特許第6134476号(P6134476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134476
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20170515BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20170515BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   C07D209/86
   C09K11/06 690
   H05B33/14 B
【請求項の数】2
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2011-537147(P2011-537147)
(86)(22)【出願日】2010年10月22日
(86)【国際出願番号】JP2010006284
(87)【国際公開番号】WO2011048821
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2013年6月24日
【審判番号】不服2015-21051(P2015-21051/J1)
【審判請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】特願2009-244248(P2009-244248)
(32)【優先日】2009年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(74)【代理人】
【識別番号】100201226
【弁理士】
【氏名又は名称】水木 佐綾子
(72)【発明者】
【氏名】横山 紀昌
(72)【発明者】
【氏名】長岡 誠
(72)【発明者】
【氏名】富樫 和法
(72)【発明者】
【氏名】草野 重
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英治
【合議体】
【審判長】 中田 誠
【審判官】 西村 仁志
【審判官】 樋口 信宏
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0028943(KR,A)
【文献】 国際公開第2007/108362(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/108327(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B33/22
H05B33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極とその間に挟まれた、燐光性の発光材料を含有する発光層と電子阻止層を含む複数層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、下記構造式(化合物4)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物が、該電子阻止層の構成材料として用いられ、下記構造式(化合物53)で表される化合物が正孔輸送層の構成材料として用いられることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(化合物4)

【化2】
(化合物53)
【請求項2】
前記した燐光性の発光材料がイリジウムまたは白金を含む金属錯体である請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以後、有機EL素子と略称する)に関するものであリ、詳しくはカルバゾール環構造を有する化合物を用いた有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であるため、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(以後、Alqと略称する)と正孔を輸送することのできる芳香族アミン化合物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m以上の高輝度を得た(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされ、各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を設けた電界発光素子によって高効率と耐久性が達成されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また発光効率のさらなる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光体の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光体や燐光発光体をドープして作製することもできる。上記の講習会予稿集に記載されているように、有機EL素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える。
【0007】
有機EL素子においては、両電極から注入された電荷が発光層で再結合して発光が得られるが、正孔注入性を高め、陰極から注入された電子をブロックする電子阻止性を高めることによって、正孔と電子が再結合する確率を向上させ、さらには発光層内で生成した励起子を閉じ込めることによって、高発光効率を得ることができる。そのため、正孔輸送材料の果たす役割は重要であり、正孔注入性が高く、正孔の移動度が大きく、電子阻止性が高く、さらには電子に対する耐久性が高い正孔輸送材料が求められている。
【0008】
これまで有機EL素子に用いられてきた正孔輸送材料としては、特許文献1および特許文献2に示される芳香族アミン誘導体が知られていた。これらの化合物の中には、正孔の移動度が10−3cm/Vs以上と優れた移動度を有する化合物が知られているが、電子阻止性が不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できない。
【0009】
これらを改良した化合物として、下記の式で表される置換カルバゾール構造を有するアリールアミン化合物(例えば、化合物A、化合物Bおよび化合物C)が提案されている。(例えば、特許文献3〜5参照)。
【0010】
【化1】
(化合物A)
【0011】
【化2】
(化合物B)
【0012】
【化3】
(化合物C)
【0013】
近年、素子の発光効率を上げる試みとして、燐光発光体を用いて燐光を発生させる、すなわち三重項励起状態からの発光を利用する素子が開発されている。励起状態の理論によれば、燐光発光を用いた場合には、従来の蛍光発光の約4倍の発光効率が可能になるという、顕著な発光効率の増大が期待される。
1999年にプリンストン大学のM.A.Baldoらが、イリジウム錯体を用いた燐光発光素子によって、従来の外部量子効率を大幅に上回る8%を示して以来、燐光発光素子の開発が積極的に行われるようになった。
【0014】
燐光発光素子の発光効率を向上させるためには、ホスト材料に励起三重項エネルギーレベル(以後、Tと略称する)の高い材料を用いる必要があるが、正孔輸送材料に関しても三重項励起子を閉じ込めるために、Tの高い材料を用いる必要があると報告されている(例えば、非特許文献3参照)。さらに、下記式で表される緑色燐光発光体トリス(フェニルピリジル)イリジウム(以後、Ir(ppy)と略称する)
【0015】
【化4】
【0016】
のTは2.42eVであり、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(α−ナフチル)ベンジジン(以後、α−NPDと略称する)のTが2.29eVであることから、α−NPDでは三重項励起子の十分な閉じ込めが期待できず、より高いTを有する下記式で表される1,1−ビス[4−(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(以後、TAPCと略称する)(T;2.9eV)
【0017】
【化5】
【0018】
を用いることによってより高い発光効率が得られている(例えば、非特許文献4参照)。しかしながらTAPCの正孔移動度は小さく、加えてイオン化ポテンシャル(仕事関数)も5.8eVと正孔輸送材料としては適正な値ではない。
【0019】
また、前記化合物Aのイオン化ポテンシャル(仕事関数)は5.5eVと、前記TAPCより適正な値に近く、Tも2.9eVと高く、三重項励起子の十分な閉じ込めが期待できるが、この化合物も正孔移動度が小さいため、作製した素子の駆動電圧が高く、発光効率も十分とはいえない(例えば、非特許文献5参照)。従って、さらに高い発光効率を有する燐光発光素子を得るため、Tが高く、正孔移動度も大きく、正孔注入層または正孔輸送層にも用いられるばかりでなく、電子阻止層として好適に用いられる材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平8−048656号公報
【特許文献2】特許第3194657号公報
【特許文献3】特開平8−003547号公報
【特許文献4】特開2006−151979号公報
【特許文献5】WO2008/62636号公報
【特許文献6】特開2007−022986号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】応用物理学会第9回講習会予稿集55〜61ページ(2001)
【非特許文献2】応用物理学会第9回講習会予稿集23〜31ページ(2001)
【非特許文献3】J.Appl.Phys.,12,95,7798(2004)
【非特許文献4】有機ELディスプレイ、89(2004) 時任、安達、村田共著 オーム社
【非特許文献5】Appl.Phys.Lett.,93,063306(2008)
【非特許文献6】Helvetica Chimica Acta.,vol.89,1123(2006)
【非特許文献7】J.Org.Chem.,60,7508(1995)
【非特許文献8】Synth.Commun.,11,513(1981)
【非特許文献9】第4版実験化学講座7 p384−398(1992)日本化学会編 丸善
【非特許文献10】有機EL討論会第1回例会予稿集,19(2005)
【非特許文献11】Appl.Phys.Lett.,93,133312(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、正孔の注入・輸送性能に優れ、三重項励起子を閉じ込める高い能力を有し、電子阻止能力を有し、薄膜状態での安定性が高く、発光効率が高い優れた特性を有する有機化合物を用いて、高効率、高耐久性の有機EL素子、特に燐光発光有機EL素子を提供することにある。
【0023】
本発明の有機EL素子に用いられる、有機化合物が具備すべき物理的な特性としては、(1)正孔の注入特性が良いこと、(2)正孔の移動度が大きいこと、(3)高いTを有すること、(4)電子阻止能力に優れること、(5)薄膜状態が安定であること(6)耐熱性に優れていることをあげることができる。また、本発明が提供しようとする有機EL素子が具備すべき物理的な特性としては、(1)発光効率および電力効率が高いこと、(2)発光開始電圧が低いこと、(3)実用駆動電圧が低いことをあげることができる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
そこで本発明者らは上記の目的を達成するために、カルバゾール環構造が高いTを有していること、電子阻止性に優れていること、正孔輸送性能に優れていること、耐熱性と薄膜安定性に優れていることに着目して、カルバゾール環構造が連結した化合物を設計、選択し、該化合物を化学合成し、種々の有機EL素子を試作し、素子の特性評価を鋭意行なった結果、本発明を完成するに至った。
【0025】
すなわち、本発明によれば、以下の有機EL素子が提供される。
【0026】
1)一対の電極とその間に挟まれた、発光層と電子阻止層を含む複数層の有機層を有する有機EL素子において、下記一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物が、該電子阻止層の構成材料として用いられていることを特徴とする有機EL素子。
【0027】
【化6】
(1)
【0028】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、互いに同一でも異なっても良く、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、r1、r4、r5は0または1〜4の整数を表し、r2、r3、r6は0または1〜3の整数を表し、nは0または1の整数を表し、Ar1、Ar2、Ar3は互いに同一でも異なっていても良く、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【0029】
2)前記一般式(1)においてAr2が下記一般式(2)または(3)で表される1価基であることを特徴とする上記1)記載の有機EL素子
【0030】
【化7】
(2)
【0031】
(式中、R7、R8は、互いに同一でも異なっても良く、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、r7は0または1〜4の整数を表し、r8は0または1〜3の整数を表し、Bは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表し、Ar4は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【0032】
【化8】
(3)
【0033】
(式中、R9、R10は、互いに同一でも異なっても良く、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、r9、r10は0または1〜3の整数を表し、Cは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表し、Ar5は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表し、W、X、Y、Zは炭素原子または窒素原子を表す。ここでW、X、Y、Zはそのいずれか1つのみが窒素原子であるものとし、この場合の窒素原子はR9の置換基を有さないものとする。)
【0034】
3)前記した発光層が燐光性の発光材料を含有することを特徴とする上記1)または2)記載の有機EL素子。
【0035】
4)一対の電極とその間に挟まれた、燐光性の発光材料を含有する発光層と電子阻止層を含む複数層の有機層を有する有機EL素子において、前記一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物が、該発光層の構成材料として用いられていることを特徴とする有機EL素子。
【0036】
5)前記した燐光性の発光材料がイリジウムまたは白金を含む金属錯体であることを特徴とする上記3)または4)記載の有機EL素子。
【0037】
一般式(1)〜(3)中のR1〜R10で表される「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基」、としては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、などをあげることができる。
【0038】
一般式(1)〜(3)中のR1〜R10で表される「炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基」、「炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基」としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基などをあげることができる。
【0039】
一般式(1)〜(3)中のR1〜R10、Ar1〜Ar5、で表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、アセナフテニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、およびカルボリニル基などをあげることができる。好ましくは、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基などをあげることができる。「縮合多環芳香族」の炭素数が増加するとTが低くなるため、「縮合多環芳香族」の炭素数は20個以下であることが好ましい。
【0040】
一般式(1)〜(3)中のR1〜R10、Ar1〜Ar5、で表される、「置換芳香族炭化水素基」、「置換芳香族複素環基」または「置換縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、スチリル基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0041】
一般式(1)〜(3)中のR1〜R10、Ar1〜Ar5で表される、「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」における「アリールオキシ基」としては、具体的に、フェノキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基などをあげることができる。
【0042】
一般式(1)〜(3)中のR1〜R10、Ar1〜Ar5で表される、「置換アリールオキシ基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、スチリル基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0043】
一般式(2)〜(3)中のBまたはCで表される、「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基」、「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基」における「芳香族炭化水素の2価基」、「芳香族複素環の2価基」、「縮合多環芳香族の2価基」としては、具体的に、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、テトラキスフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、フルオレニレン基、フェナントロリレン基、インデニレン基、ピレニレン基、アセナフテニレン基、フルオランテニレン基、トリフェニレニレン基、ピリジニレン基、ピリミジニレン基、キノリレン基、イソキノリレン基、インドリレン基、カルバゾリレン基、キノキサリレン基、ベンゾイミダゾリレン基、ピラゾリレン基、ナフチリジニレン基、フェナントロリニレン基、アクリジニレン基、チエニレン基、ベンゾチエニレン基、ジベンゾチエニレン基などをあげることができる
【0044】
一般式(2)〜(3)中のBまたはCで表される、「置換芳香族炭化水素の2価基」、「置換芳香族複素環の2価基」、「置換縮合多環芳香族の2価基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数2ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、スチリル基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基のような基をあげることができ、これらの置換基はさらに置換されていても良い。
【0045】
尚、前記一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物のうち、nが0である下記一般式(1’)及び前記一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物のうち、nが1である下記一般式(1’’)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物が有機EL素子に用いるのに好ましい。
【0046】
【化9】
(1’)
(式中、R1、R2、R3、R4、R7、R8は互いに同一でも異なっても良く、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、r1、r4、r7は0または1〜4の整数を表し、r2、r3、r8は0または1〜3の整数を表し、Bは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素の2価基、置換もしくは無置換の芳香族複素環の2価基または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族の2価基を表し、Ar3、Ar4は互いに同一でも異なっていても良く、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【0047】
【化10】
(1’’)
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は互いに同一でも異なっても良く、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキル基、炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基、炭素原子数5ないし10のシクロアルキルオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基を表し、r4、r5は0または1〜4の整数を表し、r1、r2、r3、r6は0または1〜3の整数を表し、Ar1、Ar2、Ar3は互いに同一でも異なっていても良く、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【0048】
本発明の有機EL素子に用いられる、一般式(1)で表される、カルバゾール環構造を有する化合物は、三重項励起子を閉じ込める能力が高く、優れた電子阻止能力と耐熱性を有し、かつ薄膜状態が安定である。
【0049】
本発明の有機EL素子に用いられる、一般式(1)で表される、カルバゾール環構造を有する化合物は、有機EL素子、特に燐光発光有機EL素子の正孔注入層および/または正孔輸送層の構成材料として使用することもできる。該化合物は、正孔の注入性が高く、移動度が大きく、Tが高く、しかも電子に対する安定性が高いため、燐光性の発光材料を含有する発光層内で生成した三重項励起子を閉じ込めることができ、さらに正孔と電子が再結合する確率を向上させ、高発光効率を得ることができると共に、駆動電圧が低下して、有機EL素子の耐久性が向上するという作用を有する。
【0050】
本発明の有機EL素子に用いられる、一般式(1)で表される、カルバゾール環構造を有する化合物は、有機EL素子、特に燐光発光有機EL素子の電子阻止層の構成材料としても使用することができる。三重項励起子を閉じ込める能力に優れていると共に正孔輸送性に優れ、かつ薄膜状態の安定性の高い材料を用いることにより、高い発光効率を有しながら、駆動電圧が低下し、電流耐性が改善されて、有機EL素子の最大発光輝度が向上するという作用を有する。
【0051】
本発明の有機EL素子に用いられる、一般式(1)で表される、カルバゾール環構造を有する化合物は、有機EL素子、特に燐光発光有機EL素子の発光層の構成材料としても使用することができる。該化合物は、正孔輸送性に優れ、かつバンドギャップが広いため、該化合物を発光層のホスト材料として用い、ドーパントと呼ばれている燐光発光体を担持させて、発光層として用いることにより、駆動電圧が低下し、発光効率が改善された有機EL素子を実現できるという作用を有する。
【0052】
本発明の有機EL素子は、正孔の移動度が大きく、優れた三重項励起子を閉じ込める能力を有し、かつ薄膜状態が安定なカルバゾール環構造を有する化合物を用いているため、高効率、高耐久性を実現することが可能となった。
【発明の効果】
【0053】
本発明の有機EL素子に用いられる、カルバゾール環構造を有する化合物は、有機EL素子、特に燐光発光有機EL素子の電子阻止層あるいは発光層の構成材料として有用であり、三重項励起子を閉じ込める能力に優れ、薄膜状態が安定で、耐熱性に優れている。本発明の有機EL素子は発光効率および電力効率が高く、このことにより素子の実用駆動電圧を低くさせることができる。さらに発光開始電圧を低くさせ、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明実施例1の化合物(化合物4)の1H−NMRチャート図である。
図2】本発明実施例2の化合物(化合物25)の1H−NMRチャート図である。
図3】実施例6、実施例7の有機EL素子構成を示した図である。
図4】比較例1、2の有機EL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明で使用されるカルバゾール環構造を有する化合物は、公知の方法(例えば、特許文献3参照)によって合成できる。また、例えば以下の方法によっても合成できる。まず、相当する9位をアリール基で置換されたカルバゾールをN−ブロモスクシンイミドなどによるブロモ化を行うことによって、3−ブロモ−9−アリールカルバゾールなどのモノブロモカルバゾールまたは3,6−ジブロモ−9−アリールカルバゾールなどのジブロモカルバゾールを合成し(例えば、非特許文献6参照)、このモノブロモカルバゾールとピナコールボランやビス(ピナコラート)ジボロンなどとの反応で合成されるボロン酸またはボロン酸エステル(例えば、非特許文献7参照)と、ジブロモカルバゾールまたはモノブロモカルバゾールをSuzukiカップリングなどのクロスカップリング反応(例えば、非特許文献8参照)を行うことによって、ビス(N−アリール−9’H−カルバゾール−3’−イル)−9−アリール−9H−カルバゾールまたは(N−アリール−9’H−カルバゾール−3’−イル)−9H−カルバゾールなどを合成することができる。また、(N−アリール−9’H−カルバゾール−3’−イル)−9H−カルバゾールと、種々のジハロゲノアリーレンとのウルマン反応などの縮合反応によって得られる(N−アリール−9’H−カルバゾール−3’−イル)−9−ハロゲノアリール−カルバゾールと9−アリールカルバゾールの3−ボロン酸またはボロン酸エステルをSuzukiカップリングなどのクロスカップリング反応(例えば、非特許文献8参照)を行うことによって、カルバゾール環構造を有する化合物を合成することができる。
【0056】
一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0057】
【化11】
(化合物4)
【0058】
【化12】
(化合物5)
【0059】
【化13】
(化合物6)
【0060】
【化14】
(化合物7)
【0061】
【化15】
(化合物8)
【0062】
【化16】
(化合物9)
【0063】
【化17】
(化合物10)
【0064】
【化18】
(化合物11)
【0065】
【化19】
(化合物12)
【0066】
【化20】
(化合物13)
【0067】
【化21】
(化合物14)
【0068】
【化22】
(化合物15)
【0069】
【化23】
(化合物16)
【0070】
【化24】
(化合物17)
【0071】
【化25】
(化合物18)
【0072】
【化26】
(化合物19)
【0073】
【化27】
(化合物20)
【0074】
【化28】
(化合物21)
【0075】
【化29】
(化合物22)
【0076】
【化30】
(化合物23)
【0077】
【化31】
(化合物24)
【0078】
【化32】
(化合物25)
【0079】
【化33】
(化合物26)
【0080】
【化34】
(化合物27)
【0081】
【化35】
(化合物28)
【0082】
【化36】
(化合物29)
【0083】
【化37】
(化合物30)
【0084】
【化38】
(化合物31)
【0085】
【化39】
(化合物32)
【0086】
【化40】
(化合物33)
【0087】
【化41】
(化合物34)
【0088】
【化42】
(化合物35)
【0089】
【化43】
(化合物36)
【0090】
【化44】
(化合物37)
【0091】
【化45】
(化合物38)
【0092】
【化46】
(化合物39)
【0093】
【化47】
(化合物40)
【0094】
【化48】
(化合物41)
【0095】
【化49】
(化合物42)
【0096】
【化50】
(化合物43)
【0097】
【化51】
(化合物44)
【0098】
【化52】
(化合物45)
【0099】
【化53】
(化合物46)
【0100】
【化54】
(化合物47)
【0101】
【化55】
(化合物48)
【0102】
【化56】
(化合物49)
【0103】
【化57】
(化合物50)
【0104】
【化58】
(化合物51)
【0105】
【化59】
(化合物52)
【0106】
これらの化合物の精製はカラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行った。化合物の同定は、NMR分析によって行なった。物性値として、ガラス転移点(Tg)と仕事関数の測定を行った。ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となり、仕事関数は正孔輸送性の指標となるものである。
【0107】
ガラス転移点(Tg)は、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)によって求めた。
【0108】
仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、理研計器製の大気中光電子分光装置AC−3型を用いて測定した。
【0109】
これらの化合物のTは、測定した燐光スペクトルより算出できる。燐光スペクトルは市販の分光光度計を用いて測定できる。一般的な燐光スペクトルの測定方法としては溶媒に溶解し、低温下励起光を照射して測定する方法(例えば、非特許文献9参照)、あるいは、シリコン基板上に蒸着して薄膜とし、低温下励起光を照射して燐光スペクトルを測定する方法などがある(例えば、特許文献6参照)。Tは、燐光スペクトルの短波長側の第1ピークの波長あるいは短波長側の立ち上がり位置の波長を読み取り、下記の式に従って光のエネルギー値に換算することによって算出できる。Tは燐光発光体の三重項励起子の閉じ込めの指標となる。
【0110】
【数1】
【0111】
ここで、Eは光エネルギーの値を、hはプランク定数(6.63×10−34Js)を、cは光速(3.00×10m/s)を、λは燐光スペクトルの短波長側の立ち上がるところの波長(nm)を表す。そして、1eVは1.60×10−19Jとなる。
【0112】
本発明の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、陰極からなるもの、また、電子輸送層と陰極の間にさらに電子注入層を有するものがあげられる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略することが可能である。
【0113】
前記発光層、前記正孔輸送層、前記電子輸送層においては、それぞれが2層以上積層された構造であっても良い。
【0114】
本発明の有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。本発明の有機EL素子の正孔注入層として、本発明の一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物のほか、銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの材料、ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物や塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0115】
本発明の有機EL素子の正孔輸送層として、本発明の一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物のほか、TPDやα−NPD、N,N,N’,N’−テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、TAPC、種々のトリフェニルアミン3量体および4量体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。また、正孔の注入・輸送層として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以後、PEDOTと略称する)/ポリ(スチレンスルフォネート)(以後、PSSと略称する)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0116】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモンなどをPドーピングしたものや、TPDの構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0117】
本発明の有機EL素子の電子阻止層として、本発明の一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物のほか、4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(以後、TCTAと略称する)、9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]フルオレン、1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(以後、mCPと略称する)、2,2−ビス(4−カルバゾール−9−イルフェニル)アダマンタン(以後、Ad−Czと略称する)などのカルバゾール誘導体、9−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−9−[4−(トリフェニルシリル)フェニル]−9H−フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0118】
本発明の有機EL素子の発光層として、Alqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成しても良く、ホスト材料として、本発明の一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物のほか、前記発光材料に加え、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。またドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレンおよびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。
【0119】
また、発光材料として燐光性の発光材料を使用することも可能である。燐光性の発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。Ir(ppy)などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、BtpIr(acac)などの赤色の燐光発光体などが用いられ、このときのホスト材料としては正孔注入・輸送性のホスト材料として、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(以後、CBPと略称する)やTCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などに加え、本発明の一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物を用いることができる。電子輸送性のホスト材料として、p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(以後、UGH2と略称する)や下記式で表される2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)−トリス(1−フェニル−1H−ベンズイミダゾール)(以後、TPBIと略称する)などを用いることができる。
【0120】
【化60】
【0121】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1〜30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0122】
また、本発明の有機EL素子に用いられる一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物を用いて作製した発光層に、仕事関数の異なる化合物をホスト材料として用いて作製した発光層を隣接させて積層した構造の素子を作製することができる(例えば、非特許文献10および非特許文献11参照)。
【0123】
これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0124】
本発明の有機EL素子の正孔阻止層として、バソクプロイン(以後、BCPと略称する)などのフェナントロリン誘導体や、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノレート(以後、BAlqと略称する)などのキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の希土類錯体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体など、正孔阻止作用を有する化合物が用いられる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねても良い。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0125】
本発明の有機EL素子の電子輸送層として、Alq、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体などを用いることができる。これらは、単独で成膜しても良いが、他の材料とともに混合して成膜した単層として使用しても良く、単独で成膜した層同士、混合して成膜した層同士、または単独で成膜した層と混合して成膜した層の積層構造としても良い。これらの材料は蒸着法の他、スピンコート法やインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0126】
本発明の有機EL素子の電子注入層として、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの金属酸化物などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0127】
さらに、電子注入層あるいは電子輸送層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにセシウムなどの金属をNドーピングしたものを用いることができる。
【0128】
本発明の有機EL素子の陰極として、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【0129】
本発明の有機EL素子の各層の膜厚は特に制限されないが、一般に膜厚が薄い場合、ピンホールなどの欠陥が生じる可能性が高くなり、膜厚が厚い場合、印加電圧が高くなる傾向にあるため、通常は0.1nm〜1μmの範囲であり、0.3nm〜500nmの範囲が好ましい。
【0130】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0131】
<3,6−ビス(9’−フェニル−9’H−カルバゾール−3−イル)−9−フェニル−9H−カルバゾール(化合物4)の合成>
窒素置換した反応容器に、3、6−ジブロモ−9−フェニル−9H−カルバゾール1.6g、9−フェニル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール2.4g、トルエン20ml、エタノール5ml、2M炭酸カリウム水溶液6mlを加え、超音波を照射しながら30分間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.23gを加えて加熱し、74℃で4時間攪拌した。トルエン80mlを加えて加熱し、70℃で1時間さらに撹拌した後、40℃まで冷却して不溶物をろ過によって除き、ろ液を減圧下で濃縮することによって黒色の粗製物を得た。粗製物にトルエン100mlを加えて溶解し、シリカゲル28.9gを用いた吸着精製を行った後、減圧下で濃縮して黄白色粉体を得た。黄白色粉体にトルエン/メタノールを用いた再結晶による精製を2回繰り返すことによって、3,6−ビス(9’−フェニル−9’H−カルバゾール−3−イル)−9−フェニル−9H−カルバゾール(化合物4)1.76g(収率60.9%)の褐白色粉体を得た。
【0132】
得られた褐白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。1H−NMR測定結果を図1に示した。
【0133】
1H−NMR(CDCl3)で以下の35個の水素のシグナルを検出した。δ(ppm)=8.56(2H)、8.49(2H)、8.24−8.26(2H)、7.79−7.81(4H)、7.62−7.67(12H)、7.43−7.55(11H)、7.30−7.33(2H)。
【実施例2】
【0134】
<9’−フェニル−9−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−フェニル]−9H,9’H−[3,3’]ビカルバゾリル(化合物25)の合成>
窒素置換した反応容器に、9−フェニル−9H,9’H−[3,3’]ビカルバゾリル12.9g、4−ブロモ−ヨードベンゼン13.4g、銅粉0.64g、炭酸カリウム8.34g、亜硫酸水素ナトリウム0.49g、オルトジクロロベンゼン50mlを加えて加熱し、170℃で19.5時間攪拌した。90℃まで冷却し、トルエン200mlを加えて溶解した。不溶物をろ過によって除き、減圧下で濃縮した後、メタノール50mlから結晶化することによって、9−(4−ブロモフェニル)−9’−フェニル−9H,9’H−[3,3’]ビカルバゾリル17.30g(収率97%)の白色粉体を得た。
【0135】
得られた9−(4−ブロモフェニル)−9’−フェニル−9H,9’H−[3,3’]ビカルバゾリル17.00g、9−フェニル−3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9H−カルバゾール12.25g、トルエン160ml、エタノール40ml、2M炭酸カリウム水溶液23mlを、窒素置換した反応容器に加え、超音波を照射しながら30分間窒素ガスを通気した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.74gを加えて加熱し、72℃で12.5時間攪拌した。室温まで放冷した後、トルエン100ml、水150mlを加えて抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することによって黒色の粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/トルエン)によって精製し、9’−フェニル−9−[4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−フェニル]−9H,9’H−[3,3’]ビカルバゾリル10.44g(収率48%)の淡黄白色粉体を得た。
【0136】
得られた淡黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。1H−NMR測定結果を図2に示した。
【0137】
1H−NMR(THF−d)で以下の35個の水素のシグナルを検出した。δ(ppm)=7.25−7.31(3H)、7.36−7.44(5H)、7.48−7.53(5H)、7.58(1H)、7.64−7.69(8H)、7.73−7.76(2H)、7.81−7.85(3H)、8.04−8.08(2H)、8.26−8.30(3H)、8.56−8.61(3H)。
【実施例3】
【0138】
本発明で用いられる化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)によってガラス転移点を求めた。
ガラス転移点
本発明実施例1の化合物 142.5℃
本発明実施例2の化合物 151.4℃
【0139】
本発明で用いられる化合物は100℃以上のガラス転移点を有しており、本発明で用いられる化合物において薄膜状態が安定であることを示すものである。
【実施例4】
【0140】
本発明で用いられる化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、大気中光電子分光装置(理研計器製、AC−3型)で仕事関数を測定した。
仕事関数
本発明実施例1の化合物 5.44eV
本発明実施例2の化合物 5.49eV
【0141】
このように本発明で用いられる化合物はα−NPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.4eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有していることが分かる。
【実施例5】
【0142】
本発明で用いられる化合物について、1.0×10−5mol/Lの2−メチルテトラヒドロフラン溶液を調製した。調製した溶液を専用の石英管に入れ、純窒素を通気することによって酸素分を除き、さらに酸素分が混入しないようにセプタムラバーによる栓をした。77Kに冷却した後、蛍光リン光分光光度計(堀場製作所製、FluoroMax−4型)を用い、励起光を照射して燐光スペクトルを測定した。燐光スペクトルの短波長側の第1ピークの波長を読み取り、該波長値を光のエネルギーに換算してTを算出した。

本発明実施例1の化合物 2.74eV
本発明実施例2の化合物 2.71eV
FIrpic 2.62eV
Ir(ppy) 2.42eV
CBP 2.56eV
α−NPD 2.29eV
【0143】
このように本発明で用いられる化合物は一般的に用いられている青色燐光材料であるFIrpic、緑色燐光材料であるIr(ppy)や一般的に用いられるホスト材料であるCBP、一般的に用いられる正孔輸送材料であるα−NPDがもつTより大きい値を有しており、発光層で励起された三重項励起子を充分閉じ込める能力を有している。
【実施例6】
【0144】
有機EL素子は、図3に示すような、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔輸送層3、電子阻止層4、発光層5、正孔阻止層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極(アルミニウム電極)9の順に蒸着して作製した。
【0145】
具体的には、膜厚150nmのITOを成膜したガラス基板1を有機溶媒で洗浄した後に、酸素プラズマ処理にて表面を洗浄した。その後、このITO電極付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け0.001Pa以下まで減圧した。続いて、透明陽極2を覆うように正孔輸送層3としてα−NPDを膜厚40nmとなるように形成した。この正孔輸送層3の上に、電子阻止層4として本発明実施例1の化合物(化合物4)を膜厚10nmとなるように形成した。この電子阻止層4の上に発光層5としてTPBIとIr(ppy)を、蒸着速度比がTPBI:Ir(ppy)=92:8となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した。この発光層5の上に、正孔阻止層6としてBCPを膜厚10nmとなるように形成した。この正孔阻止層6の上に、電子輸送層7としてAlqを膜厚30nmとなるように形成した。この電子輸送層7の上に、電子注入層8としてフッ化リチウムを膜厚0.5nmとなるように形成した。最後に、アルミニウムを膜厚150nmとなるように蒸着して陰極9を形成した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【実施例7】
【0146】
実施例6における正孔輸送層3の材料を下記構造式の化合物53に代え、実施例6と同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0147】
【化61】
(化合物53)
【0148】
[比較例1]
比較のために、実施例6における正孔輸送層3の膜厚を50nmとなるように形成し、電子阻止層4を省略した以外は、実施例6と同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0149】
[比較例2]
比較のために、実施例7における正孔輸送層3の膜厚を50nmとなるように形成し、電子阻止層4を省略した以外は、実施例7と同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行なった。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表1にまとめて示した。
【0150】
【表1】
【0151】
表1に示す様に、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧は、電子阻止層の材料として本発明の実施例1の化合物(化合物4)を用いなかった場合、正孔輸送層の材料としてα−NPDを用いた場合の6.54V、化合物53を用いた場合の5.89Vに対して本発明の実施例1の化合物(化合物4)を電子阻止層の材料として用いた場合では5.77V、5.68Vとそれぞれ低電圧化した。また、発光輝度、発光効率、電力効率のいずれにおいても、電子阻止層の材料として本発明の実施例1の化合物(化合物4)を用いた場合、大きく向上する結果となった。
【0152】
上記と同一の有機EL素子を用いて発光開始電圧を測定した結果を以下に示した。
有機EL素子 正孔輸送層材料/電子阻止層材料 発光開始電圧[V]
実施例6 α−NPD/化合物4 2.8
実施例7 化合物53/化合物4 2.8
比較例1 α−NPD/なし 2.9
比較例2 化合物53/なし 2.9
【0153】
その結果、電子阻止層の材料として本発明の実施例1の化合物(化合物4)を用いなかった比較例1、比較例2に対し、電子阻止層の材料として本発明の実施例1の化合物(化合物4)を用いた実施例6、7では発光開始電圧が低電圧化していることが分かる。
【0154】
以上のように、本発明で用いられる一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物を電子阻止層の材料として用いた有機EL素子は、発光輝度、発光効率、電力効率の向上や実用駆動電圧の低下を達成できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
一般式(1)で表されるカルバゾール環構造を有する化合物を用いた有機EL素子を作製することにより、高い発光輝度、発光効率および電力効率を得ることができると共に、実用駆動電圧を低下させることができ、耐久性を改善させることができる。例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
【符号の説明】
【0156】
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔輸送層
4 電子阻止層
5 発光層
6 正孔阻止層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
図1
図2
図3
図4