(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直流電力を発電する発電源と該発電源からの電力を直流から交流に変換するパワーコンディショナーとを有する発電系列を複数備えた発電設備の発電状況を監視する発電設備の監視システムであって、
発電系列毎の発電量を計測する系列計測部と、
発電設備全体の発電量を計測する全体計測部とを備え、
前記系列計測部により得られた計測値を基に演算及び比較することによって前記各発電系列の発電状況を監視するとともに、前記系列計測部により得られた計測値及び前記全体計測部により得られた計測値を基に演算及び比較することによって前記発電設備全体の発電状況を監視することを特徴とする発電設備の監視システム。
直流電力を発電する発電源と該発電源からの電力を直流から交流に変換するパワーコンディショナーとを有する発電系列を複数備えた発電設備の発電状況を監視する発電設備の監視システムであって、
前記発電設備は、
発電系列毎の発電量を計測する系列計測部と、
発電設備全体の発電量を計測する全体計測部と、
前記系列計測部により得られた計測値及び前記全体計測部により得られた計測値をサーバーに送信する送信手段とを備え、
前記サーバーは、
前記送信手段から送信された値を記録する記録手段と、
該記録手段に記録された値を基に演算する演算手段と、
該演算手段の演算結果を比較する比較手段とを備え、
前記系列計測部により得られた計測値を基に演算及び比較することによって前記各発電系列の発電状況を監視するとともに、前記系列計測部により得られた計測値及び前記全体計測部により得られた計測値を基に演算及び比較することによって前記発電設備全体の発電状況を監視することを特徴とする発電設備の監視システム。
前記サーバーは、比較結果が所定の閾値を超えると前記発電設備の管理者にメールを送信するメール送信手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載の発電設備の監視システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の技術によれば、個々の太陽電池アレイに異常が生じた場合は、この異常を検出することはできるものの、パワーコンディショナーや、パワーコンディショナー以降の設備に異常が生じた場合には、この異常を検出することはできない。特に、数千kW以上の大規模発電においては、複数の太陽電池アレイを接続したパワーコンディショナーを一つの発電系列として、複数の発電系列によって発電設備全体が構成されている。このような状況においては、パワーコンディショナーを含めた発電系列の異常や発電設備全体の異常を検出できるようにすることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、パワーコンディショナーを含めた発電系列の異常や発電設備全体の異常を検出できる発電設備の監視システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発電設備の監視システムは、直流電力を発電する発電源と該発電源からの電力を直流から交流に変換するパワーコンディショナーとを有する発電系列を複数備えた発電設備の発電状況を監視するものであって、発電系列毎の発電量を計測する系列計測部と、発電設備全体の発電量を計測する全体計測部とを備え、前記系列計測部により得られた計測
値を基に演算及び比較することによ
って前記各発電系列の発電状況
を監視するとともに、前記系列計測部により得られた計測値及び前記全体計測部により得られた計測値を基に演算及び比較することによって前記発電設備全体の発電状況を監視するものである。
【0008】
本発明の発電設備の監視システムは、更に、A=実際の発電量、B=出力可能な最大発電量、として、「A/B」を演算するものとしてもよい。
また、この「A/B」の値を補正して比較するものとしてもよい。
更に、「A/B」の値の補正値:H=C/D、C=パワーコンディショナーの定格出力、D=発電源の最大出力、として、「(A/B)×H」の値を比較するものとしてもよい。
【0009】
また、本発明の発電設備の監視システムは、直流電力を発電する発電源と該発電源からの電力を直流から交流に変換するパワーコンディショナーとを有する発電系列を複数備えた発電設備の発電状況を監視するものであって、前記発電設備は、発電系列毎の発電量を計測する系列計測部と、発電設備全体の発電量を計測する全体計測部と、前記系列計測部により得られた計測値及び前記全体計測部により得られた計測値をサーバーに送信する送信手段とを備え、前記サーバーは、前記送信手段から送信された値を記録する記録手段と、該記録手段に記録された値を基に演算する演算手段と、該演算手段の演算結果を比較する比較手段とを備え、
前記系列計測部により得られた計測値を基に演算及び比較することによって前記各発電系列の発電状況
を監視するとともに、前記系列計測部により得られた計測値及び前記全体計測部により得られた計測値を基に演算及び比較することによって前記発電設備全体の発電状況を監視するものとしてもよい。
ここで、前記サーバーは、比較結果が所定の閾値を超えると発電設備の管理者にメールを送信するメール送信手段を備えたものとしてもよい。
【0010】
本発明の監視システムでは、系列計測部によってパワーコンディショナーを含めた複数の発電系列の夫々の発電量を計測し、また、全体計測部によって発電設備全体の発電量を計測して、各計測値を基に演算及び比較する。よって、各発電系列毎の発電状況、並びに、発電設備全体の発電状況を監視することができ、パワーコンディショナーを含めた発電系列や発電設備全体に異常を生じた場合に、この異常を検出できる。
【0011】
なお、発電系列の発電状況を監視するに際しては、各発電系列の実際の発電量を直に比較したり、発電設備全体の発電量から個々の発電系列の発電量を仮想的に算出し、この算出値と各発電系列の実際の発電量とを比較したりして、比較の結果に所定の閾値を超えた差異が生じた場合に、発電系列に異常が生じていると判定する等の手法を例示できる。また、発電設備全体の発電状況を監視するに際しては、各発電系列の実際の発電量の合計値と発電設備全体の実際の発電量の数値とを比較して、比較の結果に所定の閾値を超えた差異が生じた場合に、発電設備全体、特に発電系列以降の設備に異常が生じていると判定する等の手法を例示できる。
【0012】
なお、本発明においては、発電設備全体では、例えば太陽電池アレイ等の発電源を複数備えており、特許文献1に開示のような発電源毎に発電状況を監視する構成を排除するものではないが、発電源毎に発電状況を監視する構成を省略することで、次のような利点を得ることができる。
【0013】
発電源毎に発電状況を監視しようとすると、発電源毎に発電量を計測する計測部を設け、発電源毎の実際の発電量に基づいて演算・比較処理を行わなければならず、発電設備全体における設備構成が雑多となり、また、監視処理が煩雑となる。特に、例えば数千kW以上の大規模な太陽光発電設備では、発電源である太陽電池アレイが数百、数千と膨大な数であり、個々の太陽電池アレイを監視することは、過剰な監視となる。これに対して、発電源毎に発電状況を監視する構成を省略して、本発明の如く、パワーコンディショナーを含めた発電系列毎に発電状況を監視すれば、個々の発電源毎の過剰な監視を行わなくてすむ。なお、発電源に異常が生じた場合には、発電源に異常がある発電系列を絞り込むことができ、絞り込んだ発電系列を検査することでその発電系列内の異常な発電源を見つけることができる。
【0014】
ところで、複数の発電系列は、最大に出力できる発電量が夫々同一であるとは限らない。例えば、一部の発電系列の発電源の発電能力が低かったり、一部の発電系列のパワーコンディショナーの出力能力が低かったりすると、発電系列間で最大に出力できる発電量に差異を生じる。このように発電系列に能力差がある場合には、各発電系列の実際の発電量を直接比較しても、十分に有効な比較結果が得られない虞がある。そこで、請求項2の発明では、
A=実際の発電量、
B=出力可能な最大発電量、
として、「A/B」を演算している。これにより、比較の基となる数値として、発電系列の能力を加味した数値を得ることができる。なお、「A/B」の値は、発電率と捉えることができる。
【0015】
また、発電源によって発電された電力は、その全てがパワーコンディショナーに入力され、パワーコンディショナーから出力されるものではない。送電損失やパワーコンディショナーでの変換損失が存在するからである。ここで、これらの損失は、各発電系列において一定であるとは限らない。そこで、請求項3の発明では、発電率である「A/B」の値を補正して比較することとしている。ここで、補正する値としては、発電系列毎や発電設備全体に、実証データに基づいて導いた値や、経験則によって想定した値等、適宜定めることができる。
【0016】
そして、請求項4の発明では、
補正値:H=C/D、
C=パワーコンディショナーの定格出力(パワーコンディショナーの出力可能な最大値)、
D=発電源の最大出力(発電源の発電可能な最大値)、
として、「(A/B)×H」の値を比較している。すなわち、上述の発電率「A/B」に補正値:Hを乗じた補正を行い、補正後の発電率(補正発電率)の数値を比較することとしている。なお、このような補正は、上述の損失が多種多様な発電源とパワーコンディショナーとの組み合わせによって差異を生じることに着目したものである。
【0017】
請求項5及び請求項6の発明は、発電設備を、発電系列の発電量の数値及び発電設備全体の発電量の数値をサーバーに送信する送信手段を具備するものとして、発電設備にインターネットや専用のLAN等によって接続された外部のサーバーを用いて監視システムを構築したものである。これにより、発電設備の管理者は、発電設備から遠く離れていても、サーバーにアクセスすることで、発電設備の発電状況の情報を得ることができる。
【0018】
特に、請求項6の発明では、発電系列や発電設備全体に異常が生じた場合に、発電設備の管理者の携帯端末やパソコン等に自動的にメールを送信することから、管理者は、サーバーにアクセスしなくても速やかにこの異常を知ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、パワーコンディショナーを含めた発電系列の異常や発電設備全体の異常を検出できる発電設備の監視システムを提供することができる。これにより、まず、異常のある発電系列を見つけて絞り込み、その後、絞り込んだ発電系列内の異常な発電源を見つけることができるし、全体に異常があれば、それを知ることもできるから、効率良く発電量を監視し異常のある発電源を発見することができ、発電量の監視負担が軽減する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る発電設備の監視システムの実施形態としての一例を以下に説明する。
【0022】
図1に示すように、発電設備10全体は、複数の発電系列20を具備するものとして構成されており、各発電系列20によって発電された電力が、工場や店舗等で使用される電力、商用電力源へ売電する電力、或いは、バッテリーに蓄電される電力として利用される。なお、本例では、発明を理解し易くするため説明の便宜上、第1系列〜第4系列の4つの発電系列20によって発電設備10を構成した例を示す。
【0023】
第1系列〜第4系列の各発電系列20は、複数の太陽電池アレイ22と、各太陽電池アレイ22が並列に接続されたパワーコンディショナー24とを備えてなるものである。ここで、太陽電池アレイ22は、複数の太陽電池モジュール21を直列に接続して、例えば200Vの電圧の電力といったように利用に際して十分な電圧の電力を発電できるようにしたものである。そして、太陽電池モジュール21によって発電された電力は、直流電力であるが、パワーコンディショナー24によって三相交流電力に調整されて出力される。なお、本書では、説明の便宜上、一つのパワーコンディショナー24に接続された複数の太陽電池アレイ22の集合体を「アレイ群23」と称することとする。
【0024】
各発電系列20の出力側には、発電系列20毎の実際の発電量を計測する系列計測部30が設けられており、各発電系列20を並列に接続して発電した総電力を発電設備10の外部へと出力する部分には、発電設備10全体の発電量を計測する全体計測部31が設けられている。ここで、系列計測部30や全体計測部31としては、電力量計等の機器を用いて構成すればよい。
【0025】
また、発電設備10は、コンピュータを用いて構成された計測ユニット40を具備しており、計測ユニット40は、インターネットや専用のLANを介して外部のサーバー50に接続されている。そして、計測ユニット40は、所定のプログラムを実行することで、「系列計測部30及び全体計測部31から得られた計測値をサーバー50に送信する送信手段41」として機能する。なお、サーバー50は、発電設備10の外部の機器であるが、系列計測部30、全体計測部31及び計測ユニット40と共に監視システム60を構築するものである。
【0026】
サーバー50は、コンピュータを用いて構成されており、所定のプログラムを実行することで、「計測ユニット40から送信された計測値を記録する記録手段51」、「記録手段51に記録された数値に基づいて種々の演算を行う演算手段52」、「演算手段52によって算出された数値を比較する比較手段53」、「比較手段53による比較結果が所定の閾値を超えると、発電系列20や発電設備10全体に異常が生じたとして、この情報を発電設備10の管理者の携帯端末やパソコン等に送信するメール送信手段54」として機能する。また、サーバー50は、発電設備10の管理者がサーバー50にアクセスして情報の開示を要求することにより、
図3、
図5及び
図7に示すような各種の数値や、
図4、
図6及び
図8に示すようなグラフを出力する。
【0027】
ところで、各発電系列20では、パワーコンディショナー24やアレイ群23の能力が同一でなく、
図2に示すようなスペックとなっている。なお、
図2においては、パワーコンディショナー24を「パワコン」と略して表記してある。
【0028】
まず、パワーコンディショナー24については、第1系列、第2系列及び第3系列のパワーコンディショナー24の能力である出力可能な最大電力、すなわち定格出力は5.50kWであるが、第4系列のパワーコンディショナーは5.20kWとなっている。そして、発電設備10全体では、全てのパワーコンディショナー24の能力合計で21.70kWとなっている。
【0029】
次に、アレイ群23については、第1系列及び第2系列のアレイ群23の能力である最大発電力は6.45kWであるが、第3系列のアレイ群23は5.16kW、第4系列のアレイ群23は6.02kWとなっている。そして、発電設備10全体では、全てのアレイ群23の能力合計で24.08kWとなっている。
【0030】
なお、アレイ群23で発電した電力が大きくても、パワーコンディショナー24の能力が小さければ、パワーコンディショナー24から出力される電力はパワーコンディショナー24の能力に制約される。一方、パワーコンディショナー24の能力がいくら大きくても、アレイ群23で発電された電力が小さければ、当然、アレイ群23で発電された電力以上の電力はパワーコンディショナー2から出力されない。よって、発電系列20としての能力は、第1系列及び第2系列が5.50kW、第3系列が5.16kW、第4系列が5.20kWで、全体では、21.36kWとなる。
【0031】
また、各発電系列20においては、パワーコンディショナー24とアレイ群23とで能力に差異があり、アレイ群23の能力に対するパワーコンディショナー24の能力である能力比(パワーコンディショナー24の能力/アレイ群23の能力)は、第1系列及び第2系列が0.85、
第3系列が1.07、第4系列が0.86で、全体では、0.90となる。なお、パワーコンディショナー24とアレイ群23との能力差からシステムとして無駄が存在するのを知ることができ、パワーコンディショナー24とアレイ群23とで大きな能力差がある場合は、いずれか一方の能力に対して過剰分が発生し、効率的ではないから、パワーコンディショナー24及びアレイ群23の選定、設定においては、能力差が大きくならないようにすべきである。
【0032】
次に、このように構成された監視システム60による各発電系列20の発電状況の監視及び発電設備10全体の発電状況の監視について説明する。
【0033】
図3は、第1系列〜第4系列の4つの発電系列20の実際の発電量、各発電系列20の発電量を合計した合計発電量、及び発電設備10全体での実際の発電量である総発電量を示す表であり、数値は、5:00〜18:30における30分毎の実測値である。また、
図4は、第1系列〜第4系列の4つの発電系列20及び発電設備10全体での発電量の変化を表すグラフである。
図4のように、実測の結果をグラフ化して出力することで、発電量の変化や、発電系列20間での発電状況の差異を、視覚的に把握することができる。
【0034】
発電系列20の発電状況の監視に関しては、各発電系列20での発電量の数値を直接比較して、他の発電系列20と比較して所定の閾値を超えた差異が生じている発電系列20を異常と判断すればよい。また、全体の発電量を発電系列20の数で除した数値を各発電系列20に割り当てるなどして、割り当てられた数値と各発電系列20の実際の発電量の数値とを比較して、所定の閾値を超えた差異が生じていたら、発電系列20が異常を来していると判断すればよい。例えば、
図4において、第3系列の発電量は他の系列に比べて全体的に少し小さい値となっており、この差が予め設定した閾値を超えていなければ正常であると判断し、その閾値を超えていれば何らかの電力低下の異常が発生していると判断することもできる。
【0035】
発電設備10全体の発電状況の監視に関しては、
図3に示すように、系列計測部30で計測した各発電系列20の発電量を演算により合計した合計発電量と、全体計測部31で計測した総発電量とを比較して、所定の閾値を超えた差異が生じていたら、発電系列20以降の設備に異常を来していると判断すればよい。異常とは、系列計測部30と全体計測部31との間に何らかの原因で多大な送電損失が発生している状態などが挙げられる。本例の場合では、
図3、
図4に表された合計発電量と総発電量とを比較すれば、両者に大きな差異はないことから、一応正常状態にあると判断される。なお、
図4において、合計発電量は太線の実線で示し、総発電量は太線の一点鎖線で示してある。
【0036】
ところで、各発電系列20のアレイ群23及びパワーコンディショナー24の出力特性には通常大なり小なり種々のスペックが混在する。このため、より正確な判断を行なうためには、上述した発電量の比較のみでなく、更に、以下の
図5乃至
図8に基づいて述べるようなアレイ群23及びパワーコンディショナー24の出力特性を考慮した比較を行なうのが望ましい。
【0037】
図5は、第1系列〜第4系列の4つの発電系列20及び発電設備10全体において、
A=実際の発電量、
B=出力可能な最大発電量(系列能力、全体の場合は系列能力の合計値)、
として、「A/B」を演算して、これを「発電率」として表にしたものであり、
図6は、発電率の変化を表すグラフである。
図6のように、実際の発電率の結果をグラフ化して出力することで、発電率の変化や、発電系列20間での発電状況の差異を、視覚的に把握することができる。特に、発電設備10全体についても、発電率で表すことで、発電系列20と同じ指標で比較することができる。
【0038】
なお、本例では、30分間の実際の発電量(kWh)を測定しているため、出力可能な最大発電量Bは、30分間に出力できる最大の発電量(kWh)として、
B=発電能力(kW)×0.5(h)、
の数値を当てはめている。
図5の表において、例えば、時刻10:00における第1系列の発電率は、
図2においてB(系列能力)=5.50kWであるから、A/B=2.50kWh/(5.50kW×0.5h)=90.91%として算出される。
【0039】
発電系列20の発電状況の監視に関しては、各発電系列20での発電率の数値を比較して、他の発電系列20に比して所定の閾値を超えた差異が生じている発電系列20を異常と判断すればよい。
【0040】
次に、
図7は、第1系列〜第4系列の4つの発電系列20及び発電設備10全体において、発電率に各発電系列20のスペックの違いを加味した補正を行い、
補正値:H=C/D、
C=パワーコンディショナーの定格出力(パワーコンディショナー能力、全体の場合はパワーコンディショナー能力の合計値)、
D=発電源の最大出力(アレイ群能力、全体の場合はアレイ群能力の合計値)、
として、「(A/B)×H」の値を補正発電率として示した表であり、
図8は、補正発電率の変化を表すグラフである。各系列におけるH=C/Dは、
図2における「能力比」である。
図7の表において、例えば、時刻10:00における第1系列の補正発電率は、(A/B)×H=(A/B)×(C/D)=(2.50kWh/(5.50kW×0.5h))×(5.50kW/6.45kW)=77.52%として算出される。
【0041】
発電率を示す
図6のグラフからすると、第3系列について、他の発電系列20や全体に対して大きな差異が生じていると判断されるが、これは、そもそも、
図2に示すように、第3系列の能力比が他の発電系列20とは大きく異なり、この能力比の違いにより発電率に大きな差異が生じているためと思われる。すなわち、補正発電率を示す
図8のグラフでは、第3系列は、他の発電系列20や全体に対してさほど大きな差異はないと判断される。一方、仮に、
図2において、第3系列の能力比が他の発電系列20のものと比してそれ程の差異がない場合であって、
図8のグラフにおいて、第3系列の補正発電率が他の発電系列20や全体の補正発電率と比較して大きな差異が生じている場合には、第3系列に何らかの異常が生じていると判断されることがある。
【0042】
ここで、補正発電率による発電系列20の発電状況の監視に関しては、発電率による手法と同様に、各発電系列20での補正発電率の数値を比較して、他の発電系列20に比して所定の閾値を超えた差異が生じている発電系列20を異常と判断すればよい。
【0043】
このように補正発電率を用いることは、種々のスペックの発電系列20が多数混在する発電設備10において各発電系列20の発電状況を監視する際に、特に有効的である。
【0044】
次に、本実施形態の発電設備10の監視システム60の作用を説明する。
監視システム60は、系列計測部30によってパワーコンディショナー24を含めた4つの発電系列の夫々の発電量を計測し、また、全体計測部31によって発電設備10全体の発電量を計測して、各計測値を基に演算及び比較する。これにより、各発電系列20毎の発電状況、及び発電設備10全体の発電状況を監視することができ、パワーコンディショナー24を含めた発電系列20や発電設備10全体に異常を生じた場合に、この異常を検出することができる。
【0045】
また、
図2の系列別スペックで示す、各発電系列20のアレイ群23及びパワーコンディショナー24の出力特性に大きなばらつきがある場合には、「発電率」、更には「補正発電率」を追加採用することによって、より有効な比較結果を得ることができる。
【0046】
更に、本実施形態では、4つの発電系列を例示したが、大規模な発電設備10の場合には、太陽電池アレイ23が数百、数千と膨大な数であり、個々の太陽電池アレイ22を監視することは過剰な監視となり、負担も大きいものとなる。しかし、本発明の監視システム60は、太陽電池アレイ22毎に発電状況を監視する構成を省略して、パワーコンディショナー24を含めた発電系列20毎に発電状況を監視し、発電源に異常が生じた場合は、まず、異常のある発電系列20を見つけてその発電系列20に絞り込み、その後、絞り込んだ発電系列20内の検査を行ないその発電系列20における異常な発電源を見つけることができるし、全体に異常があれば、それを知ることもできる。したがって、効率良く発電量を監視し異常のある発電源を発見することができ、監視負担が軽減する。また、発電設備10全体における設備構成が簡素化するとともに、発電設備10全体に至って太陽電池アレイ22毎に発電量を計測するセンサを設置しなくてよいから、設備費の節約にもなる。
【0047】
加えて、発電系列20の発電量の数値及び発電設備10全体の発電量の数値をサーバー50に送信する送信手段41を具備するから、発電設備10の管理者は、発電設備10から遠く離れていても、サーバー50にアクセスすることで、発電設備10の発電状況の情報を得ることができる。また、発電系列20や発電設備10全体に異常が生じた場合に、発電設備10の管理者の携帯端末やパソコン等に自動的にメールが送信されるから、管理者は、サーバー50にアクセスしなくても速やかにこの異常を知ることができる。
【0048】
以上、この実施形態においては、本発明に係る発電設備の監視システムの一例を示したが、本発明は上述の例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更が可能である。
【0049】
例えば、各発電系列20は、一つのパワーコンディショナー24と、このパワーコンディショナー24に接続された発電源とで構成するものに限られず、複数のパワーコンディショナー24と、これらのパワーコンディショナー24に接続された発電源との集合体として取り扱ってもよい。
【0050】
また、発電量の比較のみでなく、更に、アレイ群23及びパワーコンディショナー24の出力特性を考慮した比較を行なうための因子として、
図5及び
図6に示した「発電率」や
図7及び
図8に示した「補正発電率」を設けているが、これら以外の因子を設けたり、これらの因子に他の因子を更に加えたものとしてもよい。
【0051】
加えて、上記実施形態の監視システム60は、系列計測部30により得られた計測値及び全体計測部31により得られた計測値をサーバー50に送信する送信手段41や、発電設備10の管理者にメールを送信するメール送信手段54を備えていないものであってもよい。
【0052】
そして、上記実施形態の系列計測部30は、パワーコンディショナー24毎に備えられているが、これに限られず、更に太陽電池アレイ22毎にも備えたものとすることを妨げるものでもない。
【0053】
更に、上記実施形態においては、電力源として、太陽電池を使用したものを示しているが、本発明は、太陽光に限らず、風力、波力、流水、地熱等の再生可能エネルギーによる種々の発電設備の監視システムにも同様に適用することができる。