特許第6134296号(P6134296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6134296車両用ペダル装置の軸受部構造およびブッシュ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134296
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】車両用ペダル装置の軸受部構造およびブッシュ
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/44 20080401AFI20170515BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G05G1/44
   F16C11/04 Q
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-151207(P2014-151207)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-24791(P2016-24791A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】藤原 昇
【審査官】 岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−338519(JP,A)
【文献】 実開平03−013518(JP,U)
【文献】 特開2007−253758(JP,A)
【文献】 実開昭63−053921(JP,U)
【文献】 米国特許第5584582(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/44
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒外周面を有する支持部材がペダルブラケットに略水平に一体的に配設され、該支持部材の外周側に、円筒部を有する一対の樹脂製のブッシュを介して回動部材のボスが軸心まわりに回動可能に配設される車両用ペダル装置の軸受部構造において、
前記ブッシュは、前記円筒部が前記支持部材の外周面と前記ボスの内周面との間で径方向に圧縮変形させられる状態で組み付けられるもので、
該ブッシュの前記円筒部は、周方向において径寸法が周期的に変化する凹凸形状を成しており、該周方向の断面形状が異なる2種類の第1山および第2山が交互に多数設けられているとともに、
該ブッシュの中心線まわりにおける前記第1山の角度範囲θ1は前記第2山の角度範囲θ2よりも大きく、該第1山は該第2山よりも緩やかな傾斜で外周側へ突き出しているとともに、該第1山の頂点の外径寸法R1は該第2山の頂点の外径寸法R2よりも大きく、前記円筒部が前記支持部材の外周面と前記ボスの内周面との間で径方向に圧縮変形させられる際に、該第1山は周方向へ拡張されるように撓み変形させられ、該第2山は周方向に圧縮されるように撓み変形させられる
ことを特徴とする車両用ペダル装置の軸受部構造。
【請求項2】
前記第1山の頂点の外径寸法R1は、自然状態において前記ボスの内周面の径寸法よりも大きくて該内周面に密着させられる一方、前記第2山の頂点の外径寸法R2は、自然状態において該ボスの内周面の径寸法よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ペダル装置の軸受部構造。
【請求項3】
前記円筒部の凹凸形状は、前記第1山および前記第2山がそれぞれ外周側へ突き出すように湾曲している凸湾曲形状で、該第1山と該第2山との間の谷部が内周側へ凹むように湾曲している凹湾曲形状であり、全体として波形状を成している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ペダル装置の軸受部構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用ペダル装置の軸受部構造に用いられるブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用ペダル装置の軸受部構造に係り、特に、支持部材とボスとの間に配設されるブッシュの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒外周面を有する支持部材がペダルブラケットに略水平に一体的に配設され、その支持部材の外周側に、円筒部を有する一対の樹脂製のブッシュを介して回動部材のボスが軸心まわりに回動可能に配設されている車両用ペダル装置の軸受部構造が知られている。このような軸受部構造においては、一般に構成部品の加工バラツキによる寸法誤差等を考慮して径方向および軸方向に所定の隙間(遊び)が設けられるため、ペダル踏込み操作時等に支持部材に対して回動部材(車両用ペダルなど)のボスががたついたり傾動したりして異音が発生することがある。これに対し、特許文献1では、円筒部の一端に設けられた鍔部に突起が設けられ、がたつきや異音の発生を抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−338519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように鍔部に突起を設けても、径方向の遊びによって依然としてボスががたついたり傾動したりして異音が発生する可能性があり、未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、支持部材とボスとの間にブッシュが配設される車両用ペダル装置の軸受部構造において、各部の隙間に起因するがたつきや異音の発生が抑制されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、円筒外周面を有する支持部材がペダルブラケットに略水平に一体的に配設され、その支持部材の外周側に、円筒部を有する一対の樹脂製のブッシュを介して回動部材のボスが軸心まわりに回動可能に配設される車両用ペダル装置の軸受部構造において、(a) 前記ブッシュは、前記円筒部が前記支持部材の外周面と前記ボスの内周面との間で径方向に圧縮変形させられる状態で組み付けられるもので、(b) そのブッシュの前記円筒部は、周方向において径寸法が周期的に変化する凹凸形状を成しており、その周方向の断面形状が異なる2種類の第1山および第2山が交互に多数設けられているとともに、(c) そのブッシュの中心線まわりにおける前記第1山の角度範囲θ1は前記第2山の角度範囲θ2よりも大きく、その第1山はその第2山よりも緩やかな傾斜で外周側へ突き出しているとともに、その第1山の頂点の外径寸法R1はその第2山の頂点の外径寸法R2よりも大きく、前記円筒部が前記支持部材の外周面と前記ボスの内周面との間で径方向に圧縮変形させられる際に、その第1山は周方向へ拡張されるように撓み変形させられ、その第2山は周方向に圧縮されるように撓み変形させられることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の車両用ペダル装置の軸受部構造において、前記第1山の頂点の外径寸法R1は、自然状態において前記ボスの内周面の径寸法よりも大きくてその内周面に密着させられる一方、前記第2山の頂点の外径寸法R2は、自然状態においてそのボスの内周面の径寸法よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両用ペダル装置の軸受部構造において、前記円筒部の凹凸形状は、前記第1山および前記第2山がそれぞれ外周側へ突き出すように湾曲している凸湾曲形状で、それ等の第1山と第2山との間の谷部が内周側へ凹むように湾曲している凹湾曲形状であり、全体として波形状を成していることを特徴とする。
【0009】
第4発明はブッシュに関するもので、第1発明〜第3発明の何れかの車両用ペダル装置の軸受部構造に用いられるブッシュである。
【発明の効果】
【0010】
このような車両用ペダル装置の軸受部構造においては、ブッシュの円筒部が周方向において凹凸形状を成していて、断面形状が異なる2種類の第1山および第2山が交互に多数設けられており、支持部材の外周面とボスの内周面との間で径方向に圧縮変形させられる際に、第1山は周方向へ拡張されるように撓み変形させられ、第2山は周方向に圧縮されるように撓み変形させられる。したがって、支持部材の外周面とボスの内周面との間のクリアランスのばらつきや、ペダル操作時のクリアランスの変化が、第1山の周方向の拡張および第2山の周方向の圧縮によって吸収されるとともに、それ等の第1山および第2山の撓み変形による反力(弾性力)でボスの支持剛性が確保され、回動部材のがたつきや傾動、異音の発生が抑制される。
【0011】
第2発明では、第1山の頂点の外径寸法R1がボスの内周面の径寸法よりも大きくてその内周面に密着させられる一方、第2山の頂点の外径寸法R2はボスの内周面の径寸法よりも小さいため、第2山を周方向へ圧縮させた際の径方向の拡張が許容され、その第2山の周方向の圧縮および第1山の周方向の拡張によりクリアランスのばらつきや変化を適切に吸収することができる。
【0012】
第3発明では、上記第1山および第2山を有する円筒部の凹凸形状が、凸湾曲形状および凹湾曲形状が連なる波形状であるため、第1山および第2山が三角山形状で谷部がV字形状の折れ線状の凹凸形状に比較して応力集中が抑制され、高い耐久性が得られる。
【0013】
第4発明は、第1発明〜第3発明のブッシュに関するもので、実質的に第1発明〜第3発明と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明が適用されたブレーキペダル装置の概略構成を説明する左側面図である。
図2図1におけるII−II矢視部分、すなわちブレーキペダルの軸受部分の拡大断面図である。
図3図1の実施例に用いられている一対の鍔付きブッシュの一方を単独で示す3面図である。
図4図3の(c) に示す鍔付きブッシュの一部を拡大して示した図で、第1山および第2山を有する波形状の円筒部を説明する正面図である。
図5図2におけるV−V矢視部分の拡大断面図である。
図6図5のボスに下向きの荷重Fが加えられた場合の円筒部の波形状の変形状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ブレーキペダルやクラッチペダル、アクセルペダル等の車両用ペダルの支持部分の軸受部構造に好適に適用されるが、中間レバーを介してペダル操作力を出力する車両用ペダル装置においては、その中間レバーの軸受部構造に適用することもできる。これ等の車両用ペダルおよび中間レバーは、ボスが一体的に設けられた回動部材に相当する。ボスは、車両用ペダルや中間レバーの軸受部分に一体的に固設された円筒形状の部材である。
【0016】
ペダルブラケットは、例えば互いに略平行な一対のサポートプレートを備えて構成され、支持部材の両端部はその一対のサポートプレートに一体的に固設される。一対のサポートプレートは、例えば断面がU字形状を成すペダルブラケットの互いに略平行な一対の側板にて構成されるが、別体に構成されても良い。支持部材は、例えば円筒形状のカラーで、その軸方向の両端が一対のサポートプレートの内側面に略垂直に当接する状態で配設され、そのカラーの内部を挿通させられた締結ボルト等によって一対のサポートプレートに一体的に固定されるが、段差部がサポートプレートに当接させられて、一対のサポートプレートの間隔を規定する段付き円柱形状の支持部材(段付きボルトなど)を採用することもできる。
【0017】
ブッシュは、少なくとも円筒部を有して構成され、その円筒部の一端に略垂直に外周側へ延び出す円板状の鍔部が設けられた鍔付きブッシュが好適に用いられ、所定の弾性を有する樹脂材料にて一体に構成されるとともに、その鍔部がボスの端部に略当接するまで円筒部がボスの貫通穴内に嵌合されるように組み付けられる。このブッシュは、例えば円筒部の締まり嵌合によりボスに圧入されて一体的に固設されるが、ボスに対して相対回動可能に配設されるものでも良い。
【0018】
上記ブッシュの円筒部は、支持部材の外周面とボスの内周面との間で径方向に圧縮変形させられるように、自然状態において円筒部の最大外径寸法、具体的には第1山の頂点の外径寸法R1がボスの内周面の径寸法よりも大きくなり、円筒部の最小内径寸法、具体的には第1山と第2山との間の谷部の内径寸法が支持部材の外周面の径寸法よりも小さくなるように、それ等の径寸法のばらつきを考慮して定められる。円筒部の肉厚は、中心線まわりの全周に亘って一定であっても良いが、第2山の肉厚を第1山に比較して薄くすることにより、第2山の傾斜が急であることと相まって、周方向へ圧縮される際に一層撓み変形し易くなる。すなわち、第1山および第2山の撓み変形によりクリアランスのばらつきや変化を吸収しつつ所定の支持剛性が得られるように、第2山部分の肉厚を変更して調整(チューニング)することができる。
【0019】
第2発明では、第2山の頂点の外径寸法R2が、自然状態においてそのボスの内周面の径寸法よりも小さく、その内周面との間に隙間が設けられることにより、第2山が周方向へ圧縮される際に径方向へ拡張することが許容されるようになっているが、第1発明の実施に際しては第2山の頂点の外径寸法R2が自然状態においてボスの内周面の径寸法と略同じであっても良い。その場合は、第2山が周方向へ圧縮される際の変形抵抗が大きくなるものの、その第2山の周方向の圧縮および第1山の周方向の拡張によりクリアランスのばらつきや変化を吸収することができる。すなわち、第1山および第2山の撓み変形によりクリアランスのばらつきや変化を吸収しつつ所定の支持剛性が得られるように、第2山の頂点の外径寸法R2を変更して調整することができる。
【0020】
第3発明では、円筒部の凹凸形状が波形状を成しているが、他の発明の実施に際しては、例えば第1山および第2山が何れも三角山形状で谷部がV字形状の折れ線状の凹凸形状であっても良い。第1山および第2山の一方は三角山形状で他方は凸湾曲形状であるなど、種々の態様が可能である。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0022】
図1は、本発明が適用された車両の常用ブレーキ用のブレーキペダル装置10を示す左側面図で、図2図1におけるII−II矢視部分の拡大断面図である。このブレーキペダル装置10はブレーキペダル12を備えており、そのブレーキペダル12は、上端部において略水平な支持軸心S1まわりに回動可能にペダルブラケット14によって支持されているとともに、ブレーキペダル12の下端部にはペダルシート等の踏部16が一体的に取り付けられている。そして、その踏部16が運転者によって踏込み操作されると、ブレーキペダル12は図1において支持軸心S1の右回りに回動させられ、連結リンク17および中間レバー18を介して図示しないプッシュロッド等の出力部材に踏込み操作力が伝達され、その踏込み操作力に応じてブレーキ油圧が発生させられる。中間レバー18は、支持軸心S1と略平行な支持軸心S2まわりに回動可能にペダルブラケット14に配設されている。このブレーキペダル装置10は車両用ペダル装置に相当し、ブレーキペダル12は車両用ペダルで回動部材に相当する。
【0023】
上記ペダルブラケット14は、図1の上方から見た平面視において、車両前側で回曲させられたU字形状を成していて、所定の間隔を隔てて設けられた互いに略平行な側板状の一対のサポートプレート20、22を一体に備えている。ブレーキペダル12は、その一対のサポートプレート20、22の間で支持されている。一対のサポートプレート20、22には、支持軸心S1と略一致する位置にそれぞれ挿通穴24が設けられているとともに、それ等のサポートプレート20、22の間には円筒形状のカラー26が配設され、サポートプレート20、22の相対向する内側面に略垂直に当接させられている。そして、締結ボルト28が、一対のサポートプレート20、22の挿通穴24およびカラー26の貫通穴内を挿通させられ、サポートプレート20から突き出す先端部にナット30が螺合されることにより、一対のサポートプレート20、22の間でカラー26が軸方向に挟圧された状態で一体的に固定されている。カラー26は、円筒外周面を有する支持部材に相当し、そのカラー26の軸心が支持軸心S1で、挿通穴24の中心線と略一致する。
【0024】
一方、ブレーキペダル12の上端部には、上記カラー26よりも大径の円筒形状のボス40が溶接等により一体的に固設されており、そのボス40の軸方向の両端部には、それぞれ鍔付きブッシュ42、44が配設されている。鍔付きブッシュ42、44は同一形状で、それぞれ合成樹脂材料にて一体に構成されており、円筒形状の円筒部46を有するとともに、その円筒部46の一端部には略垂直に外周側へ延び出す大径の円板形状の鍔部48が一体に設けられている。そして、円筒部46がボス40の貫通穴内に圧入されることにより、一対の鍔付きブッシュ42、44がそれぞれボス40の両端部に一体的に組み付けられ、その円筒部46の内側に前記カラー26が相対回転可能に挿通させられている。これにより、一対の鍔付きブッシュ42、44を介してボス40が支持軸心S1まわりに回動可能にカラー26によって支持されるとともに、一対の鍔付きブッシュ42、44の鍔部48を介して一対のサポートプレート20、22によりボス40の軸方向位置が位置決めされる。
【0025】
図3は、図2の左側に配置された一方の鍔付きブッシュ42を単独で示す3面図で、(a) は鍔部48側から見た背面図、(b) は中心線Oの直角方向から見た側面図、(c) は(b) の右方向すなわち円筒部46側から見た正面図である。また、図4図3の(c) に示す鍔付きブッシュ42の一部を拡大して示した正面図で、組付前の自然状態の形状を示した図であり、図5図2におけるV−V矢視部分の拡大断面図である。これ等の図から明らかなように、鍔付きブッシュ42の円筒部46は、周方向において径寸法が周期的に変化する凹凸形状を成しており、その周方向の断面形状が異なる2種類の第1山50および第2山52が交互に多数設けられている。第1山50および第2山52は、それぞれ外周側へ突き出すように湾曲している凸湾曲形状を成している一方、それ等の第1山50と第2山52との間の谷部54は、内周側へ凹むように湾曲している凹湾曲形状を成しており、円筒部46の凹凸形状は全体として径寸法が滑らかに変化する波形状を成している。
【0026】
上記第1山50の中心線Oまわりにおける角度範囲θ1は、第2山52の角度範囲θ2よりも大きく、第1山50は第2山52よりも緩やかな傾斜で外周側へ突き出しているとともに、第1山50の頂点の外径寸法R1は、第2山52の頂点の外径寸法R2よりも大きい。また、円筒部46が、カラー26の外周面56とボス40の内周面58との間で径方向に圧縮変形させられるように、円筒部46の最大外径寸法すなわち第1山50の頂点の外径寸法R1は、自然状態においてボス40の内周面58の径寸法よりも大きくなり、円筒部46の最小内径寸法すなわち谷部54の内径寸法R3は、自然状態においてカラー26の外周面56の径寸法よりも小さくなるように、それ等の径寸法のばらつき等を考慮して定められている。
【0027】
そして、ボス40の両端部に配置された一対の鍔付きブッシュ42、44の貫通穴内にカラー26が挿入され、図5に示すようにカラー26の外周面56とボス40の内周面58との間で円筒部46が径方向に圧縮変形させられると、傾斜が緩い第1山50は矢印Aで示すように周方向へ拡張するように、言い換えれば山頂角度が拡がるように撓み変形させられ、それに伴って傾斜が急な第2山52は周方向に圧縮されるように、言い換えれば山頂角度が狭くなるように撓み変形させられる。第2山52の頂点の外径寸法R2は、自然状態においてボス40の内周面58の径寸法よりも小さく、その内周面58との間に隙間が残されることにより、第2山52が周方向へ圧縮される際に径方向へ拡張することが許容され、第2山52が撓み変形し易くなる。本実施例では、円筒部46の肉厚が、中心線Oまわりの全周に亘って略一定であるが、第2山52の肉厚を第1山50よりも薄くすることにより、第2山52を一層撓み変形し易くすることもできる。
【0028】
このような本実施例のブレーキペダル12の軸受部構造においては、鍔付きブッシュ42、44の円筒部46が周方向において凹凸形状を成していて、断面形状が異なる2種類の第1山50および第2山52が交互に多数設けられており、カラー26の外周面56とボス40の内周面58との間で径方向に圧縮変形させられる際に、第1山50は周方向へ拡張されるように撓み変形させられ、第2山52は周方向に圧縮されるように撓み変形させられる。したがって、カラー26の外周面56とボス40の内周面58との間のクリアランスのばらつきや、ペダル操作時のクリアランスの変化が、第1山50の周方向の拡張および第2山52の周方向の圧縮によって吸収されるとともに、それ等の第1山50および第2山52の撓み変形による反力でボス40の支持剛性が確保され、ブレーキペダル12のがたつきや傾動、異音の発生が抑制される。
【0029】
また、第1山50の頂点の外径寸法R1がボス40の内周面58の径寸法よりも大きくてその内周面58に密着させられる一方、第2山52の頂点の外径寸法R2はボス40の内周面58の径寸法よりも小さいため、第2山52を周方向へ圧縮させた際の径方向の拡張が許容され、その第2山52の周方向の圧縮および第1山50の周方向の拡張によりクリアランスのばらつきや変化を適切に吸収することができる。
【0030】
また、円筒部46の凹凸形状が、第1山50および第2山52の凸湾曲形状および谷部54の凹湾曲形状が連なる波形状であるため、例えばそれ等の第1山50および第2山52が三角山形状で谷部54がV字形状の折れ線状の凹凸形状に比較して応力集中が抑制され、高い耐久性が得られる。
【0031】
ここで、図6は、ブレーキペダル12の踏込み操作時に下向きの荷重Fが加えられ、支持軸心S1の上側部分でカラー26の外周面56とボス40の内周面58との間のクリアランスが小さくなった場合であり、図5に比較して、矢印Bで示すように第1山50が更に周方向へ拡張されるとともに第2山52が周方向に圧縮される。そして、この鍔付きブッシュ42、44の円筒部46の変形でクリアランスの変化が吸収され、がたつきや異音の発生が抑制されるとともに、その変形による反力で鍔付きブッシュ42、44の過度の撓み変形が抑制されて、ボス40を支持軸心S1と同心に支持する支持剛性が適切に確保され、ボス40の変位によるブレーキペダル12のがたつき(下方への変位)が抑制されて操作フィーリングが良好に維持される。
【0032】
なお、図示および詳しい説明を省略するが、本実施例では、中間レバー18を支持軸心S2まわりに回動可能にペダルブラケット14に取り付ける軸受部構造についても、上記ブレーキペダル12の軸受部構造と同様に構成されている。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0034】
10:ブレーキペダル装置(車両用ペダル装置) 12:ブレーキペダル(回動部材) 14:ペダルブラケット 18:回動レバー(回動部材) 26:カラー(支持部材) 40:ボス 42、44:鍔付きブッシュ(ブッシュ) 46:円筒部 50:第1山 52:第2山 56:カラーの外周面 58:ボスの内周面 O:ブッシュの中心線 θ1:第1山の角度範囲 θ2:第2山の角度範囲 R1:第1山の頂点の外径寸法 R2:第2山の頂点の外径寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6