特許第6134492号(P6134492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134492
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】点灯装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 41/24 20060101AFI20170515BHJP
   H05B 37/02 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   H05B41/24
   H05B37/02 J
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-230663(P2012-230663)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-82156(P2014-82156A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126274
【氏名又は名称】株式会社アイ・ライティング・システム
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】大里 友和
(72)【発明者】
【氏名】金子 健介
【審査官】 杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−055296(JP,A)
【文献】 特開2007−209083(JP,A)
【文献】 特開2004−282958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 41/24
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路の出力電圧を入力して所定電圧まで昇圧し且つ入力力率を高力率にする力率改善回路と、前記力率改善回路の出力を定電力化して点灯負荷に供給する降圧チョッパ回路と、を備えた点灯装置であって、
さらに、前記力率改善回路の入力電圧の実効値に応じて該力率改善回路のスイッチング素子のスイッチング周波数を設定する設定手段を備え、
前記交流電圧は、複数の定格電圧を有しており、
当該点灯装置は、定格点灯電圧が異なる2以上の点灯負荷に対応可能であり該2以上の点灯負荷のうちの1と接続可能であって、
前記力率改善回路で昇圧される昇圧電圧の設定値は、前記2以上の点灯負荷のうち定格点灯電圧が1番高い点灯負荷に対応した昇圧電圧で設定され、
前記設定手段は、前記入力電圧の実効値が低い場合の昇圧スイッチング周波数を、前記入力電圧の実効値が高い場合の昇圧スイッチング周波数よりも低減させることを特徴とする点灯装置。
【請求項2】
請求項1記載の点灯装置において、点灯負荷が無負荷状態である場合、
前記力率改善回路は、無負荷状態の昇圧電圧を出力し、
前記設定手段は、前記入力電圧の実効値の高低に関わらず、一定の無負荷状態の昇圧電圧を設定することを特徴とする点灯装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の点灯装置において、前記設定手段は、前記入力電圧の実効値に応じて、前記昇圧スイッチング周波数を段階的に切り替えて低減させることを特徴とする点灯装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の点灯装置において、前記力率改善回路のスイッチング制御は、電流連続モードであることを特徴とする点灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はHIDランプ等の放電灯用、及び、LED等の半導体発光素子用の点灯装置に関し、特にその電力損の低減技術の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放電灯点灯装置は、交流電源を一旦直流化し、電力調整し、さらに所定の周期で交番する電流に変換して、これを放電灯に供給する。その主な構成は、整流回路、力率改善回路、PWM降圧回路、矩形波変換回路およびスタータ回路である。
【0003】
放電灯点灯装置に印加される交流電圧は全波整流回路によって脈動した直流電圧となるが、全波整流回路のみでは入力される交流電流の波形がパルス状になってしまい、力率が悪くなる。そこで、全波整流回路の後段にアクティブ平滑フィルタとも呼ばれる力率改善回路を接続していた。力率改善回路のスイッチング駆動に伴ってインダクタ電流が増減することで、力率改善回路に流れ込む電流波形が歪みのない正弦波に整形され、その結果、入力電力の力率を改善するというものである。このような制御方式として、高ワットの放電灯の場合には、一般的に電流連続モード(平均電流方式)が採用されている。
【0004】
このような力率改善回路を含んだ回路構成の点灯装置に対して、消費電力の削減の要求は益々高まっており、特に、力率改善回路のスイッチング動作に伴う電力損を一層低減させることによって、回路効率を更に改善させることが望まれていた。
放電灯点灯装置の回路効率を改善させる従来技術として、力率改善回路の入力電圧を監視して、入力電圧値に応じて力率改善回路の昇圧電圧を切り替える方法が知られている(特許文献1参照)。放電灯は、その種類毎にランプ電圧が異なるため、例えばランプ電圧が「80〜130V」のように低い放電灯と、「200〜250V」のように高い放電灯に分けて説明する。特許文献1には、100Vと 200Vの2種類の交流電源に対して、同じ放電灯点灯装置を兼用させる場合の効率改善のために、昇圧電圧の低減方式を用いている。具体的には、特許文献1に記載されているように、AC 100V入力時の力率改善回路の昇圧電圧を、AC 200V入力時の昇圧電圧よりも低減させるという内容である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−55296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の昇圧電圧低減方式は、ランプ電圧が 100Vのように低い場合には適用できるが、ランプ電圧が 250Vのように高い場合には適用できないという課題があった。ランプ点灯を安定的に維持させるためには一定の昇圧電圧が必要であるため、ランプ電圧が高い場合は、昇圧電圧を低減できないからである。その結果、力率改善回路を構成する電子回路部品の放熱フィンを大きくする必要が生じて、点灯装置の収納ケースの大型化や、部品コストの増加という問題が生じていた。
【0007】
また、照明負荷がLEDであって低出力のものである場合、電流不連続モード(ピーク電流方式とも呼ばれる)の制御方式が、回路構成が簡単で安価であるというメリットから、LED用の点灯装置に多く採用されていた。一方、高出力対応のLEDの場合、電流不連続モードを採用するとピーク電流が大きくなる、また、昇圧用のインダクタが大型になるといった課題があって適用できない。そのため、高出力対応のLEDの場合は、上記の高電力仕様の放電灯と同様に、電流連続モード(平均電流方式とも呼ばれる)の制御方式が採用されている。この電流連続モードを採用すると、ピーク電流が小さくて済む、また、昇圧用のインダクタを小型化できるといったメリットがある。図3は、一般的な電流不連続モードおよび電流連続モードの制御方法を比較説明するための参考図である。
【0008】
図3(A)は電流不連続モードにおける入力電流波形を示す。この入力電流波形は、スイッチングのオン時に増加し、オフ時に減少する波形であり、オン幅とオフ幅を同一とし、スイッチング周波数を可変させていることからスイッチングに応じて大きなピーク電流となっている。一方、図3(B)は電流連続モードにおける入力電流波形を示す。この入力電流波形は、図3(A)と同様にスイッチングのオン時に増加し、オフ時に減少する波形であるが、スイッチング周波数を固定し、オン幅が調整されることによって電流が連続し、小さなピーク電流になる。各モードで、実線のサインカーブで示す波形が、平均電流を示す。
なお、これらの図は、各モードを分かりやすく示したもので、実際の交流電源の周波数とスイッチング周波数の関係をそのまま表わすものではない。商用交流電源の周波数は50又は60Hzであるのに対して、スイッチング周波数は数10kHz〜数100kHzであるから、実際には、交流電源の1周期にスイッチングは100〜1000回程度実行される。
【0009】
このようなLED用の点灯装置は、放電灯点灯装置と対比すると、交流電源を直流化して電力調整するところまでの構成は共通し、直流電流のままLEDに供給する点が異なっているに過ぎない。そのため、LED用の点灯装置においても、放電灯点灯装置と同様に、昇圧電圧低減方式を適用することができる。つまり、100V入力の場合、200V入力時に比べて電力損が増えてしまうため、昇圧電圧を切り替えて電力損を低減させている。しかし、やはり、放電灯と同様に、LEDの順電圧(VF)が低い場合は、昇圧電圧の低減が可能であるが、順電圧が高い場合は、昇圧電圧の低減を適用することができず、回路効率が悪くなってしまって電力損が増大するという問題が生じていた。
【0010】
本発明は前記課題に鑑みなされたものであり、放電灯及びLED用の点灯装置であって、異なる出力の交流電源に兼用できるものについて、放電灯やLEDの点灯電圧に関わらず、高い回路効率を有する、つまり電力損の小さい点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、スイッチング時の電力損をできる限り抑制するために、従来の昇圧電圧低減方式ではなくて、入力電圧に応じて昇圧スイッチング周波数を切り替えることに着目した。
すなわち、スイッチングによる電力損を低減させることができるシンプルな方法は、スイッチングの回数自体を少なくすることである。通常は、スイッチング回数を少なくすると、オンデューティを確保するためオン時間を実質的に延長させるから、リップル電流が大きくなってしまう。このリップル電流は、力率改善回路でのスイッチングに起因してインダクタに流れる電流が増減する結果生じる。しかし、入力電圧が小さい場合は、リップル電流の増加率も小さいため、オン時間が延長されたとしても、入力電圧が高い場合と比べたら、それほどリップル電流が大きくならない。この考え方に基づき、入力電圧が小さい場合は、スイッチングの回数自体を減らし、つまり、スイッチング周波数を低減して電力損を低減させることが可能になった。
【0012】
なお、力率改善回路のスイッチング制御に電流連続モードを採用していれば、スイッチング周波数を変化させても電流連続モード自体は維持され得るため、スイッチング周波数を切り替えても支障はない。
【0013】
すなわち、前記目的を達成するために本発明に係る点灯装置は、
交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路の出力電圧を入力して所定電圧まで昇圧し且つ入力力率を高力率にする力率改善回路と、前記力率改善回路の出力を定電力化して点灯負荷に供給する降圧チョッパ回路と、を備えた点灯装置であって、
さらに、前記力率改善回路の入力電圧の実効値に応じて該力率改善回路のスイッチング素子のスイッチング周波数を設定する設定手段を備え、
前記設定手段は、前記入力電圧の実効値が低い場合の昇圧スイッチング周波数を、前記入力電圧の実効値が高い場合の昇圧スイッチング周波数よりも低減させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明において点灯負荷が無負荷状態である場合、前記力率改善回路は、無負荷状態の昇圧電圧を出力し、また、前記設定手段は、前記入力電圧の実効値の高低に関わらず、一定の無負荷状態の昇圧電圧を設定することが好適である。
【0015】
また、本発明において前記設定手段は、前記入力電圧の実効値に応じて、前記昇圧スイッチング周波数を段階的に切り替えて低減させることが好適である。
さらに、本発明において前記力率改善回路のスイッチング制御は、電流連続モードであることが好適である。
【0016】
また、本発明において前記設定手段は、さらに、前記力率改善回路の入力電圧の実効値に応じて該力率改善回路の昇圧電圧を設定し、前記入力電圧の実効値が低い場合の昇圧電圧を、前記入力電圧の実効値が高い場合の昇圧電圧よりも低減させることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
このような点灯装置の構成によれば、異なる出力の交流電源に兼用する際に、力率改善回路への入力電圧の実効値が低い(例えば100V入力)場合の昇圧スイッチング周波数を、入力電圧の実効値が高い(例えば200V入力)場合の昇圧スイッチング周波数よりも低減させるように構成したので、入力電圧の実効値が低い場合の電力損を、大幅に低減させることが可能になった。その結果、力率改善回路を構成する電子回路部品に対する放熱フィンを小型化することができ、これに伴って収納ケースの小型化も図ることができる。さらに、スイッチング回路の発熱を抑えることができるので、回路の構成部品の信頼性が向上し、制御システムの長寿命化を図ることができる。また、部品・材料のコスト低減も実現できる。
【0018】
また、従来の昇圧電圧低減方式では、放電灯のランプ電圧やLEDの点灯電圧の大きさ如何で、電力損を低減できない場合があったが、本発明は、昇圧スイッチング周波数を低減する方式であるので、放電灯のランプ電圧やLEDの点灯電圧の大きさに関わらず、高い回路効率を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の放電灯点灯装置の回路構成の概略を示す図である。
図2】本発明のLED用の点灯装置の回路構成の概略を示す図である。
図3】一般的な電流不連続モードおよび電流連続モードの制御方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明に係る放電灯点灯装置およびLED用の点灯装置のそれぞれの実施の形態について説明する。
第1実施形態
図1に示すように、放電灯点灯装置は、入力フィルタ回路12、整流回路14、力率改善回路16、PWM降圧回路18、矩形波生成回路20、出力フィルタ回路22およびスタータ回路24を備え、100V、200V及び 242Vの交流電源ACのいずれからも電源供給可能に構成された点灯装置である。
【0021】
まず、入力フィルタ回路12は、雑音端子電圧のようなノイズを除去するためのノイズフィルタである。
整流回路14は、交流電圧をダイオードブリッジDBによって脈動を伴う直流電圧に整流する。
力率改善回路16は、整流回路14の出力電圧を入力して所定の昇圧電圧VOまで昇圧し、かつ、入力力率を高力率にするためのもので、昇圧コンバータ回路とも呼ばれる。この力率改善回路16は、昇圧インダクタLおよび昇圧スイッチング素子(MOSFET)Qを有する。
PWM降圧回路18は、力率改善回路16の出力を定電力化して矩形波生成回路20に出力するもので、本発明の降圧チョッパ回路に相当する。
矩形波変換回路20は、スイッチング素子Q3〜Q6をフルブリッジ接続した構成であり、放電灯に印加するための交番する矩形波を生成する。
出力フィルタ回路22は、矩形波変換回路20から放電灯に伝搬するノイズを除去するためのノイズフィルタである。
スタータ回路24は、始動用の高圧パルスを発生する回路である。
【0022】
力率改善回路16、PWM降圧回路18および矩形波生成回路20に含まれている各スイッチング素子を駆動するための駆動回路32,34,36が、それぞれのスイッチング回路に設けられている。駆動回路の具体的な構成としては、トランジスタによる増幅回路、フォトカプラ又はパルストランス等を適用できる。
【0023】
力率改善回路16のスイッチング制御には、電流連続モード(平均電流方式とも呼ばれる)の制御方式を採用する。電流連続モードであれば、スイッチング周波数fSWを所定の設定値に固定して制御することが可能であるから、入力電圧V1に応じてスイッチング周波数fSWの設定値自体を切り替えたとしても、電流連続モードの実行には支障がない。
【0024】
また、放電灯点灯装置の制御手段として、制御回路42、入力電圧検出手段44および出力電圧検出手段46が設けられている。
入力電圧検出手段44は、力率改善回路16の入力電圧V1を検出する。
出力電圧検出手段46は、PWM降圧回路18の出力電圧V2を検出する。
【0025】
制御回路42は、マイコンまたは専用IC等で構成され、以下に述べる無負荷状態の昇圧電圧VOの設定値と、AC 100V、200V及び242V入力時のそれぞれの昇圧電圧VO及び昇圧スイッチング周波数fSWの各設定値を設定するもので、本発明の設定手段に相当する。制御回路42の具体的な構成としては、マイコンのみ、マイコンと専用ICの組合せ、専用ICのみというように様々な構成を適用できる。従って、専用ICを用いないで、マイコンのみの構成であっても、本発明を適用することができる。
【0026】
<無負荷状態での昇圧電圧の設定値>
制御回路42は、力率改善回路16の入力電圧V1の高低に関わらず、一定の無負荷状態の昇圧電圧VOを設定する。その結果、力率改善回路16は、点灯負荷である放電灯が無負荷状態である場合は、一定の無負荷状態の昇圧電圧VOを出力することになる。
【0027】
<負荷状態での昇圧電圧、昇圧スイッチング周波数の設定値>
また、制御回路42は、放電灯が負荷状態の場合は、力率改善回路16の入力電圧V1を監視して、昇圧電圧VOおよびスイッチング素子Q1のスイッチング周波数fSWを設定する。
具体的には、制御回路42は、力率改善回路16の入力電圧が 100Vの場合の昇圧スイッチング周波数fSWの設定値を、入力電圧 200Vの場合の設定値よりも低く設定し、その設定信号を駆動回路32に出力する。つまり、入力電圧検出手段44が 100Vの入力電圧を検出した場合は、スイッチング周波数fSWの設定信号が切り替わって、駆動回路32がスイッチング素子Q1を低い周波数でオンオフ駆動することになる。
また、制御回路42は、入力電圧が 100Vの場合の昇圧電圧VOの設定値を、入力電圧 200Vの場合の設定値よりも低く設定し、その設定信号を駆動回路32に出力する。つまり、入力電圧検出手段44が
100Vの入力電圧を検出した場合は、昇圧電圧VOの設定信号が切り替わって、駆動回路32がスイッチング素子Q1のオン時間等を変更して、力率改善回路16の出力電圧を200Vの場合よりも低くする。
【0028】
なお、本実施形態では、入力電圧V1に応じて、昇圧電圧VOとスイッチング周波数fSWの両方の設定値を低減させる場合について説明したが、入力電圧V1に応じて少なくともスイッチング周波数fSWの設定値を低減させれば、スイッチング時の電力損を低減させる効果がある。つまり、入力電圧V1に関わらず昇圧電圧VOを一定とする場合であっても、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数fSWを変化させることで、回路効率を改善することができる。
【0029】
本実施形態の作用効果について数式を用いて説明する。一般的な力率改善回路の昇圧スイッチング周波数fSWと昇圧用インダクタンスLBSTとの関係は、次式で表わされる。
【0030】
【数1】
【0031】
ここで、式(1)中の
IN(PEAK)MINは、最小入力ピーク電圧(例えば120V)、
Dは、オンデューティ(例えば0.69 )、
ΔILは、リップル電流(例えば 1.6A)とする。
なお、リップル電流ΔILは、最大入力ピーク電流IIN(PEAK)MAXの30%程度であるとする。また、オンデューティDは、通常、D=(VO−VIN(PEAK)MIN)/VOで表わされる。VOは、力率改善回路16の昇圧電圧を表わす。
【0032】
ここで、入力電圧V1に関わらず昇圧電圧VOを一定(例えば400V)とする。入力電圧が100Vの場合について説明すると、200Vの場合よりも最小入力ピーク電圧VIN(PEAK)MINが小さいため、オンデューティDを大きくすることで必要な昇圧電圧VOが維持される。一方、リップル電流ΔILは、最大入力ピーク電流IIN(PEAK)MAXの30%程度であるから、入力電圧が100Vの場合は、200Vの場合よりもリップル電流ΔILが小さくなる。つまり、入力電圧が100Vの場合は、リップル電流の増加率も小さいため、オン時間を延長しても入力電圧が200Vの場合と比較すれば、リップル電流が過大にならないで済む。従って、入力電圧が100Vの場合は、スイッチングの回数自体を減らす(スイッチング周波数fSWを低減する)ことで、スイッチングによる電力損を低減させることが可能になる。
なお、本実施形態の放電灯点灯装置は、100V、200V及び 242Vの交流電源ACのいずれからも電源供給可能に構成された電源兼用型の点灯装置であるから、入力電圧検出回路44からの検出値(実効値)に応じて、すなわち、交流電源(100V、200V及び 242V)毎に、制御回路42が昇圧スイッチング周波数fSWを段階的に切り替えるようにしてもよい。
【0033】
<本実施形態の効果>
(1)入力電圧が 100Vの場合は、200Vの場合よりも昇圧スイッチング周波数fSWを低減させることにより、力率改善回路16のスイッチングに起因する電力損が低減されるため、回路効率が改善される。その結果、放電灯点灯装置の小型化と材料・部品のコスト低減を実現することができる。
(2)入力電圧が 100Vの場合に昇圧スイッチング周波数fSWを低減させるから、雑音端子電圧のような電源ケーブルを流れるノイズの抑制にも効果がある。すなわち、雑音端子・ノイズ対策効果が生じる。
(3)ランプ電圧が 100Vの場合に、昇圧電圧VOと昇圧スイッチング周波数fSWの両方を低く設定することにより、従来のように昇圧電圧VOのみを低くする場合と比較して大きな回路効率の改善を実現することができる。
【0034】
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係るLED用の点灯装置について図2に基づいて説明する。図2において、入力フィルタ回路12からPWM降圧回路18までの各回路の構成は、基本的に前述の第1実施形態に共通する。LED用の点灯装置では、PWM降圧回路18の出力が出力フィルタ22を介してLEDランプに印加される構成になっていることが、第1実施形態の点灯装置と相違する。従って、LED用の点灯装置においても、力率改善回路16の電力損の低減を図ることが可能で、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【実施例】
【0035】
以下、本発明に係る各設定値の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例では、上述の第1実施形態の放電灯点灯装置を使用し、昇圧電圧VOの設定値については入力電圧V1に関わらず一定(VO=390V)とする。また、スイッチング周波数fSWについては、入力電圧V1に応じて次表のように切り替わるようにした。
【0036】
(表1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
条件 入力電圧V1 昇圧電圧VO スイッチング周波数fSW
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1−1 100V 約400V 50〜100kHz
(実施例390V) (実施例70kHz)
1−2 200V 約400V 100〜150kHz
(実施例390V) (実施例100kHz)
1−3 242V 約400V 100〜150kHz
(実施例390V) (実施例100kHz)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0037】
通常、HIDランプのランプ電力は、電源電圧、点灯装置(安定器)およびランプの種類によって変化する。本実施例で使用する放電灯のランプ電圧とランプ電力の関係を以下に示す。
(表2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
条件 ランプ電力 ランプ電圧
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2−1 250W 100、130V
2−2 400W 100、130V
2−3 700W 215、250V
2−4 1000W 215、250V
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
例えば、条件(2−4)は、200V又は242V入力の交流電源を用いて、1000Wのランプ電力で放電灯を点灯させる場合を示す。
ここで、上記の条件(2−4)の放電灯及び点灯装置を使用して、表1の条件(1−2)のように200Vの入力電圧で点灯させた場合の電力損がどの程度の大きさになるかの一例を次表に示す。また、この放電灯及び点灯装置を使用して、表1の条件(1−1)のように100Vの入力電圧で点灯させた場合の電力損を比較のために示す。つまり、入力電圧V1が変更されたが、スイッチング周波数fSWについては100kHzのままとした場合の、電力損の比較であり、表3の条件(3−1)と条件(3−2)に示す。
次に、スイッチング周波数の切り替えを実行した場合の電力損を示す。つまり、入力電圧V1の変更に伴って、スイッチング周波数fSWを100kHzから70kHzまで低減させた場合の、電力損を条件(3−3)に示す。
【0038】
(表3)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
条件 入力電圧V1 スイッチング周波数fSW 電力損
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3−1 200V 100kHz 60W
3−2 100V 100kHz 140〜150W
3−3 100V 70kHz 100〜110W
(いずれも1000W出力時)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0039】
条件(3−1)のように、入力電圧が200Vの場合に、スイッチング周波数の設定値が100kHzであるとすると、スイッチングによる電力損が60W程度になる。そして、条件(3−2)のように、入力電圧が100Vの場合に、スイッチング周波数を100kHzのままにすると、電力損が140〜150Wになる。これに対して、条件(3−3)のように入力電圧が100Vの場合に、スイッチング周波数を100kHzから70kHzに低減させることによって、電力損を40W程度低減させることができる。
【0040】
昇圧用インダクタ(チョークコイル)については、入力電圧が200Vであるとしてその容量を設計することにより、AC100V入力時においても余裕のある容量とすることができる。
【符号の説明】
【0041】
12 入力フィルタ回路
14 整流回路
16 力率改善回路
18 PWM降圧回路(降圧チョッパ回路)
20 矩形波生成回路
22 出力フィルタ回路
24 スタータ回路
32,34,36 駆動回路
42,142 制御回路(設定手段)
44,144 入力電圧検出手段
46,146 出力電圧検出手段
AC 交流電源
1 平滑コンデンサ
2 電解コンデンサ
3 平滑コンデンサ
1 昇圧ダイオード
2 降圧ダイオード
DB ダイオードブリッジ
1 昇圧インダクタ
2 降圧インダクタ
1 昇圧スイッチング素子
2 降圧スイッチング素子
3〜Q6 矩形波生成スイッチング素子
O 昇圧電圧
1 入力電圧
2 出力電圧
図1
図2
図3