(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134325
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ヒマワリ種子殻/莢を備えるバイオコンポジットないしバイオ材料
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20170515BHJP
C08L 97/02 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L97/02
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-540376(P2014-540376)
(86)(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公表番号】特表2014-533311(P2014-533311A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】EP2012070348
(87)【国際公開番号】WO2013072146
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】102011086319.2
(32)【優先日】2011年11月14日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012209482.2
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514119247
【氏名又は名称】エスピーシー サンフラワー プラスティック コンパウンド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SPC SUNFLOWER PLASTIC COMPOUND GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンデルン、ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、ウルリッヒ
【審査官】
柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−518266(JP,A)
【文献】
米国特許第03927235(US,A)
【文献】
米国特許第05663221(US,A)
【文献】
特表2011−515605(JP,A)
【文献】
特表2012−522156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00− 101/00
C08L 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒマワリ種子殻/莢を少なくともプラスチック材料と調合させてなるバイオ材料ないしバイオコンポジットであって、
前記ヒマワリ種子殻/莢の油分は、最大で4%であり、
前記ヒマワリ種子殻/莢の粒径は、0.01から0.5mmの範囲にあること
を特徴とするバイオ材料ないしバイオコンポジット。
【請求項2】
前記ヒマワリ種子殻/莢は、粉砕され且つ油分低減されていること
を特徴とする、請求項1に記載のバイオ材料ないしバイオコンポジット。
【請求項3】
バイオ材料最終製品における前記ヒマワリ種子殻/莢の割合が、40から90%であること
を特徴とする、請求項1または2に記載のバイオ材料ないしバイオコンポジット。
【請求項4】
バイオ材料最終製品における前記ヒマワリ種子殻/莢の割合が、50から70%であること
を特徴とする、請求項3に記載のバイオ材料ないしバイオコンポジット。
【請求項5】
前記ヒマワリ種子殻/莢は、1から10%の含水率を有すること
を特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のバイオ材料ないしバイオコンポジット。
【請求項6】
前記ヒマワリ種子殻/莢は、4から8%の含水率を有すること
を特徴とする、請求項5に記載のバイオ材料ないしバイオコンポジット。
【請求項7】
前記ヒマワリ種子殻/莢は、5から7%の含水率を有すること
を特徴とする、請求項5または6に記載のバイオ材料ないしバイオコンポジット。
【請求項8】
前記ヒマワリ種子殻/莢の粒径は、0.1から0.3mmの範囲にあること
を特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のバイオ材料ないしバイオコンポジット。
【請求項9】
前記ヒマワリ種子殻/莢の油分は、1から2%の間であること
を特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のバイオ材料ないしバイオコンポジット。
【請求項10】
梱包材、またはドアもしくはテラスデッキである家具、または自動車部品を製造するために、請求項1〜9のいずれか一項に記載のバイオ材料ないしバイオコンポジットを使用すること
を特徴とする使用法。
【請求項11】
前記梱包材は、食料品梱包材、またはヒマワリ油用の容器もしくは瓶であること
を特徴とする、請求項10に記載の使用法。
【請求項12】
ヒマワリ種子殻/莢を使用してヒマワリ・プラスチック・コンポジット(SPC)を製造する方法であって、
前記ヒマワリ種子殻/莢の油分は、最大で4%であり、
前記ヒマワリ種子殻/莢の粒径は、0.01から0.5mmの範囲にあり、
プラスチック材料として、ポリプロピレン(PP)および/またはポリエチレン(PE)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)および/またはABSおよび/またはポリラクチド(ポリ乳酸、PLA)および/またはポリスチレン(PS)が使用され、
前記ヒマワリ種子殻/莢の材料と少なくとも前記プラスチック材料が調合されること
を特徴とする方法。
【請求項13】
前記ヒマワリ種子殻/莢は、粉砕され且つ油分低減されていること
を特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
調合された前記材料を、押出成形および/または射出成形および/または回転成形および/またはプレス技術および/または熱成形法および/または深絞り法によって所望のプラスチック製品に加工すること
を特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオコンポジットないしバイオ材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなバイオ材料(Biowerkstoff)ないしバイオコンポジットは、例えば「ウッド・プラスチック・コンポジット」(短縮形「WPC」)として、すなわち木材・プラスチック複合材料として既に公知である。これらは「ウッド(−繊維)ポリマー・コンポジット」または「木材ポリマー材料」とも称される。前記バイオ材料は、熱可塑性に加工処理される複合材料であり、種々の割合の木材、典型的には木粉、プラスチックおよび添加剤から製造される。これらは多くの場合、押出成形、射出成形、回転成形のようなプラスチック工業の現代的方法またはプレス技術によって、または熱成形法によっても加工処理される。
【0003】
WPCでは木材(とりわけ木粉)を処理することが公知であるだけではなく、例えばケナフ、ジュートまたは麻のような他の植物繊維を処理することも公知である。
【0004】
本発明では、これまで公知のWPC、すなわちこれまで公知の天然繊維強化プラスチックの改善、とりわけ出発材料に対する製造コストの低減が取り扱われる。
【0005】
これまで公知のWPCでは、木材成分が通常20%超である。例えば木質繊維成分または木粉成分が50〜90%であり、これらの材料がポリプロピレン(PP)または稀ではあるがポリエチレン(PE)からなるプラスチック母材(Kunststoffmatrix)に埋め込まれたWPCが公知である。木材は熱に対して敏感なため、200℃未満の処理温度しか可能でない。それより高い温度では、木材の熱的変性(thermischen Umwandlungen)と分解が生じ、このことは全体として材料の特性を望ましくないやり方で変化させる。
【0006】
これまで公知の天然繊維強化プラスチックでは、添加剤の添加によっても固有の材料特性が最適化される。そのような材料特性は、例えば木材とプラスチックとの結合性(Bindung)、流動性、防炎性、とりわけ外部適用のための色形成(カラーリング)、および耐候性、耐紫外線性および有害物質(ないし生物)抵抗性である。
【0007】
それぞれ50%までのポリ塩化ビニル(PVC)と木質繊維の混合物をベースにして製造されるWPCも既に公知である。このWPCは、改質メラミン樹脂のような熱可塑性に処理される熱硬化性樹脂をベースに、竹のような木材に類似する産物の処理と同様に開発中であり、「竹プラスチック・コンポジット(BPC)」と称される。BPCは、木質繊維が竹繊維により置換されたWPC複合材料に分類される。
【0008】
パーティクルボードまたはプライウッドのような従来の木質材料に対する前記バイオ材料の利点は、材料の自由な3次元の形状付与性(成形可能性)と大きな耐湿性である。オールプラスチックと比較してWPCは、高い剛性と格段に低い熱膨張係数を提供する。これまでのバイオ材料の欠点は、製材木材(切り出し木材、Schnittholz)よりもその破壊強度が小さいことである。しかし補強材が挿入された(バイオ材料の)成形部材は、中実の成形部材および製材木材よりも破壊強度が大きい。最終コーティング(abschliessende Beschichtung)を施さない成形部材の水分吸収率は、中実の成形プラスチック部材、またはフィルムコーティングないし流動性コーティング(Fliessbeschichtung)の施された成形部材よりも大きい。
【0009】
これまで記述したバイオ材料をテラスデッキとして、またはプレートの製作のために使用することが公知であり、とりわけ建設業、自動車工業および家具製造業でWPCが使用されるのも同様に公知であり、床張り(テラス、水泳プール等)、ファサードに対する屋外分野、および家具でのとりわけ熱帯木材に対する代替としてのWPCの使用が知られている。WPC製の多数のイスおよび棚システムも公知である。さらなる適用は、筆記用具、容器、家電製品であり、WPCバイオ材料は、電気絶縁シート用のプロフィールとして技術分野で、およびとりわけドア内張および小物棚として自動車工業で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP 0 976 790 A1
【特許文献2】US 3 927 235 A
【特許文献3】US 5 663 221 A
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Celine Geneau-Sbartai et al. "Sunflower Cake as a Natural Composite: Composition and Plastic Properties"、 Journal of Agricultural and Food Chemistry、 Bd.56、 Nr.23、 10.Dezember 2008 (2008-12-10)、 pp. 11198-11208
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、これまでのWPCバイオ材料を改善し、とりわけ安価に構成し、その材料特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、請求項1の特徴を有するバイオ材料が提案される。有利な改善形態は従属請求項に記載されている。
即ち本発明の第1の視点により、ヒマワリ種子殻/莢を少なくともプラスチック材料と調合させてなるバイオ材料ないしバイオコンポジットであって、前記ヒマワリ種子殻/莢の油分は、最大で4%であり、前記ヒマワリ種子殻/莢の粒径は、0.01から0.5mmの範囲にあることを特徴とするバイオ材料ないしバイオコンポジットが提供される。
また本発明の第2の視点により、ヒマワリ種子殻/莢を使用してヒマワリ・プラスチック・コンポジット(SPC)を製造する方法であって、前記ヒマワリ種子殻/莢の油分は、最大で4%であり、前記ヒマワリ種子殻/莢の粒径は、0.01から0.5mmの範囲にあり、プラスチック材料として、ポリプロピレン(PP)および/またはポリエチレン(PE)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)および/またはABSおよび/またはポリラクチド(ポリ乳酸、PLA)および/またはポリスチレン(PS)が使用され、前記ヒマワリ種子殻/莢の材料と少なくとも前記プラスチック材料が調合されることを特徴とする方法が提供される。
本発明によれば以下の形態が可能である。
(形態1)ヒマワリ種子殻/莢をベースにしたバイオ材料ないしバイオコンポジットが提供される。
(形態2)前記ヒマワリ種子殻/莢は粉砕されており、例えば3mm以下の粒径を有することが好ましい。
(形態3)バイオ材料製品におけるヒマワリ種子殻/莢の割合が、40から90%、好ましくは50から70%であること好ましい。
(形態4)梱包材、好ましくはヒマワリ油用の例えば容器または瓶である食料品梱包材、またはドアもしくはテラスデッキである家具、または自動車部品を製造するためのヒマワリ・プラスチック・コンポジット(SPC)の使用が提供される。
(形態5)ヒマワリ種子殻/莢の代わりに、ナッツまたは穀類の皮を使用することが好ましい。
(形態6)ヒマワリ種子殻/莢は、1から10%、好ましくは4から8%、特に有利には5から7%の含水率を有し、および/またはヒマワリ種子殻/莢の粒径は、0.01から1mmの範囲、好ましくは0.1から0.3mmの範囲にあり、および/または種子殻の油分は、最大で6%、好ましくは最大で4%、特に有利には1から2%の間であることが好ましい。
(形態7)ヒマワリ種子殻/莢は、プラスチック材料と調合処理される(されている)ことが好ましい。
(形態8)ヒマワリ種子殻/莢、とりわけ粉砕されたヒマワリ種子殻/莢を使用して、押出成形および/または射出成形および/または回転成形および/またはプレス技術および/または熱成形法によってヒマワリ・プラスチック・コンポジット(SPC)を製造する方法であって、プラスチック材料として、ポリプロピレン(PP)および/またはポリエチレン(PE)および/またはポリ塩化ビニル(PVC)および/またはABSおよび/またはポリラクチド(ポリ乳酸、PLA)および/またはポリスチレン(PS)が使用される、方法が提供される。
(形態9)ヒマワリ種子殻/莢を使用して、ヒマワリ・プラスチック・コンポジットを製造する方法において、ヒマワリ種子殻/莢を少なくともプラスチック材料と調合処理し、調合処理された材料を押出成形および/または射出成形および/または回転成形および/またはプレス技術および/または熱成形法および/または深絞り法等によって所望のプラスチック材料に加工処理する、方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によれば、木材、竹またはその他の木質繊維製品の代わりに、ヒマワリ種子殻ないし莢(外皮)(以下、「種子殻」で代表する)がWPC製品に対する出発材料として使用され、そのような製品の製造に使用される。
【0015】
ヒマワリは世界中の全ての地域で栽培されており、ヒマワリ生産の主要な目的は、ヒマワリの種子とりわけその中身を獲得することである。種子を処理する前にヒマワリの種子の殻を取らなければならない。すなわち、本来のヒマワリの種子からその種子殻が除去される。この種子殻はヒマワリ種子生産の際に大量に発生し、ヒマワリ種子生産の擬似廃棄物として、他の使用目的のために例えば家畜の飼料として、バイオガス工場等で使用することができる。
【0016】
ヒマワリ種子殻の利点は、先ず、これらが大量に発生するだけでなく、その大きさが小さいので比較的小さな形で存在することであり、したがって「SPC」(ヒマワリ・プラスチック・コンポジット)に対する出発材料を形成するために僅かな処理、例えば粉砕しかさらに必要としないことである。したがってヒマワリ種子殻の粉砕ないし磨砕は、WPC製品のための木粉の製造と比較して格段に小さなエネルギー消費と結び付いている。
【0017】
ヒマワリ種子殻の投入および使用の特別の利点は、これがSPCのために使用するのにも非常に適していることであり、このSPCは、例えば瓶、容器(Dosen)である梱包材、とりわけ食料品梱包材を製造するのに用いられる。
【0018】
しかしとりわけ最初の実験で、粉砕ないし磨砕されたヒマワリ種子殻は、SPCとして処理するのに非常に適しており、したがって食料品梱包材を製造するのに優れ、この食料品梱包材は保存される食料品の味に不利に作用したり、何らかの変化を生じさせたりするものではないことが示された。
【0019】
したがって本発明は、資源保護的な梱包材料等を製造するのに非常に持続的なアプローチである。
【0020】
粉砕ないし磨砕されたヒマワリ種子殻の処理は、有利にはウッド・プラスチック・コンポジットの製造の場合と同様に行うことができる。
【0021】
ヒマワリ種子殻の割合は、最終製品の50〜90%とすることができ、プラスチック母材としては特にポリプロピレン材料が好ましいが、ポリエチレン材料またはポリビニル材料も考えられる。しかし後者はさほど適さないと思われる。
【0022】
ヒマワリ殻(ヒマワリ種子殻)は、熱的に敏感であるので200℃までの処理温度で十分に加工処理することができ、210℃から240℃、好ましくは230℃までの温度も可能である。しかし温度が高いと熱的変性または分解が生じ得る。
【0023】
添加剤を添加することにより、固有の材料特性が最適化され、例えばヒマワリ種子殻とプラスチックとの結合性、ヒマワリ種子殻/プラスチック混合物の流動性、防炎性、カラーリングおよびとりわけ食料品適用に対して耐油性、耐紫外線性および有害物質(ないし生物)抵抗性が最適化される。
【0024】
特に好ましくは、一方でPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチロール)樹脂と他方でヒマワリ種子殻の混合比はそれぞれ50%である。したがってこのような混合物においては、一方ではPPの比率(Fraktion)と、他方では(磨砕された)ヒマワリ種子殻(ヒマワリ殻)の比率とが同じ量で投入される。ここでヒマワリ殻は、その粒径、含水率、オイル含有率等に関して本明細書に記載の特性を有する。PP、PEまたはABSのような前記プラスチックの代わりに、PVC(ポリ塩化ビニル)またはPS(ポリスチレン)またはPLA(ポリラクチド)も使用することができる。したがって処理温度は、プラスチックコンポーネントの最高処理温度が種子殻材料の最高処理温度より低い場合には、このプラスチックコンポーネントによって決定される。
【0025】
ここで本発明によるヒマワリ・プラスチック・コンポジット(SPC)は、プラスチック製造で既に良好に導入されている方法により加工処理することができる。特に好ましくは射出成形による加工処理であるが、他のプラスチック加工処理形態も簡単に考えられ、可能である。
【0026】
射出成形の場合、一方でプラスチックから、他方で粉砕ないし磨砕されたヒマワリ種子殻から成る材料、すなわち混合材料は、溶融物の全ての部分が良好な流動性を有するように均質に、問題なしに計量配分できなければならない。
【0027】
したがってヒマワリ種子殻材料の粒径は0.05mmから2mmの間であり、好ましくは1mm未満であることが望ましい。特に有利には、ヒマワリ殻(ヒマワリ種子殻材料)の粒径は0.01から0.5mmであり、0.1から0.3mmの粒径が特に好ましい。必要な場合には、種子殻材料の大部分、例えば90%が前記の領域にあり、10から20%がこの領域外にある(公差精度の問題で)粒径でも達成される。
【0028】
好ましくはヒマワリ種子殻材料は高い乾燥度を有する。すなわち含水率は1から9%の間、好ましくは4から8%の間である。
【0029】
殻材料(種子殻材料)は油分(油成分)を有することもあり、これは6%まで、好ましくは最大で4%以下である。ヒマワリ種子殻の形状に基づき、および耐衝撃性が小さいことにより、射出成形での壁厚は、プラスチック粒状物が単独で使用される場合よりも厚く設計される。格段に高い耐熱変形性(Waermeformbestaendigkeit)が有利であり、この高い耐熱変形性は比較的高い温度において成形材料に剛性を付与する。したがってSPC成形品は、高い温度で型枠から取り外すことができる。
【0030】
本発明は、梱包材の製造のために、好ましくは例えば容器、瓶等である食料品梱包材の製造のためにSPCを使用するのが特に適する。このような梱包材には、必要に応じてさらに内側ないし外側にコーティングを施すことができ、これにより、梱包材全体をより頑丈にすることができ、さらに梱包される材料、例えばオイル、飲料等への場合による梱包材料、すなわちSPCによる感覚的な影響が排除される。
【0031】
ヒマワリ種子殻の使用は、本願では好ましくは「バイオ・プラスチック・コンポジット」を製造するための種子殻の使用である。
【0032】
ヒマワリ種子殻ないしヒマワリ種子の殻の代わりに、他の果実の他の殻ないし莢も本発明により使用することができ、例えばナッツ(とりわけヘーゼルナッツ、クルミ、ブラジルナッツ、ブナの実、ドングリ)または穀類、とりわけライ麦、小麦、エン麦、ライ小麦、大麦、トウモロコシ、米、粟等も使用することができる。
【0033】
既に述べたように、天然繊維強化ポリマーにおいては木材ないし木質繊維等をコンパウンド材料として使用することが既に公知であり、これにより木材プラスチック・コンパウンド材料が製造され、この材料は後でさらに加工処理される。後での加工処理の際には、コンパウンド材料が溶融され、ないしいずれの場合でも熱的に強く加熱され、これにより流動性に、すなわち加工処理可能にする。しかし200℃の温度に達すると、木材・プラスチック・コンポジット材料の場合は非常に問題である。なぜなら木材の熱的負荷が200℃の温度領域から過度に大きくなり、そのため全ての材料が有害な作用を被るからである。しかしポリマー、すなわちポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)またはポリ塩化ビニル(PVC)のようなポリマー母材(マトリクス)は、これが高温でも、すなわち200℃より格段に高い温度でも、例えば射出成形等で加工処理できない場合には、その材料のクリープ特性(Kriechverhalten)および低い耐熱変形性のため、多くの構造的適用には適さない。木材プラスチック・コンポジット材料から成る荷重を受けるエレメントは、PPまたはPEベースの木材プラスチック・コンポジット(WPC)よりも有意に良好な機械的特性も有していなければならない。
【0034】
既に述べたように、高性能プラスチックを母材として使用することは、(200℃までの)溶融温度の設定により強く制限される。これに加えて、可能な工業的ポリマーは非常に高価であり、したがって経済的にはほとんど代替とはならない。
【0035】
試験により、本発明のSPCバイオ材料は300℃までの処理温度でも実現可能であることが発見できた。いずれも場合でも、220℃から250℃の範囲の加工処理は材料劣化を引き起こさず、したがって許容できる価格で機械的特性を有意に改善することができる。
【0036】
ヒマワリ種子殻を使用した本発明のバイオ材料ないしバイオコンポジットは、有利には自動車工業分野のプラスチック部品に対し、またフィルム、包装袋、梱包材、工業物品および消費財、床材、家具に有利に使用され、適用される。自動車工業分野に対しては、例えばホイールハウジングのシェル(いわゆるホイールハウスシェル)、エンジンカバーまたはアンダーボディパネルも考えられる。フィルムおよび包装袋の分野では、本発明のバイオ材料はサイロフィルム、包装フィルムおよび包装袋の製造のために使用することを述べておく。梱包材および容器の分野では、とりわけ食料品梱包材、ゴミ箱、またはプラスチック容器(Kunststoffdosen)および対応の容器の製造を述べておく。本発明のバイオ材料の本発明による使用として、飲料品ケース、パンケースおよび植木鉢の製造も考えられる。家庭および園芸分野では、家具、例えばイス、ベンチ、テーブル、テラスデッキおよびドアの製造も考えられる。
【0037】
最後に、一方でヒマワリ種子殻材料の
容積の割合および/または他方でその粒径により、本発明のバイオ材料の耐衝撃性が所望の形式およびやり方で調整されることが示された。
【0038】
既に述べたように、本発明のバイオ材料ないし本発明のバイオコンポジットはヒマワリ種子殻を含んでおり、したがって本発明のバイオ材料ないし本発明のバイオコンポジットは、ベース材料としてヒマワリ種子殻を有する。本願においてヒマワリ種子殻材料について述べる場合、これはヒマワリ殻、ヒマワリ種子殻、ヒマワリ莢(外皮)と同義である。常にヒマワリ種子の種子殻材料のことを言う。
【0039】
種子殻材料を種子から分離した後、すなわち剥いだ後に、含水率、粒径または油分に関するパラメータが、本願により特に有利であるとして使用されるパラメータから異なっている場合、材料は相応に処理および加工される。例えば種子殻材料が15%の含水率を有する場合、この含水率は乾燥によって所望の値に低減される。剥いた後に種子殻材料が過度に大きな粒径を有する場合、さらなる磨砕ないし微細化により所望の粒径に達せられる。剥いた後に種子殻材料が過度に高い油分を有している場合、通常の油分吸収プロセスにより(熱処理によっても可能)、殻中の油分が所期のように低減される。
【0040】
以下にバイオ材料の典型的な組成を述べる。この組成は、一方では所望の技術的特性を満たし、他方ではこれまでのプラスチックないしバイオプラスチックより格段に有利である。
【実施例1】
【0041】
実施例:バイオプラスチック「ABS300」
520kg PP(ポリプロピレン)、300kg 種子殻、30kg 添加剤(芳香剤)、30kg 添加剤(耐衝撃性)、30kg 添加剤(湿潤剤)、30kg 添加剤(流動特性)、30kg 添加剤(粘着性付与剤)。30kg 添加剤(剥離剤(Schleppmittel))。
【0042】
前記材料の混合物は、通常のように調合処理(Compoundierung)に供給され、調合処理された材料から所望のプラスチックを所望の形態で、例えば押出成形または射出成形または回転成形またはプレス技術または熱成形法で作製することができる。
【0043】
粘着性付与剤としては、例えばALTANAグループの会社の製品、すなわちBYK Additives&Instruments社の技術データシート、07/11版からの製品「SCONA TPPP8112 FA (TM)」(ポリプロピレン天然繊維コンパウンド用の、TPE−Sコンパウンドでの粘着性ないし付着性調整剤)が適する。この製品の技術データシートは表1として挙げられている。
【0044】
剥離添加剤としては、ALTANAグループの会社の製品、すなわちBYK Additives&Instruments社のデータシートX506、03/10版からの製品「BYK−P4200 (TM)」(熱可塑性コンパウンドの臭気とVOC(揮発性有機化合物、Volatile Organic Compounds)放出を低減させる剥離剤)が適する。この製品のデータシートは表2として添付されている。
【0045】
臭気発生に対する添加剤としては、Ciba社の製品である「Ciba IRGANOX1076 (TM)」(処理および長期的熱安定化のためのフェノール系一次酸化防止剤)が特に適すると思われる。この製品のデータシートは表3として添付されている。
【0046】
処理安定化のためのさらなる添加剤として、Ciba社の製品「Ciba IRGAFOS168 (TM)」(処理安定剤)が適している。この製品の説明は表4として添付されている。
【0047】
ポリプロピレン材料として特に製品「Moplen EP300K (TM)−PP−Lyondel Basell Indstries」が適する。この製品のデータシートは表5として添付されている。
【0048】
内部名称「PP50」と称される他のバイオ材料のさらなる組成(第2実施例)は以下のとおりである。
【実施例2】
【0049】
45% PP Moplen EP300K (TM) ペレット
50% ヒマワリ種子殻
Irgafos 168 (TM)、粉末 0.20%
Irganox 1076(TM)、粉末 0.30%
BYK P 4200 (TM) 2.00%
SCONA TPPP 8112 FA (TM)、粉末 2.5%
【0050】
前記構成成分は通常のように調合処理され、本願の所望のプラスチック製品を製造するために、記述の方法、例えば押出成形、射出成形、深絞り、回転成形、プレス技術、熱成形法で加工処理することができる。
【0051】
本願において、調合処理(Compoundieren)またはコンパウンディング(Compoundierung)について述べる場合、これは本発明のバイオ材料ないしバイオプラスチックのプラスチック処理を意味し、これは具体的には、添加材料(フィラー、添加剤等)を混合することにより本発明のバイオ材料の固有特性を所期のように最適化する錬成工程(Veredelungsprozess)を意味する。コンパウンディングは、例えば押出成形機(例えば2軸押出成形機、しかし反転2軸押出成形機並びに遊星ギヤ押出成形機およびコニーダーを使用することも可能である)で行われ、とりわけ搬送、溶融、拡散、混合、気化および圧縮形成の方法操作を含む。
【0052】
調合処理の目的は、処理および適用に対して可及的に最適の特性を備えるプラスチック成形材料をプラスチック材料から提供することである。ここで調合処理の役目は、粒径を変化させ、添加剤を混和し、不所望の構成成分を除去することである。
【0053】
調合処理によって最終的に出発バイオ材料が製造され、この出発バイオ材料は一方では、個別の出発構成成分、すなわちシェル材料、ポリプロピレン、添加剤等を、混合された形態で含む。調合処理されたバイオ材料製品は、通常、中間製品としてペレット等の形態で製造される。したがってこれは、プラスチック処理装置、例えば射出成形機において所望のプラスチック製品を製造するためにさらに加工処理される。
【0054】
本発明によって、ヒマワリ処理の副産物がプラスチックと組み合わされる。これにより資源が節約され、プラスチック製造の原油依存率を持続的に30%ないし70%だけ低減することができる。
【0055】
これに関連して、本発明のバイオコンポジットないしバイオ材料の処理はCO
2サイクル(C02 Haushalt)にも、すなわちそこから製造される製品のエコロジーバランスにも非常にポジティブな影響を与える。
【0056】
本発明によって、バイオポリマーとも称することのできる本発明のバイオ材料の加工処理を300℃までで実現することもできる(これは最初の試験で得られた)。そして有意に改善された機械特性を備える新規のバイオ材料(バイオポリマー)を、許容できる価格で提供することができる。
【0057】
特に本発明のバイオ材料(バイオポリマー)は全ての製品分野で使用することができ、既存の道具を加工処理のために問題なしに使用することができる。
【0058】
本発明の目的は、バイオ充足率が非常に高く、それにもかかわらず工業的バイオプラスチックとして問題なしに加工処理することのできるバイオ材料(バイオポリマー)を開発することであり、この目的は納得のいく形で達成された。最後に、前記プラスチック(PP、PE、ABS、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)の代わりに、ポリラクチド(ポリ乳酸)(PLA)とプラスチックシェル(これらの粉末)とを混合ないし調合処理することもできる。これによりプラスチック全体のバイオ率がさらに高まる。PLAプラスチックそれ自体は既に公知であり、一般的に、化学的に互いに結合された多数の乳酸分子から形成され、ポリエステル類に属する。ポリラクチド(PLA)プラスチックには生体適合性がある。
【0059】
本発明のバイオ材料は、種類のまったく異なる製品の製造に使用することができ、例えば梱包材(食料品梱包材)、自動車部品(例えばホイールハウジングの外装)の製造に、家具(テーブル、イス、ベンチ)、テラスデッキまたはドア等のために使用することができる。本発明のバイオ材料は、とりわけ食料品工業で使用されるバスケットないしカゴ、容器ないしコンテナを製造するのに使用することもできる。
【0060】
以下、表1、2、3、4および5が続く。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】