(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フッ素ゴムは耐熱性、耐薬品性、非粘着性、低摩擦特性などを有している。特にパーフルオロ重合体を主成分とするフッ素ゴムは半導体製造装置用オーリングに多用されている(特許文献1、2)。
一方、成形された含フッ素重合体を、酸素を含むガスおよび水を存在させた改質処理領域を含む混練機内で、溶融混練することを特徴とする再生含フッ素重合体の製造方法が知られている(特許文献3)。
しかしながら、上記再生含フッ素重合体の製造方法は、特定の混練機を必要としており、パーフルオロ系フッ素ゴムを工業的に安価に利用できるものではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に使用できるパーフルオロ重合体はフルオロオレフィンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとからそれぞれ誘導される繰り返し単位を含有する。
フルオロオレフィンは以下の式(I)で表される。
【0009】
【化1】
ここで、R
1、R
2、R
3またはR
4は、フッ素、フッ化アルキル基、フッ化アルコキシル基の中から選ばれ、少なくともフッ素またはフッ化アルキル基の一つを含む。これらのなかでR
1、R
2、R
3およびR
4が全てフッ素であるテトラフルオロエチレンが封止材としての物性を維持するのに好ましい。
【0010】
パーフルオロアルキルビニルエーテルは以下の式(II)で表される。
【化2】
ここで、R
5は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、アルキル基、パーフルオロアルキルエーテル基、シアノパーフルオロアルキル基である。
なお、フルオロオレフィンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの重合比は、フルオロオレフィンが50〜95モル%、パーフルオロアルキルビニルエーテルが5〜50モル%であることが好ましい。また、ゴム弾性体であればよい。
【0011】
パーフルオロ重合体を構成する具体的なモノマー単位の組み合わせを、以下に例示する。
【化3】
これらの中で、架橋部分として、分子末端に臭素原子を有する構造である−C(またはSi)−Br、または分子末端にヨウ素原子を有する構造である−C(またはSi)−Iの構造を単独または併用して所定量含み、いわゆる過酸化物架橋ができる共重合体であることが好ましい。また、他のキュアーサイトの導入であってもよい。特に、ビニル基またはアリール基を2個以上有する多官能化合物で架橋できるパーフルオロゴムであることが過酸化物架橋ができるとの理由で好ましい。
【0012】
パーフルオロ重合体と併用できるフッ素ゴムを例示すれば、−CH
2CF
2−単位を5〜80モル%含むフッ素系多元共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン−エチレン共重合体、フルオロアルキル基置換シリコーン重合体、グラフトまたはブロックセグメント含有熱可塑性フッ素系重合体、−CF(CF
3)CF
2O−で示される繰返し単位を有する重合体、−CF
2CF
2CF
2O−で示される繰返し単位を有する重合体、−CF
2CF
2−および−CH(OR
1)CH
2−からなるセグメントを有するフッ素系重合体(R
1は、炭素数1〜4のアルキル、ハロゲン化アルキル基を表す。)、−CF
2CF
2−および−CH(CH
3)CH
2−からなる、−CH
2CH
2−および−CF
2C(CF
3)F−からなる多元共重合体等を例示することができる。これらフッ素系重合体は、単独であるいは混合物としてパーフルオロ重合体と併用できる。
【0013】
本発明のフッ素ゴムとしては、パーフルオロオレフィンとパーフルオロメチルビニルエーテルとヨウ素または臭素含有ビニルモノマーとの共重合体であるパーフルオロ重合体100質量%であることが好ましい。
すなわち、フッ素ゴムは、パーフルオロオレフィンとパーフルオロメチルビニルエーテルとヨウ素または臭素含有ビニルモノマーとの共重合体のみから構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明に使用できる残パーフルオロ重合体とは、上記パーフルオロ重合体からなるフッ素ゴムを成形加工するときに、製品とならないで排出されるパーフルオロ重合体である。フッ素ゴムを封止材に成形加工する加工工程においては、原料となる未架橋の生パーフルオロ重合体に架橋剤、充填剤、可塑剤、補強剤、老化防止剤、着色剤等のゴム配合剤を混練して所定の条件で架橋した成形体を後加工して最終製品としている。たとえば、金型を用いて架橋成形する場合には、金型の衝合面から排出される半架橋のパーフルオロ重合体組成物屑、製品の表面に発生するバリの部分を後加工により削除したときに発生する架橋パーフルオロ重合体組成物のバリ屑等がある。本発明においては、各加工の段階で製品とならないで発生する残渣のパーフルオロ重合体のいずれも使用できる。
【0015】
成形加工工程で発生する架橋または半架橋の残パーフルオロ重合体を熱処理することで架橋点を分解したものが処理パーフルオロ重合体である。
熱処理条件は、通常の架橋条件をこえる温度、時間であり、上記架橋または半架橋パーフルオロ重合体が少なくとも架橋点が分解を開始する温度、時間以上で熱処理することが好ましい。熱処理条件としては、290〜310℃、70〜100時間が好ましい。この条件で熱処理することにより、架橋パーフルオロ重合体組成物であっても架橋点が解離する。なお、熱処理は常圧下で行なうことが好ましい。
熱処理温度が310℃をこえるとパーフルオロ重合体主鎖の熱分解が始まり、熱処理温度が290℃未満であると効率的に架橋点の分解ができない。また、架橋点分解の有無は、弾性変形する架橋パーフルオロ重合体組成物が架橋点解離により、弾性を失い塑性変形することで判断できる。具体的には、架橋点分解後のパーフルオロ重合体組成物による成形体の両端部を引張り塑性変形できるものが処理パーフルオロ重合体である。
【0016】
本発明のフッ素ゴムは、上記未架橋の生パーフルオロ重合体100質量部に対して、上記処理パーフルオロ重合体を40質量部未満、好ましくは30質量部以下配合する。40質量部以上配合すると架橋後の封止材の圧縮永久歪などの特性が低下する。
【0017】
本発明の封止材用組成物は、未架橋の生パーフルオロ重合体100質量部に対して、上記処理パーフルオロ重合体を40質量部未満配合したフッ素ゴムと架橋剤とを配合することで得られる。
架橋剤としては、熱や酸化還元系の存在で容易にパーオキシラジカルを生成する有機過酸化物が好ましい。また、ジクミルパーオキサイドやベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物などを架橋助剤とし、トリアリルイソシアヌレートなどの多価アリール化合物や多価ビニル化合物を架橋剤として用いて架橋することもでき、この方法は特に封止材の硬さが要求される場合に好ましい架橋剤である。
【0018】
有機過酸化物としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどを例示できる。
【0019】
パーオキサイド架橋系の場合、架橋促進剤を使用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパンギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェートなどが挙げられる。配合量は、フッ素ゴム100質量部に対して、架橋剤が0.05〜10質量部、好ましくは1.0〜5質量部であり、架橋促進剤が0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0020】
多価アリール化合物を用いて架橋する場合、多価アリール化合物としては、ジアリール、トリアリール、テトラアリール基を、多価ビニル化合物としては、ジビニル、トリビニル、テトラビニル基をそれぞれ含む化合物であり、また、水素原子をフッ素で置換されているフッ素置換化合物であってもよい。これら多価アリール化合物あるいは多価ビニル化合物は単独または併用することができる。これらのなかで特にハロゲン置換して耐熱性を向上させるものが好ましい。多価アリール化合物あるいは多価ビニル化合物を配合することにより、熱および過酸化物、またはポリマーの分岐オレフィン部の付加反応による耐熱架橋が容易になる。配合量は、フッ素ゴム100質量部に対して、多価アリール化合物が1〜5質量部、好ましくは2〜4質量部である。
【0021】
本発明の封止材用組成物は充填剤を配合することができる。充填剤としては、カーボンブラック、酸化ケイ素、酸化チタン、アルミナなどの無機充填剤、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリイミド粉末などの有機充填剤などが挙げられる。ポリテトラフルオロエチレン粉末は、デュポン社商品名のテフロンや類似構造のフッ素樹脂を粉砕した微粉末であり、その平均粒子径は0.2〜50μmが好ましい。
充填剤の配合量はフッ素ゴム100質量部に対し100質量部以下、好ましくは1〜50質量部である。
【0022】
封止材用組成物は、上記フッ素ゴム100質量部に対して、充填剤0〜40質量部、好ましくは0〜30質量部配合する。
充填剤が40質量部をこえるとパーフルオロ重合体との混練りが困難になる。混練方法としては、たとえばロール練り、ニーダー練りなどが採用でき、成形方法も圧縮成形法、射出成形法、押出成形法、トランスファー成形法といった成形法が採用できる。
【0023】
成形時の架橋条件としては、一次架橋が150〜170℃の架橋温度で5〜30分の架橋時間、二次架橋が170〜250℃の架橋温度で4〜48時間の架橋時間が好適である。特に省エネルギーの観点では、170〜200℃の架橋温度で2〜5時間が好ましい。
【0024】
本発明の封止材用組成物はドライエッチング装置に使用されるオーリングに適用できる。ドライエッチング装置としては、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、反応性イオンビームエッチング装置、スパッタエッチング装置、イオンビームエッチング装置などに好適に使用することができる。
【0025】
本発明の封止材は、上記封止材用組成物を成形してなり、特に、プラズマエッチング装置、イオンエッチング装置などに使用することのできるゲートバルブシールおよびプラズマの流路管の継ぎ目を封止するオーリング等の周辺シールに好適に使用することができる。また、その形状としては、オーリング状、角リング状、異径リング状、シールパッキン状、リップシール状の形状を挙げることができる。
【実施例】
【0026】
実施例1
オーリングを製造するときの過程で発生する半架橋および架橋パーフルオロ重合体組成物である残パーフルオロ重合体を300℃で70時間加熱処理して処理パーフルオロ重合体を得た。この処理パーフルオロ重合体は、一見固体状態であるが、手で引張る等のストレスを与えると塑性変形し、高粘度流体の状態であった。
フルオロオレフィンとパーフルオロメチルビニルエーテルとから誘導された繰り返し単位を含有し、過酸化物パーヘキサ2.5Bおよびトリアリルイソシアヌレートが配合されている過酸化物架橋できるパーフルオロ重合体として、ダイキン工業社製商品名 GA−55(表1において、パーフルオロ重合体で表す)100質量部に、上記処理パーフルオロ重合体30質量部とMTカーボン粉末15質量部とをそれぞれ秤量し、ゴムロールミルを用いて混合した。このパーフルオロ重合体組成物を架橋金型に入れ、160℃、10分間の一次架橋および180℃、4時間の二次架橋を施して、内径が25.7mm、外径が32.7mm、太さが3.5mmのオーリング(JIS B2401 P−26)を作製した。また、永久圧縮歪測定用として大型試験片(JIS K6262)を作製した。
【0027】
得られたオーリングの初期特性および200℃の温度にて70時間熱劣化させた後の特性を以下の方法で測定した。
ゴム硬度はアスカー微小硬度計にて25℃で測定した。初期値および熱劣化後の引張強さ、伸び、伸び100%時の引張り応力はJIS B2401の方法により測定した。熱劣化後のゴム硬度変化は(熱劣化後の値−初期値)であり、引張強さ変化率および伸び変化率は[((熱劣化後の値−初期値)/初期値)×100]である。比重はJIS K6268の方法により測定した。圧縮永久ひずみは[((初期厚さ−試験後の厚さ)/(初期厚さ−スペーサー厚さ))×100]である。測定結果を表1に示す。
【0028】
比較例1
実施例1において、処理パーフルオロ重合体30質量部およびMTカーボン粉末15質量部を配合しない以外は、実施例1と同様な方法でオーリングP−26および永久圧縮歪測定用試料を作製した。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0029】
比較例2
実施例1において、処理パーフルオロ重合体30質量部を配合しない以外は、実施例1と同様な方法でオーリングP−26および永久圧縮歪測定用試料を作製した。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0030】
比較例3
実施例1において、処理パーフルオロ重合体40質量部およびMTカーボン粉末25質量部を配合する以外は、実施例1と同様な方法でオーリングP−26および永久圧縮歪測定用試料を作製した。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0031】
【表1】