(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6134401
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】着雪防止装置、信号機着雪防止構造
(51)【国際特許分類】
G08G 1/095 20060101AFI20170515BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20170515BHJP
F21V 29/90 20150101ALN20170515BHJP
【FI】
G08G1/095 D
F21S2/00 663
!F21V29/90
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-13251(P2016-13251)
(22)【出願日】2016年1月27日
【審査請求日】2017年1月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598090184
【氏名又は名称】常盤電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小林 保正
【審査官】
高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−055429(JP,A)
【文献】
実開昭57−198585(JP,U)
【文献】
特開平09−264013(JP,A)
【文献】
特開2000−073321(JP,A)
【文献】
特開平09−279523(JP,A)
【文献】
実開昭59−151926(JP,U)
【文献】
特開2014−059644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
F21V 23/00−37/00
99/00
E01F 9/00−11/00
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明板と、
一対の前記透明板の間の隙間に封入される液体と、
前記隙間に配設され、通電可能な発熱用の電線と、
を具備するヒートパネルと、
前記ヒートパネルに、前記ヒートパネルの面に平行な上下方向の撃力を付与する駆動部と、を具備し、
前記駆動部は、前記ヒートパネルにパルス状の撃力を付与することが可能であることを特徴とする着雪防止装置。
【請求項2】
さらに他の透明板を具備し、前記他の透明板が、一方の前記透明板の外面と隙間をあけて接合され、一方の前記透明板と前記他の透明板との間に断熱用空間が形成されることを特徴とする請求項1記載の着雪防止装置。
【請求項3】
前記ヒートパネルは、台座上に配置され、
前記駆動部は、
前記台座と前記ヒートパネルが接触した状態から、前記ヒートパネルを前記台座から浮き上がらせ、
前記ヒートパネルを下方に落下させて前記台座と衝突させることによって、前記ヒートパネルにパルス状の撃力が付与されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の着雪防止装置。
【請求項4】
前記駆動部は、モータと、前記モータに固定されたカム構造とを具備し、
前記モータの回転によって、前記カム構造を介して、前記透明板にパルス状の撃力が付与されることを特徴とする請求項3記載の着雪防止装置。
【請求項5】
前記駆動部は、電磁コイルと、前記電磁コイルに配置されたプランジャと、を具備し、
前記電磁コイルへの通電と遮断によって、前記プランジャが上下動し、前記透明板にパルス状の撃力が付与されることを特徴とする請求項3記載の着雪防止装置。
【請求項6】
前記駆動部は、油圧装置と、前記油圧装置に接続されたピストンと、を具備し、
前記油圧装置によって、前記ピストンが上下動し、前記透明板にパルス状の撃力が付与されることを特徴とする請求項3記載の着雪防止装置。
【請求項7】
前記駆動部によって付与されるパルス状の撃力は、複数の周波数成分を含むことを特徴とする請求項1記載の着雪防止装置。
【請求項8】
一対の前記透明板は、互いに接合部で接合され、
前記接合部は、一対の前記透明板の縁部近傍に配置され、さらに、隙間に独立して配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の着雪防止装置。
【請求項9】
前記駆動部は、所定時間ごとに駆動されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の着雪防止装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の着雪防止装置を用いた信号機の着雪防止構造であって、
前記信号機の表示灯の前面に前記透明板が配設され、前記電線に通電されることを特徴とする信号機着雪防止構造。
【請求項11】
前記電線が、前記隙間に、蛇行して略水平方向に向けて配設されることを特徴とする請求項10記載の信号機着雪防止構造。
【請求項12】
前記駆動部は、電磁コイルと、前記電磁コイルに配置されたプランジャと、を具備し、前記駆動部が、前記ヒートパネルの上部近傍に配置され、前記ヒートパネルの上部を作用点として、前記ヒートパネルに撃力を付与することを特徴とする請求項10または請求項11記載の信号機着雪防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に雪国において、信号機などへの着雪を防止するための
着雪防止装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境の変化に伴い、冬季における豪雪が問題となっている。豪雪は、道路交通の障害物となるばかりではなく、交通信号機のランプに着雪することで、信号色発光を遮り、交通信号を視認することができない事態をまねく。このため、交通信号機の着雪対策が望まれる。
【0003】
このような、着雪対策としては、信号機を覆うようなフードやカバーを設ける方法がある(例えば特許文献1、特許文献2)。
【0004】
また、発熱体を用いた方法がある(例えば特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−305025号公報
【特許文献2】実開2009−190554号公報
【特許文献3】実用新案登録第3161877号公報
【特許文献4】特開2012−108861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1や特許文献2のように、大掛かりなフード等を設ける方法は、着雪が起こりにくくなるとしても、一度着雪が起こると、着雪部が成長し、信号機の視認性を妨げることとなる。
【0007】
また、特許文献3のように、熱源として赤外線を用いる場合、電気エネルギーを光に変換するため、変換と吸収に係る効率が悪く、発光面の着雪を除去する十分な熱量を得るには、極めて多量の電気エネルギーを要する困難さがある。
【0008】
また、特許文献4は、カバーを設けて、熱源となる光を吸収して発熱させる暗色部を形成するものであるが、光をエネルギー伝達手段に用いる場合の効率の悪さ、およびこのような物を被せることによる通常時における信号機の視認性の妨げとなる。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、既存の信号機に対して設置可能であり、簡易な構造で効率よく着雪を防止することが可能な
着雪防止装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達するために第1の発明は、一対の透明板と、一対の前記透明板の間の隙間に封入される液体と、前記隙間に配設され、通電可能な発熱用の電線と、を具備するヒートパネル
と、前記ヒートパネルに、前記ヒートパネルの面に平行な上下方向の撃力を付与する駆動部と、を具備し、前記駆動部は、前記ヒートパネルにパルス状の撃力を付与することが可能であることを特徴とする着雪防止装置である。
【0011】
さらに他の透明板を具備し、前記他の透明板が、一方の前記透明板の外面と隙間をあけて接合され、一方の前記透明板と前記他の透明板との間に断熱用空間が形成されてもよい。
【0012】
このように、一対の透明板で形成された隙間に液体が封入され、液体中に電線が配置される。このため、電線に通電する際の発熱を液体に伝達させて、効率よく加熱し、融雪することで着雪を防止することができる。さらに、液体中の熱伝導だけでなく、液体の対流を利用できるため、均一に面全体を発熱させることができる。電気エネルギーからの変換と伝達が効率よく行われるため、低コストで、長期間の信頼性にも優れ、省エネルギーな熱源となる着雪防止装置を得ることができる。
【0013】
また、ヒートパネルの一方の面に断熱用空間を形成し、当該ヒートパネルの断熱用空間層側を信号機やカメラのレンズ等の側に向けて設置することで、空間層を断熱層として機能させることができる。このため、ヒートパネルの熱を、設置対象物側に逃がさずに、効率よくヒートパネル前面で利用することができる。このため、ヒートパネルの前面の着雪を効率よく防止することができる。
【0014】
前記ヒートパネルは、台座上に配置され、前記駆動部は、前記台座と前記ヒートパネルが接触した状態から、前記ヒートパネルを前記台座から浮き上がらせ、前記ヒートパネルを下方に落下させて前記台座と衝突させることによって、前記ヒートパネルにパルス状の撃力が付与されることが望ましい。
【0015】
前記駆動部は、モータと、前記モータに固定されたカム構造とを具備し、前記モータの回転によって、前記カム構造を介して、前記透明板にパルス状の撃力が付与されてもよい。
【0016】
前記駆動部は、電磁コイルと、前記電磁コイルに配置されたプランジャと、を具備し、前記電磁コイルへの通電と遮断によって、前記プランジャが上下動し、前記透明板にパルス状の撃力が付与されてもよい。
【0017】
また、前記駆動部は、油圧装置と、前記油圧装置に接続されたピストンと、を具備し、前記油圧装置によって、前記ピストンが上下動し、前記透明板にパルス状の撃力が付与されてもよい。
【0018】
前記ヒートパネルは、台座上に配置され、前記駆動部は、前記台座と前記ヒートパネルが接触した状態から、前記ヒートパネルを前記台座から浮き上がらせ、前記ヒートパネルを下方に落下させて前記台座と衝突させることによって、パルス状の撃力が付与されてもよい。
前記駆動部によって付与されるパルス状の撃力は、複数の周波数成分を含んでもよい。
一対の前記透明板は、互いに接合部で接合され、前記接合部は、一対の前記透明板の縁部近傍に配置され、さらに、隙間に独立して配置されてもよい。
前記駆動部は、所定時間ごとに駆動されてもよい。
【0019】
この場合、モータとカム構造によってパルス状の撃力を付与すれば、簡易な構造で効率よく、繰り返し撃力を付与することができる。
【0020】
また、電磁コイルとプランジャによってパルス状の撃力を付与すれば、モータなどの回転式可動部がない機構とすることができる。
【0021】
同様に、油圧装置とピストンによってパルス状の撃力を付与すれば、モータなどの回転式可動部がない機構とすることができる。
【0022】
第
2の発明は、第
1の発明にかかる着雪防止装置を用いた信号機の着雪防止構造であって、前記信号機の表示灯の前面に前記透明板が配設され、前記電線に通電されることを特徴とする信号機着雪防止構造である。
【0023】
前記電線が、前記隙間に、蛇行して略水平方向に向けて配設されることが望ましい。
【0024】
前記駆動部は、電磁コイルと、前記電磁コイルに配置されたプランジャと、を具備し、前記駆動部が、前記ヒートパネルの上部近傍に配置され、前記ヒートパネルの上部を作用点として、前記ヒートパネルに撃力を付与することが望ましい。
【0025】
第
2の発明によれば、信号機の表示灯の前面への着雪を抑制することができる。
【0026】
特に、電線が略水平方向に向けて蛇行するように配置することで、電線から熱を受けた液体が、全体にまんべんなく対流して、均一に面加熱し、雪を融かすことができる。
【0027】
また、電磁コイルおよびプランジャをヒートパネルの上方に配置し、ヒートパネルの上部にパルス状の撃力を付与することで、ヒートパネルの下方の構造をシンプルにすることができる。このため、水滴等を効率よく下方に落下させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、既存の信号機に対して設置可能であり、簡易な構造で効率よく着雪を防止することが可能な
着雪防止装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】(a)はヒートパネル1の断面図、(b)はヒートパネル1aの断面図。
【
図4】防犯カメラ17にヒートパネル1を取り付けた状態を示す図。
【
図6】(a)、(b)は着雪防止装置19の動作を示す概略図。
【
図7】(a)、(b)は着雪防止装置19aの動作を示す概略図。
【
図8】(a)、(b)は着雪防止装置19bの動作を示す概略図。
【
図10】信号機の着雪防止構造37aを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、ヒートパネル1を示す斜視図、
図2は、ヒートパネル1を示す正面図、
図3(a)は、
図2のA−A線断面図である。ヒートパネル1は、主に、透明板3a、3b、電線9、オイル13等から構成される。
【0031】
一対の透明板3a、3bは、隙間をあけて配置され、互いに接合部5で接合される。透明板3a、3bは例えば2mm厚程度の樹脂板であり、ポリカーボネートやアクリル板等を適用することができる。接合部5は、少なくとも透明板3a、3bの縁部近傍に形成されるため、透明板3a、3b、接合部5とで囲まれた閉じた空間(隙間11)が形成される。隙間11の厚みは、例えば1mm程度である。
【0032】
なお、接合部5が、透明板3a、3bの間に形成されるのではなく、透明板3a、3bの外周から縁部を覆うように取り付けられてもよい。すなわち、接合部5は、透明板3a、3bとの間に空間を形成しつつ、透明板3a、3b内から、後述するオイル13が漏れださなければよい。
【0033】
また、接合部5は、透明板3a、3bの縁部近傍のみではなく、隙間11に独立して配置してもよい。このようにすることで、隙間11において、透明板3a、3bが内圧で膨れることを抑制することができる。また、接合部5によって、例えば円形の隙間11を形成することもできる。この場合には、接合部5は、隙間11の形状を形成するスペーサとしての役割も持つ。なお、接合部5としては、透明な樹脂接着剤等を用いることができる。
【0034】
隙間11には、オイル13が封入される。オイル13は例えばシリコンオイルである。なお、隙間に封入される液体は、寒冷地でも凍結せず、加熱によって容易に気化することがなく、後述する電線9を腐食させない液体であれば、オイル以外であってもよい。また、電線9による加熱によって液体状態となれば、低温時に固体またはゲル状等であってもよい。
【0035】
隙間11には、電線9が配置される。電線9は、隙間11の内部に蛇行するように配置される。電線9は、例えば0.1mm程度のステンレス線であり、15mm程度の間隔で配置される。ヒートパネル1の一部には、電線9に通電するための端子部7が設けられる。なお、端子部7に代えて、電線9を直接ヒートパネル1の外部に引き出してもよい。
【0036】
電線9に対して、例えば5〜10ワット程度の電力で通電することで、ヒートパネル1の所定の範囲(隙間11に対応)を均一に加熱することができる。この際、電線9で生じた熱によって、オイル13が加熱され、オイル13の熱伝導による効果と、オイル13の対流による効果によって、短時間で均一にヒートパネル1の全面を加熱することができる。この結果、ヒートパネル1に付着する雪を融かすことができる。
【0037】
なお、
図3(b)に示すように、一方の透明板3bの外面と隙間をあけてさらに他の透明板3cを接合してもよい。例えば、透明板3bと透明板3cの縁部近傍を接合し、隙間11に対応する形状の断熱用空間15を形成する。このようにすることで、透明板3bと透明板3cとの間に断熱用空間15を形成することができる。すなわち、断熱用空間15は透明板3b、3c、接合部5とで囲まれた閉じた空間である。
【0038】
ヒートパネル1は、透明板3a側を前面として使用してもよく、透明板3b側を前面として使用することもできる。これに対し、ヒートパネル1aは、透明板3a側(断熱用空間15が形成される側とは反対側)の面を前面として使用し、断熱用空間15が形成される透明板3cは、設置対象と接触または対向する。
【0039】
断熱用空間15は、断熱層として機能する。このため、オイル13によって、透明板3a、3bが加熱された際、透明板3b側からは熱が逃げにくい。この結果、透明板3aを効率よく加熱することができる。このため、ヒートパネル1aの前面の雪を効率よく融解し、着雪を抑制することができる。
【0040】
図4は、ヒートパネル1(または1a)を防犯カメラ17に適用した状態を示す図である。ヒートパネル1は、防犯カメラ17のレンズ面に取り付けられる。また、ヒートパネル1には、制御部18が接続される。制御部18は、ヒートパネル1の温度制御装置である。すなわち、制御部18は、ヒートパネル1の温度を監視し、ヒートパネル1が過熱されることを防止する。すなわち、温度が所定以上となると、通電を停止する。また、例えば、ヒートパネル1の温度が所定以下となった際に、通電を開始するように制御することができる。
【0041】
なお、前述した様に、ヒートパネル1aを用いる場合には、透明板3aが前面となるように配置し、透明板3cが防犯カメラ17のレンズ面に接するように配置すればよい。
【0042】
ここで、ヒートパネル1、1aを設置する際に、電線9が蛇行して略水平方向に向けて配設されることが望ましい。電線9が鉛直方向に向けて配設されると、電線9の周囲のオイル13が温められて上方に対流するが、電線9間のオイル13まで均一になるまでに時間を要する。一方、電線9が略水平に配設されれば、電線9で温められたオイル13が線状に上方に向けて対流し、より短時間で均一な温度とすることができる。
【0043】
以上、本実施の形態によれば、寒冷地において、例えば防犯カメラ17のように、着雪によって機能が低下するような装置にヒートパネル1、1aを適用することで、ヒートパネル前面に接触する雪を融解し、付着力を弱めることができる。このため、装置等への着雪を抑制することができる。このため、着雪による機能低下を防止することができる。
【0044】
この際、電線9を除く部材がすべて無着色の透明部材であるため、例えばカメラなどの画像への影響が小さい。また、電線9は十分に細いため、視界の妨げになることもない。
【0045】
また、透明板3cによって断熱用空間15を設けることで、電線9から生じた熱が無駄に熱拡散することを抑制することができる。このため、熱を効率よくヒートパネル1aの前面で利用することができる。このため、省エネルギー性能に寄与する。
【0046】
次に、第2の実施形態について説明する。
図5は、着雪防止装置19を示す図である。なお、以下の説明ではヒートパネル1を用いた例について説明するが、ヒートパネル1aを用いてもよい。
【0047】
着雪防止装置19は、主に、ヒートパネル1、制御部18、駆動部29等からなる。なお、ヒートパネル1を支持する枠体等は図示を省略する。ヒートパネル1の下部には、台座23が設けられる。ヒートパネル1は、台座23上に配置され、台座23とヒートパネル1の下端が接触する。
【0048】
また、ヒートパネル1の下部には、ヒートパネル1に対して上下方向の撃力を付与する駆動部29が配置される。駆動部29は、モータ25とカム構造27とからなる。カム構造27はモータ25の回転軸に固定される。カム構造27は少なくとも一部に径方向に突起が形成される。駆動部29は、ヒートパネル1にパルス状の撃力を付与する部位である。なお、ヒートパネル1は、ガイド21によって、上下にスライド動作が可能である。また、駆動部29は複数個所に配置してもよい。
【0049】
図6は、着雪防止装置19の動作を示す図である。モータ25を動作させると、
図6(a)に示すように、カム構造27が回転し(図中矢印B)、カム構造27の突起にヒートパネル1が乗り上げることで、ヒートパネル1が上方に持ち上げられる(図中矢印C)。すなわち、ヒートパネル1が台座23から浮き上がる。この際、ヒートパネル1は、ガイド21によって姿勢を維持して上方に移動する。なお、ガイド21の構造は図示した例には限られない。
【0050】
さらにモータ25が回転すると、
図6(b)に示すように、カム構造27の突起がヒートパネル1を通過して、ヒートパネル1が下方に落下する(図中矢印D)。この際、ヒートパネル1が台座23と衝突する(図中E)。したがって、ヒートパネル1に対して、パルス状の撃力が付与される。
【0051】
なお、制御部18は、例えばヒートパネル1の温度(例えば前面温度)を検出して、温度が所定以上の場合には電線9への通電および駆動部29の駆動を停止する。また、制御部18は、ヒートパネル1の温度が所定以下の場合には、電線9への通電および駆動部29の駆動を開始する。この際、電線9への通電のオンオフと駆動部29のオンオフとを別の基準で制御してもよい。例えば、駆動部29は、所定時間ごとに駆動させてもよい。このように、制御部18は、適切な温度制御を行なうことができる。
【0052】
ここで、ヒートパネル1で加熱されて融解した水滴は、ヒートパネル1の前面との摩擦力が重力よりも大きいため、ヒートパネル1の前面に付着した状態を維持する。これに対し、ヒートパネル1に外力を付与することで、水滴にも外力が付与される。水滴に付与される外力(加速度)が摩擦力よりも大きくなると、重力も加わって水滴が落下移動を開始する。水滴が一度移動を開始すれば、動摩擦が静摩擦よりも小さいため、水滴は落下しやすくなる。
【0053】
ここで、水滴に付与される外力の大きさを考慮する。水滴が外力によって周期的に動くとすると、外力の振幅が大きく、周波数が大きい方が水滴に作用する力を大きくすることができる。特に、水滴へ力を付与する効果は周波数の2乗で作用するため、高い周波数で外力を付与することが望ましい。
【0054】
しかし、高い周波数で高い振幅を実現することは、構造的にも消費エネルギー及びコスト的にも限界がある。したがって、高い周波数で外力を付与するためには、小さな振幅とせざるを得ない。
【0055】
これに対し、本発明では、単一周波数運動ではなく、パルス状の撃力を利用する。例えば、本実施形態では、三角波のパルス波と近似することができる。このようなパルス波をフーリエ展開すると、多くの周波数成分に分解される。すなわち、パルス状の撃力を水滴に付与すると、単一周波数運動では得ることが困難な、きわめて高い周波数成分による外力を水滴に付与することができる。
【0056】
例えば、パルス幅(時間)を1/100秒の三角波とすると、0〜200Hzの範囲に強い力が分布する。これは、単一周波数運動では得ることが困難であり、前述したように、周波数の2乗で水滴に力が作用するため、水滴の振り落とし効果を向上させることができる。すなわち、本発明におけるパルス状の撃力とは、単一周波数運動ではなく、複数の周波数成分を含むパルス状の動作を付与することで得られるものである。
【0057】
前述した実施例では、ヒートパネル1を台座23から持ち上げてから落下させ、台座23と衝突させることで、ヒートパネル1は落下運動が急激に停止する。この際、ヒートパネル1にはパルス状の撃力が付与され、水滴を効率よく落下させることができる。なお、パルス状の撃力を、所定の間隔で繰り返し付与することで、ヒートパネル1の全面において連続して水滴に撃力を付与することができる。
【0058】
なお、実際に積雪させたヒートパネル1を用いて着雪防止効果を確認した。厚さ1mmの隙間11にシリコンオイルを封入し、内部に0.1mmφのステンレス線を15mm間隔で蛇行させて配置した。なお、前述したように、電線9が水平方向に配設されるように蛇行させた。電線9に7ワットの電力を付与し、ヒートパネル1を高さ1.5mm持ち上げて落下させる動作を毎秒10回ほど作用させると、着雪していた雪を除去することができた。
【0059】
以上、第2の実施の形態によれば、ヒートパネル1によって融解した水滴を確実に落下させることができる。この際、単にヒートパネル1を振動(単一周波数運動)させる場合と比較して、小さなエネルギーで効果的に水滴を落下させることができる。
【0060】
次に、第3の実施の形態について説明する。
図7は、着雪防止装置19aの動作を示す図である。なお、以下の説明において、着雪防止装置19と同一の機能を奏する構成については
図1〜
図6と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0061】
着雪防止装置19aは、着雪防止装置19とほぼ同様の構成であるが、駆動部29の構造が異なる。着雪防止装置19aは、駆動部29が、台座23、プランジャ31、電磁コイル33等からなる。
【0062】
電磁コイル33へ通電すると、電磁コイル33の内部に配置されるプランジャ31に力が付与される。このため、プランジャ31を電磁コイル33から突出させることができる。プランジャ31を上方に向けて突出させると(図中矢印F)、プランジャ31によってヒートパネル1を上方に持ち上げることができる(図中矢印G)。すなわち、ヒートパネル1が台座23から浮き上がる。この際、ヒートパネル1は、ガイド21によって姿勢を維持して上方に移動する。
【0063】
次に、電磁コイル33への通電を止めると、
図7(b)に示すように、プランジャ31が電磁コイル33の内部に戻り(図中矢印H)、ヒートパネル1が下方に落下する(図中矢印I)。この際、ヒートパネル1が台座23と衝突する(図中J)。したがって、ヒートパネル1に対して、パルス状の撃力が付与される。
【0064】
以上、第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、電磁コイル33への通電と遮断によってプランジャ31を上下動させ、ヒートパネル1にパルス状の撃力が付与するため、モータなどの回転機構的な動作部が不要である。
【0065】
なお、このようなモータなどの回転機構的な動作部を有さない駆動部としては、油圧装置とピストンを用いてもよい。すなわち、油圧装置によって、ピストンを上下動させ、透明板にパルス状の撃力を付与してもよい。
【0066】
次に、第4の実施の形態について説明する。
図8は、着雪防止装置19bの動作を示す図である。着雪防止装置19bは、着雪防止装置19a等とほぼ同様の構成であるが、駆動部29の配置が異なる。
【0067】
前述した着雪防止装置19、19aでは、ヒートパネル1の下方に駆動部29を配置し、カム構造27またはプランジャ31をヒートパネル1の下端に接触させる例を示した。これに対し、着雪防止装置19bは、駆動部29がヒートパネル1の上方に配置される。
【0068】
本実施形態では、ヒートパネル1の上部に腕部35が設けられる。通常時には、腕部35と台座23とが接触する。なお、腕部35は、図示したようにヒートパネル1の幅方向に突出させるのではなく、後面側または前面側に突出させてもよい。
【0069】
図8(a)に示すように、電磁コイル33へ通電すると、プランジャ31を電磁コイル33から突出させることができる。プランジャ31を上方に向けて突出させ、腕部35を押し上げることで(図中矢印K)、ヒートパネル1を上方に持ち上げることができる(図中矢印L)。すなわち、ヒートパネル1の腕部35が台座23から浮き上がる。
【0070】
次に、電磁コイル33への通電を止めると、
図8(b)に示すように、プランジャ31が電磁コイル33の内部に戻り(図中矢印M)、ヒートパネル1が下方に落下する(図中矢印N)。この際、ヒートパネル1が台座23と衝突する(図中O)。したがって、ヒートパネル1に対して、パルス状の撃力が付与される。
【0071】
以上、第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、駆動部29をヒートパネル1の上方に配置するため、着雪防止装置19bの下方には駆動部29等が設けられない。すなわち、駆動部29は、ヒートパネル1の上部近傍に配置され、ヒートパネル1の上部を作用点として、ヒートパネル1に撃力を付与する。このため、ヒートパネル1の下方の構造をシンプルにすることができ、効率よく水滴を下方に落とすことができる。
【0072】
次に、着雪防止装置の使用例について説明する。
図9は、信号機の着雪防止構造37を示す図である。信号機39の各表示灯の前にそれぞれ着雪防止装置19が設置される。なお、前述したように、電線9は、蛇行するように配置される。この際、電線9は略水平に配設される。このようにすることで、ヒートパネル1の全面がほぼ均一に加熱される。
【0073】
また、ヒートパネル1と接触する雪を融解し、駆動部29によってパルス状の撃力を付与することで、確実に雪および水滴を下方に落下させることができる。
【0074】
なお、
図10に示す信号機の着雪防止構造37aのように、信号機39が、縦方向に3つのライトが並んでいる場合には、3つのヒートパネル1を一体で構成してもよい。この場合には、一つの駆動部29でヒートパネル1の全体にパルス状の撃力を付与してもよい。
【0075】
なお、信号機39に対して、着雪防止装置19a、19bを適用してもよい。また、ヒートパネル1を一体で構成する場合には、電線9が連続するような構造としてもよい。
【0076】
信号機の着雪防止構造37、37aによれば、信号機39への着雪を効率よく防止することができる。
【0077】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0078】
1、1a………ヒートパネル
3a、3b、3c………透明板
5………接合部
7………端子部
9………電線
11………隙間
13………オイル
15………断熱用空間
17………防犯カメラ
18………制御部
19、19a、19b………着雪防止装置
21………ガイド
23………台座
25………モータ
27………カム構造
29………駆動部
31………プランジャ
33………電磁コイル
35………腕部
37、37a………信号機の着雪防止構造
39………信号機
【要約】
【課題】 既存の信号機に対して設置可能であり、簡易な構造で効率よく着雪を防止することが可能なヒートパネル等を提供する。
【解決手段】 一対の透明板3a、3bは、隙間をあけて配置され、互いに接合部5で接合される。隙間11には、オイル13が封入される。オイル13は例えばシリコンオイルである。隙間11には、電線9が配置される。電線9は、隙間11の内部に蛇行するように配置される。電線9に対して、例えば5〜10ワット程度の電力で通電することで、ヒートパネル1の所定の範囲(隙間11に対応)を均一に加熱することができる。この際、電線9で生じた熱によって、オイル13が加熱され、オイル13の熱伝導による効果と、オイル13の対流による効果によって、短時間に均一にヒートパネル1の全面を加熱することができる。この結果、ヒートパネル1に付着する雪を融かすことができる。
【選択図】
図1