特許第6134503号(P6134503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134503
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】検体処理装置および検体処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20170515BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20170515BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20170515BHJP
【FI】
   G01N35/04 B
   G01N35/10 A
   G01N35/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-255720(P2012-255720)
(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公開番号】特開2014-77772(P2014-77772A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-208305(P2012-208305)
(32)【優先日】2012年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007184
【氏名又は名称】あおい精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 照明
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03722790(US,A)
【文献】 特開2002−139490(JP,A)
【文献】 特開平09−127125(JP,A)
【文献】 特開昭58−223068(JP,A)
【文献】 特開平07−055815(JP,A)
【文献】 実開昭60−141559(JP,U)
【文献】 米国特許第03187182(US,A)
【文献】 特開2010−085125(JP,A)
【文献】 特開2004−212064(JP,A)
【文献】 特表2003−515139(JP,A)
【文献】 特開平10−142236(JP,A)
【文献】 特開2002−196006(JP,A)
【文献】 特開平03−296428(JP,A)
【文献】 特開昭55−085253(JP,A)
【文献】 特開2005−245973(JP,A)
【文献】 特開平08−220105(JP,A)
【文献】 特表2000−516194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口を有し検体を収容するカップを立位状態で保持するとともに、樹脂製で円状に構成された円盤部を有するホルダと、
前記ホルダを回転可能に支持するとともに、所定の搬送路に沿って送られるチェーン部材を有する搬送機構と、
前記搬送路の側部に設けられ、前記搬送路に回転可能に支持される前記ホルダの前記円盤部の外周面に当接した状態で回転することで前記ホルダを摩擦により追従して回転させる回転ローラを備え、前記ホルダに支持される前記カップを回転させることで前記カップに収容された前記検体を撹拌する、撹拌部と、
を備えることを特徴とする検体処理装置。
【請求項2】
前記搬送路の前記撹拌部よりも下流側に設けられ、前記カップ内の前記検体を分取する分取・分注部を備え、
前記ホルダは、前記カップの下部の外周部を保持する保持部を有するとともに、
前記カップは、直径30mm以上で、内部に前記検体を収容する空間を有する筒形状に構成され、上側が広くなるように拡径し、下部が前記ホルダの保持部に挿入されて立位状態で支持され、
前記撹拌における前記ホルダの回転速度は150〜200rpmであり、
前記分取・分注部は、撹拌後の前記カップの側面の所定位置を押圧して前記カップを傾動させる傾動部を備えることを特徴とする請求項1記載の検体処理装置。
【請求項3】
前記搬送機構は前記搬送路に沿うガイドレールを有し、
前記チェーン部材は、前記ガイドレールの下側で互いに連結される複数の連結駒を有し、
前記チェーン部材には支持孔を有する支持部が設けられ、
前記ホルダは、前記保持部が前記ガイドレールの上側に配されるとともに、前記保持部の下方に設けられ前記ガイドレールに案内される首部と、前記首部より下方に設けられ下方に突出し前記チェーン部材の前記支持孔に挿入される係合部と、を備え、
前記カップが前記チェーン部材上の前記ホルダに支持された状態で、前記カップの側部に表示される情報を読み取る読取装置と、を備えることを特徴とする請求項2記載の検体処理装置。
【請求項4】
上面開口を有し検体を収容するカップを、ホルダにて立位状態で保持するとともに、所定の搬送路に沿って送られるチェーン部材の所定箇所に前記ホルダを回転可能に支持した状態で、前記チェーン部材を搬送することと、
前記搬送路の側部に設けられ、前記搬送路に回転可能に支持される前記ホルダの外周面に当接した回転ローラを回転して、前記チェーン部材に支持される前記ホルダを摩擦により追従して回転させることにより前記ホルダに支持される前記カップを回転させることで前記カップに収容された前記検体を撹拌することと、
前記撹拌後の前記カップ内の前記上面開口にノズルを挿入して前記カップ内の前記検体を吸引することと、を備えることを特徴とする検体処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体搬送装置、検体処理装置、および検体搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば沈査、定性、生化などの検査において、尿などの検体を尿カップ等の検体容器に収容し、各種処理ステーションを通る所定の経路に沿って搬送する。尿カップの搬送機構としてはベルト式のコンベヤ機構が一般的であり、両側に設けられた搬送レールに係合するホルダをベルト上に載置しベルトを走行させて搬送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-013086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カップ状の検体容器の搬送では、カップの位置ずれによる傾斜・転倒を防止して立位状態を維持しながら搬送することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一形態にかかる検体処理装置は、上面開口を有し検体を収容するカップを立位状態で保持するとともに、樹脂製で円状に構成された円盤部を有するホルダと、前記ホルダを回転可能に支持するとともに、所定の搬送路に沿って送られるチェーン部材を有する搬送機構と、前記搬送路の側部に設けられ、前記搬送路に回転可能に支持される前記ホルダの前記円盤部の外周面に当接した状態で回転することで前記ホルダを摩擦により追従して回転させる回転ローラを備え、前記ホルダに支持される前記カップを回転させることで前記カップに収容された前記検体を撹拌する、撹拌部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
他の実施形態にかかる検体処理装置は、前記搬送路の前記撹拌部よりも下流側に設けられ、前記カップ内の前記検体を分取する分取・分注部を備え、前記ホルダは、前記カップの下部の外周部を保持する保持部を有するとともに、前記カップは、直径30mm以上で、内部に前記検体を収容する空間を有する筒形状に構成され、上側が広くなるように拡径し、下部が前記ホルダの保持部に挿入されて立位状態で支持され、前記撹拌における前記ホルダの回転速度は150〜200rpmであり、前記分取・分注部は、撹拌後の前記カップの側面の所定位置を押圧して前記カップを傾動させる傾動部を備えることを特徴とする。
【0007】
他の一形態に係る検体処理方法は、上面開口を有し検体を収容するカップを、ホルダにて立位状態で保持するとともに、所定の搬送路に沿って送られるチェーン部材の所定箇所に前記ホルダを回転可能に支持した状態で、前記チェーン部材を搬送することと、前記搬送路の側部に設けられ、前記搬送路に回転可能に支持される前記ホルダの外周面に当接した回転ローラを回転して、前記チェーン部材に支持される前記ホルダを摩擦により追従して回転させることにより前記ホルダに支持される前記カップを回転させることで前記カップに収容された前記検体を撹拌することと、前記撹拌後の前記カップ内の前記上面開口にノズルを挿入して前記カップ内の前記検体を吸引することと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
実施形態によれば、検体容器を立位状態に維持したまま搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る検体処理装置の説明図。
図2】同実施形態にかかる撹拌部を一部切欠して示す側面図。
図3】同実施形態にかかる搬送部の内部構造を示す側面図。
図4】同実施形態にかかる搬送部の内部構造を示す斜視図。
図5】他の実施形態にかかる検体処理装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態にかかる検体処理装置10について図1及び図2を参照して説明する。図1は本実施形態にかかる検体処理装置10の説明図、図2は撹拌部30の側面図であり、フレーム22等を破断して一部断面で示している。なお、各図では説明のため、適宜構成を拡大、縮小、省略して示している。図中矢印X,Y,Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示している。
【0011】
検体処理装置10は各種検査処理に先立って予め検体を撹拌、分取・分注する装置であり、例えば分析装置の前処理装置の1つとして用いられる。検体処理装置10は、所定の搬送パスに沿って検体容器としてのカップ11を搬送する搬送部20と、搬送されるカップ11をホルダ16毎回転させて検体の撹拌を行う撹拌部30(撹拌装置)と、撹拌の直後にカップ11から検体12を分取し、スピッツ等に分注する分取・分注部40と、各部の動作を制御する制御部50と、を備えている。さらに搬送パスの上流側や下流側には各種の処理部が設置されており、搬送されるカップ11またはカップ11内の検体に対して各種の処理が施されるようになっている。
【0012】
本実施形態では、検体12は尿であり、検体容器として筒状のカップ11を用いた。カップ11は例えば紙製であって、上面開口を有し、内部に尿を収容する空間を有する円筒形状に構成されている。カップ11は上側が広くなるように拡径し、下部がホルダ16の保持部17に挿入されて立位状態で支持され、搬送される。カップ11の外周側面には、検体の量を認識するための目盛11aや、検体の識別情報を表示するバーコード11b等の各種検体情報が表示されている。なお、本実施形態では一例として底部直径30〜100mm、上面開口部の直径50〜150mm、高さ30〜100mm程度のサイズのカップ11を用いた。
【0013】
図1及び図2に示すように、ホルダ16は、カップ11の下部の外側面を保持する保持部17と、保持部17の下に連続して設けられる首部18と、首部18の下に連続する大径の回転盤19と、を同軸的に一体に備えている。
【0014】
保持部17は上側が拡径する有底円筒状に構成されている。保持部17は樹脂製で有底円筒状を成す筒部17aと、筒部17aの外周の一部を被覆する金属製の外側層17bとを有している。筒部17aの内側の樹脂表面がカップ11の外周に密着し、カップ11を略鉛直の立位状態に維持したまま、円形の収容空間に保持するように構成されている。
【0015】
首部18は保持部17の下に連続して一体に成形され、保持部17の底部の中心から下方に突出するように連続して設けられている。首部18は搬送部20のガイドレール21間のスリット21aに沿って案内される。
【0016】
回転盤19(回転部)は、首部18の下に連続して設けられ、樹脂製で円盤状に構成された円盤部19aと、円盤部19aの中心から下方に突出する係合部19bとを備えている。円盤部19aの外周側面は、ローラ33の外周側面と当接して配置され、摩擦によりローラ33に追従して回転するように構成されている。
【0017】
係合部19bは回転軸に沿って下方に突出し、搬送部20のチェーンベルト23(チェーン部材)上に設けられた支持部24に回転可能に係合保持されている。
【0018】
図4に示すように、円盤部19aの下側には同軸であって、円盤部19aよりも小径で係合部19bよりも大径の円形部19dが突出して設けられている。この円形部19dの下面からピン状の係合部19bが下方に突出して設けられている。係合部19bをブロック25の支持孔25aに挿入した際に円形部19dの下面がブロック25に当接することでホルダ16の高さ位置が規制される。
【0019】
並列する複数のホルダ16のうちの約半数には、さらに円盤部19aとガイドレール21との間の距離を規制する規制プレート19cが装着され、円盤部19aの位置を規制している。規制プレート19cを1個置きに装着することで、ローラーチェーン70上に並列して固定される円盤部19aの位置が交互に上下方向にずれ、隣り合う円盤部19aの外周の一部が上下に重なるように配置した。すなわち、並列される複数のホルダ16において、約半数のホルダ16では規制プレート19cの上面と保持部17の下面との間にガイドレール21が係合し、約半数のホルダ16では、円盤部19aの上面と保持部17の下面との間にガイドレール21が係合する。
【0020】
なお、首部18の上端面から円形部19dの下端面までの距離は全てのホルダ16で同長さになるように揃えられ、ホルダ16及びカップ11の高さ位置は一定に揃えられる。
【0021】
搬送部20は、チェーン式の搬送機構であって、所定の搬送パスに沿う一対のガイドレール21を有するフレーム22と、搬送パスに沿って配されガイドレール21の裏側でホルダ16を係合保持した状態で移動するチェーンベルト23と、チェーンベルト23上にホルダを支持する支持部24と、チェーンベルト23を送り駆動する搬送モータやエアアクチュエータ等の駆動手段と、を備え、ホルダ16を搬送パスに沿って搬送する機能を有する。
【0022】
一対のガイドレール21間には搬送パスを規定するスリット21aが形成される。また、ガイドレール21はローラ33と回転盤19との対向部において側部が一部分切欠かれた窓部21bを有し、この窓部21bからローラ33が露出している。
【0023】
図3及び図4に内部構造を示すように、チェーンベルト23はローラーチェーン70であって、複数の連結駒70aが連結されて構成されている。各連結駒70aは、ローラ71と、軸体72と、ローラ71の両端に配される一対の内側プレート73と、内側プレート73より外側に配される一対の外側プレート74と、を備えて構成されている。
【0024】
各プレート73,74は平面視ひょうたん形状の板であって、軸体72が挿通する孔部を二つずつ備えている。ローラ71内に挿通される軸体72を中心にローラ71の両端にそれぞれ一対のプレート73,74がローラ71に内蔵されるブッシュを介して軸支される。内側プレート73と外側プレート74の一方の孔部が互いに1つの共通の軸体72に挿通されて軸支され、他方の孔部が互いに反対側に隣接する別の2つの軸体72にそれぞれ挿通されて軸支されることで、複数の連結駒70aが回動可能に複数連結される。
【0025】
ローラーチェーン70には所定のピッチで固定用プレート76が設けられている。固定用プレート76は上流側の軸体72の外側プレートの位置に配される外側片76aと、外側片から連続して内方に屈曲する屈曲片76bと、次の軸体72の内側プレートの位置に配置される内側片76cと、を連続して一体に有するプレートであって、ホルダ16を固定する箇所において軸体72の両端に一対の固定用プレート76がそれぞれ設けられる。
【0026】
この固定用プレート76の下流側の内側片76cと、次の連結駒70aの内側プレート73の上面に、支持部24が固定される。
【0027】
ローラーチェーン70の所定箇所には動力伝達手段としてのスプロケットがローラーチェーン70に噛み合って係合した状態で設けられている。搬送モータやエアアクチュエータなどの駆動手段によりスプロケットを回転駆動することで、ローラーチェーンが搬送パスに沿って送られ、この搬送によって、ローラーチェーン70上の所定箇所に支持されたホルダ16が搬送パスに沿って移動する。
【0028】
支持部24は、係合部19bが挿入支持される支持孔25aを有するブロック25を備え、固定用プレート76とその下流側に隣接する内側プレート73の上面にブラケット26を介して固定されている。ブラケット26は断面コ字状に屈曲しブロック25の両側部を挟む一対の側片26aと側片26aの下端縁を連結する底片を一体に有して構成されている。ブラケット26は上側の開口にブロック25を保持し、底片が固定用プレート76及び内側プレート73の上面にねじ留め固定され、両側の側片26aがブロック25の側部にねじ留め固定されることにより、ローラーチェーン70にブロック25を固定する。
【0029】
図4に示すように、所定のピッチで支持部24がチェーンベルト23上に固定され、そのブロック25の支持孔25aにホルダ16から下方に突出するピン状の係合部19bが挿入され、保持される。
【0030】
図2に示すように、一対のガイドレール21の下側に回転盤19が配され、ガイドレール21の上側に保持部17が配され、ガイドレール21間のスリット21aに案内されてホルダ16の首部18が移動可能な状態で、ホルダ16がフレーム22に係止されるとともに、回転盤19の下方において係合部19bがチェーンベルト23上の支持部24に係合保持される。
【0031】
撹拌部30は、検体12を収容するカップ11を立位状態で保持するホルダ16を回転させる回転機構部31を備える。回転機構部31は、制御部50に制御される撹拌モータ32と、撹拌モータ32に接続されて回転するローラ33とを備えている。ここでは、ローラ33の回転に追従して回転するホルダ16の円盤部19aが回転機構部31の動力伝達機能の一部を担っている。
【0032】
ローラ33は、樹脂製で円筒状に構成されている。ローラ33は、撹拌モータ32によって回転駆動され、樹脂製の外周面に当接した円盤部19aを回転させる動力伝達機構として機能する。
【0033】
図1に示すように、撹拌部30の側部には、バーコード読取装置34が設けられている。このバーコード読取装置34は、撹拌時のカップ11の回転初期に、カップ11の側部に付されたバーコード11bを検出し、表示された各種情報を検出する。
【0034】
分取・分注部40は、搬送パスにおいて撹拌部30の下流側に隣接して設けられている。分取・分注部40は、例えば撹拌後のカップ11を傾動させる傾動部41と、カップ11内の検体12を分取・分注するノズル42と、ノズル42を支持して動作する移動アーム43と、移動アーム43及びノズル42を作動させる駆動部と、を備えて構成され、制御部50の制御によって所定のタイミングで動作する。
【0035】
傾動部41は進退動可能な押圧片41aを備える。傾動部41は制御部50の制御によって所定のタイミングで押圧片41aを進退動させることにより、撹拌直後のカップ11の側面の所定位置を所定量押圧してカップ11を傾動させる。
【0036】
ノズル42は、検体12を所定量吸引及び吐出可能であり、上下動(進退動)可能に構成されている。ノズル42は制御部50の制御による移動アーム43の動作に伴って移動可能に構成されている。
【0037】
以下、本実施形態に係る検体処理装置10の動作について説明する。
【0038】
搬送部20においてフレーム22にホルダ16が回転可能に支持された状態で、制御部50によって搬送用の駆動手段を駆動し、チェーンベルト23を移送する。チェーンベルト23の移送に伴い、ホルダ16が立位状態のまま搬送パスに沿って移動する。
【0039】
例えばチェーンベルト23に噛み合うスプロケットを回転駆動し、チェーンベルト23を送り方向に移動させる。ローラーチェーン70に所定ピッチで設けられたプレート76,73上に固定されたブロック25に挿入支持されたホルダ16はローラーチェーン70の移動に伴って移送される。このとき、軸支されたホルダ16の位置ずれや傾斜・転倒を防止し、所定間隔で順次処理ステーションに立位状態を維持したままカップ11を送ることが可能となる。
【0040】
搬送パスには複数のカップ11が所定の間隔で保持され、チェーンベルト23の移送に伴って順次流れており、複数のカップ11に対して同時に並行して各種の処理が行われる。ここでは、一つのカップ11に着目して撹拌処理及び分取分注処理を順番に説明する。
【0041】
制御部50は、対象のカップ11が撹拌部30の処理ステーションに到達した時点で、チェーンベルト23の移動を一時停止する。そして、撹拌モータ32を駆動することにより、ローラ33を回転させる。ローラ33の外周面33aが回転盤19の円盤部19aの樹脂表面に当接した状態でローラ33が回転すると、摩擦により回転盤19がローラ33の回転に追従して回転することで、ホルダ16が回転し、ホルダ16に保持されたカップ11が立位状態に保持されたまま回転する。
【0042】
この回転により、カップ11内の検体12が全体的に撹拌される。なお、回転速度や時間の条件は、検体12の量等に応じて決定され、例えば飛散防止や所望の撹拌精度を満たすように設定する。本実施形態では例えば150〜200rpm程度の回転速度に設定した。
【0043】
本実施形態では、カップ11の回転時に、バーコード読取装置34にて、カップ11の側部に付されたバーコード11bを検出し、表示された各種情報を検出する。すなわち、撹拌用のカップ11の回転動作を利用して、側部のいずれかの部分に付されたバーコード11bの検出を行うことで、読取動作を効率的に行う。
【0044】
撹拌処理後に搬送部20を駆動してカップ11を下流の分取・分注部40に送る。対象のカップ11が分取・分注部40の処理ステーションに到達した時点で、一時停止する。なお、撹拌部30には次のカップ11が送られ、次のカップ11に対して上記と同様に撹拌処理が行われる。
【0045】
分取・分注部40において、制御部50により移動アーム43を駆動させてノズル42をカップ11の真上に移動させる。
【0046】
ノズル42の移動と並行して傾動部41によってカップ11の所定箇所を所定量押圧することで、カップ11を傾ける傾動動作を行う。カップ11が傾くと、内部の検体12がノズル42の位置に集められ、検体12の深さが深くなるため、分取しやすくなる。
【0047】
次に所定のタイミングでノズル42を下降し、傾斜状態の撹拌後のカップ11に挿入する。この挿入状態で吸引動作を行い、内部の検体12を所定量分取する。
【0048】
分取後にノズル42を上昇させてカップ11から抜き出し、移動アーム43によって所定の分注ポイントまで移動させ、他のスピッツ等の容器に検体12を吐出して分注する。以上により撹拌処理及び分取・分注処理が完了する。
【0049】
なお、分取処理の終了後には傾動部41の押圧片41aを退避させてカップ11を立位状態に戻し、所定のタイミングで搬送部20を駆動することによりカップ11を下流側に送る。この時、上流側から撹拌処理後の別のカップ11が分取・分注部40に送られる。以上の処理を繰り返し、複数のカップ11に対して順次処理を行う。
【0050】
本実施形態にかかる検体処理装置10によれば、カップ11を立位状態に維持したまま複雑な搬送パスを移動させることができる。すなわち、ローラーチェーン70の所定箇所にホルダを個々に軸支した構造としたことにより、ホルダ16がローラーチェーン70の所定箇所に軸支され、搬送方向や側方に移動するのを防止できる。またカップ11の下部の周囲を囲んで密着保持する保持部17によって垂直な立位状態を保持しつつ、回転力を伝達することが可能となる。
【0051】
さらに、搬送部20をチェーン構造としたことにより、湾曲して往復するような複雑な搬送パスに適用した場合であっても、ホルダ16の位置ずれや傾動を防止してスムーズな搬送が可能となる。例えばベルトに載置して送るベルトコンベヤ式の場合には、搬送方向の変更や往復動作の構造が複雑となるが、本実施形態のチェーン構造によれば搬送方向の変更や往復動作も単純な構造で容易に実現できる。
【0052】
また、搬送部20ではホルダ16を上からブロック25に挿入あるいはブロック25から上に抜き出すだけでホルダ16の着脱が可能であり、複数種類のホルダ16に適用できるため、様々なサイズの検体容器に適用できる。
【0053】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0054】
例えば他の実施形態として図5に示す検体処理装置100は、装置100の上面に矩形の板状の搬送フレーム61を備え、この搬送フレーム61の面内において複数回搬送方向が変化するループ状の搬送パスAが形成されている。搬送パスAに沿って所定位置に、撹拌部30、分取・分注部40、搬入部、搬出部等の各種処理ステーションが設けられている。
【0055】
この実施形態では搬送パスAに沿うスリット21aが搬送フレーム61に形成され、このスリット21aの両側部のフレーム部分がガイドレール21を構成する。このフレーム61の下側(裏側)で、搬送パスAに沿って、複数の連結駒70aが繋がれたループ状のローラーチェーン70(チェーンベルト23)が配されている。
【0056】
図5に示すように搬送パスAの各湾曲部A1の内側にはローラーチェーン70に噛み合うスプロケット81が配設されている。スプロケット81は外周にローラーチェーン70に噛み合う歯部を有し、その回転軸が駆動手段に接続されている。なお、図5では2か所のスプロケット81のみを示し、他の湾曲部におけるスプロケット81を省略しているが、実際には図5に示す搬送パスAに設けられた12か所の湾曲部全てにスプロケット81が配置されている。このスプロケット81は、ローラーチェーン70の位置決め機能と駆動力伝達機能を有し、ローラーチェーン70がスプロケット81に噛み合った状態で、搬送モータやエアアクチュエータ等の駆動手段によっていずれかのスプロケット81を回転駆動することで、ローラーチェーン70が搬送パスAに沿ってスムーズに送られる。
【0057】
この他、例えば上記実施形態では検体及び検体容器として尿と、カップを例示したが、これに限られるものではなく他の検体及び検体容器にも適用可能である。
【0058】
この他、上記実施形態に例示された各構成要素を削除してもよく、各構成要素の形状、構造、材質等を変更してもよい。上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(1)
検体を収容するカップ状の検体容器を立位状態で保持するホルダと、
所定の搬送路に沿って配されるチェーン部材と、
前記チェーン部材の所定箇所に設けられ、前記ホルダを支持する支持部と、
を備えることを特徴とする検体搬送装置。
(2)
前記ホルダを所定の搬送路に沿って案内するガイドレールを備え、
前記検体容器は前記検体を収容する筒状のカップであり、
前記チェーン部材は互いに連結される複数の連結駒を有し前記ガイドレールの下側で前記搬送路に沿って配され、
前記チェーン部材には支持孔を有する支持部が設けられ、
前記ホルダは、前記ガイドレールの上側で前記カップの下部の外周部を保持する保持部と、前記保持部の下方に設けられ前記ガイドレールに案内される首部と、前記首部より下方に設けられ下方に突出し前記チェーン部材の前記支持孔に挿入される係合部と、を備えることを特徴とする検体搬送装置。
(3)
(1)または(2)に記載の検体搬送装置と、
前記搬送路の側部に設けられ、前記検体ホルダを立位状態で回転させて内部の前記検体を撹拌する撹拌部と、
前記搬送路において前記撹拌部の下流側に設けられ、前記検体容器の前記検体を分取し、他の容器に分注する分取・分注部と、を備えたことを特徴とする検体処理装置。
(4)
検体を収容するカップ状の検体容器を、ホルダにて立位状態で保持するとともに、
所定の搬送路に沿って配されるチェーン部材の所定箇所に前記ホルダを支持した状態で、前記チェーン部材を送り駆動することを特徴とする検体搬送方法。
【符号の説明】
【0059】
10…検体処理装置、11…カップ、12…検体、16…ホルダ、17…保持部、19…回転盤(回転体)、19a…円盤部、19b…係合部、19c…規制プレート、20…搬送部(検体搬送装置)、21…ガイドレール、21a…スリット、21b…窓部、22…フレーム、23…チェーンベルト、24…支持部、25a…支持孔、25…ブロック、26…ブラケット、30…撹拌部(撹拌装置)、31…回転機構部、32…撹拌モータ、33…ローラ、33a…外周面、40…分取・分注部、41…傾動部、41a…押圧片、42…ノズル、43…移動アーム、50…制御部、61…搬送フレーム、70…ローラーチェーン、70a…連結駒、71…ローラ、72…軸体、73…内側プレート、74…外側プレート、76…固定用プレート、76a…外側片、76b…屈曲片、76c…内側片、81…スプロケット、100…検体処理装置。
図1
図2
図3
図4
図5