【実施例】
【0018】
潤滑油、水分および金属の存在下での冷媒の相溶性および安定性を、高温で、300mLステンレス鋼オートクレーブにおいて試験した。300mLのオートクレーブにまず、約10gの油、1gの水および活性金属:アルミニウム、銅および鉄のクーポンまたはチップを入れた。各オートクレーブに、約10〜11gの冷媒を添加した。オートクレーブを密閉し、定温オーブンに140℃で48時間入れた。その後、オートクレーブを冷やし、ガスクロマトグラフィー(GC)により蒸気空間を分析して、分解について検査し、分解生成物を識別した。
【0019】
冷媒の純度を計算する際、出発材料に含まれていた不純物をある程度GCスキャンから差し引いて、冷媒の純度の変化をよく反映し、分解生成物の外観をよく識別するようにした。
【0020】
実施例1
前述した手順に従って、潤滑油および金属の存在下でのトランス−HCFO−1233zdの相溶性および安定性を、高温で、ステンレス鋼オートクレーブにおいて試験した。3つの別のオートクレーブで試験した潤滑剤は、AB−150、MO−150およびPOE−22であった。第4のオートクレーブでは、トランス−HCFO−1233zdを、参照試料として用いるべく、潤滑剤、水分または金属チップなしで試験した。元のHCFO−1233zdは、主にHFO−1234zeおよびHFC−245faである不純物を1〜2%含んでおり、前述したとおり、GCスキャンから差し引いた。
【0021】
表1に、安定性試験後の試料の純度を示す。HCFO−1233zdの純度は、全ての場合において、99%を超えたままであった。油を含有する試料の主な不純物は、ジメチルテレフタレートおよびジエチルフタレートであり、HCFO−1233zdの分解生成物ではなかった。
【0022】
比較例2
HCFO−1233zdをHCFC−141bに変えた以外は、実施例1の手順に従って、潤滑油および金属の存在下でのHCFC−141bの相溶性および安定性を、高温で、ステンレス鋼オートクレーブにおいて試験した。HCFC−141bは、約0.02%のアルファ−メチルスチレンを安定剤として含有していた。参照試料から取られたHCFC−141bは、99.9%を超えるかなり純粋なもののままであった。HCFC−141bは、潤滑油、金属および水分の存在下では、かなり分解の兆候を示し、数多くの分解生成物、例えば、1,1−ジクロロエチレンが見られ、特に、1−クロロ−1−フルオロエチレン(HCFO−1131a)のレベルが、参照試料については15ppm未満であったのが、油を含む試料については、1500ppmを超える、さらには3300ppmを超える大幅な増大が見られた。これらの結果を表1に示す。潤滑剤を含有するステンレス鋼オートクレーブは、他の金属と接触した領域において、大幅な変色(暗色化)または腐食を示した。この腐食は、単に擦ったり洗ったりするだけでは取り除けなかった。この種の腐食は実施例1では観察されなかった。比較例2は、HCFC−141bを安定化させて分解を阻止するときでも、HCFO−1233zdが、HCFC−141bと少なくとも同じ程度安定であることを示している。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例3および4ならびに比較例5および6
以下の修正を行い、実施例1および比較例3と同様にして、潤滑油の存在下で、トランス−HCFO−1233zdおよびHCFC−141bの相溶性および安定性を試験した。実施例3および4では、2つのオートクレーブを、実施例1で行ったのと同じようにして、それぞれMO−150およびPOE−22と共にHCFO−1233zdにより準備した。比較例5および6では、2つのオートクレーブを、比較例2で行ったのと同じようにして、それぞれMO−150およびPOE−22と共にHCFC−141bにより準備した。オートクレーブを140℃に、48時間でなく96時間、維持した。各オートクレーブの蒸気空間をサンプリングして、安定性試験前後の両方で、GC/MSにより試験した。結果を表2に示す。
【0025】
HCFO−1233zdの純度の変化が僅か0.03%だったのに対し、HCFC−141bの純度の変化は0.3%を超えていた。HCFC−141bの主な分解副生成物はHCFO−1131aであり、11ppmから1400ppmを超えるまでに増大した。
【0026】
【表2】
【0027】
実施例7
トランス−およびシス−アイソマーを約7:3の比率で含有するHCFO−1233zdの試料を、透明なガラスバイアルに、未制御の周囲条件で、10年間にわたり貯蔵した。貯蔵期間後、試料を目視により観察し、GC分析により試験した。試料は依然として透明で変化のないように見え、GC分析によれば、試料組成に大きな変化は示されなかった。本実施例によれば、HCFO−1233zdは、長期の貯蔵条件において安定であることが分かる。
【0028】
比較例8
R11の試料を、30ガロンの鋼ドラムに1981年から貯蔵した。貯蔵期間後、試料は黄変し、強い異臭を放った。この例によれば、HCFO−1233zdは、貯蔵および使用において、特に、活性金属、潤滑剤および水分の存在下で、R−11より安定であることが分かる。
【0029】
実施例9および比較例10
B−サイドポリオール処方物におけるHCFO−1233zdおよびHFO−1234zeの化学的および熱的安定性を、以下のようにして、ステンレス鋼オートクレーブ内で試験した。
【0030】
各発泡プレミックス処方物を、300mLのステンレス鋼オートクレーブに入れた。オートクレーブを、100℃で24時間、一定温度のオーブン内で加熱した。オートクレーブをオーブンから取り出し、周囲温度で72時間保持した後、蒸気空間組成の各試料をTedlar(登録商標)GC試料袋に、GC/MSによる後の分析のために集めた。
【0031】
各オートクレーブに、表3に示すベースB−サイド処方物を加えた。
【0032】
【表3】
【0033】
発泡剤をB−サイド処方物に、75部のB−サイドに対して25部の発泡剤の充填量で添加することにより、発泡プレミックス処方物を調製した。一方の発泡プレミックス処方物は、実施例9としてHCFO−1233zdにより調製し、他方は比較例10としてHFO−1234zeにより調製した。発泡プレミックス処方物に安定性試験を行った。
【0034】
実施例9の蒸気相組成のGC/MS分析では、HCFO−1233zdに大幅な分解はなかった。大部分の分解副生成物は、元のHCFO−1233zd試料の約2%で存在していたHFO−1234zeの分解によるものであった。
【0035】
比較例10のHFO−1234zeは、表4に示すGC/MSデータにより示されるとおり、大幅な分解を示した。フッ素化シラン生成物の存在は、トランス−HFO−1234zeからのHFの発生によるもので、HFは次にさらなるHFO−1234zeと反応してHFC−245aを生成でき、かつ処方物に用いるシロキサン系界面活性剤と反応できる。
1)CF
3−CH=CHF→CF
3−C≡CH+HF
2)HF+SiMe
3(OsiMe
2)nOSiMe
3→SiFMe
3+nSiF
2Me
2+H
2O
【0036】
【表4】
【0037】
実施例9および比較例10によれば、トランス−HCFO−1233zdは、同様のハイドロフルオロオレフィントランス−HFO−1234zeよりも安定であったことが分かる。
【0038】
これらの例によれば、クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、特に、HCFO−1233zdは、貯蔵および使用中の両方において意外にも安定であり、特に、潤滑剤、水分、活性金属、ポリオールB−サイド処方物およびこれらの混合物と組み合わせると、以前からのHCFCおよびCFCと少なくとも同程度安定であることが分かる。