特許第6134291号(P6134291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニフコの特許一覧

<>
  • 特許6134291-タンク用キャップ及びシール構造 図000002
  • 特許6134291-タンク用キャップ及びシール構造 図000003
  • 特許6134291-タンク用キャップ及びシール構造 図000004
  • 特許6134291-タンク用キャップ及びシール構造 図000005
  • 特許6134291-タンク用キャップ及びシール構造 図000006
  • 特許6134291-タンク用キャップ及びシール構造 図000007
  • 特許6134291-タンク用キャップ及びシール構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134291
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】タンク用キャップ及びシール構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   B60K15/05 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-109561(P2014-109561)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2015-223924(P2015-223924A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石坂 泰一
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 貴世
【審査官】 諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−337916(JP,A)
【文献】 実開昭60−154266(JP,U)
【文献】 実公昭47−019373(JP,Y1)
【文献】 特開平10−236366(JP,A)
【文献】 実開昭54−036298(JP,U)
【文献】 特開2003−065539(JP,A)
【文献】 特開2013−108563(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2607136(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第0885764(EP,A1)
【文献】 国際公開第2010/035767(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00−15/10
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
F02M 37/00
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク用キャップであって、
把持部を備えた本体部と、
前記本体部の先端側に配置され、タンク側の開口形成部に選択的に係合するロック部材と、
前記ロック部材を係合位置及び解除位置間で駆動するために、基端側から押し出し可能に前記本体部に支持された操作部材と、
前記操作部材を挿通させるべく前記本体部内に画定された挿通孔の内周面と前記操作部材の外周面との間の環状空隙をシールするために前記本体部と前記操作部材との間に設けられたシール部材と
を備え、
前記シール部材は、前記操作部材を気密に嵌入するように形成された嵌入孔と、該嵌入孔の近傍の全周にわたって延在し、縦断面に於いて屈曲形状を呈する易変形部とを有することを特徴とするタンク用キャップ。
【請求項2】
前記シール部材の内周縁は前記易変形部よりも厚肉に形成され、該内周縁は前記操作部材の外周に設けられた環状溝に嵌合していることを特徴とする請求項1に記載のタンク用キャップ。
【請求項3】
前記操作部材は、初期状態で前記ロック部材を前記係合位置に維持し、押し込まれた状態で前記ロック部材を前記解除位置に変位させるように構成され、前記屈曲形状が、前記操作部材の前記初期状態に於いて基端側に開口したU字形をなし、前記操作部材が押し込まれた状態に於いて前記U字形の内周縁側の側辺が前記U字形の底部を越えて反転した形状をなすことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク用キャップ。
【請求項4】
前記シール部材は、前記易変形部の外周側の近傍部分において前記本体部に固定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンク用キャップ。
【請求項5】
前記本体部は、前記操作部材の外端上に延出した延出部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンク用キャップ。
【請求項6】
タンク用キャップにおいて、本体部内に画定された挿通孔の内周面と、前記挿通孔内で基端側から押し出し可能に支持された操作部材の外周面との間の環状空隙をシール部材によってシールするためのシール構造であって、
前記本体部は、把持部を有する基端部材と、前記基端部材に固定される先端部材とを備え、
前記操作部材は、外周に設けられた環状溝を備え、
前記シール部材は、前記操作部材を気密に嵌入するための嵌入孔を画定するとともに前記環状溝に嵌合する厚肉部が形成された内周縁と、該内周縁の外周側近傍の全周にわたって延在し、縦断面に於いて屈曲形状を呈する易変形部と、前記易変形部の外周側に延在して前記基端部材及び前記先端部材に挟持される固定部とを備えることを特徴とするシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク用キャップ及びそのシール構造に関する。特に、車両の燃料タンク用キャップ及びそのシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンク用キャップには、ロック機構を備えたものがある。例えば特許文献1には、燃料の盗難を防止するために、キーシリンダを中央に備えた施錠可能な燃料タンク用キャップが記載されている。また、ロック機構は、キャップの脱落防止のために設けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−87742
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キャップにロック解除用の操作部材を設けた場合、その操作部材とキャップ本体との間に空隙が生じるため、その空隙をシールすることが求められる。特にキャップに設けられた部材が移動可能である場合、空隙が生じやすいためシールの必要性が高くなるとともに、その部材の移動及び操作性を阻害しないようにシールすることが求められる。
【0005】
以上の背景に鑑み、本発明は、キャップ本体とキャップに設けられた移動可能な部材との間の空隙をシールするシール部材を備え、その移動可能な部材の操作性が良好なタンク用キャップ及びシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面は、タンク用キャップ(8)は、把持部を備えた本体部(10,14)と、前記本体部の先端側に配置され、タンク(2)側の開口形成部(88)に選択的に係合するロック部材(22)と、前記ロック部材を係合位置及び解除位置間で駆動するために、基端側から押し出し可能に前記本体部に支持された操作部材(18)と、前記操作部材を挿通させるべく前記本体部内に画定された挿通孔(24)の内周面と前記操作部材の外周面との間の環状空隙をシールするために前記本体部と前記操作部材との間に設けられたシール部材(12)とを備え、前記シール部材は、前記操作部材を気密に嵌入するように形成された嵌入孔(44)と、該嵌入孔の近傍の全周にわたって延在し、縦断面に於いて屈曲形状を呈する易変形部(80)とを有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、操作部材の押し出し移動及び戻り移動の際に、その移動方向に屈曲形状の易変形部が容易に変形することで、シール部材が操作部材の移動に追随する。そのため、本体部と操作部材との間の空隙をシールできるとともに、シール部材を変形させるために必要な力が小さくなり、操作部材の操作性が向上する。
【0008】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記シール部材の内周縁(76)は前記易変形部よりも厚肉に形成され、該内周縁は前記操作部材の外周に設けられた環状溝(68)に嵌合していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、シール部材と操作部材との密着性が高く、シール性が向上する。
【0010】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記操作部材は、初期状態で前記ロック部材を前記係合位置に維持し、押し込まれた状態で前記ロック部材を前記解除位置に変位させるように構成され、前記屈曲形状が、前記操作部材の前記初期状態に於いて基端側に開口したU字形をなし、前記操作部材が押し込まれた状態に於いて前記U字形の内周縁側の側辺が前記U字形の底部を越えて反転した形状をなすことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、操作部材の押し込み方向の移動範囲を大きくしても、シール部材が必要とする半径方向のスペースを小さくすることができる。また、操作部材を大きく押し込むことができるため、操作部材の操作性及び使用者の節度感を向上させることができる。
【0012】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記シール部材は、前記易変形部の外周側の近傍部分において前記本体部に固定されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、シール部材における屈曲部以外の部分の伸縮を抑え、屈曲部の変形によって操作部材の移動にシール部材を追随させることができる。そのため、シール部材と操作部材及び本体部との固定部分への負荷が減少し、シール性の低下を防止できる。
【0014】
本発明の他の側面は、上記構成において、前記本体部は、前記操作部材の外端上に延出した延出部を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、意図せず操作部材が押し込まれてロックが解除されることを防止できる。また、シール部材が屈曲部を有するため操作部材の押し込み幅を大きくすることができるが、そのような場合は、初期状態における操作部材の基端側への突出長さが大きくなっているため、横方向からの衝撃を受け易くなっている。そのような場合でも、本構成によれば、車両の転倒等によって生じる横方向からの衝撃から操作部材を守ることができる。
【0016】
本発明のある側面は、タンク用キャップ(8)において、本体部(10,14)内に画定された挿通孔(24)の内周面と、前記挿通孔内で基端側から押し出し可能に支持された操作部材(18)の外周面との間の環状空隙をシール部材(12)によってシールするためのシール構造であって、前記本体部は、把持部を有する基端部材(10)と、前記基端部材に固定される先端部材(14)とを備え、前記操作部材は、外周に設けられた環状溝(68)を備え、前記シール部材は、前記操作部材を気密に嵌入するための嵌入孔(44)を画定するとともに前記環状溝に嵌合する厚肉部が形成された内周縁(76)と、該内周縁の外周側近傍の全周にわたって延在し、縦断面に於いて屈曲形状を呈する易変形部(80)と、前記易変形部の外周側に延在して前記基端部材及び前記先端部材に挟持される固定部(78)とを備えることを特徴とするシール構造である。
【0017】
この構成によれば、操作部材の押し出し移動及び戻り移動の際に、その移動方向に屈曲形状の易変形部が容易に変形することで、シール部材が操作部材の移動に追随する。そのため、本体部と操作部材との間の空隙をシールできるとともに、シール部材を変形させるために必要な力が小さくなり、操作部材の操作性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本体部と操作部材との間の空隙をシールできるとともに、操作部材の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る燃料タンク用キャップが取り付けられた燃料タンクの斜視図
図2】実施形態に係る燃料タンク用キャップの斜視図
図3】実施形態に係る燃料タンク用キャップの分解斜視図
図4】実施形態に係る燃料タンク用キャップの縦断面図
図5】実施形態に係る燃料タンクの給油口形成部材の斜視図
図6】実施形態に係る燃料タンク用キャップの中央部分の拡大縦断面図
図7】実施形態に係る燃料タンク用キャップの外周部分の拡大縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、二輪車用の燃料タンク2の斜視図である。二輪車は、競技用又はオフロード用であってもよい。燃料タンク2は、二輪車の座席前方に配置される。燃料タンク2の上壁4には、上壁4を貫通する給油孔6が形成されている。給油孔6には、燃料タンク用のキャップ8が着脱可能に取り付けられる。キャップ8は、燃料タンク2に挿入された状態で回転されると、燃料タンク2に固定される。
【0022】
図2は、キャップ8の斜視図であり、図3は、キャップ8の分解斜視図であり、図4は、キャップ8の軸線方向を含む断面における断面図である。図2及び図4における図面の上方をキャップ8の基端側とし、図面の下方をキャップ8の先端側とし、先端側又は基端側に向かう方向を軸線方向として説明する。キャップ8は、基端部材10、シール部材12、先端部材14、リッド16、操作部材18、付勢部材20、ロック部材22を有する。
【0023】
基端部材10は、キャップ8の基端側を構成し、樹脂を素材とする。基端部材10は、キャップ8を燃料タンク2に対して取り付け又は取り外すときに使用者が把持できる把持部としての機能を有する。基端部材10は、軸線方向に貫通する挿通孔24が中央に形成された基端本体部26と、基端本体部26から軸線に対する径方向に突出し、略円環状を呈するフランジ28と、挿通孔24の周方向の一部を取り囲むように基端本体部26から基端側に向けて立設された縦壁30と、挿通孔24の基端側を跨ぐように縦壁30の突出端から延出した延出部32とを有する。
【0024】
フランジ28の外周側には、先端側に向けて突出した肩部34が円環状に設けられている。フランジ28の外周縁には、肩部34から更に先端側に延出した外周壁36が円環状に設けられている。縦壁30は、使用者がキャップ8を把持した際に回転させやすいように、周方向に対して凹凸が設けられている。縦壁30の突出端から延出する延出部32は、平板状を呈し、基端本体部26と略平行に配置される。基端本体部26の基端側の表面、縦壁30及び延出部32によって画定された空洞は、一方の半径方向が開放されているため、使用者が指を差し入れることができる。挿通孔24に対して縦壁30に取り囲まれた側では、基端本体部26及び延出部32に、同軸の貫通孔38,40が設けられている。また、基端本体部26の先端側の面からは、ねじ孔が形成された3つのボス42が先端側に向けて突出しており、3つのボス42は、挿通孔24と同心の1つの円周上に設けられ、互いに120°ずれた位置に配置されている。
【0025】
シール部材12は、円板形に形成され、その中央部に厚み方向に貫通する嵌入孔44を有する。シール部材12は、嵌入孔44が軸線方向に於いて挿通孔24に整合するように基端本体部26及びフランジ28の先端側の面に取り付けられる。シール部材12は、天然ゴムや合成ゴム等のフレキシブルな素材によって形成される。シール部材12には、フランジ28の貫通孔38と軸線方向に整合しかつ略同径の貫通孔46と、3つのボス42をそれぞれ嵌入させる3つの貫通孔48とが設けられている。シール部材12の内周側縁部及び外周側縁部はそれぞれ遊端となっており、詳細は後述する。
【0026】
先端部材14は、キャップ8の先端側を構成し、樹脂を素材とする。先端部材14は、先端側に設けられた底壁50と外周壁52とによって外輪郭の主要部が形成され、有底の略円筒形を呈する。その中心軸は、基端部材10の基端本体部26及びフランジ28の中心軸に一致し、その外径は、基端部材10のフランジ28の外径よりも小さい。先端部材14は、基端部材10とともにキャップ8の本体部を構成する。外周壁52の先端側は、底壁50よりもわずかに先端側に延出している。先端部材14は、基端部材10との間にシール部材12を挟持する。先端部材14には、底壁50から基端側に延出する円筒部54が形成されている。円筒部54は、両端が開口し、フランジ28の貫通孔38及び延出部32の貫通孔40と同軸に配置される。キャップ8の基端側に配置された円筒部54の端部は、遊端であって、貫通孔40の内部に配置される。円筒部54の遊端側には図示しないホースが接続される。燃料タンク2で気化した燃料は、円筒部54及び図示しないホースの内部を通って排出される。ホースは、例えばキャニスタに接続されている。また、先端部材14には、底壁50から基端側に延出する3つの円筒部(図示せず)が設けられている。これらの円筒部は、それぞれ両端が開口し、底壁50の先端側に向けて開口している。各円筒部には、基端部材10のボス42が挿入される。外周壁52には、基端側から先端側に向かって3つのスリット56が形成されており、3つのスリット56は互いに周方向に120°ずれた位置に配置される。
【0027】
略円板状を呈するリッド16は、樹脂を素材とする成形品であり、先端部材14の底壁50の先端側の面に取り付けられる。リッド16の外径は、先端部材14の外周壁52の内径と略一致し、先端部材14の外周壁52の先端側に嵌合する。リッド16の外周縁の一部には、軸線方向に沿って切欠溝58が形成されている。切欠溝58は、燃料タンク2内部と先端部材14の円筒部54の内部とを連通させる。また、リッド16には、基端側に向けて延出する3つのボス60が設けられており、3つのボス60には貫通孔が形成されている。3つのボス60は、先端部材14の図示しない円筒部に嵌入するように互いに周方向に120°ずれた位置に配置されている。したがって、先端部材14の図示しない円筒部には、基端側から基端部材10のボス42が挿入され、先端側からリッド16のボス60が挿入される。リッド16のボス60、先端部材14の図示しない円筒部及び基端部材10のボス42に、図示しないボルトが挿入され、基端部材10のボス42内のねじ孔にボルトが螺着することによって、基端部材10、先端部材14、及びリッド16は一体に締結される。
【0028】
操作部材18は、樹脂を素材とする柱状の部材であり、基端部材10の挿通孔24に軸線方向に摺動可能に受容される。操作部材18は、円筒状を呈する外周壁62と、基端側に設けられ、外周壁62の基端側を閉じる押込部64とを有する。押込部64は、中央部が基端側に突出した円錐形状を呈し、操作部材18を先端側に押し込む際に使用者によって押し込まれる部分である。外周壁62の外周面には、周方向に延在して円環状を呈する4つの突条66が設けられている(基端側から順に第1突条66a、第2突条66b、第3突条66c及び第4突条66dとする)。最も基端側に配置された第1突条66aは、操作部材18の軸線方向の略中央に設けられ、その外径は、基端部材10の挿通孔24の内径よりも大きい。第1突条66aと第2突条66bとの間で画定される第1環状溝68は、シール部材12の内周縁を嵌合する。また、第3突条66cと第4突条66dとによって第2環状溝70が画定される。第4突条66dは、操作部材18の先端を形成している。
【0029】
付勢部材20は、圧縮コイルばねであり、操作部材18を基端側に向けて付勢するように配置される。付勢部材20の先端は先端部材14の底壁50の基端側に当接し、付勢部材20の基端側は操作部材18の外周壁52の内部に挿入されている。使用者が操作部材18を押し込んでいない初期状態においては、付勢部材20の付勢力に抗して、基端部材10の挿通孔24の周縁が操作部材18の第1突条56aを係止し、操作部材18の基端側への移動が規制される。この初期状態において、操作部材18の押込部64と、基端部材10の延出部32とは離間している。
【0030】
ロック部材22は、バヨネット式でキャップ8を燃料タンク2に取り付けるための部材である。ロック部材22は、金属又は樹脂を素材として形成され、約240°に渡って円弧状に延在する基部72と、基部72から半径方向外側に向けて延出する3つのロック片74とを有する。3つのロック片74は、互いに120°ずれた位置に配置される。ロック部材22は、基部72が操作部材18の第2環状溝70に嵌合し、ロック片74の半径方向中間部が先端部材14の外周壁52のスリット56に受容されるように配置される。ロック片74の遊端は、外周壁52よりも半径方向外側に位置する。
【0031】
次にシール部材12の詳細な構造について説明する。
【0032】
シール部材12の内周縁側は、基端部材10の挿通孔24の内周面と操作部材18の外周面との間の環状空隙をシールする。シール部材12の内周縁には、基端側及び先端側に向かって肉厚が厚くなるようにビード状を呈する内周縁ビード76が設けられている。シール部材12の半径方向における中間部には、基端部材10及び先端部材14間に挟持される固定部78が設けられている。固定部78は、軸線を中心とした環状に形成されている。また、内周縁ビード76と固定部78との間には、軸線方向を含む縦断面に於いて屈曲形状を呈する易変形部80が設けられている。易変形部80の屈曲形状は周方向全体にわたって一様である。易変形部80は、シール部材12の内周縁近傍に設けられることが望ましい。易変形部80の屈曲形状は、操作部材18が押し込まれていない初期状態に於いて基端側に開口したU字形をなす。易変形部80の屈曲形状及び薄さは、操作部材18が軸線方向への変位に追随するとき、弾性による伸縮よりも形状の変化が優先するように設定されている。
【0033】
シール部材12の外周縁側は、燃料タンク2の給油孔6の外縁と基端部材10との間の空隙をシールする。シール部材12の外周縁側には、固定部78から半径方向外側に延出した延長部82と、延長部82の外周縁から延出して、半径方向外側に行くにしたがって先端側に傾くようなスカート状を呈する弾性部84とを有する。延長部82は、基端部材10のフランジ28に当接しているが、先端部材14には当接していない。延長部82に於いて弾性部84に隣接する部分は、弾性部84よりも厚肉になっている。弾性部84は、外力が加わらない状態では、基端部材10のフランジ28と先端部材14とのいずれにも当接していない。弾性部84の外周縁には、肉厚が厚くなるようにビード状を呈する外周縁ビード86が設けられている。外周縁ビード86は、縦断面に於いて略円形を呈する。弾性部84は、キャップ8を燃料タンク2に取り付けたときに、外周縁ビード86の基端側は、基端部材10の肩部34と外周壁36とで画定される空間に収容される。このとき、外周縁ビード86が肩部34に圧接されるように構成してもよい。
【0034】
図5は、燃料タンク2の給油孔形成部材88の斜視図である。給油孔形成部材88は、金属又は樹脂を素材とする部材であって、円環状を呈する。給油孔形成部材88には、中央に軸線方向に貫通した開口からなる給油孔6が形成されている。給油孔6を画成する開口縁部90には、径方向外方に向けて給油孔6を拡張する複数の拡張部92が形成されている。各拡張部92は、軸線を中心とした周方向に延在している。本実施形態では、拡張部92は、3つのロック片74に対応するように3つ形成され、周方向に互いに等間隔に設けられている。
【0035】
開口縁部90のうち、各拡張部92の間に位置する部分のそれぞれには、燃料タンク2の内方に向けて突出した係止壁94が形成されている。各係止壁94は、開口縁部90に沿って周方向に延在している。係止壁94の突出端は、平坦部96と、傾斜部98とを有する。燃料タンク2外から軸線方向に沿って見た状態を基準として、軸線を中心とした回転方向を時計回り方向、反時計回り方向と規定すると、傾斜部98は各係止壁94の反時計回り方向側の端部に設けられている。傾斜部98は、時計回り方向に進むにつれて、係止壁94の燃料タンク内側への突出長さが長くなるように傾斜している。平坦部96は、傾斜部98を除く部分に形成され、軸線と直交する平面と平行に形成されている。平坦部96には、係止壁94の基端側に向けて凹設された係止溝100が形成されている。
【0036】
燃料タンク2の外側表面の一部を構成する開口縁部90の外周側の表面は、キャップ8のシール部材12の外周縁ビード86が密着するように、滑らかな平面になっている。
【0037】
次に、本実施形態の作用について説明する
【0038】
燃料タンク2を閉じるときは、まず、ロック部材22のロック片74の遊端側を燃料タンク2の拡張部92に整合させて、キャップ8の先端側を燃料タンク2の給油孔6に挿入する。その後、キャップ8を時計回りに回転させると、ロック片74の遊端側が傾斜部98を摺動して先端側に変位するため、ロック片74が弾性変形するとともに基部72及び操作部材18が先端側に移動する。さらにキャップ8を時計回りに回転させると、ロック片74が係止溝100に至り、ロック片74は弾性復元力によって遊端側がキャップ8の基端側に変位するように変形し、基部72及び操作部材18は付勢部材20の付勢力により第1突条66aが基端部材10に突き当たるまで基端側に戻り、ロック片74は係止溝100に受容される。このときロック片74は係止溝100の両側辺によって周方向への移動を規制されるため、キャップ8は閉位置でロックされる。
【0039】
燃料タンク2を開くときは、まず、フランジ28、縦壁30及び延出部32によって画定された空洞に、指を差し入れて操作部材18の押込部64を先端側に押し込む。第4突条66dは押し込みに対するストッパとして機能し、最大押し込み幅は、第4突条66dが先端部材14に係止される位置で規定される。操作部材18が押し込まれると、ロック部材22は、基部72が操作部材18に固定されているため、スリット56に沿って先端側に移動する。そのため、ロック片74は係止溝100から離脱し、キャップ8のロックが解除される。このように、ロック部材22をロック片74が係止溝100に係止された係合位置からロックが解除された解除位置に移動させた状態で、キャップ8を反時計回りに回転させると、キャップ8を取り外すことができる。
【0040】
図6に示すように、シール部材12は、挿通孔24の内周面と操作部材18の外周面との間の環状空隙をシールする。シール部材12の内周縁側の易変形部80は、操作部材18の押し込み操作に伴い変形する。操作部材18が押し込まれていない初期状態に於いては、易変形部80はU字形を呈する。操作部材18が押し込まれた状態に於いては、易変形部80は、U字形の内周縁側の側辺がU字形の底部を越えて反転したクランク形状をなす。易変形部80は、容易に変形可能な形状からなるため、操作部材18の軸線方向の移動に容易に追随でき、操作部材18の操作性を阻害しない。また、U字形状とクランク形状との間で変形するため、半径方向のスペースを小さくしても操作部材18の移動範囲を大きく設定することができ、使用者は、押し込み操作を良好に実感できる。また、シール部材12の内周縁はビード状になっているため、内周縁ビード76を操作部材18の第1環状溝68に嵌合させるだけで、シール部材12と操作部材18とを密着させることができるため、組み付け性、シール性及びシール部材12の操作部材18への追随性を向上させることができる。
【0041】
図7に示すように、キャップ8を燃料タンク2に取り付けたとき、外周縁ビード86が弾性部84の弾性力によって開口縁部90に押し付けられるため、キャップ8のフランジ28と燃料タンク2の開口縁部90との間がシールされる。シール部材12の外周縁側は、キャップ8を燃料タンク2に取り付けたときに、外周縁ビード86が半径方向外側に移動するように給油孔6の外縁を摺動する。そのため、給油孔6の外縁に付着した塵や埃、砂等のごみを半径方向外側に押し出し、ごみが燃料タンク2に侵入することを防止する。このとき、外周縁がビード状をなすため、ごみからの反力によって外周縁が捲れてシール性が低下することを防止できる。また、弾性部84の外周縁ビード以外の部分が延長部82の弾性部84との隣接部分よりも薄肉であるため、キャップ8取り付け時のシール部材12の外周縁側の曲げの基点が、延長部82と弾性部84との境界位置となる。そして、シール部材12の外周縁側の弾性部84がスカート状を呈することによって、給油孔6の外縁との接触点である外周縁ビード86が曲げの基点よりも半径方向外側に位置することとなり、外周縁ビード86はキャップ8の取り付け時に半径方向外側に拡がりやすくなる。また、スカート状の弾性部84は、シール部材12を吸盤として機能させる。外周縁が厚肉の外周縁ビード86であることによって、キャップ8の回転に伴う外周縁部の捲れや捩れを防止でき、確実にシールすることができる。外周縁ビード86が縦断面において円形を呈するため、給油孔6との接触面積が小さくなり、キャップ8取り付け時の摩擦抵抗が小さくなる。キャップ8を燃料タンク2に取り付けたとき、外周縁ビード86は、基端部材10の肩部34によって燃料タンク2の給油孔6の外縁に押し付けられるため、シール性を確保できる。このとき、基端部材10の外周壁36が肩部34よりも先端側に突出しているため、シール部材12が概ね外部から遮蔽され外観が向上する。
【0042】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、シール部材の易変形部は、押し込み状態に於いて先端側に開口したU字形とし、初期状態でU字形の内周縁側の側辺がU字形の底部を越えて反転したクランク形状としてもよい。また、シール部材の内周縁及び外周縁の形状は、縦断面視で円形のビード形状ではなく、その他の肉厚形状としてもよい。キャップの取り付け形式は、バヨネット式に代えて、スナップイン式又はラッチ式としてもよい。また、上記実施形態の給油孔外縁におけるシール構造は、ねじ溝によって螺合する燃料タンク及びキャップに適用することができる。また、先端部材は必ずしも基端部材よりも先端側に配置される必要はない。例えば、給油孔が燃料タンクの上壁から上方に突出するように設けられている場合、先端部材(給油孔に挿入される部材)は基端部材(使用者によって把持される部材)の内周側に収容されていてもよい。また、上記実施形態のキャップは、燃料タンク以外のタンクに適用されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
2...燃料タンク、6...給油孔、8...キャップ、10...基端部材、12...シール部材、14...先端部材、18...操作部材、22...ロック部材、24...挿通孔、28...フランジ、32...延出部、68...第1環状溝、70...第2環状溝、76...内周縁ビード、78...固定部、80...易変形部、88...給油孔形成部材、90...開口縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7