づいてホイルローダ2が走行状態か否かを判定するようになっていてもよい。また、走行判定用センサ66は、車速センサであってもよく、コントローラ62は、センサからの出力信号に基づいてホイルローダ2が走行状態か否かを判定するようになっていてもよい。また、コントローラ62には、前述するセンサ64〜66以外に油温センサ67、及びハンドル用の角変位センサ68が電気的に接続されている。車両状態検出装置である油温センサ67は、油圧ポンプ30から吐出される作動油の油温を検出するためのセンサである。油温センサ67は、例えばタンク36に接続されており、前記作動油の油温を検出するための信号をコントローラ62に出力するようになっている。コントローラ62は、油温センサ67からの出力信号に基づいて作動油の油温を検出するようになっている。車両状態検出装置であるハンドル用の角変位センサ68は、ステアリング装置35のハンドルに設けられており、ハンドルの角変位量を検出するためのセンサである。角変位センサ68は、ハンドルの角変位量を検出するための信号をコントローラ62に出力するようになっている。コントローラ62は、角変位センサ68からの出力信号に基づいて、ハンドルの回転速度を検出するようになっている。
【0072】
このように構成されているコントローラ62は、各センサ64〜66からの信号に基づいてホイルローダ2の状態がステアリング規制条件を充足しているか否かを判定する。また、コントローラ62は、検出された油温及びハンドル回転速度と、高速状態判定用センサ64の出力信号に基づいて検出されるホイルローダ2の車速とに基づいて後述するステアリング規制禁止条件を充足しているか否かを判定する。そして、コントローラ62は、ステアリング規制条件及びステアリング規制禁止条件の充足の有無に応じて出口圧切換弁61に指令信号を出力するようになっている。
【0073】
<高速ステアリング制御>
以下では、
図4を参照しながら、流量調整手段60が遂行する高速ステアリング制御について説明する。高速ステアリング制御は、ホイルローダ2の電源がオンになると開始され、開始するとステップS101に移行する。ステップS101〜S103では、ホイルローダ2の状態がステアリング規制条件を充足しているか否かを判定する判定処理である。なお、条件の充足の可否を判定する順番については、以下で説明する順番に限定されず、どのような順番であってもよい。
【0074】
運行姿勢判定工程であるステップS101では、ホイルローダ2が運行姿勢であるか否かをコントローラ62が判定する。具体的に説明すると、コントローラ62は、姿勢判定用センサ65からの出力信号に基づいてブーム21の回動角を検出し、この回動角が予め定められた閾値の範囲内であるか否かを判定する。回動角が閾値範囲外である場合、ホイルローダ2が掘削又は積み込み等をしている作業姿勢であるとコントローラ62が判定し、再度ホイルローダ2が運行姿勢であるか否かを判定し直す。回動角が閾値の範囲内である場合、ホイルローダ2が高速運行可能な運行姿勢であるとコントローラ62が判定し、ステップS102に移行する。
【0075】
走行状態判定工程であるステップS102では、ホイルローダ2が走行状態になっているか否か、つまり、コントローラ62ホイルローダ2が走行しているか否かを判定する工程である。具体的に説明すると、コントローラ62は、走行判定用センサ66からの出力信号に基づいてトルクコンバータの入力側と出力側の回転数の速度比を演算し、この速度比が予め定められた閾値以上(例えば、0.4以上)であるか否かを判定する。速度比が閾値以下である場合、ホイルローダ2が作業を行っている、又はホイルローダ2が走行していないとコントローラ62が判定し、ステップS101に戻る。速度比が閾値以上である場合、ホイルローダ2が走行しているとコントローラ62が判定し、ステップS103に移行する。
【0076】
高速状態判定ステップS103では、ホイルローダ2が高速走行しているか否かを判定する工程である。具体的に説明すると、コントローラ62は、高速状態判定用センサ64からの出力信号に基づいてホイルローダ2の車速を検出し、この車速が予め定められた閾値以上(例えば、20km/h以上)であるか否かを判定する。車速が閾値以下である場合、ホイルローダ2が高速走行していないとコントローラ62が判定し、ステップS101に戻る。車速が閾値以上である場合、ホイルローダ2が高速走行していると判定する。このように、ステップS101からステップS103において、ステアリング規制条件に含まれる全ての条件(つまり、運行姿勢であること、走行状態にあること、及び高速状態にあること)を充足していると、規制処理が開始されてステップS104に移行する。
【0077】
ステアリング規制禁止条件判定工程であるステップS104では、ホイルローダ2がステアリング規制禁止条件を充足しているか否かをコントローラ62が判定する。ステアリング規制禁止条件には、作動油の油温TがT1(例えば、20℃)以下であること、及びハンドル回転速度NがN1(例えば、60rpm)以上であることが含まれている。なお、ステアリング規制禁止条件には、必ずしも2つが含まれている必要はなく、少なくとも1つ含まれていればよい。判定の手順について具体的に説明すると、コントローラ62は、油温センサ67、及び角変位センサ68からの出力信号に基づいて油温T、及びハンドル回転速度Nを検出し、これらに基づいてステアリング規制禁止条件に含まれる条件のうち少なくとも1つ以上を充足しているか否かを判定する。コントローラ62が充足していると判定すると、ステアリング規制を行わずにステップS101に戻る。他方、コントローラ62が充足していないと判定すると、ステップS105に移行する。
【0078】
出口圧切換工程であるステップS105では、コントローラ62が出口圧切換弁61に指令信号を出力する。これにより、パイロット通路63が出口圧切換弁61を介してタンク36に接続され、パイロット通路63を流れるパイロット油の一部が絞り69を介してタンク36に逃がされる。これにより、ステアリング用制御弁34の出口圧p
4が低下し、ステアリング用制御弁34の入口圧p
3との差圧が大きくなるため、メータインコンペン37がステアリング用制御弁34への作動油の供給流量を減少させる。そうすると、メインスプール34aに流れる流量が低下し、ステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量をステアリング装置35のハンドル操作量に応じた流量より減少させることができる。これにより、ステアリングシリンダ18L,18Rはハンドルの操作に対する応答性を低下させて、高速走行中の直進性を向上させることができる。このようにメータイン通路33の流量を規制すると、次にステップS106に移行する。
【0079】
規制解除判定工程であるステップS106では、ホイルローダ2の状態がステアリング規制条件を充足しているか否かをコントローラ62が再度判定する。コントローラ62がステアリング規制条件を充足していると判定すると、ステップS104に戻り、充足していないと判定するとステップS107に移行する。規制解除工程であるステップS107では、コントローラ62が出口圧切換弁61への指令信号を止めてパイロット通路63とタンク36との間を遮断させる。これにより、ステアリング装置35のハンドル操作量に応じた流量がステアリングシリンダ18L,18Rに流れるようになる。パイロット通路63とタンク36との間を遮断されると、ステップS101に戻る。
【0080】
このようにして構成されている油圧駆動システム1では、ホイルローダ2が高速走行状態になってステアリング規制条件を充足すると、ステアリング装置35のハンドル操作に対するステアリングシリンダ18L,18Rの応答性を低下させることができる。これにより、高速走行中のホイルローダ2の直進性を向上させることができる。
【0081】
また、ハンドル操作に対する応答性を油温T、及びハンドル回転速度Nに応じてステアリング規制を禁止するので、それらに起因して前記応答性が過度に低下して操作性が過度に低下することを防ぐことができる。具体的には、油温Tが低い場合はパイロット油の粘度が高いため応答性が悪いので、ステアリング規制を禁止することで前記応答性が過度に低下して操作性が過度に低下することを防いでいる。即ち、作動油の温度が高くなるにつれて作動油の粘性が低くなってステアリング装置35のハンドル操作に対するステアリングシリンダ18L,18Rの応答性が変動するが、作動油の温度に応じてステアリング装置35のハンドル操作に対してステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量を小さくすることによって、作動油の温度に起因するステアリングシリンダ18L,18Rの応答性の変動を抑えることができる。また、車両の進行方向を素早く切り換えたい場合(即ち、ハンドル回転速度Nが大きい場合)、ステアリング規制を禁止することで運転者の要望通りに進行方向を素早く切り換えることを可能にしている。
【0082】
[第2実施形態]
第2実施形態の油圧駆動システム1Aは、第1実施形態の油圧駆動システム1と構成が類似している。以下では、第2実施形態の油圧駆動システム1Aの構成については、第1実施形態の油圧駆動システム1と異なる点について主に説明し、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。なお、以下で説明する第3乃至第5実施形態の油圧駆動システム1B,1C,1Dについても同様である。
【0083】
図5に示すように、第2実施形態の油圧駆動システム1Aは、流量調整手段60Aを備えており、流量調整手段60Aは、出口圧切換弁61Aと、コントローラ62とを備えている。出口圧切換弁61Aは、いわゆる電磁切換弁であり、バイパス通路48とタンク36とに接続されている。出口圧切換弁61Aは、コントローラ62からの指令信号(流量規制指令)に応じてパイロット通路63とタンク36との間を接続したり遮断したりするようになっている。
【0084】
このように構成されている出口圧切換弁61Aは、操作ボタン51が操作されていない状態でバイパス通路48を介してパイロット通路63に繋がっている。出口圧切換弁61Aは、指令信号に応じてパイロット通路63とタンク36との間を接続する。接続されることで、バイパス通路48に流れるパイロット油が出口圧切換弁61Aを介してタンク36に排出される。これにより、ブリードオフコンペン42に入力されるパイロット圧p
4が低下させることができ、ブリードオフコンペン42を閉じにくくすることができる。また、p
4が低下することでメータインコンペン37を開きにくくすることができる。このようにメータインコンペン37を開きにくくし、且つブリードオフコンペン42を閉じにくくすることで、ステアリング用制御弁34に流れる流量を減少させ、ステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量を減少させている。これにより、ステアリング装置35のハンドル操作の感覚に影響を殆ど与えることなく、ステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量を減少させることができる。
【0085】
また、油圧駆動システム1Aは、第1実施形態の油圧駆動システム1と同様に動作し、且つ同様の作用効果を奏する。
【0086】
[第3実施形態]
第3実施形態の油圧駆動システム1Bのステアリング装置35は、第1及び第2実施形態の油圧駆動システムと同様に構成されており、パワーステアリングユニット70を有している。パワーステアリングユニット70は、方向切換バルブ71と、メータリング機構72とを有している。方向制御バルブ71は、スプール71aを有しており、スプール71aには、ハンドル74が連結されている。ハンドル74は、回動操作可能に構成されており、ハンドル74を回動操作するとスプール71aが移動するようになっている。方向制御バルブ71は、供給通路75を介してメータイン通路33のメータインコンペン37より上流側と繋がっており、またタンク通路76を介してタンク36に繋がっている。更に、方向制御バルブ71は、第1パイロット通路77と第2パイロット通路78を介してステアリング用制御弁34のメインスプール34aに繋がり、またメータリング機構72にも繋がっている。
【0087】
メータリング機構72は、いわゆるポンプであり、2つの給排ポート72a,72bを有している。メータリング機構72は、シャフト79を介してハンドル74に連結されており、ハンドル74の回動操作に応じて一方の吸排ポート72a(又は他方の吸排ポート72b)から圧油を吸引して他方の吸排ポート72b(又は、一方の吸排ポート72a)からパイロット油を排出するようになっている。2つの吸排ポート72a,72bは、吸排通路72c,72dを夫々介して方向制御バルブ71に繋がっている。
【0088】
複数の通路が繋がっている方向制御バルブ71は、ハンドルの回動操作に応じてスプール71aを動かし、スプール71aの位置に応じてパイロット油の流れを切換えるようになっている。具体的に説明すると、ハンドル74が回動操作されると、ハンドル74の回転方向に応じてスプール71aが中立位置M4から第1オフセット位置S41及び第2オフセット位置S42に夫々移動する。スプール71aが第1オフセット位置S41に移動すると、供給通路75が一方の吸排通路72cに繋がり、他方の吸排通路72dが第1パイロット通路77と繋がる。これにより、ハンドル74の操作量に応じた流量の第1のパイロット油が第1パイロット通路77に導かれる。また、第2パイロット通路78は、スプール71aが第1オフセット位置S41に移動することによってタンク通路76に繋がる。
【0089】
第1パイロット通路77と第2パイロット通路78とは、連通路81によって互いに連通されており、第2パイロット通路78がタンクに繋がることで第1パイロット通路77を流れる第1のパイロット油が連通路81を通って第2パイロット通路78に流れる。連通路81には、絞り82が介在しており、絞り82を第1のパイロット油が通ることで第1パイロット通路77を流れる流量に応じた第1のパイロット圧p
1が第1パイロット通路77に発生する。この第1パイロット圧p
1がメインスプール34aに作用することによって、ハンドル74の操作量に応じた位置、即ち第1オフセット位置S11の方にメインスプール34aを移動させることができる。
【0090】
また、スプール71aが第2オフセット位置S42に移動すると、供給通路75が他方の吸排通路72dに繋がり、一方の吸排通路72cが第2パイロット通路78と繋がる。これにより、ハンドル74の操作量に応じた流量の第2のパイロット油が第2パイロット通路78に導かれる。また、スプール71aが第2オフセット位置S42に移動することによって、第1パイロット通路77がタンク通路76に繋がり、第2のパイロット油が第2パイロット通路78から連通路81を通って第1パイロット通路77に流れる。この際、第2のパイロット油が絞り82を通ることで、第2パイロット通路78を流れる流量に応じた第2のパイロット圧p
2が第2パイロット通路78に発生する。この第2パイロット圧p
2がメインスプール34aに作用することによって、ハンドル74の操作量に応じた位置、即ち第2オフセット位置S12の方にメインスプール34aを移動させることができる。このように構成されているステアリング装置35には、流量調整手段60Bが設けられている。
【0091】
流量調整手段60Bは、第1及び第2パイロット通路77,78に夫々流れる第1及び第2のパイロット油の流量を調整することによって、メインスプール34aの位置を制御してステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量をステアリング装置35のハンドル操作量に応じた流量より減少させるようになっている。流量調整手段60Bの構成について具体的に説明すると、流量調整手段60Bは、2つの開閉切換弁61L,61Rと、コントローラ62Bとを有している。一方の開閉切換弁61Lは、第1パイロット通路77に接続され、他方の開閉切換弁61Rは、第2パイロット通路78に接続されている。2つの開閉切換弁61L,61Rは、いわゆる電磁切換弁であり、そこに入力される指令信号(流量規制指令)に応じてパイロット通路77,78とタンク36とを接続したり遮断したりするようになっている。また、2つの開閉切換弁61L,61Rとタンク36との間には、絞り83,84が夫々介在しており、各パイロット通路77,78を流れるパイロット油の流量の一部を絞り83,84を介してタンク36に排出するようになっている。このように構成されている2つの開閉切換弁61L,61Rは、コントローラ62Bに電気的に接続されており、コントローラ62Bから指令信号が入力されるようになっている。
【0092】
図7に示すように、コントローラ62Bは、第1実施形態のコントローラ62と同様にセンサ64〜68と電気的に接続されており、これらのセンサからの出力信号に基づいてホイルローダ2がステアリング規制条件及びステアリング規制禁止条件を充足するか否かを判定するようになっている。このように、コントローラ62Bは、開閉切換弁61L,61Rに指令信号を出力するようになっている。このようにパイロット油の流量を減少させることでステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量をステアリング装置35のハンドル操作量に応じた流量より減少させることができ、ハンドル74の操作量に対するステアリングシリンダ18L,18Rの応答性を低下させることができる。これにより、高速走行中の直進性を向上させることができる。
【0093】
その他、第3実施形態の油圧駆動システム1Bは、第1実施形態の油圧駆動システム1と同様の作用効果を奏する。
【0094】
[第4実施形態]
図8に示すように、第4実施形態の油圧駆動システム1Cは、流量調整装置60Cを備えており、流量調整装置60Cは、流量制御機構61C及びコントローラ62Cを有している。流量制御機構61Cは、パイロット通路63とタンク36とに接続されている。流量制御機構61Cは、そこに入力される指令信号に応じてパイロット通路63とタンク36との間を接続し、またそこに入力される流量切換信号に応じてパイロット通路63からタンク36に排出されるパイロット油の流量を切換えるようになっている。
【0095】
さらに詳細に説明すると、流量制御機構61Cは、電磁切換弁91と、方向切換弁92と、第1絞り93と、第2絞り94とを有している。電磁切換弁91は、パイロット通路63と方向切換弁92とに接続されており、そこに入力される指令信号に応じてパイロット通路63と方向切換弁92との間を接続したり遮断したりするようになっている。方向切換弁92は、電磁切換弁91と、第1絞り93と、第2絞り94とに接続されており、そこに入力される流量切換信号に応じて電磁切換弁91の接続先を第1絞り93及び第2絞り94のいずれか一方に接続するようになっている。第1絞り93及び第2絞り94は、タンク36に接続されている。第1絞り93及び第2絞り94は、異なる流路断面を有しており、第1絞り93の流路断面は、第2絞り94の流路断面より小さくなるように設定されている。また、電磁切換弁91及び方向切換弁92は、コントローラ62Cに電気的に接続されている。
【0096】
コントローラ62Cは、高速状態判定用センサ64、姿勢判定用センサ65、及び走行判定用センサ66と電気的に接続されており、また、油温センサ67及び角変位センサ68とも電気的に接続されている。コントローラ62Cは、各センサ64〜66からの信号に基づいてステアリング規制条件を充足しているか否かを判定し、また各センサ67,68からの信号に基づいてステアリング規制禁止条件を充足しているか否かを判定する。そして、コントローラ62Cは、ステアリング規制条件及びステアリング規制禁止条件の充足の有無に応じて電磁切換弁91に指令信号を出力するようになっている。
【0097】
また、コントローラ62Cは、高速状態判定用センサ64からの出力信号に基づいて流量切換条件を充足するか否かを判定する。流量切換条件は、ホイルローダ2の車速VがV1(例えば、30km/h)以上であることである。なお、流量切換条件は、油温TがT2(>T1)以上であること、及びハンドル回転速度N1がN2(<N1)以下であることであってもよく、これら3つの条件(即ち、車速、油温、及びハンドル回転速度に関する条件)のうち少なくとも1つ充足すればよいという条件にしてもよい。コントローラ62Cは、流量切換条件を充足すると判断すると、方向切換弁92に流量切換信号を出力するようになっている。
【0098】
<高速ステアリング制御>
このように構成されている油圧駆動システム1Cでは、ホイルローダ2の電源がオンになると、
図9に示す高速ステアリング制御が開始されてステップS101に移行する。第1実施形態の油圧駆動システム1と同様に、ステップS101〜S103でステアリング規制条件を充足しているか否かを判定し、充足していると判定されるとステップS104に移行する。ステップS104で、ステアリング規制禁止条件を充足しているか否かを判定し、充足している場合はステップS101に戻る。他方、充足していないと判定されると、ステップS205に移行する。流量切換条件判定工程であるステップS205では、流量切換条件の充足の有無に応じてタンク36に流すパイロット油の流量を切換えるべく、コントローラ62Cが流量切換条件を充足するか否かを判定する。流量切換条件を充足していないと判定すると、ステップS206に移行し、流量切換条件を充足していると判定すると、ステップS207に移行する。
【0099】
第1流量切換工程であるステップS206では、コントローラ62Cが電磁切換弁91に指令信号を出力し、パイロット通路63と方向切換弁92との間を接続する。これにより、パイロット通路63を流れるパイロット油の一部が方向切換弁92及び第1絞り93を介してタンク36に逃がされる。これにより、ステアリングシリンダ18L,18Rはハンドルの操作に対する応答性を低下させて、高速走行中の直進性を向上させることができる。このようにメータイン通路33の流量を規制すると、次にステップS106に移行する。なお、ステップS106及びステップS107については、第1実施形態の油圧駆動システム1が実行する高速ステアリング制御のステップS106及びS107と同じであるので説明を省略する。以下の説明でも同様である。
【0100】
第2流量切換工程であるステップS207では、コントローラ62Cが電磁切換弁91に指令信号を出力し、パイロット通路63と方向切換弁92との間を接続する。更に、コントローラ62Cは、方向切換弁92に流量切換信号を出力し、電磁切換弁91を第2絞り94に接続する。これにより、パイロット通路63を流れるパイロット油の一部が方向切換弁92及び第2絞り94を介してタンク36に逃がされる。第2絞り94は、第1絞り93より更に流路面積が大きいので、第1絞り93より多くのパイロット油がパイロット通路63からタンク36に排出されて、第1流量切換工程の時よりもステアリング用制御弁34の出口圧p
4が更に低下する。そうすると、ステアリング用制御弁34の入口圧と出口圧p
4との差圧p
3が更に大きくなり、ステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量をステアリング装置35のハンドル操作量に応じた流量より更に減少させることができる。これにより、ステアリングシリンダ18L,18Rはハンドルの操作に対する応答性を更に低下させて、高速走行中の直進性を更に向上させることができる。このようにメータイン通路33の流量を切換えると、次にステップS106に移行する。
【0101】
このように構成されている油圧駆動システム1Cは、流量切換条件の充足の有無に応じてハンドル操作に対する応答性を調整しているので、高速であっても比較的に速度が遅いときに前記応答性が過度に低下して操作性が過度に低下することを防ぐことができる。また、油温Tが低くなるにつれてステアリング装置の操作量に対するステアリングシリンダ18L,18Rに導かれる作動油の流量の減少量を抑えることで、応答性が過度に低下することを防ぐことができる。更に、ハンドル回転速度Nが大きくなるにつれてステアリング装置の操作量に対するステアリングシリンダ18L,18Rに導かれる作動油の流量の減少量を抑えることで、車両の進行方向を素早く切り換えたいという運転者の要望を満たして進行方向を素早く切り換えることを可能にする。
【0102】
その他、油圧駆動システム1Cは、第1実施形態の油圧駆動システム1と同様の作用効果を奏する。
【0103】
[第5実施形態]
図10に示すように、第5実施形態の油圧駆動システム1Dは、流量調整装置60Dを備えており、流量調整装置60Dは、流量制御機構61D及びコントローラ62Dを備えている。流量制御機構61Dは、パイロット通路63とタンク36とに接続されている。流量制御機構61Dは、そこに入力される流量切換信号に応じてパイロット通路63からタンク36に排出されるパイロット油の流量を切換えるようになっている。
【0104】
さらに詳細に説明すると、流量制御機構61Dは、パイロットポンプ95、電磁比例弁96と、流量制御弁97とを有している。パイロットポンプ95は、圧油を吐出するようになっており、吐出された圧油は電磁比例弁96に導かれる。電磁比例弁96は、パイロットポンプ95と流量制御弁97とに接続されている。電磁比例弁96には、流量切換信号(流量規制信号)が入力されるようになっており、パイロットポンプ95と流量制御弁97との間を流量切換信号に応じた開度で開くようになっている。これにより、流量制御弁97には、流量切換信号に応じた圧力の流量切換用パイロット圧が導かれるようになっている。流量制御弁97は、パイロット通路63とタンク36とに接続されており、電磁比例弁96から導かれる流量切換用パイロット圧に応じてスプール97aが動くようになっている。流量制御弁97は、スプール97aが動くことで、パイロット通路63とタンク36との間を流量切換用パイロット圧に応じた開度で開くようになっている。即ち、流量制御弁97は、流量切換信号に応じた流量のパイロット油をパイロット通路63からタンク36に排出するようになっている。このように構成されている流量制御機構61Dの電磁比例弁96には、コントローラ62Dが電気的に接続されている。
【0105】
コントローラ62Dは、高速状態判定用センサ64、姿勢判定用センサ65、及び走行判定用センサ66と電気的に接続されており、また、油温センサ67及び角変位センサ68とも電気的に接続されている。コントローラ62Dは、各センサ64〜66からの信号に基づいてステアリング規制条件を充足しているか否かを判定し、コントローラ62Dは、各センサ67,68からの信号に基づいてステアリング規制禁止条件を充足しているか否かを判定する。そして、コントローラ62Dは、ステアリング規制条件及びステアリング規制禁止条件の充足の有無に応じて電磁比例弁96に流量切換信号(流量規制信号)を出力するようになっている。
【0106】
また、コントローラ62Dは、高速状態判定用センサ64からの出力信号に基づいて第1流量切換条件及び第2流量切換条件を充足するか否かを判定する。第1流量切換条件は、油温TがT2(>T1)以下、ハンドル回転速度NがN2(<N1)以上、車速VがV2(>V1)以下(例えば、T2=40℃、N2=45rpm、V2=25km/h)であることであり、第2流量切換条件は、油温TがT3(>T2>T1)以下、ハンドル回転速度NがN3(<N2<N1)以上、車速VがV3(>V2>V1)以下(例えば、T3=60℃、N3=30rpm、V3=30km/h)であることである。なお、第1流量切換条件及び第2流量切換条件は、これら3つの条件(即ち、車速、油温、及びハンドル回転速度の各々に関する条件)のいずれか1つ充足するという条件であってもよい。
【0107】
コントローラ62Dは、充足の有無、又は充足する条件に応じて、出力する流量切換信号の値(例えば、電流値)を変えるようになっている。コントローラ62Dからの流量切換信号の値が変わることで電磁比例弁96の開度が変わるようになっている。これにより、流量制御弁97は、パイロット通路63とタンク36との間の開度を充足する条件に応じて調整し、前記充足する条件に応じた流量のパイロット油をパイロット通路63からタンク36に排出する。なお、本実施形態では、第2流量切換条件を充足する場合に対して第1流量切換条件を充足する場合の方がパイロット通路63とタンク36との間の開度が大きくなり、また第1及び第2流量切換弁を充足しない場合には、第2流量切換条件を充足する場合に対してパイロット通路63とタンク36との間の開度が小さくなるようになっている。
【0108】
<高速ステアリング制御>
このように構成されている油圧駆動システム1Dでは、ホイルローダ2の電源がオンになると、
図11に示す高速ステアリング制御が開始されてステップS101に移行する。第1実施形態の油圧駆動システム1と同様に、ステップS101〜S103でステアリング規制条件を充足しているか否かを判定し、充足していると判定されるとステップS104に移行する。ステップS104で、ステアリング規制禁止条件を充足しているか否かを判定し、充足している場合はステップS101に戻る。他方、充足していないと判定されると、ステップS305に移行する。
【0109】
第1流量切換条件判定工程であるステップS305では、コントローラ62Dが第1流量切換条件を充足するか否かを判定する。第1流量切換条件を充足していると判定すると、ステップS306に移行し、流量切換条件を充足していないと判定すると、ステップS307に移行する。
【0110】
第1開度調整工程であるステップS306では、コントローラ62Dが電磁比例弁96に流量切換信号を出力して流量切換用パイロット圧を出力させ、流量制御弁97を作動させる。これにより、第1流量切換条件(即ち、流量切換用パイロット圧)に応じた開度でパイロット通路63とタンク36との間が接続され、パイロット通路63を流れるパイロット油の一部が流量制御弁97を介してタンク36に逃がされる。これにより、ステアリングシリンダ18L,18Rはハンドルの操作に対する応答性を低下させて、高速走行中の直進性を向上させることができる。このようにメータイン通路33の流量を規制すると、次にステップS106に移行する。
【0111】
第2流量切換条件判定工程であるステップS307では、コントローラ62Dが第2流量切換条件を充足するか否かを判定する。第2流量切換条件を充足していると判定すると、ステップS308に移行し、流量切換条件を充足していないと判定すると、ステップS309に移行する。
【0112】
第2流量切換工程であるステップS308では、コントローラ62Dが電磁比例弁96に流量切換信号を出力して流量切換用パイロット圧を出力させ、流量制御弁97を作動させる。これにより、第2流量切換条件(即ち、流量切換用パイロット圧)に応じた開度でパイロット通路63とタンク36との間が接続され、パイロット通路63を流れるパイロット油の一部が流量制御弁97を介してタンク36に逃がされる。このように、第1流量切換条件とは異なる第2流量切換条件を用いることで、ハンドルに対するステアリングシリンダ18L,18Rの応答性を、油温、エンジン回転数、及び走行速度に応じてより詳細に調整することができる。このようにメータイン通路33の流量を切換えると、次にステップS106に移行する。
【0113】
第3流量切換工程であるステップS309では、コントローラ62Dが電磁比例弁96に流量切換信号を出力して流量切換用パイロット圧を出力させ、流量制御弁97を作動させる。これにより、その流量切換用パイロット圧の圧力に応じた開度でパイロット通路63とタンク36との間が接続され、パイロット通路63を流れるパイロット油の一部が流量制御弁97を介してタンク36に逃がされる。それ故、このように、第1及び第2流量切換条件とは異なる第3流量切換条件を用いることで、ハンドルに対するステアリングシリンダ18L,18Rの応答性を、油温、エンジン回転数、及び走行速度に応じてより詳細に調整することができる。このようにメータイン通路33の流量を切換えると、次にステップS106に移行する。
【0114】
このように構成さている油圧駆動システム1Dでは、充足する各流量切換条件に応じてパイロット通路63とタンク36との間の開度を調整するように流量制御弁97が構成されている。それ故、流量制御弁97を介してパイロット通路63からタンク36に排出されるパイロット油の量を、充足する流量切換条件に応じて調整することができる。これにより、ステアリングシリンダ18L,18Rに流れる作動油の流量を充足する条件に応じて多段階で調整することができ、応答性が過度に低下することを防ぐことができる。
【0115】
その他、油圧駆動システム1Dは、第1実施形態の油圧駆動システム1と同様の作用効果を奏する。
【0116】
[その他の実施形態]
第1乃至第5実施形態の油圧駆動システム1,1A〜1Dでは、ステアリング規制条件を充足して高速走行であるとコントローラ62,62B,62C,62Dが判定すると、コントローラ62,62B,62C,62Dが規制処理を遂行していたが、必ずしも高速走行であると判定した場合に限定されない。例えば、ステアリング規制条件に油温Tに関する条件が含まれて油温Tが閾値以上であるとコントローラ62,62B,62C,62Dが判定した場合や、ステアリング規制条件にハンドル回転速度Nに関する条件が含まれてハンドル回転速度Nが閾値以下であるとコントローラ62,62B,62C,62Dが判定した場合に、コントローラ62が規制処理を遂行するようにしてもよい。即ち、予め定められた内容のステアリング規制条件を充足しているとコントローラ62,62B,62C,62Dが判定すると規制処理を遂行するようにすればよい。また、高速ステアリング制御において、ステアリング規制禁止条件判定工程は必ずしも必要ではなく、なくてもよい。
【0117】
また、第1実施形態の油圧駆動システム1では、コントローラ62がステアリング規制条件の充足の有無に応じて出口圧切換弁61によってパイロット通路63とタンク36とを接続するようになっている。しかし、ステアリング規制条件の充足の有無に関わらず図示しない操作部を運転者が操作すると、コントローラ62が出口圧切換弁61に指令信号を出力してパイロット通路63とタンク36とを接続するようになっていてもよい。これにより、運転者は任意でステアリングアクチュエータの応答性を変更することができる。また、ステアリング規制条件の充足の有無に関わらず図示しない操作部を運転者が操作すると、コントローラ62が高速ステアリング処理をしないようにしてもよい。第2、第4及び第5実施形態の油圧駆動システム1A,1C、1Dについても同様であり、ステアリング規制条件の充足の有無に関わらず図示しない操作部を運転者が操作すると、コントローラ62,62C,62Dが指令信号を出力するようになっていてもよい。また、第3実施形態の油圧駆動システム1Bにおいても、運転者による操作部の操作に応じてコントローラ62Bが開閉切換弁61L,61Rを制御することによって、ステアリング規制条件の充足の有無に関わらず、運転者は任意でステアリングアクチュエータの応答性を変更したり、コントローラ62,62Bが高速ステアリング処理をしないようにしたりすることができる。
【0118】
また、流量調整機構として、出口圧切換弁61,61Aが用いられているが、必ずしもこのような制御弁に限定されない。例えば、メータインコンペン37のスプール及びブリードオフコンペン42のスプール42aを付勢しているばね37a,42bの付勢力が流量規制指令に応じて変わるような構成であってもよい。この場合、流量規制指令に応じてピストンを作動させてこのピストンによってばね37a,42bの圧縮量又は伸長量を変えられるようにすれば実現することができる。
【0119】
第4及び第5実施形態の油圧駆動システム1C、1Dでは、流量調整装置60C、60Dは、パイロット通路63に接続されているが、接続先はこれに限定されない。流量調整装置60C、60Dは、バイパス通路48や、第1パイロット通路77及び第2パイロット通路78に接続されていてもよい。
【0120】
第5実施形態の油圧駆動システム1Dでは、パイロット通路63からタンク36に排出されるパイロット油の排出流量が3段階で調整可能であるが、3段階に限定されず、条件に応じて4段階以上で調整可能であってもよい。また、車速、油温、及びハンドル回転速度の各々に対して切換条件(閾値)を設定し、車速、油温、及びハンドル回転速度の各々のパラメータがいずれの切換条件を充足するかを判定するようにしてもよい。この場合、各々のパラメータが充足する条件に応じて出力する流量切換信号の値を変えてパイロット通路63とタンク36との間の開度の調整するようにする。例えば、各パラメータに関して第1流量切換条件及び第2流量切換条件が設定されている場合、各パラメータの充足の有無の組み合わせは、各々のパラメータが2つの流量切換条件を充足しない場合を含めて27通りあり、各組合せに応じてパイロット通路63とタンク36との間の開度の調整するようにする。このようなマトリクス制御を行うことで、ハンドルに対するステアリングシリンダ18L,18Rの応答性を、油温、エンジン回転数、及び走行速度に応じて更に詳細に調整することができる。
【0121】
また、本実施形態では、ホイルローダ2に油圧駆動システム1,1A,1Bが搭載されている場合について説明したが、ホイルローダ2に限定されず油圧ショベルやブルドーザ等であってもよく、ステアリングアクチュエータと作業機アクチュエータを備える車両(例えば、建設車両)であればよい。