(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134310
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】全閉型回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/06 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
H02K9/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-262873(P2014-262873)
(22)【出願日】2014年12月25日
(65)【公開番号】特開2016-123233(P2016-123233A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 孔三
(72)【発明者】
【氏名】七海 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】森 寧
【審査官】
津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−066554(JP,U)
【文献】
実開昭58−121165(JP,U)
【文献】
実開平01−079366(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/00− 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向の回転軸の周りに回転可能に支持された回転シャフトと、
前記回転シャフトに固定された回転子と、
半径方向間隙を介して前記回転子の半径方向外周を取り囲んで配置された固定子と、
前記固定子の上方で前記固定子の前記回転軸の方向の中央部の上方位置をはさんで両側に配置されて冷却水によって冷却される2個の空気冷却器と、
前記回転子、前記固定子および前記空気冷却器を収容し、前記回転シャフトが貫通する密閉構造のケーシングと、
前記ケーシング内で前記2個の空気冷却器の上方に配置されて、前記ケーシング内の空気を吸い込んで前記空気冷却器に向けて下向きに送る少なくとも1個の内部循環送風ファンと、
を有し、
前記2個の空気冷却器で冷却されて下降した空気が、前記固定子および前記回転子を冷却した後に、前記固定子の前記回転軸の方向の中央部から上昇し、その後に前記少なくとも1個の内部循環送風ファンによって下向きに前記2個の空気冷却器に向けて吹き付けられて前記ケーシング内で循環するように構成されていて、
前記少なくとも1個の内部循環送風ファンから前記2個の空気冷却器それぞれを通って前記固定子の前記回転軸の方向の中央部をはさんだ前記回転軸の方向の両側に達する2個の下降空気流路と、前記2個の下降空気流路にはさまれて形成されて前記固定子の前記回転軸の方向の中央部の上方から前記少なくとも1個の内部循環送風ファンに達する上昇空気流路と、を仕切る仕切壁と、が形成されていて、
前記2個の空気冷却器の1個ずつが前記2個の下降空気流路それぞれに配置され、前記上昇空気流路には空気冷却器が配置されていないこと、を特徴とする全閉型回転電機。
【請求項2】
前記少なくとも1個の内部循環送風ファンを駆動する少なくとも1個の送風ファン用電動機をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の全閉型回転電機。
【請求項3】
前記2個の空気冷却器それぞれは、前記ケーシング内に配置された伝熱管を備え、前記伝熱管内に前記ケーシングの外から冷却水が供給されるように構成されていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の全閉型回転電機。
【請求項4】
前記少なくとも1個の内部循環送風ファンは、前記ケーシング内で前記回転軸の方向の両端部に配置されて前記回転軸に平行な軸周りに回転する2個の内部循環送風ファンからなること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の全閉型回転電機。
【請求項5】
前記少なくとも1個の内部循環送風ファンは、前記ケーシング内で前記回転軸の方向の中央位置に配置されて鉛直方向の軸周りに回転する1個の内部循環送風ファンからなること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の全閉型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、密閉構造のケーシングを備えた全閉型回転電機(電動機または発電機)に係り、特に、ケーシング内に内部循環送風ファンおよび空気冷却器を備えた全閉型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2台の電動機を一つのケーシング内に収容して、このケーシング内に循環送風ファンおよび空気冷却器を配置して、回転子や固定子などを冷却する技術が記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載された例では、内部循環送風ファンの下流側に空気冷却器が配置され、空気冷却器で冷却された空気が回転子や固定子などを冷却する構造になっている。この構造により、空気冷却器で冷却された空気が、内部循環送風ファンでの発熱によって加熱されることなく、回転子や固定子などを冷却するために使用される。そのため、空気冷却器の下流側に内部循環送風ファンが配置される場合に比べて高い冷却効率が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された技術では、ケーシング内の空気の循環が、必ずしも自然対流を補助する構造になってはいないので、内部循環送風ファンの駆動動力の一部が無駄に使われる。
【0006】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、全閉型回転電機において、ケーシング内を効率よく冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る全閉型回転電機は、水平方向の回転軸の周りに回転可能に支持された回転シャフトと、前記回転シャフトに固定された回転子と、半径方向間隙を介して前記回転子の半径方向外周を取り囲んで配置された固定子と、前記固定子の上方で前記固定子の前記回転軸の方向の中央部の上方位置をはさんで両側に配置されて冷却水によって冷却される2個の空気冷却器と、前記回転子、前記固定子および前記空気冷却器を収容し、前記回転シャフトが貫通する密閉構造のケーシングと、前記ケーシング内で前記2個の空気冷却器の上方に配置されて、前記ケーシング内の空気を吸い込んで前記空気冷却器に向けて下向きに送る少なくとも1個の内部循環送風ファンと、を有し、前記2個の空気冷却器で冷却されて下降した空気が、前記固定子および前記回転子を冷却した後に、前記固定子の前記回転軸の方向の中央部から上昇し、その後に前記少なくとも1個の内部循環送風ファンによって下向きに前記2個の空気冷却器に向けて吹き付けられて前記ケーシング内で循環するように構成されてい
て、前記少なくとも1個の内部循環送風ファンから前記2個の空気冷却器それぞれを通って前記固定子の前記回転軸の方向の中央部をはさんだ前記回転軸の方向の両側に達する2個の下降空気流路と、前記2個の下降空気流路にはさまれて形成されて前記固定子の前記回転軸の方向の中央部の上方から前記少なくとも1個の内部循環送風ファンに達する上昇空気流路と、を仕切る仕切壁と、が形成されていて、前記2個の空気冷却器の1個ずつが前記2個の下降空気流路それぞれに配置され、前記上昇空気流路には空気冷却器が配置されていないこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、全閉型回転電機において、ケーシング内を効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る全閉型回転電機の第1の実施形態を示す模式的立断面図である。
【
図2】本発明に係る全閉型回転電機の第2の実施形態を示す模式的立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る全閉型回転電機の実施形態について説明する。ここで、同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る全閉型回転電機の第1の実施形態を示す模式的立断面図である。図示の例は全閉型誘導電動機である。
【0012】
回転シャフト11は、2個の軸受(図示せず)によって、水平方向の回転軸の周りを回転可能に支持されている。回転シャフト11には回転子12が固定され、回転子12の半径方向外側を取り囲んで固定子13が配置されている。
【0013】
回転子12および固定子13を収容する密閉構造のケーシング14が配置され、回転シャフト11はケーシング14を貫通して延びている。ケーシング14内で固定子13の上方に、2個の空気冷却器15が配置されている。2個の空気冷却器15は、回転軸方向に互いに間をあけて配置されている。空気冷却器15はそれぞれ、伝熱管16を備えている。各伝熱管16内にケーシング14外から冷却水が供給され、伝熱管16内で温められた冷却水がケーシング14外に排出すように構成されている。
【0014】
ケーシング14内で空気冷却器15の上方の回転軸方向両端近くに2個の内部循環送風ファン17が配置されている。内部循環送風ファン17には、それぞれ送風ファン用電動機18が連結されていて、ケーシング14の外から供給される電力により送風ファン用電動機18が回転し、それにより、内部循環送風ファン17が回転する。2個の内部循環送風ファン17はそれぞれ、回転シャフト11の回転軸と平行な回転軸周りに回転可能であって、ケーシング14内の頂部付近の空気を回転軸方向外向きに受け入れて、下方に、すなわち空気冷却器15の伝熱管16の周囲に向けて吹き出す。
【0015】
ケーシング14内で、2個の内部循環送風ファン17から2個の空気冷却器15それぞれの伝熱管16の周囲を通って固定子13の回転軸方向中央部をはさんだ回転軸方向両側に達する2個の下降空気流路19と、2個の下降空気流路19にはさまれて形成された上昇空気流路20とが仕切られるように、仕切壁21が形成されている。上昇空気流路20は、固定子13の回転軸方向中央部の上方から2個の内部循環送風ファン17に至る流路である。
【0016】
以上説明した構成において、回転子12および固定子13で加熱された空気は、固定子13の上方から回転軸方向中央に形成された上昇空気流路20内を上昇し、ケーシング14内の頂部付近に達する。この高温の空気は、2個の内部循環送風ファン17によって、回転軸方向外側向きに駆動され、さらに、内部循環送風ファン17通過後に下向きに駆動され、2個の下降空気流路19内を下降する。
図1で、ケーシング14内の空気の流れを矢印で示している。下降空気流路19内を下降する空気は、初めに空気冷却器15で冷却され、低温の空気が、回転子12および固定子13に、回転軸方向両端部から供給される。
【0017】
本実施形態によれば、空気冷却器15で冷却された低温の空気が、内部循環送風ファン17を経由せず直接に回転子12および固定子13に供給されるので、冷却効率が高い。また、ケーシング14内の空気の循環は自然対流の場合と同様であって、内部循環送風ファン17は自然対流を促進するように作用する。そのため、内部循環送風ファン17の駆動エネルギを最小限とすることができる。
【0018】
[第2の実施形態]
図2は、本発明に係る全閉型回転電機の第2の実施形態を示す模式的立断面図である。
【0019】
この実施形態では、ケーシング14内の頂部の中央に1個の内部循環送風ファン17が設置されている。内部循環送風ファン17は、鉛直方向の回転軸周りに回転可能であって、送風ファン用電動機18によって回転する。
【0020】
その他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様である。
【0021】
以上説明した構成において、回転子12および固定子13で加熱された空気は、固定子13の上方から回転軸方向中央に形成された上昇空気流路20内を上昇し、ケーシング14内の頂部に達する。この高温の空気は、ケーシング14内の頂部中央に設けられた1個の内部循環送風ファン17によって、回転軸方向外側向き且つ下向きに駆動され、2個の下降空気流路19内を下降する。
図2で、ケーシング14内の空気の流れを矢印で示している。下降空気流路19内を下降する空気は、初めに空気冷却器15で冷却され、低温の空気が、回転子12および固定子13に、回転軸方向両端部から供給される。
【0022】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0023】
[他の実施形態]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0024】
11 回転シャフト
12 回転子
13 固定子
14 ケーシング
15 空気冷却器
16 伝熱管
17 内部循環送風ファン
18 送風ファン用電動機
19 下降空気流路
20 上昇空気流路
21 仕切壁