(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出力バッファと前記駆動部とをそれぞれ複数備え、該複数の駆動部の前記第1および第2の駆動回路が、前記同一の電源を共用して動作することを特徴とする請求項1または2に記載の出力装置。
当該出力装置は、前記クロック信号の立ち上がりおよび立ち下がりの少なくとも一方に同期して前記出力信号を出力するものである請求項1から3のいずれかに記載の出力装置。
【背景技術】
【0002】
クロック信号に同期してデータ信号を出力する出力装置の一例として、
図8に示すような構成のものを考えることができる。同図に示す出力装置120は、出力バッファ124と、この出力バッファ124を駆動する駆動部122とによって構成されている。駆動部122は、フリップフロップ126と、フリップフロップ126から供給される駆動信号の波形を整形して出力する駆動回路(図示例の場合はインバータ)128A,128Bとを備えている。
【0003】
ここで、図示を省略しているが、出力バッファ124は、上限出力電圧および下限出力電圧を発生する電源を使用して動作し、駆動部122は、出力バッファ124が使用する電源とは異なる電源を使用して動作する。つまり、駆動部122のフリップフロップ126と駆動回路128A,128Bは、同一の電源を共用して動作する。
【0004】
この出力装置120では、
図9のタイミングチャートに示すように、データ信号がクロック信号の立ち上がりに同期して駆動部122のフリップフロップ126に保持され、ノードAに出力される。ノードAに出力されたデータ信号は駆動回路128A,128Bにより反転されて駆動信号として出力され、それぞれ、出力バッファを構成するPMOS(P型MOSトランジスタ)130AとNMOS(N型MOSトランジスタ)130Bのゲートに入力される。
【0005】
データ信号がH(ハイレベル)の場合、フリップフロップ126から出力される駆動信号はH、これが駆動回路128A,128Bにより反転されてL(ローレベル)となり、出力バッファ124のPMOS130Aはオン、NMOS130Bはオフとなる。従って、出力電圧信号は上限出力電圧に接続され、Hが出力される。一方、データ信号がLの場合、出力電圧信号は下限出力電圧に接続され、Lが出力される。
【0006】
また、駆動部122の消費電流は、
図9のタイミングチャートに示すように、データ信号の変化の有無による消費電流も一般に大きく異なるが、さらにデータ信号がLからHに変化するときとHからLに変化するときを比較しても、消費電流は一般的に異なる。
図9の例では、データ信号がLからHに変化する場合が最も大きく、データ信号がHからLに変化する場合が2番目に大きく、データ信号が変化しない場合が最も小さくなる。このように、駆動部122の消費電流はデータ信号に依存して変化し、データ信号に依存して異なる電源ノイズが発生するため、出力電圧信号にジッタが発生する。これは、例えば、複数の出力装置120が同一の電源を共用する場合に特に大きな問題となる。
【0007】
続いて、
図10に示す出力装置132は、駆動部122と出力バッファ124が使用する電源の電圧が異なるものであり、
図8に示す出力装置120において、さらに、レベルシフタ(L/S)134A,134Bをフリップフロップ126の前段に備えるものである。この出力装置132では、レベルシフタ134A,134Bにより、データ信号とクロック信号の電圧レベルが、出力バッファ124が使用する電源の電圧に合わせてシフトされる。
【0008】
このように、レベルシフタ134A,134Bを備えていると、例えば、駆動部122が使用する電源の電圧よりも、出力バッファ124が使用する電源の電圧の方が大きい場合、フリップフロップ126および駆動回路128A,128Bは出力バッファ124が使用する電源の電圧で動作するため、データに依存して消費電流が大きくなって電源ノイズが大きくなり、出力電圧信号に発生するジッタが、
図8に示す出力装置120の場合よりもさらに大きくなる場合がある。
【0009】
前述の電源ノイズの問題を解決する先行技術として、特許文献1がある。
図11に示すように、特許文献1に記載の出力装置146は、キャンセルデータ生成回路148と、ダミーの出力バッファ150Aと、出力バッファ150Bとによって構成されている。
【0010】
この出力装置146では、
図12のタイミングチャートに示すように、データ信号はクロック信号に同期して変化し、出力バッファ150Bから出力される。一方、キャンセルデータ生成回路148により、データ信号が変化しないタイミングで、クロック信号の立ち上がりに同期して変化するキャンセルデータ信号が生成され、ダミーの出力バッファ150Aから出力される。
【0011】
出力バッファ150Bでは、
図12のタイミングチャートに示すように、データ信号がクロック信号の立ち上がりに同期して変化する場合に消費電流が発生する。一方、ダミーの出力バッファ150Aでは、キャンセルデータ信号がクロック信号の立ち上がりに同期して変化する場合、つまり、データ信号が変化しない場合に、出力バッファ150Bと同等の消費電流が発生する。従って、出力装置146全体では、クロック信号の立ち上がりに同期して消費電流が発生する。
【0012】
すなわち、特許文献1の出力装置146では、データ信号が変化したときに発生する電流消費を、データ信号が変化しないクロック信号の立ち上がりにおいても発生させることで、出力装置全体で見るとデータ信号の変化に依存しない電流消費を達成している。これにより、出力電圧信号に発生するジッタを抑えることはできるが、キャンセルデータ生成回路148とダミーの出力バッファ150Aが必要なので、消費電流や回路規模が大きくなる。また、キャンセルデータ生成回路148から電源へのノイズが問題となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の出力装置を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の出力装置の概略構成を表す一実施形態の概念図である。同図に示す出力装置10は、データ信号を入力し、クロック信号に同期してデータ信号に応じた電圧信号(出力信号)を出力するものであって、駆動部12と、出力バッファ14とによって構成されている。
【0025】
ここで、図示を省略しているが、出力バッファ14は、上限出力電圧および下限出力電圧を発生する電源を使用して動作し、駆動部12は、出力バッファ14が使用する電源とは異なる電源を使用して動作する。
【0026】
駆動部12は、電圧信号を出力する出力バッファ14を駆動するものであり、同一の電源を共用して動作する、信号切替器16と、出力バッファ14を駆動する駆動信号を出力する駆動回路18とを備えている。なお、信号切替器16が、駆動回路18と同一の電源を共用して動作することは必須ではない。また、駆動回路18は、第1の駆動信号を出力する第1の駆動回路18Aと、第2の駆動信号を出力する第2の駆動回路18Bとを備えている。
【0027】
信号切替器16は、クロック信号をデータ信号の電圧レベルに応じて切り替えて第1および第2の駆動回路18A,18Bの一方に入力する。また、信号切替器16は、第1および第2の駆動回路18A,18Bの他方に、この第1および第2の駆動回路18A,18Bの他方から出力される第1および第2の駆動信号の他方が非アクティブ状態となる信号を入力する。
【0028】
ここで、第1および第2の駆動信号の他方が非アクティブ状態となる信号とは、後述する、第1および第2の駆動信号の他方に対応する出力バッファ14の第1および第2のスイッチ20A,20Bの他方がオフとなるように作用する信号である。
【0029】
例えば、データ信号がHのとき、クロック信号は、信号切替器16によりノードAを介して第1の駆動回路18Aに入力される。一方、第2の駆動回路18BにはノードBを介してLが入力される。この場合、第1の駆動回路18Aからは第1の駆動信号としてクロック信号が出力され、第2の駆動回路18Bからは第2の駆動信号としてLが出力される。
【0030】
逆に、データ信号がLのとき、クロック信号は、信号切替器16によりノードBを介して第2の駆動回路18Bに入力される。一方、第1の駆動回路18AにはノードAを介してLが入力される。この場合、第1の駆動回路18Aからは第1の駆動信号としてLが出力され、第2の駆動回路18Bからは第2の駆動信号としてクロック信号が出力される。つまり、第1および第2の駆動回路18A,18Bの一方は、第1および第2の駆動信号の一方として、クロック信号のレベル変化に応じてレベルが変化する駆動信号(クロック信号に相当する信号)を出力バッファ14に出力する。
【0031】
信号切替器16は、例えば、スイッチ、デマルチプレクサ、ギルバートセル、電圧乗算器等により実現することができる。
【0032】
続いて、出力バッファ14は、第1の駆動信号により駆動され、出力バッファ14の出力信号(出力端子)と上限出力電圧(第1の電源)との接続を切り替える第1のスイッチ20Aと、第2の駆動信号により駆動され、出力バッファ14の出力信号と下限出力電圧(第2の電源)との接続を切り替える第2のスイッチ20Bとを備えている。なお、第1および第2のスイッチ20A,20Bは、第1および第2の駆動信号により、同時にはオンしない、つまり、出力バッファ14の出力信号と上限出力電圧および前記下限出力電圧とが同時には接続されないように駆動される。
【0033】
第1のスイッチ20Aは、第1の駆動信号がHのときオンして、出力装置10の出力信号を上限出力電圧に接続する。このとき、第2の駆動信号はLであり、第2のスイッチ20Bはオフである。同様に、第2のスイッチ20Bは、第2の駆動信号がHのときにオンして、出力装置10の出力信号を下限出力電圧に接続する。このとき、第1の駆動信号はLであり、第1のスイッチ20Aはオフである。つまり、信号切替器16が、第1および第2の駆動回路18A,18Bの他方に一定のレベルの信号を入力し、他方の駆動回路が、第1および第2の駆動信号の他方として、出力バッファ14の第1および第2のスイッチ20A,20Bのうちの対応する方のスイッチがオフ状態に保たれる信号を出力する。
【0034】
出力装置10では、
図2のタイミングチャートに示すように、データ信号がHのとき、クロック信号がノードAに出力され、ノードBにはLが出力される。つまり、第1の駆動信号はクロック信号となり、第2の駆動信号はLとなる。従って、出力バッファ14の第1のスイッチ20Aは、クロック信号のレベルに応じてオン・オフする。一方、第2のスイッチ20Bはオフする。第1のスイッチ20Aがオンした期間には、出力装置10の出力電圧信号が上限出力電圧と接続されてHになる。
【0035】
一方、データ信号がLのとき、クロック信号がノードBに出力され、ノードAにはLが出力される。つまり、第2の駆動信号はクロック信号となり、第1の駆動信号はLとなる。従って、出力バッファ14の第2のスイッチ20Bは、クロック信号のレベルに応じてオン・オフする。一方、第1のスイッチ20Aはオフする。第2のスイッチ20Bがオンした期間には、出力装置10の出力電圧信号が下限出力電圧と接続されてLになる。
【0036】
駆動部12では、ノードA、つまり、第1の駆動信号の変化により流れる電流と、ノードB、つまり、第2の駆動信号の変化により流れる電流とを足し合わせたものが電源に流れる合計電流となる。そのため、駆動部12では、
図2のタイミングチャートに示すように、クロック信号の変化に応じて電流が流れ、クロック信号がLからHに変化する場合と、HからLに変化する場合とで同じ大きさの消費電流が発生する。
【0037】
従って、出力装置10では、データ信号に依存して異なる電源ノイズが発生することはなく、クロック信号に同期して同じ大きさの電源ノイズが発生するため、出力電圧信号にジッタが発生するのを低減することができる。また、出力装置10では、特許文献1のキャンセルデータ生成回路やダミーの出力バッファ等の回路が不要であり、回路規模や消費電流も小さいため、コストダウンや低電源ノイズを実現できるというメリットもある。
【0038】
また、出力装置10では、前述のように、出力電圧信号にジッタが発生するのを防止することができるため、例えば、D/Aコンバータのように、各々クロック信号に同期して異なる出力信号を出力する複数の出力装置が同一電源を共用して動作する場合であっても、各々の出力装置の間で電源を介したノイズの干渉を抑えることができ、出力信号の劣化を防ぐことができる。
【0039】
ここで、
図1に示す出力装置10の駆動部12では、
図2に示すように、クロック信号の全ての立ち上がり・立ち下がりのタイミングで同じ大きさ(ピーク値)の消費電流が発生する。
【0040】
本発明の目的は、出力装置10の出力電圧信号に発生するジッタを低減することであるから、本来は、出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングでの駆動部12の消費電流のピーク値が同一となるようにできればよい。言い換えると、出力電圧信号がHもしくはLで変化しない期間での消費電流のピーク値は、出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングでの消費電流のピーク値と必ずしも同じでなくてもよいはずである。
【0041】
しかし、複数の出力装置の駆動回路が電源を共用して動作する場合、出力電圧信号が変化するタイミングでの消費電流と、変化しないタイミングでの消費電流が異なると、他の出力装置の駆動回路が異なるタイミングで動作することによって発生する電源電位の振れによってジッタが発生し、出力電圧信号が変化する可能性がある。クロックのエッジ(立ち上がりエッジ)のタイミングでは出力電圧信号の変化の有無にかかわらず、同一の消費電流が流れるようにする必要がある。さらに出力電圧信号が変化しないクロックのエッジ(立ち下がりエッジ)のタイミングでも同一の消費電流が流れればさらに好ましい。
出力電圧信号がHもしくはLで変化しない期間のクロックエッジのタイミングにおいてピーク値の大きな消費電流が発生した場合(つまり、電源電位が振れた場合)と、消費電流が全く発生しなかった場合(つまり、電源電位が振れなかった場合)とでは、電源電位およびグランド電位の変化の振る舞いが異なる。このため、同一の電源を共用して動作する他の出力装置の駆動部が出力する出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングが変動して出力電圧信号にジッタが発生する。
【0042】
図2に示すように、出力電圧信号がHもしくはLで変化しない期間のクロックエッジのタイミングにおいて、出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングでの消費電流のピーク値と同じピーク値の消費電流が発生した場合、電源電位もしくはグランド電位が振れる。その影響を受けて、同一の電源を共用して動作する他の出力装置の駆動部が出力する出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングがずれる。
【0043】
しかし、クロック信号に同期して同じピーク値の消費電流が発生すると、電源電位もしくはグランド電位が振れ、その影響を受けて、その直後の出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングがずれたとしても、出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングは毎回同じようにずれるため、出力電圧信号に発生するジッタを低減することができる。
【0044】
これに対して、出力電圧信号がHもしくはLで変化しない期間に、クロックエッジのタイミングにおいて、より大きなピーク値の消費電流が発生した場合、電源電位もしくはグランド電位の振れが大きくなる。その影響を受けて、同一の電源を共用して動作する他の出力装置の駆動部が出力する出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングのずれも大きくなる。一方、出力電圧信号がHもしくはLの期間に消費電流が全く発生しなかった場合、電源電位もしくはグランド電位は振れず、その直後の出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングもずれないため、出力電圧信号にジッタが発生する。
【0045】
このように、出力電圧信号がHもしくはLで変化しない期間のクロックエッジのタイミングにおいて、ピーク値の大きな消費電流が発生したり、消費電流が全く発生しなかったりすると、出力電圧信号にジッタが発生する可能性がある。従って、出力電圧信号に発生するジッタを低減するためには、出力電圧信号がHもしくはLで変化しない期間においても、
図2に示すように、クロック信号のエッジに同期して出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングでの消費電流のピーク値と同じピーク値の消費電流を発生させることが望ましい。
【0046】
また、厳密には、駆動部12から出力される2つの駆動信号の立ち上がりと立ち下がりのスルーレートに違いがあると、ジッタの許容範囲を満たすことができない場合がある。
【0047】
例えば、第1の駆動回路18Aと、第2の駆動回路18Bが出力する駆動信号の立ち上がりが急峻であり、反対に立ち下がりが緩やかである場合、出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングでの駆動部12の消費電流のピーク値も異なっているはずである。このように、出力電圧信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングでの消費電流のピーク値が異なっていると、ジッタが出力電圧信号に発生する。従って、駆動部12の出力信号の立ち上がりと立ち下がりのスルーレートを揃えることも望ましい。
【0048】
しかし、駆動部12から出力される2つの駆動信号のスルーレートに違いがあったとしても、仕様で規定される出力電圧信号のジッタの許容範囲を満たすことができる場合には何ら問題はない。また、ジッタの許容範囲を満たすことができない場合には、ジッタの許容範囲を満たすことができるように、言い換えれば、出力電圧信号を制御する信号、すなわち駆動回路18A(または18B)の出力信号の立ち上がり・立ち下がりのタイミングでの消費電流のピーク値が同じになるように設計する。つまり、駆動回路18A(または18B)の立ち上がり、立ち下がりの駆動能力を一致させるとともに、18A,18Bの駆動能力についても一致させるように駆動部12を設計することで対処することが可能である。
【0049】
また、出力装置10から出力される出力電圧信号は、
図2に示すように、ノードAの信号の立ち上がりで立ち上がり、ノードBの信号の立ち上がりで立ち下がる。ノードA,Bの信号の一方がクロック信号の時、他方はLの信号であるから、ノードAおよびノードBの信号の両方がLとなる期間が存在する。この期間、第1および第2のスイッチ20A,20Bは両方ともオフとなり、出力電圧信号はフローティング状態となる。
【0050】
しかし、出力装置10では、第1および第2のスイッチ20A,20Bが両方ともオフとなった後も、その周波数に対応する一定の周期で、データ信号によって選択されるノードA,Bの一方にクロック信号が出力され、Lの信号が他方に出力される。そのため、クロック信号が出力されるノードA,Bの一方に対応する第1および第2のスイッチ20A,20Bの一方が断続的にオンする。
【0051】
従って、クロック信号の周波数や出力電圧信号のノードの容量成分に応じて、次に第1および第2のスイッチ20A,20Bの一方がオンするまでの間に、出力電圧信号のフローティング状態が問題とならない場合には、出力電圧信号のノードに電圧ホルダーやラッチなどを設ける必要はない。また、問題となる場合には、出力電圧信号のノードに電圧ホルダーやラッチなどを設けることで対処することが可能である。
【0052】
次に、出力装置10の具体例を挙げて説明する。
【0053】
図3は、本発明の出力装置の具体的な構成を表す一実施形態の回路図である。同図に示す出力装置30は、データ信号を入力し、クロック信号に同期してデータ信号に応じた差動電圧信号(出力信号)を出力し、さらに、これを電圧電流変換し差動電流信号として出力するものであって、駆動部32と、出力バッファ34と、上限出力電圧生成部36Aと、下限出力電圧生成部36Bと、電圧電流変換部38とによって構成されている。
【0054】
駆動部32は、
図1に示す駆動部12に相当するものであり、
図4に示すように、第1および第2のレベルシフタ(L/S)44A,44Bと、ギルバートセル46と、第1および第2の駆動回路48A,48Bとを備えている。
【0055】
第1および第2のレベルシフタ44A,44Bは、それぞれ、クロック信号およびデータ信号の電圧レベルを、出力バッファ34が使用する電源の電圧(本具体例では、アナログ専用電源の3.3V)に合わせてシフトするものである。レベルシフタ44A,44Bとも、入力された信号がH(1.2V)のときは、出力信号は、clk_ls、Q_lsはH(3.3V)に、clkb_ls、Qb_lsはL(0V)となる。入力された信号がL(0V)のときは出力信号は逆にclk_ls、Q_lsはL(0V)に、clkb_ls、Qb_lsはH(3.3V)となる。
【0056】
続いて、ギルバートセル46は、3.3Vのアナログ専用電源で動作し、第1のレベルシフタ44Aから供給されるクロック信号clk_ls、clkb_lsと、第2のレベルシフタ44Bから供給されるデータ信号Q_ls,Qb_lsとの電圧乗算を行って、その演算結果の信号acb、bdbを出力するものであり、
図5に示すように、差動増幅器62A,62Bと、電流源(電源回路)64とを備えている。
【0057】
差動増幅器62Aは、カレントミラー回路を構成するPMOS66A,66Bと、差動対のNMOS68A,68Bと、NMOS(スイッチ)70Aとを備えている。PMOS66A,66Bのソースはアナログ専用電源に接続され、ゲートはPMOS66Aのドレインに接続され、PMOS66Bのドレインから信号acbが出力される。NMOS68A,68Bは、それぞれ、PMOS66A,66BのドレインとNMOS70Aのドレインとの間に接続され、ゲートには、それぞれ、クロック信号clk_lsの反転信号(反転極性信号)clkb_lsとクロック信号clk_lsが入力される。NMOS70Aのゲートにはデータ信号Q_lsが入力される。
【0058】
同様に、差動増幅器62Bは、カレントミラー回路を構成するPMOS72A,72Bと、差動対のNMOS74A,74Bと、NMOS(スイッチ)70Bとを備えている。差動増幅器62Bは、NMOS70Bのゲートにデータ信号Q_lsの反転信号Qb_lsが入力されることを除いて、差動増幅器62Aと同様の構成のものである。PMOS72Bのドレインから信号bdbが出力される。
【0059】
電流源64は、NMOS70A,70Bのソースとグランドとの間に接続されている。
【0060】
ギルバートセル46では、データ信号Q_ls、Qb_lsがH,Lのとき、NMOS70Aがオンして差動増幅器62Aがアクティブ状態となる。このとき、クロック信号clk_ls、clkb_lsがH,Lであれば、NMOS68Bがオン、NMOS68Aがオフし、出力信号acbは、NMOS68B,70Aを介して電流源64によりディスチャージされてLとなる。クロック信号clk_ls、clkb_lsがL,Hであれば、逆に、出力信号acbはHとなる。また、このとき、差動増幅器62Bは非アクティブ状態となり、出力信号bdbはHとなる。
【0061】
一方、データ信号Q_ls、Qb_lsがL,Hのときは、NMOS70Bがオンして差動増幅器62Bがアクティブ状態となり、差動増幅器62Aの場合と同様に動作する。つまり、クロック信号clk_ls、clkb_lsがH,Lであれば、出力信号bdbはLとなる。クロック信号clk_ls、clkb_lsがL,Hであれば、出力信号bdbはHとなる。また、このとき、差動増幅器62Aは非アクティブ状態となり、出力信号acbはHとなる。
ギルバートセル46では、データ信号Q_ls,Qb_lsの状態によらず、クロック信号clk_ls、clkb_lsの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのタイミングで同一の電源電流が流れる。従って複数の出力装置の駆動部のギルバートセルが同一の電源を共用して動作する場合であっても、出力信号にジッタを発生しない。
【0062】
第1および第2の駆動回路48A,48Bは、3.3Vのアナログ専用電源で動作し、それぞれ、ギルバートセル46からの出力信号acb、bdbの波形を整形して第1および第2の駆動信号として出力するものである。
【0063】
第1の駆動回路48Aは、インバータ76Aと、バッファ78Aとを備えている。同様に、第2の駆動回路48Bは、インバータ76Bと、バッファ78Bとを備えている。
【0064】
つまり、駆動部32では、データ信号がHのとき、第1の駆動信号としてクロック信号が出力され、第2の駆動信号としてLが出力される。逆に、データ信号がLのとき、第2の駆動信号としてクロック信号が出力され、第1の駆動信号としてLが出力される。
従って、データ信号の状態によらず、クロック信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジのそれぞれにおいては同一の消費電流が発生する。従って複数の出力装置の駆動部の駆動回路が同一の電源を共用して動作する場合であっても、駆動信号にジッタを発生しない。さらにクロック信号の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとでほぼ同一の消費電流が発生するように、駆動回路48A,48Bを設計することも可能である。
【0065】
続いて、上限出力電圧生成部36Aおよび下限出力電圧生成部36Bは、それぞれ、上限出力電圧および下限出力電圧を生成するものであり、
図3に示すように、それぞれ、アンプ80A,80Bを備えている。
【0066】
上限出力電圧生成部36Aのアンプ80Aの一方の入力端子には上限出力用参照電圧が入力され、他方の入力端子には、アンプ80A自身の出力信号が入力される。アンプ80Aにより、上限出力用参照電圧が増幅され、上限出力電圧として出力される。
【0067】
同様に、下限出力電圧生成部36Bのアンプ80Bの一方の入力端子には下限出力用参照電圧が入力され、他方の入力端子には、アンプ80B自身の出力信号が入力される。アンプ80Bにより、下限出力用参照電圧が増幅され、下限出力電圧として出力される。
【0068】
続いて、出力バッファ34は、
図3に示すように、第1〜第4のスイッチ82A,82B,82C,82Dを備えている。
【0069】
第1および第2のスイッチ82A,82Bと、第3および第4のスイッチ82C,82Dは、それぞれ、上限出力電圧と下限出力電圧との間に直列に接続されている。駆動部32から出力される第1の駆動信号が第1および第4のスイッチ82A,82Dに入力され、第2の駆動信号が第2および第3のスイッチ82B,82Cに入力される。第1および第2のスイッチ82A,82Bの間のノードと、第3および第4のスイッチ82C,82Dの間のノードから差動電圧信号DV,DVbが出力される。
【0070】
第1および第2の駆動信号がH,Lのとき、第1および第4のスイッチ82A,82Dがオン、第2および第3のスイッチ82B,82Cがオフし、差動電圧信号DV,DVbはH,Lになる。逆に、第1および第2の駆動信号がL,Hのとき、第1および第4のスイッチ82A,82Dがオフ、第2および第3のスイッチ82B,82Cがオンし、差動電圧信号DV,DVbはL,Hになる。
【0071】
電圧電流変換部38は、出力バッファ34から出力信号として出力される差動電圧信号DV,DVbを差動電流信号DA,DAbに変換するものであり、電流源84と、PMOS88A,88Bからなる差動対86とを備えている。電流源84は、電源と差動対86のPMOS88A,88Bのソースとの間に接続されている。PMOS88A,88Bのゲートに出力バッファ34から出力される差動電圧信号DV,DVbが入力され、ドレインから差動電流信号DA,DAbが出力される。
【0072】
差動電圧信号DV,DVbがH,Lのとき、PMOS88A,88Bがそれぞれオフ、オンし、電流源84から供給される電流はPMOS88Bを介して差動電流信号DA側へ流れる。差動電圧信号DV,DVbがL,Hのときは逆にPMOS88Aを介して差動電流信号DAb側へ電流が流れる。
【0073】
つまり、出力装置30では、データ信号がHのとき、差動電圧信号DV,DVbはH,Lとなり、電流源84から供給される電流はPMOS88Bを介して差動電流信号DA側へ流れる。逆に、データ信号がLのとき、差動電圧信号DV,DVbはL,Hとなり、PMOS88Aを介して差動電流信号DAb側へ電流が流れる。
【0074】
出力装置30では、出力バッファ34から差動電圧信号DV,DVbが出力され、電圧電流変換部38から差動電流信号DA,DAbが出力される。この例のように、出力装置の出力信号は、電圧信号および電流信号のいずれにもすることができる。そして、出力バッファ34はクロック信号の変化に応じて電流が流れ、クロック信号がLからHに変化する場合と、HからLに変化する場合とで同じ大きさの電源ノイズが発生し、差動電圧信号DV,DVbの立ち上がり・立ち下がりのタイミングが毎回同じようにずれるため、差動電圧信号DV,DVbにジッタが発生することを低減することができる。また、上限出力電圧、下限出力電圧にかえて、H側電流源、L側電流源を設け、出力バッファ34を電流出力とすることも可能である。データ信号についても、電圧信号にかえて電流信号を入力するようにすることも可能である。レベルシフタ44A,44Bは、データ信号の電圧レベルと出力バッファ34が使用する電源、の電圧との関係によっては不要である。レベルシフタが必要な場合にも、信号切替器との位置関係は任意であり、信号切替器の後段にレベルシフタを設けることも可能である。
【0075】
次に、出力装置30の応用例について説明する。
【0076】
図6は、本発明の出力装置を応用したD/Aコンバータの構成を表す一実施形態の回路図である。同図に示すD/Aコンバータ90は、クロック信号に同期して、5ビットのデータ信号をデコードし、データ信号のデジタルコードに対応する差動電流信号を出力するものであり、クロック分配部92と、データデコード部94と、本発明に係る複数の出力装置96とによって構成されている。
【0077】
クロック分配部92は、クロック信号を、クロック信号を使用する複数の部位に分配するものであり、クロックバッファ98と、クロックレベルシフタ100と、クロック分配ネットワーク102とを備えている。
【0078】
クロックバッファ98は、クロック分配部92のクロックレベルシフタ100とデータデコード部94で使用されるクロック信号clkとその反転信号clkbを生成する。
【0079】
クロックレベルシフタ100は、クロックバッファ98から供給されるクロック信号clkとその反転信号clkbの電圧レベルを、例えば、出力装置96で使用されるアナログ専用電圧の3.3Vにシフトしてクロック信号clk_lsとその反転信号clkb_lsを生成し、クロック分配ネットワーク102に供給する。
【0080】
クロック分配ネットワーク102は、クロックレベルシフタ100から供給されるクロック信号clk_lsとその反転信号clkb_lsを、全ての出力装置96に供給する。
【0081】
続いて、データデコード部94は、5ビットのデータ信号をデコードして32ビットのサーモメータコードを生成するものであり、フリップフロップ104,108と、デコーダ106と、バッファ110と、インバータ112とを備えている。
【0082】
データデコード部94では、クロックバッファ98から供給されるクロック信号clkに同期して、5ビットのデジタルコードが前段のフリップフロップ104に保持され、デコーダ106によりデコードされて5ビットのデジタルコードに対応する32ビットのサーモメータコードが生成され、クロック信号clkに同期して後段のフリップフロップ108に保持される。そして、後段のフリップフロップ108から出力される32ビットのサーモメータコードが、それぞれ、バッファ110とインバータ112により整形され、サーモメータコードとその反転信号が出力される。
【0083】
最後に、出力装置96は、上限出力電圧生成部36Aと下限出力電圧生成部36Bを個々に備えず、共通の上限出力電圧、下限出力電圧の供給を受けていることを除いて、
図3に示す出力装置30に相当するものである。つまり、D/Aコンバータ90は、複数の出力装置96として、駆動部32と出力バッファ34と電圧電流変換部38とをそれぞれ複数備え、複数の駆動部32の第1および第2の駆動回路48A,48Bは、同一の電源を共用して動作する。
【0084】
各々の出力装置96では、クロックレベルシフタ100からクロック分配ネットワーク102を介して供給されるクロック信号clk_lsとその反転信号clkb_lsが、
図5に示すギルバートセル46のNMOS68A,68BおよびNMOS74A,74Bのゲートに直接入力される。また、出力装置96では、
図7に示すように、データデコード部94から供給されるデータ信号とその反転信号が、第2のレベルシフタ44Bに直接入力される。
【0085】
D/Aコンバータ90では、クロック分配部92によりクロック信号が分配され、データデコード部94により、5ビットのデータ信号のデジタルコードに対応する32ビットのサーモメータコードが生成される。そして、各々の出力装置96から、クロック分配部92から供給されるクロック信号に同期して、データデコード部94から供給される32ビットのサーモメータコードの各々のビットに対応する電流が出力され、全ての出力装置96からの出力電流が合計された差動電流信号が出力される。
D/Aコンバータ90を構成する複数の出力装置30の駆動回路48A,48Bは同一の電源を共用して動作する。しかし他の出力装置の駆動回路の動作による出力信号のジッタの発生は小さい。このためD/Aコンバータ90の出力が遷移するときに出力にジッタの影響が発生することはない。
【0086】
出力装置96は、この例のように、D/Aコンバータだけでなく、クロック信号に同期してデータ信号を出力する各種の回路に適用することができる。
いずれの場合にも、出力信号のジッタの増大を招くことなく、複数の出力装置の駆動回路を共通の電源で動作させることが可能である。このため個々の出力装置の駆動回路毎に電源を分ける必要がなく、コストダウンが実現できる。
【0087】
また、本発明の出力装置を構成する、駆動部の信号切替器および駆動回路、出力バッファ、ならびに、電圧電流変換部等の回路構成は何ら限定されず、同様の機能を果たす各種構成の回路がいずれも利用可能である。また、出力装置は、クロック信号の立ち上がりおよび立ち下がりの少なくとも一方に同期してデータ信号を出力することができる。
【0088】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。