【実施例1】
【0013】
図1は本発明の冷凍装置の実施例1を示す冷凍サイクル構成図である。
図1において、Iは冷凍装置で、この冷凍装置Iは、屋外に設置される冷凍機ユニット
II及び屋内に設置され、前記冷凍機ユニットと冷媒配管で接続される低圧機器IIIで構成されている。本実施例では、前記低圧機器IIIは、スーパーマーケット等の店舗内に設置され食品などの被冷却物を冷却するショーケースなどである。このようなショーケースは一般に負荷が大きく変動し易いものである。なお、低圧機器IIIとしては、これに限られるものではなく、他の形態の冷蔵庫や冷凍庫、或いは空気調和機の室内機等にも同様に適用可能であり、また低圧機器の数も複数台並列に接続することも同様に可能である。
【0014】
本実施例に係る冷凍装置Iは、容量制御が可能な圧縮装置としての圧縮機(圧縮装置)1と、この圧縮機1で圧縮された高圧冷媒に含まれる冷凍機油を分離するための油分離器2と、この油分離器2で分離された高圧冷媒を凝縮する凝縮器3と、この凝縮器3で凝縮された高圧冷媒を減圧する減圧機構7と、この減圧機構7で減圧された低圧冷媒を蒸発させる蒸発器8とを順次接続して冷凍サイクルの主回路が構成されている。
【0015】
前記圧縮機1は、低温低圧のガス冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒にする。前記圧縮機1によって圧縮された高温高圧のガス冷媒には、冷凍機油が含まれている。そのため、前記油分離器2によって冷媒と冷凍機油に分離される。油分離器2で分離された高温高圧のガス冷媒は、前記凝縮器3によって凝縮されて高温高圧の液冷媒となる。凝縮された高圧の液冷媒は、前記減圧機構7により減圧され、蒸発器8により蒸発して、低温低圧のガス冷媒となって圧縮機1に戻る。
前記減圧機構7は膨張弁などで構成され、前記蒸発器8と共に前記低圧機器IIIに設置されている。
【0016】
なお、圧縮機1としては、本実施例では、駆動周波数を可変とする可変容量型圧縮機が用いられている。これにより、冷凍サイクルの負荷に応じて、可変容量型圧縮機を制御して冷凍能力を調整することが可能となる。また、圧縮機(圧縮装置)1としては、例えばインバータ制御される可変容量型のスクロール圧縮機やロータリ圧縮機、或いはスクリュー圧縮機などが用いられる。前記圧縮機1を複数台設ける場合には、可変容量型圧縮機ではなく、固定容量型圧縮機(一定速型圧縮機)を複数台組み合わせて台数制御による容量制御可能な圧縮装置としても、或いは可変容量型圧縮機と固定容量型圧縮機との組み合わせとして容量制御ができるようにした圧縮装置としても良い。
冷媒としては、HFC系のもの(例えば、R404AやR410A)が用いられる。
【0017】
本実施例では、前記凝縮器3の下流側に、凝縮器3からの冷媒を収容する受液器4が設置され、更にこの受液器4の下流側には、該受液器4から出た液冷媒を空気と熱交換させて過冷却する空気過冷却熱交換器5が配置されている。これにより、蒸発器8までの管路内の気泡の発生(いわゆるフラッシングの発生)を好適に防止することができる。その結果、後述する過冷却熱交換器6に導入される冷媒流量の変動を抑制でき、冷凍能力を調整させることができる。前記凝縮器3及び空気過冷却熱交換器5は、本実施例ではクロスフィン型熱交換器で構成され、これらには冷却ファン60により屋外空気が通風される。
【0018】
また、前記冷凍サイクルの主回路には、主回路を循環する高圧冷媒の一部を抜き出して減圧させた減圧冷媒と、前記主回路を循環する高圧冷媒とを熱交換させる過冷却熱交換器6が設置されている。該過冷却熱交換器6は、前記凝縮器3の下流側に配置される。また、過冷却熱交換器6は、受液器4及び空気過冷却熱交換器5より下流側に配置されている。
【0019】
前記過冷却熱交換器6は、主回路としての第1流路6aと、前記主回路から分岐する第2流路6bを有しており、例えばプレート式熱交換器で構成されて、前記第1流路6aを流れる冷媒と、前記第2流路6bを流れる冷媒とが熱交換されるように構成されている。
【0020】
ところで、過冷却熱交換器6で熱交換される高圧冷媒は、前記凝縮器3と過冷却熱交換器6との間から抜き出され、具体的には、空気過冷却熱交換器5と過冷却熱交換器6との間から抜き出される。ただし、これに限定されるものではなく、前記受液器4から抜き出されるものであってもよく、過冷却熱交換器6より下流側から抜き出されるものであっても良い。
【0021】
前記過冷却熱交換器6において、前記主回路を循環する高圧冷媒と熱交換された減圧冷媒は、液冷媒冷却回路41を介して圧縮機1の中間圧部に注入される。即ち、圧縮機1の中間圧部にはインジェクションポートが形成されており、前記液冷媒冷却回路41からの液冷媒はこのインジェクションポートに注入される。前記液冷媒冷却回路41には、圧縮機1の中間圧部への冷媒の注入量を制御する電子膨張弁などの流量制御弁(流量制御手段)11が設けられている。この流量制御弁11は、流量調整可能な減圧手段として設けられており、前記主回路からの分岐点と過冷却熱交換器6との間に配置されている。この液冷媒冷却回路41は、前記過冷却熱交換器6での過冷却度を制御して冷凍能力を調整するために設けられている。
【0022】
また、本実施例では、前記液冷媒冷却回路41の他に、圧縮機の温度上昇を防止するための液インジェクション回路42も設けられている。本実施例では、前記液インジェクション回路42は、その一端側が前記空気過冷却熱交換器5と前記過冷却器熱交換器6とを接続している前記主回路の冷媒配管に接続され、他端側は前記液冷媒冷却回路41に接続されることにより、前記液冷媒冷却回路41と同一の配管で圧縮機1の中間圧部に接続されている。また、この液インジェクション回路42には、電子膨張弁、或いはキャピラリチューブなどの減圧器と開閉弁を組み合わせた減圧手段9が設けられている。この減圧手段は前記圧縮機1から吐出される吐出ガス温度や吐出ガスの過熱度に基づいて制御される。
【0023】
前記液冷媒冷却回路41や液インジェクション回路42の一端側は必ずしも、前記過冷却器熱交換器6の上流側に接続しなければならないものではなく、その下流側に接続するようにしても良い。
【0024】
17は前記油分離器2で分離された油を、前記圧縮機1の吸入側の冷媒配管に戻すための油戻し回路で、この油戻し回路17には減圧手段10が設けられている。この減圧手段10としては開閉弁とキャピラリチューブなどでの減圧器とを組み合わせたものなどが使用される。
【0025】
また、前記圧縮機1の吸入側の冷媒配管には吸入圧力センサ14が設けられ、前記圧縮機1の吐出側の冷媒配管には吐出ガス温度センサ15と吐出圧力センサ19が設けられている。前記吐出ガス温度センサ15により圧縮機からの吐出ガス温度を検出することで圧縮機1の温度を検出するものである。また、前記吐出ガス温度センサ15と吐出圧力センサ19からの検出値に基づいて過熱度を求めることができる。更に、本実施例では、前記過冷却熱交換器6の下流側の冷媒配管には前記過冷却熱交換器6で冷却された液冷媒の温度を検出する液温度センサ18が設けられている。
【0026】
これらのセンサ14,15,18,19からの信号はコントローラ(制御手段)16に入力され、これらの入力された信号などに基づいて、前記コントローラ16は、前記圧縮機、前記液冷媒冷却回路41の流量制御弁11、前記液インジェクション回路42の減圧手段9、油戻し回路17の減圧手段10などを制御するように構成されている。
【0027】
前記吸入圧力センサ14は、前記主回路の負荷(低圧機器IIIにおける負荷)を検出するために設けられているものであり、圧縮機1の吸入側の圧力を検出するものである。
【0028】
次に、前記主回路の基本的な動作について、
図1及び
図2を用いて説明する。なお、
図2は
図1の冷凍装置におけるモリエル線図である。
【0029】
圧縮機1に吸入されたガス冷媒は、圧縮機1で圧縮され、高温、高圧のガス冷媒となって吐出される。吐出されたガス冷媒は、油分離機2を経て、凝縮器3で屋外空気(外気)と熱交換して放熱されることにより、凝縮されて受液器4に流入し溜められる。受液器4に溜められた液冷媒は、過冷却器5に導かれて、ここで再び屋外空気と熱交換して過冷却される。
【0030】
過冷却器5で過冷却された液冷媒は、液冷媒冷却回路41や液インジェクション回路42に冷媒が流れていない場合には、その全量が過冷却熱交換器6の第1流路6aに導かれる。また、前記流量制御弁11が開いて、液冷媒の一部が主回路から分岐し、第2流路6b側(液冷媒冷却回路41側)に冷媒が流れている場合には、前記液冷媒冷却回路41の流量制御弁11で減圧されて温度が低下した冷媒と、前記第1流路6aを流れる液冷媒とが熱交換して、第1流路6aを流れる液冷媒は更に過冷却される。この第1流路6aから流出された液冷媒は、低圧機器IIIの減圧機構7により減圧され、ガス液混合冷媒となる。このガス液混合冷媒は、蒸発器8で周囲の被冷却物から吸熱(被冷却物を冷却)して蒸発され、低温、低圧のガス冷媒となって前記圧縮機1に再び吸入される。
【0031】
ここで、前記液インジェクション回路42に冷媒が流れていない状態と冷媒が流れている状態での冷凍サイクルにおけるモリエル線図を
図2により説明する。この
図2において、前記液冷媒冷却回路41に冷媒が流れていない状態のモリエル線図を実線61で、前記液冷媒冷却回路41に冷媒が流れている状態でのモリエル線図を点線62で示す。
【0032】
次に、液冷媒冷却回路41の基本的な動作について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
低圧機器IIIに冷却負荷の変動が生じた場合、圧縮機1への吸入圧力に変動が生じるので、この圧力変動を吸入圧力センサ14により検出し、この検出された吸入圧力値はコントローラ16に入力される。コントローラ16は検出された吸入圧力値に応じて、低圧機器IIIの冷却温度(設定温度)に対応して決定される吸入圧力値となるように、前記液冷媒冷却回路41の流量制御弁11を制御して、冷凍能力を調整する。
【0033】
例えば、前記吸入圧力センサ14で検出された吸入圧力値が設定されている吸入圧力値よりも大きい場合、前記コントローラ16は液冷媒冷却回路41の流量制御弁11を開度が大きくなる方向に動作させる。これにより、空気過冷却熱交換器3で過冷却された主回路を流れる液冷媒の一部は、前記第2流路6b側に分流されて前記液冷媒冷却回路41側に流れる。この分流された液冷媒は、液冷媒冷却回路41の流量制御弁11で減圧され、前記第1流路6aを流れる主回路の液冷媒と熱交換して吸熱し、第1流路6aを流れる液冷媒を更に過冷却して自らは蒸発した後、前記圧縮機1の中間圧部に設けられたインジェクションポートに注入される。
【0034】
このように、主回路を流れる液冷媒は更に過冷却されて低圧機器III側に流れるので、冷却能力が増大して前記低圧機器IIIの温度を低下させることができる。従って、前記吸入圧力センサ14で検出される吸入圧力値も低下し、設定されている吸入圧力値に近づけて行くことができる。なお、本実施例では、前記液温度センサ18を備えているので、前記コントローラ16は、この液温度センサ18から得られた液冷媒温度も取り込んで、前記流量制御弁11の開度を制御すれば、前記流量制御弁11をより迅速に適切な開度に制御することができる。
【0035】
この作用について、
図2に示すモリエル線図で詳しく説明する。
図2において、前記液冷媒冷却回路41の流量制御弁11を閉じている場合には、液冷媒冷却回路41が設けられていない通常の冷凍装置と同様に動作するので、そのモリエル線図は
図2に実線61で示す線となり、そのエンタルピ差はΔq1で示すようになる。これに対し、前記液冷媒冷却回路41の流量制御弁11が開かれると、該液冷媒冷却回路41が動作し、主回路のモリエル線図は、
図2の点線62で示すように、モリエル線図を低エンタルピ側に拡大させることができ、そのエンタルピ差はΔq2で示すように大きくできる。
【0036】
この
図2から明らかなように、前記液冷媒冷却回路41を動作させて主回路を流れる液冷媒の過冷却度を調整範囲Aに示すように調整することにより、冷凍機ユニットIIの冷凍能力(エンタルピ差)を増大させることができる。即ち、冷凍能力は冷媒循環量とエンタルピ差との乗算で表されるが、低圧機器IIIを流れる冷媒循環量が同じで、液冷媒冷却回路41が動作しない状態のエンタルピ差Δq1より、液冷媒冷却回路41が動作した状態のエンタルピ差Δq2の方が大きくなるため、冷凍能力は増大する。
【0037】
前記コントローラ16は、前記吸入圧力センサ14で検知した吸入圧力値に応じて(換言すれば、冷凍装置の負荷変動に応じて)、液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度を制御するように構成されている。液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度を制御して、液冷媒冷却回路41を流れる冷媒を減圧しつつその冷媒量を変化させることにより、前記冷凍機ユニットIIの冷凍能力を変化させることができる。
【0038】
即ち、液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度が大きくなるように制御すれば、該液冷媒冷却回路41を流れる冷媒量を増大することができ、主回路(第1流路61側)を流れる液冷媒の過冷却量を増大して冷凍能力を増大することができる。逆に、前記液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度が小さくなるように制御すれば、該液冷媒冷却回路41を流れる冷媒量が低減し、主回路を流れる液冷媒の過冷却量が小さくなるから冷凍能力を低下させることができる。
【0039】
このように液冷媒冷却回路41を動作させることにより、
図2のモリエル線図の点線62に示すように、液冷媒の過冷却度を増加させて冷凍能力を増大できると共に、圧縮機1の中間圧部に低温の冷媒が注入されるので、圧縮機1から吐出される吐出冷媒ガスの温度を低くすることもできる。
【0040】
即ち、液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の制御により、低圧機器IIIへ供給される液冷媒の過冷却度を変化させることができ、それによって低圧機器III側への冷媒循環量を変化させること無く冷凍能力を制御できると共に、低圧機器IIIの冷却負荷が小さい場合でも、前記圧縮機1への油戻り量が低減するのも防止することができる。
【0041】
次に、液インジェクション回路42の基本的な動作について、
図1に基づき説明する。本実施例では、吐出ガス温度センサ15を備えており、吐出ガス温度センサ15の検出温度値に基づいて、前記コントローラ16は液インジェクション回路42に設けられている減圧手段(電子膨張弁を用いている場合には流量制御手段にもなる)9を制御する。前記減圧手段9を開くと、空気過冷却熱交換器5からの主回路を流れる液冷媒の一部は、前記液インジェクション回路42に分流される。この分流されて液インジェクション回路42を流れる液冷媒は、前記減圧手段9で減圧された後、前記圧縮機1の中間圧力部に設けられているインジェクションポートに注入される。
【0042】
前記減圧手段9は、前記吐出ガス温度センサ15での検出温度値が、設定温度以上となった場合に前記コントローラ16により開かれるように制御され、前記検出温度値が設定温度より低下した場合には閉じるように制御される。このように液インジェクション回路42を動作させることにより、圧縮機1を冷却してその温度上昇を防止できるから、信頼性の向上を図ることができる。
【0043】
次に、前記吸入圧力センサ14に基づく制御と、その制御による冷凍能力の変化について、
図3及び
図4により説明する。
図3は
図1に示す冷凍装置Iの制御動作を説明するフローチャート、
図4は
図3の制御動作に基づく冷凍能力の変化の一例を説明する線図である。
【0044】
図3において、16は
図1に示したコントローラで、このコントローラ16での動作を
図3のフローチャートで説明する。前記コントローラ16には、低圧機器IIIの冷却負荷変動として、
図1に示す吸入圧力センサ14からの検出圧力値Psが随時取り込まれている(ステップS1)。一方、低圧機器IIIの冷却温度(設定温度)に対応する設定吸入圧力値の範囲(以下、単に設定圧力範囲ともいう)が設定される(ステップS2)。
【0045】
低圧機器IIIに負荷変動が生じた場合、前記吸入圧力センサ14の検出圧力値Psは変動するので、この検出圧力値Psと前記設定圧力範囲とを比較する(ステップS3)。
この比較の結果、検出圧力値Psが設定圧力範囲より高くなったか否かを判定し、検出圧力値Psが設定圧力範囲よりも高いと判定された場合には、冷凍能力を増加する必要がある場合と想定されるので、次にステップS4に移り、まずは冷媒循環量が最大(Max)であるか否かを判定する(ステップS4)。冷媒循環量が最大か否かは圧縮機の回転数が最大か否かで判定することができる。
【0046】
このステップS4で冷媒循環量が最大にはなっていないと判定された場合には、液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度(液冷媒冷却回路の流量)が最大であるか否かを判定する(ステップS5)。このステップS5で液冷媒冷却回路41の流量制御弁11開度が最大になっていないと判定された場合には、ステップS6に移り、流量制御弁(電子膨張弁)11の開度を増加(UP)させることにより、冷凍機ユニットIIの冷凍能力を増加(UP)させる。
【0047】
このステップS6における流量制御弁11の制御により、
図4に示すように、冷凍機ユニットIIの冷凍能力をハッチングで示した液冷媒冷却回路41による冷凍能力制御領域Bの範囲で調整することができる。例えば、
図4に示す冷媒循環量が50%の場合、冷凍能力を40%(流量制御弁11が全閉の状態)から、50%(流量制御弁11が全開の状態)の範囲で調整することができる。
【0048】
前記ステップS5で液冷媒冷却回路41の流量制御弁11開度が最大と判定された場合には、
図3のステップS7に移り、圧縮機1の回転数を増加(運転容量を増加)させて冷媒循環量を増大(UP)させることにより、冷凍能力を増大(UP)させる。即ち、吸入圧力センサ14による検出圧力値Psに基づいて圧縮機1の回転数を増大し、冷媒循環量を増大させるように、前記圧縮機1をインバータ制御する。この圧縮機1の回転数制御(容量制御)によって、
図4の実線63に示すように、冷媒循環量を50%〜100%の範囲で制御することにより、冷凍能力を40%〜80%の範囲で調整することができる。
【0049】
前記ステップS4で冷媒循環量が最大となっていると判定された場合には、圧縮機運転容量制御による冷凍能力の増大が望めないので、ステップS8に移り、液冷媒冷却回路41の流量が最大(Max)になっているか否かを判定する。この液冷媒冷却回路41の流量とは、過冷却熱交換器6の第2流路6bを流れる冷媒量のことであり、この冷媒量は液冷媒冷却回路41の流量制御弁11の開度によって決定される。従って、液冷媒冷却回路41の流量制御弁11が最大開度になっているか否かを判定することにより、液冷媒冷却回路流量が最大になっているか否かを判定できる。
【0050】
このステップS8で、液冷媒冷却回路41の流量が最大になっていないと判定された場合には、ステップS9に移り、液冷媒冷却回路41の流量制御弁(電子膨張弁)11の開度を大きく(UP)して、該液冷媒冷却回路41の流量を増大し、冷凍能力を増大(UP)させる。このような液冷媒冷却回路41の流量制御によって、
図4の液冷媒冷却回路41による冷凍能力制御領域Bに示すように、冷媒循環量が100%の状態で、冷凍能力を80%〜100%の範囲で調整することができる。
【0051】
前記ステップS8で液冷媒冷却回路41の流量が最大になっていると判定された場合は、冷凍能力が最大となっている状態なので、その運転状態を維持する(ステップS10)。
【0052】
前記ステップS3で検出圧力値Psが設定圧力範囲より高くなっていない場合には、ステップS11に移り、検出圧力値Psが設定圧力範囲より低くなっているか否かを判定する。ステップS11で検出圧力値Psが設定圧力範囲より低くなっていると判定された場合には冷凍能力を低減させる必要があるので、ステップS12に移り、まず液冷媒冷却回路41の流量が最少(Min)になっているか否かを判定する。この判定で、液冷媒冷却回路41の流量が最少になっていないと判定された場合には、ステップS13に移り、検出圧力値Psに基づき、前記流量制御弁(電子膨張弁)11の開度が小さくなる(Down)ように制御して、液冷媒冷却回路41を流れる液冷媒量を減少させる。これによって主回路を流れる液冷媒の過冷却度を減少させて冷凍能力を低減(Down)でき、圧縮機1への吸入圧力値を上昇させて、設定圧力範囲に入るようにすることが可能となる。
【0053】
前記ステップS12で、液冷媒冷却回路41の流量が最小(流量制御弁11の開度が最小)になっていると判定された場合には、次にステップS14に移り、検出圧力値Psに基づいて、圧縮機1の回転数(容量)を低減して冷媒循環量を低減させるように、前記圧縮機1をインバータ制御する。これによって、主回路を流れる冷媒循環量が低減するので、冷凍能力を減少させて圧縮機1への吸入圧力値を上昇させ、設定圧力範囲に入るように制御可能となる。
【0054】
前記ステップS11で、検出圧力値Psが設定圧力範囲より低くなっていないと判定された場合には、検出圧力値Psが設定圧力範囲内にあると判断できるので、その運転状態を維持する(ステップS15)。
【0055】
前記液冷媒冷却回路41を備えておらず、過冷却熱交換器6での過冷却をしない従来の冷凍装置では、
図4の実線63で示す「過冷却度制御無し」の特性のようになり、圧縮機1の容量制御による冷媒循環量の制御範囲が50%〜100%であるとした場合、それによる冷凍能力の制御範囲は40%〜80%となる。
【0056】
これに対し、上述した本実施例の冷凍装置によれば、液冷媒冷却回路41を設け、ここを通過する液冷媒量を制御することで、過冷却熱交換器6での過冷却度制御をすることができるように構成している。従って、圧縮機1の容量制御による冷媒循環量の制御範囲が上記従来のものと同じ50%〜100%の場合であっても、冷凍能力の制御範囲を、
図4の実線63で示す特性に加え、点線64に示す「過冷却度制御有り」の特性の範囲まで増加させることができるから、40%〜100%と大幅に拡大できる。この結果、低圧機器IIIで冷却される食品等の被冷却物をきめ細かく冷却できるから、冷却不足をなくして鮮度維持を図ることができ、冷却し過ぎも防止可能となる。
【0057】
また、本実施例によれば、圧縮機への吸入圧力に基づく冷凍能力の制御を、液冷媒冷却回路41を流れる液冷媒量の制御を優先して行うので、圧縮機の回転数(容量)をより低減した運転が可能となる。この結果、圧縮機の信頼性向上を図れると共に、省エネ化も図ることが可能となり、冷凍装置のCOP向上も図れる。
【0058】
即ち、前記液冷媒冷却回路41による冷凍能力の制御は、前記低圧機器IIIにおけるどの蒸発温度においても使用可能なため、冷凍能力の可変範囲を最大限に発揮させることができ、圧縮機の回転数をできるだけ下げた運転を行うことで、よりCOPを向上させた運転を行うことが可能となる。
更に、液冷媒冷却回路41からの低温の冷媒ガスを圧縮機の中間圧部に注入するので、圧縮機の冷却も可能となり、その温度上昇を抑えることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施例によれば、同じ冷媒循環量において、冷凍能力を増大させることが可能となるから、圧縮機の回転数(容量)をより低減させ、回転数変動の少ない安定した運転が可能となる。この結果、圧縮機の信頼性向上を図れると共に、省エネ化も図ることのできる冷凍装置を得ることができる効果がある。
【0060】
即ち、本実施例では、冷凍サイクルの負荷が変動しても、圧縮装置(圧縮機)の運転容量の変動を小さくして安定化させつつ必要な冷凍能力を得ることができるから、圧縮装置の負担を小さくしてその信頼性の向上を図ることができると共に、圧縮装置の駆動電流の上昇も抑制して省エネ化を図ることのできる効果が得られる。