特許第6134496号(P6134496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アピックヤマダ株式会社の特許一覧

特許6134496プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法
<>
  • 特許6134496-プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法 図000002
  • 特許6134496-プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法 図000003
  • 特許6134496-プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法 図000004
  • 特許6134496-プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法 図000005
  • 特許6134496-プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法 図000006
  • 特許6134496-プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法 図000007
  • 特許6134496-プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法 図000008
  • 特許6134496-プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134496
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】プランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/53 20060101AFI20170515BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20170515BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   B29C45/53
   B29C45/26
   B29C45/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-242360(P2012-242360)
(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公開番号】特開2014-91245(P2014-91245A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 高志
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−032619(JP,A)
【文献】 特開平08−294937(JP,A)
【文献】 特開平08−001706(JP,A)
【文献】 特開平03−296231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/24
B29C 45/26−45/44
B29C 45/46−45/63
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポットに収納された樹脂を押し出して金型で形成された空間に該樹脂を供給した後の前記ポットの内壁に付着し残存した樹脂をクリーニングするためのクリーニング用のプランジャーであって、
クシ歯状のヘッド部と、
前記ヘッド部に連接されたシャフト部と、を有し、
前記ヘッド部の側面には、前記プランジャーの径方向に突起したクシ歯が形成され、該クシ歯が前記ヘッド部の上端面まで達しており
前記シャフト部は、前記ポットに対して回転しながら上下に移動可能であるように、カムフォロアおよびカムのうち一方と係合するための前記カムフォロアおよび前記カムのうち他方を備えている、ことを特徴とするプランジャー。
【請求項2】
金型で形成された空間に樹脂を供給するモールド装置であって、
前記樹脂を収納するポットと、
前記ポットに収納された前記樹脂を押し出して前記金型で形成された空間に該樹脂を供給した後の前記ポットの内壁に付着し残存した樹脂をクリーニングするための前記ポットの内部で上下に移動可能なクリーニング用のプランジャーと、
前記クリーニング用のプランジャーを駆動する駆動部と、
前記金型に固定されたカムフォロアおよびカムのうち一方と、を有し、
前記クリーニング用のプランジャーは、
クシ歯状のヘッド部と、
前記ヘッド部に連接されたシャフト部と、を有し、
前記ヘッド部の側面には、前記プランジャーの径方向に突起したクシ歯が形成され、該クシ歯が前記ヘッド部の上端面まで達しており
前記シャフト部は、前記駆動部により、前記ポットに対して回転しながら上下に移動可能であるように、前記一方と係合するための前記カムフォロアおよび前記カムのうち他方を備えている、ことを特徴とするモールド装置。
【請求項3】
金型で形成された空間に樹脂を供給するモールド装置の制御方法であって、
樹脂モールド用のプランジャーによりポットに収納された前記樹脂を押し出して前記空間に前記樹脂を供給するステップと、
前記樹脂モールド用のプランジャーとは異なるクリーニング用のプランジャーにより前記樹脂を供給した後のポットの内壁に残存している樹脂をクリーニングするステップと、を有し、
前記クリーニング用のプランジャーは、
クシ歯状のヘッド部と、
前記ヘッド部に連接されたシャフト部と、を有し、
前記ヘッド部の側面には、前記プランジャーの径方向に突起したクシ歯が形成され、該クシ歯が前記ヘッド部の上端面まで達しており
前記シャフト部は、カムフォロアおよびカムのうち一方を備えており、前記金型に固定された前記カムフォロアおよび前記カムのうち他方が該一方と係合することにより、前記ポットに対して回転しながら上下に移動可能である、ことを特徴とするモールド装置の制御方法。
【請求項4】
前記クリーニングするステップにおいて、前記クリーニング用のプランジャーは、前記ポットの内部を回転しながら、複数回の上下移動を行うことを特徴とする請求項3に記載のモールド装置の制御方法。
【請求項5】
前記樹脂を供給するステップの後、前記クリーニング用のプランジャーにより前記クリーニングを行う必要があるか否かを判断するステップを有することを特徴とする請求項3または4に記載のモールド装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポット内面のクリーニング処理を行うプランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスファモールドなどの樹脂モールドに用いられる金型では、樹脂モールド後に、樹脂を投入するためのポットの内面に樹脂の一部(樹脂かす)が残存してしまう。このようにポットの内面に残存した樹脂は、樹脂モールドを繰り返すことにより堆積していく。例えば、LEDパッケージのモールドに用いられる液状樹脂は、小さい樹脂粘度を有するため、プランジャーとポットとの間の隙間から漏れやすく樹脂がポットの内面(内壁)に堆積しやすい。ポットの内面に樹脂が堆積すると、プランジャーの上下動作だけでは樹脂をかき出すことが困難であり、さらに堆積が進行するとプランジャーの作動不良が生じる。プランジャーの作動不良は、成形圧力を低下させ、成形品の不良を引き起こす。
【0003】
特許文献1には、プランジャーのポットの内壁面と接する面に、螺旋状の溝を備え、ポットに対してプランジャーを回転させながら往復動させる樹脂成形装置が開示されている。このような螺旋状の溝をプランジャーに設けることにより、成形を繰り返してもプランジャーが動きやすい樹脂成形装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−300779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている樹脂成形装置は、プランジャーのポットの内壁面と接する面に、螺旋状の溝を備える。このため、樹脂成形の際に樹脂(樹脂のかす)が進入し、樹脂成形を繰り返すことによって樹脂(樹脂のかす)が堆積してしまう。その結果、プランジャーの作動不良、ひいては成形品の不良を引き起こすおそれがある。
【0006】
一方、プランジャーに堆積した樹脂を除去するため、樹脂成形装置からプランジャーを取り外してプランジャーのクリーニングを行うことはできるが、大掛かりな作業となり時間も要する。
【0007】
そこで本発明は、ポットの側壁に堆積した樹脂を簡易に除去可能なプランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としてのプランジャーは、ポットに収納された樹脂を押し出して金型で形成された空間に該樹脂を供給した後の前記ポットの内壁に付着し残存した樹脂をクリーニングするためのクリーニング用のプランジャーであって、クシ歯状のヘッド部と、前記ヘッド部に連接されたシャフト部と、を有し、前記ヘッド部の側面には、前記プランジャーの径方向に突起したクシ歯が形成され、該クシ歯が前記ヘッド部の上端面まで達しており、前記シャフト部は、前記ポットに対して回転しながら上下に移動可能であるように、カムフォロアおよびカムのうち一方と係合するための前記カムフォロアおよび前記カムのうち他方を備えている。
【0009】
本発明の他の側面としてのモールド装置は、金型で形成された空間に樹脂を供給するモールド装置であって、前記樹脂を収納するポットと、前記ポットに収納された前記樹脂を押し出して前記金型で形成された空間に該樹脂を供給した後の前記ポットの内壁に付着し残存した樹脂をクリーニングするための前記ポットの内部で上下に移動可能なクリーニング用のプランジャーと、前記クリーニング用のプランジャーを駆動する駆動部と、前記金型に固定されたカムフォロアおよびカムのうち一方と、を有し、前記クリーニング用のプランジャーは、クシ歯状のヘッド部と、前記ヘッド部に連接されたシャフト部と、を有し、前記ヘッド部の側面には、前記プランジャーの径方向に突起したクシ歯が形成され、該クシ歯が前記ヘッド部の上端面まで達しており、前記シャフト部は、前記駆動部により、前記ポットに対して回転しながら上下に移動可能であるように、前記一方と係合するための前記カムフォロアおよび前記カムのうち他方を備えている。
【0010】
本発明の他の側面としてのモールド装置の制御方法は、金型で形成された空間に樹脂を供給するモールド装置の制御方法であって、樹脂モールド用のプランジャーによりポットに収納された前記樹脂を押し出して前記空間に前記樹脂を供給するステップと、前記樹脂モールド用のプランジャーとは異なるクリーニング用のプランジャーにより前記樹脂を供給した後のポットの内壁に残存している樹脂をクリーニングするステップと、を有し、前記クリーニング用のプランジャーは、クシ歯状のヘッド部と、前記ヘッド部に連接されたシャフト部と、を有し、前記ヘッド部の側面には、前記プランジャーの径方向に突起したクシ歯が形成され、該クシ歯が前記ヘッド部の上端面まで達しており、前記シャフト部は、カムフォロアおよびカムのうち一方を備えており、前記金型に固定された前記カムフォロアおよび前記カムのうち他方が該一方と係合することにより、前記ポットに対して回転しながら上下に移動可能である。
【0011】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポットの側壁に堆積した樹脂を簡易に除去可能なプランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施例におけるプランジャーを備えたモールド装置の要部構成図(上昇時)である。
図2】本実施例におけるプランジャーを備えたモールド装置の要部構成図(下降途中段階)である。
図3】本実施例におけるプランジャーを備えたモールド装置の要部構成図(下降時)である。
図4】本実施例におけるプランジャーの断面図である。
図5】本実施例におけるプランジャーのカムのパターン例である。
図6】本実施例におけるクリーニング動作の説明図である。
図7】本実施例におけるクリーニング処理を示すフローチャートである。
図8】本実施例におけるクリーニング専用のプランジャーの形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
まず、図1乃至図3を参照して、本実施例におけるプランジャーを備えたモールド装置について説明する。図1乃至図3は、本実施例のプランジャー10を備えたモールド装置100の要部構成図である。図1はプランジャー10の上昇時、図2はプランジャー10の下降途中段階、図3はプランジャー10の下降時のそれぞれの状態を示している。モールド装置100は、金型で形成された空間に樹脂を供給するように構成されている。
【0016】
図1乃至図3に示されるように、本実施例において、金型は、上金型50(一方金型)と下金型60(他方金型)を備えて構成される。樹脂モールド時において、例えばリードフレーム(不図示)が下金型60の上に載置される。そして上金型50は、リードフレームを上面側(一方面側)から押さえ付ける。また下金型60は、リードフレームを下面側(他方面側)から押さえ付ける。
【0017】
また、上金型50には、カル71、ゲート72、および、キャビティ73が設けられている。樹脂モールド時には、上金型50と下金型60とでリードフレームをクランプする(挟む)。そして、樹脂タブレット(不図示)を溶融し、この溶融樹脂(樹脂)を、カル71およびゲート72を介して、金型で形成された空間(キャビティ73)に充填していく。
【0018】
樹脂タブレットは、熱硬化性樹脂等をタブレット(円柱)状に成形したものである。樹脂封止時には、下金型60に設けられたポット20を予熱し、その中に樹脂タブレットを投入(収納)して溶融させる。そして、トランスファ機構(不図示)によってポット20に沿って上下に摺動可能に構成されたプランジャー10を上動させて溶融した樹脂を圧送することにより、上金型50と下金型60との間に形成された空間(すなわち、カル71、ゲート72、および、キャビティ73)が樹脂で充填される。なお、樹脂タブレットに代えて液状の熱硬化性樹脂をディスペンサ(不図示)で供給することもできる。また、粒状、顆粒状やゲル状の樹脂を用いることもできる。
【0019】
プランジャー10によって樹脂が圧送されることにより、溶融樹脂は、カル71およびゲート72を介して、ゲート72に近い側からゲート72から遠い側に向けてキャビティ73内で充填されていく。このようにして、樹脂タブレットが溶融樹脂となり、上金型50と下金型60との間の空間(キャビティ73)に注入される。樹脂モールド後、樹脂を所定の硬化状態まで硬化させるために所定時間だけ待機するキュア工程を経てから上金型50および下金型60を型開きすることで、成形品が得られる。
【0020】
このとき、図1に示されるように、ポット20の内面(内壁20a)には、樹脂40(樹脂かす)が残存してしまうことがある。ポット20の内壁20aに樹脂40が堆積すると、プランジャー10の上下動作だけでは樹脂40をかき出すことが困難である。この状態で樹脂モールドを繰り返すと、さらに樹脂40の堆積が進行し、プランジャー10の作動不良が生じる場合がある。プランジャー10の作動不良は、成形圧力を低下させ、成形品の不良を引き起こす可能性がある。
【0021】
そこで本実施例では、プランジャー10の側面にカム12(バレルカム)が形成されている。カム12には、モールド装置100の下金型60に対して固定されたカムフォロア14が係合している。このような構成により、下金型60に組みつけられたポット20内を進退するプランジャー10は、回転しながら上下移動を行う。このため、本実施例のモールド装置100によれば、ポット20の内壁20aに堆積した樹脂40を効果的に除去する(剥がし落とす)ことができる。
【0022】
プランジャー10は、ポット20の内部で上下に移動可能であり、ポット20に収納された樹脂を押し出して金型(上金型50、下金型60)で形成された空間(キャビティ73)に樹脂を供給する。本実施例において、プランジャー10は、樹脂を載置するヘッド部11aと、ヘッド部11aに連接されたシャフト部11bとを有する。ヘッド部11aは、シールリング16a、16bを備えている。また、シャフト部11bは、ポット20に対して回転しながら上下に移動可能であるように、カムフォロア14と係合するためのカム12(溝カム)を備えている。本実施例において、カムフォロア14は、下金型60に固定されている。またプランジャー10は、ポット20に対して昇降される均等圧ユニット32(駆動部)により駆動される。均等圧ユニット32の上には、プランジャー10を回転可能に保持する保持部30が設けられている。このような構成により、プランジャー10は、ポット20に対して回転しながら上下に移動可能である。
【0023】
図1に示されるように、プランジャー10の上昇時において、モールド装置100(下金型60)に固定されたカムフォロア14は、プランジャー10に設けられたカム12の下部(下端)に位置する。この状態でプランジャー10を下降させていくと、カムフォロア14はカム12(溝カム)を上昇していき、一例としての図2に示される位置関係の状態を通過する。図2は、図1のプランジャー10を270度だけ回転させた場合を示している。
【0024】
図2の状態からプランジャー10を更に下降させると、図3に示されるように、カムフォロア14はカム12の上部(上端)に位置する。図3は、図2のプランジャー10を90度だけ更に回転させた場合(図1のプランジャー10を1回転(360度)させた場合)を示している。このように、図1から図3の状態へ偏移する際、カムフォロア14が所定のパターンを有するカム12と係合しているため、プランジャー10は回転しながら下降していく。
【0025】
従来構成では、プランジャーは回転することなく単に上下方向に移動するだけであるため、ポット20の内壁20aに残存した(堆積した)樹脂40を取り除くことは困難であった。一方、本実施例では、上下方向の移動に回転方向の移動を加えることにより、プランジャー10のヘッド部11aの側面を用いてポット20の内壁20aに残存した樹脂40を効果的に取り除くことができる。
【0026】
また本実施例において、ヘッド部11aの側面には段差部19a、19b、19c(角部)が形成されている。このような段差部19a、19b、19cを設けることにより、段差部19a、19b、19cがポット20の内壁20aを引っ掛けながらプランジャー10は回転する。このため、プランジャー10を回転移動させている際に、ポット20の内壁20aに残存した樹脂40をより効果的に取り除くことが可能となる。
【0027】
また本実施例において、ヘッド部11aの側面には、平坦部18a、18b、18c(平面部)を有する。図4は、図1中の線A1−A1、A2−A2、A3−A3、A4−A4の断面図(プランジャー10の断面図)である。図4(a)は線A1−A1および線A3−A3の断面、図4(b)は線A2−A2の断面、図4(c)は線A4−A4の断面をそれぞれ示している。図4(a)、(b)に示されるように、プランジャー10のヘッド部11aは曲面形状を有するが、その一部に平坦部18a、18b、18cが設けられている。このような構成も、ポット20の内壁20aに残存した樹脂40を効果的に取り除くことに寄与する。
【0028】
図5は、プランジャー10に設けられたカム12のパターン例である。図5(a)はカム12aを備えたプランジャー10a、図5(b)はカム12bを備えたプランジャー10bである。図5(a)、(b)において、線B1−B2は、プランジャー10a、10b(シャフト部)の円周方向(回転方向)の1周分(図4(c))を示している。図5(a)において、カムフォロア14がカム12aの上端13aから下端13bまで(または、下端13bから上端13bまで)移動する際に、プランジャー10aは1回転(1周)する。一方、図5(b)において、同様にカムフォロア14がカム12aの上端13cと下端13dとの間を移動する際に、プランジャー10bは2回転(2周)する。このように、本実施例では、より効果的に樹脂を除去することができるように(より効果的なクリーニング効果が得られるように)、カム12の構成を変更することが可能である。
【0029】
次に、図6を参照して、本実施例の樹脂モールド工程におけるクリーニング動作(モールド装置100の制御方法)について説明する。図6は、クリーニング動作の説明図である。図6において、縦軸はプランジャー10の高さ(トランスファ位置)、横軸は時間をそれぞれ示している。
【0030】
まず、時間Tにおいて、樹脂モールドを開始する(トランスファ開始)。樹脂モールド時には、ヘッド部11aの上に樹脂(樹脂タブレット)が載置され、加熱により溶融されている。また、樹脂モールドを開始する時間Tにおいて、プランジャー10は、最も下に位置している。この状態からプランジャー10を上昇させることで、樹脂は金型で形成された空間(キャビティ73)に充填される。この状態で、時間Tにおいて保圧を開始する。樹脂モールド(キュア)が終了すると、時間Tにおいて、ポット20の内壁20aに付着し残存した樹脂40のクリーニング(ポットクリーニング)を開始する(第一のクリーニング工程)。ポットクリーニング工程は、時間Tまで行われる。
【0031】
ポットクリーニング工程の間(時間T〜Tの間)、均等圧ユニット32により、プランジャー10は上下方向の移動(N回の昇降動作)を繰り返す。このとき、プランジャー10には上述のカム12が設けられているため、カム12がカムフォロア14と係合することによって、範囲R(プランジャー回転範囲)において回転移動を行う。すなわち、プランジャー10は、回転しながら上下移動を繰り返す。このようなポットクリーニング工程により、ポット20の内壁20aに残存した樹脂40を効果的に取り除くことが可能となる。
【0032】
ポットクリーニング工程が終了すると、時間Tにおいて、プランジャー10(ヘッド部11a)の上面のクリーニング(プランジャークリーニング)を開始する。プランジャークリーニング工程は、プランジャー10の上面に堆積(残存)した樹脂(樹脂かす)を取り除くための工程であり、不図示の回転ブラシなどのクリーナー部材を用いて行われる。プランジャークリーニング工程(時間T〜T)において、プランジャー10の高さ(位置)は一定に制御される。プランジャークリーニング工程が終了すると、プランジャー10は元の高さ(位置)まで下降する。
【0033】
なお、図6は、樹脂モールド工程の間に行われるプランジャークリーニング工程を行うことを前提として説明している。ただし、本実施例はこれに限定されるものではなく、必要に応じてプランジャークリーニング工程を実施するように構成してもよい。
【0034】
次に、図7を参照して、本実施例におけるクリーニング工程(モールド装置の制御方法)について説明する。図7は、クリーニング工程を示すフローチャートである。図7に示される各工程は、モールド装置100の制御装置(不図示)の指令に基づいて行われる。
【0035】
まずステップS11において、モールド装置100は、例えば図6に示される樹脂モールドを行う。樹脂モールドの完了後、続いてステップS12において、モールド装置100(制御装置)は、ポットクリーニングを行う必要があるか否かを判定する。ポットクリーニングの必要性は、例えば成形圧力の低下など、プランジャー10の作動異常が生じているか否か、または過去の生産状況などに応じて予測される樹脂かすの堆積状態に基づいて決定される。または、所定の回数だけ樹脂モールドが行われた否かを判定し、まだその所定の回数に達していない場合にはポットクリーニング工程を省略し、その回数に達した場合にはポットクリーニング工程を実行するように制御してもよい。
【0036】
ステップS12において、ポットクリーニングが不要であると判定された場合、ステップS11に戻り、次の樹脂モールドを行う。この場合、ポットクリーニング工程は省略される。一方、ステップS12において、ポットクリーニング工程が必要であると判定された場合、ステップS13に進む。そしてステップS13において、上述したポットクリーニングとは別のクリーニング工程(第二のクリーニング工程)として樹脂モールドの動作は行わずにプランジャー10を必要に応じた回数だけ昇降させることでポットクリーニングが行われる。これにより、通常のポットクリーニング工程(第一のクリーニング工程)では落としきれなかったポット20の内壁20aに堆積した樹脂40は効果的に除去される。その後、ステップS11に戻り、次の樹脂モールドを行う。
【0037】
なお本実施例において、プランジャー10にカム12を設け、金型にカムフォロア14を固定している。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、それとは逆に、プランジャーにカムフォロアを固定して金型にカムを設けるようにしてもよい。また本実施例のポットクリーニング工程は、モールド装置100に設けられたクリーニングモードとして、樹脂モールド工程とは独立して実行するようにしてもよい。このときモールド装置100は、ポット20の内壁20aに残存している樹脂40を除去する工程を実施するクリーニング専用モードを有する。
【0038】
また本実施例のプランジャーとして、樹脂モールド用のプランジャーに代えて、図8(a)、(b)に示されるようなクリーニング専用のプランジャー70を用いてポットクリーニングを行うように構成することもできる。この場合、例えば、プランジャー70のヘッド部に図8(a)に端面形状が示されるような径方向に突起したクシ歯を多数有するクシ歯状にすることができる。これにより、図8(a)に破線で示されるポット20の内壁20aに残留した樹脂に多数のクシ歯70aの角部分が繰り返し接触し、樹脂が内壁20aから引き離されるため、樹脂を確実にかき出すことができる。したがって、ポットの側壁に堆積した樹脂をより効果的に取り除くことが可能になる。また、樹脂モールド用のプランジャーにおけるヘッド部11aとシャフト部11bとの間にクシ歯70aを設けて、樹脂モールドを行いながら効率的にクリーニングできる構成を採用することもできる。
【0039】
本実施例によれば、プランジャーを回転させながら上下移動させるため、ポットの内壁に堆積した樹脂を効果的に取り除くことができる。このため、モールド装置からポットを取り外すことなくポットの内壁をクリーニングすることが可能である。したがって、ポットの側壁に堆積した樹脂を簡易に除去可能なプランジャー、モールド装置、および、モールド装置の制御方法を提供することができる。
【0040】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 プランジャー
11a ヘッド部
11b シャフト部
12 カム
14 カムフォロア
18a、18b、18c 平坦部
19a、19b、19c 段差部
20 ポット
20a 内壁
30 保持部
32 均等圧ユニット
40 樹脂(樹脂のかす)
50 上金型
60 下金型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8