(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、2つの成形品を組み付ける場合、一方の成形品に雌ネジ穴を形成し、他方の成形品にネジ挿通穴を形成して、他方の成形品のネジ挿通穴から一方の成形品の雌ネジ穴に対してネジ部材をねじ込むことで、2つの成形品を一体に組み付けることが行われている。
【0003】
この場合、組み付ける2つの成形品間に広い内部空間がある場合において、2つの成形品を接合する部分(例えば、周縁部等)に固定構造(ボルト・ナット等のネジ構造)を設けることが、外観上や強度上等の理由で好ましくない場合には、広い内部空間を跨ぐ形でネジ固定等の固定構造を設ける必要がある。
【0004】
具体的には、
図12に一例を示すように、雌ネジ穴側の成形品210では、成形品の裏面212に円柱状の長いボス部213を立設し、このボス部213の上面に同軸状に雌ネジ穴214を形成している。
【0005】
一方、ネジ部材230を挿通するネジ挿通穴側の成形品220でも、必要に応じてネジ部材230を挿通する円筒状の凹部223を成形品の表面222側から形成し、この凹部223底面にネジ挿通穴224を形成している。
【0006】
そして、2つの成形品210,220を接合したとき、ボス部213の雌ネジ穴214と凹部223底面のネジ挿通穴224とが上下に対峙して当接するように配置し、この状態で凹部223側から雌ネジ穴214に対してネジ部材230をねじ込むことで、2つの成形品210,220を一体に組み付けている。
【0007】
この場合、成形品の裏面212に立設されたボス部213が長い場合には、ネジ部材230をねじ込むときの荷重によってボス部213が変形する可能性があるため、通常は、
図13A及び
図13Bに示すように、ボス部213の外周面に補強リブ215を複数(この例では4つ)形成するのが一般的である(例えば、特許文献1,2等参照)。
【0008】
この場合、ボス部213の外周面に補強リブ215を形成するためには、ボス部213の周辺部に十分なスペースが必要である。しかし、成形品の形状等によりこのスペースが確保できない場合には、補強リブ215を設けることができないといった問題があった。
【0009】
また、
図13A及び
図13Bに示すような長尺状のボス部213を形成する場合、このボス部213に雌ネジ穴214を形成するためのピンを金型側に設ける必要があるが、あまり長いピンを設けると、樹脂の充填圧力でピンが変形等するため、金型構造が複雑になるといった問題もあった。さらに、このピンを短くして下端部が中実なボス部213を形成すると、その部分の強度は確保できるものの肉厚が厚くなり、ボス部213周辺に引けが生じるといった問題もあった。また、この引けによってボス部213が若干傾倒してしまうといった問題もあった。
【0010】
そこで、このような場合には、
図14A,
図14Bに示すように、成形品の裏面にまず台座となる支柱部240A,240Bを立設し、この支柱部240A,240Bの上面(台座上面)にボス部250を設ける構造とすることが行われている(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図14Aに示す支柱部240Aは、一対の脚片240aと、脚片240aの上端部同士を連結する台座片240bとで構成されている。この構造の場合、脚片240aを余り長くすると、ネジ部材をねじ込むときの荷重によって脚片240aがねじれるように変形するため、脚片240aをあまり長くすることができないといった問題があった。
【0013】
また、
図14Bに示す支柱部240Bは、一方の側面のみが開口240eされた平面視略半円弧状の箱状体に形成されている。この構造の場合、開口は一方の側面のみであるので、
図14Aに示す支柱部240Aより強度は向上する。しかし、支柱部240Bを長くすると、開口240eも縦長の形状となり、ネジ部材をねじ込むときの荷重に対して、強度の弱い開口部分がねじれるように変形する可能性があるため、
図14Aと同様、支柱部240Aをあまり長くすることができないといった問題があった。
【0014】
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、成形品にボス部を一体に形成し、ボス部の先端にねじ込むネジ部材により被取付け部材を固定する成形品の固定構造において、ボス部を支持する支持部の強度を高めることのできる成形品の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明に係る成形品の固定構造は、成形品にボス部を一体に形成し、前記ボス部の先端にねじ込むネジ部材により被取付け部材を固定する成形品の固定構造であって、前記ボス部は、箱状の支柱部を介して前記成形品に一体形成され、前記支柱部は立設方向に沿った一方の面に開口部を有し、前記支柱部の内部には、前記開口部の側から見て、前記立設方向に対して傾斜する補強リブが一体に形成された構成としている。
【0016】
この構成によると、支柱部の内部に、開口部の側から見て、立設方向に対して傾斜する補強リブを一体形成しているので、ボス部の先端にネジ部材をねじ込むときに支柱部に大きな荷重(圧縮及びねじり荷重等)がかかっても、この荷重を補強リブで受け止め、かつ、その応力を分散させることで十分な強度を持たせることができる。
【0017】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記補強リブは、前記開口部の側から見て、前記ネジ部材のねじ込み方向
(ねじ山の稜線の傾斜に沿う方向)に傾斜させて設けた構成としている。
【0018】
補強リブをネジ部材のねじ込み方向に傾斜させて設けることで、ボス部の先端にネジ部材をねじ込むときの荷重(圧縮及びねじり荷重等)が支柱部にかかったとしても、その荷重に対して補強リブがちょうど突っ張り棒の役目を果たすことになる。これにより、特にねじり荷重を補強リブで直接受けとめることができる。
【0019】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記支柱部の高さ寸法は、前記ボス部の高さ寸法よりも大きい構成とされている。支柱部の高さ寸法がボス部の高さ寸法と同等がそれより小さい場合には、従来構造の支柱部でも、ある程度の強度を得ることができるため、本発明に係る成形品の固定構造は、特に、支柱部の高さ寸法が、ボス部の高さ寸法よりも大きい場合に有効な発明である。
【0020】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記支柱部の内部には前記立設方向に延在する仕切りリブが前記補強リブと共に一体に形成された構成としてもよい。
【0021】
この構成によると、内部空間をさらに複数の小空間に仕切ることから、荷重に対する応力をより細かく分散させることができ、かつ、補強リブの数も増えるので、支柱部の強度がさらに増すことになる。また仕切りリブと補強リブとを支柱部と一体に形成することで、その強度がより増すことになる。
【0022】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記補強リブは、前記仕切りリブの両側で、かつ前記立設方向において同じ位置にそれぞれ形成された構成としてもよい。
【0023】
仕切りリブで仕切られた小空間ごとに補強リブを設けることで、支柱部の強度がさらに増すことになる。この場合、補強リブを立設方向において同じ位置にそれぞれ形成することで、ボス部の先端にネジ部材をねじ込むときの荷重(圧縮及びねじり荷重等)を各補強リブでほぼ均等に分散して受け止めることができる。
【0024】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記補強リブは、傾斜方向を同方向にまたは異ならせて複数形成してもよい。
【0025】
この構成によると、支柱部が長い場合に、一つの空間部に複数のリブ片を設けることで、その分強度を増すことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、支柱部の内部に、開口部の側から見て、立設方向に対して傾斜する補強リブを一体形成しているので、ボス部の先端にネジ部材をねじ込むときに支柱部に大きな荷重(圧縮及びねじり荷重)がかかっても、この荷重(特にねじり荷重)を補強リブで受け止め、かつ、その応力を分散させることで十分な強度を持たせることができる。すなわち、支柱部に大きな荷重がかかっても、支柱部がねじれて変形したり、ヒビ割れ等を起こすことがない。また、本発明によれば、支柱部の内部空間を補強する構造としているので、支柱部の外周面に補強リブを設ける必要がなく、その分、省スペース化を図ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
本発明に係る成形品の固定構造は、成形品にボス部を一体に形成し、ボス部の先端にねじ込むネジ部材により被取付け部材を固定する成形品の固定構造である。
【0030】
図1、
図2A及び
図2Bは、本発明に係る成形品の固定構造を、最も基本的な形状の2つの成形品の固定構造に適用した場合を例示しており、
図1は、一部を破断して示す斜視図、
図2Aは、
図1に示す2つの成形品の縦断面図、
図2Bは、
図2AのA−A線断面図である。
【0031】
この成形品1は、円筒の箱体形状に形成された上側成形品1aと下側成形品1bとからなり、上側成形品1aの下端開口縁部1a1と下側成形品1bの上端開口縁部1b1とを凹凸形状の嵌合構造とすることで、一体に嵌め合わせる構造としている。
【0032】
この構造において、嵌合後、両成形品1a,1bを強固に固定する構造として、下側成形品1bは、成形品本体裏面1b2に立設して一体形成された支柱部1b3と、この支柱部1b3の上面に一体形成されたボス部1b4とを備えており、これに対応する上側成形品1aは、成形品本体上面1a2に一体形成された円筒状の凹部1a3を備えている。そして、凹部1a3の底面にはネジ挿通穴1a4が形成されており、これに対応する下側成形品1bのボス部1b4には、支柱部1b3の立設方向Xに開口したネジ挿入用穴1b8が形成されている。すなわち、この基本形状では、下側成形品1bが本発明に係る成形品に相当し、上側成形品1aが本発明に係る被取付け部材に相当している。
【0033】
一方、支柱部1b3は、立設方向Xに沿った一方の面に開口部1b31を有する縦長の箱状体に形成されており、箱状体の対向する内側面1b5,1b5間には、開口部1b31から見て、支柱部1b3の立設方向Xに対して傾斜させて補強リブ1b6が一体に形成されている。
【0034】
より具体的には、この補強リブ1b6は、開口部1b31の側から見て、ネジ部材2のねじ込み方向Rに傾斜して設けられている。補強リブ1b6をネジ部材2のねじ込み方向Rに傾斜させて設けることで、ボス部1b4の先端にネジ部材2をねじ込むときの荷重(圧縮及びねじり荷重等)が支柱部1b3にかかったとしても、その荷重に対して補強リブ1b6がちょうど突っ張り棒の役目を果たすことになる。これにより、特にねじり荷重(ねじ込み方向Rにかかる荷重)を補強リブ1b6で効果的に受けとめることができるため、支柱部1b3に大きな荷重がかかっても、支柱部1b3がねじれて変形したり、ヒビ割れ等を起こすことがない。
【0035】
この場合、支柱部1b3の高さ寸法
H2は、ボス部1b4の高さ寸法
H1よりも大きい構成とされている。支柱部1b3の高さ寸法がボス部1b4の高さ寸法と同等かそれより小さい場合には、従来構造の支柱部でも、ある程度の強度を得ることができる。従って、本発明に係る成形品の固定構造は、特に、支柱部1b3の高さ寸法が、ボス部1b4の高さ寸法よりも大きい場合に有効である。
【0036】
この場合、補強リブ1b6を形成する位置は、ボス部1b4に近い支柱部1b3の上部であることが好ましい。具体的には、支柱部1b3の1/2の高さよりも上、より好ましくは支柱部の2/3の高さよりも上に設けるのがよい。補強リブ1b6をボス部1b4の近くに設けることで、ボス部1b4に直接かかる荷重(特にねじり荷重)を、ボス部1b4近傍で受け止めて、支柱部1b3の上部側で分散させることができる。そのため、支柱部1b3が長い場合でも、下部側にかかるねじり荷重の影響を低減することができる。
【0037】
なお、補強リブ1b6の傾斜角度については、水平以外であればどのような傾斜角度であっても良いが、より好ましくは、水平方向に対して略30度〜60度の範囲内の任意の傾斜角度とするのが、ねじ込み方向Rとの関係で強度的にも優れていると考えられる。ただし、この傾斜角度は、支柱部1b3の形状(長さや幅等)にもよるので、これらの範囲に限定されるものではない。また、どの程度の強度を必要とするかによっても変わってくる。
【0038】
この構成によると、ボス部1b4のネジ挿入用穴1b8に例えばタッピングネジ等のネジ部材2をねじ込むときに、支柱部1b3に大きな荷重(圧縮荷重やねじり荷重等)がかかっても、この荷重を補強リブ1b6で受けとめ、かつ、その応力を分散させることで、十分な強度を持たせることができる。すなわち、支柱部1b3に大きな荷重がかかっても、支柱部1b3がねじれて変形したり、ヒビ割れ等を起こすことがない。また、この構成によると、支柱部1b3の内部空間を補強リブ1b6で補強する構造としているので、支柱部1b3の外周面に補強リブを設ける従来の補強構造に比べて、その分、省スペース化を図ることもできる。
【0039】
図1、
図2A及び
図2Bに示した支柱部1b3の構造は、最も基本的な構造を例示したものであるが、以下では、この基本構造から派生させたいくつかの応用例について説明する。
【0040】
図3は、支柱部1b3の応用例1を示す一部破断した側面図である。
【0041】
応用例1では、支柱部1b3の内部に、立設方向Xに直交する方向Yに内部空間を仕切る仕切りリブ1b7を形成し、補強リブ1b6は、支柱部1b3の内側面1b5と仕切りリブ1b7との間にそれぞれ設けた構成としている。すなわち、支柱部1b3の内部には、立設方向Xに延在する仕切りリブ1b7が、補強リブ1b6と共に一体に形成された構成としている。応用例1では、各補強リブ1b6は、同じ傾斜方向に、かつ、立設方向Xにおいて同じ位置に設けられている。
【0042】
この構成によると、支柱部1b3の内部空間をさらに複数の小空間に仕切り、補強リブ1b6の数もその小空間分だけ増えることから、支柱部1b3の強度がさらに増すことになる。また、補強リブ1b6を同じ傾斜方向に、かつ、立設方向Xにおいて同じ位置にそれぞれ形成することで、ボス部1b4の先端にネジ部材2をねじ込むときの荷重を各補強リブ1b6でほぼ均等に分散して受け止めることができる。
【0043】
図4は、支柱部1b3の応用例2を示す一部破断した側面図である。
【0044】
応用例1では、補強リブ1b6を同方向に傾斜させているが、応用例2では、対向する補強リブ1b6を逆方向に傾斜させている。すなわち、図中左側の補強リブ1b6は、開口部1b31の側から見て、ねじ込み方向Rと逆方向に傾斜している。この場合、左側の補強リブ1b6は、主として仕切りリブ1b7を補強する形となっている。このように、複数の補強リブ1b6を逆方向に傾斜して設けることで、それぞれの補強リブ1b6にかかる荷重を異なる方向に分散させることができる。
【0045】
図5は、支柱部1b3の応用例3を示す一部破断した側面図である。
【0046】
応用例3は、応用例1からのさらなる応用例であり、補強リブ1b6を、立設方向Xに沿って複数個(この例では上下に2個)設けた構成としている。支柱部1b3が長い場合、このように1つの小空間に立設方向Xに沿って複数個の補強リブを設けることで、その分、強度を増すことができる。応用例3では、1つの小空間の各補強リブ1b6は同じ傾斜方向に設けられている。また、各小空間の補強リブ1b6は、立設方向Xにおいて同じ位置に設けられている。このように、各小空間に同じ傾斜方向の補強リブ1b6を複数設けることで、支柱部1b3の強度をさらに高めることができる。
【0047】
図6は、支柱部1b3の応用例4を示す一部破断した側面図である。
【0048】
応用例4は、応用例3の変形例であり、立設方向Xに沿って設けられた複数個(この例では2個)の補強リブ1b6を、各小空間において傾斜方向が互いに異なるように設けた構成としている。すなわち、1つの小空間において2個の補強リブ1b6をくの字状に設けた構成としている。このように傾斜方向を互いに異ならせることで、補強リブ1b6にかかる荷重を多様な方向に分散させて受け止めることが可能となる。
【0049】
なお、上記応用例3,4は、
図1及び
図2に示す基本構造のものにも適用できることは当然である。また、基本構造及び応用例1〜4では、補強リブ1b6を平板状として説明しているが、補強リブ1b6を例えば湾曲状に形成してもよい。応力のかかり方によっては、平板状より湾曲状の方が応力をより分散させる効果がある場合も考えられるからである。また、上記応用例1〜4では、仕切りリブ1b7は1枚のみ設けられているが、所定の間隔を存して複数枚配置してもよい。この場合には、対向する仕切りリブ1b7,1b7間にも同様に補強リブ1b6を配置する。
【0050】
図7は、上記構成の固定構造を適用した成形品を用いて製造した製品の具体例を示す外観図である。この具体例では、製品の一例として扇風機を例示している。
【0051】
この扇風機10は、床面等に設置される基台11と、基台11に立設された支柱杆12と、支柱杆12に対して上下摺動自在に設けられた摺動杆13と、摺動杆13の上端部に水平方向に回転自在に取り付けられた保持部14と、保持部14に保持されて仰角方向に回動自在に取り付けられたモータ収納部15と、モータ収納部15に収納されたモータの回転軸(図示省略)に取り付けられたファン16と、ファン16をガードする前ガード17a及び後ろガード17bとを備えている。後述する本発明の固定構造は、保持部14に適用されている。
【0052】
基台11は、例えば円盤状に形成されており、モータを駆動させるための図示しない操作パネルやマイクロコンピュータ等を搭載した制御部などを内蔵している。
【0053】
支柱杆12は上部が開口した円筒状に形成されており、その内部に摺動杆13が上下摺動自在に挿通されている。
【0054】
摺動杆13は、詳細は省略するが、支柱杆12からは完全に抜けない構造となっており、かつ、支柱杆12から上方に引き出した任意の位置で固定できる構造となっている。このような構造は、従来周知の構造であり、本具体例においても同様の周知構造を適用すればよい。
【0055】
図8は、本発明の固定構造が適用された保持部14を示す斜視図である。ただし、
図8では、モータ収納部15を想像線で示している。
【0056】
保持部14は、摺動杆13の上端部に連結される基台部141と、基台部141の左右両端部から上方に延設された一対の腕部142,142とからなり、モータ収納部15は、正面視略U字状に形成された保持部14の両腕部142,142間に保持されている。また、保持部14は、モータ収納部15を安定的に保持するために、腕部142の上部側から基台部141の下部側に向かって前後に広がっていくように形成されており、
図7に示すように、側面視ではやや前方側に迫り出すように傾斜させた略半楕円形状に形成されている。なお、
図8中の符号143は、モータ収納部15の左右から突出された図示しない支持軸を挿入保持するための保持用開口穴であり、
図8では、左側の保持用開口穴143のみが図示されている。
【0057】
図9は、保持部14の分解斜視図、
図10は、後述する後側保持部14bの正面図である。
【0058】
保持部14は、軽量化のため内部が空洞となっている。そのため、保持部14は、
図9に示すように、前側基台部141a及び前側腕部142aからなる後方側に開口した略半ドーム形状の前側保持部14aと、後側基台部141b及び後側腕部142bからなる前方側に開口した略半ドーム状の後側保持部14bの、2つの成形品を組み合わせることによって構成されている。すなわち、保持部14は、前後に2分割された成形品の分割周端面同士を凹凸形状として嵌め合わせ、全体をタッピングネジ等のネジ部材30によって固定する構造としている。
【0059】
そのため、
図9及び
図10に示す保持部14では、後側保持部14bの後側基台部141bの左右2箇所に支柱部1b3とボス部1b4とをそれぞれ一体形成し、前側保持部14aの前側基台部141aの対向する2箇所にネジ挿通穴1a4を備えた凹部1a3をそれぞれ一体形成している。ここで、この例では、支柱部1b3は応用例1の構造として図示しているが、基本構造や応用例2〜4の構造でも構わない。
【0060】
なお、本具体例では、上記2箇所以外に、腕部142の上端部にも同様の固定構造を採用しているが、ここでは必要に応じて符号のみを付記し、腕部142の固定構造については説明を省略する。
【0061】
このような構造において、
図11に示すように、前側保持部14aと後側保持部14bの分割周端面の凹凸部18a,18b同士を嵌め合わせ、前側保持部14a側から凹部1a3にタッピングネジ等のネジ部材30を挿入し、凹部1a3底面のネジ挿通穴1a4を介してボス部1b4のネジ挿入用穴1b8にネジ部材30をねじ込むことで、前側保持部14aと後側保持部14bとを一体に固定している。
【0062】
この際、ネジ部材30を強く締め付けても、長尺状に形成されている支柱部1b3は補強リブ1b6及び仕切りリブ1b7によって補強されているため、ネジの締め付け荷重に対して支柱部1b3が変形やひび割れ等を生じることがない。
【0063】
なお、上記実施形態では、本発明の固定構造をネジの締め付け構造の部分に適用しているが、このような締め付け構造に限らず、成形品に長尺状の支柱部を形成する必要があり、かつその支柱部に十分な強度が必要な場合において、本発明の固定構造、特に本発明に係る支柱部の構造を適用することが可能である。
【0064】
上記したように、保持部14の形状上、前側基台部141aと後側基台部141bとの間には広い空間が必要であるため、強度を考慮すると、本発明の固定構造とすることが好ましい。
【0065】
なお、上記実施形態の成形品は、例えばABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)樹脂やPP(ポリプロピレン)樹脂等の樹脂材料を用いた射出成形によって成形することができる。この場合、基本構造の下側成形品1b及び具体例の後側保持部14bについては、上金型と下金型だけでは成形できず、支柱部1b3の横方向を開口し、内部に補強リブ1b6と仕切りリブ1b7とを形成するためのアンダーカット用のスライドコアまたは傾斜コアを金型に組み込む必要があるが、このような金型構造を用いて成形品を成形することは従来周知の射出成形方法であるので、ここでは基本構造の下側成形品1b及び具体例の後側保持部14bを成形する方法についての具体的な説明を省略する。
【0066】
さらに、
図2A及び
図2BのA−A線断面図から明らかなように、補強リブ1b6は、箱状体の対向する内側面(1b5、1b5)及び、開口部1b31に対向する面に対して、3つの側方が各面に結合(一体に形成)されており、補強リブ1b6が箱状体の対向する内側面1b5、1b5間(2つの側方)のみに結合されている場合は、ねじ込みにより撓み易いが、これに比して、3つの側方が各面に結合(一体に形成)されており補強リブ1b6自体の強度が向上すると共に、上記したスライドコア等を金型に組み込む従来の射出形成方法を用いて、比較的容易に成形品を成形することが可能となる。
【0067】
−本発明の構成及び効果のまとめ−
本発明に係る成形品の固定構造は、成形品1bにボス部1b4を一体に形成し、前記ボス部1b4の先端にねじ込むネジ部材2により被取付け部材1aを固定する成形品の固定構造であって、前記ボス部1b4は、箱状の支柱部1b3を介して前記成形品1bに一体形成され、前記支柱部1b3は立設方向Xに沿った一方の面に開口部1b31を有し、前記支柱部1b3の内部には前記開口部1b31の側から見て、立設方向Xに対して傾斜する補強リブ1b6が一体に形成された構成としている。
【0068】
この構成によると、支柱部の内部に、開口部の側から見て、立設方向に対して傾斜する補強リブを一体形成しているので、ボス部の先端にネジ部材をねじ込むときに支柱部に大きな荷重(圧縮及びねじり荷重等)がかかっても、この荷重を補強リブで受けとめ、かつ、その応力を分散させることで十分な強度を持たせることができる。すなわち、支柱部に大きな荷重がかかっても、支柱部がねじれて変形したり、ヒビ割れ等を起こすことがない。また、本発明によれば、支柱部の内部空間を補強する構造としているので、支柱部の外周面に補強リブを設ける必要がなく、その分、省スペース化を図ることもできる。
【0069】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記補強リブ1b6は、前記開口部1b31の側から見て、前記ネジ部材2のねじ込み方向Rに傾斜させて設けた構成としている。
【0070】
補強リブ1b6をネジ部材のねじ込み方向Rに傾斜させて設けることで、ボス部1b4の先端にネジ部材をねじ込むときの荷重(圧縮及びねじり荷重等)が支柱部1b3にかかったとしても、その荷重に対して補強リブ1b6がちょうど突っ張り棒の役目を果たすことになる。これにより、特にねじり荷重を補強リブ1b6で直接受けとめることができるため、支柱部1b3に大きな荷重がかかっても、支柱部1b3がねじれて変形したり、ヒビ割れ等を起こすことがない。
【0071】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記支柱部1b3の高さ寸法は、前記ボス部1b4の高さ寸法よりも大きい構成とされている。本発明に係る成形品の固定構造は、特に、支柱部の高さ寸法が、ボス部の高さ寸法よりも大きい場合に有効な発明である。
【0072】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記支柱部1b3の内部には前記立設方向Xに延在する仕切りリブ1b7が前記補強リブ1b6と共に一体に形成された構成としている。
【0073】
この構成によると、内部空間をさらに複数の小空間に仕切ることから、荷重に対する応力をより細かく分散させることができ、
かつ、補強リブ1b6の数も増えるので、支柱部1b3の強度がさらに増すことになる。また仕切りリブ1b7と補強リブ1b6とを支柱部1b3と一体に形成することで、その強度がより増すことになる。
【0074】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記補強リブ1b6は、前記仕切りリブ1b7の両側で、かつ前記立設方向Xにおいて同じ位置にそれぞれ形成されている。
【0075】
仕切りリブ1b7で仕切られた小空間ごとに補強リブ1b6を設けることで、支柱部1b3の強度がさらに増すことになる。この場合、補強リブ1b6を立設方向Xにおいて同じ位置にそれぞれ形成することで、ボス部1b4の先端にネジ部材をねじ込むときの荷重(圧縮及びねじり荷重等)を各補強リブ1b6でほぼ均等に分散して受け止めることができる。
【0076】
また、本発明に係る成形品の固定構造によれば、前記補強リブ1b6は、傾斜方向を同方向にまたは異ならせて複数形成してもよい。
【0077】
この構成によると、支柱部1b3が長い場合に、一つの空間部に複数の補強リブ1b6を設けることで、その分、強度を増すことができる。この場合、傾斜方向を同方向とすることで、ボス部1b4の先端にネジ部材をねじ込むときの荷重(圧縮及びねじり荷重等)を各補強リブ1b6でほぼ均等に分散して受け止めることができる。また、傾斜方向を異ならせることで、各補強リブ1b6にかかる荷重を多様な方向に分散させて受け止めることが可能となる。
【0078】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。