(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インクジェットプリンタのヘッド部にエネルギー線照射源が配置され、前記ヘッド部から前記インクジェットインク組成物を吐出しながらエネルギー線を照射して、吐出された前記インクジェットインク組成物を硬化させる請求項1に記載の画像形成方法。
前記非反応性樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及びケトン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
前記重合性オリゴマーが、ポリエステル系オリゴマー、ポリエーテル系オリゴマー、ポリカーボネート系オリゴマー及びアクリル系オリゴマーよりなる群から選ばれるいずれか1種のオリゴマーである請求項8に記載の画像形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(インクジェットインク組成物)
先ず、本発明のインクジェットインク組成物について説明する。本発明のインクジェットインク組成物は、
着色剤と、重合性化合物と、重合開始剤と、非反応性樹脂と、有機溶剤とを含むインクジェットインク組成物であって、上記有機溶剤の沸点が、125〜220℃であり、上記インクジェットインク組成物の粘度が、4〜30mPa・sであることを特徴とする。
【0012】
本発明のインクジェットインク組成物は、上記非反応性樹脂を含んでいるため、上記重合性化合物の硬化収縮を抑制することができ、インク非吸収性材料からなる被記録媒体に形成した画像の密着性を向上できる。また、本発明のインクジェットインク組成物は、上記有機溶剤を含んでいるため、上記非反応性樹脂が上記有機溶剤に溶解し、上記非反応性樹脂を含んでいても粘度の上昇を抑えることができ、インクの吐出性も維持できる。更に、上記有機溶剤の沸点が125〜220℃に設定されているため、インクの吐出性及び乾燥性も維持できる。
【0013】
また、本発明のインクジェットインク組成物は、その粘度が4〜30mPa・sに設定されているため、インクの吐出性に優れている。上記粘度は、6〜22mPa・sがより好ましい。
【0014】
以下、本発明のインクジェットインク組成物の各成分について詳細に説明する。
【0015】
<重合性化合物>
本発明のインクジェットインク組成物を構成する重合性化合物は、後述する重合開始剤等から発生するラジカル等の開始種により重合又は架橋反応を生起し、これらを含有する組成物を硬化させる機能を有するものである。
【0016】
上記重合性化合物としては、ラジカル重合反応、二量化反応等公知の重合又は架橋反応を生起し硬化する化合物を適用することができる。例えば、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物、芳香環に隣接した光二量化可能な不飽和二重結合を有するシンナミル基、シンナミリデン基やカルコン基等を側鎖に有する高分子化合物等が挙げられる。中でも、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物がより好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物(単官能又は多官能化合物)から選択されるものであることが特に好ましい。具体的には、本発明に係る産業分野において広く知られるものの中から適宜選択することができ、例えば、重合性モノマー、重合性プレポリマー(即ち、2量体、3量体及びオリゴマー)及びそれらの混合物、並びにそれらの共重合体等の化学的形態を持つものが含まれる。また、上記重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記重合性化合物の含有量は、インクジェットインク組成物の全量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましい。上記重合性化合物の含有量が上記範囲であれば、本発明のインクジェットインク組成物を確実に硬化させることができる。
【0018】
本発明のインクジェットインク組成物を構成する重合性化合物としては、好ましくは、ラジカル重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起し硬化する各種公知のラジカル重合性のモノマー(以下、ラジカル重合性化合物という。)や、カチオン重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起し硬化する各種公知のカチオン重合性化合物を使用することができ、また、両者を併用することもできる。
【0019】
[ラジカル重合性化合物]
本発明のインクジェットインク組成物に用い得るラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、ビニルエーテル類及び内部二重結合を有する化合物(マレイン酸等)等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又はいずれかを指し、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」の双方又はいずれかを指す。
【0020】
上記(メタ)アクリレート類としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0021】
単官能の(メタ)アクリレート類の具体例として、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(2−HPA)、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等を挙げることができる。
【0024】
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0025】
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0026】
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0027】
上記(メタ)アクリルアミド化合物の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0028】
上記芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0029】
上記ビニルエーテル類としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0030】
単官能のビニルエーテル類の例として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0031】
多官能のビニルエーテル類の例として、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテル等のジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;等が挙げられる。
【0032】
上記ビニルエーテル類の中でも、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度等の観点から、ジビニルエーテル化合物又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0033】
本発明のインクジェットインク組成物に用い得るラジカル重合性化合物としては、上記例示した物質以外に、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;等が挙げられる。
【0034】
〔カチオン重合性化合物〕
本発明のインクジェットインク組成物に用い得るカチオン重合性化合物は、何らかのエネルギー付与によりカチオン重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はない。カチオン重合性化合物としては、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができ、単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。特に、後述するカチオン重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性モノマーを使用することができる。
【0035】
上記カチオン重合性モノマーの例としては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号等の各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
【0036】
上記エポキシ化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0037】
単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0038】
多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−7,8−エポキシ−1,3−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,13−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0039】
上記ビニルエーテル化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0040】
単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテル等のジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル;類等が挙げられる。
【0042】
上記ビニルエーテル化合物としては、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度等の観点から、上述した化合物の中でも、ジビニルエーテル化合物又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0043】
上記オキセタン化合物としては、特開2001−220526号、特開2001−310937号、特開2003−341217号の各公報に記載される如き、公知のオキセタン化合物を任意に選択して使用できる。ここで、「オキセタン化合物」とは、分子内に少なくとも1つのオキセタン環(オキセタニル基)を含む化合物のことである。
【0044】
上記オキセタン化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有するオキセタン化合物が好ましい。このようなオキセタン化合物を使用することで、インクジェットインク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、形成された画像と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0045】
上記オキセタン化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0046】
単官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル[ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0047】
多官能オキセタン化合物の例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3'−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0048】
このようなオキセタン化合物については、上記特開2003−341217号公報の段落0021乃至0084に詳細に記載されているものを好適に使用し得る。
【0049】
上記オキセタン化合物の中でも、インクジェットインク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。
【0050】
本発明のインクジェットインク組成物に用い得るカチオン重合性化合物としては、硬化性及び耐擦過性の観点から、オキシラン化合物及びオキセタン化合物が好適であり、オキシラン化合物及びオキセタン化合物の両方を含有する態様がより好ましい。ここで、「オキシラン化合物」とは、分子内に、少なくとも1つのオキシラン環(オキシラニル基、エポキシ基)を含む化合物のことであり、具体的にはエポキシ樹脂として通常用いられているものの中から適宜選択することができ、例えば、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。上記オキシラン化合物を含有する重合性化合物は、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよい。
【0051】
上述したカチオン重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0052】
<重合開始剤>
本発明のインクジェットインク組成物を構成する重合開始剤としては、エネルギー線によって重合反応又は架橋反応を開始させるものが好ましい。上記インクジェットインク組成物が重合開始剤を含むことにより、被記録媒体に付与されたインクジェットインク組成物をエネルギー線の照射によって硬化させることができる。
【0053】
上記重合開始剤は、本発明のインクジェットインク組成物を構成する重合性化合物が上記ラジカル重合性化合物である場合には、ラジカル重合を起こさせる重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含有することが好ましく、上記重合性化合物が上記カチオン重合性化合物である場合には、カチオン重合を起こさせる重合開始剤(カチオン重合開始剤)を含有することが好ましく、それらが光重合開始剤であることが特に好ましい。
【0054】
上記光重合開始剤としては、照射されるエネルギー線、例えば、200〜400nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線、LED光線又はイオンビーム等に感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0055】
具体的な光重合開始剤は、当業者間で公知のものを制限なく使用できる。好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。以下、各化合物の具合例を示す。
【0056】
上記(a)芳香族ケトン類の例としては、ベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物、α−チオベンゾフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、α−置換ベンゾイン化合物、ベンゾイン誘導体、アロイルホスホン酸エステル、ジアルコキシベンゾフェノン、ベンゾインエーテル類、α−アミノベンゾフェノン類、p−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、チオ置換芳香族ケトン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイド、アシルホスフィン、チオキサントン類、クマリン類等を挙げることができる。
【0057】
上記(b)芳香族オニウム塩としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、又はIの芳香族オニウム塩が含まれる。ヨードニウム塩類、スルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等が好適に使用される。これらの塩は活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0058】
上記(c)有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれる。
【0059】
上記(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物の例としては、ロフィンダイマー類が挙げられる。
【0060】
上記(e)ケトオキシムエステル化合物の例としては、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0061】
上記(f)ボレート化合物の例としては、米国特許第3,567,453号明細書、米国特許第4,343,891号明細書、欧州特許第109,772号明細書、欧州特許第109,773号明細書に記載されている化合物が挙げられる。
【0062】
上記(g)アジニウム化合物の例としては、特開昭63−138345号公報、特開昭63−142345号公報、特開昭63−142346号公報、特開昭63−143537号公報、特公昭46−42363号公報に記載されているN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0063】
上記(h)メタロセン化合物の例としては、チタノセン化合物、鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
【0064】
上記(i)活性エステル化合物の例としては、ニトロベンズルエステル化合物、イミノスルホネート化合物等が挙げられる。
【0065】
上記(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、たとえば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42,2924(1969)に記載されている化合物や、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)に記載されている化合物を挙げることができる。
【0066】
本発明のインクジェットインクに用いられる重合開始剤としては、硬化性の点から、上述した化合物の中でも、芳香族ケトン類が好ましく、ベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物がより好ましく、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイドが特に好ましい。
【0067】
上記重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、重合開始剤の感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。なお、増感剤については後述する。
【0068】
上記重合開始剤の含有量は、インク中の全固形分に対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。0.1質量%以上であれば、十分な硬化性が得られ、20質量%以下であれば、インクの低温保管時にも析出・沈殿することによる不具合を防ぐことができる。
【0069】
本発明のインクジェットインクにおいて、上記重合開始剤と上記重合性化合物との含有比(質量比)は、0.5:100〜30:100であることが好ましく、1:100〜15:100であることがより好ましい。質量比が0.5:100以上であれば、十分な硬化性が得られ、30:100以下であれば、インクの低温保管時にも析出・沈殿することによる不具合を防ぐことができる。
【0070】
上記ラジカル重合開始剤としては、硬化性の点から、上述の光重合開始剤の中でも、芳香族ケトン類が好ましく、ベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物がより好ましく、α−アミノアルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物が特に好ましい。上記カチオン重合開始剤としては、硬化性の点から、上述の光重合開始剤の中でも、芳香族オニウム塩が好ましく、ヨードニウム塩、スルホニウム塩がより好ましく、ヨードニウム塩のPF
6塩、スルホニウム塩のPF
6塩が特に好ましい。
【0071】
上記カチオン重合開始剤又は上記ラジカル重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、重合開始剤の感度向上の目的で、公知の増感剤を併用することもできる。
【0072】
上記カチオン重合開始剤又は上記ラジカル重合開始剤の含有量は、インクジェットインク組成物中の全固形分に対し、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0073】
本発明のインクジェットインク組成物において、上記重合開始剤と上記重合性化合物との含有比(質量比)は、0.5:100〜30:100であることが好ましく、1:100〜15:100であることがより好ましい。
【0074】
<非反応性樹脂>
本発明のインクジェットインク組成物を構成する非反応性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及びケトン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。これらの樹脂であれば、本発明のインクジェットインク組成物の粘度の調整が容易となる。
【0075】
上記アクリル系樹脂としては、三菱レイヨン社製の“ダイヤナールBR113”、ジョンソンポリマー社製の“ジョンクリル”、積水化学社製の“エスレックP”等が挙げられる。上記ポリエステル系樹脂としては、ユニチカ社製の“エリーテル”、東洋紡社製の“バイロン”等が挙げられる。上記ポリウレタン系樹脂としては、東洋紡社製の“バイロンUR”、大日精化社製の“NT−ハイラミック”、大日本インキ化学工業社製の“クリスボン”、日本ポリウレタン社製の“ニッポラン”等が挙げられる。上記塩化ビニル系樹脂としては、日信化学工業社製の“SOLBIN”、積水化学社製の“セキスイPVC−TG”、“セキスイPVC−HA”、ダウケミカル社製のUCARシリーズ等が挙げられる。上記ケトン系樹脂としては、エボニック テゴ ケミー社製の“TEGO VariPlusSK”等が挙げられる。
【0076】
上記非反応性樹脂の含有量は、インクジェットインク組成物の全量に対して6質量%以上30質量%以下であることが好ましい。上記非反応性樹脂の含有量が上記範囲であれば、画像の密着性を確実に向上できる。
【0077】
<有機溶剤>
本発明のインクジェットインク組成物を構成する有機溶剤としては、沸点が125〜220℃の有機溶剤であれば特に限定されず、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトシキブチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、1,3-ブタンジオール、シクロヘキサノール、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン等を使用できる。
【0078】
上記有機溶剤の含有量は、インクジェットインク組成物の全量に対して20質量%以上70質量%以下が好ましい。上記有機溶剤の含有量が上記範囲であれば、上記非反応性樹脂を確実に溶解でき、本発明のインクジェットインク組成物の粘度の調整が容易となる。
【0079】
また、上記非反応性樹脂の含有量と上記有機溶剤の含有量との質量比は、1:1〜1:10であることが好ましい。上記非反応性樹脂の含有量と上記有機溶剤の含有量との質量比が上記範囲であれば、上記非反応性樹脂を上記有機溶剤で十分に溶解することができ、本発明のインクジェットインク組成物の粘度の上昇を抑制できる。
【0080】
<着色剤>
本発明のインクジェットインク組成物を構成する着色剤としては特に限定されず、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料等から適宜選択して用いることができるが、本発明のインクジェットインク組成物は非水系であることから、非水溶性媒体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料、顔料が好ましい。
【0081】
次に、本発明のインクジェットインク組成物に好適な顔料について説明する。顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、トリポン、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、黄鉛、クロムイエロー、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ピリジアン、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカ等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾ系、アゾメチン系、ポリアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリン系等の有機顔料が挙げられる。また、酸性、中性または塩基性カーボンからなるカーボンブラックを用いてもよい。更に、架橋したアクリル樹脂の中空粒子等も有機顔料として用いてもよい。
【0082】
本発明のインクジェットインク組成物には、通常、黒色、並びにシアン、マゼンタ、及びイエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相を有する顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料等も目的に応じて用いることができる。
【0083】
まず、原色(マゼンタ、シアン、イエロー)に黒色あるいは白色を加えたものを基本色として使用する顔料から説明する。なお、顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.:The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメントに分類されている化合物、即ち、下記に示すようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものが挙げられる。
【0084】
上記マゼンタ色を呈する顔料として、例えば、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン、チバ・スペシャリティケミカルズ社製の“CINQUASIA Magenta RT−355T”)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0085】
上記シアン色を呈する顔料として、例えば、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の“IRGALITE BLUE GLO”)(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0086】
上記イエロー色を呈する顔料として、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等)、C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー200(Novoperm Yellow 2HG)の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
【0087】
上記黒色を呈する顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、デグサ社製の“SPECIAL BLACK 250”が例示できる。
【0088】
上記白色を呈する顔料としては、PigmentWhite 6,18,21が例示できる。また、白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO
3Pb(OH)
2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO
2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)等が利用可能である。
【0089】
ここで、上記酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく、化学的・物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
【0090】
上記例示した顔料の中でも、シアン色を呈する顔料がピグメントブルー15:3又はピグメントブルー15:4であることが好ましく、マゼンタ色を呈する顔料がピグメントレッド122、ピグメントレッド202又はピグメントバイオレット19であることが好ましく、イエロー色を呈する顔料がピグメントイエロー150、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー155であることがより好ましい。また、白色を呈する顔料が酸化チタンであることが好ましい。
【0091】
次に、色再現性に優れた画像を形成するために、場合によって用いるバイオレット色、ブルー色、グリーン色、オレンジ色、レッド色等を呈する顔料について説明する。
【0092】
上記バイオレット色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンB)、C.I.ピグメントバイオレット2(ローダミン3B)、C.I.ピグメントバイオレット3(メチルバイオレットレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット3:1(メチルバイオレットレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット3:3(メチルバイオレットレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット5:1(アリザリンマルーン)、C.I.ピグメントバイオレット13(ウルトラマリンピンク)、C.I.ピグメントバイオレット17(ナフトールAS)、C.I.ピグメントバイオレット23(ジオキサジンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット25(ナフトールAS)、C.I.ピグメントバイオレット29(ペリレンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット31(ビオランスロンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット32(ベンズイミダゾロンボルドーHF3R)、C.I.ピグメントバイオレット36(チオインジゴ)、C.I.ピグメントバイオレット37(ジオキサジンバイオレット)、C.I.ピグメントバイオレット42(キナクリドンマルーンB)、C.I.ピグメントバイオレット50(ナフトールAS)等が市販品として入手可能である。
【0093】
上記ブルー色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー22、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー66等が市販品として入手可能である。
【0094】
上記グリーン色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン1(ブリリアントグリーンレーキ)、C.I.ピグメントグリーン4(マラカイトグリーンレーキ)、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン8(ピグメントグリーンB)、C.I.ピグメントグリーン10(ニッケルアゾイエロー)、C.I.ピグメントグリーン36(臭素化フタロシアニングリーン)等が市販品として入手可能である。
【0095】
上記オレンジ色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ1(ハンザイエロー3R)、C.I.ピグメントオレンジ2(オルソニトロオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ3(βナフトール)、C.I.ピグメントオレンジ4(ナフトールAS)、C.I.ピグメントオレンジ5(βナフトール)、C.I.ピグメントオレンジ13(ピラゾロンオレンジG)、C.I.ピグメントオレンジ15(ジスアゾオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ16(アニシジンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ17(ペルシアンオレンジレーキ)、C.I.ピグメントオレンジ19(ナフタレンイエローレーキ)、C.I.ピグメントオレンジ24(ナフトールオレンジY)、C.I.ピグメントオレンジ31(縮合アゾオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ34(ピアゾロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ36(ベンズイミダゾロンオレンジHL)、C.I.ピグメントオレンジ38(ナフトールオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ40(ピランスロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ43(ペリノンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ46(エチルレッドレーキC)、C.I.ピグメントオレンジ48(キナクリドンゴールド)、C.I.ピグメントオレンジ49(キナクリドンゴールド)、C.I.ピグメントオレンジ51(ピランスロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ60(イミダゾロンオレンジHGL)、C.I.ピグメントオレンジ61(イソインドリノンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ62(ベンズイミダゾロンオレンジH5G)、C.I.ピグメントオレンジ64(ベンズイミダゾロン)、C.I.ピグメントオレンジ65(アゾメチンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ67(ピラゾロキナゾロンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ68(アゾメチンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ69(イソインドリノンオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ71(ジケトピロロピロールオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ72(イミダゾロンオレンジH4GL)、C.I.ピグメントオレンジ73(ジケトピロロピロールオレンジ)、C.I.ピグメントオレンジ74(ナフトールオレンジ2RLD)、C.I.ピグメントオレンジ81(ジケトピロロピロールオレンジ)等が市販品として入手可能である。
【0096】
上記レッド色を呈する顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270等が市販品として入手可能である。
【0097】
上記例示した顔料の中でも、色再現性、耐光性や顔料分散物の安定性の観点から、バイオレット色を呈する顔料としてはC.I.ピグメントバイオレット23が好ましく、オレンジ色を呈する顔料としてはC.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ71が好ましく、グリーン色を呈する顔料としてはC.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36が好ましい。
【0098】
本発明のインクジェットインクとしては、上述したマゼンタ色、シアン色、イエロー色、黒色又は白色の基本色を呈する顔料及び/又は染料を含有するインクジェットインク組成物と、上記基本色以外の色(バイオレット、ブルー、グリーン、オレンジ、レッド等)を呈する顔料を含有するインクジェットインク組成物と、を使用することが好ましい。
【0099】
上記着色剤は、1種単独のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、本発明においては、2種類以上の有機顔料又は有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。また、打滴する液滴及び液体ごとに異なる着色剤を用いてもよいし、同一の着色剤を用いてもよい。
【0100】
上記着色剤の分散には、例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
【0101】
上記着色剤の分散を行う際には、分散剤を添加することができる。分散剤としては、その種類に特に制限はないが、公知の高分子分散剤を用いることが好ましい。高分子分散剤としては、BYKケミー社製の“DisperBYK−101”、“DisperBYK−102”、“DisperBYK−103”、“DisperBYK−106”、“DisperBYK−111”、“DisperBYK−161”、“DisperBYK−162”、“DisperBYK−163”、“DisperBYK−164”、“DisperBYK−166”、“DisperBYK−167”、“DisperBYK−168”、“DisperBYK−170”、“DisperBYK−171”、“DisperBYK−174”、“DisperBYK−182”;エフカアディティブ社製の“EFKA4010”、“EFKA4046”、“EFKA4080”、“EFKA5010”、“EFKA5207”、“EFKA5244”、“EFKA6745”、“EFKA6750”、“EFKA7414”、“EFKA7462”、“EFKA7500”、“EFKA7570”、“EFKA7575”、“EFKA7580”;サンノプコ社製の“ディスパースエイド6”、“ディスパースエイド8”、“ディスパースエイド15”、“ディスパースエイド9100”;アビシア社製の“ソルスパース(Solsperse)3000”、“ソルスパース5000”、“ソルスパース9000”、“ソルスパース12000”、“ソルスパース13240”、“ソルスパース13940”、“ソルスパース17000”、“ソルスパース24000”、“ソルスパース26000”、“ソルスパース28000”、“ソルスパース32000”、“ソルスパース36000”、“ソルスパース39000”、“ソルスパース41000”、“ソルスパース71000”;旭電化社製の“アデカプルロニックL31”、“F38”、“L42”、“L44”、“L61”、“L64”、“F68”、“L72”、“P95”、“F77”、“P84”、“F87”、“P94”、“L101”、“P103”、“F108”、“L121”、“P−123”;三洋化成社製の“イソネットS−20”;楠本化成社製の“ディスパロン KS−860”、“873SN”、“874”(高分子分散剤)、“#2150”(脂肪族多価カルボン酸)、“#7004”(ポリエーテルエステル型)等が挙げられる。
【0102】
また、上記分散剤は、エフカ社製のフタロシアニン誘導体“EFKA−745”、アビシア社製の“ソルスパース5000”、“ソルスパース12000”、“ソルスパース22000”等の顔料誘導体と併用することもできる。
【0103】
上記分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、例えば、インクジェットインク組成物全量に対し、0.01〜5質量%と設定できる。
【0104】
また、上記着色剤を添加するにあたっては、必要に応じて、分散助剤として、各種着色剤に応じたシナージストを用いることも可能である。
【0105】
上記着色剤の平均粒径は、微細なほど発色性に優れるため、0.01μm以上0.4μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.02μm以上0.2μm以下の範囲である。最大粒径は好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下となるよう、着色剤、分散剤、分散媒の選定、分散条件、ろ過条件を設定することが好ましい。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、透明性及び硬化感度を維持することができる。本発明においては、分散性、安定性に優れた上記分散剤を用いることにより、微粒子着色剤を用いた場合でも、均一で安定な分散物が得られる。インク中における着色剤の粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
【0106】
上記着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、画像濃度及び保存安定性の観点から、インクジェットインク組成物全量に対し、0.3〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0107】
<その他の成分>
本発明のインクジェットインク組成物には、インクの表面張力の制御、着色剤及び非反応性樹脂の分散安定性の向上のため、界面活性剤を更に含有させてもよい。上記界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤を添加した場合、ノズル近傍でのインク中の固形分の付着を抑制し、吐出性を向上できる。アセチレングリコール系界面活性剤を添加した場合、動的表面張力を低下させ、吐出性を向上できる。シリコン系界面活性剤を添加した場合、インク非吸収性材料に対する濡れ性を向上できる。
【0108】
また、本発明のインクジェットインク組成物には、必要に応じて、インクジェットインク分野で従来から用いられている、消泡剤、殺菌剤、保湿剤、pH調整剤、貯蔵安定化剤、ゲル化防止剤、防腐剤、防錆剤等の添加剤を添加することができる。
【0109】
(画像形成方法)
次に、本発明の画像形成方法について説明する。本発明の画像形成方法は、上記本発明のインクジェットインク組成物を用いた画像形成方法であって、インクジェットプリンタを用いて上記インクジェットインク組成物を被記録媒体に吐出する際に、加熱したプラテンにより上記被記録媒体を加熱することにより、吐出された上記インクジェットインク組成物を乾燥することを特徴とする。また、本発明の画像形成方法は、上記インクジェットプリンタのヘッド部にエネルギー線照射源が配置され、上記ヘッド部から上記インクジェットインク組成物を吐出しながらエネルギー線を照射して、吐出された上記インクジェットインク組成物を硬化させることが好ましい。
【0110】
上記プラテンによる加熱温度は、通常40℃以上であればよいが、好ましくは40℃以上80℃以下の範囲であり、より好ましくは45℃以上60℃以下である。加熱温度が80℃を超えると、被記録媒体が変形する等の問題が生じることがある。上記プラテンによる加熱は、インクジェットインク組成物が被記録媒体に付着された際にこれとほぼ同時に加熱処理を施す場合であるが、インクジェットインク組成物が被記録媒体に付着される前に加熱ロールにより被記録媒体を予め加熱してもよいし、また、インクジェットインク組成物が被記録媒体に付着された後に更に加熱ロールにより被記録媒体と共に加熱してもよい。
【0111】
上記被記録媒体としては、紙等のインク吸収性材料からなる基材や、プラスチック、金属等のインク非吸収性材料からなる基材を用いることができるが、本発明の画像形成方法は、特にインク非吸収性材料からなる基材を用いる場合に適している。
【実施例】
【0112】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
【0113】
表1に、下記の実施例及び比較例において、インクジェットインクに使用した成分をまとめた。
【0114】
【表1】
【0115】
(実施例1〜26及び比較例1〜5)
先ず、実施例1〜26及び比較例1〜5のインクジェットインクを次のようにして調製した。即ち、プラスチック製ビンに、表2〜4に示す各成分のうち、着色剤、顔料分散剤、単官能重合性モノマー及び二官能重合性モノマーを表2〜4に示す配合量(単位:質量部)で計り取り、これに直径0.1mmのジルコニアビーズ100部を加えて、この混合物をペイントコンディショナー(東洋精機社製)により2時間分散処理した。その後、この混合物に表2〜4に示す各成分のうち残りの成分を表2〜4に示す配合量(単位:質量部)で加え、マグネチックスターラーにより混合物を30分撹拌した。撹拌後、グラスフィルター(桐山製作所製)を用いて、この混合物を吸引ろ過し、各インクジェットインクを調製した。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
次に、上記実施例1〜26及び比較例1〜5のインクジェットインクについて、下記に示す方法によって、粘度、表面張力、表面粗さ、硬化収縮、密着性、吐出性及び乾燥性を評価した。
【0121】
<粘度>
粘度は、東機産業社製の“R100型粘度計”を用いて、25℃、コーン回転数10rpmの条件下で測定した。
【0122】
<表面張力>
表面張力は、協和科学社製の全自動平衡式エレクトロ表面張力計“ESB−V”を用いて、25℃の条件下において測定した。
【0123】
<表面粗さ>
インクジェットインクとミマキエンジニアリング社製のUV−LEDプリンタ“UJF−3042”とを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製“A−4300”)の100mm×100mmの領域に100%べた印刷を行った。但し、上記プリンタのプラテン部分にヒーターを設置し、上記フィルムの印刷表面の温度が50℃となるように設定した。また、印刷記録密度は720×900dpiとし、バリアブルドットを12パスとし、インクの粘度は25℃で10mPa・sを超える場合には上記プリンタのヘッド温度調節機能を用いて10mPa・s程度となるように調整した。
【0124】
次に、上記印刷表面の表面粗さ(Ra)を3次元表面構造解析顕微鏡“Zygo New View 5030”を用いて測定した。測定条件は、下記のとおりとした。
カメラモード:640×480(20Hz)
波長幅−1:0.6000μm
波長幅−2:0.6000μm
スキャン長:40μm
拡張スキャン長:1000μm
【0125】
上記測定結果に基づき、表面粗さ(Ra)が0.5μm未満の場合をA(優秀)、表面粗さ(Ra)が0.5μm以上1.0μm未満の場合をB(良好)、表面粗さ(Ra)が1.0μm以上の場合をC(不良)と評価した。
【0126】
<硬化収縮>
PETフィルム(東洋紡社製“A−4300”、厚さ:100μm)上に、インクジェットインクをバーコータ(♯4)により印刷して、厚さ3μmの印字膜を形成した。この印字膜に、アイグラフィックス社製の紫外線照射装置“ECS−151S”を用い、トータル照射光量が200mJ/cm
2となるように紫外線を照射してインクを硬化させて、試験サンプルを作製した。
【0127】
次に、得られた試験サンプルを100mm×100mmの正方形にカットして評価試験片とし、この評価試験片を平坦な板に印刷面を上にして載置して、下記の基準で硬化収縮を評価した。
A(優秀):評価試験片の四隅の全てに反り返りが見られない場合
B(良好):評価試験片に反り返りは見られるものの、評価試験片の四角の浮き上がった部分の合計高さが30mm未満の場合
C(不良):評価試験片の四角の浮き上がった部分の合計高さが30mm以上の場合
【0128】
<密着性>
インクジェットインクとミマキエンジニアリング社製のUV−LEDプリンタ“UJF−3042”とを用いて、被記録媒体の100mm×100mmの領域に100%べた印刷を行い、評価用サンプルを作製した。但し、上記プリンタのプラテン部分にヒーターを設置し、被記録媒体の印刷表面の温度が50℃となるように設定した。また、印刷記録密度は720×900dpiとし、バリアブルドットを12パスとし、インクの粘度は25℃で10mPa・sを超える場合には上記プリンタのヘッド温度調節機能を用いて10mPa・s程度となるように調整した。また、被記録媒体としては、下記の4種類を用いた。
PETフィルム(東洋紡社製“A−4300”、厚さ:100μm)
アクリル樹脂フィルム(クラレ社製“トレーディング”、厚さ:1.0mm)
ポリカーボネートフィルム(旭硝子社製“レキサンフイルム 8B35”、厚さ:0.13mm)
ガラス基板(MATSUNAMI社製、標準大型白縁磨:No2 S9112)
金属基板(株式会社光社製のアルミニウム板“HA246T”)
【0129】
次に、得られた評価用サンプルを用いて、日本工業規格(JIS)5600−5−6−1999に準拠した碁盤目剥離試験を行った。その結果、試験升目100個に対して剥離が全く見られなかった場合を密着性:A(良好)、剥離が1〜5個見られた場合を密着性:B(やや不良)、及び剥離が6個所以上見られた場合を密着性:C(不良)と評価した。
【0130】
<吐出性>
インクジェットインクとミマキエンジニアリング社製のUV−LEDプリンタ“UJF−3042”とを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製“A−4300”)の100mm×100mmの領域に100%べた印刷を行い、評価用サンプルを作製した。但し、上記プリンタのプラテン部分にヒーターを設置し、被記録媒体の印刷表面の温度が50℃となるように設定した。また、印刷記録密度は720×900dpiとし、バリアブルドットを12パスとし、インクの粘度は25℃で10mPa・sを超える場合には上記プリンタのヘッド温度調節機能を用いて10mPa・s程度となるように調整した。
【0131】
べた印刷物を作製後、テスト作図を行いインク吐出不良部(ノズル抜け)の頻度を確認した。その結果、ノズル抜けが3箇所未満の場合を吐出性:A(優秀)、ノズル抜けが3箇所以上10箇所未満の場合を吐出性:B(良好)、ノズル抜けが10箇所以上の場合を吐出性:C(不良)と評価した。
【0132】
<乾燥性>
インクジェットインクとミマキエンジニアリング社製のUV−LEDプリンタ“UJF−3042”とを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製“A−4300”)の100mm×100mmの領域に100%べた印刷を行い、評価用サンプルを作製した。但し、上記プリンタのプラテン部分にヒーターを設置し、被記録媒体の印刷表面の温度が50℃となるように設定した。また、印刷記録密度は900×600dpiとし、インクの粘度は上記プリンタのヘッド温度調節器を用いて9〜12mPa・sとなるように調整した。
【0133】
次に、得られた評価用サンプルの印刷表面を指で触り、表面状態を下記の基準で評価した。
A(良好):表面はさらさらしており、有機溶剤の残存は無く、指への付着感が無い場合
B(やや不良):表面はややしっとりとしており、有機溶剤がやや残存しており、指への付着感が有る場合
C(不良):表面はべたべたしており、有機溶剤が残存しており、指に有機溶剤の一部が付着する場合
【0134】
以上の結果を表6〜9に示す。
【0135】
【表6】
【0136】
【表7】
【0137】
【表8】
【0138】
【表9】
【0139】
表6〜9から、本発明のインクジェットインクは、全ての評価項目で満足できる結果を得た。一方、インクの粘度が30mPa・sを超えた比較例1では吐出性が劣り、非反応性樹脂を含まない比較例2では密着性が劣り、有機溶剤の沸点が125℃を下回った比較例3では吐出性が劣り、有機溶剤の沸点が220℃を超えた比較例4では乾燥性が劣り、有機溶剤を含まない比較例5では表面粗さに劣ることが分かる。