特許第6134549号(P6134549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134549
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/48 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   B60N2/48
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-58512(P2013-58512)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-181002(P2014-181002A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】野村 章
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−152450(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/017539(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/48
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックに取付けられるヘッドレストを有する乗物用シートであって、
前記ヘッドレストに、
前記ヘッドレストから延出される脚部が前記シートバックに回動自在に支持される左右一対のフレーム部材と、
前記左右一対のフレーム部材の上端側を、前後左右の方向に弾性を有するように連結する連結体と
を備えることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記連結体は、前記左右一対のフレーム部材の上端側を連結する弾性部材と、前記弾性部材を収納・保持するケースとを備えて構成されることを特徴とする請求項記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記弾性部材はバネであることを特徴とする請求項記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートバックに取付けられるヘッドレストを有する乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗物においては、走行時にフロア振動が乗員の着座するシートに伝わり、不快な振動となる。特に、乗員の背部を支持するシートバックを有するシートでは、所定の周波数付近(例えば20Hz付近)での共振が発生し、乗員に不快感を与える虞がある。
【0003】
このようなシートの振動対策のため、特許文献1には、ヘッドレストフレームを関節部を介して屈曲動作可能な状態でシートバックフレームに連結することで、ヘッドレストがシートバックに対して左右に回動可能(振子運動可能)とし、ヘッドレストをシートバックに対する回動範囲の中間位置へ付勢することで、シートに左右方向の振動が加えられた際にヘッドレストをダイナミックダンパとして機能させ、振動を低減する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2010/150373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるようなヘッドレストをダイナミックダンパとして利用する技術では、シートバックの質量に対してヘッドレストの質量を大きくする程、振動の減衰効果が大きくすることができるが、ヘッドレストの質量を増加させるには限界があり、振動減衰効果を十分に得ることは困難である。
【0006】
また、特許文献1の技術では、ヘッドレストをダイナミックダンパとして利用するため、ヘッドレストのシートバックへの取り付け部を弾性支持しており、左右方向の振動に対しては有効であるが、前方からの衝撃力を吸収して乗員の頭部を鞭打ち症等から保護するというヘッドレスト本来の機能を十分に発揮することが困難となる虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、シートバックに取付けられるヘッドレストによってシート振動を効果的に低減すると共に前後方向の衝撃吸収力を向上することのできる乗物用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による乗物用シートは、シートバックに取付けられるヘッドレストを有する乗物用シートであって、前記ヘッドレストに、前記ヘッドレストから延出される脚部が前記シートバックに回動自在に支持される左右一対のフレーム部材と、前記左右一対のフレーム部材の上端側を、前後左右の方向に弾性を有するように連結する連結体とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シートバックに取付けられるヘッドレストによってシート振動を効果的に低減すると共に前後方向の衝撃吸収力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両用シートを示す斜視図
図2】シートバックの一部とヘッドレストの内部構成を示す説明図
図3】ダイナミックダンパの作用を示す説明図
図4】ヘッドレストの前後方向の変形を平面視で示す説明図
図5】ヘッドレストの前後方向の変形を側面視で示す説明図
図6】シートの振動レベルの実測結果を示す特性図
図7】ヘッドレスト上端の振動レベルの実測結果を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は、自動車等の乗物に設置され、着座時の乗員の身体を支持するシートである。このシート1は、シート本体2と、シート本体2の上部に取り付けられて乗員の頭部を保護するためのヘッドレスト3とを備えている。
【0012】
シート本体2は、乗員の尻部を支持するシートクッション4と、乗員の背部を支持するシートバック5とによって構成されている。シートクッション4は、図示しない車体のフロアに連結され、シートバック5は、下端部が図示しないリクライニング機構を介してシートクッション4に連結されている。
【0013】
尚、図1中に示すX軸方向は、シート本体2を構成するシートバック5の左右方向、Y軸方向はシートバック5の前後方向、Z軸方向はシートバック5の上下方向を示している。以下の説明では前後左右上下の方向性はシートバック5に対する方向性を示すものとする。
【0014】
ヘッドレスト3は、図2に示すように、シートバック5の骨格部材であるシートバックフレーム6上部のX軸方向(左右方向)の部位を形成するアッパクロスメンバ6aに、左右一対のソケット7を介して取り付けられている。ソケット7は、Z軸方向(上下方向)に沿って配置された筒状の部材であり、このソケット7に、ヘッドレスト3から延出されるヘッドレストフレーム10が支持されている。
【0015】
ヘッドレストフレーム10は、ヘッドレスト3内にZ軸方向(上下方向)に配設されて左右に分割された一対のフレーム部材11を備えており、ヘッドレスト3に充填されたウレタン層3a等の緩衝材によって覆われている。各フレーム部材11は、ヘッドレスト10の外部に延出される脚部11aと、互いに対向するようにX軸方向(左右方向)に屈曲された上側の上端部11bとを備えて構成されている。
【0016】
左右のフレーム部材11は、脚部11aがソケット7に回転自在に挿通されて支持され、上端部11bが連結体12を介して弾性的に連結されている。連結体12は、左右のフレーム部材11の上端部11bを、Y軸及びX軸の各方向(前後左右の各方向)で弾性を有するように連結している。本実施の形態においては、連結体12は、左右のフレーム部材11の上端部11b同士を中央部で連結する弾性部材13と、この弾性部材13を収納・保持するパイプ状の金属材或いは樹脂材で形成されたケース14とを備えて構成されている。
【0017】
尚、図2においては、弾性部材13としてコイルバネを例示しているが、板バネでも良く、また、バネに代えて弾性ゴム等を用いても良い。また、ケース14は省略することも可能であるが、ケース14を使用する場合、ケース14内にオイル等の粘性流体や不活性ガス等の圧縮性流体を封入するようにしても良い。
【0018】
このような左右のフレーム部材11を弾性的に連結する連結体12は、大きな質量を要することなくシートバック5の振動をXYの各軸方向で低減するダイナミックダンパとして機能させることができる。しかも、ダイナミックダンパによる振動低減のみならず、車両衝突等によるY軸方向の衝撃力に対する衝撃吸収ストロークを増加させることができ、ヘッドレスト3本来の乗員の頭部保護機能を向上させることができる。更には、ヘッドレスト3のウレタン層3a等の緩衝材の層を薄くすることができ、小型軽量化を図ることが可能となる。
【0019】
図3(a)に示すように、ヘッドレスト3の等価質量をM1、シートバック5の等価質量をM2とするとき、ヘッドレスト3及びシートバック5の各フレームをバネとする系の振動を効果的に低減するには、ヘッドレスト3の共振点をシートバック5の共振点に略一致させて逆位相で振動を相殺させれば良い。この場合、一般的に、ヘッドレストは、シートバックに比較して質量が小さく相対的に短いフレーム長によって剛性が高いため、共振周波数が高い。従って、ヘッドレスト3の共振周波数をシートバック5の共振周波数に一致するように低下させる必要がある。
【0020】
本実施の形態においては、ヘッドレスト3の左右のフレーム部材11を連結体12で弾性的に連結することにより、ヘッドレストフレーム10を含むヘッドレスト3全体の各軸方向の剛性を下げて共振周波数を低下させるようにしている。その結果、図3(b)に実線で示す質量M2でシートバック振動Gm2における共振点Pに、一点鎖線で示す質量M1によるヘッドレスト振動Gm1における共振点を略一致させることが可能となり、破線で示すように質量M1及びM2による振動Gm1m2の振動レベルを大幅に低下させることが可能となる。
【0021】
また、図4(a),図5(a)に示すように、車両衝突等によりY軸方向(前後方向)に衝撃力Fが作用した場合においては、図4(b),図5(b)に示すように、ヘッドレスト3のウレタン層3aの変形に伴い、フレーム部材11の上端部11bと連結体12との結合部が後方にストロークするため、衝撃力を効果的に吸収することができる。更には、図5(c)に示すように、フレーム部材11の脚部11aをソケット7上部付近で後方に変形させることにより、図5(c),図4(c)に示すように、衝撃吸収のストロークを増加させ、衝撃エネルギー吸収量を増大させることができる。
【0022】
図6は、シートバック共振周波数とヘッドレスト共振周波数とを略一致させた場合の振動レベルの実測結果を例示している。図6からは、図中に破線で示す共振周波数を一致させる前のベースの振動レベルGbaseに比較して、図中に実線で示す共振周波数を一致させたときの振動レベルGhdが大幅に低くなっていることがわかる。
【0023】
この場合、図7に示すように、ヘッドレスト3の上端部における振動レベルGhdtpも、ベースの振動レベルGbaseに対して効果的に低減されている。従って、ヘッドレストの位置を上げてフレーム長を長くすることで剛性を下げて共振周波数を下げる等といった対策を取る必要がなく、身長の低い人に対して頭部の保護性能を低下させることもない。
【0024】
このように本実施の形態においては、ヘッドレスト3をシートバック5に取り付ける左右一対のフレーム部材11の上端側を、連結体12を介して、前後左右の各方向で弾性を有するように連結している。これにより、ヘッドレスト3全体の各方向の剛性を下げて共振周波数を低下させ、ヘッドレスト3の共振周波数をシートバック5の共振周波数に略一致させて不快なシート振動を低減することができるばかりでなく、前後方向の衝撃力に対する吸収ストロークを増加させて乗員保護性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 シート
2 シート本体
3 ヘッドレスト
5 シートバック
6 シートバックフレーム
6a アッパクロスメンバ
7 ソケット
10 ヘッドレストフレーム
11 フレーム部材
12 連結体
13 バネ
14 ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7