特許第6134531号(P6134531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6134531-定量吐出システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134531
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】定量吐出システム
(51)【国際特許分類】
   H01G 13/00 20130101AFI20170515BHJP
【FI】
   H01G13/00 381
   H01G13/00 371H
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-32589(P2013-32589)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-165220(P2014-165220A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107240
【氏名又は名称】ジェーシーシーエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩司
(72)【発明者】
【氏名】三島 弘邦
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 慶一
(72)【発明者】
【氏名】清水 俊佐
【審査官】 堀 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−134047(JP,A)
【文献】 特開平08−115716(JP,A)
【文献】 特開平06−318535(JP,A)
【文献】 特開昭60−080215(JP,A)
【文献】 特開2007−335181(JP,A)
【文献】 特開2011−119088(JP,A)
【文献】 特開平11−126598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/02
H01G 2/08
H01G 2/24−4/015
H01G 4/02−4/10
H01G 4/14−4/22
H01G 4/224
H01G 4/255−4/40
H01G 9/00
H01G 9/02−9/022
H01G 9/028−9/035
H01G 9/07
H01G 9/21
H01G 9/26−17/00
H01G 13/00
H01M 2/36−2/40
H01M 10/00−10/04
H01M 10/06−10/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品が配置されるチャンバーと、
該チャンバーが圧力値P1まで減圧された状態で前記チャンバー内の物品に液状物を定量吐出する吐出装置と、
を有し、
前記吐出装置は、吐出口が前記チャンバー内で開口する吐出路と、該吐出路の基端側に接続する貯液室と、該貯液室内の上側空間に接続する給液路と、該給液路の基端側に接続して当該給液路を介して前記貯液室に前記液状物を定量供給する供給部と、前記チャンバー内と前記貯液室内の上側空間とを連通させる連通路と、前記給液路に設けられた第1バルブと、前記吐出路に設けられた第2バルブと、を備え、
前記チャンバー内の圧力が圧力値P1より高い圧力値P2のとき、前記第1バルブを開状態とし、前記第2バルブを閉状態とした状態で、前記供給部が前記貯液室に前記液状物を定量供給し、
前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉状態とした状態で前記チャンバー内の圧力を前記圧力値P1にしたときには、前記第2バルブを開状態にして、前記貯液室の液面位置が前記吐出口の高さ位置と同一となるまで前記吐出口から前記物品に前記液状物が供給されることを特徴とする定量吐出システム。
【請求項2】
前記圧力値P2は大気圧であることを特徴とする請求項1に記載の定量吐出システム。
【請求項3】
1つの前記チャンバーに対して、前記吐出装置が複数、設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の定量吐出システム。
【請求項4】
前記物品は、電解コンデンサ用、電気二重層コンデンサ用、または電池用の電気化学素子であり、前記液状物は、前記電気化学素子の間隙に含浸される電解液であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の定量吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧雰囲気中に配置された物品に液状物を定量吐出する定量吐出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサ用の素子、電気二重層コンデンサ用の素子、電池用の素子等の物品に液状物を含浸する際には、含浸前の素子を電解液中に浸漬する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、特許文献1には、素子を電解液から引き上げた後、含浸室を減圧し、素子に含浸された電解液の一部を素子から垂れさせて素子から除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−109162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、素子から余剰な電解液を除去することができるが、最終的に素子に含浸されている電解液の量を正確には制御できないという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明者は、減圧雰囲気中に配置された素子等の物品に液状物を定量吐出する定量吐出システムを検討している。かかる定量吐出システムによれば、物品に一定量の液状物を供給することができるので、物品に対する含浸量等を制御することができる。ここで、本発明者が最初に案出した定量吐出システムは、図3に示すように、物品Wが配置されるチャンバー41と、チャンバー41内の物品Wに液状物Lを定量吐出する吐出装置40とを有しており、吐出装置40は、吐出口430がチャンバー41内で開口する吐出路43と、吐出路43に接続して吐出路43に液状物Lを定量供給する供給部42と、吐出路43の吐出口430と供給部42との間に設けられたバルブ46とを有している。かかる定量吐出システム4では、チャンバー41内が減圧されたとき、バルブ46を開状態とするとともに、矢印Pで示すように、供給部42に配置したピストン422でシリンダに充填されている液状物Lを一定量、吐出路43に押し出す。
【0006】
しかしながら、図3に示す構成では、チャンバー41内が減圧された状態でバルブ46を開状態とすると、ピストン422が動き出す前に、吐出路43に溜まっている液状物Lに加えて、供給部42に貯留されている液状物Lの一部が吐出口430から流出してしまい、物品Wに液状物Lを定量吐出することができないという結果になった。本発明者は、その原因を検討したところ、チャンバー41内が大気圧のときには、バルブ46を開状態にしても、吐出口430での液状物Lの表面張力によって、液状物Lの流出が阻止されるが、チャンバー41内が減圧されていると、吐出口430で液状物Lの表面に加わる圧力が低下する結果、液状物Lが大きな液滴となって垂れてしまうことを阻止できなくなるためという知見を得た。なお、図3に示す構成は、本発明に対する参考例であり、従来技術ではない。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、減圧雰囲気に配置された物品に液状物を定量吐出することのできる定量吐出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る定量吐出システムは、物品が配置されるチャンバーと、該チャンバーが圧力値P1まで減圧された状態で前記チャンバー内の物品に液状物を定量吐出する吐出装置と、を有し、前記吐出装置は、吐出口が前記チャンバー内で開口する吐出路と、該吐出路の基端側に接続する貯液室と、該貯液室内の上側空間に接続する給液路と、該給液路の基端側に接続して当該給液路を介して前記貯液室に前記液状物を定量供給する供給部と、前記チャンバー内と前記貯液室内の上側空間とを連通させる連通路と、前記給液路に設けられた第1バルブと、前記吐出路に設けられた第2バルブと、を備え、前記チャンバー内の圧力が圧力値P1より高い圧力値P2のとき、前記第1バルブを開状態とし、前記第2バルブを閉状態とした状態で、前記供給部が前記貯液室に前記液状物を定量供給し、前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉状態とした状態で前記チャンバー内の圧力を前記圧力値P1にしたときには、前記第2バルブを開状態にして、前記貯液室の液面位置が前記吐出口の高さ位置と同一となるまで前記吐出口から前記物品に前記液状物が供給されることを特徴とする。
【0013】
本発明では、吐出口がチャンバー内で開口する吐出路と、液状物を定量供給する供給部との間に貯液室が設けられている。このため、チャンバー内の圧力が圧力値P1より高い圧力値P2のとき、第1バルブを開状態とし、第2バルブを閉状態とした状態で、供給部が貯液室に液状物を定量供給する。その際、貯液室の内部の圧力は圧力値P1より高い圧力値P2になっている。このため、給液路や供給部の液状物が不用意に流出することを防止することができ、供給部は、貯液室に液状物を定量吐出することができる。また、第1バルブおよび第2バルブを閉状態とした状態でチャンバー内の圧力を圧力値P1にしたときに、第2バルブを開状態にすると、貯液室の液面位置が吐出口の高さ位置と同一となるまで吐出口から物品に液状物が供給される。従って、吐出口から物品に供給される液状物の量を貯液室の液面位置、すなわち、供給部から貯液室に供給された液状物の量によって制御することができる。それ故、減圧雰囲気に配置された物品に一定量の液状物を吐出することができる。
【0014】
本発明において、前記圧力値P2は、大気圧であることが好ましい。圧力値P2については、圧力値P1より高ければ、給液路や供給部の液状物が不用意に流出することを抑制することができるため、圧力値P2については、圧力値P1と大気圧との間の圧力値や、大気圧以上の圧力値であってもよい。但し、圧力値P2を大気圧に設定すれば、給液路や供給部の液状物が不用意に流出することを確実に防止することができるとともに、加圧装置が不要である等、定量吐出システムの構成を簡素化することができる。
【0015】
本発明において、1つの前記チャンバーに対して、前記吐出装置が複数、設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、複数の物品の各々に対して一定量の液状物を同時に吐出することができる。
【0016】
本発明において、前記物品は、電解コンデンサ用、電気二重層コンデンサ用、または電池用の電気化学素子であり、この場合、前記液状物は、前記電気化学素子の間隙に含浸される電解液である。電解コンデンサ用、電気二重層コンデンサ用、または電池用の電気化学素子の場合、電解液の量が電解コンデンサ、電気二重層コンデンサ、または電池の信頼性等に大きな影響を及ぼすため、本発明を適用すれば、電解コンデンサ、電気二重層コンデンサ、または電池の信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、吐出口がチャンバー内で開口する吐出路と、液状物を定量供給する供給部との間に貯液室が設けられているため、チャンバー内および貯液室内の圧力が圧力値P1より高い圧力値P2のとき、供給部が貯液室に液状物を定量供給する際、給液路や供給部の液状物が不用意に流出することを防止することができる。また、チャンバー内の圧力が圧力値P1のとき、貯液室の液面位置が吐出口の高さ位置と同一となるまで吐出口から物品に液状物が供給されるので、吐出口から物品に供給される液状物の量を貯液室の液面位置、すなわち、供給部から、貯液室に供給された液状物の量によって規定することができる。それ故、減圧雰囲気に配置された物品に一定量の液状物を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の参考例2に係る定量吐出システムの構成を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態に係る定量吐出システムの構成を模式的に示す説明図である。
図3】本発明の参考例1に係る定量吐出システムの構成を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
参考例2
(定量吐出システム1の構成)
図1は、本発明の参考例2に係る定量吐出システム1の構成を模式的に示す説明図である。
【0022】
図1に示す定量吐出システム1は、物品Wが配置されるチャンバー11と、チャンバー11の内部が圧力値P1まで減圧された状態でチャンバー11内の物品Wに液状物Lを定量吐出する吐出装置10とを有している。吐出装置10は、吐出口130がチャンバー11内で開口する吐出路13と、吐出路13の基端側に接続して吐出路13に液状物Lを定量供給する供給部12と、吐出路13の吐出口130と供給部12との間に設けられたバルブ16とを有している。
【0023】
チャンバー11には真空引き用の管18が接続され、管18には真空引き装置(図示せず)が接続されている。管18にはバルブ180が設けられている。チャンバー11には外気導入用の管19が接続されており、管19にはバルブ190が設けられている。このため、バルブ190を閉状態にする一方、バルブ180を開状態にして、真空引き装置を作動させれば、チャンバー11を減圧状態とすることができる。また、バルブ180を閉状態にする一方、バルブ190を開状態すれば、チャンバー11の内部の圧力を大気圧に戻すことができる。チャンバー11には、物品Wを出し入れする開口部(図示せず)、および開口部を開閉する蓋(図示せず)が設けられており、物品Wを出し入れする期間を除いて開口部は閉状態にある。
【0024】
本形態において、供給部12は、液状物Lが充填されたシリンダ121と、シリンダ121内の液状物Lを吐出路13に押し出すピストン122とを有するシリンダ装置として構成されており、ピストン122は、駆動装置(図示せず)によって駆動されて、物品Wに供給すべき液状物Lの量に対応するストロークで移動する。ここで、供給部12は、下向きに配置されており、吐出路13は上下方向に延在する管からなる。このため、吐出路13は、チャンバー11の上壁を貫通し、吐出口130は、物品Wの真上位置で物品Wの方に向いている。
【0025】
かかる構成の定量吐出システム1において、吐出路13は、バルブ16より吐出口130側に位置する部分の先端側に、バルブ16に対して吐出口130側とは反対側の部分や、バルブ16の近傍に位置する部分より内径が小の管状のオリフィス135を有しており、オリフィス135の端部によって吐出口130が構成されている。
【0026】
(定量吐出システム1の動作)
本形態の定量吐出システム1においては、まず、バルブ16を閉にした状態でチャンバー11の内部に物品Wを配置する。その際、バルブ190は開状態であり、バルブ180は閉状態にあるため、チャンバー11内の圧力は大気圧である。
【0027】
次に、バルブ190を閉状態にする一方、バルブ180を開状態にして、真空引き装置を作動させ、チャンバー11の圧力が圧力値P1になるまで、チャンバー11の内部を減圧する。そして、チャンバー11の圧力が圧力値P1になった時点で、バルブ180を閉状態にする。
【0028】
次に、バルブ16を開状態とした後、矢印Pで示すように、ピストン122を所定の距離、下方に移動させて、供給部12から吐出路13に一定量の液状物Lを吐出する。その結果、矢印Lsで示すように、吐出口130から物品Wに一定量の液状物Lが吐出される。
【0029】
次に、バルブ16を閉状態とした後、バルブ190を開状態とし、チャンバー11の圧力を大気圧に戻す。ここで、物品Wが電解コンデンサ用の素子、電気二重層コンデンサ用の素子、リチウムイオン電池用の素子等の電気化学素子であれば、電気化学素子の隙間内に液状物Lが滲み込み、電気化学素子に液状物Lが含浸される。例えば、電解コンデンサは一般に、陽極箔と陰極箔とを電解紙を挟んで筒状に巻回してなるコンデンサ素子(電気化学素子、物品W)と、コンデンサ素子が内側に収容されたケースとを有している。コンデンサ素子は、陽極箔と陰極箔との間隙に電解液(液)が含浸された後、ケースに収納される。電解液は、例えば、エチレングリコールや、必要に応じて水を配合した溶媒に、ホウ酸や有機酸のアンモニウム塩等が配合されてなる。また、電解液は、γ−ブチロラクトン等の有機溶剤に有機酸のアンモニウム塩やアミン塩が配合されてなる。従って、コンデンサ素子では、陽極箔と陰極箔との間に間隙が存在し、かかる間隙に電解液(液状物L)が含浸されることになる。なお、電気化学素子等をケース内に収容した後、ケースの内側に液状物Lを充填する場合に本形態を採用してもよい。
【0030】
しかる後には、物品Wをチャンバー11から搬出し、次の物品Wに対して上記と同様な工程が行われる。かかる定量吐出システム1において、バルブ16、180、190の開閉や、供給部12の駆動は、定量吐出システム1の制御部の指令の下、自動的に行われる。
【0031】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の定量吐出システム1では、チャンバー11内が減圧された後、バルブ16を開状態とするとともに、供給部12に配置したピストン122で供給部12の液状物Lを一定量、吐出路13に押すと、吐出口130から物品Wに所定量の液状物Lが吐出される。ここで、吐出路13は、バルブ16より吐出口130側にオリフィス135を備えており、かかるオリフィス135では、チャンバー11内が圧力値P1まで減圧された状態でバルブ16が開状態になったときでも、液状物Lの表面張力が液状物Lに対してオリフィス135内に止まろうとする力として作用する。このため、吐出口130から液状物Lが不用意に流出することを阻止することができる。それ故、減圧雰囲気に配置された物品Wに一定量の液状物Lを吐出することができる。
【0032】
また、本形態では、吐出口130は、チャンバー11内で下向きに開口しているが、液状物Lの表面張力が液状物Lに対してオリフィス135内に止まろうとする上向きの力として作用するため、吐出口130からの液状物Lが重力によって不用意に流出することを阻止することができる。また、吐出口130が下向きに開口しているので、物品Wに向けて液状物Lを吐出するのが容易である。
【0033】
参考例2の変形例]
上記参考例2では、吐出口130に1つのオリフィス135を設けたが、吐出口130に複数のオリフィス135を並列に設けてもよい。オリフィス135の内径が小さい程、液状物Lが不用意に流出することを阻止することができるので、吐出口130に複数のオリフィス135を並列に設ければ、液状物Lの吐出速度を低下させずに、液状物Lが不用意に流出することを防止することができる。
【0034】
上記参考例2では、1つのチャンバー11に対して1つの吐出装置10が設けられていたが、1つのチャンバー11に対して、複数の吐出装置10が設けられている構成を採用してもよい。かかる構成によれば、複数の物品Wの各々に対して一定量の液状物Lを同時に吐出することができる。
【0035】
実施の形態
(定量吐出システム2の構成)
図2は、本発明の実施の形態に係る定量吐出システム2の構成を模式的に示す説明図である。
【0036】
図2に示す定量吐出システム1も、参考例2と同様、物品Wが配置されるチャンバー21と、チャンバー21の内部が圧力値P1まで減圧された状態でチャンバー21内の物品Wに液状物Lを定量吐出する吐出装置20とを有している。本形態でも、参考例2と同様、チャンバー21には真空引き用の管28が接続され、管28には真空引き装置(図示せず)が接続されている。管28にはバルブ280が設けられている。チャンバー21には外気導入用の管29が接続されており、管29にはバルブ290が設けられている。このため、バルブ290を閉状態にする一方、バルブ280を開状態にして、真空引き装置を作動させれば、チャンバー21を減圧状態とすることができる。また、バルブ280を閉状態にする一方、バルブ290を開状態にすれば、チャンバー21の内部の圧力を大気圧に戻すことができる。また、チャンバー21には、物品Wを出し入れする開口部(図示せず)、および開口部を開閉する蓋(図示せず)が設けられており、物品Wを出し入れする期間を除いて開口部は閉状態にある。
【0037】
本形態において、吐出装置20は、吐出口230がチャンバー21内で開口する吐出路23と、吐出路23の基端側に接続する貯液室200とを有している。また、吐出装置20は、貯液室200内の上側空間に接続する給液路27と、給液路27の基端側に接続して給液路27を介して貯液室200に液状物Lを定量供給する供給部22と、チャンバー21内と貯液室200内の上側空間とを連通させる連通路24とを有している。ここで、給液路27には第1バルブ25が設けられ、吐出路23には第2バルブ26が設けられている。
【0038】
本形態において、供給部22は、液状物Lが充填されたシリンダ221と、シリンダ221内の液状物Lを給液路27に押し出すピストン222とを有するシリンダ装置として構成されており、ピストン222は、駆動装置(図示せず)によって駆動されて、物品Wに供給すべき液状物Lの量に対応するストロークで移動する。ここで、供給部22は、下向きに配置されており、給液路27は、上下方向に延在する管からなる。このため、給液路27は、貯液室200の上壁を貫通し、給液路27の給液口270は、貯液室200の上側空間で下向きに開口している。
【0039】
連通路24は、チャンバー21の側壁と貯液室200の上壁とに接続された管からなる。吐出路23は、管からなり、第2バルブ26より基端側の部分は、貯液室200の側壁の下側部分に接続している。吐出路23において第2バルブ26より先端側の部分は、水平に延在してチャンバー21の側壁を貫通している。また、吐出路23において第2バルブ26より先端側の部分は、水平に延在してチャンバー21の側壁を貫通した後、上方に斜めに延在し、物品Wの真上位置で吐出口230を上方に向けている。
【0040】
(定量吐出システム2の動作)
本形態の定量吐出システム1においては、まず、第1バルブ25および第2バルブ26を閉にした状態でチャンバー11の内部に物品Wを配置する。その際、バルブ290は開状態であり、バルブ280は閉状態にあるため、チャンバー11内の圧力は圧力値P2(大気圧)である。また、貯液室200には、液面L20が吐出口230と同一の高さに位置するように液状物Lが貯留されている。
【0041】
次に、第1バルブ25を開状態とした後、矢印Pで示すように、ピストン222を所定の距離、下方に移動させて、供給部22から給液路27を介して貯液室200に一定量の液状物Lを供給し、その後、第1バルブ25を閉状態とする。その結果、貯液室200では、液状物Lの液面L20が吐出口230より高い位置まで上昇する。
【0042】
次に、バルブ290を閉状態にする一方、バルブ280を開状態にして、真空引き装置を作動させ、チャンバー11の圧力が圧力値P1になるまで、チャンバー11の内部を減圧する。そして、チャンバー11の圧力が圧力値P1になった時点で、バルブ280を閉状態にする。
【0043】
次に、第2バルブ26を開状態にする。その結果、矢印Lsで示すように、貯液室200での液状物Lの液面L20が吐出口230の高さ位置と同一となるまで吐出口230から液状物Lが物品Wに吐出される。
【0044】
次に、第2バルブ26を閉状態とした後、バルブ290を開状態とし、チャンバー21の圧力を大気圧に戻す。しかる後には、物品Wをチャンバー21から搬出し、次の物品Wに対して上記と同様な工程が行われる。かかる定量吐出システム2において、第1バルブ25、第2バルブ26、およびバルブ280、290の開閉や、供給部22の駆動は、定量吐出システム2の制御部の指令の下、自動的に行われる。ここで、物品Wが電解コンデンサ用の素子、電気二重層コンデンサ用の素子、リチウムイオン電池用の素子等の電気化学素子であれば、電気化学素子の隙間内に液状物Lが滲み込み、電気化学素子に液状物Lが含浸される。また、電気化学素子等をケース内に収容した後、ケースの内側に液状物Lを充填する場合に本形態を採用してもよい。
【0045】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の定量吐出システム2では、吐出口230がチャンバー21内で開口する吐出路23と、液状物Lを定量供給する供給部22との間に貯液室200が設けられている。このため、チャンバー21内の圧力が圧力値P1より高い圧力値P2(大気圧)のとき、第1バルブ25を開状態とし、第2バルブ26を閉状態とした状態で、供給部22が貯液室200に液状物Lを定量供給する。その際、貯液室200の内部の圧力は圧力値P1より高い圧力値P2(大気圧)になっている。このため、給液路27や供給部22の液状物Lが不用意に流出することを防止することができ、供給部22は、貯液室200に液状物Lを定量吐出することができる。
【0046】
また、第1バルブ25および第2バルブ26を閉状態とした状態でチャンバー21内の圧力を圧力値P1にしたときに、第2バルブ26を開状態にすると、貯液室200での液状物Lの液面L20の位置が吐出口230の高さ位置と同一となるまで吐出口230から物品Wに液状物Lが吐出される。従って、吐出口230から物品Wに吐出される液状物Lの量を貯液室200での液状物Lの液面L20の位置、すなわち、供給部22から貯液室200に供給された液状物Lの量によって制御することができる。それ故、減圧雰囲気に配置された物品Wに一定量の液状物Lを吐出することができる。
【0047】
また、本形態では、供給部22から貯液室200に液状物Lを供給する際のチャンバー21内および貯液室200内の圧力値P2を大気圧としたため、給液路27や供給部22の液状物Lが不用意に流出することを確実に防止することができるとともに、加圧装置が不要である等、定量吐出システム2の構成を簡素化することができる。
【0048】
実施の形態の変形例]
上記実施の形態では、供給部22から貯液室200に液状物Lを供給する際、チャンバー21内および貯液室200内の圧力値P2を大気圧としたが、圧力値P2については、圧力値P1より高ければ、給液路27や供給部22の液状物Lが不用意に流出することを抑制することができるため、圧力値P2については、圧力値P1と大気圧との間の圧力値、あるいは大気圧以上の圧力値に設定してもよい。
【0049】
上記実施の形態では貯液室200から吐出口230まで、吐出路23が下方に向くことなく延在している構成であったが、貯液室200から吐出口230までの途中で吐出路23の一部が吐出口230より上方に位置するような構成であってもよい。
【0050】
上記実施の形態では、1つのチャンバー21に対して1つの吐出装置20が設けられていたが、1つのチャンバー21に対して、複数の吐出装置20が設けられている構成を採用してもよい。かかる構成によれば、複数の物品Wの各々に対して一定量の液状物Lを同時に吐出することができる。
【0051】
上記実施の形態では、チャンバー21を大気圧にする際、大気をチャンバー21に導入したが、乾燥空気を導入してもよい。かかる構成によれば、物品Wに吐出される液状物Lが吸湿することを防止することができる。
【0052】
[物品Wの他の例]
上記実施の形態では、液状物Lが供給される物品Wとして、電解コンデンサ用の素子、電気二重層コンデンサ用の素子、リチウムイオン電池用の素子等の電気化学素子を例示したが、電気化学素子以外の物品Wに液状物Lを吐出する場合に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1、2 定量吐出システム
10、20 吐出装置
11、21 チャンバー
12、22 供給部
13、23 吐出路
16 バルブ
24 連通路
25 第1バルブ
26 第2バルブ
130、230 吐出口
200 貯液室
図1
図2
図3