特許第6134572号(P6134572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6134572
(24)【登録日】2017年4月28日
(45)【発行日】2017年5月24日
(54)【発明の名称】微粒子測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/00 20060101AFI20170515BHJP
【FI】
   G01N15/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-91321(P2013-91321)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-215117(P2014-215117A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カウコ ヤンカ
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−513742(JP,A)
【文献】 特表2010−515018(JP,A)
【文献】 特開2002−333389(JP,A)
【文献】 特開平09−159586(JP,A)
【文献】 特表2008−530558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00
G01N 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中に含まれる微粒子に関する物理量を測定する微粒子測定装置であって、
上記被測定ガスが流通する流通路に開口する吸気口から上記被測定ガスの一部であるサンプルガスを取り入れる吸気部と、
清浄な希釈ガスを供給する希釈ガス路と、
上記サンプルガスを上記希釈ガスと混合して希釈した希釈済みガス中の上記微粒子の上記物理量に対応する測定出力を得る測定部と、
上記希釈ガス路から供給される上記希釈ガスの流量を規定する希釈ガス流量規定手段と、
上記希釈ガス流量規定手段により上記希釈ガスの上記流量を変化させて、上記測定部で測定する上記希釈済みガスの希釈比を変動させる希釈比変調手段と、
前記測定部で得た前記測定出力に基づき、この測定出力が予め定めた範囲内の大きさになるように、前記希釈ガス流量規定手段を用いて、前記希釈ガスの前記流量をフィードバック制御する制御手段と、を備える
微粒子測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子測定装置であって、
前記希釈比変調手段は、
前記希釈ガス流量規定手段により前記希釈ガスの前記流量を変化させて、前記希釈済みガスの前記希釈比を±20%未満の振幅で変動させる
微粒子測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の微粒子測定装置であって、
前記吸気部は、
前記吸気口を通じて前記サンプルガスを取り入れる流入路と、
上記流入路内に流入した上記サンプルガスの下流に向けて、上記サンプルガスの流れの周りを囲む環状に、前記希釈ガスを吹き出す環状吹き出し部と、を有し、
前記希釈ガス路は、上記環状吹き出し部に接続されてなる
微粒子測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の微粒子測定装置であって、
前記測定部は、
前記希釈済みガス中の微粒子の少なくとも一部にイオンを付着させ帯電させて、帯電微粒子とする帯電化手段と、
上記イオンのうち上記微粒子に付着していない浮遊イオンを除去する浮遊イオン除去手段と、
上記希釈済みガスを前記流通路に排出する排出路と、
上記希釈済みガスと共に上記排出路に排出される上記帯電微粒子によって運び去られる電荷量を測定する電荷量測定手段と、を備える
微粒子測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガス中に含まれる微粒子に関する物理量を測定する微粒子測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒径が1ナノメートルから10マイクロメートルの微粒子を有するエアロゾル(微粒子が混合した気体)は、多くの燃焼過程で形成される。そして、様々な理由から、このエアロゾルを被測定ガスとして、被測定ガス中の微粒子に関する物理量(例えば、微粒子の濃度、数、粒度分布、平均粒径など)が測定される。このような微粒子測定は、例えば、微粒子の健康への潜在的な影響を測定するために、また、内燃機関、とりわけディーゼルエンジンのような、燃焼機関の稼働を監視するために行われる。このため、信頼できる微粒子測定装置が要求されている。
【0003】
特許文献1には、従来技術である微粒子測定の方法及び装置が開示されている。この特許文献1では、イオン化された正のイオン粒子を含む気体を、チャネル内に取り込んだ微粒子を含むガスと混合して微粒子を帯電させ、その後に排出する。そして、排出された帯電微粒子によって運ばれる電荷量(電流)を検知して、微粒子の濃度を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/109688
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような微粒子測定装置において、微粒子の濃度や平均粒径などの物理量に対応する測定出力を得る測定部は、例えば、被測定ガスにおける微粒子濃度が高すぎる場合には、測定出力の値が上限に固定されて具体的な濃度の値を検知できないなど、適切な測定出力を得て、適切に物理量を測定できる範囲(ダイナミックレンジ)が限られている場合がある。
この場合に、被測定ガスを適量の清浄なガスで希釈して微粒子濃度を下げることで、適切な測定出力を得て、濃度などの物理量を適切に測定できる場合がある。
【0006】
本発明は、かかる知見に鑑みてなされたものであって、微粒子に関する物理量を測定するにあたり、希釈比の選択を容易にできる微粒子測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、被測定ガス中に含まれる微粒子に関する物理量を測定する微粒子測定装置であって、上記被測定ガスが流通する流通路に開口する吸気口から上記被測定ガスの一部であるサンプルガスを取り入れる吸気部と、清浄な希釈ガスを供給する希釈ガス路と、上記サンプルガスを上記希釈ガスと混合して希釈した希釈済みガス中の上記微粒子の上記物理量に対応する測定出力を得る測定部と、上記希釈ガス路から供給される上記希釈ガスの流量を規定する希釈ガス流量規定手段と、上記希釈ガス流量規定手段により上記希釈ガスの上記流量を変化させて、上記測定部で測定する上記希釈済みガスの希釈比を変動させる希釈比変調手段と、前記測定部で得た前記測定出力に基づき、この測定出力が予め定めた範囲内の大きさになるように、前記希釈ガス流量規定手段を用いて、前記希釈ガスの前記流量をフィードバック制御する制御手段と、を備える微粒子測定装置である。
【0008】
前述したように、微粒子測定装置において、微粒子の物理量に対応する測定出力を得る測定部には、適切な測定出力を得て、適切に物理量を測定できる微粒子濃度についての許容域(測定可能域)があり、例えば、被測定ガスにおける微粒子濃度が高すぎる場合は、測定出力の値が上限に固定されて適切に物理量を測定できない。
これに対し、この微粒子測定装置では、吸気部で取り入れた被測定ガスの一部であるサンプルガスを清浄な希釈ガスで希釈した希釈済みガスを用い、測定部では、このガス中の微粒子の物理量に対応する測定出力を得る。
さらに、この微粒子測定装置は、希釈ガスの流量を規定する希釈ガス流量規定手段と、希釈済みガスの希釈比を変動させる希釈比変調手段とを備えている。
希釈済みガスの希釈比を変動させると、測定部で測定される希釈済みガスについての測定出力も変動する。このため、希釈済みガスの微粒子濃度が高すぎたり低すぎたりして、適切な測定出力が得られない場合でも、得られた測定出力の変動の様子を用いて、希釈比を上げるべきか下げるべきかを判断したり、または、好ましい希釈比の目安などを得たりすることができる。これにより、適切な測定出力が得られるように、希釈比を好ましい値に(手動調整または自動調整によって)調整して、適切な希釈比の選択を容易に行うことができる。
なお、希釈済みガスの希釈比は、サンプルガスに対する希釈ガスの体積流量比(希釈ガスの流量/サンプルガスの流量)で与える。また、希釈ガス流量規定手段は、例えば、圧力調整弁(レギュレータ)、流量計、マス・フロー・コントローラなどを用いた流量コントローラによって実現される。
また、この微粒子測定装置は、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガスに用いるほか、火力プラントまたは各種工業過程において煙突から排出される排出ガスなどの被測定ガスについての微粒子測定に用いることができる。
さらにこの微粒子測定装置では、測定部で得られる測定出力が、予め定めた範囲内の大きさになるように、希釈ガスの流量、従って希釈比をフィードバック制御する。これにより、測定部で上記範囲内の適切な測定出力が得られるように、希釈ガスの流量が調整され、希釈済みガスの希釈比を好ましい値またはその近傍に自動調整することが可能になるので、測定部での測定出力と希釈比から被測定ガスにおける微粒子に関する物理量(濃度、粒径など)を適切に測定することができる。
【0009】
さらに、上述の微粒子測定装置であって、前記希釈比変調手段は、前記希釈ガス流量規定手段により前記希釈ガスの前記流量を変化させて、前記希釈済みガスの前記希釈比を±20%未満の振幅で変動させる微粒子測定装置とすると良い。
【0010】
希釈比変調手段で希釈比を変動させるにあたり、この希釈比の変動幅を大きくしすぎると、測定部で得られる測定出力も大きく変動し、また、測定の上限を超えたり、下限を下回ったりしやすく、好ましくない。
これに対し、この微粒子測定装置では、希釈比変調手段は、希釈済みガスの希釈比を±20%未満の振幅で変動(振幅変調)させる。例えば、好ましい希釈比の目安が10倍であれば、これを8倍から12倍の範囲内で変動させ、また、好ましい希釈比の目安が5倍であれば、これを4倍から6倍の範囲内で変動させる。
これにより、希釈比を変動させても、測定部で得られる測定出力が、測定の上限を超えたり、下限を下回ったりするのが抑えられるので、測定部で適切な測定出力が取得可能となるように、適切な希釈比の選択を容易に行うことができる。
【0013】
さらに、上述のいずれかの微粒子測定装置であって、前記吸気部は、前記吸気口を通じて前記サンプルガスを取り入れる流入路と、上記流入路内に流入した上記サンプルガスの下流に向けて、上記サンプルガスの流れの周りを囲む環状に、前記希釈ガスを吹き出す環状吹き出し部と、を有し、前記希釈ガス路は、上記環状吹き出し部に接続されてなる微粒子測定装置とすると良い。
【0014】
この微粒子測定装置では、環状吹き出し部から、流入路内に流入したサンプルガスの下流に向けて、かつ、このサンプルガスの流れの周りを囲む環状に、希釈ガスを吹き出す。
これにより、サンプルガスの流れを加速して、吸気口から流入路内にサンプルガスを効率良く取り込むことができる。
【0015】
さらに、上述の微粒子測定装置であって、前記環状吹き出し部は、前記サンプルガスの流れを囲む環状の吹き出し口を有する微粒子測定装置とするのが好ましい。
【0016】
環状吹き出し部を、以上のような形態とすることにより、環状の希釈ガスの流れを適切に形成できる。
【0017】
また、前述の微粒子測定装置であって、前記環状吹き出し部は、前記サンプルガスの流れを囲む環状に配置された多数の吹き出し口を有する微粒子測定装置とするのが好ましい。
【0018】
また、前述の微粒子測定装置であって、前記環状吹き出し部は、前記サンプルガスの流れを囲む環状に配置され、前記希釈ガスを吹き出す通気性の多孔質材からなる吹き出し口を有する微粒子測定装置とするのが好ましい。
【0019】
環状吹き出し部は、前述の環状の吹き出し口のほか、以上のような形態とすることも可能である。
【0020】
さらに、上述のいずれかの微粒子測定装置であって、前記測定部は、前記希釈済みガス中の微粒子の少なくとも一部にイオンを付着させ帯電させて、帯電微粒子とする帯電化手段と、上記イオンのうち上記微粒子に付着していない浮遊イオンを除去する浮遊イオン除去手段と、上記希釈済みガスを前記流通路に排出する排出路と、上記希釈済みガスと共に上記排出路に排出される上記帯電微粒子によって運び去られる電荷量を測定する電荷量測定手段と、を備える微粒子測定装置とすると良い。
【0021】
この微粒子測定装置は、測定部が、帯電化手段と、浮遊イオン除去手段と、排出路と、電荷量測定手段とを備えており、この測定部で単位時間当たりの電荷量を得ることで、希釈済みガス中の微粒子濃度を得て、さらには、これと希釈比とを用いて被測定ガス中の微粒子濃度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態にかかる微粒子測定装置の概略構成を示す説明図である。
図2】実施形態にかかる微粒子測定装置のうち、環状吹き出し部の形態を示す説明図である。
図3】環状吹き出し部の変形形態を示す説明図である。
図4】環状吹き出し部の他の変形形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本実施形態に係る微粒子測定装置1の概略構成を示す。この微粒子測定装置1は、被測定ガスEGが流通する通気管EP(流通路)に、この通気管EPに開口する吸気口2及び排気口3を介して接続されている。そして、被測定ガスEGの一部を吸気口2から取り込んで、被測定ガスEG中の微粒子Sの量(濃度)を測定する。取り込んだ被測定ガスEGは、排気口3から通気管EP内に戻される。なお、この微粒子測定装置1は、ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガスのほか、火力プラントまたは各種工業過程において煙突から排出される排出ガスなどの被測定ガスEGについての微粒子測定に用いることができる。
【0024】
吸気口2には、後述するサンプルガスSFを取り入れる円筒状の流入路14が接続している。また、この流入路14には、環状のガス室12及び環状の吹き出し口13からなる環状吹き出し部12,13が接続している。環状吹き出し部12,13は、流入路14のうち、サンプルガスSFの上流側(本実施形態では、吸気口2の直近)に配置され、吹き出し口13が、流入路14内で、サンプルガスSFの下流に向けて環状に開口している。また、環状吹き出し部12,13のガス室12には、図示しない圧縮空気源から高圧の清浄な圧縮空気を供給するエアー導管4及び第1分岐路11が接続している。さらに、第1分岐路11には、マス・フロー・コントローラを用いた第1流量コントローラ6aが介在している。これにより、エアー導管4及び第1分岐路11から第1流量コントローラ6aを介して、高圧の清浄な圧縮空気が第1空気DA1として、ガス室12に供給される。第1流量コントローラ6aは、この第1空気DA1の流量FQ1を規定すると共に、その流量FQ1を調整可能である。
【0025】
また、圧縮空気源から供給された高圧の清浄な圧縮空気の残部は、エアー導管4から第2分岐路5を通じ、同じくマス・フロー・コントローラを用いた第2流量コントローラ6bを介して、第2空気DA2として、電極8及びコロナ針7からなるコロナ帯電器7,8を内包する中央チャネル10a内に供給され、さらに、ノズル10bを通って、エジェクタ入口9a、エジェクタスロート部9b及びエジェクタ出口9cからなるエジェクタ9に向けて噴射される。
【0026】
エジェクタ9は、中央のエジェクタスロート部9bがくびれた形状をなし、高圧の駆動ガス(主流)の噴射により負圧を生じさせて、吸込ガス路(側流チャネル)を通じて外部から吸込ガス(側流)を吸込む。第2空気DA2は、このエジェクタ9の主流を形成する。なお、第2流量コントローラ6bは、第2空気DA2の流量FQ2を規定し、その流量FQ2を調整可能である。但し、本実施形態では、第2空気DA2の流量FQ2は、第2流量コントローラ6bによって、常に一定とされている。
【0027】
また、コロナ帯電器7,8は、コロナ針7でのコロナ放電により、ノズル10bを通る第2空気DA2中のN2,O2等を電離し、イオンCPを生成する。したがって、生成されたイオンCPは、第2空気DA2と共に、エジェクタ9に向けて噴射される。
【0028】
一方、図2に示すように、エアー導管4及び第1分岐路11から、環状吹き出し部12,13のガス室12に供給された第1空気DA1は、吹き出し口13から環状に吹き出される。そして、吹き出し口13から環状に吹き出した第1空気DA1は、流入路14内で、その内周面に沿う環状の流れを形成する。すると、吸気口2を通じて被測定ガスEGの一部であるサンプルガスSFが流入路14内に取り入れられる。そして、第1空気DA1が、サンプルガスSFの流れの周りを環状に囲むことによって、サンプルガスSFの流れが加速される。本実施形態において、環状吹き出し部12,13及び流入路14は、吸気口2からサンプルガスSFを取り入れる吸気部15を構成する。
【0029】
また、流入路14は、中央チャネル10aの周囲を囲むチャンバー10cに接続しており、チャンバー10cは、さらにエジェクタ9に接続している。流入路14内のサンプルガスSF及び第1空気DA1は、流入路14からチャンバー10cへと下流に向けて流動し、この間に、サンプルガスSFと第1空気DA1が混合される。これにより、サンプルガスSFを第1空気DA1と混合して希釈した希釈済みガスDF1が得られる。
ここで、前述したように、第1空気DA1の流量FQ1は、第1流量コントローラ6aによって調節可能であり、流量FQ1を変化させると、サンプルガスSFの流量FQ3との体積流量比(=FQ1/(FQ1+FQ3))で与えられる希釈済みガスDF1の希釈比DRも変動する。
【0030】
また、前述したように、エジェクタ9は、その主流を形成する第2空気DA2をノズル10bから噴射することにより、側流チャネルから側流を吸込む負圧を生じさせる。本実施形態では、希釈済みガスDF1が、エジェクタ9の側流を形成し、吸気部15が側流チャネルをなす。これにより、希釈済みガスDF1が、吸気部15を通じて、エジェクタ9内に吸い込まれる。
【0031】
さらに、ノズル10bからエジェクタ9に向けて噴射されたイオンCPを含む第2空気DA2は、エジェクタ9内で希釈済みガスDF1と混合される。これにより、希釈済みガスDF1は、第2空気DA2でさらに希釈されて第2希釈済みガスDF2となる。
【0032】
なお、第2空気DA2が、希釈済みガスDF1に混合することによって、コロナ帯電器7,8で生成したイオンCPも、希釈済みガスDF1に混合する。これにより、希釈済みガスDF1中の微粒子SにイオンCPが付着し、イオンCPが付着した微粒子Sは、帯電した帯電微粒子SCとなる。
また、エジェクタスロート部9b内には、イオン・トラップ23が配置されており、このイオン・トラップ23により、イオンCPのうち微粒子Sに付着していない浮遊イオンCPFが除去される。
そして、エジェクタ9内の希釈済みガスDF1を第2空気DA2でさらに希釈した第2希釈済みガスDF2は、排出路をなすエジェクタ出口9cを通じ、さらに排気口3を通って通気管EP(流通路)に排出される。この際、第2希釈済みガスDF2と共にエジェクタ出口9c(排出路)に排出される帯電微粒子SCによって運び去られる電荷量Qに相当する電流Iが電流測定回路24によって測定される。
【0033】
本実施形態において、コロナ帯電器7,8が帯電化手段に相当し、イオン・トラップ23が浮遊イオン除去手段に相当する。また、電流測定回路24が、電荷量測定手段に相当する。そして、電荷量Qに相当する電流Iが、測定される希釈済みガスDF1中の微粒子Sの濃度(物量)に対応する測定出力MOであり、コロナ帯電器7,8(帯電化手段)、イオン・トラップ23(浮遊イオン除去手段)、エジェクタ出口9c(排出路)、及び電流測定回路24(電荷量測定手段)で、測定出力MOを得る測定部20を構成する。
また、第1空気DA1が、サンプルガスSFを希釈する希釈ガスに相当し、エアー導管4及び第1分岐路11が、希釈ガス路に相当する。また、第1流量コントローラ6aが、希釈ガスである第1空気DA1の流量FQ1を規定する希釈ガス流量規定手段に相当する。
【0034】
さらに、微粒子測定装置1は、第1流量コントローラ6aにより第1空気DA1(希釈ガス)の流量FQ1を変化させて、測定部20で測定する希釈済みガスDF1の希釈比DR(サンプルガスSFの流量FQ3に対する第1空気DA1の流量FQ1の体積流量比(=FQ1/(FQ1+FQ3)))を変動させる希釈比変調手段21を備えている。
【0035】
具体的には、希釈比変調手段21は、希釈済みガスDF1の希釈比DRを±20%未満の振幅AMで変動(振幅変調)させる。例えば、好ましい希釈比DR(=FQ1/(FQ1+FQ3))の目安として、10倍を選択したとすると、これを8倍から12倍の範囲内で変動させる。また、好ましい希釈比DRとして5倍を選択したとすると、これを4倍から6倍の範囲内で変動させる。
これにより、希釈比DRを変動させても、測定部20で得られる測定出力MO(電荷量Qに相当する電流I)が、測定の上限や下限に固定されるのが抑えられるので、測定部20で適切な測定出力MOが取得可能となるように、適切な希釈比DRの選択を容易に行うことができる。
さらに、微粒子測定装置1は、測定部20で得た測定出力MOに基づき、この測定出力MOが予め定めた範囲内の大きさになるように、第1流量コントローラ6aを用いて、第1空気DA1(希釈ガス)の流量FQ1をフィードバック制御する制御手段22を備えており、希釈比変調手段21は、制御手段22によって制御される。
【0036】
このように、本実施形態の微粒子測定装置1では、吸気部15で取り入れた被測定ガスEGの一部であるサンプルガスSFを清浄な第1空気DA1(希釈ガス)で希釈した希釈済みガスDF1を用い、測定部20では、この希釈済みガスDF1中の微粒子濃度に対応する測定出力MO(電荷量Qに相当する電流I)を得る。
さらに、本実施形態の微粒子測定装置1は、エアー導管4及び第1分岐路11から供給される第1空気DA1(希釈ガス)の流量FQ1を規定する第1流量コントローラ6a(希釈ガス流量規定手段)と、第1流量コントローラ6aにより第1空気DA1(希釈ガス)の流量FQ1を変化させて、測定部20で測定する希釈済みガスDF1の希釈比DRを変動させる希釈比変調手段21とを備えている。
希釈済みガスDF1の希釈比DRを変動させると、測定部20で測定される希釈済みガスDF1についての測定出力MOも変動する。このため、希釈済みガスDF1の微粒子濃度が高すぎたり低すぎたりして、適切な測定出力MOが得られない場合でも、得られた測定出力MOの変動の様子を用いて、希釈比DRを上げるべきか下げるべきかを判断したり、または、好ましい希釈比DRの目安などを得たりすることができる。これにより、適切な測定出力MOが得られるように、希釈比DRを好ましい値に調整して、適切な希釈比DRの選択を容易に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態の微粒子測定装置1では、希釈比変調手段21は、希釈比DRを±20%未満の振幅AMで変動(振幅変調)させている。
これにより、希釈比DRを変動させても、測定部20で得られる測定出力MOが、測定の上限を超えたり、下限を下回ったりするのが抑えられるので、測定部20で適切な測定出力MOが取得可能となるように、適切な希釈比DRの選択を容易に行うことができる。
【0038】
さらに、本実施形態の微粒子測定装置1では、測定部20で得られる測定出力MOが、予め定めた範囲内の大きさになるように、第1空気DA1(希釈ガス)の流量FQ1、従って希釈比DRをフィードバック制御する。これにより、測定部20で適切な測定出力MOが得られるように、第1空気DA1(希釈ガス)の流量FQ1が調整され、希釈済みガスの希釈比を好ましい値またはその近傍に自動調整することが可能になるので、測定部20での測定出力MOと希釈比DRから被測定ガスEGにおける微粒子濃度を適切に測定することができる。
【0039】
さらに、本実施形態の微粒子測定装置1では、環状の吹き出し口13を有する環状吹き出し部12,13から、流入路14内に流入したサンプルガスSFの下流に向けて、かつ、このサンプルガスSFの流れの周りを囲む環状に、第1空気DA1(希釈ガス)を吹き出す。
これにより、サンプルガスSFの流れを加速して、吸気口2から流入路14内にサンプルガスSFを効率良く取り込むことができる。
【0040】
さらに、本実施形態の微粒子測定装置1は、測定部20が、コロナ帯電器7,8(帯電化手段)と、イオン・トラップ23(浮遊イオン除去手段)と、希釈済みガスDF1を通気管EP(流通路)に排出するエジェクタ出口9c(排出路)と、希釈済みガスDF1と共に排出される帯電微粒子SCによって運び去られる電荷量Qに相当する電流Iを測定する電流測定回路24(電荷量測定手段)とを備えており、この測定部20で単位時間当たりの電荷量Qに相当する電流Iを得ることで、希釈済みガスDF1中の微粒子濃度を得て、さらには、これと希釈比DRとを用いて被測定ガスEG中の微粒子濃度を得ることができる。
【0041】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、図2に示すように、環状吹き出し部12,13が、サンプルガスSFの流れを囲む環状の吹き出し口13を有する形態とした。
しかし、環状吹き出し部12,13は、図3に示すように、サンプルガスSFの流れを囲む環状に配置された多数の吹き出し口13を有する形態としても良い。
さらに、環状吹き出し部12,13は、図4に示すように、サンプルガスSFの流れを囲む環状に配置され、第1空気DA1(希釈ガス)を吹き出す通気性の多孔質材からなる吹き出し口13を有する形態としても良い。
【0042】
また、上述の実施形態では、希釈比変調手段21は、希釈済みガスDF1の希釈比DRを±20%未満の振幅AMで変動させたが、希釈比DRの変動幅をさらに小さくして、希釈比DRを±10%未満の振幅AMで変動させり、希釈比DRを±5%未満の振幅AMで変動させたりしても良い。希釈比DRを変動させながらも、その変動幅をさらに小さくすることで、適切な希釈比DRの選択がより容易になる。
【符号の説明】
【0043】
EP 通気管(流通路)
EG 被測定ガス
S 微粒子
SC 帯電微粒子
CP イオン
CPF 浮遊イオン
Q 電荷量
I 電流
DA1 第1空気(希釈ガス)
DA2 第2空気
SF サンプルガス
FQ1 (第1空気の)流量
FQ2 (第2空気の)流量
FQ3 (サンプルガスの)流量
DF1 希釈済みガス
DF2 第2希釈済みガス
1 微粒子測定装置
2 吸気口
3 排気口
4 エアー導管(希釈ガス路)
11 第1分岐路(希釈ガス路)
5 第2分岐路
6a 第1流量コントローラ(希釈ガス流量規定手段)
6b 第2流量コントローラ
7 コロナ針(コロナ帯電器、帯電化手段)
8 電極(コロナ帯電器、帯電化手段)
9 エジェクタ
9a エジェクタ入口
9b エジェクタスロート部
9c エジェクタ出口(排出路)
12 ガス室(環状吹き出し部)
13 吹き出し口(環状吹き出し部)
14 流入路
15 吸気部
20 測定部
21 希釈比変調手段
22 制御手段
23 イオン・トラップ(浮遊イオン除去手段)
24 電流測定回路(電荷量測定手段)
図1
図2
図3
図4