(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134330
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】うつ病及び不安症の食事管理用医療食品並びにその方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/02 20150101AFI20170515BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
A61K35/02
A61P25/24
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-545850(P2014-545850)
(86)(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公表番号】特表2015-500832(P2015-500832A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】RU2012001018
(87)【国際公開番号】WO2013085431
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】2011149370
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】514140609
【氏名又は名称】ロミートキン,イーゴリ アナトリェヴィッチ
(73)【特許権者】
【識別番号】514140610
【氏名又は名称】チェルノピャトコ,アントン セルゲイヴィッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ロミートキン,イーゴリ アナトリェヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】チェルノピャトコ,アントン セルゲイヴィッチ
【審査官】
鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0124201(US,A1)
【文献】
特表2008−533003(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0292719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/02
A61P 25/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.0002分子%〜0.0278分子%のアイソトポログHODを含有する水を含む、大うつ病障害の食事管理用医療食品。
【請求項2】
前記水が0.0178分子%〜0.0278分子%のアイソトポログHODを含有する、請求項1に記載の医療食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品産業及び健康管理の分野に属する。より具体的には、本発明はうつ病及び不安症の食事管理用医療食品に関する。
【背景技術】
【0002】
うつ病は、気分の低下、活力の喪失、興味の喪失、身体的疾患を伴っている感覚(feelingof physical illness)、集中力の低下、食欲の変化、睡眠の変化、並びに身体機能及び精神機能の減退等の症状の組合せを特徴とし、容赦ない絶望感、無力感、罪悪感、及び不安感をもたらす障害である。世界的に、うつ病は能力低下及び早世の主な原因である。うつ病の正確な原因は不明である。現在のうつ病治療は、心理療法、抗うつ薬、又は両者の併用で構成される。しかしながら、うつ病障害の患者の食事管理に関連する特別な栄養要件は存在しない。
【0003】
また、多くのうつ病は不安症を伴う。大うつ病患者の85%までが、全般性不安障害とも診断された。不安症は、恐怖、パニック、又は殆どの人が不安を感じないか若しくは脅かされていると感じない状況での不安等の症状の組合せを特徴とする障害である。不安症とうつ病は関係している。うつ病と不安症はいずれもストレスに対する生理的反応であり、共通の分子機構を共有する。現在の不安症の治療は、抗不安薬で構成される。しかしながら、不安障害の患者の食事管理に関連する特別な栄養要件は存在しない。
【0004】
水は必須栄養素である。総水分摂取量は、飲料水、飲料中の水、及び食品に含有される水を含む。適切な総水分摂取量は、米国の調査データからの総水分摂取量の中央値に基づいて、男性及び女性それぞれ1日当たり3.7リットル及び2.7リットルと設定された(非特許文献1)。天然水は、安定な水素(H及びD)及び酸素(
16O、
17O、
18O)の同位体により形成される9種の水アイソトポログ(H
216O、H
217O、H
218O、H
16OD、H
17OD、H
18OD、D
216O、D
217O、D
18O)の組成物であり、主な水アイソトポログH
2O(H
216O)の含有量は99.7317分子%(mol%)であり、主な重水素含有アイソトポログHOD(H
16OD)は0.0311mol%(国際標準水試料(Vienna Standard Mean Ocean Water:VSMOW))である(非特許文献2、非特許文献3)。海水の蒸発及び濃縮のプロセスのため、天然水のHODレベルは地球上の地域によってわずかに変化する。唯一除外されるのは南極大陸の天然水であり、約0.0178mol%のレベルでHODを含有する(Standard LightAntarctic Precipitation:SLAP)。多くの人々は、0.0280mol%〜0.0311mol%のHODレベルの天然水を消費する地球上の地域に居住する。計算基準により、1日当たり2.7リットル及び3.7リットルの天然水を消費する場合、女性及び男性は、それぞれ1日当たり絶対栄養素(obligate nutrient)として0.8ml以上及び1.0ml以上のHODを消費する。
【0005】
本発明者らは、HODはうつ病及び不安症のもとでは非常に望ましくない栄養素であり、HODの制限が特別な医学的に決定された栄養素要件を表す可能性があり、その食事管理は通常の食事の修正のみでは達成され得ないことを見出した。驚くべきことに、本発明者らは、哺乳動物は飲料水中のHODレベルに非常に敏感であり、その天然濃度の範囲内で0.0006mol%のHOD含有量の変化でさえも心理的ストレスに対する感受性、並びに不安症及びうつ病の発症の素因に著しい影響をもたらすことを見出した。よって、うつ病及び/又は不安症の食事管理は、HODの1日消費量の制限によって達成され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】DietaryGuidelines for Americans, 2005, U.S. Department of Health & Human Services
【非特許文献2】Rothman et al.,J. Quant. Spectrosc. Radiat. Transfer, 1998, 60, 665
【非特許文献3】Rothman et al.,J. Quant. Spectrosc. Radiat. Transfer, 2003, 82, p.9
【発明の概要】
【0007】
本発明の一目的は、0.0002分子%〜0.0278分子%のアイソトポログHODを含有する水を含む、うつ病及び/又は不安症の食事管理用医療食品を提供することである。
【0008】
本発明の一目的は、本発明の医療食品を、それを必要とする被検体に投与する工程を含む、うつ病及び/又は不安症の食事管理の方法を提供することである。
【0009】
本発明の一目的は、(a)抗うつ薬を被検体に投与する工程と、(b)本発明の医療食品を被検体に投与する工程とを含む、それを必要とする被検体におけるうつ病の治療方法を提供することである。
【0010】
本発明の一目的は、(a)抗不安薬を被検体に投与する工程と、(b)本発明の医療食品を被検体に投与する工程とを含む、それを必要とする被検体における不安症の治療方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、0.0002分子%〜0.0278分子%のアイソトポログHODを含有する水を含む、うつ病及び/又は不安症の食事管理用医療食品を提供する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、医療食品が0.0178分子%〜0.0278分子%のアイソトポログHODを含有する水を含む。
【0013】
本明細書で使用される「医療食品」の用語は、医師の管理下で経腸的に消費又は投与されるように製剤化された食品を指し、うつ病及び/又は不安症の具体的な食事管理を提供することが意図され、認識される科学原理に基づき、医学的評価によって特有の栄養要件が確立される食品を指す。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、医療食品は、特別に製剤化され、飲料製品として加工される。かかる飲料製品として、飲料水、飲料及び液体食品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書で使用される「うつ病」の用語は、典型的には、悲しい気分が続く及び/又は殆どの活動における興味若しくは喜びの喪失を特徴とする精神障害を指す。うつ病障害の例として、大うつ病としても知られる大うつ病障害、単極性障害、又は臨床的うつ病、大うつ病エピソード、非定型うつ病、(気分の)落ち込み、メランコリーうつ病、精神病性うつ病、高齢者のうつ病、心理社会的ストレス関連うつ病、及び産後うつ病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書で使用される「不安症」の用語は、不安障害又は不安な状態を指す。不安障害の例として、パニック発作、広場恐怖症、急性ストレス障害、特定の恐怖症、パニック障害、精神作用物質不安障害、器質性不安障害、強迫性不安障害、心的外傷後ストレス障害、全般性不安障害、及び特定不能の不安障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書で使用される「アイソトポログ」の用語は、IUPACCompendium of Chemical Terminology 第2版(1997)に従い、同位体組成(同位体置換の数)のみが異なる分子実態を指す。かかるアイソトポログの例として、H
216O、H
217O、H
218O、H
16OD、H
17OD、
1H
18OD、D
216O、D
217O及びD
218Oが挙げられる。本発明において、アイソトポログH
16ODがHODとして表示される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、水中のHOD含有量を、当該技術分野からよく知られている方法により決定することができる。HODレベルは、レーザー分光法によって直接測定され得る(R.Van Trigt.R. van Trigt. Laser Spectrometry for Stable IsotopeAnalysis of Water Biomedical and PaleoclimatologicalApplications. 2002, Groningen: University Library Groningen)。また、HODレベルを、H/D比として従来の同位体質量分析法により決定し、水中の他の重水素含有アイソトポログの含有量がHODに比べて無視することができる程度であることを考慮して、HOD含有量に再度計算することができる。参照のため、VSMOW水は、0.00006mol%のH
18OD、0.00001mol%のH
17OD、並びに合計0.00001mol%未満のアイソトポログD
216O、D
217O及びD
218Oを含有する。本発明の水における0.0002mol%〜0.0278mol%のアイソトポログHODの範囲は、重水素含有量1ppm〜139ppmの範囲に相当する。本発明の水における0.0178mol%〜0.0278mol%のアイソトポログHODの範囲は、重水素含有量89ppm〜139ppmの範囲に相当する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、0.0002mol%〜0.0278mol%のアイソトポログHODを含有する水を、当該技術分野からよく知られている様々な工業的手法、例えば天然水の減圧蒸留により調製することができる。0.0178mol%〜0.0278mol%のアイソトポログHODを含有する水を希少な天然起源(例えば、南極地方の降水)から得ることができ、又は当該技術分野からよく知られている様々な工業的手法、例えば天然水の減圧蒸留により調製することができる。
【0020】
本発明の実施においては、0.0002mol%〜0.0278mol%のアイソトポログHODを含有する水は、天然レベルと同等又はそれとは異なるレベル、例えば、0<H
218O≦0.2000mol%、0<H
217O≦0.0370mol%、0<H
17OD≦0.0270mol%、0<H
18OD≦0.0270mol%、0<D
216O≦0.0270mol%、0<D
217O≦0.0270mol%、及び0<D
218O≦0.0270mol%で他の水アイソトポログを含有してもよい。
【0021】
本発明の医療食品は、よく知られた任意の原料を使用するよく知られた手法によって調製され得る。かかる任意の原料は、一般的には組成物の約0.0005重量%〜約10.0重量%、好ましくは約0.005重量%〜約1.0重量%のレベルで個別に使用される。好適な任意の原料の例として、緩衝液、甘味料、着色剤、担体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、医療食品は、飲料水又は飲料の形態で特別に製剤化され製造された液体医療食品である。液体医療食品は、0.0002mol%〜0.0279mol%のアイソトポログHODを含有する水を、二酸化炭素又は/及び典型的には天然飲料水に豊富な(abundant)無機塩で飽和することにより調製され得る。かかる塩の例として、塩化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
さらに、本発明は、本発明の医療食品を、それを必要とする被検体に投与する工程を含む、うつ病及び/又は不安症の食事管理の方法を提供する。
【0024】
本発明の方法の実施においては、医療食品は、1日又はそれより長い期間に亘って、食事を管理し、及び/又は医学的管理を提供する医師によって処方された量で経口的に投与され得る。
【0025】
本発明の方法の実施においては、医療食品は、1日当たり被検体当たり0.1〜4.0リットルの量で投与することができる飲料水又は飲料として製剤化されてもよい。
【0026】
さらに、本発明は、(a)抗うつ薬を被検体に投与する工程と、(b)本発明の医療食品を被検体に投与する工程とを含む、それを必要とする被検体におけるうつ病の治療方法を提供する。
【0027】
本明細書で使用される「抗うつ薬」の用語は、うつ病を治療するために使用される薬剤を指す。かかる薬剤として、限定されることなく、クロミプラミン、アモキサピン、ノルトリプチリン、モプロチレン(moprotilene)、トリミプラミン、イミプラミン、又はプロトリプチリン等の三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害剤、シタロプラム、エスシタロプラム、デュロキセチン、フルオキセチン、セルトラリン、ノルセルトラリン、パロキセチン、ミルトラゼピン(mirtrazepine)、フルボキサミン、ミルナシプラン、クロミンプラミン(clominpramine)、フェモキセチン、インダプリン(indapline)、アラプロルクレート(alaprolclate)、セリクラミン、又はイフォキセチン等の選択的セロトニン再取り込み阻害剤を含むセロトニン再取り込み阻害剤、デシプラミン、マプロチリン、ロフェプラミン、レボキセチン、オキサプロチリン、フェゾラミン、トモキセチン、又は(S,S)−ヒドロキシブプロピオン等の選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害剤を含むノルエピネフリン再取り込み阻害剤、アミネプチン、ブプロピオン、及びベンラファキシン等のドーパミン再取り込み阻害剤、並びにベンラファキシン、ネファゾドン、又はトラゾドン等の非定型抗うつ薬、上述のいずれかの治療的に活性なアイソマー又は代謝物、並びに上述のいずれか1つの薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、多形体又は共結晶が挙げられる。
【0028】
本発明の方法の実施においては、医師によって処方されたように抗うつ薬を投与する。
【0029】
さらに、本発明は、(a)抗不安薬を被検体に投与する工程と、(b)本発明の医療食品を被検体に投与する工程とを含む、それを必要とする被検体における不安症の治療方法を提供する。
【0030】
本明細書で使用される「抗不安薬」の用語は、不安症を治療するために使用される薬剤を指す。かかる薬剤として、限定されることなく、クロナゼパム、アルプラゾラム、ロラゼパム、クロラゼペート、オキサゼパム、フルラゼパム、ジアゼパム、ハラゼパム、プラゼパム、クロルジアゼポキシド、ブスピロン、ゲピロン、タンドスピロン、イプサピロン、ベンタゼパム、シタロプラム、クロバザム、クロチアゼパム、エチホキシン、エチゾラム、デロラゼパム、ロフラゼプ酸エチル、フルタゾラム、フルオキセチン、フルトプラゼパム、ケタゾラム、メタクラゼパム、メキサゾラム、モクロベミド、オキサゾラム、トフィソパム、ピナゼパム、パロキセチン、ピバガビン、リルマザホン、セルトラリン、チアネプチン、ベンラファキシン、ゾテピン、エスシタロプラム、フルボキサミン、プレガバリン、アゴメラチン、デュロキセチン、オシナプロン、パゴクロン、アプレピタント、デクスメデトミジン、エグルメガド、エプリバンセリン、ベスチピタント、レベチラセタム、オランザピン、チアガビン、エマプニル(emapunil)、デキストフィソパム(dextofisopam)、イトリグルミド、S−デスメチルゾピクロン、ガバペンチン、オピプラモール、スマトリプタン、及びネファゾドン、上述のいずれかの治療的に活性なアイソマー又は代謝物、並びに上述のいずれか1つの薬学的に許容される塩、溶媒和物、クラスレート、多形体、又は共結晶が挙げられる。
【0031】
本発明の方法の実施においては、医師によって処方されたように抗不安薬を投与する。
【0032】
本明細書で使用される「被検体」の用語は、任意の哺乳動物を指す。かかる哺乳動物の包括的な例として、イヌ、ネコ、ウマ及びヒト等の動物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、被検体はヒトである。
【0033】
本発明を立証するため以下の実施例を提示する。実施例は解説であるにすぎず、本発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0034】
実施例1
表1は、本発明の医療食品を調製するための0.0002分子%〜0.0278分子%のアイソトポログHODを含む水試料を示す。或る特定の割合で対照天然水(0.0300mol%HOD)と、60℃及び0.2barの気圧での減圧蒸留により調製された水(0.0178mol%HOD)とを混合することにより、天然濃度0.0178mol%〜0.0278mol%の範囲内でアイソトポログHODを含有する水の試料を調製した。60℃及び0.2barの気圧での天然水の長期減圧蒸留により、0.0002mol%〜0.0278mol%の範囲内でアイソトポログHODを含有する水の試料を調製した。HODレベルを同位体レーザー分光法により測定した。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例2
表2は、うつ病及び不安症の食事管理用医療食品を示す。
【0037】
【表2】
【0038】
塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及び重炭酸ナトリウムを室温下で水に溶解し、その後、得られた生成物を330mlの容量のビンに詰めた。
【0039】
実施例3
本実施例は、HODがうつ病を発症させやすくする飲料水中の望ましくない絶対栄養素であることを立証する。HODのうつ病様行動の素因(predisposing)に対する影響を強制水泳試験(FST)において評価した。個別に飼育された若年成体雄C57Bl/6マウスを各群n=12で使用した。マウスは、2週間に亘り飲料水として自由に実施例1のNo1〜No4の水試料を受け、24時間間隔で2セッションのFSTにおいて試験した。環境温度の水で水位13cm(シリンダーの縁まで7cm)まで満たした直径17cmのガラスシリンダーにおいて、強制水泳試験を行った。動物を6分間採点した。FSTでは、マウスは浮遊期間の増加によりうつ病様行動を示す。2回目のFSTセッションでの浮遊期間をうつ病様行動の基準とした。post−hoc解析としてANOVA及びMann−Whitney検定を使用し、統計学的解析を行った。浮遊期間の平均±SEMとしてデータを表3に提示する。
【0040】
【表3】
*対照と有意に異なる(P<0.05)
【0041】
これらの結果は、うつ病の素因が飲料水中のHODレベルに依存することを示唆している。よって、HODはうつ病のもとでは非常に望ましくない栄養素であり、HODの制限が特別な医学的に決定された栄養素要件を表す可能性があり、その食事管理は通常の食事の修正のみでは達成され得ない。
【0042】
実施例4
本実施例は、HODが、うつ病の中核症状である無快感症を発症させやすくする飲料水中の望ましくない栄養素であることを立証する。無快感症の素因に対するHODの影響を、慢性ストレスモデルの齧歯動物において評価した。個別に飼育された若年成体雄CD1マウスを各群n=20で使用した。ストレス開始前の1週間及び10日間のストレスの間に亘って、マウスは飲料水として自由に実施例1の水試料No1〜No4を受けた。ストレス処理の10日目において、スクロース選択について動物を試験した。スクロース選択試験では、マウスはスクロース選択の低下によりうつ病様行動の中核症状である無快感症を示す。post−hoc解析としてANOVA及びMann−Whitney検定を使用して、統計学的解析を行った。スクロース選択の割合を平均±SEMとして、データを表4に提示する。
【0043】
【表4】
*ストレス負荷対照と有意に異なる(P<0.05)
【0044】
これらの結果は、うつ病の中核症状である無快感症の素因は飲料水中のHODレベルに依存することを示唆している。よって、HODはうつ病のもとでは非常に望ましくない栄養素であり、HODの制限が特別な医学的に決定された栄養素要件を表す可能性があり、その食事管理は通常の食事の修正のみでは達成され得ない。
【0045】
実施例5
本実施例は、HODが不安症を発症させやすくする飲料水中の望ましくない栄養素であることを立証する。不安症の素因に対するHODの影響を、齧歯動物において0字型迷路試験で評価した。個別に飼育された若年成体雄C57Bl/6マウスを各群n=12で使用した。マウスは、2週間に亘って自由に飲料水として実施例1の水試料No1〜No4を受け、0字型迷路試験において試験した。0字型迷路試験では、マウスは迷路の壁のない走行部(open arms)の回避により不安を示す。壁のない走行部における経過時間を不安行動の基準とした。post−hoc解析としてANOVA及びMann−Whitney検定を使用して、統計学的解析を行った。壁のない走行部における経過時間の平均±SEMとして、データを表5に提示する。
【0046】
【表5】
*対照と有意に異なる(P<0.05)
【0047】
これらの結果は、不安症の素因が飲料水中のHODレベルに依存することを示唆している。よって、HODは不安症のもとでは非常に望ましくない栄養素であり、HODの制限が特別な医学的に決定された栄養素要件を表す可能性があり、その食事管理は通常の食事の修正のみでは達成され得ない。
【0048】
実施例6
本実施例は、うつ病の治療方法を立証する。強制水泳試験(FST)における経口で6mg/kgの抗うつ薬イミプラミンの効果を、FSTの前2週間に亘り、飲料水として自由に実施例2の対照食品又は医療食品No1を受けた成体雄C57Bl/6マウスにおいて評価した。FSTでは、マウスは浮遊待機時間の増加によりうつ病様行動を示す。FSTセッションでの浮遊待機時間を強制水泳行動の基準とした。post−hoc解析としてANOVA及びMann−Whitney検定を使用して、統計学的解析を行った。浮遊待機時間の平均±SEMとして、表6にデータを提示する。
【0049】
【表6】
*対照と有意に異なる(P<0.05)
【0050】
表6は、抗うつ薬によるうつ病の治療が、本発明の医療食品を用いたうつ病の食事管理と併用された場合に改善されることを立証している。
【0051】
実施例7
本実施例は、不安症の治療方法を立証する。抗不安薬ジアゼパム0.125mg/kgの皮下注射の0字型迷路試験における効果を、0字型迷路試験の前2週間に亘り、飲料水として自由に実施例2の対照食品又は医療食品No2を受けた成体雄C57Bl/6マウスにおいて評価した。0字型迷路試験では、マウスは迷路の壁のない走行路の回避により不安を示す。壁のない走行路における経過時間を不安行動の基準とした。post−hoc解析として、ANOVA及びMann−Whitney検定を使用し、統計学的解析を行った。壁のない走行路における経過時間の平均±SEMとして、表7にデータを提示する。
【0052】
【表7】
*対照と有意に異なる(P<0.05)
【0053】
表7は、抗不安薬による不安症の治療が、本発明の医療食品を用いた不安症の食事管理と併用された場合に改善されることを立証している。