特許第6134494号(P6134494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立メディアエレクトロニクスの特許一覧

特許6134494レーザビーム表示装置並びにそのミラー制御方法
<>
  • 特許6134494-レーザビーム表示装置並びにそのミラー制御方法 図000002
  • 特許6134494-レーザビーム表示装置並びにそのミラー制御方法 図000003
  • 特許6134494-レーザビーム表示装置並びにそのミラー制御方法 図000004
  • 特許6134494-レーザビーム表示装置並びにそのミラー制御方法 図000005
  • 特許6134494-レーザビーム表示装置並びにそのミラー制御方法 図000006
  • 特許6134494-レーザビーム表示装置並びにそのミラー制御方法 図000007
  • 特許6134494-レーザビーム表示装置並びにそのミラー制御方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134494
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】レーザビーム表示装置並びにそのミラー制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   G02B26/10 104Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-236195(P2012-236195)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-85605(P2014-85605A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153535
【氏名又は名称】株式会社日立メディアエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】小堀 智生
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 欣穂
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏
(72)【発明者】
【氏名】春名 史雄
(72)【発明者】
【氏名】野中 智之
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/104524(WO,A1)
【文献】 特開2006−084495(JP,A)
【文献】 特開平07−306367(JP,A)
【文献】 特開2008−268645(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/115264(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G09G 3/02
G03B 21/00
H04N 5/74
G02B 26/00 − 26/08
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを走査して画像表示をおこなうレーザビーム表示装置において、
所定位置にビーム焦点をもつレーザビームを出力する光源と、
前記光源からのレーザビームを反射し、1軸或いは2軸に揺動する走査ミラーと、
前記走査ミラーの反射面の裏面に貼り付けて配置され、前記走査ミラーの反射面形状を変形させる伸縮素子と、
前記伸縮素子の変形量を制御する伸縮素子駆動部とを備え、
前記伸縮素子の変形に応じて前記走査ミラーの反射面が凹凸に変形し、
レーザビームのビーム焦点の位置が変化する
ことを特徴とするレーザビーム表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザビーム表示装置において、
画像表示をおこなう投射距離を測定する測距手段を備え、
前記伸縮素子駆動部は、
所定のビームスポットサイズを得る場合に、
前記測距手段で測定した投射距離が所定の値より大きいときには前記伸縮素子を制御して前記走査ミラーの反射面を凸形状に変形し、
前記測距手段で測定した投射距離が所定の値より小さいときには前記伸縮素子を制御して前記走査ミラーの反射面を凹形状に変形することを特徴とするレーザビーム表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザビーム表示装置において、
画像表示をおこなう投射距離を測定する測距手段を備え、
前記伸縮素子駆動部は、
前記測距手段で測定した投射距離と前記走査ミラーの揺動角と投射画像の解像度に応じて、前記伸縮素子の凹凸形状を変えてビームスポットサイズを制御することを特徴とするレーザビーム表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のレーザビーム表示装置において、
光源は単色或いは少なくともRGBの3原色であることを特徴とするレーザビーム表示装置。
【請求項5】
レーザビームを走査して画像表示をおこなうレーザビーム表示装置のミラー制御方法であって、
画像表示をおこなう投射距離を測定し、
所定のビームスポットサイズを得る場合に、
前記測距手段で測定した投射距離が所定の値より大きいときには前記走査ミラーの反射面を凸形状に変形し、
前記測距手段で測定した投射距離が所定の値より小さいときには前記走査ミラーの反射面を凹形状に変形することを特徴とするミラー制御方法。
【請求項6】
走査ミラーによりレーザビームを走査して投射画像表示をおこなうレーザビーム表示装置のミラー制御方法であって、
画像表示をおこなう投射距離を測定し、
前記測定した投射距離と走査ミラーの揺動角と投射画像の解像度からビームスポットのサイズを決定し、
前記ビームスポットのサイズに応じて走査ミラーの反射面の裏面に貼り付けて配置された伸縮素子を、伸縮素子駆動部によって変形させることにより前記走査ミラーの反射面の凹凸形状を制御することを特徴とするミラー制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを1次元或いは2次元走査して画像表示をおこなう表示装置に係り走査ミラーの構造とその動作に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザービームを2次元走査して表示をおこなう表示装置では、1次軸或いは2軸の揺動ミラーによりレーザビームを走査して、レーザービームをスクリーンに描画して表示をおこなっている。このため、レーザービームの投射距離に比例してビームスポットサイズの広がりが発生し、投射画像の画質の劣化が問題となることがあった。
【0003】
この画質劣化を防止する技術が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、光路上に可動レンズや可変焦点ミラーを配し、ビームスポットサイズを調整することで画質劣化を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−193008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1では、可動レンズや可変焦点ミラーを調整し、所望のビームスポットサイズを得るための駆動機構、ビームスポットサイズの検出機構等の複雑な機構が必要である。さらに、可動レンズによる場合には、RGB色のレーザ光の色毎に光特性が異なるため、色ごとにビームスポットサイズの調整量を変える必要がある。このため、可動レンズ機構を色毎に有する事が望ましい。上記の特許文献1では、複雑な機構を必要となるとともに、光路途中に可動レンズや可変焦点ミラーを設けるために、ビーム走査ユニットの小型化の障害となる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑みて為されたものであり、ビームスポットサイズの可変を簡易な機構で実現し、投射距離や表示サイズ(画角)を変えた際に、投射距離によるビームスポットサイズの広がりを画角と一致させ、画質劣化を防ぐ事である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明のレーザビームを走査して画像表示をおこなうレーザビーム表示装置は、所定位置にビーム焦点をもつレーザビームを出力する光源と、前記光源からのレーザビームを反射し、1軸或いは2軸に揺動する走査ミラーと、前記走査ミラーの反射面の裏面に配置され、前記走査ミラーの反射面形状を変形させる伸縮素子と、
前記伸縮素子の変形量を制御する伸縮素子駆動部とを備える構成とし、前記伸縮素子の変形に応じて前記走査ミラーの反射面が凹凸に変形して、レーザビームのビーム焦点の位置が変化するようにした。
【0008】
さらに、画像表示をおこなう投射距離を測定する測距手段を備え、前記伸縮素子駆動部は、所定のビームスポットサイズを得る場合に、前記測距手段で測定した投射距離が所定の値より大きいときには前記伸縮素子を制御して前記走査ミラーの反射面を凸形状に変形し、前記測距手段で測定した投射距離が所定の値より小さいときには前記伸縮素子を制御して前記走査ミラーの反射面を凹形状に変形するようにした。
また、前記伸縮素子駆動部は、前記測距手段で測定した投射距離と前記走査ミラーの揺動角と投射画像の解像度に応じて、前記伸縮素子の凹凸形状を変えてビームスポットサイズを制御するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビームスポットサイズの広がりによる画質劣化の影響を低減する表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施例の表示装置の構成図である。
図2】本発明の第1実施例の伸縮ミラーの形状を補足する図である。
図3】本発明の第1実施例の伸縮ミラーの別の形状を補足する図である。
図4】本発明の第1実施例の伸縮ミラーの凹凸とビームの広がりの関係を説明する図である。
図5】本発明の第1実施例の伸縮ミラーの凹凸と表示距離の関係を示す図である。
図6】本発明の第2実施例に係る表示装置の構成図である。
図7】本発明の第1実施例の伸縮ミラーの動作タイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。尚、各図または各実施例において、同一の構成、機能または作用を有する要素には同じ番号を付し、重複した説明を省略するものとする。
【実施例1】
【0012】
図1〜5、7は、本発明の第1実施例のビーム表示装置を示している。
図1〜7で、1は伸縮素子、2はミラー、3は入力信号、4は信号変調器、5は光源駆動部、6は光源、7はレンズ、8はタイミング生成部、9はミラー駆動部、10は伸縮素子駆動部、11は測距部、12はCPU、13はスクリーンを示している。
【0013】
また、図中の記号αは揺動角、Tはミラー2表面の高低差、Mはミラー2の径、βはミラー2の仰角、γはビーム光の広がり角、S0、S1、S2はビームスポット、Lfはビームスポット焦点の距離、Ldは表示位置までの距離である。
【0014】
本実施例の伸縮素子1は、走査ミラーの裏面(レーザービームの反射面の裏側)に設けられていることを特徴とする。伸縮素子1は、例えば、ピエゾ素子に実現し、印加する電圧を変えて伸縮素子1の変形量を制御する。伸縮素子1の変形は、以下の実施例では一軸方向の変形を説明するが、二軸方向(平面)の変形であってもよい。
【0015】
つぎに、図1により、実施例のビーム表示装置の動作を説明する。
図1で、光源6はレーザ素子であり、レンズ7で集光したレーザビーム光を水平方向と垂直方向の2軸で揺動するMEMSミラー等のミラー2で反射し、スクリーン13にラスタスキャン表示する構成である。
【0016】
ミラー駆動部9はミラー2を所望の振れ角となるように制御駆動して、レーザビーム光の2次元走査をおこなう。タイミング生成8ではミラー2の開始基準信号w_sp_h(水平軸の開始信号、図7に一例を示す)でミラー駆動部9を起動し、ミラー2の揺動位置に応じ、各種タイミング信号s_sp_h(水平軸の揺動位置信号、同)を生成する。
【0017】
信号変調器4はタイミング信号s_sp_hを基準に入力信号(映像信号)からスクリーン13のラスタ位置に対応する映像信号の選択と光源の強弱情報を生成し、光源駆動部5で光源6を変調駆動する構成である。ここで、レーザの変調方法やミラー2の揺動方法等の基本動作の詳細説明は公知の通りであり割愛する。
【0018】
図2、3は、MEMSミラー等のレーザービームの走査をおこなうミラー2の、変形状態を説明する図である。図2は、ミラー2が凹状態に変形した状態を示し、図3は、ミラー2が凸状態に変形した状態を示している。
【0019】
図2、3で、ミラー2は、反射面の裏面に伸縮素子1を形成されており、伸縮素子1の伸縮量は、伸縮素子駆動部10の制御量で定まる。尚、前述のとおり、伸縮素子1の材料は電気信号で伸縮制御出来る物であれば良く、圧電素子や、膨張率の異なる素材の貼り合せ(バイメタル)等、選択できる。但し、映像表示などミラー2が高速揺動する用途の場合は、軽量で必要十分な伸縮量が得られる材料が望ましく、圧電素子の形成が望ましく、伸縮素子駆動部10は予め駆動電圧と伸縮量の関係をテーブルで保持し、例えばCPU12からの所望の伸縮情報を得て、対応する駆動電圧を制御量として生成することで実現する。
【0020】
また、ミラー2のレーザ光反射率は100%(全反射)でなく、熱吸収による温度変化が避けられないが、実温度の計測あるいは、予測によりミラー温度を把握する事で、伸縮素子1を温度補償し所望の伸縮量を実現する。
【0021】
さらに、伸縮素子1の貼り付け位置として、ミラー2が所望の伸縮量を得られるように伸縮素子1の性能を鑑みて圧電素子の厚みや貼り付け面積を規定するものである。尚、揺動によりミラー2が面変動する場合には、面変動を抑えるよう、伸縮素子1の形状を定めても良い。
【0022】
図2、3には、ひとつの伸縮素子1が、ミラー2の裏面に貼付される構成を示しているが、伸縮素子1は複数に分割され、個々の素子を個別に駆動するようにしてもよい。この場合には、素子の変形量が異なるため、ミラー2の凹凸状態を非対称にすることができ、レーザービームのビームスポットサイズの広がりを細かく制御することができる。
【0023】
つぎに、図4によりミラー2の凹凸状態と投射位置とビームスポット形状の関係を説明する。図4で、ミラー2は直径M=φ1.2で理想平面の場合、レンズ7で集光したレーザビーム光はミラー2上でB=φ1.0(真円)のビームスポットS0で、ビーム焦点fであるLf=573mmで収束後、再び拡大し、ビームスポットS0の大きさと同じサイズ(=φ1.0)となる位置Ldを同S1_fで示す。尚、揺動するミラー2を中心とする同心円上のビームスポットのサイズは同一とする。
【0024】
図2の様に、ミラー2の反射面が、高低差Tで中央部が凹の場合は、同f凹とS1_f凹で示し、同じく図3の様に、ミラー2の反射面の中央部が高低差Tで凸の場合は、同f凸とS1_f凸で示す。図2、3では、曲面を持った凹凸で示すが、ミラー2の面形状が理想平面と、凸或いは凹面は、三角錐状の面として説明する。もちろん、この限りでは無く、ミラー2の面形状に応じたビーム形状であっても同様であり、本実施例に逸脱しない。
【0025】
高低差TとビームスポットS0の大きさと同じサイズ(B=φ1.0)となる位置Lの関係を次式より定まり、図5は、高低差T(横軸)と位置L(縦軸)の関係となる。
仰角β=atan(T/(M/2)) ……(数1)
ビーム広がり角γ=atan(B/2/Ld) ……(数2)
位置L=B/tan(γ+2β) ……(数3)
より具体的には、例えば、高低差T=0nmでL=1146mm、同T=500nmでL=586mm、T=−400nmでL=4854mmの関係となる。尚、実施例では具体的な数値を挙げ且つ、ビーム光が理想的な集光・拡散となる場合で説明するが、これに限らず、ミラー2の凹凸でビーム形状を定義する関係であれば本実施例に逸脱しない。
【0026】
上記のとおり、ミラー2の凹凸でビーム形状を定義することができるが、本実施例では、投射位置により、つぎのようにして、ミラー2の凹凸を制御する。
まず、図1の測距部11にてミラー2からスクリーン13(投射位置)までの距離lxを計測する。一方、スクリーン13で映像表示する画角WhxWvと解像度DhxDvより所望のビームスポットサイズBSが定まることから、CPU12では、得られた距離lxから所望のビームスポットサイズを実現するミラー2の揺動量と伸縮素子1の伸縮量を制御量として出力し、伸縮素子駆動部10とミラー駆動部9を制御する。
【0027】
例えば、画角WhxWvと投射距離lxより振れ角α(光学振れ角)とビームスポットサイズBSは、それぞれ以下より定めても良い。
α=atan(WhxWv/2/lx) ……(数4)
BS=WhxWv/DhxDv ……(数5)
【実施例2】
【0028】
図6は、実施例1で示したミラー制御方法並びにそれを用いた表示装置の光源として、レーザ素子6は、色の3原色であるR/G/B(赤/緑/青)色で発振し、実施例1と同様に映像信号とミラー2の揺動位置で変調することでスクリーン13に投射することで静止画や動画像の映像を表示する。
【0029】
本実施例のとおり、ミラー2の変形によりビームスポットサイズを変化させるので、R/G/B(赤/緑/青)色の波長特性に関係なくビームスポットサイズを変化させることができる。このため、単色と同じ構成とすることができ、装置が大型化することがない。
【符号の説明】
【0030】
1…伸縮素子、2…ミラー、3…入力信号、4…信号変調器、5…光源駆動部、6…光源、7…レンズ、8…タイミング生成部、9…ミラー駆動部、10…伸縮素子駆動部、11…測距部、12…CPU、13…スクリーン、α…揺動角、T…ミラー2表面の高低差、M…ミラー2の径、β…ミラー2の仰角、γ…ビーム光の広がり角、S0、S1、S2…ビームスポット、Lf…ビームスポット焦点の距離、Ld…表示位置までの距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7