特許第6134519号(P6134519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134519
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】角膜内皮細胞撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   A61B3/12 D
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-10574(P2013-10574)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-140483(P2014-140483A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】秋山 宏
(72)【発明者】
【氏名】石原 睦隆
(72)【発明者】
【氏名】原田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】大江 広樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 太一
(72)【発明者】
【氏名】中島 将
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−327635(JP,A)
【文献】 特開2003−175004(JP,A)
【文献】 特開2012−213524(JP,A)
【文献】 特開平11−070079(JP,A)
【文献】 特開2007−307384(JP,A)
【文献】 特開2012−213523(JP,A)
【文献】 特開平10−127583(JP,A)
【文献】 特開平08−056906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の角膜に向けて斜めからスリット光を照射する照明光学系と、前記角膜の角膜内皮細胞からの反射光を受光して角膜内皮細胞を撮影する撮影光学系と、前記被検眼の視軸を誘導させ、固視をさせる為の固視投影系と、前記被検眼の視軸を固視標に固定させた状態で、前記撮影光学系と前記被検眼とを相対変位させ、前記撮影光学系による撮影位置を変更させる撮影位置変更手段を具備し、前記撮影光学系と前記被検眼とを相対変位させて複数の画像を取得し、隣接する画像は所定のオーバラップ部分を有する様撮影され、前記複数の画像の前記オーバラップ部分に基づきパノラマ画像を作成し、該パノラマ画像に基づき密度の計算が行われることを特徴とする角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項2】
前記固視投影系の固視標は複数のLEDを有すると共に、該LEDを点滅する点滅手段が設けられ、少なくとも2個のLEDが固視標の光軸を中心としてスリット光の幅方向に所定の間隔で配置され、前記点滅手段により前記LEDが選択的に点灯することで、前記被検眼の視軸が撮影光学系の光軸に対して変位し、撮影位置が変更される請求項1の角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項3】
前記固視投影系に対し、相対的に平行移動可能に撮像部が設けられ、該撮像部が前記固視投影系に対して相対変位することで、撮影位置が変更される請求項1の角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項4】
前記固視投影系に対し、撮像部が角膜曲率中心を中心に回転可能に設けられ、該撮像部が前記固視投影系に対して相対回転することで、撮影位置が変更される請求項1の角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項5】
制御部を更に具備し、該制御部は、隣接する画像の前記オーバラップ部分に基づき隣接する画像を合成して前記パノラマ画像を作成し該パノラマ画像に基づき内皮細胞の健全性が判断される請求項1〜請求項4のいずれかの角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記パノラマ画像中の一部を特定するフレームを形成可能であり、内皮細胞の健全性は前記フレーム内の内皮細胞で判断される請求項5の角膜内皮細胞撮影装置。
【請求項7】
制御部を更に具備し、該制御部は、前記パノラマ画像中に前記複数の画像全てに掛渡るフレームを形成可能であり、該フレーム内の内皮細胞を基に密度の計算が行われる請求項1〜請求項5のいずれかの角膜内皮細胞撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は角膜の健全性を診断する為の角膜の内皮細胞を撮影する角膜内皮細胞撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
角膜内皮細胞撮影は照明光を角膜に対して斜め方向から照射し、角膜内皮で反射した光をCCD等の受光素子で捉えて撮影される。
【0003】
撮影の際に使用される照明光は、角膜表面からの反射光と角膜内皮からの反射光とを分離する為、幅約0.25mmのスリット光が用いられる。この為、1回に撮影できる範囲は、このスリット幅に制限されており、おおよそ0.25mm幅の範囲しか撮影できなかった。
【0004】
角膜内皮は再生不能な内皮細胞によって形成されており、内皮細胞の健全性は、内皮細胞の大きさ、形状によって診断される。又、内皮細胞の大きさは、内皮細胞の密度によって判定することができ、形状は内皮細胞の面積の変動によって判断できる。内皮細胞の密度は、撮影された画像内の内皮細胞の個数を数えることで、撮影した範囲と個数により統計値としての内皮細胞の密度が得られる。
【0005】
ところが、内皮細胞の健全性が損われた場合内皮細胞が巨大化し、或は内皮細胞が損傷を受けている場合等、内皮細胞が撮影された画像内で完全に捉えられる数が減少し、内皮細胞の密度が得られたとしても、統計値としての信頼性、即ち診断の信頼性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−236982号公報
【特許文献2】特開平6−205743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、内皮細胞の健全性の診断に於ける信頼性を向上させる角膜内皮細胞撮影装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被検眼の角膜に向けて斜めからスリット光を照射する照明光学系と、前記角膜の角膜内皮細胞からの反射光を受光して角膜内皮細胞を撮影する撮影光学系と、前記被検眼の視軸を誘導させ、固視をさせる為の固視投影系と、前記被検眼の視軸を固視標に固定させた状態で、前記撮影光学系と前記被検眼とを相対変位させ、前記撮影光学系による撮影位置を変更させる撮影位置変更手段を具備し、前記撮影光学系と前記被検眼とを相対変位させて複数の画像を取得し、隣接する画像は所定のオーバラップ部分を有する様撮影される角膜内皮細胞撮影装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記固視投影系の固視標は複数のLEDを有すると共に、該LEDを点滅する点滅手段が設けられ、少なくとも2個のLEDが固視標の光軸を中心としてスリット光の幅方向に所定の間隔で配置され、前記点滅手段により前記LEDが選択的に点灯することで、前記被検眼の視軸が撮影光学系の光軸に対して変位し、撮影位置が変更される角膜内皮細胞撮影装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記固視投影系に対し、相対的に平行移動可能に前記撮像部が設けられ、該撮像部が前記固視投影系に対して相対変位することで、撮影位置が変更される角膜内皮細胞撮影装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記固視投影系に対し、前記撮像部が角膜曲率中心を中心に回転可能に設けられ、該撮像部が前記固視投影系に対して相対回転することで、撮影位置が変更される角膜内皮細胞撮影装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、制御部を更に具備し、該制御部は、隣接する画像の前記オーバラップ部分に基づき隣接する画像を合成し、合成画像に基づき内皮細胞の健全性が判断される角膜内皮細胞撮影装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記制御部は、合成画像中の一部を特定するフレームを形成可能であり、内皮細胞の健全性は前記フレーム内の内皮細胞で判断される角膜内皮細胞撮影装置に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被検眼の角膜に向けて斜めからスリット光を照射する照明光学系と、前記角膜の角膜内皮細胞からの反射光を受光して角膜内皮細胞を撮影する撮影光学系と、前記被検眼の視軸を誘導させ、固視をさせる為の固視投影系と、前記被検眼の視軸を固視標に固定させた状態で、前記撮影光学系と前記被検眼とを相対変位させ、前記撮影光学系による撮影位置を変更させる撮影位置変更手段を具備し、前記撮影光学系と前記被検眼とを相対変位させて複数の画像を取得し、隣接する画像は所定のオーバラップ部分を有する様撮影されるので、1つの画像による角膜内皮細胞の健全性が判断できると共に隣接する画像を合成することも可能となり、角膜内皮細胞の状態に対応した適正な判断が可能となる。
【0015】
又本発明によれば、前記固視投影系の固視標は複数のLEDを有すると共に、該LEDを点滅する点滅手段が設けられ、少なくとも2個のLEDが固視標の光軸を中心としてスリット光の幅方向に所定の間隔で配置され、前記点滅手段により前記LEDが選択的に点灯することで、前記被検眼の視軸が撮影光学系の光軸に対して変位し、撮影位置が変更されるので、可動部分がなく、而も短時間で複数画像が取得でき、作業性が向上すると共に時間的変化のない画像を取得でき、健全性の判断の信頼性が向上する。
【0016】
又本発明によれば、前記固視投影系に対し、相対的に平行移動可能に前記撮像部が設けられ、該撮像部が前記固視投影系に対して相対変位することで、撮影位置が変更されるので、隣接する複数の部位の画像の取得が可能となり、健全性の判断を広範囲の部分に亘って行うことができ健全性の判断の信頼性が向上する。
【0017】
又本発明によれば、前記固視投影系に対し、前記撮像部が角膜曲率中心を中心に回転可能に設けられ、該撮像部が前記固視投影系に対して相対回転することで、撮影位置が変更されるので、隣接する複数の部位の画像の取得が可能となり、健全性の判断を広範囲の部分に亘って行うことができ健全性の判断の信頼性が向上する。
【0018】
又本発明によれば、制御部を更に具備し、該制御部は、隣接する画像の前記オーバラップ部分に基づき隣接する画像を合成し、合成画像に基づき内皮細胞の健全性が判断されるので、広範囲に亘る内皮細胞を対象とでき、判断の対象となる内皮細胞の数が増大し、健全性の判断の信頼性が向上する。
【0019】
更に又本発明によれば、前記制御部は、合成画像中の一部を特定するフレームを形成可能であり、内皮細胞の健全性は前記フレーム内の内皮細胞で判断されるので、合成画像で内皮細胞の健全性を判断する最適な部分を選択でき、健全性の判断の信頼性が向上するという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例に係る角膜内皮細胞撮影装置の概略構成図である。
図2】該角膜内皮細胞撮影装置に於けるXYアライメント投影系、固視投影系を示す概略構成図である。
図3】前記固視投影系に用いられる固視標の一例である固視光源の説明図である。
図4】前記角膜内皮細胞撮影装置の制御装置の概略構成図である。
図5】(A)(B)(C)は固視光源の点灯状態を変化させた場合の、視軸と撮影部の光軸の方向、位置との関係を示す説明図である。
図6】(A)(B)(C)はそれぞれ、前記角膜内皮細胞撮影装置で得られる画像を示す図である。
図7図6で示される図を合成したパノラマ画像である。
図8】(A)(B)(C)は固視標を固定し、撮像部をXYZ方向に微小移動させて内皮画像を取得する場合の説明図である。
図9】(A)(B)(C)は固視標を固定し、撮像部を角膜の曲率中心を中心として回転移動させて内皮画像を取得する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0022】
先ず、本発明の実施例に係る角膜内皮細胞撮影装置の概略構成について、図1図3により説明する。
【0023】
図1中、Eは被検眼、2はXYZの三軸方向に移動可能な装置本体を示している。該装置本体2の内部に、前眼部観察光学系3と、撮影用照明光学系4と、撮影光学系5と、Zアライメント投影系6と、Zアライメント検出系7とを有している。
【0024】
更に、図2に示される様に、前記装置本体2の内部にはXYアライメント投影系8、固視投影系9が設けられ、XYアライメント検出系10は前記前眼部観察光学系3と兼用となっている。
【0025】
更に、構成を説明する。
【0026】
図1に於いて、前記前眼部観察光学系3は左右の被検眼Eに対応して配設され、前記前眼部観察光学系3の主光軸O1はそれぞれ前記被検眼Eの光軸と合致する様に設けられ、前記主光軸O1は前記被検眼Eの角膜の頂点Pを通過する様に設定される。
【0027】
前記主光軸O1上に被検眼E側からハーフミラー15、対物レンズ16、受光素子17が設けられ、前記主光軸O1に対して挿脱可能な遮光板18が設けられている。前記受光素子17には、CCD素子が用いられ、又、該受光素子17は前記対物レンズ16に関して被検眼Eの角膜Cと共役の位置に配置されている。前記撮影光学系5及び前記受光素子17等は撮像部19を構成する。
【0028】
前記遮光板18は、前眼部観察時には前記主光軸O1から退避し、且つ、後述の角膜内皮細胞撮影時には光路中に挿入される。
【0029】
前記撮影用照明光学系4は、前記主光軸O1に対して所定角度、例えば17゜〜22゜のいずれかの角度で傾斜し、前記頂点Pを通過する投光光軸O2を有し、該投光光軸O2上に被検眼Eから離反する位置から撮影用照明光源21、集光レンズ22、スリット板23、ダイクロイックミラー24、対物レンズ25が設けられている。
【0030】
前記撮影用照明光源21としては、可視光、例えば、緑色光を発する発光ダイオード(LED)が用いられる。前記スリット板23はスリット孔が穿設されており、前記撮影用照明光源21から発せられた可視光がスリット光として、照射される。又、前記スリット板23で形成されるスリット幅は、前記角膜C表面で反射された反射光と内皮からの反射光とが分離できる幅に制限される。
【0031】
前記Zアライメント投影系6は前記ダイクロイックミラー24によって分岐される光軸O3上に光源26、集光レンズ27、スリット板28が設けられている。前記光源26としては、赤外光を射出する発光ダイオード(LED)が用いられる。
【0032】
前記ダイクロイックミラー24は緑色光を透過し、赤外光を反射する様になっている。又、前記スリット板23及び前記スリット板28と前記角膜Cとは前記対物レンズ25に関して共役となっている。
【0033】
前記撮影光学系5は、前記主光軸O1に対して前記投光光軸O2に関し対称となっている撮影光軸O4を有し、該撮影光軸O4は前記頂点Pを透過する。
【0034】
該撮影光軸O4上には、前記被検眼E側から対物レンズ31、ダイクロイックミラー32、ミラー34を有し、該撮影光軸O4は前記ミラー34で変更され、更に撮影光軸O4上には焦点調整用のリレーレンズ35、ミラー37が設けられ、該ミラー37で反射された光束は前記受光素子17に結像される様になっている。前記リレーレンズ35を通過した撮影光軸O4には遮蔽板36が挿脱可能となっている。又、前記ダイクロイックミラー32は可視光を透過させて赤外光を反射する透過特性を有する。前記リレーレンズ35は、レンズ駆動機構39によって光軸方向に移動可能となっている。
【0035】
前記ダイクロイックミラー32で反射され偏向される光軸O5上には受光センサ38が設けられ、該受光センサ38と前記角膜Cとは前記対物レンズ31に関し共役となっている。前記ダイクロイックミラー32は赤外光を反射し、緑色光を透過する光学特性を有しており、前記光源26で射出され、前記角膜Cで反射された赤外光を前記受光センサ38に導く。前記ダイクロイックミラー32、前記受光センサ38は前記Zアライメント検出系7を構成する。
【0036】
前記ハーフミラー15で分岐された光軸O6上にはリレーレンズ41、ダイクロイックミラー42が設けられ、更に該ダイクロイックミラー42の通過光軸上には固視光源43が設けられている。
【0037】
該固視光源43は、図3に示される様に、発光素子保持板44に複数の発光ダイオード(LED)45が設けられたものである。該LED45は、前記光軸O6の通過位置を中心とし、スリット光の幅方向に複数、例えば2個又は3個(図示では3個45a,45b,45c)配設され、更に前記光軸O6の通過位置を中心とした円周上に所定角度ピッチで配設される。図示では、スリット幅方向に3、2つの同心円上に8及び6の前記LED45が配置された例が示されている。前記複数のLED45は、可視光、例えば緑色光を発光し、個々に独立して点灯可能となっている。
【0038】
尚、幅方向に設けられた前記LED45a,45b,45cのピッチは、被検者が前記LED45a,45b,45cを固視した場合に、前記撮影光学系5を介し前記受光素子17(撮像部19)で得られる内皮画像が所要範囲でオーバラップする様に設定される。
【0039】
前記ダイクロイックミラー42で反射された光軸上には、リレーレンズ47、XYアライメント用光源46が設けられている。該XYアライメント用光源46には、赤外光を発する発光ダイオードが用いられる。前記リレーレンズ47、前記XYアライメント用光源46等は、前記XYアライメント投影系8を構成する。
【0040】
前記受光センサ38が受光した結果、及び前記受光素子17が受光した結果は、アライメント検出部48で検出され、検出結果は制御部49に出力される。該制御部49は検出結果に基づき本体駆動部52(図4参照)を制御し、前記装置本体2を、XYZの所要の方向に移動させ、被検眼Eと前記装置本体2とのアライメントを実行する。
【0041】
図4は、角膜内皮細胞撮影装置の制御装置51の概略を示している。
【0042】
該制御装置51は、主に前記撮像部19、前記アライメント検出部48、前記固視光源43、前記本体駆動部52、記憶部53、表示部54、操作部55を具備している。
【0043】
前記アライメント検出部48からアライメント検出結果が入力されると、前記制御部49は検出結果に基づき前記本体駆動部52を駆動し、前記装置本体2をアライメントさせる方向に変位させる。又、前記制御部49は前記撮像部19及び前記固視光源43を同期制御し、前記LED45a,45b,45cの個々の点灯を制御し、合わせて前記撮像部19による内皮細胞の画像を取得する。又、前記撮像部19で取得された画像は前記制御部49に送出され、所要の画像処理がなされ、前記記憶部53に格納され、或は前記表示部54に表示される。前記操作部55から前記制御部49に、撮影に必要な条件、撮影開始等の指令が入出力される。
【0044】
尚、前記LED45の点灯位置が変ることで、被検者の視軸が移動し、前記撮像部19(主光軸O1)に対して被検眼Eが相対変位するので、前記撮像部19による撮影位置が移動する。ここで、前記固視光源43、前記制御部49等は、撮影位置変更手段を構成する。
【0045】
以下、角膜内皮細胞撮影装置の作用について説明する。
【0046】
先ず、前記光源26を点灯し、前記角膜Cでの反射光を前記受光センサ38により受光し、該受光センサ38上での受光位置と基準位置との偏差を求め、該偏差が0になる様にZ方向に前記装置本体2を変位させる。尚、前記Zアライメント投影系6から射出される検出光は、スリット状であるので、前記受光センサ38はスリット光の幅方向に延びるラインセンサとしてもよい。
【0047】
Zアライメントが完了した後、或はZアライメントと並行して前記XYアライメント用光源46から点状の検出光が射出され、前記角膜Cで反射され、反射された検出光は前記受光素子17で受光され、該受光素子17上での受光位置と基準位置との偏差が求められる。該偏差が0になる様にX方向又はY方向に前記装置本体2を変位させ、アライメントを実行する。
【0048】
アライメント完了後、角膜内皮撮影が開始される。
【0049】
前記固視光源43の中心に位置する前記LED45a,45b,45cが所定の時間間隔で1つずつ点灯される。更に、前記撮影用照明光源21が前記LED45a,45b,45cの点灯と同期して点灯され、前記スリット板23を経てスリット光となった照明光が前記角膜Cに照射される。
【0050】
前記LED45a,45b,45cの一つが点灯されることで、被検者の視軸O7(図5参照)が点灯された1つ、例えばLED45aが点灯され、LED45aに固視され、その時の被検眼Eの状態での内皮撮影が行われる。
【0051】
図5(A)は前記視軸O7がLED45aに固視されたことで、前記視軸O7が被検眼Eに対する前記撮像部19の光軸の方向、位置からずれた状態を示している。又図5(B)はLED45bが点灯された時、図5(C)はLED45cが点灯された時の前記撮像部19の光軸の方向、位置と前記視軸O7との関係を示している。尚、図中59は前記撮像部19の光軸の方向、位置を示す。
【0052】
点灯する前記LED45a,45b,45cが変ることで、被検者の固視する方向が前記LED45a,45b,45cの間隔分(ピッチ分)ずれる。個々に点灯した時の内皮での反射光が前記対物レンズ31、前記ミラー34、前記リレーレンズ35、前記ミラー37を経て前記受光素子17に入射する。該受光素子17からの画像信号を取得し、内皮を撮影する。撮影した画像は、前記LED45a,45b,45cの1つが点灯して得られる画像であり、且つ点灯毎に取得されたものである。
【0053】
図6は、取得された画像であり、図6(A)はLED45aを点灯して取得した画像57a、図6(B)はLED45bを点灯して取得した画像57b、図6(C)はLED45cを点灯して取得した画像57cを示している。取得された画像は、前記表示部54に表示される。
【0054】
上記した様に、前記LED45a,45b,45cは、スリット光の幅方向に位置がずれており、例えば位置ずれの角度は1.75゜であり、隣接する画像は幅方向のずれの角度に対応してずれていると共に20%程度オーバラップする様に前記LED45a,45b,45cのずれのピッチが設定されている。
【0055】
図7は、上記した3の画像をオーバラップ部分を用いて画像処理によって合成した画像(パノラマ画像)である。尚、合成する画像は、前記LED45a,45b,45cそれぞれの点灯に対応して取得した3枚の画像であってもよく、或は短時間の間にそれぞれ複数枚取得し、解像度のよいものを3枚選んだものであってもよい。複数枚画像を取得した場合は、画像の選択は前記制御部49に行わせてもよく、或は検者が前記表示部54に表示された画像に基づき判断してもよい。
【0056】
合成することで広範囲の内皮細胞の写真が得られる。パノラマ画像中の内皮細胞の数を数え、更に内皮細胞の密度を求めることで、充分な内皮細胞の数に基づく内皮細胞の密度が得られ、信頼性が高い。
【0057】
尚、内皮細胞の数を数えるのは、前記制御部49によって実行させてもよい。この場合、数える対称となる内皮細胞は細胞膜が閉じられていることを条件とし、細胞膜が閉じられている内皮細胞を数え、又数えた内皮細胞が占めるピクセル(前記受光素子17の画素)の数を数えることで面積が算出できる。
【0058】
取得した画像に基づく診断結果として、前記表示部54に内皮細胞の密度を表示すると共に該密度を算出した時の内皮細胞の個数を表示する様にすれば、内皮細胞の密度から内皮細胞の健全性が示され、内皮細胞の個数から診断の信頼性が示される。
【0059】
尚、パノラマ画像の一部を用いて、内皮細胞の密度、内皮細胞の個数を求めてもよい。例えば、前記操作部55からフレーム(枠)58を前記パノラマ画像中に表示させ、更に診断に適した部分を前記フレーム58で指定し、該フレーム58に含まれる範囲の内皮細胞の数、密度を求める様にしてもよい。
【0060】
又、前記固視光源43で周辺部、例えばLED45nを点灯することで、被検眼E中心から外れた周辺部の画像を取得できる。内皮細胞の中心部の損傷が大きく、周辺部の内皮細胞の状態を参考にする場合等に用いられる。
【0061】
次に、上記実施例では、固視標が複数のLED45を有し、該LED45の点灯位置を変えることで、撮影場所を変更したが、他の実施例として、固視標を固定とし、前記撮像部19を前記固視投影系9に対して相対移動可能に構成し、撮影部の光軸を平行移動する撮影部移動駆動部を設ける。被検者の視軸を前記固視標により一定とし、前記撮影部移動駆動部により前記撮影部をXYZ方向に微小平行移動させてもよい。又、前記制御部49は前記撮影部移動駆動部による撮影部の平行移動と前記撮像部19との撮影とを同期制御する。
【0062】
光軸を平行移動した場合は、図8に示されている。図8中、倒立3角59は、被検眼Eに対する前記撮像部19の光軸の方向、位置を示している。
【0063】
又、固視標を固定とし被検者の前記視軸O7を一定とし、前記撮像部19を前記固視投影系9に対して相対移動可能とする。前記撮影部移動駆動部は、撮影部の光軸を被検者の角膜Cの曲率中心を中心として微小回転させ、撮影位置を変更してもよい。又、前記制御部49は前記撮影部移動駆動部による撮影部の回転と前記撮像部19との撮影とを同期制御する。
【0064】
図9中の倒立3角59は、図8と同様、被検眼Eに対する前記撮像部19の光軸の方向、位置を示している。図9で示される例は、中心からずれた画像について歪みがなくなり、合成した場合の精度が向上する。
【0065】
図8図9で示す例は、固視標を固定し、前記撮像部19を撮影部移動駆動部(図示せず)により変位させ、前記被検眼Eと前記撮像部19とを相対変位させ、撮影位置を変更している。
【0066】
ここで、前記撮像部19、前記撮影部移動駆動部等は、撮影位置変更手段を構成する。
【0067】
尚、上記説明では3枚の画像を取得してパノラマ画像を合成したが、2枚でパノラマ画像を合成しても、4枚以上の画像でパノラマ画像を合成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
2 装置本体
3 前眼部観察光学系
4 撮影用照明光学系
5 撮影光学系
6 Zアライメント投影系
7 Zアライメント検出系
8 XYアライメント投影系
9 固視投影系
10 XYアライメント検出系
15 ハーフミラー
16 対物レンズ
17 受光素子
19 撮像部
21 撮影用照明光源
23 スリット板
24 ダイクロイックミラー
26 光源
28 スリット板
42 ダイクロイックミラー
43 固視光源
45 LED
46 XYアライメント用光源
48 アライメント検出部
49 制御部
51 制御装置
52 本体駆動部
53 記憶部
55 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9