(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ナトリウム型ゼオライトが、ZSM−5(MFI)ゼオライトまたはモルデナイト(MOR)ゼオライトからなるものであることを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の燃焼排ガスの浄化方法。
請求項1に記載の船舶用機関、工場や発電所、または大規模ボイラーから排出される硫黄酸化物が存在する燃焼排ガスの浄化方法に使用される脱硝触媒であって、−7以下のハメットの酸度関数H0に相当する酸強度を有するナトリウム型ゼオライトに水素およびコバルトを担持させたものであり、還元剤としてアルコールを添加した燃焼排ガスに対し、180〜300℃の温度において接触させて使用されることを特徴とする、脱硝触媒。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃焼排ガス中に含まれている窒素酸化物(NOx)を除去する方法は、排ガスに還元剤としてアンモニア(NH
3)を添加したガスを、バナジウムやチタニアを主成分とする脱硝触媒に接触させることで除去するアンモニア選択接触還元(SCR)法が主流であり、定置型の発電所の脱硝装置として実用化されている。
【0003】
ところで、重油等の硫黄を含有する燃料を用いた場合、燃焼排ガス中には窒素酸化物(NOx)と共に硫黄酸化物(SOx)が存在する。硫黄酸化物が存在する場合の脱硝設備の運転温度は、触媒上への硫安の析出を防止する観点から、硫安の析出温度以上でなければならない。硫安の析出温度は排ガス中の三酸化硫黄(SO
3)濃度およびアンモニア(NH
3)濃度に関係があり、SO
3濃度およびNH
3濃度が高くなると、硫安の析出温度が高くなる。
【0004】
船舶用機関から排出される排ガスは、燃料がC重油であるため、排ガス中のSOx濃度は約600ppmであり、NOx濃度は約1000ppmである。また、還元剤として使用するNH
3濃度は最大800ppmである。従って、この時の硫安の析出温度は約280℃となる。一方、船舶用排ガス温度は300℃以下、通常250℃程度であるため、この条件では硫安が析出し、安定した触媒性能を維持することができない。
【0005】
このように、高濃度のSOxおよびNOxが存在し、排ガス温度が低い船舶用機関から排出される排ガスの浄化処理で、アンモニアSCR法による脱硝触媒を使用するには、硫安の析出温度を排ガス温度以下にする必要がある。硫安の析出温度は、SO
3濃度とNH
3濃度で決定される。NH
3濃度は排ガス中のNOx濃度と目標脱硝率で決まるため、この値を低減すること
はできない。従って、排ガス温度が硫安の析出温度より低い船舶用機関では、還元剤として使用するアンモニア(NH
3)を吹き込む前に排熱を利用して、排ガス温度を再加熱して硫安の析出温度以上にすることで、アンモニアSCR法による脱硝触媒の使用を行っている。
【0006】
その他、アンモニアSCR法以外の脱硝触媒としては、窒素酸化物を触媒と接触させるだけで窒素と酸素に分解する直接分解法がある。
【0007】
下記の特許文献1には、内燃機関から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物、特にNOを直接分解することができ、さらに分解によって発生する酸素(O
2)や、排ガス中に共存する酸素(O
2)による触媒活性の低下が極めて小さい窒素酸化物浄化触媒として、立方晶のC型構造を有する希土類酸化物ないし希土類複合酸化物からなる窒素酸化物浄化触媒が開示されている。しかしながら、この特許文献1に記載の窒素酸化物浄化触媒を用いた直接分解法による排ガスの浄化方法では、排ガス浄化の反応温度が600℃以上と、非常に高いという問題があった。
【0008】
下記の特許文献2には、硫黄酸化物を含む排ガスにおいても窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝性能を有する触媒を用いた排ガス浄化方法が開示されており、脱硝触媒として鉄、コバルト、銀、モリブデンまたはタングステンを担持させたβゼオライトを用い、還元剤としてのエタノ−ルおよび/またはイソプロピルアルコ−ルの存在下に、酸素過剰の排ガスを接触させることにより、排ガス中の窒素酸化物NOxを還元除去する排ガス浄化方法が記載されている。
【0009】
下記の特許文献3には、触媒としてプロトン型βゼオライトを用い、還元剤としてのエタノ−ルおよび/またはイソプロピルアルコ−ルの存在下に、酸素過剰の排ガスを接触させて、排ガス中の窒素酸化物NOxを還元除去する排ガス浄化方法が記載されている。
【0010】
下記の特許文献4には、触媒担体としてSiO
2/Al
2O
3比が27以上100以下のNa−ZSM−5ゼオライトまたはH−ZSM−5型ゼオライトを用いて、前記触媒担体をコバルト塩水溶液(コバルトの硝酸塩、酢酸塩、塩化物等)に浸し、その触媒担体のNa(またはH)部分とCoとを、イオン交換率40〜100%でイオン交換して、コバルトを担持したZSM−5型ゼオライトを脱硝触媒として用い、還元剤には、プロパン、ブタンを組成にもつ液化石油ガスを用いる排ガス浄化方法が記載されている。
【0011】
しかしながら、これらの特許文献2〜4に記載の脱硝触媒を用いた還元除去法による排ガスの浄化方法でも、排ガス浄化の反応温度が300℃〜500℃程度で、やはり高いものであるという問題があった。
【0012】
このように見てくると、船舶用機関の排ガス温度である300℃以下では、実用的な脱硝触媒性能を有する触媒は、現在のところ見出せていない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
本発明による燃焼排ガスの浄化方法は、燃焼排ガスの浄化方法であって、−7以下のハメットの酸度関数H
0に相当する酸強度を有するナトリウム型ゼオライトに水素およ
びコバルトを担持させた脱硝触媒に、還元剤としてアルコ−ルを添加した燃焼排ガスを、180〜300℃の温度において接触させることにより、排ガス中の窒素酸化物を除去することを特徴としている。
【0026】
本発明で用いる還元剤であるアルコ−ルとしては特に制限されず、一般的にはエタノール、メタノール、またはイソプロピルアルコールが好ましい。その理由は、完全に酸化されると考えられる炭素が少ないアルコ−ルが良いためである。
【0027】
これに対して、前記した特許文献3の実施例に使用されている還元剤である炭化水素は排ガス温度が高い場合にのみ有効である。また、炭化水素は可燃性ガスに指定されており、船舶では可燃性ガスを積載する場合には、安全装置などの設置が必要となるため、船舶機関排ガスの浄化方法の還元剤としては不都合である。
【0028】
本発明の燃焼排ガスの浄化方法に使用する脱硝触媒は、−7以下のハメットの酸度関数H
0に相当する酸強度を有するナトリウム型ゼオライトに、水素(H)およびコバルト(Co)を担持させたものである。
【0029】
ここで、ハメットの酸度関数H
0とは、固体酸表面の酸点が塩基にプロトンを与える能力(ブレンステッド酸性)あるいは塩基から電子対を受け取る能力(ルイス酸性)で定義され、pKa値で表わされるものであり、既知の指示薬法あるいは気体塩基吸着法等の方法で測定することができる。例えば、酸点へアンモニアが吸着する際の熱量を測定することにより、酸強度分布を測定するアンモニア吸着熱法を用いて測定することができる。
【0030】
そして、ゼオライトのハメットの酸強度H
0は、ゼオライトの組成比、ゼオライトの調製方法、ゼオライトの構造により変わる。
【0031】
また、ゼオライトのハメットの酸強度H
0はゼオライトの構造により、モルデナイト(MOR)<ZSM−5(MFI)<BEA(β)<Yのように決まる。
【0032】
従って、本発明による脱硝触媒において、ナトリウム型ゼオライトは、ZSM−5(MFI)ゼオライトまたはモルデナイト(MOR)ゼオライトからなるものであることが好ましい。
【0033】
前記した特許文献3に記載するプロトン型βゼオライトにCoを担時した触媒には、触媒表面にHとCoの酸点が存在する。本発明である−7以下のハメットの酸度関数H
0に相当する酸強度を有するナトリウム型ゼオライトにCoを担時した触媒には、触媒表面にNaとCoの酸点が存在する。そして、酸点の強さは、H>Co>Naであり、酸点が強いほど還元剤であるアルコ−ルが反応しやすいと考えられる。そのため、プロトン型では、脱硝反応とは関係のないプロトンとアルコ−ルの反応が起こり、アルコ−ルが余分に消費される可能性がある。ナトリウム型ゼオライトを用いることで、アルコ−ルの余分な消費が抑えられ、性能が向上する。
【0034】
本発明による脱硝触媒は、還元剤としてアルコ−ルを添加した燃焼排ガスに対し、180〜300℃の温度において接触させる。
【0035】
ここで、本発明の触媒によれば、排ガスの温度が180〜300℃ 程度の比較的低温であっても、窒素酸化物の優れた除去性能が得られる。また、船舶用排ガス温度は煙道にて約160℃になると、船舶用排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)が無水硫酸となり、水分と結合して硫酸(H
2SO
4)となって凝縮付着し金属を腐食させる現象(低温腐食の問題)が発生するために好ましくない。従って通常、船舶用排ガス温度は180℃以下にさせることはなく、本発明による脱硝触媒は、還元剤としてアルコ−ルを添加した燃焼排ガスに対し、180℃以上であることが好ましい。
【0036】
本発明の燃焼排ガスの浄化方法に使用する脱硝触媒の製造方法は、つぎの通りである。
【0037】
まず、−7以下のハメットの酸度関数H
0に相当する酸強度を有するナトリウム型のZSM−5(MFI)ゼオライトまたはモルデナイト(MOR)ゼオライトを、硝酸アンモニウム(NH
4NO
3)の水溶液に入れ、温度70〜90℃で、2〜24時間攪拌した後、濾過して洗浄する。ついで、濾過洗浄物を、温度100〜120℃で、1〜4時間乾燥し、NH
4−MFIゼオライトまたはNH
4−MORゼオライトを得る。
【0038】
その後、NH
4−MFIゼオライトまたはNH
4−MORゼオライトを、例えば硝酸コバルト[Co(NO
3)
2]、酢酸コバルト[Co(C
2H
3O
2)
2]、塩化コバルト[CoCl
2]、蟻酸コバルト[CoC
4H
14O
8)]等のコバルト化合物の水溶液に入れて、温度70〜90℃で、2〜24時間攪拌した後、濾過して洗浄する。ついで、濾過洗浄物を、温度100〜120℃で、1〜4時間乾燥し、さらに温度450〜550℃で、3〜5時間焼成することにより、Co/H−MFIゼオライトまたはCo/H−MORゼオライトを生成する。
【0039】
本発明による脱硝触媒において、Co担持量は、1〜4重量%であることが好ましい。
【0040】
ここで、コバルトイオンの担持量が1重量%未満であれば、担持量が少なく、つまり活性点が少なすぎるため、好ましくない。またコバルトイオンの担持量が4重量%を超えると、脱硝反応に寄与しない、表面のCo酸化物の割合が多くなるので、好ましくない。
【0041】
本発明の燃焼排ガスの浄化方法に使用する脱硝触媒は、例えばハニカム構造体に対してナトリウム型ゼオライト、並びに水素およびコバルトを担持させて、ハニカム型脱硝触媒として製造することもできる。
【0042】
まず、ガラスペーパーに、ナトリウム型ゼオライトと水とシリカゾルとからなるスラリーを塗布する工程を実施して、ハニカム構造体を作製するための基材を作製する。
【0043】
つぎに、上記のナトリウム型ゼオライト担持基材を波形に加工して波板状基材を得る工程と、上記の基材を平板に加工して平板状基材を得る工程と、該波板状基材と該平板状基材と交互に積層する工程を実施して、ハニカム構造体を作製する。
【0044】
さらに、上記の方法により作製されたナトリウム型ゼオライト担持ハニカム構造体に対して水素およびコバルトをイオン交換させる工程を実施して、ハニカム型脱硝触媒を作製する。
【0045】
あるいはまた、上記のナトリウム型ゼオライト担持基材を波形に加工して波板状基材を得る工程と、上記の基材を平板に加工して平板状基材を得る工程と、該波板状基材に対し水素およびコバルトをイオン交換させて波板状触媒を得る工程と、該平板状基材に対し水素およびコバルトをイオン交換させて平板状触媒を得る工程と、該波板状触媒と該平板状触媒を交互に積層する工程を実施して、ハニカム型脱硝触媒を作製する。
【0046】
このように、ガラスペーパーに、シリカゾルなどの無機バインダを用いてナトリウム型ゼオライトを固定し、これを成型することでハニカム構造体等の所望の形状のものを得ることができる。
【0047】
そして、この場合、濃度の高いスラリーを用いても目詰まりが生じるおそれがないので、濃度の高いスラリーを用いることができ、ナトリウム型ゼオライトを担持させる操作は1回で済む。また、基材上でナトリウム型ゼオライトを生成させる方法とは異なり、すでに調製されたナトリウム型ゼオライトを担持させるためナトリウム型ゼオライト生成に必要な高温、高圧条件を必要とせず、一般的な焼成炉であれば十分に作製可能である。
【0048】
また、作製したナトリウム型ゼオライト担持ハニカムに触媒成分の金属を担持させる場合にも、成型された担体であるため固液分離が容易にできる利点がある。
【0049】
ここで、ハニカム構造体を作製するための基材の作製から、最終的にハニカム型脱硝触媒を作製するまでの工程を、具体的に説明すれば、つぎの通りである。
【0050】
(基材の調製)
まず、ナトリウム型ゼオライト、水およびシリカゾルを混合してスラリーを作製する。
【0051】
本発明による脱硝触媒において、ナトリウム型ゼオライトは、ZSM−5(MFI)ゼオライトまたはモルデナイト(MOR)ゼオライトからなるものであることが好ましい。
【0052】
シリカゾルとしては、シリカを20重量%程度含む酸性タイプのものを用いることが可能である。
【0053】
また、スラリーを作製するに際して、ナトリウム型ゼオライト、水、およびシリカゾルの重量比は、例えば、100:100:46に調整される。
【0054】
ついで、こうして得られたスラリーをガラスペーパーに塗布する。このようなスラリーに含まれるシリカゾルは無機バインダとして機能し、コルゲート加工した場合に、波形の形状を保持することが可能であり、目的とする、コルゲート加工が可能な、ハニカム構造体を作製するための基材を得ることができる。
【0055】
ナトリウム型ゼオライト、水およびシリカゾルを混合して得られるスラリーを塗布するに際しては、従来公知の任意の方法を用いてよいが、例えば、いわゆるどぶ漬け方法、刷毛塗り方法、スプレー塗り方法、滴下塗布方法等が挙げられる。
【0056】
以上のようにしてナトリウム型ゼオライトが担持された平板状の基材が得られる。このように平板状のガラスペーパーに対してスラリーを塗布するので、スラリー濃度が高い場合に目詰まりが生じるおそれがなく、当初から高濃度のスラリーを塗布に用いることができ、1回の担持操作でナトリウム型ゼオライト担持基材を得ることができる。
【0057】
(基材の成型加工)
上記のようなナトリウム型ゼオライト担持基材は、コルゲータを用いて波形に成型することが可能であり、他方で、スラリーを塗布することにより加えられるシリカゾル等の無機バインダがガラスペーパーのバインダの役目を果たすことになり、ガラスペーパーの成型後に波形を保持することが可能になる。したがって、上記のナトリウム型ゼオライト担持基材は、ハニカム構造体を作製するのに適した材料である。
【0058】
上記のナトリウム型ゼオライト担持基材を用いてハニカム構造体を作製する場合、上記ナトリウム型ゼオライト担持基材に対する加工処理として種々の方法が考えられるが、その一方法として、上記基材をコルゲート加工処理にて波形に成型してこれを波板状基材とし、複数の波板状基材と、成型加工処理を施していない平坦な表面形状を有する複数の平板状基材とを交互に積層するようにしてハニカム構造を形成するようにする方法が挙げられる。
【0059】
上記のナトリウム型ゼオライト担持基材を波板状にする方法としては従来公知の種々の方法が用いられてよいが、例えば、波形の外周囲を有する歯車状の円盤上に上記のナトリウム型ゼオライト担持基材を回転移動させることによりこの円盤が有する外周囲の波形形状に沿った波板を得ることができる。あるいは、所定の形状を有する凹溝を有する金属パネルよりなる金型を使用し、金型状に載置したナトリウム型ゼオライト担持基材を、押さえ治具により金型の凹溝に沿って押さえつけて成型することも可能である。
【0060】
ついで、成型後の波板状基材に対して乾燥処理工程を行う。その際の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、空気雰囲気下110〜300℃の温度に1時間〜3時間の期間にわたって置かれる。
【0061】
上記のようにして得られた平板状基材および波板状基材は、焼成工程に付される。その際の条件は、特に限定されるものではないが、例えば、空気雰囲気下500〜550℃の温度に3時間にわたって置かれる。
【0062】
上記の乾燥後の平板用の基材を回転移動させる円盤は、ハニカム構造体を作製するに際しては、平板状基材と波板状基材が交互に配置されることになるので、波板用の円盤と並置させておくのが便利である。
【0063】
上記のように加工された波板状基材と平板状基材とを交互に積層することによりハニカム構造体を得ることができる。このハニカム構造体において、各平板状基材と波板状基材とは互いに接触している状態を保っていればよく、接触面にて接着させておいても、接着させずに、ケーシング等に納めることによりその接触状態を維持するようにさせてもよい。
【0064】
(ハニカム型脱硝触媒の作製)
上記のようにして得られたハニカム構造体に触媒活性を有する水素およびコバルトを担持させることによりハニカム型脱硝触媒を得ることができる。
【0065】
本発明においては、−7以下のハメットの酸度関数H
0に相当する酸強度を有するナトリウム型ゼオライトに水素およびコバルトを担持させる。
【0066】
上記のような水素およびコバルトをゼオライト上に担持させるためのイオン交換を行うに際して、上記のZSM−5(MFI)型ゼオライトまたはモルデナイト(MOR)型ゼオライトを担持したハニカム構造体を、硝酸アンモニウム(NH
4NO
3)の水溶液に入れ、温度70〜90℃で、2〜24時間浸漬した後、洗浄する。ついで、洗浄物を、温度100〜120℃で、1〜4時間乾燥し、NH
4−MFIゼオライトまたはNH
4−MORゼオライトを得る。
【0067】
その後、NH
4−MFIゼオライトまたはNH
4−MORゼオライトを、例えば硝酸コバルト[Co(NO
3)
2]、酢酸コバルト[Co(C
2H
3O
2)
2]、塩化コバルト[CoCl
2]、蟻酸コバルト[CoC
4H
14O
8)]等のコバルト化合物の水溶液に入れて、温度70〜90℃で、2〜24時間浸漬した後、洗浄する。ついで、洗浄物を、温度100〜120℃で、1〜4時間乾燥し、さらに温度450〜550℃で、3〜5時間焼成することにより、Co/H−MFIゼオライトまたはCo/H−MORゼオライトを生成し、本発明の脱硝触媒を担持したハニカム構造体、すなわちハニカム型脱硝触媒が得られる。本発明による脱硝触媒のCo担持量は、1〜4重量%であることが好ましい。
【0068】
なおここで、前述のように、ガラスペーパーに、ナトリウム型ゼオライトと水とシリカゾルとからなるスラリーを塗布する工程を実施して、ハニカム構造体を作製するための基材を作製し、つぎに、このナトリウム型ゼオライト担持基材を波形に加工して波板状基材を得る工程と、上記の基材を平板に加工して平板状基材を得る工程と、該波板状基材に対し水素およびコバルトをイオン交換させて波板状触媒を得る工程と、該平板状基材に対し水素およびコバルトをイオン交換させて平板状触媒を得る工程と、該波板状触媒と該平板状触媒を交互に積層する工程を実施して、ハニカム型脱硝触媒を作製するようにしてもよい。
【0069】
本発明の燃焼排ガスの浄化方法によれば、高濃度の窒素酸化物(NOx)および硫黄酸化物(SOx)が存在し、しかも排ガス温度が300℃以下と低い、例えば船舶用機関すなわち船舶用大型ディ−ゼルエンジン、工場や発電所、地域冷暖房などの大規模ボイラ−等から排出される燃焼排ガスから、窒素酸化物を効果的に低減することができるものである。
【0070】
また、本発明の燃焼排ガスの浄化方法に使用する脱硝触媒によれば、高濃度の窒素酸化物(NOx)および硫黄酸化物(SOx)の存在下で、しかも排ガス温度が300℃以下と低い燃焼排ガスから、窒素酸化物を効果的、かつ効率良く低減することができるものである。
【実施例】
【0071】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
本発明の燃焼排ガスの浄化方法に使用する脱硝触媒として、−7のハメットの酸度関数H
0に相当する酸強度を有するナトリウム型ゼオライトであるZSM−5(MFI)型ゼオライトに水素(H)およびコバルト(Co)を担持させた触媒を製造した。
【0073】
まず、市販のZSM−5(MFI)ゼオライト(商品名ミズカシ−ブスEX122、水澤化学工業株式会社製:酸強度−7)10gを、0.1モル(M)の硝酸アンモニウム[NH
4NO
3]水溶液200mlに入れて、温度80℃で、24時間攪拌した後、濾過して洗浄した。ついで濾過洗浄物を温度110℃で、3時間乾燥し、NH
4−MFIゼオライトを得た。さらにNH
4−MFIゼオライトを、0.1モル(M)の硝酸コバルト[Co(NO
3)
2]水溶液200mlに入れ、温度80℃で、24時間攪拌した後、濾過して洗浄した。ついで濾過洗浄物を、温度110℃で、3時間乾燥し、さらに温度500℃で、4時間焼成することにより、本発明の水素(H)/コバルト(Co)イオン交換ZSM−5(MFI)ゼオライトを得た。この触媒のCo担持量は1.46重量%であった。
【0074】
こうして製造した本発明による脱硝触媒を用いて、本発明の燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施した。
図1に脱硝触媒の性能評価試験装置のフロ−図を示す。
【0075】
まず、上記のようにして得られたH/Co−ZSM−5(MFI)型ゼオライトよりなる触媒をプレス成形後に粉砕し、メッシュサイズ28から14に整粒して、脱硝触媒の粉粒物を調製した。ついで、
図1にフロ−図を示す試験装置において、内径10.6mmのステンレス製反応管よりなる脱硝反応器に、脱硝触媒の粉粒物を充填し、還元剤としてエタノ−ルを濃度700ppmで用いて、NO濃度が1000ppmの排ガスについて、下記の表1に示す試験条件で、性能評価試験を行った。
【表1】
【0076】
なお、脱硝反応器出口のガス分析は、窒素酸化物(NOx)計を用いて、出口NOx濃度を測定した。NOx計での測定値から、下記の数式(1)によって触媒のNOx除去性能である脱硝率を算出した。
【0077】
脱硝率(%)=(NOx
in−NOx
out)/NOx
in×100 …(1)
得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表2に示した。
【0078】
(実施例2)
上記実施例1の場合と同様にして、本発明の燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を、上記表1に示す試験条件で実施するが、上記実施例1の場合と異なる点は、還元剤にメタノールを濃度4000ppmで用いた点にある。得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表2にあわせて示した。
【0079】
(比較例1)
比較のために、上記実施例1の場合と同様にして、燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施するが、上記実施例1の場合と異なる点は、脱硝触媒として、−5のハメットの酸度関数H
0に相当する酸強度を有するナトリウム型ゼオライトであるBEA型ゼオライトにコバルト(Co)を担持させた触媒を使用した点にある。
【0080】
この脱硝触媒を、つぎのようにして製造した。まず、市販のBEA型ゼオライト(商品名H−BEA−35、ズ−ドケミ−触媒株式会社製:酸強度−5)10gを、0.1MのCo(NO
3)
2水溶液200mlに入れて、温度80℃、24時間攪拌した後、濾過して洗浄した。ついで濾過洗浄物を、温度110℃で、3時間乾燥し、さらに温度500℃で、4時間焼成することにより、コバルト(Co)イオン交換ゼオライトを得た。この触媒のCo担持量は、1.92重量%であった。
【0081】
こうして製造した比較例1による脱硝触媒を用いて、上記実施例1の場合と同様にして、燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施した。得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表2にあわせて示した。
【0082】
(比較例2)
比較のために、上記実施例1の場合と同様にして、燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施するが、上記実施例1の場合と異なる点は、燃焼排ガスの浄化方法に使用する脱硝触媒として、−3のハメットの酸度関数H
0に相当する酸強度を有するナトリウム型ゼオライトであるY型ゼオライトにコバルト(Co)を担持させた触媒を使用した点にある。
【0083】
この脱硝触媒を、つぎのようにして製造した。まず、市販のY型ゼオライト(商品名ミズカシ−ブスY−420、水澤化学工業株式会社製:酸強度−3)10gを、0.1MのCo(NO
3)
2水溶液200mlに入れて、温度80℃、24時間攪拌した後、濾過して洗浄した。ついで濾過洗浄物を、温度110℃で、3時間乾燥し、さらに温度500℃で、4時間焼成することにより、コバルト(Co)イオン交換ゼオライトを得た。この触媒のCo担持量は、10.33重量%であった。
【0084】
こうして製造した比較例2による脱硝触媒を用いて、上記実施例1の場合と同様にして、燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施したが、この比較例2では、還元剤としてのエタノ−ルを濃度700ppmで使用した。得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表2にあわせて示した。
【0085】
(比較例3)
比較のために、上記実施例1の場合と同様にして、燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施するが、上記実施例1の場合と異なる点は、燃焼排ガスの浄化方法に使用する脱硝触媒として、−7のハメットの酸度関数H
0に相当する酸強度を有するナトリウム型ゼオライトであるZSM−5(MFI)ゼオライトにコバルト(Co)を担持させた触媒を使用した点にある。
【0086】
この脱硝触媒を、つぎのようにして製造した。まず、市販のZSM−5(MFI)ゼオライト(商品名ミズカシ−ブスEX122、水澤化学工業株式会社製:酸強度−7)10gを、0.1モル(M)の硝酸コバルト[Co(NO
3)
2]水溶液200mlに入れて、温度80℃で、24時間攪拌した後、濾過して洗浄した。ついで濾過洗浄物を、温度110℃で、3時間乾燥し、さらに温度500℃で、4時間焼成することにより、コバルト(Co)イオン交換ゼオライトを得た。この触媒のCo担持量は、2.6重量%であった。
【0087】
こうして製造した比較例3による脱硝触媒を用いて、上記実施例1の場合と同様にして、燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施したが、この比較例3では、還元剤としてのエタノ−ルを濃度700ppmで使用した。
【0088】
得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表2にあわせて示した。
【表2】
【0089】
上記表2の結果から明らかなように、本発明による実施例1の脱硝試験においては、比較例1および2の脱硝試験に比べて、いずれも高い脱硝率を示しており、本発明による脱硝触媒が、反応温度250℃で高い触媒性能を有することが分かる。なお、比較例3では、比較例1および2に比べて本発明による実施例と同水準の高い脱硝率を示しているが、後述するように、実施例と比較して硫黄酸化物(SOx)の存在下での耐久性が劣っているものである。
【0090】
ここで、脱硝性能を示す量として、脱硝反応がNOxの1次反応であると仮定した場合の反応速度定数Kを指標とした。すなわち、反応速度定数Kは下記の式で表される。そして、上記の本発明による実施例1の脱硝試験、および比較例1〜3の脱硝試験において、反応速度定数Kを下記の式から算出し、得られた反応速度定数Kの結果を、下記の表3に示した。
K=−In(1−x)×SV
K:反応速度定数
X:反応率(脱硝率)
SV:空間速度(l/h)
【表3】
【0091】
上記表3の結果から明らかなように、本発明による実施例1および2の脱硝試験においては、比較例1および2の脱硝試験の場合より、いずれも反応速度定数Kが高く、窒素酸化物(NOx)を効率良く低減させていることが分かる。
【0092】
(実施例3)
つぎに、脱硝触媒が、高濃度の硫黄酸化物(SOx)の存在下においても、窒素酸化物を効果的に低減できることを確認するために、本発明による脱硝触媒について、三酸化硫黄(SO
3)に対する耐性をテストした。
【0093】
下記の表4に示す条件で、一定時間、三酸化硫黄(SO
3)を含むガスに脱硝触媒をさらす耐性試験を実施し、本発明による脱硝触媒の硫黄酸化物(SOx)に対する耐性をテストした。
【0094】
実施例3では、本発明による実施例1において製造したH/Co−ZSM−5(MFI)型ゼオライトを、脱硝触媒性能評価試験を実施する前に、三酸化硫黄(SO
3)を含むガスに47時間さらした。なお、三酸化硫黄(SO
3)は、定量送液ポンプを用いて蒸発管に送り、蒸発器内でガス化してから、反応管に流入した。
【0095】
ついで、この三酸化硫黄さらし後の脱硝触媒を用いて、上記実施例1の場合と同様に、燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施した。得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表5に示した。
【表4】
【0096】
(実施例4)
上記実施例3の場合と同様にして、本発明による脱硝触媒について、三酸化硫黄(SO
3)に対する耐性をテストするが、上記実施例3の場合と異なる点は、実施例4では、本発明による実施例1において製造したH/Co−ZSM−5(MFI)型ゼオライトを、脱硝触媒性能評価試験を実施する前に、三酸化硫黄(SO
3)を含むガスに110時間さらした点にある。
【0097】
ついで、この三酸化硫黄さらし後の脱硝触媒を用いて、上記実施例1の場合と同様に、燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施した。得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表5にあわせて示した。
【0098】
(比較例4)
比較のために、上記実施例3の場合と同様にして、脱硝触媒について、三酸化硫黄(SO
3)に対する耐性をテストするが、上記実施例3の場合と異なる点は、比較例4では、上記比較例3において製造したCo−ZSM−5(MFI)ゼオライトを、脱硝触媒性能評価試験を実施する前に、三酸化硫黄(SO
3)を含むガスに36時間さらした点にある。
【0099】
ついで、この三酸化硫黄さらし後の脱硝触媒を用いて、上記実施例1の場合と同様に、燃焼排ガスの浄化方法に対応する脱硝触媒性能評価試験を実施した。得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表5にあわせて示した。
【表5】
【0100】
上記表5の結果から明らかなように、本発明の実施例3と4の三酸化硫黄さらし後の脱硝触媒による脱硝試験においては、比較例4の三酸化硫黄さらし後の脱硝による脱硝試験に比べて、いずれも高い脱硝率を示しており、本発明による脱硝触媒は、例えば船舶用機関から排出される排ガスに多く含まれる硫黄酸化物(SOx)の耐性にも優れていることが分かる。
【0101】
このように見てくると明らかなように、本発明の燃焼排ガスの浄化方法によれば、高濃度の窒素酸化物(NOx)および硫黄酸化物(SOx)が存在し、しかも排ガス温度が300℃以下と低い、例えば船舶用機関すなわち船舶用大型ディ−ゼルエンジン、工場や発電所、地域冷暖房などの大規模ボイラ−等から排出される燃焼排ガスから、窒素酸化物を効果的に低減することが可能である。