特許第6134487号(P6134487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6134487ステッピングモータ制御回路、ムーブメント及びアナログ電子時計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134487
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】ステッピングモータ制御回路、ムーブメント及びアナログ電子時計
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/02 20060101AFI20170515BHJP
   G04C 3/14 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H02P8/02
   G04C3/14 U
   G04C3/14 W
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-197537(P2012-197537)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-54107(P2014-54107A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】間中 三郎
(72)【発明者】
【氏名】佐久本 和実
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−256137(JP,A)
【文献】 特開2012−065539(JP,A)
【文献】 特開2008−228559(JP,A)
【文献】 特開2010−243249(JP,A)
【文献】 特開2010−220461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/00−8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主駆動パルスのエネルギにより回転されるロータの回転状況を検出する回転検出部と、
前記ロータの回転状況に対して前記主駆動パルスのエネルギに余裕がある場合に当該主駆動パルスよりも小さなエネルギの主駆動パルスに変更するパルスダウンを行うことで前記ロータを駆動するように制御する制御部と、を備え、
前記回転検出部は、前記主駆動パルスの印加後に設定されており前記パルスダウンが必要とされない程度の駆動余裕を有するエネルギ状態において前記ロータを中心とする空間の第2象限における前記ロータの最初の正方向の回転状況を判定可能な第1区間、前記第1区間の後に設定されており前記パルスダウンが必要とされない程度の駆動余裕を有するエネルギ状態において前記ロータを中心とする空間の第2象限及び第3象限の少なくとも一方における前記ロータの最初の正方向の回転状況を判定可能な第2区間、及び、前記第2区間の後に設定されており前記パルスダウンが必要とされない程度の駆動余裕を有するエネルギ状態において前記ロータを中心とする空間の第3象限における前記ロータの最初の逆方向の回転以降の回転状況を判定可能な第3区間を含む検出区間であって、前記第2区間が前記第2区間前側区間と前記第2区間前側区間に続く前記第2区間後側区間とに分かれて設定される検出区間において、前記主駆動パルスの印加により生じた誘起信号を検出することにより前記ロータの回転状態を検出
前記制御部は、前記第1区間において基準しきい電圧を超える前記誘起信号が検出されず、前記第2区間前側区間において前記基準しきい電圧を超える前記誘起信号が検出された場合、前記主駆動パルスを駆動の都度パルスダウンする
ことを特徴とするステッピングモータ制御回路。
【請求項2】
記第2区間後側区間は前記第2区間における最後のサンプリング周期であることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ制御回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載のステッピングモータ制御回路を備えて成ることを特徴とするムーブメント
【請求項4】
請求項3記載のムーブメントを備えて成ることを特徴とするアナログ電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータを駆動制御するステッピングモータ制御回路、前記ステッピングモータ制御回路を備えたムーブメント及び前記ムーブメントを備えたアナログ電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アナログ電子時計において、複数種類の主駆動パルスP1を用意しておき、前記いずれかの主駆動パルスでステッピングモータを駆動した際、当該主駆動パルスP1のエネルギに余裕がある場合には、エネルギの小さい主駆動パルスP1に変更(パルスダウン)するようにパルス制御することによって、省電力化を図るパルス制御方式が開発されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載された発明では、回転状況を検出する検出区間は複数の区間に区分されており、パルスダウンする場合は区間T2の検出値によって制御されるが、量産バラつきや動作の安全度を考慮して、駆動余裕が減少したことを表す区間T2の後半(区間T2B)において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出できるように照準を合わせてパルス制御している。所定値を超える誘起信号VRsが区間T2Bで検出される状況(駆動余裕が小さい状況)が所定の第1回数連続して生じた場合にパルスダウンし又、前記駆動余裕の小さな回転状況が前記第1回数連続して発生しない場合でも駆動余裕の大きな回転状況が発生した場合には前記第1回数連続して発生する前にパルスダウンするように構成している。
これにより、駆動余裕が大きい場合はパルスダウンするまでの時間を短くしてパルスダウンし、駆動余裕が小さくても動作が安定している場合にはパルスダウンまでの時間を長くしてパルスダウンすることで、動作を安定化しながら低消費電力化を可能にしている。
【0004】
しかしながら、エネルギに余裕のある状態が所定回数連続して発生した場合にはじめてパルスするため、パルスダウンするまでにエネルギを浪費するという問題がある。
また、区間T1において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが生じた場合、区間T2の前半(区間T2A)、後半(区間T2B)のいずれかにおいて基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが生じた場合でもランク維持するように構成している。区間T2Aおいて基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した場合は駆動余裕が十分大きくパルスダウンできる状態であるにも拘わらずパルスダウンしていないため、無駄な電力を消費するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−220461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題点に鑑み成されたもので、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることを課題としている。
また、本発明は、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ると共に、可能な限り回転可能な小さなエネルギの駆動パルスにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の視点によれば、所定の検出区間においてステッピングモータの回転状況を検出する回転検出部と、相互にエネルギが異なる複数の主駆動パルス及び前記各主駆動パルスよりもエネルギの大きい補正駆動パルスの中から前記回転状況に応じた駆動パルスを選択して駆動すると共に、駆動した主駆動パルスのエネルギに余裕があることを前記回転状況が示す場合に、前記主駆動パルスよりもエネルギの小さい主駆動パルスにパルスダウンして駆動する制御部とを備え、前記検出区間Tを、主駆動パルスによる駆動直後の第1区間、前記第1区間よりも後の第2区間、前記第2区間よりも後の第3区間に区分すると共に、前記第2区間を前側区間と後側区間に区分し、主駆動パルスのランクを変更しない駆動余裕小の状態において、前記第1区間は前記ステッピングモータのロータを中心とする空間の第2象限において前記ロータの最初の正方向回転状況を判定する区間、前記第2区間は第2象限及び第3象限において前記ロータの最初の正方向回転状況を判定する区間、前記第3区間は第3象限において前記ロータの最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間であり、前記回転検出部は、検出区間において前記ステッピングモータの回転によって発生する誘起信号を検出し、前記各区間において所定の基準しきい電圧を超える誘起信号を検出したか否かを表す判定値のパターン(第1区間の判定値,第2区間前側区間の判定値,第2区間後側区間の判定値,第3区間の判定値)によって回転状況を表す検出信号を出力し、前記制御部は、前記パターンが所定パターンの場合に主駆動パルスを駆動の都度パルスダウンすることを特徴とするステッピングモータ制御回路が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の視点によれば、前記ステッピングモータ制御回路を備えて成ることを特徴とするムーブメントが提供される。
【0009】
また、本発明の第3の視点によれば、前記ムーブメントを備えて成ることを特徴とするアナログ電子時計が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るステッピングモータ制御回路によれば、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能になる。また、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ると共に、可能な限り回転可能な小さなエネルギの駆動パルスにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能になる。
本発明に係るムーブメントによれば、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能なアナログ電子時計を構築することができる。また、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ると共に、可能な限り回転可能な小さなエネルギの駆動パルスにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能なアナログ電子時計を構築することができる。
また、本発明に係るアナログ電子時計によれば、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能になる。また、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ると共に、可能な限り回転可能な小さなエネルギの駆動パルスにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路、ムーブメント及びアナログ電子時計のブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に使用するステッピングモータの構成図である。
図3】本発明の実施の形態の動作を説明するためのタイミング図である。
図4】本発明の実施の形態の動作を説明する判定チャートである。
図5】本発明の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路、前記ステッピングモータ制御回路を備えたムーブメント、前記ムーブメントを備えたアナログ電子時計を示すブロック図で、アナログ電子腕時計の例を示している。
図1において、アナログ電子時計は、所定周波数の信号を発生する発振回路101、発振回路101で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する分周回路102、アナログ電子時計を構成する各電子回路要素の制御や駆動パルスの変更制御等の制御を行う制御回路103、制御回路103からの制御信号に基づいてモータ回転駆動用の駆動パルスを選択し出力する駆動パルス選択回路104、駆動パルス選択回路104からの駆動パルスによって回転駆動されるステッピングモータ105、ステッピングモータ105によって回転駆動され時刻を表示するための時刻針(図1の例では時針107、分針108、秒針109の3種類)を有するアナログ表示部106を備えている。
【0013】
また、アナログ電子時計は時計ケース112を備えており、時計ケース112の外面側にアナログ表示部106が配設され又、時計ケース112の内部にはムーブメント113が配設されている。
また、アナログ電子時計は、ステッピングモータ105の自由振動によって発生し回転状況を表す誘起信号VRsを所定の検出区間において検出する回転検出回路110、回転検出回路110が所定の基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した時刻と検出した区間とを比較して、前記誘起信号VRsがどの区間において検出されたのかを判別する検出区間判別回路111を有している。尚、後述するように、ステッピングモータ105が回転したか否かを検出する検出区間は4つの区間に区分している。
【0014】
回転検出回路110は、前記特許文献1に記載された回転検出回路と同様の原理を利用して誘起信号VRsを検出する構成のものであり、ステッピングモータ105が回転した場合等のように回転動作が一定速度を超える場合には所定の基準しきい電圧Vcompを越える誘起信号VRsが発生し、モータ105が回転しなかった場合等のように回転動作が一定速度以下の場合には誘起信号VRsが基準しきい電圧Vcompを越えないように基準しきい電圧Vcompが設定されている。
【0015】
発振回路101、分周回路102、制御回路103、駆動パルス選択回路104、ステッピングモータ105、回転検出回路110及び検出区間判別回路111はムーブメント113の構成要素である。
一般に、時計の動力源、時間基準などの装置からなる時計の機械体をムーブメントと称する。電子式のものをモジュールと呼ぶことがある。時計としての完成状態では、ムーブメントには文字板、針が取り付けられ、時計ケースの中に収容される。
【0016】
ここで、発振回路101及び分周回路102は信号発生部を構成し、アナログ表示部106は時刻表示部を構成している。回転検出回路110及び検出区間判別回路111は回転検出部を構成している。制御回路103及び駆動パルス選択回路104は制御部を構成している。また、発振回路101、分周回路102、制御回路103、駆動パルス選択回路104、回転検出回路110及び検出区間判別回路111はステッピングモータ制御回路を構成している。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態で使用するステッピングモータ105の構成図で、アナログ電子時計で一般に用いられている時計用ステッピングモータの例を示している。
図2において、ステッピングモータ105は、ロータ収容用貫通孔203を有するステータ201、ロータ収容用貫通孔203に回転可能に配設されたロータ202、ステータ201と接合された磁心208、磁心208に巻回されたコイル209を備えている。ステッピングモータ105をアナログ電子時計に用いる場合には、ステータ201及び磁心208はネジ(図示せず)によって地板(図示せず)に固定され、互いに接合される。コイル209は、第1端子OUT1、第2端子OUT2を有している。
【0018】
ロータ202は、2極(S極及びN極)に着磁されている。磁性材料によって形成されたステータ201の外端部には、ロータ収容用貫通孔203を挟んで対向する位置に複数(本実施の形態では2個)の切り欠き部(外ノッチ)206、207が設けられている。各外ノッチ206、207とロータ収容用貫通孔203間には可飽和部210、211が設けられている。
【0019】
可飽和部210、211は、ロータ202の磁束によっては磁気飽和せず、コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなるように構成されている。ロータ収容用貫通孔203は、輪郭が円形の貫通孔の対向部分に複数(本実施の形態では2つ)の半月状の切り欠き部(内ノッチ)204、205を一体形成した円孔形状に構成されている。
【0020】
切り欠き部204、205は、ロータ202の停止位置を決めるための位置決め部を構成している。コイル209が励磁されていない状態では、ロータ202は、図2に示すように前記位置決め部に対応する位置、換言すれば、ロータ202の磁極軸Aが、切り欠き部204、205を結ぶ線分と直交するような位置(角度θ0位置)に安定して停止している。ロータ202の回転軸(回転中心)を中心とするXY座標空間を4つの象限(第1象限I〜第4象限IV)に区分している。
【0021】
いま、駆動パルス選択回路104から矩形波の駆動パルスをコイル209の端子OUT1、OUT2間に供給して(例えば、第1端子OUT1側を正極、第2端子OUT2側を負極)、図2の矢印方向に電流iを流すと、ステータ201には破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が飽和して磁気抵抗が大きくなり、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は図2の矢印方向に180度回転し、磁極軸が角度θ1位置で安定的に停止する。尚、ステッピングモータ105を回転駆動することによって通常動作(本実施の形態ではアナログ電子時計であるため運針動作)を行わせるための回転方向(図2では反時計回り方向)を正方向とし、その逆(時計回り方向)を逆方向としている。
【0022】
次に、駆動パルス選択回路104から、逆極性の矩形波の駆動パルスをコイル209の端子OUT1、OUT2に供給して(前記駆動とは逆極性となるように、第1端子OUT1側を負極、第2端子OUT2側を正極)、図2の反矢印方向に電流を流すと、ステータ201には反破線矢印方向に磁束が発生する。これにより、可飽和部210、211が先ず飽和し、その後、ステータ201に生じた磁極とロータ202の磁極との相互作用によって、ロータ202は前記と同一方向(正方向)に180度回転し、磁極軸が角度θ0位置で安定的に停止する。
【0023】
以後、このように、コイル209に対して極性の異なる信号(交番信号)を供給することによって、前記動作が繰り返し行われて、ロータ202を180度ずつ矢印方向に連続的に回転させることができるように構成されている。尚、本実施の形態では、駆動パルスとして、相互にエネルギの異なる複数の主駆動パルスP10〜P1n及び前記各主駆動パルスP1よりもエネルギの大きい補正駆動パルスP2を用いている。
制御回路103は、基本的には、相互に極性の異なる主駆動パルスP1で交互に駆動することによってステッピングモータ105を回転駆動し、主駆動パルスP1で回転できなかった場合には、当該主駆動パルスP1と同極性の補正駆動パルスP2で回転駆動する。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態において、主駆動パルスP1によってステッピングモータ105を駆動した場合のタイミング図で、負荷に対する駆動パルスのエネルギの余裕度を表す回転状態、ロータ202の回転挙動、誘起信号VRsの発生タイミング、回転状況を表す誘起信号VRsのパターン(T1〜T3)及びパルス制御動作を示している。
図3において、P1は主駆動パルスP1の駆動範囲を表すと共にロータ202が主駆動パルスP1によって回転駆動される範囲を表し、又、a〜eは主駆動パルスP1の駆動停止後の自由振動によるロータ202の回転位置を表す領域である。
【0025】
主駆動パルスP1による駆動直後の所定時間を区間T1(第1区間)、区間T1よりも後の所定時間を区間T2(第2区間)、区間T2よりも後の所定時間を区間T3(第3区間)としている。また、区間T2を前側区間T2_Frtと後側区間T2_Endに区分している。
検出区間Tにおいて誘起信号VRsを検出する場合、回転検出回路110は所定のサンプリング周期で誘起信号VRsをサンプリングすることによって誘起信号VRsを検出するように構成されている。検出区間Tは複数のサンプリング周期によって構成されており、前記各サンプリング周期において誘起信号VRsをサンプリングすることによって複数の時点で誘起信号VRsが検出される。
【0026】
図3の例では、区間T2における最後のサンプリング周期を後側区間T2_Endとしている。後側区間T2_Endにおいては、回転検出回路110は誘起信号VRsを1回だけサンプリングして検出する。他の区間T1、T2_Frt、T3は複数のサンプリング周期によって構成されており、複数の時点で誘起信号VRsを検出する。前側区間T2_Frtの時間幅が最大となるように構成し、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが可能な限り前側区間T2_Frtにおいて検出されるようにして、駆動限界までパルスダウンするようにしている。尚、後側区間T2_Endは、区間T2の1/2以下の時間幅を有するように構成することができ、このように構成した場合でも、回転状況を適切に検出することが可能であり、低消費電力化が可能である。
【0027】
このように、主駆動パルスP1による駆動直後から始まる検出区間T全体を複数の区間(本実施の形態では4つの区間(区間T1、区間T2前側区間T2_Frt、区間T2後側区間T2_End、区間T3)に区分している。尚、本実施の形態では、主駆動パルスP1による駆動直後の誘起信号VRsを回転状況の判定に用いない区間(マスク区間)は設けていない。
【0028】
ロータ202を中心として、その回転によってロータ202の主磁極Aが位置するXY座標空間を第1象限I〜第4象限IVに区分した場合、通常負荷を駆動する際の主駆動パルスP1のエネルギの余裕の大きさ(エネルギ余裕度)に応じて、区間T1、区間T2前側区間T2_Frt、区間T2後側区間T2_End、区間T3は次のように表すことができる。ここで、通常負荷とは通常時に駆動される負荷を意味しており、本実施の形態では、時刻針(時針107、分針108、秒針109)を駆動する場合の負荷を通常負荷としている。
【0029】
即ち、エネルギ余裕度が駆動余裕中の状態(主駆動パルスP1を小さいエネルギの主駆動パルスP1に変更(パルスダウン)した場合でもステッピングモータ105を回転させることが可能な最小限のエネルギを有している状態)において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2前側T2_Frtは第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況及び最初の逆方向回転状況を判定する区間、区間T2後側T2_Endは第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0030】
エネルギ余裕度が駆動余裕中の回転状態よりも所定量増加した駆動余裕大の回転状態において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2前側区間T2_Frtは第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況及び最初の逆方向回転状況を判定する区間、区間T2後側区間T2_Endは第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0031】
エネルギ余裕度が駆動余裕大の回転状態よりも所定量増加した駆動余裕極大の回転状態において、区間T1はロータ202を中心とする空間の第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T2前側区間T2_Frtは第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転状況を判定する区間、区間T2後側区間T2_Endは第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0032】
また、エネルギ余裕度が駆動余裕中の回転状態よりも所定量減少した駆動余裕小の回転状態において、区間T1は第2象限IIにおいてロータ202の正方向回転状況を判定する区間、区間T2前側区間T2_Frtは第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向の回転状況を判定する区間、区間T2後側区間T2_Endは第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。制御回路103は、駆動余裕小の状態では主駆動パルスP1のランクを変更しない。
【0033】
また、エネルギ余裕度が駆動余裕小の回転状態よりも所定量減少した駆動余裕極小の回転状態において、区間T1は第2象限IIにおいてロータ202の正方向回転状況を判定する区間、区間T2前側区間T2_Frtは第2象限II及び第3象限IIIにおけるロータ202の最初の正方向の回転状況を判定する区間、区間T2後側区間T2_Endは第3象限IIIにおけるロータ202の最初の正方向回転の回転状況を判定する区間、区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間である。
【0034】
Vcompはステッピングモータ105で発生する誘起信号VRsの電圧レベルを判定する基準しきい電圧であり、ステッピングモータ105が回転した場合等のようにロータ202が所定速度を超える速い動作を行った場合には誘起信号VRsが基準しきい電圧Vcompを超え、回転しない場合等のようにロータ202が所定速度を超える速い動作を行わない場合には誘起信号VRsが基準しきい電圧Vcompを超えないように基準しきい電圧Vcompは設定されている。
【0035】
例えば、図3において、本実施の形態に係るステッピングモータ制御回路では、駆動余裕中の状態において、領域bで生じた誘起信号VRsは区間T1及び区間T2前側区間T2_Frtにおいて検出され、領域cで生じた誘起信号VRsは区間T2前側区間T2_Frt、区間T2後側区間T2_End及び区間T3において検出され、領域c後に生じた誘起信号VRsは区間T3において検出される。
【0036】
回転検出回路110が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した場合を判定値「1」、回転検出回路110が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出できなかった場合を判定値「0」とすると、図3の駆動余裕中の例では、回転状況を表すパターン(第1区間T1の判定値,第2区間T2前側区間T#Frtの判定値,第2区間後側区間T2_Endの判定値,第3区間T3の判定値)として(1,1,1/0,1/0)が得られる。制御回路103は負荷に対する駆動エネルギに余裕がある駆動余裕中の回転と判定して、この状態が所定の第2回数(本実施の形態では80回)連続した場合には主駆動パルスP1の駆動エネルギをパルスダウンするようにパルス制御を行う。
【0037】
また、駆動余裕極大の状態においては、領域bで生じた誘起信号VRsは区間T1において検出され、領域cで生じた誘起信号VRsは区間T2前側区間T2_Frt及び区間T2後側区間T2_Endにおいて検出され、領域cの後の領域で生じた誘起信号VRsは区間T3において検出される。図3の例では、パターン(0,1,1/0,1/0)が得られており、制御回路103は駆動余裕極大の回転と判定して、主駆動パルスP1の駆動エネルギをパルスダウンするようにパルス制御を行う。これにより、主駆動パルスP1によって駆動する毎に駆動余裕極大の回転と判定した場合には、主駆動パルスP1で駆動する毎に当該主駆動パルスP1の駆動エネルギをパルスダウンするようにパルス制御を行うことになる。
【0038】
また、駆動余裕小の状態においては、領域aで生じた誘起信号VRsは区間T1及び区間T2前側区間T2_Frtにおいて検出され、領域bで生じた誘起信号VRsは区間T2前側区間T2_Frt及び区間T2後側区間T2_Endにおいて検出され、領域c以後に生じた誘起信号VRsは区間T3において検出される。図3の例では、パターン(1,0,1,1/0)が得られており、制御回路103は駆動余裕小の回転と判定して、主駆動パルスP1の変更は行わずに維持するようにパルス制御を行う。
【0039】
また、駆動余裕極小の状態においては、領域aで生じた誘起信号VRsは区間T1及び区間T2前側区間T2_Frtにおいて検出され、領域bで生じた誘起信号VRsは区間T2前側区間T2_Frt及び区間T2後側区間T2_Endにおいて検出され、領域c以後に生じた誘起信号VRsは区間T3において検出される。図3の例では、パターン(1/0,0,0,1)が得られており、制御回路103は駆動余裕極小の回転と判定して、主駆動パルスP1を1ランクエネルギの大きいに主駆動パルスに変更(パルスアップ)するようにパルス制御を行う。
【0040】
図4は本発明の実施の形態の動作をまとめた判定チャートである。図4において、前述したとおり、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出した場合を判定値「1」、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出できなかった場合を判定値「0」と表している。また、「1/0」は、判定値が「1」、「0」のどちらでもよいことを表している。
【0041】
図4に示すように、回転検出回路110が基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsの有無を検出し、検出区間判別回路111が前記誘起信号VRsの検出時期を判定したパターンに基づいて、制御回路103内部に記憶した図4の判定チャートを参照して、制御回路103及び駆動パルス選択回路104は主駆動パルスP1のパルスアップやパルスダウンあるいは補正駆動パルスP2による駆動等の後述するパルス制御を行ってステッピングモータ105を回転制御する。
【0042】
例えば、制御回路103は、パターン(1/0,0,0,0)の場合、ステッピングモータ105が回転していない(非回転)と判定して、補正駆動パルスP2によってステッピングモータ105を駆動するように駆動パルス選択回路104を制御した後、次回駆動時に1ランク上の主駆動パルスP1にパルスアップして駆動するように駆動パルス選択回路104を制御する。
また制御回路103は、パターン(0,0,1,1/0)の場合、駆動余裕大の回転と判定して、この状態が所定の第1回数(本実施の形態では20回)連続した場合には主駆動パルスP1の駆動エネルギをパルスダウンするようにパルス制御を行う。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態の動作を示すフローチャートであり、主として制御回路103の処理を示すフローチャートである。
以下、図1図5を参照して、本発明の実施の形態の動作を詳細に説明する。
【0044】
図1において、発振回路101は所定周波数の基準クロック信号を発生し、分周回路102は発振回路101で発生した前記信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生し、制御回路103に出力する。
制御回路103は、前記時間信号を計数して計時動作を行い、先ず主駆動パルスP1nのエネルギランクn及び回数Nを0にして(図5のステップS501)、最小パルス幅の主駆動パルスP10でステッピングモータ105を回転駆動するように制御信号を出力する(ステップS502、S503)。
【0045】
駆動パルス選択回路104は、制御回路103からの制御信号に対応する主駆動パルスP10を選択してステッピングモータ105を回転駆動する。ステッピングモータ105は主駆動パルスP10によって回転駆動されて、時刻針107〜109を回転駆動する。これにより、ステッピングモータ105が正常に回転した場合には、表示部106では、時刻針107〜109によって現在時刻が表示される。
【0046】
制御回路103は、回転検出回路110が所定の基準しきい電圧Vcompを超えるステッピングモータ105の誘起信号VRsを検出したか否かの判定、及び、検出区間判別回路111が前記誘起信号VRsの検出時刻tは区間T1内と判定したか否かの判定(即ち、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsが区間T1内で検出したか否かの判定)を行う(ステップS504)。
【0047】
制御回路103は、処理ステップS504において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出していないと判定した場合には(パターンが(0,x,x,x)の場合である。但し判定値「x」は判定値が「1」か「0」かを問わないことを意味する。)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2前側区間T2_Frt内で検出したか否かを判定する(ステップS505)。
【0048】
制御回路103は、処理ステップS505において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2前側区間T2_Frt内で検出していないと判定した場合(パターンが(0,0,x,x)の場合である。)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2後側区間T2_End内で検出したか否かを判定する(ステップS506)。
制御回路103は、処理ステップS506において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2後側区間T2_End内で検出していないと判定した場合(パターンが(0,0,0,x)の場合である。)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出したか否かを判定する(ステップS507)。
【0049】
制御回路103は、処理ステップS507において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出していないと判定した場合(パターンが(0,0,0,0)の場合であり、非回転の場合である。)、処理ステップS503の主駆動パルスP1と同極性の補正駆動パルスP2によってステッピングモータ105を強制的に回転駆動した後(ステップS508)、当該主駆動パルスP1のランクnが最大ランクmでない場合には主駆動パルスP1をパルスアップして主駆動パルスP1(n+1)に変更した後に処理ステップS502に戻り、次回の駆動はこの主駆動パルスP1(n+1)によって駆動する(ステップS509、S510)。
【0050】
制御回路103は、処理ステップS509において、当該主駆動パルスP1のランクnが最大ランクmの場合には、主駆動パルスP1を所定量エネルギの小さい主駆動パルスP1(n−a)に変更して処理ステップS502に戻り、次回の駆動はこの主駆動パルスP1(n−a)によって駆動する(ステップS511)。この場合、主駆動パルスP1中の最大エネルギランクmの駆動パルスP1maxでも回転不能な状態であるため、次回駆動時に最大エネルギランクmの主駆動パルスP1maxによって駆動する場合のエネルギの無駄を少なくすることができる。尚、このとき、大きな省電力効果を得るために、最小エネルギの主駆動パルスP10に変更するようにしてもよい。
【0051】
制御回路103は、処理ステップS507において、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出したと判定した場合(パターンが(0,0,0,1)の場合である。)、当該主駆動パルスP1のランクnが最大ランクmでない場合には、主駆動パルスP1をパルスアップして主駆動パルスP1(n+1)に変更して処理ステップS502に戻り、次回の駆動はこの主駆動パルスP1によって駆動する(ステップS609、S610)。
【0052】
制御回路103は、処理ステップS609において、当該主駆動パルスP1のランクnが最大ランクmの場合にはランク変更できないため、主駆動パルスP1は変更せずに処理ステップS502に戻り、次回の駆動はこの主駆動パルスP1によって駆動する(ステップS608)。
制御回路103は、処理ステップS506において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2後側区間T2_End内で検出したと判定した場合(パターンが(0,0,1,x)の場合である。)、主駆動パルスP1のランクnが最低ランク0か否かを判定する(ステップS515)。
【0053】
制御回路103は、処理ステップS515において主駆動パルスP1のランクnが最低ランク0ではないと判定した場合、連続発生回数Nに1加算し(ステップS516)、回数Nが所定の第1回数(本実施の形態では20回)になったか否かを判定し(ステップS517)、前記所定回数になっていない場合には主駆動パルスP1のランクは変更せずに処理ステップS502に戻り(ステップS514)、前記所定回数になった場合には主駆動パルスP1のランクをパルスダウンすると共に連続発生回数Nを0にリセットして処理ステップS502に戻る(ステップS518)。
【0054】
制御回路103は、処理ステップS515において主駆動パルスP1のランクnが最低ランク0と判定した場合、主駆動パルスP1のランクは変更せずに処理ステップS502に戻る(ステップS514)。
制御回路103は、処理ステップS505において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2前側区間T2_Frt内で検出したと判定した場合(パターンが(0,1,x,x)の場合である。)、主駆動パルスP1のランクnが最低ランク0か否かを判定する(ステップS512)。
【0055】
制御回路103は、処理ステップS515において、主駆動パルスP1のランクnが最低ランク0ではないと判定した場合は主駆動パルスP1のランクをパルスダウンして処理ステップS502に戻り(ステップS513)、主駆動パルスP1のランクnが最低ランク0と判定した場合には主駆動パルスP1のランクを変更せずに処理ステップS502に戻る(ステップS514)。
【0056】
一方、制御回路103は、処理ステップS504において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T1内で検出したと判定した場合には(パターンが(1,x,x,x)の場合である。)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2前側区間T2_Frt内で検出したか否かを判定する(ステップS601)。
制御回路103は、処理ステップS601において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2前側区間T2_Frt内で検出していないと判定した場合(パターンが(1,0,x,x)の場合である。)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2後側区間T2_End内で検出したか否かを判定する(ステップS602)。
【0057】
制御回路103は、処理ステップS602において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2後側区間T2_End内で検出していないと判定した場合(パターンが(1,0,0,x)の場合である。)、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出したか否かを判定する(ステップS603)。
制御回路103は、処理ステップS603において、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出していないと判定した場合(パターンが(1,0,0,0)の場合であり、非回転の場合である。)には処理ステップS508に移行し、基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T3内で検出したと判定した場合(パターンが(1,0,0,1)の場合である。)には処理ステップS609に移行する。
【0058】
制御回路103は、処理ステップS602において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2後側区間T2_End内で検出したと判定した場合(パターンが(1,0,1,x)の場合である。)、主駆動パルスP1のランクは変更せずに維持して処理ステップS502に戻る(ステップS608)。
制御回路103は、処理ステップS601において基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを区間T2前側区間T2_Frt内で検出したと判定した場合(パターンが(1,1,x,x)の場合である。)、主駆動パルスP1のランクnが最低ランク0か否かを判定する(ステップS604)。
【0059】
制御回路103は、処理ステップS604において主駆動パルスP1のランクnが最低ランク0ではないと判定した場合、連続発生回数Nに1加算し(ステップS605)、回数Nが所定の第2回数(本実施の形態では80回)になったか否かを判定し(ステップS606)、前記所定回数になっていない場合には主駆動パルスP1のランクは変更せずに処理ステップS502に戻り(ステップS608)、前記所定回数になった場合には主駆動パルスP1のランクをパルスダウンすると共に連続発生回数Nを0にリセットして処理ステップS502に戻る(ステップS607)。
制御回路103は、処理ステップS604において主駆動パルスP1のランクnが最低ランク0と判定した場合、処理ステップS608に移行する。
【0060】
以上述べたように、本発明の実施の形態に係るステッピングモータ制御回路は、所定の検出区間Tにおいてステッピングモータ105の回転状況を検出する回転検出部と、相互にエネルギが異なる複数の主駆動パルスP1及び前記各主駆動パルスP1よりもエネルギの大きい補正駆動パルスP2の中から前記回転状況に応じた駆動パルスを選択して駆動すると共に、駆動した主駆動パルスP1のエネルギに余裕があることを前記回転状況が示す場合に、前記主駆動パルスP1よりもエネルギの小さい主駆動パルスP1にパルスダウンして駆動する制御部とを備え、前記検出区間Tを、主駆動パルスP1による駆動直後の第1区間T1、第1区間T1よりも後の第2区間T2、第2区間T2よりも後の第3区間T3に区分すると共に、第2区間T2を前側区間T#Frtと後側区間T#Endに区分し、主駆動パルスP1のランクを変更しない駆動余裕小の状態において、第1区間T1はステッピングモータ105のロータ202を中心とする空間の第2象限IIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第2区間T2は第2象限II及び第3象限IIIにおいてロータ202の最初の正方向回転状況を判定する区間、第3区間T3は第3象限IIIにおいてロータ202の最初の逆方向回転以後の回転状況を判定する区間であり、前記回転検出部は、検出区間Tにおいてステッピングモータ105の回転によって発生する誘起信号VRsを検出し、各区間T1〜T3において所定の基準しきい電圧Vcompを超える誘起信号VRsを検出したか否かを表す判定値のパターン(第1区間T1の判定値,第2区間前側区間T#Frtの判定値,第2区間後側区間T#Endの判定値,第3区間T3の判定値)によって回転状況を表す検出信号を出力し、前記制御部は、前記パターンが所定パターンの場合に主駆動パルスP1を駆動の都度パルスダウンすることを特徴としている。
【0061】
ここで、前記所定パターンは(0,1,1/0,1/0)であるように構成することができる。
また、前記制御部は、パターン(0,0,1,1/0)が所定の第1回数連続して得られた場合にパルスダウンするように構成することができる。
また、前記制御部は、前記パターンが前記第1区間において前記基準しきい電圧を超える誘起信号が生じていることを示す場合、前記第2区間前側区間及び前記第2区間後側区間において前記基準しきい電圧を超える誘起信号のパターンに基づいて前記主駆動パルスをパルスダウンするか否かを決定するように構成することができる。
【0062】
また、検出区間Tは、前記回転検出部が誘起信号VRsを検出する複数のサンプリング周期によって構成されて成り、第2区間後側区間T2_Endは第2区間T2における最後のサンプリング周期であるように構成することができる。
また、前記制御部は、パターン(1,0,1,1/0)の場合は主駆動パルスのランクを維持し、パターン(1,1,1/0,1/0)が所定の第2回数連続して得られた場合にはパルスダウンするように構成することができる。
また、前記第2回数は前記第1回数よりも多いように構成することができる。
【0063】
したがって、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能になる。また、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ると共に、可能な限り回転可能な小さなエネルギの駆動パルスにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能になる。
【0064】
また、駆動余裕の大きさに応じてパルスダウンするまでの期間を複数種類用意しておき、駆動余裕の大きな状態では駆動余裕の小さな状態よりも、より短期間でパルスダウンを行うことによって、更なる低消費電力化を実現することが可能になる。
また、主駆動パルスP1を駆動限界までパルスダウンするようにパルス制御しているので、低消費電力を実現しつつ大きな負荷には駆動パルスのランクを大きくするようにパルス制御することにより、負荷変動に対して最少の電力変化で対応することが可能になる。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係るムーブメント113によれば、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能なアナログ電子時計を構築することができる。また、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ると共に、可能な限り回転可能な小さなエネルギの駆動パルスにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能なアナログ電子時計を構築することができる。
【0066】
また、本発明の実施の形態に係るアナログ電子時計によれば、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能になる。また、駆動余裕の大きい状態では極力速やかにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ると共に、可能な限り回転可能な小さなエネルギの駆動パルスにパルスダウンすることによって、より低消費電力化を図ることが可能になり、電源として電池を使用する場合に長期間の使用が可能になる。
【0067】
尚、前記実施の形態では、各駆動パルスのエネルギを変えるために、パルス幅が異なるようにしたが、櫛歯状のパルスの個数を変える、あるいはパルス電圧を変える等によっても、駆動エネルギを変えることが可能である。
また、ステッピングモータの応用例として電子時計の例で説明したが、モータを使用する電子機器に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係るステッピングモータ制御回路は、ステッピングモータを使用する各種電子機器に適用可能である。
また、本発明に係るムーブメント及び電子時計は、カレンダ機能付きアナログ電子腕時計、クロノグラフ時計をはじめ、各種のアナログ電子時計に適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
101・・・発振回路
102・・・分周回路
103・・・制御回路
104・・・駆動パルス選択回路
105・・・ステッピングモータ
106・・・アナログ表示部
107・・・時針
108・・・分針
109・・・秒針
110・・・回転検出回路
111・・・検出区間判別回路
112・・・時計ケース
113・・・ムーブメント
201・・・ステータ
202・・・ロータ
203・・・ロータ収容用貫通孔
204、205・・・切り欠き部(内ノッチ)
206、207・・・切り欠き部(外ノッチ)
208・・・磁心
209・・・コイル
210、211・・・可飽和部
OUT1・・・第1端子
OUT2・・・第2端子
図1
図2
図3
図4
図5