特許第6134301号(P6134301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134301
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/00 20060101AFI20170515BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20170515BHJP
   H04L 12/70 20130101ALI20170515BHJP
   H04Q 9/04 20060101ALI20170515BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20170515BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H04L7/00 080
   E02F9/26 A
   H04L12/70 100Z
   H04Q9/04
   H04M11/00 301
   H04N7/18 D
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-198162(P2014-198162)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-72727(P2016-72727A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093872
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 芳紘
(72)【発明者】
【氏名】星野 和則
(72)【発明者】
【氏名】菅原 一宏
【審査官】 森谷 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−133310(JP,A)
【文献】 特開2009−171334(JP,A)
【文献】 特開2012−142789(JP,A)
【文献】 特開2005−119843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
E02F 9/26
H04L 12/70
H04M 11/00
H04N 7/18
H04Q 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場にある遠隔操縦可能な建設機械およびその周囲を作業現場用カメラで撮影してその映像信号を遠隔にある操縦室に伝送する遠隔操縦用映像伝送システムであって、
前記建設機械またはその作業現場と前記操縦室とにそれぞれ備えられて、通信遅延時間を測定する信号を互いに送受信するための測定信号用送受信機と、
前記測定信号用送受信機間の測定信号の遅延時間を基準として前記作業現場から前記操縦室へ伝送される映像信号の伝送遅延時間を測定する映像遅延時間測定装置と、
前記操縦室を撮影する操縦室用カメラとを有し
前記各測定信号用送受信機は、それぞれ信号の送受信状態を表示する送受信表示部を有し、
前記作業現場用カメラは、前記測定信号用送受信機の送受信表示部を含む前記作業現場を撮影し、
前記操縦室用カメラは、前記操縦室に配置された測定信号用送受信機の送受信表示部と前記作業現場から前記操縦室に伝送されてきた映像信号からなる作業現場の映像とを1つの画面に取り込むように撮影し、
前記映像遅延時間測定装置は、前記測定信号用送受信機間の信号の遅延時間と、前記操縦室用カメラで撮影された各送受信表示部の表示状態に基づいて前記作業現場から伝送されてきた映像信号の伝送遅延時間を測定することを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム。
【請求項2】
作業現場にある遠隔操縦可能な建設機械およびその周囲を作業現場用カメラで撮影してその映像信号を遠隔にある操縦室に伝送する遠隔操縦用映像伝送システムであって、
前記建設機械またはその作業現場と前記操縦室とにそれぞれ備えられ、通信遅延時間を測定する信号を互いに送受信するための測定信号用送受信機と、
前記測定信号用送受信機間の測定信号の遅延時間を基準として前記作業現場から前記操縦室へ伝送される映像信号の伝送遅延時間を測定する映像遅延時間測定装置と、
前記操縦室に設けられて、前記作業現場から伝送されてきた映像信号から作業現場の映像を表示する遠隔操縦用モニタとを有し、
前記映像遅延時間測定装置は、測定された前記作業現場から伝送されてきた映像信号の伝送遅延時間を前記遠隔操縦用モニタ上に表示することを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械の遠隔操縦用映像伝送システムにおいて、
前記操縦室に前記作業現場から伝送されてきた映像信号から作業現場の映像を表示する遠隔操縦用モニタを設け、
前記映像遅延時間測定装置は、測定された前記作業現場から伝送されてきた映像信号の伝送遅延時間を前記遠隔操縦用モニタ上に表示することを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の遠隔操縦用映像伝送システムにおいて、
前記映像遅延時間測定装置は、測定された前記作業現場から伝送されてきた映像信号の伝送遅延時間をその大きさで複数にレベル分けし、そのレベルを前記遠隔操縦用モニタ上に表示することを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の建設機械の遠隔操縦用映像伝送システムにおいて、
前記作業現場用カメラと前記作業現場に配置される測定信号用送受信機とを一体化すると共に、前記作業現場の映像を表示するモニタと前記操縦室に配置される信号用送受信機とを一体化したことを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルなどの建設機械の遠隔操縦用映像伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の油圧ショベルなどの建設機械は、作業員がその建設機械に搭乗して操縦するのが一般的であるが、最近では建設機械やその作業現場にカメラを設置し、そのカメラで撮影された映像を見ながら遠隔にある操縦室から無線通信回線などを介して遠隔で操縦するシステムが開発されている。
【0003】
このような遠隔操縦システムにあっては、カメラや通信機器の性能あるいは通信回線の状態などによって表示する映像の品質に影響を及ぼし、映像遅延が発生することがある。映像遅延自体は慣れれば遠隔操縦上ある程度許容できるものの、その程度を正確に把握できないと作業効率が著しく低下する。
【0004】
そのため、例えば以下の特許文献1には2台のモニタを用いて基準映像と遅延映像を同時に表示し、表示された2つの映像を分析することで映像遅延時間を算出する方法が提案されている。また、以下の特許文献2には操縦室から遠隔地に制御信号を送信し、遠隔地では制御信号に基づいてランプを点灯し、その様子を撮影した映像を操縦室に伝送し、操縦室の制御信号の送信と遠隔地から操縦室に伝送された映像のなかのランプ映像が点灯するタイミングとの時間のずれを測定することにより、映像の遅延時間を検知、測定する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4251979号公報
【特許文献2】特開2012−1427789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、映像遅延時間を測定するためには基準映像と遅延映像を同一のタイミングで比較する必要があり、そのためには基準映像と遅延映像の時間軸を合わせる必要がある。しかしながら、前記公知例では時間軸を合わせるために基準映像を表示するモニタと遅延映像を表示するモニタおよび2台のモニタを撮影するカメラを同一の場所に設置する必要があり、遠隔地の作業現場にある伝送前の基準映像と通信回線を伝送されてきた操縦室で表示する遅延映像は同一のタイミングで比較することはできない。そのため、遠隔地から伝送される映像の遅延時間の測定は困難であり、操縦者に映像遅延時間の提示を行うことはできない。
【0007】
また、遠隔地と操縦室との間で映像信号遅延の他に通信遅延が存在するので遠隔地と操縦室の絶対時刻の同期を行う必要があり、その同期がとれない環境では映像遅延時間の測定を行うことができない。この同期はGPS時刻信号を使用する方法や時刻同期サーバを設置する方法など高価かつ高度なシステムが必要であり、全ての遠隔作業現場および移動式建設機械で導入するのは困難である。
【0008】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、映像信号の伝送遅延時間を正確に測定して遠隔操縦者に的確に知らせることができる新規な建設機械の遠隔操縦用映像伝送システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために第1の発明は、作業現場にある遠隔操縦可能な建設機械およびその周囲を作業現場用カメラで撮影してその映像信号を遠隔にある操縦室に伝送する遠隔操縦用映像伝送システムであって、前記建設機械またはその作業現場と前記操縦室とに、通信遅延時間を測定する信号を互いに送受信するための測定信号用送受信機をそれぞれ備えると共に、前記信号用送受信機間の測定信号の遅延時間を基準として前記作業現場から前記操縦室へ伝送される映像信号の伝送遅延時間を測定する映像遅延時間測定装置を備えたことを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システムである。
【0010】
このような構成によれば、作業現場と操縦室にそれぞれ配置された信号用送受信機間の測定信号の遅延時間を基準として作業現場から操縦室へ伝送される映像信号の伝送遅延時間を測定することから、映像信号の伝送遅延時間を正確に測定して操縦室にいる遠隔操縦者に的確に知らせることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記操縦室を撮影する操縦室用カメラを備え、前記各測定信号用送受信機は、それぞれ信号の送受信状態を表示する送受信表示部を有し、前記作業現場用カメラは、前記測定信号用送受信機の送受信表示部を含む前記作業現場を撮影し、前記操縦室用カメラは、前記操縦室に配置された測定信号用送受信機の送受信表示部と前記作業現場から前記操縦室に伝送されてきた映像信号からなる作業現場の映像とを1つの画面に取り込むように撮影し、前記映像遅延時間測定装置は、前記測定信号用送受信機間の信号の遅延時間と、前記操縦室用カメラで撮影された各送受信表示部の表示状態に基づいて前記作業現場から伝送されてきた映像信号の伝送遅延時間を測定することを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システムである。
【0012】
このような構成によれば、映像遅延時間測定装置が操縦室用カメラで撮影された各送受信表示部の表示状態を画像認識することにより、測定信号用送受信機間の信号の遅延時間と、操縦室用カメラで撮影された各送受信表示部の表示状態に基づいて作業現場から伝送されてきた映像信号の伝送遅延時間を迅速且つ正確に測定することができる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記操縦室に前記作業現場から伝送されてきた映像信号から作業現場の映像を表示する遠隔操縦用モニタを設け、前記映像遅延時間測定装置は、測定された前記作業現場から伝送されてきた映像信号の伝送遅延時間を前記遠隔操縦用モニタ上に表示することを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システムである。このような構成によれば、操縦室にいる遠隔操縦者が遠隔操縦用モニタに映った作業現場の映像と共にその映像の伝送遅延時間を容易かつ正確に把握することができる。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、前記映像遅延時間測定装置は、測定された前記作業現場から伝送されてきた映像信号の伝送遅延時間をその大きさで複数にレベル分けし、そのレベルを前記遠隔操縦用モニタ上に表示することを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システムである。このような構成によれば、操縦室にいる遠隔操縦者が遠隔操操縦用モニタに映った作業現場の映像と共にそのレベルを見るだけでその遅延時間を容易に把握することができる。
【0015】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記作業現場用カメラと前記作業現場に配置される測定信号用送受信機とを一体化すると共に、前記作業現場の映像を表示するモニタと前記操縦室に配置される信号用送受信機とを一体化したことを特徴とする建設機械の遠隔操縦用映像伝送システムである。このように一体化することで設置スペースを小さくしたり、部品点数を削減できるためコストの削減に寄与できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作業現場と操縦室にそれぞれ配置された信号用送受信機間の測定信号の伝送遅延時間を基準として作業現場から操縦室へ伝送される映像信号の伝送遅延時間を測定することから、映像信号の伝送遅延時間を正確に測定して操縦室にいる遠隔操縦者に的確に知らせることができる。これにより、操縦室にいる遠隔操縦者は効率的な遠隔操縦が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム100の実施の一形態を示す全体構成図である。
図2】(A)は作業現場1に配置される測定信号用送受信機11、(B)は操縦室2に配置される測定信号用送受信機21を示す正面図である。
図3】本発明に係る建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム100による映像遅延時間の測定方法の一例を示す説明図である。
図4】本発明に係る建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム100による映像遅延時間の測定方法の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム100の実施の一形態を示したものである。図において符号1は作業現場、2はこの作業現場から遠隔にある操縦室である。ここで遠隔とは距離的に特に限定されるものでなく例えば数十mから数百km以上の距離はもちろん、地上と地下、あるいはある国と他の国または地球と月との間、その他の惑星間などを含む概念である。
【0019】
作業現場1には作業現場用の測定信号用送受信機(以下、「作業現場用通信機」と称す)11と、その作業現場を作業現場用通信機11が同一画面に入るように撮影する作業現場用カメラ12と、遠隔操縦される移動式建設機械13とが配置されている。一方、操縦室2には操縦室用の測定信号用送受信機(以下、「操縦室用通信機」と称す)21と、操縦室2内を撮影する操縦室用カメラ22と、遠隔操縦者が目視する遠隔操縦用モニタ23と、映像遅延確認用モニタ24と、映像遅延時間測定装置25と、遠隔操縦者5が操縦する遠隔操縦用コントローラ26とが配置されている。
【0020】
作業現場1と操縦室2とは衛星通信回線や携帯電話網などの通信回線4を介して双方向通信可能に接続されており、作業現場用通信機11と操縦室用通信機21とは互いにこの通信回線4を介して遅延時間測定信号の送受信が行われる。また、作業現場1に設置してある作業現場用カメラ12で撮影した映像信号も同じくこの通信回線4を介して操縦室2内に設置してある遠隔操縦用モニタ23と映像遅延確認用モニタ24とに送られて表示される。そして、図示するようにこれら遠隔操縦用モニタ23および映像遅延確認用モニタ24の画面には、作業現場の映像と共にそこに配置された現場用通信機11の映像が同時に映し出されるようになっている。
【0021】
また、遠隔操縦用信号もこの通信回線4を介して作業現場1にある移動式建設機械13に送られる。従って、操縦室2内にいる操縦者5はこの遠隔操縦用モニタ23を見ながら遠隔操縦用コントローラ26を操縦してその操縦信号を通信回線4を通じて作業現場1に送信して移動式建設機械13を遠隔操縦するようになっている。すなわち、この作業現場1と操縦室2との間では少なくもこの遠隔操縦用信号と、映像信号と、遅延時間測定信号といった3種類の信号が通信回線4を介して送信されるようになっている。
【0022】
現場用通信機11と操縦室用通信機21の正面には、図2(A)、(B)に示すようにそれぞれ送受信表示部11A、21Aが明確に判別可能に大きく設けられている。この送受信表示部11A、21Aは、通信遅延時間を測定する信号(以下、測定信号と称す)を送信すると同時に点灯する送信表示部(図では三角形)11a、21aと、測定信号を受信すると同時に点灯する受信表示部(図では円形)11b、21bからなっている。
【0023】
そして、例えば現場用通信機11から操縦室用通信機21に対して測定信号が発信されるとそれと同時に現場用通信機11の送受信表示部11Aの送信表示部11aが点灯し、その後、その信号を受信した操縦室用通信機21の送受信表示部21Aの受信表示部21bが点灯するようになっている。これとは逆に操縦室用通信機21から現場用通信機11に対して測定信号が発信されるとそれと同時に操縦室用通信機21の送受信表示部21Aの送信表示部21aが点灯し、その後その信号を受信した現場用通信機11の送受信表示部11Aの受信表示部11bが点灯するようになっている。なお、この送受信はその表示部の形状だけでなく色彩などで区別するようにしても良い。
【0024】
図1に戻り、操縦室用カメラ22は、操縦室2内に配置された映像遅延確認用モニタ24に映し出される映像31とその近傍に配置された操縦室用通信機21とが同一画面に入るように撮影し、撮影した映像3を同じく操縦室2内に配置された映像遅延時間測定装置25に入力するようになっている。一方、この映像遅延時間測定装置25は、後述するように入力された映像遅延確認用モニタ24の映像31に含まれている現場用通信機11と操縦室用通信機21の送受信表示部11A(11a、11b)、21A(21a、21b)の点滅動作を認識して映像信号の伝送遅延時間を計測し、得られた映像信号の伝送遅延時間を遠隔操縦用モニタ23に表示して遠隔操縦者5に知らせるようになっている。具体的にはこの映像遅延時間計測装置25はこれら一連の作業を行う画像処理ソフトが組み込まれた専用又は汎用のコンピュータなどから構成されている。
【0025】
次に、この映像信号の伝送遅延時間について図3および図4を参照しながら説明する。図3において時刻t0は測定開始前の状態を示す。時刻t1はその後に操縦室用通信機21が通信回線4を通じて作業現場用通信機11に対して測定信号を送信した時刻を示す。時刻t0では、現場用通信機11と操縦室用通信機21の送受信表示部11A(11a、11b)、21A(21a、21b)はいずれも消灯した状態となっているが、時刻t1では、操縦室用通信機21が測定信号を送信することによって送信表示部21aが点灯し、それが操縦室用カメラ22で撮影された撮影映像3に映っている状態を示している。
【0026】
時刻t2は、その後この測定信号を現場用通信機11が受信した時刻を示す。時刻t2では、この測定信号を受信した現場用通信機11の受信表示部11bが点灯しているが、その映像信号はまだ操縦室2側に届いていないため、映像遅延確認用モニタ24の映像31および撮影映像3に含まれる現場用通信機11の受信表示部11bはいずれも消灯した状態となっている。
【0027】
時刻t3は、その後時刻t2における作業現場1の映像信号が操縦室2側に届いた時刻を示す。時刻t3では、映像遅延確認用モニタ24の映像31および撮影映像3に含まれる現場用通信機11の受信表示部11bはいずれも点灯した状態となっている。
【0028】
時刻t4は、その後時刻t3における作業現場1の現場用通信機11が測定信号を発信した時刻を示す。時刻t4では、現場用通信機11の発信表示部11aが点灯しているが、その測定信号および映像信号は操縦室2側には届いていないため、操縦室用通信機21の送受信表示部21A、および映像遅延確認用モニタ24の映像31ならびに撮影映像3に映っている現場用通信機11と操縦室用通信機21の送受信表示部11A(11a、11b)、21A(21a、21b)は、いずれも消灯した状態となっている。
【0029】
時刻t5は、その後操縦室2の操縦室用通信機21が測定信号を受信した時刻を示す。時刻t5では、測定信号を受信することによって操縦室用通信機21の受信表示部21bが点灯しているが、映像信号はこの測定信号よりも届くのが遅いため、映像遅延確認用モニタ24に映し出された映像31に映っている現場用通信機11の発信表示部11aは消灯したままとなっている。
【0030】
時刻t6は、その後操縦室2に作業現場1から映像信号が届いた時刻を示す。時刻t6では、映像遅延確認用モニタ24の映像31ならびに撮影映像3に映っている現場用通信機11の送信表示部11aは、いずれも点灯した状態となっている。
【0031】
(測定信号の伝送遅延時間測定)
次に、上述したような伝送遅延現象が生ずる伝送システムにおける現場用通信機11と操縦室用通信機21間における測定信号の伝送遅延時間の測定方法について説明する。先ず、現場用通信機11と操縦室用通信機21は、それぞれ他方から遅延時間測定信号を受信すると、一定時間T2経過後に他方に対して遅延時間測定信号を送信する。T2はウェイト時間であり、設定値を既知の値として把握しておく。
【0032】
その後、現場用通信機11もしくは操縦室用通信機21は通信回線4を通じて他方に対して測定信号を送信すると、この信号は時間T1経過後に他方で受信される。測定信号を受信した他方の通信機は、ウェイト時間T2経過後に、最初に送信を行った通信機に対して測定信号を送信する。他方の通信機から送信された測定信号は、時間T1経過後に最初に送信を行った通信機で受信される。
【0033】
最初に送信を行った通信機は、測定信号を他方の通信機に送信後、ウェイト時間T2経過後に、他方の通信機から送信されてきた測定信号を受信するまでの時間を計測する。この総時間をTとすると、Tは通信機で測定する時間であり、T2は既知の設定値なので通信信号の遅延時間T1は、以下の式で求められる。
T1=(T−T2)/2
【0034】
そして、このようにして求められた通信遅延時間T1を映像遅延時間測定装置25に入力する。なお、このようにして得られた通信信号の遅延時間T1は、現場用通信機11と操縦室用通信機21とのいずれか一方で測定した通信遅延時間を採用しても良いし、あるいは両方で測定した通信遅延時間との平均値を採用しても良い。
【0035】
(映像信号の伝送遅延時間測定)
次に、上述したような測定信号の伝送遅延現象が生ずる伝送システムにおける作業現場1と操縦室2間の映像信号の伝送遅延時間の測定方法について説明する。操縦室2に配置された映像遅延時間測定装置25は、入力された撮影映像3のうち、映像遅延確認用モニタ24の映像31に含まれる現場用通信機11の送受信表示部11a、11b、および操縦室用通信機21の送受信表示部21a、21bの点灯および消灯状態を認識し、操縦室用通信機21の送信表示部21aが点灯する時刻を時刻t1として記憶する。
【0036】
その後、この映像遅延時間測定装置25は、引き続き映像遅延確認用モニタ24の映像31を監視し、この映像31から現場用通信機11の受信表示部11bが点灯したことを認識したならば、その時刻を時刻t3として記憶し、時刻t1から時刻t3までの経過時間を測定する。測定した経過時間をt’とする。
【0037】
この場合、実際の映像遅延時間は、作業現場用通信機11の受信表示部11bが実際に点灯してからそれが操縦室2の遠隔操縦用モニタ24の映像31に表示されるまでの時間、すなわち時刻t2から時刻t3までにかかる時間であるのでこの時間をt(<t’)とする。
【0038】
操縦室2において把握できる時間は、前述した時刻t1から時刻t3までの経過時間であるt’と、既知の通信信号の遅延時間T1、すなわち時刻t1から時刻t2までにかかる時間であるから、実際の映像遅延時間tは以下のようにして求められる。
t=t’−T1
【0039】
その後、映像遅延時間測定装置25はこのようにして求めた映像遅延時間tを遠隔操縦用モニタ23に表示して操縦者5に映像遅延時間の通知を行うことになる。そして、操縦者5はこの遠隔操縦用モニタ23に表示された映像遅延時間を考慮したコントローラ25の操縦を行うことで効率的な遠隔操縦を行うことができる。
【0040】
ここで、この映像遅延時間tの表示は、その時間tそのものを数値で表示しても良いが、その映像遅延時間tをその長さで複数にレベル分けし、そのレベルを遠隔操縦用モニタ23に表示するようにしても良い。また、このレベル表示は、例えば数字やアルファベットのような文字であっても良く、あるいは画面の一部を着色し、その色分けで表示するようにしても良い。例えば遅延時間が1秒未満のときは、文字「A」の表示または画面の一部を「緑色」に着色し、遅延時間が1秒〜3秒未満のときは文字「B」の表示または画面の一部を「黄色」に着色し、遅延時間が3秒以上のときは文字「C」の表示または画面の一部を「赤色」に着色するようにして表示しても良い。
【0041】
この映像遅延時間tの測定方法としてはさらに別の方法を採用しても良い。例えば映像遅延時間測定装置25は、遠隔操縦用モニタ24の映像31に含まれる作業現場用通信機11の送受信表示部11a、11bと操縦室用通信機21の送受信表示部21a、21bとのうち、操縦室用通信機21の受信表示部21bが点灯する時刻を時刻t5として記憶する。
【0042】
その後、映像遅延時間測定装置25は、遠隔操縦用モニタ24の映像31に含まれる作業現場用通信機11の送信表示部11aが点灯した時刻を時刻t6として記憶し、時刻t5から時刻t6までの経過時間を測定する。測定した時間をt”とする。この場合、実際の映像遅延時間は、作業現場用通信機11の送信表示部11aが実際に点灯してから操縦室2の遠隔操縦用モニタ24の映像31に含まれる作業現場用通信機11の送信表示部11aが点灯するまでの時間、すなわち時刻t4から時刻t6までの時間であるのでこの時間をtとする、
【0043】
操縦室2において把握できる時間は前述の時間t”および既知の通信遅延時間T1、すなわち時刻t4から時刻t5までにかかる時間であり、実際の映像遅延時間tは以下のようにして求められる。
t=t”+T1
【0044】
そして、このようにして求められた映像遅延時間Tを前記のように遠隔操縦用モニタ23に数値またはレベル分けした状態で表示するようにしても良い。また、作業現場用カメラ12と作業現場用通信機11とを一体化したり、操縦室2に配置される映像遅延確認用モニタ24と操縦室用通信機21とを一体化しても良い。このように一体化することで設置スペースを小さくしたり、部品点数を削減できるためコストの削減に寄与できる。
【符号の説明】
【0045】
100…建設機械の遠隔操縦用映像伝送システム
1…作業現場
2…操縦室
3…撮影映像
4…通信回線
5…操縦者
11…測定信号用送受信機(作業現場用通信機)
11A…送受信表示部
11a…送信表示部
11b…受信表示部
12…作業現場用カメラ
13…移動式建設機械
21…測定信号用送受信機(操縦室用通信機)
21A…送受信表示部
21a…送信表示部
21b…受信表示部
22…操縦室用カメラ
23…遠隔操縦用モニタ
24…映像遅延確認用モニタ
25…映像遅延時間測定装置
26…遠隔操縦用コントローラ
31…映像遅延確認用モニタ24の映像
図1
図2
図3
図4